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長寿医療研究開発費 2019年度 総括研究報告 認定看護師・専門看護師・診療看護師の協働による高齢者施設看護師への 教育・研修プログラムの検討に関する研究(19-35) 主任研究者 加納 優 国立長寿医療研究センター 医局 教育研修部(診療看護師) 研究要旨 高齢者施設における看護師の役割は多岐にわたる。地域包括ケアシステムの構築が進められる 中、医療依存度の高い利用者が地域や施設で療養することが増え、施設看護師が医療体制の責任を 担うことが求められる。さらに、少ない人員配置の中での施設看護師としての独自の役割をいかに 発揮し、質の高いケアを提供できるかも求められる。しかし、現状として、看護の質を向上させる ための具体的なシステムがなく、学ぶ機会も少ないと思われているが、高齢者施設看護師の教育・ 研修の実態やニーズは明らかにされたものは見当たらない。日本看護協会が提示する「介護施設に おける看護職のための系統的な研修プログラム」では、高齢者施設で必要とされる研修の項目とそ れを組み合わせたプログラム例が示され、それらを各施設のニーズに合わせたプログラムへと返還 し活用することを紹介している。また、各施設の現状により、企画困難な場合は、地域の複数の施 設や関係団体が連携することを推奨するに留まっている。つまり、具体的な研修プログラムに関し ては、各施設や地域に任せているのが現状である。施設看護師の人員数や人員確保の課題、働き方 の実態を鑑みると、施設毎に具体的な研修プログラムを企画し運営することは大変な負担となると 想像できる。さらに、実践の場において、高齢者施設で働く看護師の専門性を発揮するために作成 された「介護施設の看護実践ガイド」も出版されているが、それが活用されているかも不明である。 そこで、本研究の初年度では、高齢者施設看護師の教育・研修の実態とニーズを把握することを目 的とし、愛知県内の高齢者施設794施設を対象とした質問紙調査を実施した。 主任研究者 加納 優 国立長寿医療研究センター 医局 教育研修部(診療看護師) 分担研究者 伊藤 眞奈美 国立長寿医療研究センター 看護部(看護部長) 高梨 早苗 国立長寿医療研究センター 看護部(老人看護専門看護師、看護副師長) 1

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  • 長寿医療研究開発費 2019年度 総括研究報告

    認定看護師・専門看護師・診療看護師の協働による高齢者施設看護師への

    教育・研修プログラムの検討に関する研究(19-35)

    主任研究者 加納 優 国立長寿医療研究センター 医局 教育研修部(診療看護師)

    研究要旨

    高齢者施設における看護師の役割は多岐にわたる。地域包括ケアシステムの構築が進められる

    中、医療依存度の高い利用者が地域や施設で療養することが増え、施設看護師が医療体制の責任を

    担うことが求められる。さらに、少ない人員配置の中での施設看護師としての独自の役割をいかに

    発揮し、質の高いケアを提供できるかも求められる。しかし、現状として、看護の質を向上させる

    ための具体的なシステムがなく、学ぶ機会も少ないと思われているが、高齢者施設看護師の教育・

    研修の実態やニーズは明らかにされたものは見当たらない。日本看護協会が提示する「介護施設に

    おける看護職のための系統的な研修プログラム」では、高齢者施設で必要とされる研修の項目とそ

    れを組み合わせたプログラム例が示され、それらを各施設のニーズに合わせたプログラムへと返還

    し活用することを紹介している。また、各施設の現状により、企画困難な場合は、地域の複数の施

    設や関係団体が連携することを推奨するに留まっている。つまり、具体的な研修プログラムに関し

    ては、各施設や地域に任せているのが現状である。施設看護師の人員数や人員確保の課題、働き方

    の実態を鑑みると、施設毎に具体的な研修プログラムを企画し運営することは大変な負担となると

    想像できる。さらに、実践の場において、高齢者施設で働く看護師の専門性を発揮するために作成

    された「介護施設の看護実践ガイド」も出版されているが、それが活用されているかも不明である。

    そこで、本研究の初年度では、高齢者施設看護師の教育・研修の実態とニーズを把握することを目

    的とし、愛知県内の高齢者施設794施設を対象とした質問紙調査を実施した。

    主任研究者

    加納 優 国立長寿医療研究センター 医局 教育研修部(診療看護師)

    分担研究者

    伊藤 眞奈美 国立長寿医療研究センター 看護部(看護部長)

    高梨 早苗 国立長寿医療研究センター 看護部(老人看護専門看護師、看護副師長)

