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被災地支援とデポジットライブラリー の取り組み 宮城県図書館 熊谷慎一郎 2013.11.23 EnjuKaigi 2013「オープンソース図書館システムの発展」 九州大学箱崎キャンパス 21世紀交流プラザI 多目的ホール 1

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被災地支援とデポジットライブラリーの取り組み

宮城県図書館 熊谷慎一郎

2013.11.23 EnjuKaigi 2013「オープンソース図書館システムの発展」

九州大学箱崎キャンパス 21世紀交流プラザI 多目的ホール

1

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はじめに(本日の構成)

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東日本大震災の状況を

共有する

• 1 はじめに(東日本

大震災の概要)

図書館の復旧・復興の

あゆみを共有する

• 2 宮城県内市町村図

書館等の被災状況・

復旧状況

• 3 宮城県図書館の被

災状況・復旧状況

• 4 宮城県図書館の取

みやぎデポジットライ

ブラリーの運営紹介

• 5 みやぎデポジット

ライブラリーの概要

• Enjuの利用

• 利用フロー

• デポジットライブラ

リーの運営について

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1 東日本大震災の概要 (1)地震名 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震

(2)発生日時 平成23年3月11日(金)14時46分

(3)発生場所 三陸沖(北緯38.1度,東経142.5度)

※牡鹿半島の東約130km

(4)震源の深さ 24km

(5)規模 マグニチュード9.0

(6)最大震度 震度7(栗原市)

(7)地盤沈下 海抜0m以下の面積56k㎡(震災後増加割合3.4倍)

大潮の満潮位以下の面積129k㎡ (震災後増加割合1.9倍)

過去最高潮位以下の面積216k㎡ (震災後増加割合1.4倍)

(8)津波

津波の高さ:7.2m(仙台港)(平成23年4月5日気象庁発表)

8.6m以上(石巻市鮎川)(平成23年6月3日気象庁発表)

※参考:津波最大遡上高(宮城県土木部津波の痕跡調査結果)

南三陸町志津川 20.2m 女川町 34.7m

南三陸町歌津 26.1m

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1-2 東日本大震災の概要(被害の状況等 )

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〔宮城県発表 平成25年9月30日現在,(3)被害額の概要は平成25年9月10日現在〕

(1) 人的被害(継続調査中)

死者(関連死を含む。)10,455人

行方不明者 1,297人

重 傷 504人

軽 傷 3,615人

(2) 住家・非住家被害(継続調査中)

全 壊 82,896棟

半 壊 155,095棟

一部損壊 222,824棟

床下浸水 7,796棟

非住家被害 28,745棟

(3) 被害額の概要(継続調査中)

9兆1,654億円

【浸水面積】 県内の浸水面積は327k㎡ ※6県62市町村の浸水面積合計561k㎡の約6割に相当

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2 宮城県内市町村図書館等の被災状況 • 地震による被害により,震災以前の図書館サービス再開が困難になった図書館が多い。

• 津波による被災地域では,図書館が高台にあり浸水を免れたところがある一方,浸水域にあった館は被害甚大。

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建物全壊(津波) 南三陸町図書館,石巻市図書館雄勝分館,石巻市図書館北上分館,女川町生涯教育センター

建築物応急危険度判定で「危険」判定

名取市図書館,七ヶ浜町図書センター,涌谷町涌谷公民館

施設被害が大きかった図書館

気仙沼市気仙沼図書館,登米市迫図書館,多賀城市立図書館,角田市図書館,仙台市泉図書館ほか

避難所になった図書館等

石巻市図書館,登米市登米図書館,山元町中央公民館・坂元公民館,大郷町公民館,涌谷町箟岳公民館

概 要

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2-2 宮城県内市町村図書館等の被災状況

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▼南三陸町図書館 (2011年5月6日撮影)

▼名取市図書館 (2011年5月18日撮影)

▼女川町生涯教育センター (2011年5月27日撮影)

