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平成27年4月22日 1. はじめに 「畳表(たたみおもて)」は、「畳の表に使うい草 の茎を麻糸で織ったむしろ(出典:広辞苑)」で、古 くから日本建築に欠かせない畳の材料として、熊本、 福岡、広島、岡山県などで生産されています。 農林水産省の統計によりますと、八代税関支署 がある熊本県の 2014(H26)年畳表生産量(概数) は 362 万枚で、主産県(福岡県及び熊本県) (注 1) の 98.6%を占め、国内産畳表のほとんどを生産して います(付表:表 1-2)。 近年、生活様式の欧米化などにより、畳の需要は減少傾向にあると言われており、畳表の 国内生産量も 2005(H17)年の 782 万枚から減少し、2011(H23)年以降は 300 万枚台で推 移しています。一方、中国産に代表される輸入畳表は、コスト面から、マンションや戸建ての 新築、アパートの賃貸物件などで需要が多く、2014(H26)年の全国の輸入量 (注 2) は 1,447 万 枚と国内生産量(367 万枚)の約 4 倍が輸入されました(図1)。 本特集では、2年連続で輸入数量・輸入金額ともに全国第 1 位となった八代港がある 八代税関支署管内(熊本県内)で輸入される「畳表」についてまとめてみました。 (注1) 主産県(福岡県及び熊本県)の生産量は、国内生産量と同一であり、各当該年の前年 7 月から当年 6 月まで に生産されたものである(農林水産省 特定作物統計調査による)。 (注2) 全国輸入量は、農林水産省の換算値(輸入重量を畳表 1 枚当たりの平均使用量 1.7 ㎏として枚数に換算) 及び期間にあわせ長崎税関が算出した枚数である。 (注3) 八代税関支署管内の数値は、八代港(八代税関支署)、熊本港(熊本出張所)、三角港(三角出張所)、水俣 港(水俣出張所)の通関数量・金額の合計であり、熊本県の数値と同一である。 本特集の「畳表の輸入」は、輸入統計品目番号 4601.94-911(畳表、2006 年以前は 4601.91-211)について まとめたものです。 『畳表』(長崎税関撮影) 【集計期間】 各当該年の前年 7 月から当年 6 月までに生産及び輸入された数値

1. はじめに - customs.go.jp honbun.pdf · 1 平成27年4月22日 長崎税関 1. はじめに 「畳表(たたみおもて)」は、「畳の表に使うい草 の茎を麻糸で織ったむしろ(出典:広辞苑)」で、古

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平成27年4月22日

長 崎 税 関

1. はじめに 「畳表(たたみおもて)」は、「畳の表に使うい草

の茎を麻糸で織ったむしろ(出典:広辞苑)」で、古

くから日本建築に欠かせない畳の材料として、熊本、

福岡、広島、岡山県などで生産されています。

農林水産省の統計によりますと、八代税関支署

がある熊本県の 2014(H26)年畳表生産量(概数)

は 362 万枚で、主産県(福岡県及び熊本県)(注 1)

の 98.6%を占め、国内産畳表のほとんどを生産して

います(付表:表 1-2)。

近年、生活様式の欧米化などにより、畳の需要は減少傾向にあると言われており、畳表の

国内生産量も 2005(H17)年の 782 万枚から減少し、2011(H23)年以降は 300 万枚台で推

移しています。一方、中国産に代表される輸入畳表は、コスト面から、マンションや戸建ての

新築、アパートの賃貸物件などで需要が多く、2014(H26)年の全国の輸入量(注 2)は 1,447万

枚と国内生産量(367万枚)の約 4倍が輸入されました(図1)。

本特集では、2年連続で輸入数量・輸入金額ともに全国第 1 位となった八代港がある

八代税関支署管内(熊本県内)で輸入される「畳表」についてまとめてみました。

(注1) 主産県(福岡県及び熊本県)の生産量は、国内生産量と同一であり、各当該年の前年 7 月から当年 6 月まで

に生産されたものである(農林水産省 特定作物統計調査による)。

(注2) 全国輸入量は、農林水産省の換算値(輸入重量を畳表 1 枚当たりの平均使用量 1.7 ㎏として枚数に換算)

及び期間にあわせ長崎税関が算出した枚数である。

(注3) 八代税関支署管内の数値は、八代港(八代税関支署)、熊本港(熊本出張所)、三角港(三角出張所)、水俣

港(水俣出張所)の通関数量・金額の合計であり、熊本県の数値と同一である。

本特集の「畳表の輸入」は、輸入統計品目番号 4601.94-911(畳表、2006 年以前は 4601.91-211)について

まとめたものです。

『畳表』(長崎税関撮影)

