13
1 4 W 1 4 1 タングステンは、高温度での硬度や耐熱性保持などの特性から、主として炭化物(WC)の形で超硬 工具に用いられる。また金属タングステンは、高速度鋼、合金工具鋼など特殊鋼添加剤として使用さ れ、切削工具、金型、ダイニップル、その他の機械部品として使用される。その他の応用製品としては、 高融点の特性を利用して、線、棒、接点、電極棒などの形で、照明基部、電子機器、自動車、工作機 械、最近は液晶ディスプレイのバックライトの冷陰極管用部材等に使用されるとともに、化成品として は、石油化学触媒や環境機器等に使用されている。 世界のタングステンの需給(地金生産、地金消費、鉱石生産)を表1、図1に示す。2010年は、供給・ 需要とも世界的な景気後退の影響を受けた 2009 年に対し、急速な回復がみられる。需給に占める中 国の比率が高く、供給の 87%、需要の 55%を占めている。供給における中国の比率が高い理由は、タ ングステン鉱山・埋蔵量が中国に偏在しているためである(世界埋蔵量の約 62%)。表 1 に示すように、 2010 年の中国の需要は 2009 年比 118%の伸びを示しており、経済成長に伴い超硬工具、特殊鋼、線、 棒、触媒などの需要も急増していると見られる。 表1 タングステンの需給 単位:純分t 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2010比 10/09比 供給 中国 39,000 28,100 42,500 42,700 49,100 51,400 48,550 51,300 38,000 67,000 87% 176% 中国以外 3,200 5,880 9,700 8,950 10,700 14,400 14,900 13,200 11,150 9,650 13% 87% その他 6,800 3,120 900 1,050 2,750 3,700 1,150 1,600 750 200 0% 27% 合計 49,000 37,100 53,100 52,700 62,550 69,500 64,600 66,100 49,900 76,850 100% 154% 需要 日本 6,850 5,450 5,950 7,150 7,950 7,900 6,850 7,750 2,500 6,000 9% 240% 欧州 17,600 8,050 15,150 11,700 16,150 16,650 13,850 12,050 5,850 18,000 26% 308% 米国 9,700 8,300 8,850 7,400 8,800 10,200 8,400 9,250 7,100 7,000 10% 99% 中国 10,550 11,000 17,950 21,450 25,150 29,800 28,800 32,700 32,250 38,000 55% 118% その他 4,300 4,300 5,200 5,000 4,500 4,950 6,700 4,350 2,200 0% 0% 合計 49,000 37,100 53,100 52,700 62,550 69,500 64,600 66,100 49,900 69,000 100% 138% 鉱石 オーストリア 1,600 1,400 1,400 1,400 1,350 1,300 1,200 1,100 1,000 1,000 1% 100% 生産 ボリビア 360 500 442 440 520 870 1,100 1,100 900 1,200 2% 133% カナダ 2,550 2,750 700 2,560 2,700 2,300 2,000 420 1% 中国 37,000 49,500 52,000 67,000 61,000 79,000 41,000 43,500 47,000 59,000 86% 126% 北朝鮮 700 600 600 600 600 600 600 600 ポルトガル 750 700 700 750 820 780 850 850 850 1,200 2% 141% ロシア 3,500 3,400 3,900 3,000 4,400 4,000 3,200 3,000 2,400 2,800 4% 117% その他 290 450 308 510 710 1,690 3,850 3,450 3,850 3,180 5% 83% 合計 44,200 59,100 62,100 73,700 70,100 90,800 54,500 55,900 58,000 68,800 100% 119% 出典:ITIA/工業レアメタル、USGS - 134 - 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

14 タングステン(W) - 独立行政法人石油天然ガス・ …mric.jogmec.go.jp/public/report/2012-05/14.W_20120619.pdfその他 6,800 3,120 900 1,050 2,750 3,700 1,150

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1

14�タングステン(W)