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南三陸町図書館の再開館

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名取市図書館どんぐり子ども図書室 アン・みんなの図書室の開館

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2-3-1 甚大な被害の図書館の現在(1) • 建物が使えなくなった図書館では,建物を含めた復旧はいまだにしていない。仮設での運営が続いており,本格的な図書館へ移行するための準備段階。(平成25年10月時点)

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図書館 状況

南三陸町図書館 南三陸町オーストラリア友好学習館 内に図書館設置(仮設)

名取市図書館 2012年「どんぐりこども図書室」,2013年「どんぐり・アンみんなの図書室」(仮設)

石巻市図書館雄勝分館 2013年7月,まちづくり基本構想により公民館・図書館と組み込んだ総合支所の整備計画策定

石巻市図書館北上分館 まちづくり基本構想策定中

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2-3-2 甚大な被害の図書館の現在(2) • 建物が使えなくなった図書館では,建物を含めた復旧はいまだにしていない。仮設での運営が続いており,本格的な図書館へ移行するための準備段階。(平成25年10月時点)

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図書館 状況

女川町生涯教育センター図書室 「女川つながる図書館」として勤労青少年センター内に設置。図書館設置に向けた検討。

七ヶ浜町図書センター 中央公民館内に仮に,図書室設置。公民館の津波防災拠点化事業により図書室設置予定。

涌谷町涌谷公民館図書室 「くがね創庫」などに図書コーナー仮設置。現在復旧再建にむけて設計中。年度内解体,26年度中に再建予定。

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2-4 図書館活動のうごき • 民間団体継続している活動と休止する活動に。休止する活動には収束のための支援が必要な場合も。

• クラウドファウンディングでマネタイズを行う事例も。

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凸版印刷による被災地支援活動「ブックワゴン」が活動を終了。2台の車両譲渡について,1台はシャンティ国際ボランティア会へ譲渡。もう1台は色麻町に譲渡。

「女川つながる図書館」を支援するために支援者がクラウドファウンディングでプロジェクトを開設,集めた運営資金を寄付。

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3 宮城県図書館の被災状況(1)

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建物 設備関係

・壁面の大型ガラス、壁面大型石板等の破損・落下、壁の剥離・ひび割れ等

・書架・書棚・保管棚類の転倒、損壊等

図書資料関係

・図書資料等(105万点)の殆どが落下

・4月7日の余震で図書資料等の約5割落下

・落下図書資料の破損、水損など

▲外構地すべり ▲マイクロフィルムキャビネット

▲展示室ガラス破損

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3-2 宮城県図書館の被災状況(2)

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▲3回東側新聞雑誌室ワークルーム

▲3階西側 みやぎ資料室閉架書庫 ▲2階 児童資料研究相談室

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3-3 揺れによる資料的被害(1)

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←落下後に無理な力がかかってゆがみが生じた(上2枚) ▼落下による背割れ(下2枚)

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3-4 揺れによる資料的被害(2)

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▼本体と表紙などが外れたもの ▼ケース(桐箱)破損

▼一部欠損(探し出せない)

▼どの本のものか不明

あわない…

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3-5 宮城県図書館の復旧状況等 宮城県図書館の震災関連事業

■施設等の本格復旧工事(4/20~7/2)

• 休館期間(2012/6/1~7/2)中,市町村図書館への訪問支援を重点的に実施

• レファレンスサービス等非来館サービスも継続

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2011年3月11日 発災後休館決定

3月16日~ 収集した市町村図書館の状況をインターネットで公開

3月25日 4月下旬の開館予定を決定

4月1日~ 返却受付,音訳サービスなど非来館サービスを開始

4月12日 (4月7日の余震により)5月中旬以降の開館予定を決定

4月16日 レファレンスサービス受付開始

4月26~ 県内図書館の現地調査

5月6日 5月13日開館 を決定

5月11日 防災訓練

5月13日 開館 (時間短縮 10:00~18:00)

