14
12 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で, 火炉ボイ ラー本体附属品附属装置及び附属設備などから構成されています。 ボイラー 本体 ボイラー 本体 火炉 火炉 過熱器 過熱器 送気系統設備 給水系統設備 燃焼設備 油ポンプ バーナ 空気 フラッシュ タンク ガス ガス エコノマイザ 空気予熱器 空気予熱器 押込ファン 蒸気だめ 蒸気 煙突 送気 原水ポンプ 給水ポンプ 軟化装置 給水タンク 水ドラム 蒸気ドラム 蒸気ドラム 油サービス タンク 図 1.1.1 ボイラーの構成例 火炉は,燃料を燃焼し熱を発生する部分で,燃焼室ともいいますが,ボイラーの種類によって火室 炉筒ともいいます。 火炉には,バーナなどの燃焼装置が取り付けられます。 燃焼装置は,液体,気体及び石炭を細かく砕いた微粉炭などの燃料にはバーナを,その他の固体燃 料には火格子などが用いられます。 火炉は,ボイラー本体と一体となって構成されたものが多く使用されています。 火炉(かろ) 1

1.1 ボイラーの概要 - jbanet.or.jp · 12 13 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,,ボイ

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1.1 ボイラーの概要1.1.1 ボイラーの構成ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,火炉,ボイ

ラー本体,附属品,附属装置及び附属設備などから構成されています。

ボイラー本体ボイラー本体

火炉火炉

過熱器過熱器

送気系統設備 給水系統設備

燃焼設備

油ポンプ バーナ

空気フラッシュタンク

ガスガスエコノマイザ

空気予熱器空気予熱器

押込ファン

蒸気だめ

蒸気

煙突

送気 原水ポンプ

給水ポンプ軟化装置

給水タンク

水ドラム

蒸気ドラム蒸気ドラム油サービスタンク

■ 図1.1.1 ボイラーの構成例

火炉は,燃料を燃焼し熱を発生する部分で,燃焼室ともいいますが,ボイラーの種類によって火室や炉筒ともいいます。火炉には,バーナなどの燃焼装置が取り付けられます。燃焼装置は,液体,気体及び石炭を細かく砕いた微粉炭などの燃料にはバーナを,その他の固体燃

料には火格子などが用いられます。火炉は,ボイラー本体と一体となって構成されたものが多く使用されています。

火炉(かろ)1

Page 2: 1.1 ボイラーの概要 - jbanet.or.jp · 12 13 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,,ボイ

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1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

2.1

2.2

2.3

2.4

3.1

3.2

3.3

ボイラー本体は,燃焼室で発生した熱を受け,内部の水を加熱,蒸発させて所定圧力の蒸気や温水を発生する部分です。ボイラー本体は,圧力に十分耐えられるように設計・製作され,胴やドラム,多数の小径の管などに

よって構成されています。

A. 伝熱面伝熱面とは,燃焼室からの熱や燃焼ガスの熱を受け,その熱を水や蒸気に伝える部分をいい,放射伝熱面と接触伝熱面があります。

ボイラー本体2

蒸気

蒸気ドラム

バーナ

放射伝熱面水ドラム

接触熱

接触(対流)伝熱面

火炎

ボイラー本体火炉

放射熱

高温ガス

■ 図1.1.2 ボイラーの伝熱面

火炉(燃焼室)に直面している伝熱面は,火炎などからの強い放射熱を受けるので,放射伝熱面といいます。

Skip

燃焼室に直面している伝熱面は,放射伝熱面という

ポイントポイント 1

蒸発水管群などの伝熱面は,燃焼室を出た高温ガスとの接触によって熱を受けるので,接触伝熱面または対流伝熱面といいます。

Skip

燃焼室を出た高温ガス通路に配置される伝熱面は,接触伝熱面という

ポイントポイント 2

Page 3: 1.1 ボイラーの概要 - jbanet.or.jp · 12 13 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,,ボイ

●1.1 ボイラーの概要

14 15

附属品には,ボイラーの圧力を測定する圧力計,水位を測定する水面計などの計測器,ボイラー圧力の異常な上昇を防ぐ安全弁や水位の異常を知らせる高低水位警報器などの安全装置があります。附属設備には,過熱蒸気を得るための過熱器,燃焼ガスの余熱を利用し給水を予熱する節炭器

