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-20 12-職業へのイメージ向上 12-賞とブラックリスト 100,000 1 -

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レポート④ 安全防護装備の着用

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12-6 職業へのイメージ向上 スイスでは、林業従事者は誇り高い職業で、彼らは良い教育を受け、自然とつながっている。日本ではそうではなく、この職業は、森林を産業とみなす作業者で多数占められているように見える。それゆえに、林業従事者が人々から大事にされず、価値を認められてないのではないだろうか。 森づくりに関しての考えの変化が起きなければならないが、それは服装からも起こる。服装は、大きな部分を構成する。きちんとした安全防護装備を身につけていると、専門的に見えるだけでなく、作業者の身を守ってくれる。 適切な服装を着用することで、林業従事者の評価は再び上がり、誇りを取り戻すであろう。そのためには、現在の林業従事者が、素晴らしい、自然とつながった現場人として深められるように、教育がもっと良くならなければならない。変化には何年かかかるだろうが、しかし、できるようになる。 さらなる発展は、そういった教育を受けた林業従事者が、学校で子どもたちに森のことや森の機能を話すのである。子ども達は、我々の未来であるからこそ、私たちは森とその機能なしには生きていけないということを、早くから明白にしておかなければならない。その際、森で働くというのは最高の仕事だと少しぐらい自慢しても良いのではないだろうか。

12-7 賞とブラックリスト 次のアイデアは、奈良県で働くすべての林業事業体に賞を創設することだ。この賞は、新しい年の始まりに、例えば 100,000円ずつすべての林業事業体から拠出をしてもらう。1年の間に各地の森林組合等を通じて、検査官が様々な林業事業体の現場を検査するために訪れる。チェックシートを使って検査官は現場を評価する。年の終わりに、最も優秀だった事業体はトロフィーと賞金を受け取ることができ、地元メディアなどに掲載される。このことで、さらに安全に配慮し、従業員に安全防護装備の着用を促すために、雇用主を激励できるであろう。 その反対に、もっとも悪い事業体はブラックリストに載せ、何らかの形で公表するという提案もある。誰も喜んでブラックリストに載りたくはないし、すべての事業者に対して、安全を保障するために従業員に安全防護装備を着用させるような努力を促せるであろう。 この措置が実行されるまでには、いくつかのステップを踏まなければならず、確立するまでには時間もかかるであろう。12-4に示したような、専門的に検査し、また中立的に判定できるような専門の人材が育成されなければならない。

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レポート④ 安全防護装備の着用

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12-8 プロモーション(PR) 大規模な皆伐、一斉林の植林、しばしば事業の将来への見通しの不透明さなどを通じて、林業分野へのイメージはあまり良いとは言えない。林業従事者は、森と生態系をよく理解するために、森林業に関するさらに少し良い教育を受けるべきである。教育が改善されれば、林業従事者の考えの変化がゆっくりと始まる。そうすることで森林林業はもっといい印象になっていくであろう。 十津川村での林業従事者へのインタビューでは、給料が安く、危険な仕事なので、若者で林業につきたい人がますます減っているという声を聞いた。この専門分野において、林業従事者は、素晴らしい装備で、雑誌やソーシャルメディアの動画等でも多くの広告が見られるように、もっと宣伝をしなければならない。そういった措置を通じて、もっと多くの若者が林業に対して興味を持つようになるかもしれない。 日本では、例えば、地域や街や建物などにおいて、様々なキャラクターが存在している。森林業のマスコットはまだないようなので(訳者注:秋田県のスギッチがこれに該当すると考えられるが、本年 11月に引退予定)、何か新しいものを創造できるのではないだろうか。それは、動物か樹木で、何か特別な名前を持つと良いかもしれない。例えば、安全防護装備を全身にまとったオオカミなど(図 13は一つの例である)。そうして、子どもたちにもまた林業従事者はかっこいいと思わせる影響を与えるかもしれない。 事業体が、事業体の名前が入ったお揃いの蛍光色 Tシャツを作成するなども考えられる。仕事用のシャツとして作業時の安全に寄与し、さらに雇用主は事業体の宣伝までできる。

図 13:PRの手段として、たとえばイメージキャラクターは?