7月5日 開館時間変更(9:00~18:00)

10月1日 開館時間変更(9:00~19:00)

2012年4月20日~

災害復旧工事 (6/1~7月2日は休館)

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3-6 宮城県図書館の復旧状況等(2)

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復旧工事の様子

震災文庫展2

東日本大震災文庫

震災文庫展3

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4 宮城県図書館の取組み(1)

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間接支援 • 情報集約,各種情報共有化など

• 県域を越えた情報交換の必要性

直接支援

• 巡回相談

•直接訪問,現地調査

• 「声なき声」をどこまで拾える

• 各図書館等への個別支援

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4-2 宮城県図書館の取組み(2)

• 間接支援の重要性

• 県内図書館の情報収集→集約→発信

• 適切な情報提供を行うために重要

• 既存のネットワークを有効に活用する

• 連絡会議,研修会などの実施

• 一堂に会する場をつくること(連絡会議,被災資料の修理研修会)

• 館種を越えたつながりを持つ,グッドプラクティスを共有する

• みやぎ図書館フォーラムの実施(2012/3/2)

• 直接支援の重要性

• 実際に状況を確認すること,顔を合わせること

• 災害対策業務に従事している職員,復旧活動をしている職員への配慮

• ニーズをきちんと把握した上で支援にあたる

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4-3 宮城県図書館の取組み(3) • 宮城県図書館における支援の方針

• 図書館の図書館として,被災者への直接的な支援(避難所へ本を提供する,おはなし会を行うなどといったサービス)ではなく,市町村図書館あるいは図書室の運営を支援することにできるだけ重点をおく。

• 図書活動をしている団体等を支援することをより強く意識。

→中間組織として機能する都道府県立図書館の本来機能を重視

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支援関係 団体等

宮城県図書館

中間組織として機能

市町村 図書館等 ・各種支援

(マッチングを重視)

・支援調整 ・ニーズ把握 ・支援情報提供

・支援情報の提供 (人的・物的・金銭的)

・ニーズの提供 ・各種照会への応答

・市町村図書館の情報集約 ・各種支援情報の集約・提供 ・連絡会議,研修会等 ・震災関係資料の収集・書誌情報の提供

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4-4 宮城県図書館の取組み(4)

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▼みやぎ図書館フォーラムの様子

近江弘一氏(石巻日日新聞社代表取締役社長)

▼図書館のホームページで情報発信

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4-5 中間組織として見た支援と受援

• 適切なマッチングのために

• ニーズの把握(支援を受ける側に立った視点で)

• 各種団体等から寄せられる多様な支援の仕分けと,受援側の意向を踏まえた交通整理

• 寄贈図書の取り扱い(受援側の負担軽減)

• 図書館への支援 と 図書活動への支援

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災害時初期 ○被災状況 人的,施設的,資料的被災 ○被災対応状況 発災時にどのような対応をしたか ○現在状況 いま,どのような状態であるか ○近将来見込 直近の図書館運営の見込み

発災から少し時間が経って… ○現在状況・近将来見込み どのように図書館サービスを回復さ

せていくか。

情報収集

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4-6 支援と受援のマッチング

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支援したいこと

直接各地に問

合せるよりも

必要な支

一元的な案件管

理の方が効率的

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4-7 図書館への作業支援

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図書の整理に必要な情報

• 書誌情報

• 分類

紙台帳の作成・管理

• 更新が大変

• 資料の財産管理

• 利用のための目録ではない

図書館業務の電算化は必須

• 当初から業務の流れを見据えた

資料整理をする必要がある。

図書館への作業支援の多くは図書の整理

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4-8 図書の整理に考慮すること

• 網羅的な書誌情報が自由に使えるかどうか

• MARCデータを自由に加工できるかどうか

• ローカルデータの付与

• 分類(NDC)が自由に参照できるかどうか

• キーワードから検索する必要があるが紙媒体では効率が悪い

• MARCデータの加工が容易な仕組み

•Enju の活用 • (図書館業務システム というよりは,)