【集計期間】

各当該年の前年 7月から当年 6月までに生産及び輸入された数値

2. 輸入動向

【全国】(図 2-1)

過去 10年間の輸入動向を見ますと、輸入数量は 2006(H18)年の 4,941万平方メートルを

ピークに減少し、2014(H26)年は 2,657 万平方メートル(前年比 104.3%)と3年ぶりに増加した

もののピーク時の約半分(同 53.8%)となりました。

また、輸入金額は 2008(H20)年から 3 年連続で減少、2011(H23)年から増加に転じ、

2013(H25)年に減少したものの 2014(H26)年は 109 億 99 百万円(同 118.2%)と 2 年ぶりに

増加し、過去 10年間では最高額となりました。

【八代税関支署管内】(図 2-1)

過去 10年間の輸入動向を見ますと、輸入数量は 2005(H17)年の 666万平方メートルをピ

ークに増減を繰り返し、2014年(H26)の輸入数量は 554万平方メートル(全国シェア 20.9%、

前年比 116.5%)と 2年連続で増加しました。

また、輸入金額は 2008(H20)年から 3 年連続で減少したものの 2011(H23)年から 4 年連

続で増加し、2014(H26)年は 23億 38百万円(同 21.3%、同 131.0%)で、全国と同様、過去

10年間の最高額を記録しました。

なお、2014(H26)年の都道府県別輸入数量(図 2-2)を見ますと、福岡県が 554.4万平方

メートル(全国シェア 20.9%)で第1位、次いで熊本県 554.1 万平方メートル(同 20.9%)、岡

山県 329万平方メートル(同 12.4%)の順となりました。また、輸入金額(図 2-3)は、熊本県が

23億 38百万円(全国シェア 21.3%)で第1位、次いで福岡県 23億 7百万円(同 21.0%)、

岡山県 13 億 24 百万円(同 12.0%)の順となり、上位3県で、輸入数量・金額ともに全体の

50%以上(数量 54.2%、金額 54.3%)を占めました。

3. 国別輸入動向

【全国】(図 3-1、3-2)

過去 10 年間の輸入相手国を見ますと、毎年、中国が輸入数量の 99.8%以上を占めて

いました。その他の国では、毎年ではありませんが、ごくわずかながらベトナム、韓国などからの

輸入がありました。

2014(H26)年は、輸入数量 2,657万平方メートル(前年比 104.4%)、輸入金額 109億 99

百万円(同 118.3%)と、全量が中国からの輸入でした。

【八代税関支署管内】

過去 10年の輸入相手国(表 1)を見ますと、毎年、全量が中国から輸入されていました。

2014(H26)年は、輸入数量 554万平方メートル(前年比 116.5%)、輸入金額 23億 38百

万円(同 131.0%)でした。 表 1 八代税関支署管内輸入実績(輸入相手国は中国のみ)

2005(H17) 2006(H18) 2007(H19) 2008(H20) 2009(H21) 2010(H22) 2011(H23) 2012(H24) 2013(H25) 2014(H26)

輸入数量(万㎡) 666 544 576 511 465 420 500 425 476 554

輸入金額(百万円) 1,447 1,324 1,478 1,220 1,001 963 1,446 1,577 1,785 2,338

4. 港別輸入動向

過去 10 年間の港(通関官署)別輸入動向を見ますと、輸入数量(図 4-1)は 2006(H18)

年から博多、水島、八代港の 3港が上位を占めていましたが、2010(H20)年から東京港が 2

年連続で第1位となりました。その後、2012(H24)年は博多港が、2013(H25)年からは 2 年連

続で八代港が第1位でした。

2014(H26)年の輸入数量(図 4-3、表 2)は、八代港 553 万平方メートル(全国シェア

20.8%、前年比 116.7%)で第1位、次いで、博多港 383 万平方メートル(同 14.4%、同

96.7%)、水島港 329万平方メートル(同 12.4%、同 95.7%)、東京港 304万平方メートル(同

11.4%、 同 95.0%)、大阪港 164万平方メートル(同 6.2%、同 112.8%)の順となり、上位 5

港で全体の 65.2%を占めました。

輸入金額(図 4-2、表 2)は 2005(H17)年から 5 年連続で水島港が、2010(H22)年からは

3年連続で博多港が、2013(H25)年からは 2年連続で八代港が第1位となりました。

2014(H26)年(図 4-4、表 2)は、八代港 23 億 32 百万円(全国シェア 21.2%、前年比

131.2%)で第1位、次いで博多港、水島港、東京港、大阪港の順となり、上位 5 港で全体

の 65.5%を占めました。

※ 上記グラフの数値は、各税関官署における通関ベースで計上したもの。

港名( )は、税関を表す。(長)…長崎税関、(門)…門司税関、(神)…神戸税関、(東)…東京税関、(大)…大阪税関

また、八代税関支署管内の熊本港は、ごくわずかではありますが、毎年、畳表の輸入があ

ります。2014(H26)年の輸入数量(表 2)は 2 万平方メートル(全国シェア 0.1%、前年比

76.9%)、輸入金額(表 2)は 5 百万円(同 0.0%、同 79.0%)でした。なお、三角港、水俣港

では、これまでに畳表の輸入はありませんでした。

表 2 輸入数量・輸入金額、構成比の推移(港(通関官署)別) (単位:万㎡)