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レポート④ 安全防護装備の着用

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12-9 安全防護装備の改良 改良の必要性: 現在の安全防護装備は、作業を行う上で日本人の身体には負担が大きい。村の林業従事者以外にも、専門店の店主や安全防護装備の製造者に聞き取りを行ったところ、多くの安全防護装備は、夏は暑すぎて脱水症状を起こす恐れもあると認めている。 しかし、防護装備が重すぎるというのは、着用しない理由としてしばしば誇張される可能性もある。服の形状も着用率が上がらない理由のひとつである。日本製のものが普及しはじめてまだ数年ほどであり、改良の余地も多いため着用率がなかなか上がらないのも理解できる。日本人は日本製を欲しているし、国産製品の製造者は、継続的に改良と試行を繰り返しているところだ。 筆者個人も部分的にその過程に参加する機会を得て、使い心地を試すために、何種類かの国産のチェンソー防護ズボン、防護靴、作業手袋を八戸市森林組合の工藤義治氏から提供いただいた。2日間実際の作業現場でそれらを使用してみて、確かに、これらを着用して働くのは暑すぎると感じた。型と色の改良が必要で、デザインも洗練もされると、より魅力的な製品になっていくことが考えられる。 奈良の夏の暑さは筆者には耐え難いレベルで、防護服を着たくないという人々の気持ちは理解できる。だからこそ、より軽くて通気性の高い新しい製品の開発が急がれるであろう。 安全防護装備が受け入れられるために、重要なことは、着心地、見た目、そして、適用可能性である。

靴: 地下足袋は、靴底にスパイクが付いていて、多くの事故の原因でもある滑落を防いでくれる。夏は非常に快適であるが、反対に冬はすぐに足が冷たくなってしまう。トレッキングシューズのほうが冬は足を温かく保ってくれる。

作業用具入れ: 日本人が使っている現在の携帯用作業道具入れは、大きすぎる上に、チェンソー用のオイルと混合燃料を携行している例をいくつか見た。コンパクトな作業道具入れに変更して、さらに救急セットを持ち歩いたほうが良い。燃料等はいつもぶら下げておかなくてもよいように、携行缶などで作業場に置いておく。そうすれば仕事を身軽にでき、重さを節約できる。すなわち、その重さの分だけチェンソー防護ズボンの重さに転化できるだろう。 図 14に示した作業道具入れ(ドイツ製)は、多くの欧州製品に非常に興味を持ち、多くの投資をしている村内の事業者が使用していた。ハンドル式のくさびや、ロガーテープも一緒に携行することができ、肩掛けベルトにより腰への負担も軽減される。

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レポート④ 安全防護装備の着用

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図 14:村内の事業者が使用していたドイツ製の作業ベルト(筆者撮影)

ヘッドセット: 作業を楽にし、作業員の安全のために、防音イヤーマフが備えられたヘッドセットが使われるとさらに良い。非常に高額ではあるが、その分安全性は非常に高まり、しかも作業員同士が見えなくてもコンタクトを取り合うことが可能となる。

図 15:防音装備付きヘッドセットの例(ファナー社、スターコム社)

救急通報カード: とりわけ大事なことは、緊急通報カードを全ての作業員が携行することである。事故の際に、即座に次の行動を起こし、緊急時の電話番号を正確に選んでかけられるように、緊急通報カードは、対応しなければならない状況をシンプルにしてくれる。

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レポート④ 安全防護装備の着用

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表 4:緊急通報カードの例(筆者作成) 緊急の場合には/ emergency card 緊急通報 110 emergency call 救急車 119 ambulance 消防 119 fire Department 警察 110 police 医師 Ohara 225 -1 0746-63-0040 doctor 病院 Nohara nishi 5-2-59 0747-22-1112 hospital 地名 Senishi gawa Totsukawa place name 座標 N XXXXX, E XXXXX coordinates Mポイント 救急車との待合場所 Route 425 No.500 Meeting point with rescuer 近親者の電話番号 XXXX-XX-XXXX Phone number of a close relative 防護ズボンの通気性: 土木建設工事現場では、夏場、作業着の内部に空気が送り込まれるように、小型ファン機が埋め込まれた上着が使用されていることがある。このような機械をチェンソー防護ズボンに取り付けて夏場の通気性向上を改善するのはどうだろうか。ファンは既存のジャケットについているものよりも、さらに小型のものにしなければならない。加えて、膝の横に、通風用のスリットをいれても良いであろう。ただし、それらの機能を付ける位置は、相互方向からの損傷を避けるために、左右同じ高さにしてはいけない。