14�1� 需給動�

タングステンは、高温度での硬度や耐熱性保持などの特性から、主として炭化物(WC)の形で超硬

工具に用いられる。また金属タングステンは、高速度鋼、合金工具鋼など特殊鋼添加剤として使用さ

れ、切削工具、金型、ダイニップル、その他の機械部品として使用される。その他の応用製品としては、

高融点の特性を利用して、線、棒、接点、電極棒などの形で、照明基部、電子機器、自動車、工作機

械、最近は液晶ディスプレイのバックライトの冷陰極管用部材等に使用されるとともに、化成品として

は、石油化学触媒や環境機器等に使用されている。

世界のタングステンの需給(地金生産、地金消費、鉱石生産)を表 1、図 1 に示す。2010 年は、供給・

需要とも世界的な景気後退の影響を受けた 2009 年に対し、急速な回復がみられる。需給に占める中

国の比率が高く、供給の 87%、需要の 55%を占めている。供給における中国の比率が高い理由は、タ

ングステン鉱山・埋蔵量が中国に偏在しているためである(世界埋蔵量の約 62%)。表 1 に示すように、

2010 年の中国の需要は 2009 年比 118%の伸びを示しており、経済成長に伴い超硬工具、特殊鋼、線、

棒、触媒などの需要も急増していると見られる。

表1 タングステンの需給 単位:純分t

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2010比 10/09比

供給 中国 39,000 28,100 42,500 42,700 49,100 51,400 48,550 51,300 38,000 67,000 87% 176%

中国以外 3,200 5,880 9,700 8,950 10,700 14,400 14,900 13,200 11,150 9,650 13% 87%

その他 6,800 3,120 900 1,050 2,750 3,700 1,150 1,600 750 200 0% 27%

合計 49,000 37,100 53,100 52,700 62,550 69,500 64,600 66,100 49,900 76,850 100% 154%

需要 日本 6,850 5,450 5,950 7,150 7,950 7,900 6,850 7,750 2,500 6,000 9% 240%

欧州 17,600 8,050 15,150 11,700 16,150 16,650 13,850 12,050 5,850 18,000 26% 308%

米国 9,700 8,300 8,850 7,400 8,800 10,200 8,400 9,250 7,100 7,000 10% 99%

中国 10,550 11,000 17,950 21,450 25,150 29,800 28,800 32,700 32,250 38,000 55% 118%

その他 4,300 4,300 5,200 5,000 4,500 4,950 6,700 4,350 2,200 0% 0%

合計 49,000 37,100 53,100 52,700 62,550 69,500 64,600 66,100 49,900 69,000 100% 138%

鉱石 オーストリア 1,600 1,400 1,400 1,400 1,350 1,300 1,200 1,100 1,000 1,000 1% 100%

生産 ボリビア 360 500 442 440 520 870 1,100 1,100 900 1,200 2% 133%

カナダ 2,550 2,750 700 2,560 2,700 2,300 2,000 420 1%    -

中国 37,000 49,500 52,000 67,000 61,000 79,000 41,000 43,500 47,000 59,000 86% 126%

北朝鮮 700 600 600 600 600 600 600 600    -    -

ポルトガル 750 700 700 750 820 780 850 850 850 1,200 2% 141%

ロシア 3,500 3,400 3,900 3,000 4,400 4,000 3,200 3,000 2,400 2,800 4% 117%

その他 290 450 308 510 710 1,690 3,850 3,450 3,850 3,180 5% 83%

合計 44,200 59,100 62,100 73,700 70,100 90,800 54,500 55,900 58,000 68,800 100% 119%

出典:ITIA/工業レアメタル、USGS

- 134 - - 135 -独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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14-2. 輸出入動向