    1

  • A.研究目的

    本研究の目的は、医療依存度の高い高齢者であっても、地域で安心して療養できるように、高

    齢者介護施設看護師の幅広いニーズを分析し、その充足を目指した研修プログラムを検討するこ

    とである。現状として、現状として、看護の質を向上させるための具体的なシステムがなく、学ぶ

    機会も少ないと思われているが、高齢者施設看護師の教育・研修の実態やニーズは明らかにされた

    ものは見当たらない。さらに、日本看護協会の「介護施設における看護職のための系統的な研修

    プログラム」や「介護施設の看護実践ガイド」が作成されているにも関わらず、それを各施設に

    合わせ、具体的に活用できているのかも不明である。そのため、初年度は愛知県内の高齢者介護

    施設で働く看護師を対象としたニーズ調査を実施し、高齢者介護施設看護師の教育・研修の実態

    とニーズを把握することである。

    B.研究方法

    1、調査対象:愛知県内の高齢者施設(介護老人保健施設 191 施設、介護老人福祉施設 377 施設、

    介護療養型医療施設 37施設、有料老人ホーム介護型、一部介護型を含め 189 施設)794 施設の施設

    看護管理者1名と施設で働く看護スタッフ1名

    2、調査方法:自記式質問紙調査

    3、調査票の回答方法、回収方法

    調査票に説明書を同封し、同意に関するチェックボックスにチェックが入った調査票の返送をも

    って同意とみなし、調査票の回答後に施設看護管理者、施設看護スタッフそれぞれに返信用封筒を

    用意し、各自で投函する郵送法で、2020 年 3 月 27 日(金)までを返信期限とした。

    (倫理面への配慮)

    本研究は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針には該当しないが、調査対象者には、

    研究の主旨と内容、倫理的配慮(本調査の協力は任意であり、調査票の回収によって同意が得られ

    たものとし、協力しないことを選択しても、不利益が生じることがないこと、本調査は、無記名調

    査であり、個人を特定するようなことがないこと、回収した調査票やデータは、論文等の発表後 10

    年間は施錠管理し、その後は復元不可能な形で破棄すること、この調査の成果は、学会発表および

    学術論文として公表いたしますが、目的以外で使用することがないことを踏まえた個人情報の取り

    扱い、研究への参加は自由意思であり、調査結果で得た情報は本研究以外に使用しないこと)を明

    記した依頼書を調査票に同封し、同意に関するチェックボックスにチェックが入った調査票の返送

    をもって同意とみなす。

    本研究は、倫理・利益相反委員会へ申請し、承認を受けて実施した

    2

  • C.研究結果

    回収の状況

    <看護管理者>

    配布数 回答数 回収率

    介護老人保健施設 191 29 15.2%

    介護老人福祉施設 377 64 17.0%

    介護療養型医療施設 37 4 10.8%

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    189 32 16.9%

    有効回答率 70.5%、無効回答率 29.5%

    <看護スタッフ>

    配布数 回答数 回収率

    介護老人保健施設 191 31 16.2%

    介護老人福祉施設 377 59 15.6%

    介護療養型医療施設 37 3 8.1%

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    189 37 19.6%

    有効回答率 71.4%、無効回答率 28.6%

    3

  • アンケート調査結果

    1、 回答施設の概要

    1)施設種類

    看護管理者、看護スタッフ共に、介護老人福祉施設からの回答が約半数を占め、最も多かった。

    表 1-1 高齢者施設の施設種類(看護管理者)

    回答数(部) 割合(%)

    介護老人保健施設 29 22.5%

    介護老人福祉施設 64 49.6%

    介護療養型医療施設 4 3.1%

    有料老人ホーム(介護型、一部介護型) 32 24.8%

    全体 129 100.0%

    表 1-2 高齢者施設の施設種類(看護スタッフ)

    回答数(部) 割合(%)

    介護老人保健施設 31 23.8%

    介護老人福祉施設 59 45.4%

    介護療養型医療施設 3 2.3%

    有料老人ホーム(介護型、一部介護型) 37 28.5%

    全体 130 100.0%

    2)施設の開設主体

    看護管理者、看護スタッフ共に、社会福祉法人が約半数を占めた。次いで、医療法人であった。介護

    老人福祉施設の開設主体の多くは社会福祉法人である。今回のアンケート回収率では、介護老人福祉施

    設からの回答が最も多かったため、その回答率と合致する。

    表 2-1 施設の開設主体(看護管理者)

    回答数(部) 割合(%) 回答数(部) 割合(%)

    医療法人 32 24.8% 社団・財団法人 1 0.8%

    社会福祉法人 69 53.5% その他 23 17.8%

    都道府県・市区町村 0 0.0% 不明 4 3.1%

    全体 129 100.0%

    表 2-2 施設の開設主体(看護スタッフ)

    回答数(部) 割合(%) 回答数(部) 割合(%)