図 16:上着に取り付けられた小型ファン(左)防護ズボンにファンを取り付ける位置(右)

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13.評定 日本の現況およびその取り巻く環境を鑑みて、各項目の実行可能度合いについて評定を行った。

表 5:個人用防護装備普及のための改善項目の評定表 項目 実行可能度 コミュニケーション 10 公共発注業務での義務化 9 プロモーション(PR) 9 安全防護装備の改良 8 教育 7 監理スペシャリストの育成 6 賞とブラックリスト 5 職業へのイメージ向上 4 保険の改善 2 注)10が最も実行しやすく、1が最も実行が困難 労災保険は市町村や県の行政が及ぶ範囲ではないが、保険料に関しての提案などを継続的に行っていくことはできるかもしれない。 林業従事者の誇りを示すためには、何段階かの準備が必要である。まずはすべての重要なテーマを網羅した良い基礎教育を整備しなければならない。これは大きなプロセスになるので実際に実行されるまでには時間がかかる。 賞与とブラックリストについては、ほとんどの事業主が難色を示すことが想像できる。なぜなら誰もお金を出したくないし、ブラックリストに載るかもしれない不安があるからだ。これは、奈良県から義務付けを行うべきだ。これに参加しないと今後の事業(公共事業)への参加が許されないとする。これは非常に長い構造改革の結果叶うことで、近年中に実行されるのは想像が難しい。 監理スペシャリストを養成するためには、知識を提供するまた別の専門家が必要になってくる。このための人材は国内だけではなく、広く外国に目を向ける方法もあるであろう。 数年内に奈良県が創設を予定している教育体系によって、この職業をより魅力的に形成することができるかもしれない。多くの専門分野から実践的経験を積んだ人々を招聘し、すべての分野を扱わなければならない。その専門分野というのは例えば以下のようなものが候補になる(リース林業教育センター、2017):

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・ 森づくり ・ 樹木学 ・ 生態学 ・ 植物生物学 ・ 林業技術 ・ 森林保全 ・ 環境学 ・ 森林土木 ・ 安全衛生、安全防護装備

安全防護装備の改良は進行中ではあるが、詳細まで実行されて林業従事者が満足するようなものに至るには、まだ何年か必要となるであろう。欧州のモデルをベースにしながらも、改良を追求して常に新しいものに挑戦されることを期待したい。しかし、安全防護装備の改良だけでは、林業従事者が夏場にも着用するようになるわけではないであろう。そこで加えて何かを実行することが大事なのだ。 安全防護装備の PRは、最も必要な中山間地域で不足している。例えば、道の近くに看板を立てる、身近な広報誌に写真を載せる、ソーデャルメディアの活用。地下足袋や作業手袋だけを売っていたような小売店で安全防護装備の商品ラインナップを揃えてみる、もしくは少なくともカタログ上でもっと選択肢が増えるようにするなどの方法が考えられる。 公共発注業務での義務化について、仕様書に明記する形で一つのモデルとすることは実行可能であろう。県はまず安全防護装備とその機能について代表して発言できるようになることと、県内の市町村とも連携をとって全県をあげて推進できることが望ましい。 コミュニケーションをとることについては、もっとも簡単で、もっとも少ない変更で実行できるであろう。11-2および12-2で解説した内容が、関係する全ての人々の間で同時に行われなければならない。林業従事者は全ての重要な情報を受け取らなければならない。 ここに示した措置はすべて実行できる。安全防護装備を通じてさらに安全性を高めるためには、それに要する時間と、何よりも、立法・行政・そして事業者の意志が根底にある。

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14.実施スケジュール 表 6:個人用防護装備普及のための改善スケジュール案

1 コミュニケーションの改善

2 安全防護装備の宣伝をはっきりと、そして集中的におこなう

3 公共事業仕様書に安全防護装備の装用を義務付けるように改定を行う

4 安全防護装備の改善

5 森林作業員のための教育

6 監理スペシャリストの育成

7 賞与とブラックリストを開始 8 安全防護装備が森林作業員に誇りをもたらす

9 事故発生数に応じた保険負担料の改定(働きかけ)