(1)輸出入動向

タングステンの輸出入動向は表 2、図 2、図 3 に示す通りである。酸化物の輸入は、その他酸化物

(HS コード 2825.90-090)のうち中国からの輸入分を全量タングステン酸化物と見た推定である(以下

同じ)。2010 年の日本の輸入量は急回復している。

  表2 タングステンの輸出入 単位:純分t

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

原料 鉱石 輸入 739 689 589 104 2 0 2 49 8 16

輸出 0 16 3 0 413 146 98 1 0 0

APT 輸入 2,802 1,884 1,721 1,957 1,895 1,557 1,490 1,704 854 1,326

輸出 4 78 64 6 5 7 6 9 7 8

酸化物 輸入 1,652 1,624 1,773 2,549 2,804 3,248 2,891 3,174 895 3,442

輸出 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

FeW 輸入 636 420 1,007 1,023 1,178 971 729 1,110 255 1,002

輸出 0 0 0 1 0 1 1 1 0 1

塊・粉 輸入 1,136 596 632 806 882 906 812 571 190 556

輸出 1,843 196 150 233 238 286 328 398 240 211

くず 輸入 0 162 158 172 791 516 137 286 59 81

輸出 0 1,437 1,412 1,739 1,773 2,050 1,640 1,833 576 815

計 輸入 6,964 5,375 5,880 6,612 7,551 7,198 6,060 6,894 2,261 6,423

輸出 1,846 1,726 1,629 1,978 2,429 2,490 2,073 2,243 824 1,036

輸入-輸出 5,118 3,648 4,251 4,633 5,122 4,708 3,988 4,651 1,437 5,387

半製品 板・線 輸入 282 298 355 496 549 520 537 548 338 473

輸出 178 193 196 316 464 558 460 441 256 334

WC粉 輸入 1,100 1,021 1,284 1,650 1,948 2,126 1,721 1,809 668 2,031

輸出 255 184 249 272 327 259 356 288 165 141

計 輸入 1,383 1,319 1,639 2,146 2,497 2,646 2,258 2,357 1,006 2,504

輸出 433 378 445 588 791 817 816 729 420 474

輸入-輸出 950 942 1,194 1,558 1,706 1,829 1,442 1,628 586 2,030

合計 輸入 8,347 6,694 7,518 8,758 10,048 9,844 8,318 9,251 3,267 8,927

輸出 2,279 2,104 2,074 2,567 3,220 3,307 2,888 2,972 1,244 1,510

輸入-輸出 6,068 4,590 5,445 6,191 6,828 6,537 5,430 6,279 2,023 7,417

出典:財務省貿易統計 

換算率:鉱石77.7%、APT70.2%、酸化物79.3%、FeW77%、WC94%

- 134 - - 135 -

図1 タングステンの需給動向

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

純分

t供給

需要

鉱石生産

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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3

(2)輸出入相手国

特定貿易相手国について、2010 年のタングステン原料、タングステン含有製品の輸出入を表 3、表 4、

図 4、図 5 に示す。原料の輸入は主に APT(パラタングステン酸アンモン)や酸化物などの中間化合物

であり、中国への依存度が高い。2010 年末にポルトガルからの鉱石輸入が始まっている。タングステ

ン含有製品は、輸出が輸入を大きく上回り、主な品目は超硬工具、触媒、特殊鋼である。フロー図を

本節末に示す。

- 136 - - 137 -

図2 タングステンの輸入動向

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

純分

鉱石

APT

酸化物

FeW

塊・粉

板・線

くず

W C粉

図3 タングステンの輸出動向

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

純分

鉱石

APT

FeW

塊・粉

板・線

くず

W C粉

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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- 136 - - 137 -