    医療法人 31 23.8% 社団・財団法人 2 1.6%

    社会福祉法人 64 49.2% その他 32 24.6%

    都道府県・市区町村 1 0.8% 全体 130 100.0%

    4

  • 2、 職員属性

    1)年齢構成

    看護管理者の年齢構成は、全ての施設で 50 代以上が半数以上を占め、経験の積んだ看護師がその役割

    を担っていると考えられた。有料老人ホームでは、40 代が 37.5%と最も多かった。有料老人ホームと、

    介護老人福祉施設は、介護老人保健施設と介護療養型医療施設と比較して、看護管理者の年齢構成がや

    や若い傾向がみられた。

    看護スタッフでは、介護療養型医療施設を除き、40 代以上が 7 割以上を占めた(介護療養型医療施設

    は、30 代が最も多かったが、n が少ないことが影響している)。平成 29 年日本看護協会「介護施設等に

    おける看護職員に求められる役割とその体制のあり方に関する調査研究事業」報告書の年齢階層別看護

    職員数と概ね同等の割合である。

    図 1-1 高齢者施設別の看護職員の年齢構成(看護管理者)

    6.2%n=8

    3.4%n=1

    6.2%n=4

    9.4%n=3

    25.6%n=33

    10.4%n=3

    28.1%n=18

    37.5%n=12

    43.4%n=56

    55.2%n=16

    43.8%n=28

    25.0%n=1

    34.3%n=11

    20.2%n=26

    27.6%n=8

    20.3%n=13

    50.0%n=2

    9.4%n=3

    4.6%n=6

    3.4%n=1

    1.6%n=1

    25.0%n=1

    9.4%n=3

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    全体

    n=129

    介護老人保健施設

    n=29

    介護老人福祉施設

    n=64

    介護療養型医療施設

    n=4

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    n=32

    年齢構成(施設別)

    20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

    5

  • 図 1-2 高齢者施設別の看護職員の年齢構成(看護スタッフ)

    2)性別

    いずれの施設も女性の看護師の割合が多かったが、看護管理者において、介護老人福祉施設、有料老

    人ホームで約1割の男性看護師が管理者の役割を担っていた。

    表 3-1 高齢者施設別の看護職員の性別(看護管理者)

    全体 介護老人保健施設 介護老人福祉施設 介護療養型医療施設 有料老人ホーム

    人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合

    男性 12 9.3% 1 3.4% 8 12.5% - - 3 9.4%

    女性 116 89.9% 28 96.6% 55 85.9% 4 100.0% 29 90.6%

    不明 1 0.8% - - 1 1.6% - - - -

    全体 129 100% 29 100.0% 64 100.0% 4 100.0% 32 100.0%

    表 3-2 高齢者施設別の看護職員の性別(看護スタッフ)

    全体 介護老人保健施設 介護老人福祉施設 介護療養型医療施設 有料老人ホーム

    人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合

    男性 6 4.6% 4 12.9% 1 1.7% 0 0.0% 1 2.7%

    女性 124 95.4% 27 87.1% 58 98.3% 3 100.0% 36 97.3%

    全体 130 100% 31 100.0% 59 100.0% 3 100.0% 37 100.0%

    2.3%n=3

    5.1%n=3

    18.5%n=24

    22.5%n=7

    18.6%n=11

    66.7%n=2

    10.8%n=4

    33.1%n=43

    38.7%n=12

    27.1%n=16

    33.3%n=1

    37.9%n=14

    37.7%n=49

    32.3%n=10

    44.1%n=26

    35.1%n=13

    6.9%n=9

    6.5%n=2

    5.1%n=3

    10.8%n=4

    1.5%n=2

    5.4%n=2

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    全体

    n=130

    介護老人保健施設

    n=31

    介護老人福祉施設

    n=59

    介護療養型医療施設

    n=3

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    n=37

    年齢構成(施設別)

    20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

    6

  • 3)職種

    介護老人保健施設ではすべての管理者が看護師であった。介護老人福祉施設、有料老人ホームでは約

    2割の管理者が准看護師であった。

    看護スタッフでは、介護老人保健施設、介護老人福祉施設では、約9割が看護師であった。有料老人

    ホームでは、准看護師が約3割であった。

    表 4-1 高齢者施設別の看護職員の職種(看護管理者)

    全体 介護老人保健施設 介護老人福祉施設 介護療養型医療施設 有料老人ホーム

    人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合

    看護師 94 72.9% 29 100.0% 45 70.3% 3 75.0% 17 53.1%

    准看護師 23 17.8% - - 14 21.9% - - 9 28.1%

    不明 12 9.3% - - 5 7.8% 1 25.0% 6 18.8%

    全体 129 100% 29 100.0% 64 100.0% 4 100.0% 32 100.0%

    表 4-2 高齢者施設別の看護職員の職種(看護スタッフ)