(せったんき:エコノマイザといいます),燃焼ガスの余熱を利用し燃焼用空気を温める空気予熱器などがあります。これら以外に,燃料を燃焼させるための燃焼設備及び通風設備,ボイラーに給水するための給水ポ

ンプなどの給水設備,発生した蒸気を送るための送気設備なども必要となります。

附属品及び附属装置3

※本項に関する公表問題は,P.16 ~ P.17に掲載します。

ボイラーの規模を表すには,そのボイラーが発揮し得る容量(能力)で表すのが一般的です。

ボイラーの容量1

蒸気ボイラーでは,容量を時間当たりの発生蒸発量[kg/h]または[t/h]で表しますが,温水ボイラーでは,時間当たりの発生熱量[GJ/h]または[MJ/h]で表します。[GJ(ギガジュール)=109 ジュール,MJ(メガジュール)=106 ジュール]

Skip

蒸気ボイラーの容量(能力)は,最大連続負荷の状態で1 時間に発生する蒸発量[kg/h または t/h]で示される

ポイントポイント 1

1.1.2 ボイラーの容量及び効率

実際に蒸気を発生させるには,所要の圧力,温度における発生蒸気のエンタルピと給水温度におけるエンタルピの差に応じた熱量を水及び蒸気に吸収させる必要があります。したがって,同じ蒸発量でも,条件により蒸気発生までの吸収熱量に差が生じるので,一定の条件

Skip

蒸気の発生に要する熱量は,蒸気の圧力,温度及び給水の温度によって異なるので,ボイラーの容量を換算蒸発量によって示す場合がある

ポイントポイント 2

Page 4: 1.1 ボイラーの概要 - jbanet.or.jp · 12 13 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,,ボイ

●1.1 ボイラーの概要

14 15

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

2.1

2.2

2.3

2.4

3.1

3.2

3.3

の基準状態に合わせて計算したものが換算蒸発量です。エンタルピとは,物質のもっている熱量(エネルギー)のことで,単位質量当たりのエンタルピを比エンタルピといいます。詳しくは,「1.5.1 基礎事項」を参照してください。

換算蒸発量は,発生蒸気や給水の条件によらず,発生蒸気と給水のエンタルピ差を一定の基準に合わせているため,実際に発生した蒸発量を換算蒸発量に換算することにより,ボイラーの発生熱量の大きさが算出できます。

Skip

換算蒸発量は,実際に給水から所要蒸気を発生させるのに要した熱量を,基準状態の熱量に換算して求めたものである

ポイントポイント 3

ボイラー効率は,ボイラーに与えた熱量のうち,どれだけ有効に蒸気の発生や温水の製造に働いているかを示す指数です。したがって,与えた熱を有効に利用するため,ボイラー効率を常に把握して,高い効率で運転するよ

う心がけなければなりません。

ボイラー効率2

換算蒸発量は相当蒸発量ともいい,上式の 2,257 は 1.5.1項で学習する標準大気圧での100℃の飽和水から飽和蒸気にするための蒸発熱(潜熱)のことです。したがって,換算蒸発量とは,実際の蒸発量を標準大気圧の飽和水から飽和蒸気に蒸発させる量に換算したものです。

Skip

換算蒸発量Ge [kg/h]は,Gを実際蒸発量[kg/h],h1,h2 をそれぞれ給水及び発生蒸気の比エンタルピ[kJ/kg]とすると次の式で求められる

Ge=G(h2-h1)2,257

ポイントポイント 4

一般に,燃料が燃焼して発生した熱がボイラーに供給する熱量となります。その供給された熱量のうち,どの程度,蒸気の発生に寄与しているかを示すのが,ボイラー効率です。

Skip

ボイラー効率とは,全供給熱量に対する発生蒸気の吸収熱量の割合をいう

ポイントポイント 5

Page 5: 1.1 ボイラーの概要 - jbanet.or.jp · 12 13 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,,ボイ

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2.1 ボイラーの運転操作2.1.1 ボイラー取扱いの基本事項ボイラーの取扱いとは,燃焼室内で燃料を燃焼させて熱を発生させ,これを内部の水に伝えて蒸気