図4 タングステン原料の輸出入相手国

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

韓国

中国

台湾

香港

ベトナム

タイ

シンガポ

マレ

シア

リピン

インドネシア

インド

ロシア

米国

E

U

カナダ

その他

純分

輸出

輸入

図5 タングステン含有製品の輸出入

0

100

200

300

400

500

600

700

800

韓国

中国

台湾

香港

ベトナム

タイ

シンガポ

マレ

シア

リピン

インドネシア

インド

米国

ロシア

E

U

その他

純分

輸出

輸入

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��

��

��

��

��

��

��

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5

表3 

タン

グス

テン

原料

の輸

出入

 2010

単位

:特

記以

外純

分t

ポル

トガ

ルイ

スラ

エル

鉱石

輸入

00

00

00

00

00

00

016

016

16

0

輸出

00

00

00

00

00

00

00

00

AP

T輸

入0

1,2

75

00

46

00

00

00

00

50

1,3

26

00

輸出

50

00

00

00

00

00

02

18

酸化

物輸

入0

3,4

42

00

00

00

00

00

00

03,4

42

00

輸出

00

00

00

00

00

00

00

00

FeW

輸入

0825

00

146

00

00

00

00

31

01,0

02

00

輸出

00

10

00

00

00

00

00

01

塊・粉

・板

輸入

45

747

10

26

12

02

02

139

158

51,0

29

03

・線

輸出

42

133

42

69

69

44

52

14

114

063

39

8545

くず

輸入

31

332

09

00

00

00

02

30

81

00

輸出

189

120

32

00

00

00

00

55

518

0815

WC

粉輸

入364

1,0

60

00

00

00

00

00

14

533

61

2,0

31

02

輸出

25

28

11

08

00

00

00

18

54

4141

原料

合計

輸入

439

7,3

52

33

0227

12

02

02

155

746

66

8,9

27

16

5

比率

5%

82%

0%

0%

3%

0%

0%

0%

0%

0%

0%

0%

1%

8%

1%

100%

0%

0%

輸出

74

251

165

102

69

53

62

14

114

0136

612

12

1,5

10

比率

5%

17%

11%

7%

5%

4%

0%

0%

1%

0%

1%

0%

9%

41%

1%

100%

輸入

-輸

出366

7,1

01

-132

-102

158

-52

-3

-2

-12

-1

-12

1-80

134

54

7,4

17

出典

:財

務省

貿易

統計

、換

算率

:鉱

石77.7

%、A

PT

70.2

%、W

O379.3

%、F

eW

77%、W

C94%

米国

EU

その

他合

計フ

ィリ

ピン

イン

ドネ

シア

イン

ドロ

シア

ベト

ナム

タイ

シン

ガポ

ール

マレ

ーシ

ア韓

国中

国台

湾香

港EU

・そ

の他

内訳

- 138 - - 139 -独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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��

��

��

��

��

��

��

��

6

表4 

タン

グス

テン

含有

製品

の輸

出入

 2010

単位

:特

記以

外純

分t

超硬

工具

輸入

57

126

80

0124

00

00

50

23

107

46

498

輸出

166

558

258

146

16

275

136

10

40

16

50

0187

269

53

2,1

79

二次

電池

輸入

00

00

00

00

00

00

00

00

輸出

00

00

00

00

00

00

00

00

電気

電子

輸入

19

00

00

00

00

00

00

011

機器

輸出

01

00

00

00

00

00

11

03

自動

車・部

品輸

入0

00

00

00

00

00

00

00

0

輸出

00

00

00

00

00

00

00

01

触媒

輸入

00

00

00

00

00

00

12

10

13

輸出

20

84

00

09

80

01

011

28

73

磁石

輸入

00

00

00

00

00

00

00

00

輸出

00

00

00

00

00

00

00

00

特殊

鋼輸

入13

50

00

00

00

00

05

58

586

輸出

131

143

88

21

861

23

10

116

50

28

21

1559

スク

ラッ

プ輸

入0

00

00

00

00

00

00

00

0

輸出

00

00

00

00

00

00

00

00

製品

合計

輸入

72

140

80

0124

00

01

50

40

165

51

608

比率

12%

23%

1%

0%

0%

20%

0%

0%

0%

0%

1%

0%

7%

27%

8%

100%

輸出

317

710

350

168

25

336

169

29

41

32

55

0226

293

63

2,8

15

比率

11%

25%

12%

6%

1%

12%

6%

1%

1%

1%

2%

0%

8%

10%

2%

100%

輸入

-輸

出-246

-570

-341

-168

-25

-212

-168

-28

-41

-31

-50

0-187

-128

-12

-2,2

07

出典

:財

務省

貿易

統計

(表

47-1(2)、

表47-2

米国

EU

その

他合

計フ

ィリ

ピン

イン

ドネ

シア

イン

ドロ

シア

ベト

ナム

タイ

シン

ガポ

ール

マレ

ーシ

ア韓

国中

国台

湾香

- 138 - - 139 - 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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7