    全体 介護老人保健施設 介護老人福祉施設 介護療養型医療施設 有料老人ホーム

    人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合

    看護師 107 82.3% 29 93.5% 52 88.1% 2 66.7% 24 64.9%

    准看護師 22 16.9% 2 6.5% 7 11.9% 1 33.3% 12 32.4%

    不明 1 0.8% - - - - - - 1 2.7%

    全体 130 100% 31 100.0% 59 100.0% 3 100.0% 37 100.0%

    4)看護経験年数

    看護管理者は、いずれの施設も 20 年以上の看護経験のある看護師が約 8 割を占めていた。介護老人福

    祉施設では、10-20 年未満の看護師が2割を占めていた。

    看護スタッフでは、10-20 年未満の経験をもつ看護師がいずれの施設でも最も多く働いていた。

    7

  • 図 2-1 高齢者施設別の看護師経験年数(看護管理者)

    図 2-2 高齢者施設別の看護師経験年数(看護スタッフ)

    0.8%n=1

    1.6%n=1

    2.4%n=3

    3.4%n=1

    1.6%n=1

    3.1%n=1

    17.1%n=22

    3.4%n=1

    23.4%n=15

    18.8%n=6

    35.7%n=46

    27.6%n=8

    40.6%n=26

    37.5%n=12

    36.4%n=47

    65.6%n=19

    25.0%n=16

    100%n=4

    25.0%n=8

    7.6%n=10

    7.8%n=5

    15.6%n=5

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    全体

    n=129

    介護老人保健施設

    n=29

    介護老人福祉施設

    n=64

    介護療養型医療施設

    n=4

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    n=32

    看護師経験年数(施設別)

    5年未満 5~10年未満 10~20年未満 20~30年未満 30年以上 不明

    4.6%n=6

    3.2%n=1

    6.8%n=4

    2.7%n-1

    9.2%n=12

    6.5%n=2

    10.2%n=6

    10.8%n=4

    38.5%n=50

    38.7%n=12

    37.3%n=22

    66.7%n=2

    37.9%n=14

    30.8%n-40

    35.5%n=11

    27.1%n=16

    33.3%n=1

    32.4%n=12

    16.9%n=22

    16.1%n=5

    18.6%n=11

    16.2%n=6

    0% 20% 40% 60% 80% 100%

    全体

    n=130

    介護老人保健施設

    n=31

    介護老人福祉施設

    n=59

    介護療養型医療施設

    n=3

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    n=37

    看護師経験年数(施設別)

    5年未満 5~10年未満 10~20年未満 20~30年未満 30年以上

    8

  • 5)高齢者施設就業年数

    高齢者施設での就業年数(施設看護師の経験の総計年数)は、看護管理者は 1 年目~38 年(平均 12.85

    年)、看護スタッフは 1 年目~25 年(平均 8.81 年)と経験値に幅があった。

    3、 日本看護協会「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」の認知度、活用度

    1)認知度

    看護管理者での認知度は約2割で、知らないと回答したものが約6割を占めた。

    看護スタッフの認知度は約1割で、知らないと回答した者は約6割を占めた。

    図 3-1「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」の認知度(看護管理者)

    図 3-2「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」の認知度(看護スタッフ)

    20.9%

    58.9%

    20.2%

    研修プログラムの認知度

    知っている

    知らない

    聞いたことはある

    10.8%

    64.6%

    23.8%

    0.8% 研修プログラムの認知度

    知っている

    知らない

    聞いたことはある

    不明

    9

  • 2)活用度(看護管理者を対象とし、認知度調査 3-1)で知っているとした方のみ回答)

    知っていると回答した管理者の中で、研修プログラムを活用していると回答したものは約3割で、約

    半数は知っていても活用していない状況であった。

    図 3-3「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」の活用度(看護管理者)n=27

    3)活用方法(看護管理者のみ調査実施、複数回答)

    活用していると回答したものの中で、「研修プログラムを自施設に合わせて計画を立案している」が最

    も多かった。

    37.0%n=10

    44.5%n=12

    14.8%n=4

    3.7%n=1

    研修プログラムの活用度

    している

    していない

    今後活用予定

    不明

    10

  • 図 3-4「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」の活用方法(看護管理者)n=10

    4)活用していない理由(看護管理者のみ調査実施、複数回答)

    活用していないと回答したものの中で、理由として、「施設内で研修する時間がない」が最も多く、次

    に、「講義や演習を指導する人がいない」、等の理由が挙げられた。

    1

    8

    3

    3

    3

    0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

    研修プログラムの内容を

    年間計画としている

    研修プログラムを自施設に

    合わせて計画を立案している

    目的、目標、実施形態の内容、

    評価方法を参考にしている

    研修プログラムの活用例を

    参考に年間計画を立案

    現在ある教育計画に不足している

    項目を選択し取り入れている

    研修プログラムを読んで内容を

    確認している

    その他

    研修プログラムの活用方法

    11

  • 図 3-5「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」を活用していない理由(看護管理

    者)n=12

    4、 日本看護協会出版「介護施設の看護実践ガイド」の認知度、活用度

    1)認知度

    看護管理者の認知度は、2割に満たず、約半数は知らないと回答した。介護スタッフの認知度も、1

    割程度で、6割は知らないと回答した。

    看護スタッフの回答を施設就業年数別で比較すると、5年未満の職員の「知らない」と回答した数が

    8割を超えていた。経験年数が長くなるにつれて、認知度は増加していたが、16 年以上の経験を持つ看

    護師で、その認知度は2割に満たない結果であった。

    8

    7

    5

    4

    0

    2

    0

    0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

    施設内で研修する時間がない

    講義や演習を指導する人がいない

    外部の研修を受講している

    内容が難しい

    必要だと感じない

    どのように活用するかわからない

    その他

    研修プログラムを活用していない理由

    12

  • 図 4-1「介護施設の看護実践ガイド」の認知度(看護管理者)