効率的な蔵書管理システムとしての使用

→「みやぎデポジットライブラリー」の蔵書管理に採用

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5 みやぎデポジットライブラリー

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• 東日本大震災により被災した宮城県内の図書館等が震災から復興するにあたって必要な地域資料を整備するための支援を行う事業。

• 地域の資料を充分に収集・整理・保存することがそもそもの業務。

• まるごと資料が流失した地域の図書館では,これらの地域に関する資料の整備が必要。

• 落下による資料破損も無視できない。

大きな被災のあった図書館は,震災からおよそ1年半を経過し,建物や,蔵書をそなえ,一定規模の図書館活動を行えるようになってきた。 この時期だからこそ,地域資料を整備し,地域の人々が利活用するために資料をそろえていくべきであり,宮城県図書館は,そのために必要な郷土資料の再整備を支援する。

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5-2 デポジットライブラリーの蔵書

• 収集

• 統廃合する高等学校,組織改組された行政機関から収集

• コンテンツ緊急デジタル化事業による献本,その他

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宮城県図書館

【収集】 ・統廃合する学校 ・組織改組する機関

【再整備】 ・被災した市町村図書館等 ・落下により破損した資料な

ども対象とする

郷土資料は,非売品や非商業出版物が多いため,学校や行政機関の改組などで不要となった図書を収集

収集した郷土資料の在庫状況を図書館向けに公表し,必要に応じて申込をするシステムを用意。 市町村図書館等へは発送もしくは直接届ける

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5-3 Enju の利用

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5-4 Enju の利用フロー

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受入登録

JP/MARC

現物確保

資料 宮城県図書館 市町村図書館

取り置き 書架

メタ 情報

予約

現物送付

認証

NDLサーチ

Enju の範囲

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5-5 Enju利用のポイントとして

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効率的な蔵書管理

• 書誌データ

• 分類表ほか各種コード

• ローカルデータ

動態情報の付与

•資料のライフサイクルに沿ったステータス

•貸出・予約などの動態情報

※ 補助表なども含めて完全な分類一覧表は作るのが大変というのを分かった上で…小数点2桁程度までの代表的な分類表が自由に使えるようになってほしい。

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5-6 みやぎデポジットライブラリーの運営(1)

• 資料を収蔵する書架を整備する

• 収集した資料を仕分け,整理するためにも数千冊規模の書架整備をする。

• 統廃合される学校や組織改組される行政機関等からの資料を収集する

• 非売品や非商業出版物は多くが機関所蔵のものであることから,原則として,資料の収集は機関を対象とする。

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金剛株式会社様から書架1式をご支援いただきました。

県内高等学校3校,行政機関1箇所ほか地元新聞社様から収集できました。

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5-6 みやぎデポジットライブラリーの運営(2)

• 既存のネットワーク(MY-NET)を活用する

• MY-NETアカウントを軸にし,必要な資料がある図書館の手続きを簡素化する

• 在庫状況は,MY-NETアカウントにより確認可能なものとし,必要な資料が簡易な手続きで申し込めるようにする。同時に,在庫リストの作成と申込の仕組みをシステム化し,できるだけ県図書館の業務負担にならないようにする。

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Project Next-L 様からご支援いただきました。

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5-6 みやぎデポジットライブラリーの運営(3)

• 復興を目指す図書館の歩みにあわせて支援を行う

• 図書館の整備が他の分野に比べて遅かったり,通常サービスで手一杯の図書館が存在することを考慮し,概ね復旧期から復興期にかけての事業とする。

• 資料の送付も,送りっぱなしで倉庫に眠っていることがないよう資料整理を考慮し,県図書館から直接持参し,資料の整理も支援する。

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2013年3月以降, およそ17箇所に1,350冊程度をお届けできました。

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• ご支援に感謝いたします。

• 引き続き,よろしくお願いします。

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