14-3. 価格動向

タングステンの輸出入価格動向を表 5、図 6、図 7 に示す。2005 年から価格の高騰が見られる。2009 年の低

下は他の鉱種ほど急激ではなく緩やかな低下である。2010 年には上昇傾向を示している。

  表5 タングステンの輸出入価格 単位:特記以外$/kg

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 10/09比

鉱石 輸入 3.5 2.2 2.3 1.9 17.6 - - - - - -

輸出 5.4 4.4 - 3.3 10.7 4.7 233.1 - - - -

APT 輸入 7.9 4.9 5.3 7.5 18.6 22.9 23.0 23.6 18.7 20.2 108%

輸出 18.3 9.2 8.5 17.6 32.2 41.2 40.5 32.9 34.8 36.9 106%

酸化物 輸入 9.6 6.2 8.6 9.8 20.9 24.4 25.6 25.9 26.7 24.8 93%

輸出 - - - - - - - - - - -

FeW 輸入 5.1 4.4 5.0 7.3 20.7 24.5 25.9 27.8 21.2 25.2 119%

輸出 - - - 2.0 29.6 31.5 34.0 37.6 31.1 37.7 -

粉 輸入 13.6 12.9 13.2 14.4 26.9 35.4 35.2 38.6 36.9 35.0 95%

輸出 28.3 33.9 33.3 30.4 37.0 50.8 31.2 19.9 17.0 36.9 217%

塊 輸入 6.7 9.1 10.3 13.0 28.1 33.8 36.2 35.0 26.2 32.7 125%

輸出 4.5 10.3 48.8 29.5 35.2 19.4 75.7 76.2 64.2 60.1 94%

くず 輸入 - 3.2 3.8 5.2 10.3 19.0 24.3 18.0 14.4 15.9 -

輸出 - 3.5 3.7 5.1 9.2 11.4 16.3 16.3 10.0 12.9 -

線 輸入 63.4 55.6 58.6 57.2 74.1 88.6 89.9 88.1 93.2 85.3 92%

輸出 225.9 239.5 279.7 272.2 232.1 271.3 272.5 289.7 274.2 291.3 106%

WC 輸入 21.1 15.6 15.3 17.6 30.9 37.9 38.6 40.0 33.5 35.6 106%

輸出 9.6 8.8 10.0 10.9 12.6 32.2 29.8 37.3 26.7 65.4 245%

出典:財務省貿易統計

- 140 - - 141 -

図6 タングステンの輸入価格

0

20

40

60

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

$/

kg

鉱石 APT

酸化物 FeW

粉 塊

くず W C

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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8

14-4. 国内市場

タングステンの国内需給動向及びタングステン製品の生産動向を表 6 に示す。2010 年は、供給、需要とも

2008 年以前の水準に急回復している。

表 6(2)は、参考として業界統計を中心に判明しているタングステンの生産・消費を整理したものである。但

し、数値は表 6(1)とは一致しない。

 表6(1) タングステンの国内需給 単位:純分t

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

供給 原料(輸入-輸出) 5,118 3,648 4,251 4,633 5,122 4,708 3,988 4,651 1,437 5,387

国内リサイクル 9 240 100 207 199 194 333 570

合計 5,118 3,648 4,260 4,873 5,222 4,915 4,187 4,845 1,770 5,957

需要 W粉 超硬工具 4,154 3,908 4,642 5,466 5,566 5,427 5,262 4,980 2,471 5,042

特殊鋼 30 55 55 47 63 44 146 45 23 25

線板棒 444 256 319 361 346 334 340 267 107 181

接点 203 83 181 197 162 114 133 154 31 47

その他 170 47 48 56 54 53 49 60 46 60

小計 5,001 4,350 5,245 6,126 6,191 5,972 5,931 5,507 2,677 5,354

FeW(特殊鋼) 476 464 551 775 1,020 800 875 9,648 422 1,050

合計 5,477 4,813 5,796 6,901 7,211 6,772 6,806 15,155 3,099 6,404

需要-供給 359 1,165 1,537 2,027 1,989 1,857 2,619 10,310 1,329 446

出典:表2、表9、経済産業省鉄鋼・非鉄金属統計

- 140 - - 141 -

図7 タングステンの輸出価格

0

20

40

60

80

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

$/

kg

A P T 粉

塊 くず

W C

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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9