や温水をつくることです。このため,燃焼に伴う炉内ガスの爆発の危険や,高圧によるボイラーの破裂の危険が常に潜んでいます。これらの危険を排除するためには,ボイラーの正しい操作と日常の点検と保守が何より大切であることを忘れてはいけません。ボイラーの取扱いに当たっては,常に次の3点を意識しておく必要があります。1 ボイラーを正しく取扱い,災害を未然に防ぐ。2 燃料を完全に燃焼させ,燃料の経済的な使用を図るとともに,排出ガスによる大気汚染などの公害を防ぐ。

3 ボイラーの寿命を長く保つための予防保全を行う。

新設されたボイラーを初めて使用する場合,または修繕,分解整備,掃除などのため,しばらく使用を中断していたボイラーを再び使用する場合には,ボイラー本体はもちろん,炉・煙道の内部,水面計や圧力計などの附属品の整備状況,自動制御装置の整備状況や給水ポンプなどの附属設備について,使用開始前の準備を確実に行うことが安全な運転のために必要です。

水面が正常な水位より下がっていると,低水位事故を起こすおそれがあります。ボイラー本体と水面計の間にある配管や弁などに詰まりがあると,水面計が水位を正しく表示しま

せん。事故を防止するために,点火前に各部の弁・コックの状態を確認しなければいけません。

低水位事故防止1

点火前の点検で特に注意することは,低水位事故(空だき)の防止と炉内爆発の防止です。そのために,以下について確認した後でなければ運転してはいけません。

2.1 ボイラーの運転操作

2.1.2 使用開始前の準備

2.1.3 点火前の点検,準備

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1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

2.1

2.2

2.3

2.4

3.1

3.2

3.3

弁の開閉状態  閉状態  開状態

常用水位

安全低水面安全低水面

煙管

ボイラー水

ボイラー本体

圧力計

炉筒

吹出し

吹出し装置が正常に作動できることを確認する

吹出しコック「閉」

圧力計コック「開」

吹出し弁「閉」

給水ポンプ

水面

水面計廻りの弁・コックは「開」

最初は「開」、蒸気が発生し始めたら「閉」

最初は「閉」、圧力が上がったら「開」

圧力計コックは「開」とする

Ⓐ Ⓐ

蒸気

主蒸気弁「閉」

空気抜き弁「開」

水面計

弁コック開

コック開コック

「開」

「開」水 柱 管

■ 図 2.1.1 点火前の弁・コックの開閉状態

a 水面計とボイラーの間の連絡管の弁(Ⓐ),コック(Ⓐ)は「開」とする水面計の弁やコックが閉止していると,ボイラー水が減っても水面計が正常の水位を示してい

るため,異常と認識されません。その結果,給水が行われず,低水位になって「空だき」事故の発生のおそれがあります。

b 水位が常用水位(ボイラーの運転中に保つべき水位)より低い場合は,水の補給を行うボイラーの水位は,必ず常用水位まで給水します。これは,起動時に起こる水位変動によって,

水位が異常低下を起こし,ボイラーが停止することを防止するためです。常用水位より低い場合は,水を補給します。

c 水位が常用水位より高い場合は,水位を下げるボイラーの水位が常用水位より高い場合は,吹出しを行って常用水位まで水位を下げます。水位

が高いまま起動すると,ボイラーから出ていく蒸気の中にボイラー水が混入する「プライミング(水気立ち)」を起こすおそれがあるためです。

Skip

低水位事故を防止するために点火前に各弁の確認をしなければならないⓐ 水面計とボイラーの間の連絡管の弁(Ⓐ),コック(Ⓐ)は「開」とするⓑ 水位が常用水位(ボイラーの運転中に保つべき水位)より低い場合は,水の補給を行うⓒ 水位が常用水位より高い場合は,水位を下げるⓓ 吹出し装置が正常に作動できることを確認し,「閉」とする(Ⓑ)ⓔ 空気抜き弁は,点火前で圧力のない時は「開」,その後「閉」とする(Ⓒ)ⓕ 主蒸気止め弁は「閉」とする(Ⓓ)ⓖ 圧力計コックは「開」とする(Ⓔ)

ポイントポイント 1

Page 7: 1.1 ボイラーの概要 - jbanet.or.jp · 12 13 1.1 ボイラーの概要 1.1.1 ボイラーの構成 ボイラーは,一般に燃料を燃焼して容器内の水を加熱し,蒸気または温水を作る装置で,,ボイ