15.総括

15-1 結果 本レポートは、奈良県と十津川村、森林組合そして林業事業体にとっての手引書として、また、これから得ようとする未来の措置への参考資料とアイデア集として活用していただきたい。 様々な改善による変化は何年にも渡って起きることであり、本研究における結果をいますぐに見ることは叶わない。このため、筆者はここでは将来の安全防護装備の着用についての最終結果を示すことはできないが、「4目標設定」で示した目標は、達成され、幾重もの解説と提示によって、林業従事者の安全防護装備の理解を深めることができた。

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15-2 問題の提示 全く新しい環境で、馴染みのない外国において、本レポートの執筆を通じて生じた様々な課題をここで少し詳しく説明したい(訳注:2年後に再度リース校より実習生を招聘することを想定した改善事項の提示)。

15-2-1 言語の壁 筆者自身、日本語が使えないため、我々2人のスイス人(十津川班)には実習中 2名の英語通訳者が付いてくれた。筆者自身今まで聞いたことがないような英語の専門用語に遭遇したにもかかわらず、時間の経過とともに会話はうまく成立するようになった。しかし、すべての質問と答えを毎回翻訳するのにはかなりの時間を浪費せざるを得なかった。 議論は容易ではなかった。質問や疑問に対する答えが不確実であったり、本当に必要としている情報ではなかったりすることもしばしばあった。

15-2-2 基本的な情報 法律や保険、安全防護装備のガイドラインなどの基本情報はスイスでは非常に詳細にわたってかつ分かりやすく作られており、さらにいつでも簡単に閲覧することができる。この実習では、多くの努力と時間を費やした末、やっと必要な資料にたどり着けることもあった。ここでの問題は、同じテーマに関する多くのあらゆる情報を受けとると、さらなる調査を通じて、何が正しくて何が間違っているのかを探し出さなければならなかったことだ。

15-2-3 スケジュール 実習の初期は、世話役によってかなり綿密な予定が組まれていた。奈良県と十津川村が、スイスから可能な限り多くを学びたいと企画されているプロジェクトであることから、このことは理解できる。必要なインタビューや専門店訪問の時間を取ることができたのは、実習の中盤以降になってからであった(訳注:もう少しスケジュールに余裕を持てればベターであった)。

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16.個人的見解 リース林業教育センターに対して、日本で卒業実習を修了する機会をいただけたことを本当に感謝している。十津川村の林業従事者が安全防護装備に対してどのような理解を持っているかを肌で感じることができた。同時に、スイスでは、林業分野において素晴らしい教育機会と、非常に高い安全基準を持っていることを改めて理解した。 卒業レポートの執筆は個人的に大きな挑戦ではあったが、非常に興味深く学ぶものが多かった。湿度が高く暑い気候に、知らない言語、馴染みのない文化に、異なる仕事環境など、新しいことに徹底的に取り組むことになった。安全防護装備の分野においてどのような可能性が合理的に実施できるかを見つけ出すために、ここの状況に合わせ、人々の立場になって考えてきた。 アイデアと提案は部分的には、目下のところ直ぐには聞き入れてもらえないかもしれない。日本人は非常にしきたりとの結びつきが深い。筆者は、寛容さを持ち、根気よく、その上で自身の関心事を問いかけようと思考錯誤した。そのためここに示したスケジュールは 10年先を見越して作成した。変化が理解と同意を伴って進むために。 この先何年間で、ここで提案したこと以上の変化が生まれ、そうして事故率が下がり、山林作業における喜びと林業分野におけるイメージが向上することを願っている。 非常に豊富な経験と素晴らしい十津川村での 8週間を経て、また、ここにまとめた解決策の提案を実行するにあたって何か貢献できることがあるならば、もう一度ここに訪れたいと希望している。

17.参考文献 ・ Anon., kein Datum Animals Adda. [Online] Available at: http://animalsadda.com/asian-giant-hornet/

[Zugriff am 13 Juli 2017]. ・ Beratungsstelle für Unfallverhütung in der Landwirtschaft (BUL), kein Datum Persönliche Schutzausrüstung. [Online]

Available at:

https://www.bul.ch/de/fachthemen/holzernte-und-brennholzverarbeitung/persoenliche

-schutzausruestung.html

[Zugriff am 7 Juli 2017]. ・ Ferreri, J., 2017. [Interview] (Juli 2017). ・ Forest owners cooperative, 2017. Summary of the program for the improvement of Safety in the Forest industry - nourinchuokin bank, Totsukawa: s.n.