14-5. 主要生産者及び生産品目

中間生産物に係る我が国の主要生産者並びに主生産品目は表 7 のとおりである。

表 7 主要生産者並びに生産品目

主要生産者 主生産品目

日本新金属 タングステン金属、APT、化合物

日本タングステン タングステン金属、APT、化合物

アライドマテリアル タングステン金属、化合物

東邦金属 タングステン金属、 化合物

東芝マテリアル タングステン金属、 化合物

出典:各社ウェブサイト

14-6. 海外投資の状況

我が国企業による海外投資の状況は表 8 のとおりである。

表 8 我が国企業による海外投資の状況

鉱山開発プロジェクト名 国・地域 企業名(権益比率(%)) 生産品目

Panasqueira ポルトガル 双日(100) W 鉱石

出典:JOGMEC 資料

14-7. リサイクル

タングステンのリサイクル率は表 9 のとおり推計される(リサイクル率の考え方は、巻頭「特定鉱種について」

の(5)リサイクル率 参照)。2010 年は触媒、超硬工具ともリサイクル量が増加したが、分母が拡大したためリ

サイクル率は低く出る結果となった。

 表6(2) タングステン製品の国内生産・消費 単位:特記以外マテリアルt

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

粉末の生産 3,678 3,303 2,597 4,254 4,130 3,659 3,891 3,672 1,422 3,393

金属製品の 細線 87 93 97 107 98 91 94 79 70 106

生産 線棒 107 122 137 164 165 202 196 188 110 134

ThO2合金 41 33 36 54 52 48 47 39 22 27

加工品 64 72 87 117 111 108 130 117 58 75

接点 10 10 9 9 8 6 6 6 4 5

銅合金 80 98 92 131 102 107 137 122 78 100

銀合金 20 14 19 21 24 28 29 29 15 24

合計 409 442 475 603 561 589 638 580 356 470

超硬工具の生産 4,053 3,958 4,177 5,508 6,268 6,263 6,191 4,896 3,719 5,523

超硬工具向け W粉 181 201 331 331 302 340 267 174 107 269

原料消費 WC 2,931 3,612 3,947 4,846 5,072 4,879 4,934 3,826 3,176 4,662

計(純分t) 2,937 3,596 4,042 4,887 5,070 4,927 4,904 3,770 3,093 4,652

触媒向け原料消費    - 137 178 175 245 203 260 366 296 73

FeW向け原料消費 109 9 12 0 0 0 0 0 0 0

出典:工業レアメタル、超硬工具協会、化学工業統計

- 142 - - 143 -独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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10