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ボイラーの火炉の中に燃えずに残っている燃料があると,燃料から気化した未燃ガスが炉内に滞留し,点火した瞬間に爆発する可能性があります。炉内爆発により,人身事故や機器の破損を引き起こします。このため,十分な換気が必要です。

炉内爆発防止2

d 吹出し装置が正常に作動することを確認し,「閉」とする(Ⓑ)運転に入る前に,吹出し弁と吹出しコックを開閉して,ボイラー水が排出できることを確認しま

す。ボイラー水が排出されない場合は,「詰まり」があります。また,吹出し弁と吹出しコックを閉めた時に「漏れ」がないことも確認します。「漏れ」がある場

合は,運転中にボイラー水がなくなるおそれがあります。確認後,ボイラー水が漏れて水位が低下しないように,吹出し弁と吹出しコックを完全に「閉」に

します。e 空気抜き弁は,点火前で圧力のない時は「開」,その後「閉」とする(Ⓒ)

やかんの中の水を加熱すると,初めに水の中に溶けていた空気が泡となって出てくるように,ボイラーの場合も同様に,ボイラー水の温度の上昇によって空気が発生します。そこでその空気を排出するため,最初は空気抜き弁を「開」とします。そのあと蒸気が発生し始めたら「閉」にします。

f 主蒸気止め弁は「閉」とする(Ⓓ)ボイラーの圧力を上げるため,最初は「閉」とし,ボイラーの圧力が規定圧力に達したなら「開」に

して,蒸気を送り始めます。g 圧力計コックは「開」とする(Ⓔ)

ボイラーの圧力を確認するため,圧力計コックは「開」にしておきます。

ボイラーの起動時の炉内爆発を防止するには,以下の方法により十分な換気が必要です。・煙道内(B)のダンパを全開にする。・次に,ファンを運転して換気を行い,炉内に残っている未燃ガスを追い出す。

Skip

点火前に燃焼室及び煙道の内部を十分に換気しなければならない主な理由は,「ガス爆発を防止するため」である

ポイントポイント 2

燃料ポンプ

空気

バーナ

ファン

ボイラー 煙突ファンを運転して

空気で炉内の未燃ガスを追い出す

ダンパ(B)全開

ダンパ(A)(全閉) ↓(全開)

F

P

煙道

■ 図 2.1.2 点火前の換気

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1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

2.1

2.2

2.3

2.4

3.1

3.2

3.3

2.1.3公表問題を解いてみよう

解答③

ボイラーをたき始める時の各種弁・コックの開閉状態は,常識的に考えればある程度理解できますが,空気抜き弁の操作については,初めは「開」,蒸気が出始めると「閉」とすることに注意して下さい。

問題を解く上で注意すること

公表問題

1出題率

ボイラーをたき始めるときの各種の弁,コックの開閉について,誤っているものは次のうちどれか。 ポイント 1① 主蒸気止め弁.................................................................................................閉② 水面計とボイラー間の連絡管の弁,コック ..................................................開③ 胴の空気抜き弁 .............................................................................................閉④ 吹出し弁,吹出しコック .................................................................................閉⑤ 圧力計のコック ..............................................................................................開

解答④

炉内爆発事故の防止のために,換気が必要なことを理解しましょう。

問題を解く上で注意すること

公表問題

2出題率

点火前に燃焼室及び煙道の内部を十分に換気をしなければならない主な理由として,正しいものは次のうちどれか。 ポイント 2① 燃料の着火をよくするため② 高い空気比で燃焼させるため③ 煙道を乾燥し,通風をよくするため④ ガス爆発を防止するため⑤ 通風力を点検するため

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266 267

3.1 燃料3.1.1 燃料概論

燃料組成の分析に当たっては通常,液体・固体燃料の場合は元素分析,気体燃料の場合は成分分析を行います。なお,石炭などの固体燃料の場合は工業分析を行います。

燃料の分析1

液体・固体燃料では,元素の成分の質量(%)でその組成が示されます。この元素分析とは,燃料の組成である炭素(C),水素(H),窒素(N)及び硫黄(S)を測定し,100 からそれらの成分を差し引いた値を酸素(O)として扱う分析方法で,質量(%)で表します。