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・ Forestry Agency, 2017. Forestry labor accidental prevention related statistical data, s.l.: s.n. ・ justice, M. o., 2014. Japanese Constitution Ordinance 27 on "Law structure on the

safety at work". 2 Hrsg. Tokio: Cooperative for the prevention of labor accidents in the

wood manufacturing industry and in the forest industry director. ・ KOX, 2017. Pflegetipps für Ihre persönliche Schutzausrüstung. [Online] Available at: https://www.kox24.ch/Pflege-Schutzausr%C3%BCstung

[Zugriff am 10 Juli 2017]. ・ maps, g., 2017. Google maps. [Online] Available at: https://www.ecosia.org/maps?q=japan+pr%C3%A4fektur+Nara+karte

[Zugriff am 17 Juli 2017]. ・ Schwarb, L., 2017. s.l.:s.n. ・ Soma, Y., 2017. [Interview] (Juli 2017). ・ SUVA, 2017. Persönliche Schutzausrüstung (PSA) - Rechtliche Grundlagen. [Online] Available at:

https://www.suva.ch/de-ch/praevention/sachthemen/persoenliche-schutzausruestung#

uxlibrary-material=4910a130feb443d6ad1b8682b96f762c&uxlibrary-open=/de-CH?at

omid=4910a130feb443d6ad1b8682b96f762c%26showContainer=1

[Zugriff am 7 Juli 2017]. ・ SUVA, 2017. Pflege und Unterhalt der PSA. [Online] Available at:

https://www.suva.ch/de-ch/praevention/sachthemen/persoenliche-schutzausruestung?

utm_medium=redirect&utm_source=website-alt&utm_campaign=migration_redirect

[Zugriff am 10 Juli 2017]. ・ SUVA, 2017. Sicherheits - Charta. [Online] Available at: http://www.sicherheits-charta.ch/

[Zugriff am 7 Juli 2017]. ・ translation, J. l., 2015. Japanese law translation Chapter 8 Prevention of Danger in tree felling activities. [Online]

Available at:

http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?id=1984&vm=04&re=01

[Zugriff am 13 Juli 2017]. ・ Wikipedia, 2017. Japan. [Online]

Available at: https://de.wikipedia.org/wiki/Japan

[Zugriff am 7 Juli 2017].

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18.資料 ・ 資料1:林業関係者へのインタビュー記録(筆者作成) ・ 資料2:個人用防護装備のチェックリスト(SUVA, 2008)

資料1:林業関係者へのインタビュー記録(筆者作成) インタビュー対象者: ①村内林業事業体 Aの事業主(32歳) ② 従業員 A(60 歳) ③ 従業員 B(28 歳) ④村内林業事業体 Bの事業主(54歳) ⑤ 従業員 C(28 歳) ⑥ 従業員 D(45 歳) ⑦ 従業員 E(46 歳) ⑧県内の林業用具販売店代表(35歳) ⑨防護装備開発担当者(県外森林組合、42 歳) ⑩県林務職員 A(40 歳) ⑪県林務職員 B(51 歳) 質問1:あなたは何年森で働いていますか? 0〜5年:⑤ 5〜10年:③⑥ 10〜15年:⑦ 15〜20年:① 20〜25年:

25〜30年:

30〜35年:

35〜40年:④ 40〜45年:② 質問2:あなたはこれまで何回事故を経験しましたか? 0回:③⑦ 5回以下:①②④⑤⑥

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レポート④ 安全防護装備の着用

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質問3:あなたはガイドラインに則って安全防護装備を着用しなければならないことを知っていますか? はい:①②③④⑤⑥⑦ いいえ:

質問4:なぜ規定の安全防護装備を着用しないのですか? 夏場は暑すぎるから:①②④⑥⑦⑪ 価格が高いから:③⑦ 重すぎるから:①②④⑪ まだ試したことがない:②③④ チェンソー作業の時は必ず着用している:⑤ 質問5:雇用主または行政から提供された場合は着用しますか? はい:①③⑤ いいえ:④ 冬期だけ:②⑥⑦ 質問6:あなたは規定の安全防護装備とどのような関係がありますか? ・ ①:関心があって、林業の展示会のために欧州に頻繁に好んで行く ・ ④:関心がない(必要ない) ・ ⑤:事故に遭ってから、チェンソー防護ズボンを履くようになってよかったと思う ・ ⑥:今のところはそれほど関心がない、一つも持っていないし夏場暑すぎる ・ ⑦:冬場は持っていてよかったと思う ・ ⑧:林業関連の機械や道具の販売店を経営している ・ ⑪:事務所でしか仕事をしていないので履いていないが、必要だと思う