各用途のリサイクルの現状は、工程内スクラップを含めて、以下のとおり。

① 高速度鋼関係

高速度鋼の製鋼時におけるスクラップや工具製造時の切削屑など、不純物含有リスクが小さく組成も明確

な場合は製鋼時に原料として再利用される。最終製品の使用済高速度鋼は鋼屑(スクラップ)として回収され、

溶解原料として再利用される。

② 超硬工具関係

粉末冶金製造法で製造された超硬工具のタングステン・リサイクルは、特殊鋼製造時にタングステンとコバ

ルトの添加剤として再利用される方法と、湿式処理でタングステンを回収し超硬工具の中間原料や特殊鋼(高

速度鋼)の原料とする方法の 2 つが採られる。湿式処理でタングステンを回収した残滓からは更にコバルトが

回収される。

超硬工具の約 30%がリサイクルされていると言われておりそのうち 10%が超硬工具への再利用、10%が特殊

鋼(高速度鋼)添加剤、残り 10%がリサイクル用輸出と見られている。但し、このリサイクル率は推測であり、実

態調査が求められる。

最近のタングステン価格の高値留まりや中国の政策変更に伴う手当難から、超硬工具リサイクルでは日本

新金属(三菱マテリアル子会社)は従来のリサイクル能力(化学処理法)の倍増による設備増強を、住友電工

ハードメタルは産学官(産総研・名古屋大学・住友電工)で新たな再資源化(亜鉛処理法)の研究を始めてい

る。

③ その他金属タングステン製品

その他の金属タングステン製品は廃棄製品の回収ルートがはっきりしていて、且つその回収コストが見合う

ものはリサイクルされているが、大半は回収されずに廃棄処分されている。

④ 触媒

現在、我国で使用されている石油化学工業系タングステン触媒は、触媒としての寿命が6~7年と長く、使

用済触媒からのタングステンの回収は非常に少量と推定される。火力発電所に伴う脱硝触媒は、タングステ

ン含有量が低いためほとんどリサイクルされていない。

⑤ 染色

染色に使われるものは製品自体が回収されないためリサイクルはされていない。

表9 タングステンのリサイクル率 単位:特記以外純分t

区分 2007 2008 2009 2010

見掛消費 国内生産 触媒等から回収 199 194 33 72

超硬工具 400 400 400 498

原料 輸入-輸出 5,430 6,279 2,023 7,417

合計① 5,629 6,473 2,056 7,489

リサイクル量 触媒等から回収 199 194 33 72

超硬工具 400 400 400 498

合計② 599 594 433 570

リサイクル率 ②/① 11% 9% 21% 8%

出典:表3、触媒資源化協会、他

内訳

- 142 - - 143 - 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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単位

:特

記以

外純

分t

品製

要主

)工

加・

錬製(

料原

間中

切削

工具

・金

型等

 ○

1,0

02

需要

:25

2,0

31

WC粉

 ○

需要

:5,0

42

AP

TW

O3

W粉

 ○

37

:要

需3

93,

3:

産生

62

3,1

液晶

バックライト

 ○

塊W

24

4,3

携帯

電話

棒・

線W

92

0,1

灯電

放・

棒接

溶0

42

:要

81

生産

:27(マ

テリアル

t)

半導

体検

査装

545

電気

接点

・放

熱板

 ○

生産

:124(マテリアル

t)

815

W含

有製

608

W含

有製

2,8

15

51

8,2

出輸

品製

有含

ンテ

スグ

ンタ

01

5,1

出輸

料原

輸入

8,9

27

輸入

608

輸入

-輸

出7,4

17

輸入

-輸出

-2,2

07

(本文

表3)

(本

文表

4)

出典

:本

文各

表に記

超硬

工具

くず

レニウム

合金

銅・銀

合金

塊・粉

・板

・線

くず

塊・粉

・板

・線

AP

T

酸化

触媒

(石

化・脱

硝)

フィラメント

バイブレータ錘

ThO

2合金

主応

用製

品とリサ

イクル

(○:回収

あり)

輸出

FeW

WC粉

特殊

 合

金工

具鋼

 高

速度

鋼、他

タングステン(W)のマテリアルフロー(2010)

- 144 - - 145 -独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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��

��

��

��

��

��

��

��

12

タン�ス�ン�

�の

輸出

入�2010)

純分

t

(本文

表3) 韓

国中国

台湾

香港

ベトナム

タイ

シンガ

ポール

マレー

シア

フィリピ

ンインド

ネシア

インド

ロシア

米国

EU

ポル

トガ

ルイスラエ

ル-

輸入

439

7,352

33

0227

12

02

02

155

746

16

5-

輸出

74

251

165

102

69

53

62

14

114

0136

612

--

--

その

他の

主要

国内

輸出

:輸入

- 144 - - 145 - 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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��

��

��

��

��

��

��

��

13

(本文表4)

純分t

韓国

中国

台湾

香港

ベトナム

タイ

シンガ

ポール

マレー

シア

フィリピン

インド

ネシア

インド

ロシア

米国

EU

その

他合計

輸入

72

140

80

0124

00

01

50

40

165

51

608

輸出

317

710

350

168

25

336

169

29

41

32

55

0226

293

63

2,815

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