Skip

液体・固体燃料の日本工業規格による元素分析の成分の組合せは「炭素,水素,酸素,窒素,硫黄」である

ポイントポイント 1

気体燃料は,メタン(CH4)エタン(C2H6)等の成分と二酸化炭素(CO2),酸素(O2),窒素(N2)などから構成され,その成分分析はメタン,エタン等の含有成分を測定するもので,体積(%)で表します。

Skip

気体燃料の成分分析は,メタン,エタン等の含有成分で表される

ポイントポイント 2

固定炭素(%)

水分(%)

揮発分(%)

灰分(%)

■ 図 3.1.1石炭分析における諸成分

上記の内容を式にすると以下のとおりになります。      100-{水分(%)+灰分(%)+ 揮発分(%)}=固定炭素(%)

Skip

燃料の工業分析は,固体燃料を気乾試料として,水分,灰分及び揮発分を測定し,残りを固定炭素として質量%で表す

ポイントポイント 3

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1.6

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2.1

2.2

2.3

2.4

3.1

3.2

3.3

着火温度2

石炭などの固体燃料の組成分析には,工業分析がよく用いられます。この工業分析とは, 固体燃料を気乾試料※として水分,灰分及び揮発分を測定し,残りを固定炭素として,質量(%)で表します。※気乾試料とは,固体燃料の水分が概ね試験室で平衡に達するまで乾燥させたものをいいます。

着火温度は,燃料が加熱されて酸化反応によって発生する熱量と外気に放散する熱量との平衡によって決まり,燃料の周囲の条件によって変わる

ポイントポイント 4

着火温度とは,燃料が火炎等の点火源なしに燃え始める最低の温度をいいます。Skip

着火温度は,液体燃料を空気中で加熱すると,温度が徐々に上昇し,他から点火しないでも自然に燃え始める最低の温度をいう

ポイントポイント 5

引火点3

液体燃料を空気中で加熱すると,温度を上昇させながら表面から可燃性の蒸気を発生させます。これに小火炎を近づけたとき,光を放って瞬間的に燃え始めるときの最低の温度を引火点といいます。

Skip

引火点は,燃料が加熱されると蒸気を発生し,これに小火炎を近づけると瞬間的に燃え始めることで,この「光を放って燃える最低の温度」をいう

ポイントポイント 6

火を近づけると瞬間的に燃え始める

引火温度

油油 温度計

■ 図 3.1.2 引火点

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●3.1 燃料

268 269

発熱量4

未燃分があると発熱量は変わってしまいます。このため,燃料の発熱量を知るためには,完全燃焼させることが条件となります。

Skip

発熱量とは,燃料を完全燃焼させたときに発生する熱量をいう

ポイントポイント 7

発熱量は,燃料の単位量当たりの熱量MJ(メガジュール)で表示されます。燃料の単位量には液体・固体燃料では[kg]が使われ,気体燃料では[m3N]が使われます。[m3N]は“ノルマル立方メートル”と呼び,標準状態(温度0℃(273K),圧力 0.1013MPa(標準大気圧)の状態をいう)での体積をいいます。

Skip

発熱量の単位は液体または固体燃料では[MJ/kg],気体燃料では[MJ/m3N]により表す

ポイントポイント 8

発熱量には同一燃料につき高発熱量と低発熱量の二通りの表し方がある

ポイントポイント 9

高発熱量は,水蒸気の潜熱を含んだ発熱量で,総発熱量ともいわれる

ポイントポイント 10

燃料中に含まれる水素が燃焼した時に水蒸気が発生しますが,水蒸気が発生するときの蒸発潜熱は燃料の発熱量から受け取ります。ボイラー等の装置で燃料を燃焼させた時に,装置の出口でこの水蒸気が蒸気のまま排出されるか,潜熱を放出して凝縮して水に戻るかは,装置出口の排ガス温度によります。このように,装置出口における水蒸気の状態により利用できる熱量に違いがあるため,発熱量は高発熱量と低発熱量の二通りの方法で表現されています。高発熱量とは,この水蒸気が凝縮して水に戻る時の凝縮熱(潜熱)を含んだ発熱量のことをいい,総発熱量ともいいます。