    図 4-2「介護施設の看護実践ガイド」の認知度(看護スタッフ)

    17.8%

    48.1%

    28.7%

    5.4%

    実践ガイドの認知度

    知っている

    知らない

    聞いたことはある

    不明

    10.8%

    62.3%

    23.1%

    3.8%

    実践ガイドの認知度

    知っている

    知らない

    聞いたことはある

    不明

    13

  • 図 4-3「介護施設の看護実践ガイド」の認知度(施設就業年数別)(看護スタッフ)

    2)活用度(認知度調査で知っているとした方のみ回答)

    「知っている」と回答したものの、活用している割合は看護管理者では約4割、活用していない割合

    は6割をであった。

    看護スタッフでは、活用している割合は3割程度で、7割以上は活用していなかった。

    図 4-4「介護施設の看護実践ガイド」の活用度(看護管理者)n=23

    10.8n=14

    8.7n=4

    9.4n=3

    14.8n=4

    17.6n=3

    62.3n=81

    80.4n=37

    65.6n=21

    59.3n=16

    35.3n=6

    12.5n=1

    23.1n=30

    10.9n=5

    21.9n=7

    22.2n=6

    47.1n=8

    50.0n=4

    3.8n=5

    3.1n=1

    3.7n=1

    37.5n=3

    0 20 40 60 80 100

    全体

    n=130

    1-5年n=46

    5-10年n=32

    10-15年n=27

    16年以上n=17

    不明

    n=8

    実践ガイドの認知度(施設就業年数別)

    知っている 知らない 聞いたことある 不明

    39.1%n=9

    52.2%n=12

    8.7%n=2

    実践ガイドの活用度

    している

    していない

    今後活用予定

    14

  • 図 4-5「介護施設の看護実践ガイド」の活用度(看護スタッフ)n=14

    3)活用方法

    活用していると回答した看護管理者、看護スタッフ共に、活用方法としては、「マニュアルや手順を作

    成するときの参考資料としている」が最も多かった。

    図 4-6「介護施設の看護実践ガイド」の活用方法(看護管理者)n=9

    28.6%n=4

    57.1%n=8

    14.3%n=2

    実践ガイドの活用度

    している

    していない

    今後活用予定

    1

    3

    3

    3

    4

    3

    0 1 2 3 4 5

    ケアの実践前の確認に

    使用している

    ケアの振り返りに使用している

    分からないことがあった時に

    調べるために施設内に設置している

    倫理的判断の参考にしている

    ケアの判断に迷った時に参考にしている

    研修のテキストに使っている

    マニュアルや手順を作成するときの

    参考資料としている

    施設内教育計画の参考資料としている

    実践ガイドの活用方法

    15

  • 図 4-7「介護施設の看護実践ガイド」の活用方法(看護スタッフ)n=4

    5、 施設の看護師研修の実態

    1)施設独自の看護研修計画について(質問対象は看護管理者のみ、複数回答)n=402

    「施設の事業計画の柱の一つに研修を置き、施設内外の研修を計画している」が最も多く、次いで、「施

    設内外の情報を伝達している」、であった。

    2

    1

    1

    1

    2

    3

    1

    0 1 2 3 4

    ケアの実践前の確認に

    使用している

    ケアの振り返りに使用している

    分からないことがあった時に

    調べるために施設内に設置している

    倫理的判断の参考にしている

    ケアの判断に迷った時に参考にしている

    マニュアルや手順を作成するときの

    参考資料としている

    その他(教育、指導時に確認)