質問7:あなたは現在山林作業の際にどのような安全装備を着用していますか? ・ ①:冬場はスイスの人たちと同じように。だがイヤーマフは使っていない。チェンソー防護ズボンを着用すると安全だと感じる。夏は暑すぎるのでヘルメットと作業服と作業手袋だけ。 ・ ④:作業手袋、イヤーマフもフェイスガードも付かないいヘルメット、地下足袋、上着 ・ ⑤:チェンソー防護ズボン、作業手袋、イヤーマフもフェイスガードも付かないヘルメット、地下足袋、上着 ・ ⑥:作業手袋、イヤーマフもフェイスガードも付かないヘルメット、地下足袋、上着

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レポート④ 安全防護装備の着用

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・ ⑦:作業手袋、イヤーマフもフェイスガードも付かないヘルメット、地下足袋、上着、チェンソー防護ズボン

質問8:あなたは防護装備を店頭で買いますか、それとも通販を使いますか? ・ ①:販売店、海外の林業フェア、日本の林業機械展 ・ ③:試着する時は販売店で、店が遠い時はカタログ通販で ・ ④⑤⑥:販売店 ・ ⑦:通販(オンラインショップ) ・ ⑧:90%は通販(オンラインショップ)、10%は販売店 ・ ⑨:一般的な林業事業体においてインターネットでの購入がほとんど大部分を占める

質問9:林業従事者が適切な安全防護装備を着用するようになるために、何が必要だと思いますか? ・ ①:ガイドラインを強化する、法律を厳しくする、国からの財政的援助 ・ ③:より厳しい法律、厳しい規則、国からの助成を増やす、コミュニケーション ・ ④:厳しい法律、安全防護装備を着用したい若い従事者 ・ ⑤⑥:厳しい法律 ・ ⑦:厳しい法律、財政的援助、もっと選べる商品ラインナップ ・ ⑧:厳しい法律(南方は暑すぎるが、北方では防護装備を着用) ・ ⑨:現場作業の経験があまりないので分からない ・ ⑩:財政的援助、厳しい法律と義務付けるガイドライン ・ ⑪:法律とガイドラインで義務付ける

質問10:どのようにすれば、安全防護装備を着用するような革新的な人材を森に惹きつけられますか? ・ ①:若い人は好んで安全防護装備を装用する、現状ガイドラインが弱く危険すぎる ・ ④:給料を引き上げる ・ ⑤⑥⑦:給料を引き上げる、もっとこの分野を宣伝する ・ ⑧:給料を引き上げる、定期的な収入、教育、この分野のイメージの向上 ・ ⑨:安全防護装備が柔軟であること、もっと多くの着心地の良い製品が開発される必要 ・ ⑩:財政援助、給料を引き上げる、固定給、街でもっと宣伝する ・ ⑪:給料を引き上げる。固定給、固定の労働時間

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レポート④ 安全防護装備の着用

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質問11:あなたは安全防護装備を森林組合経由で購入すれば、40%の助成が得られることを知っていますか? ・ ①:知っているが、今のところ海外で買っている ・ ②③⑤⑥:知らなかった ・ ④:知っていたが、安全防護装備なしで長く働いているので必要ない ・ ⑦:知らなかった。それならば新しいチェンソー防護ズボンを購入したい

質問12:中山間地域で販売店が数件しかないのはなぜですか? ・ ⑧:オンライン通販でどこからでも購入できるからだと思う。当店の売上の 90%は通販。顧客は北海道から沖縄まで全国。しかし注文の多くはチェンソーと伐倒補助具で、安全防護装備の比率はそれほどではない。チェンソー防護ズボンは県外からの注文のみで、県内ではほとんど売れていない。

質問13:どのようにすれば林業従事者の誇りを取り戻すことができますか? ・ ⑩⑪:子供達へのもっといい教育、もっと宣伝を行うこと

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レポート④ 安全防護装備の着用

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資料2:個人用安全防護装備のチェックリスト(SUVA, 2008)

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レポート④ 安全防護装備の着用

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レポート④ 安全防護装備の着用

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レポート④ 安全防護装備の着用

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レポート④ 安全防護装備の着用

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レポート④ 安全防護装備の着用

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