Skip

低発熱量とは,高発熱量から水蒸気の潜熱を差し引いた熱量で真発熱量ともいわれる

ポイントポイント 11

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350 351

4.1 ボイラーの定義、用語等4.1.1 ボイラーの定義

ボイラーには「蒸気ボイラー」と「温水ボイラー」とがあります。ボイラーは次の三つの要件を満足するものをいいます。 (ⅰ)熱源が火気,高温ガス又は電気であること。 (ⅱ)水又は熱媒を加熱して大気圧を超える圧力の蒸気(又は温水)を作る装置であること。 (ⅲ)作った蒸気(又は温水)を他に供給する装置であること。

ボイラーの定義1

1 簡易ボイラー 小さなボイラーで,危険性が低いことから「ボ則」は適用されない。

2 小型ボイラー「ボ則」を適用するが,相対的には小型であるので,大部分を適用除外しているボイラー。(本書の 4.2 ~ 4.5 に記載したボ則の規定は,小型ボイラーには適用されません。)

3 ボイラー

「ボ則」がすべて適用される。このうち,小規模ボイラーはボイラー取扱の資格が緩和されている。(ボイラー技士免許を持っていなくてもボイラー取扱技能講習を修了した者であれば取扱いができる。)

※4.4.1ボイラー取扱の就業制限参照

■ 表 4.1.1 ボイラーの区分

ボイラーの種類,大きさ及び圧力によって「ボ則」が適用される範囲が決まります。ボイラーの危険性はボイラーの種類,大きさ及び圧力により異なります。「ボ則」はボイラーの安全確保のための規則なので,危険性が高いものほど厳しい規制となっており,実施すべき事項が多くなっています。ボイラーは次のように区分されます。

ボイラーの区分 ボ則1,令12

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●4.1 ボイラーの定義、用語等

352 353

水管ボイラーの胴(ドラム)の面積は,伝熱面積に算入しない

ポイントポイント 3

ボイラー水

火室

横管(水管)煙管

火室

■ 図 4.1.1 立て煙管ボイラー(多管式)■ 図 4.1.2 立てボイラー(横管式)

B. 貫流ボイラー以外の水管ボイラーの場合水管ボイラー(貫流ボイラー以外)の伝熱面積は,水管及び管寄せの次の面積の合計と

します。1 水管又は管寄せの全部又は一部が燃焼ガス等に触れる面の面積2 ひれ付き水管のひれの部分は,その面積に一定の係数を乗じた面積3 耐火れんがによっておおわれた水管では,管の外周の壁面に対する投影面積

燃焼ガス(火炉)

耐火材水管

■ 図 4.1.3 一部が燃焼ガスに触れる水管

耐火材

燃焼ガス(火炉)

伝熱面積

投影面を伝熱面積とする

水管

■ 図 4.1.4 耐火れんがに覆われた水管

水管ボイラーの耐火れんがでおおわれた水管の面積は,伝熱面積に算入する

ポイントポイント 2

図示すると下図の赤線部分が伝熱面積となります。水管ボイラーの場合,水管の外側が燃焼ガスに触れるので,伝熱面積は水管の外側で算定します。

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●4.1 ボイラーの定義、用語等

352 353

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

2.1

2.2

2.3

2.4

3.1

3.2

3.3

4.1〜4.4

4.5

空気予熱器,過熱器,気水分離器は伝熱面積に算入しない

ポイントポイント 4

C. 貫流ボイラーの場合貫流ボイラーの伝熱面積は,燃焼室入口から過熱器入口までの水管の燃焼ガス等に触

れる面の面積の合計です。

貫流ボイラーの過熱管の面積は伝熱面積に算入しない

ポイントポイント 5

伝熱面積に入れない 排ガス

過熱管過熱器入口過熱蒸気

気水混合体 気水分離器

給水

燃焼ガス燃焼室入口

バーナ

蒸発管

伝熱面積(水管の外径)

■ 図 4.1.5 貫流ボイラーの伝熱面

D. 電気ボイラーの場合電気ボイラーは電熱によって加熱するボイラーで,このボイラーの伝熱面積は電力設備

容量 20kWを1m2とみなして計算します。

電力設備容量が 200kWの場合,200÷20=10,つまり10m2 となります。

電気ボイラーの伝熱面積は,電力設備容量 20kWを1m2とみなして,その最大電力設備容量を換算した面積で算定する

ポイントポイント 6