    実践ガイドの活用方法

    16

  • 図 5-1 施設の看護研修計画についての現状(看護管理者のみ)n=402 複数回答

    2)施設独自の看護師教育で解決したい問題(質問対象は看護管理者のみ、複数回答)n=209

    看護師教育の問題として、「勤務時間内に研修を行えない」が最も多く、「講師や指導者がいない」、「外

    部研修に参加させるゆとりがない」、が続いた。

    図 5-2 看護師教育で解決したい問題(看護管理者のみ)n=209 複数回答

    48

    51

    72

    58

    44

    44

    32

    18

    27

    8

    0

    0 10 20 30 40 50 60 70 80

    組織の理念や法令に基づいて基本方針を立てる

    多職種で構成された委員会を設立し、

    定期的に会議を開催

    施設の事業計画の柱の一つに研修を置き、施設内外

    の研修を計画

    施設内外の研修の情報を伝達している

    研修内容は全職種共通と個々の職種の専門性に応じ

    た…

    実務に直結した業務の中で教育(OJT)している

    研修の有効性を評価し、次回の研修に活用している

    教育計画はないが定期的に研修を実施している

    個人の自己研鑽に任せている

    問題発生時に必要に迫られて研修を実施している

    その他

    研修計画の現状

    22

    52

    73

    43

    18

    1

    0 20 40 60 80

    予算がない

    講師や指導者がいない

    研修を勤務時間内に行えない

    外部研修に参加させるゆとりがない

    教育の企画運営が困難

    その他

    看護師教育で解決したい問題

    17

  • 3)研修参加の状況(質問対象は看護スタッフのみ)

    看護スタッフの約7割はなんらかの研修に参加していると回答、参加していないは約2割であった。

    施設別で比較すると、介護老人保健施設は参加率が約9割と最も多く、その他の施設は 7 割前後の参加

    率であった(図 5-3)。年代別で参加状況を比較すると、40 代の職員の参加率は 8 割を超えていた。そ

    の他の年代は 6、7 割であった(図 5-4)。高齢者施設での就業年数別で参加率を比較すると 16 年以上

    の方が 8 割を超えていたが、全体的に大きな差はなかった(図 5-5)。施設の開設主体別で参加率を比

    較すると医療法人で働く看護師の参加率は 9 割を超えていたが、その他の施設(n が少ない施設は除き)

    は 7 割程度であった(図 5-6)。

    図 5-3 研修参加状況(施設別、看護スタッフ)

    74.6n=97

    87.1n=27

    72.9n=43

    66.7n=2

    67.6n=25

    24.6n=32

    12.9n=4

    25.4n=15

    33.3n=1

    32.4n=12

    0.8n-1

    1.7n=1

    0 20 40 60 80 100

    全体

    介護老人保健施設

    介護老人福祉施設

    介護療養型医療施設

    有料老人ホーム

    (介護型、一部介護型)

    研修の参加状況(施設別)

    参加している 参加していない 不明

    18

  • 図 5-4 研修参加状況(年齢別、看護スタッフ)

    図 5-5 研修参加状況(施設就業年数別、看護スタッフ)

    74.6n=97

    70.8n=17

    83.7n=36

    73.5n=36

    66.7n=6

    100n=2

    24.6n=32

    100n=3

    29.2n=7

    16.3n=7

    24.5n=12

    33.3n=3

    0.8n=1

    2.0n=1

    0 20 40 60 80 100

    全体

    n=130

    20代n=3

    30代n=24

    40代n=43

    50代n=49

    60代N=9

    70代n=2

    研修参加の状況(年代別)

    参加している 参加していない 不明

    74.6n-97

    71.7n=33

    75.0n=24

    74.1n=20

    82.4n=14

    75.0n=6

    24.6n=32

    28.3n=13

    25.0n=8

    22.2n=6

    17.6n=3

    25.0n=2

    0.8n=1

    3.7n-1

    0 20 40 60 80 100

    全体

    n=130

    1-5年n=46

    5-10年n=32

    10-15年n=27

    16年以上n=17

    不明

    n=8

    研修参加の状況(施設就業年数別)

    参加している 参加していない 不明

    19

  • 図 5-6 研修参加状況(開設主体別、看護スタッフ)

    4)研修参加回数(質問対象は看護スタッフのみ)

    年間の研修参加回数は 0~25 回(平均研修参加数は 6.5 回/年)と参加回数に差があった。

    5)研修内容(質問対象は看護スタッフのみ)

    施設内の研修が最も多く、次いで、施設外の研修に参加していた。

    74.6n-97

    90.3n-28

    70.3n=45

    100n=1

    71.9

    24.6n=32

    9.7n=3

    28.1n=18

    0

    100n-2

    28.1

    0.8n=1

    1.6n-1

    0 20 40 60 80 100

    全体

    n=130

    医療法人

    n=31

    社会福祉法人

    n=64

    都道府県・

    市区町村

    n=1

    社団・

    財団法人

    n=2

    その他

    n=32

    研修参加の状況(開設主体別)

    参加している 参加していない 不明

    20

  • 図 5-7 研修内容(看護スタッフ、複数回答)

    6)研修不参加の理由(質問対象は看護スタッフのみ)

    不参加の理由として、「研修の情報がない」が最も多く、次いで、「看護師が少なく、研修に参加する

    時間がない」、であった。

    図 5-8 研修不参加の理由(看護スタッフ、複数回答)