(単位:百万円)

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

1 東京港 619 19.1% 東京港 649 18.0% 博多港 500 17.9% 八代港 474 18.6% 八代港 553 20.8%

2 博多港 510 15.7% 博多港 553 15.3% 八代港 424 15.1% 博多港 396 15.6% 博多港 383 14.4%3 水島港 482 14.8% 水島港 507 14.0% 水島港 408 14.6% 水島港 344 13.5% 水島港 329 12.4%4 八代港 416 12.8% 八代港 496 13.7% 東京港 383 13.7% 東京港 320 12.5% 東京港 304 11.4%5 福山港 189 5.8% 伊万里港 213 5.9% 伊万里港 212 7.6% 伊万里港 187 7.3% 大阪港 164 6.2%6 伊万里港 173 5.3% 福山港 205 5.7% 福山港 169 6.0% 福山港 147 5.8% 伊万里港 154 5.8%7 神戸港 141 4.4% 神戸港 169 4.7% 大阪港 163 5.8% 大阪港 146 5.7% 福山港 141 5.3%8 門司港 136 4.2% 横浜港 166 4.6% 横浜港 127 4.5% 神戸港 128 5.0% 横浜港 120 4.5%9 三池港 106 3.3% 大阪港 155 4.3% 神戸港 121 4.3% 横浜港 89 3.5% 神戸港 106 4.0%10 大阪港 95 2.9% 門司港 135 3.7% 門司港 81 2.9% 門司港 71 2.8% 三池港 103 3.9%参考 熊本港㉓ 5 0.1% 熊本港㉕ 4 0.1% 熊本港㉔ 1 0.1% 熊本港㉕ 2 0.1% 熊本港㉙ 2 0.1%

合計 3,244 100.0% 合計 3,618 100.0% 合計 2,800 100.0% 合計 2,546 100.0% 合計 2,657 100.0%

順位 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

1 博多港 1,146 17.6% 博多港 1,613 17.5% 博多港 1,877 19.0% 八代港 1,778 19.1% 八代港 2,332 21.2%

2 水島港 1,058 16.2% 八代港 1,434 15.6% 八代港 1,572 15.9% 博多港 1,439 15.5% 博多港 1,579 14.4%3 八代港 952 14.6% 水島港 1,364 14.8% 水島港 1,447 14.7% 水島港 1,259 13.5% 水島港 1,324 12.0%4 東京港 821 12.6% 東京港 1,206 13.1% 東京港 1,252 12.7% 東京港 1,178 12.7% 東京港 1,282 11.7%5 福山港 473 7.3% 福山港 627 6.8% 伊万里港 702 7.1% 伊万里港 627 6.7% 大阪港 690 6.3%6 伊万里港 336 5.2% 伊万里港 569 6.2% 福山港 678 6.9% 福山港 590 6.3% 福山港 647 5.9%7 門司港 304 4.7% 神戸港 492 5.3% 大阪港 542 5.5% 大阪港 504 5.4% 横浜港 545 5.0%8 神戸港 292 4.5% 横浜港 463 5.0% 横浜港 433 4.4% 神戸港 477 5.1% 伊万里港 517 4.7%9 三池港 206 3.2% 大阪港 387 4.2% 神戸港 426 4.3% 横浜港 356 3.8% 三池港 449 4.1%10 大阪港 201 3.1% 門司港 314 3.4% 名古屋港 234 2.4% 門司港 240 2.6% 神戸港 443 4.0%参考 熊本港㉑ 11 0.2% 熊本港㉒ 11 0.1% 熊本港㉖ 5 0.1% 熊本港㉕ 7 0.1% 熊本港㉚ 5 0.0%