    82

    33

    59

    7 10

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    施設内での

    研修

    同法人内での

    合同研修

    施設外の

    研修

    eラーニング その他

    参加研修の種類

    15

    2 26

    17

    3 4 10

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    看護師が

    少なく、

    研修に

    参加する

    時間がない

    研修参加費、

    交通費等の

    保障がない

    休日扱いに

    なるため

    参加していない

    研修場所が

    遠い

    研修の情報が

    ない

    参加したい

    研修がない

    必要だと

    感じない

    その他

    研修不参加の理由

    21

  • 6、 看護実践の場面で困っていること(質問対象は看護スタッフのみ)

    1)困っていることの有無

    施設での看護場面において、困っていることがあると回答した看護スタッフは、約6割であった。困

    っていることがないと回答した看護スタッフは約3割であった。

    図 6-1 看護実践の場面で困っていることの有無(看護スタッフ)

    2)困っている場面を具体的に回答

    自由記載の回答からキーワードを抜き出し、それをカテゴリー化した結果、看護実践の場面で困って

    いることとして、皮膚・褥瘡ケアや嚥下機能低下時の対応、胃瘻トラブル、認知症ケア、看取りケア、

    不穏への対応、ポジショニングといったケアに関すること、医師や介護職、多職種といった職種間連携

    に関すること、人員不足や感染症対策、教育機会の少なさといった体制に関すること、医療依存度が高

    い人への対応、医療処置へのストレス、マニュアル作成の困難、知識・技術面の格差・不安、看護判断

    への不安などがあがっていた。

    58.5%34.6%

    6.9%

    実践で困っていることの有無

    困っていることが

    ある

    困っていることは

    ない

    不明

    22

  • 3)解決方法

    困難な場面の解決方法として、「同じ職場の職員に聞く」が最も多く、次いで、「書籍や文献で調べる」、

    であった。研修に参加すると回答した看護スタッフは 1 割程度であった。

    図 6-2 困難な場面にの解決方法

    7、 研修ニーズについて

    1)どんな研修が必要と感じるか

    自由記載の回答からキーワードを抜き出し、それをカテゴリー化した結果、看護管理者、看護スタッ

    フが共通していた研修ニーズには、生活援助や栄養管理、口腔ケア、褥瘡/皮膚ケアなどの日常ケアに関

    すること、認知症ケ、EOL ケア、倫理、ACP、リスクマネジメント、感染症対策、知識や技術に関する

    こと、コミュニケーション、接遇などがあった。高齢者施設では医師が常駐していないため、看護判断

    やアセスメント、急変時の対応、病状説明、家族看護のニーズや、高齢者医療や高齢者の特徴、疾患、

    薬剤等の最新の知識へのアップデートといったことがあり、高齢者施設看護師の役割、法律や制度とい

    った高齢者施設の特性に関係するニーズもあった。医師や介護職との連携、施設・職種間連携、コーデ

    ィネーションといった連携に関するニーズがあった。他施設との情報交換や事例検討、実習といった研

    修方法への要望や地域ネットワークの構築といった内容もあった。

    看護管理者に特徴的であったニーズとしては、リーダー研修や教育者を育成するための指導者研修や、

    専門、認定看護師の育成といった、組織の質の向上を目指す要望があった。

    D.考察

    1.「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」認知度・活用度について

    日本看護協会が提案する「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」とは、介護施

    設に従事する看護実務者に求められる知識・技術を 3 系統 24 項目にまとめたものである。また、この研

    修プログラムをふまえ、効果的な活用例も提示されている。今回の質問紙調査の結果、「介護施設におけ

    る看護職のための系統的な研修プログラム」の認知度は、看護管理者が 2 割、看護スタッフが 1 割と大

    99

    44

    92

    3618 2 0

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    同じ職場の

    職員に聞く

    違う職場の

    職員に聞く

    書籍や文献で

    調べる

    研修に

    参加する

    専門家にきく 何もしない その他

    困難な場面の解決方法

    23

  • 変低く、看護管理者、看護スタッフ共に、約 6 割(看護管理者 58.9%、看護スタッフ 64.6%)は研修プ

    ログラムの存在すら知らないといった状況が明らかとなった(図 3-1、図 3-2)。さらに、「知っている」

    と回答した看護管理者を対象とし、研修プログラムの活用度を調査した結果、37.0%は活用しているが、

    44.5%は活用できていない状況が明らかとなった(図 3-3)。つまり、近年の超高齢社会に伴う地域包括

    ケアシステムが推進される中、介護施設の看護師の役割や責任は重要視されており、専門的知識や技術

    およびマネジメント能力に至るまで、広範な領域の知識や技術が求められているが、それらを系統だて

    た研修プログラムとして構築することに関しては、まだまだ浸透していないと考えられる。また、その

    研修プログラムの構築は、各高齢者施設の課題ごとに立案することを推奨しているが、現状の高齢者施

    設においては、予算の面、マンパワーの不足、指導者不足などがあり、施設毎のプログラムの立案が大

    変困難な状況であることが明らかになった(図 3-5、図 5-1、図 5-2)。

    2.「介護施設の看護実践ガイド」認知度・・活用度について

    日本看護協会出版の介護施設の看護職員の役割や機能に特化した「介護施設の看護実践ガイド」には、

    介護施設に必要とされる知識や技術を系統的にまとめられたものであるが、その認知度も看護管理者

    17.8%、看護スタッフ 10.8%と大変低い状況であり、さらに、「知らない」と回答したものは看護管理者

    48.1%、看護スタッフ 62.3%と、実践ガイドが高齢者施設で働く看護職員に認知されていない現状が明

    らかとなった(図 4-1、図 4-2)。また、「知っている」と回答した看護管理者のうち、活用しているも

    のは 39.1%、看護スタッフは 28.6%と、その活用度も低く、「知っている」と回答したが活用できていな

    いものが看護管理者、看護スタッフともに 5 割を超え、実践ガイドを認知しているものの活用できてい

    ない状況が明らかとなった(図 4-4、図 4-5)。

    3.高齢者施設看護師の教育・研修に関するニーズ

    高齢者施設の施設ごとの看護師は、病院と比較すると少数のうえ、医師が常駐していない施設も多く、

    その役割や責任は拡大している中で、困難な場面にいかに対応するかが問われている。今回の質問紙調

    査で、看護実践の場面で困っていると感じている看護スタッフは約 6 割を占めた(図 6-1)。実践の場

    面において、多くの看護師が困難な場面に遭遇し、悩んでいることが伺える。その解決方法としては、「同

    じ職場の職員に聞く」、「書籍や文献で調べる」が多く、次に「違う職場の職員に聞く」、「研修に参加す

    る」と回答していた(図 6-2)。

    研修の参加状況であるが、施設別、年代別、施設就業年数別、開設主体別では多少の参加率の差はあ

    るが、全体では約 7 割はなんらかの研修に参加していた(図 5-3、5-4、5-5、5-6)。また、研修先

    としては、施設内外と様々であった(図 5-7)。これらの結果をみると、高齢者施設看護師は、様々な要

    因から、研修参加しづらい現状があると考えていたが、7 割以上は参加できていることが明らかになった。

    ただ、研修参加不参加の理由として回答のあった「研修の情報がない」、「看護師が少なく、研修に参加

    する時間がない」、「研修場所が遠い」、「必要だと感じない」、「参加したい研修がない」は想定した内容

    と合致しており、高齢者施設で働く看護師の質の向上を目指すためには、様々な研修情報の周知をはじ

    め、研修場所の検討、施設看護師のニーズに合った研修の企画が求められる(図 6-2)。さらに具体的な

    研修ニーズを問うと、看護管理者、看護スタッフともに、多様なニーズが明らかとなり、高齢者施設の

    看護師の役割や特性の明確化・具体化をはじめ、急性期~終末期・看取りケアを含む EOL ケア、ACP、

    24

  • 最新医療や知識、技術のアップデート、看護判断やアセスメント、多職種との連携、コーディネーショ

    ンの方法、地域のネットワーク構築がといった看護の質を向上させる内容があげられた。さらに、看護

    管理者ではリーダー研修、指導者研修、さらに、専門、認定看護師の育成といった組織の質の向上を目

    指す要望もあった。

    その地域や施設毎のニーズを把握し、看護師間の能力差を均てん化を目指し、看護の質を向上させる

    教育・研修プログラムを構築することが重要であるが、マンパワー不足、研修時間の確保が困難である

    ことや予算等の課題を考えると、施設毎にそれを課すことは大変至難なことであると考えられる。これ

    らを踏まえ、ネットワークを構築し、地域のニーズを満たした教育・研修プログラムを企画し、複数の

    施設でそのプログラムを共有してはどうかと考える。そこで、次年度は近隣介護施設と当センター(拠

    点病院)が連携し、地域ネットワークを構築、それを活用した教育・研修プログラムの企画・運営を試

    み、そのプロセスを提言したいと考えている。

    E.結論

    日本看護協会が提案する「介護施設における看護職のための系統的な研修プログラム」、日本看護協会出

    版の「介護施設の看護実践ガイド」の認知度は低く、高齢者施設の看護師を対象とした研修プログラム

    や教育に活用できていない状況が明らかとなった。また、具体的な研修ニーズを問うと、多種多様なニ

    ーズが明らかとなり、地域、施設のニーズを満たす教育・研修プログラムの提案が求められていること

    が分かった。

    F.健康危険情報

    なし

    G.研究発表

    1.論文発表

    なし

    2.学会発表

    1)2021 年、老年看護学会学術集会で発表予定

    H.知的財産権の出願・登録状況

    1.特許取得

    なし

    2.実用新案登録

    なし

    3.その他

    なし

    25