合計 6,514 100.0% 合計 9,203 100.0% 合計 9,864 100.0% 合計 9,303 100.0% 合計 10,999 100.0%

2014年順位 2010年 2011年 2012年 2013年

5. おわりに

2014(H26)年の八代税関支署管内(熊本県内)で輸入された畳表は、すべて中国産でし

た。都道府県別の輸入数量は 554万平方メートル(全国シェア 20.9%、前年比 116.5%)で全

国第 2位、同輸入金額は 23億 38百万円(同 21.3%、同 131.0%)で全国第 1位でした。

また、港別で見ますと、八代港が輸入数量 553 万平方メートル(全国シェア 20.8%、前年

比 116.7%)、輸入金額が 23億 32百万円(同 21.2%、同 131.2%)で、ともに 2年連続で全

国第1位となりました。

八代港の今年の 1 月から 3 月までの輸入実績(速報値)を見ますと、輸入数量 109 万平

方メートル(全国シェア 20.2%、前年同期比 75.3%)、輸入金額 4億 89百万円(同 21.1%、

同 81.5%)でともに全国第 1位を記録しました。

今後の輸入見込みについて、輸入業者の方々にお聞きしますと、「畳の需要増加が厳しい

中、畳の良さをアピールして厳しいながらもなんとか現状を維持したい。」、「在庫があり前年より

やや下回る。」、又は「前年を上回りたい。」など、様々な声がありました。

毎年 4月 29日は、「畳の材料である「い草」が緑一面に育つ日」として、9月 24日は、「畳

を上げて大掃除を推奨する日」として、年に2回「畳の日」があります。その頃には、全国各地で

畳供養や畳文化の継承・発展を願う行事も開催されています。

「い草」、「畳」には、空気浄化、保温・断熱性、弾力性、吸音性といったすばらしい機能が

あるようです。間もなくゴールデンウイークがきます。4月 29日の「畳の日」には、ご家族でお出か

けもよし、お出かけのご予定のない方は大掃除など、掃除したての畳の上に大の字になって、

「畳」の良さを満喫されてはいかがでしょうか。

(資料)農林水産省資料、熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会ホームページ、各種報道等による

~~~ 本資料についてのお問い合わせ ~~~

長崎税関 調査部 調査統計課 ☎0 095-828-8659(直通)

〒850-0862 長崎市出島町 1 番 36 号

長崎税関ホームページ http://www.customs.go.jp/nagasaki/

※本資料を他に転載するときには、長崎税関の資料による旨を必ず注記して下さい。

(参考)

「い草」、「畳」に関する豆知識

1.畳の歴史について

畳は、世界に類がない日本固有の文化であり、伝統的な床材です。畳の原点は紀元前か

ら存在し、当時は、藁(わら)を重ねただけだったそうです。

現代の畳に近づくのは平安時代(794 年~1192 年)からであり、厚みが加わるとともに

大きさの規格化が進められました、平安時代までは板床に敷くクッションの一種のような

ものでした。室町時代(1338 年~1573 年)に入ると書院造の登場によって、部屋全体に敷

き詰められるようになりました。当時の畳は、貴族の屋敷に使われる高級品であり、庶民

の暮らしに浸透したのは、江戸時代(1603 年~1867 年)の中期・後期と言われています。

2.熊本県のい草

熊本県のい草栽培の歴史は古く、1505 年現在の八代市千丁町太牟田上土城主の岩崎主馬

守忠久公が領内の古閑淵前にい草を栽培させ、製織を奨励させたのが始まりと言われてい

ます。1750 年代は細川霊感公が栽培と製織を大いに奨励した記録もありますが、明治維新

前までは、太牟田、新牟田、上土、新開、下村の五つの村に栽培が限られていたようです。

い草栽培が始められてから 500 年以上になりますが、この長い歴史に支えられ、今日では

日本一の畳表の生産高を誇っています。

3.い草、畳の機能

■ 空気の浄化作用

い草のスポンジ状の部分には、二酸化窒素やシックハ

ウス病の原因とされるホルムアルデヒドなどを吸収する

機能があるのでいつも快適です。

■ 弾力性・断熱性・保温性

い草の断面を見るとスポンジ状になっていて、多くの

空気を含んでいます。い草も畳床も程よい弾力性と断熱

の働きがあるので転んでも安全です。

■ 湿度調整機能

い草のスポンジ状の部分や畳床には、水分を自然に吸湿する能力と空気が乾燥す

ると反対に放湿する湿度調整機能を持っています。

■ 吸音性

空気をたくさん含んでいる畳は、ショックを和らげるほかに、音や振動を吸収す

る働きがあるので元気よく遊んでも大丈夫です。

4.畳の構成とサイズ

畳は日本独特の文化で生まれ「一畳(いちじょう)」と呼ばれる単位も日本国内のみで

使用されている単位のひとつです。居室の広さを語る場合、私たち日本人は「何畳の部屋」

という表現をします。

また、一畳のサイズもいろいろあり、地域によって大きさが異なってきます。

い草の断面写真

≪出典:熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会≫