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20 BioBanking TECAN JOURNAL 3/2012
IBBL をはじめとするバイオバンクは、良質の生物検体だけでなくカルテのデータや環境要因データを評価するための技術や科学的専門知識を提供し、現代の医学研究に重要な役割を果たしている。IBBL は、2008 年、3 つの米国の研究センター(Translational Genomics Research Institute(TGen)、Institute for Systems Biology、Partnership for Personalized Medicine)と戦略的パートナーシップを構築するという政府の取り決めによって設立された。IBBL は、ルクセンブルクの Personalized Medicine Consortium(PMC)と密接に連携し、自国と近隣国の生体サンプルや関連臨床データを収集、保存、分析し、さまざまな研究機関に提供する。
癌や 2 型糖尿病、パーキンソン病などの研究用に身体疾患のサンプルを収集する他、国立保健研究所と協力してコントロールとして使用する健常者のコホートサンプルも収集する。
独自の研究や国際的に著名な研究団体との共同研究を進める IBBL では現在、世界クラスの研究者が革新的な生物検体研究の最前線で活躍している。IBBL の Biospecimen Science 部門の責任者 Fay Betsou 氏は、次のように述べた。「研究現場では、検体の同定よりもバイオマーカーの同定およびバリデーションを重視しがちです。しかし検体の同定は、実験結果を根底から覆しうる基本的な重大問題です。そのため革新的な生物検体の研究はきわめて重要ですが、また極めて稀有な研究であり、IBBL に特有のものです。」
IBBL の生物検体ライブラリやバイオデータベースには、高品質の組織や体液が保存され、厳格な品質要件に従って維持されている。また、関連するバイオリファイナリー解析および研究サービスでは、DNA や RNA、タンパク質などの高品質のアナライトを生産し、ハイスループットの遺伝子配列解析および遺伝子発現解析を可能とする技術を備え、生物検体研究を実施している。さらにインフォマティクスプラットフォームによって、臨床データや生物検体データが確実に維持されている。IBBL をはじめとする多くのバイオバンクや診断ラボが主要ターゲットとする生物検体が、バフィーコートである。これは凝固していない血液を遠心分離した際、または静置した際にできる白血
球と血小板の膜であり、しばしば DNA の抽出に使用される。これまで全血から手作業でバフィーコートを分離しようとすると、長く面倒なプロセスが必要な上、膜の分離品質は技術者のスキルや手法に大きく依存していた。そこでこの手間のかかる作業を省略し、サンプリングの不安定要素を排除するため、IBBL と Tecan は Freedom EVO 200 プラットフォームを使用した自動化手順を共同で開発した。
「我々のサンプルスループットは、現在はあまり高くありませんが、近い将来は 5 倍となる予定です。そのため当初は、これに対応できる柔軟性の高いリキッドハンドリングシステムを探していました。また、処理時間に関しては特に厳格な要求があります。サンプル収集から凍結までの時間を短縮する必要があるため、処理速度がきわめて重要です。そこで既存の選択肢を検討し、複数のメーカーと話し合った結果、Tecan を選びました。我々は最初から、Freedom EVO を使用す
バフィー コートの高速自動分離によって DNA の抽出にメリットを
Tecan と Integrated BioBank of Luxembourg(IBBL)は、Freedom EVO® 200 ワークステーションを使用したバフィーコート抽出用自動化プラットフォームの共同開発に成功した。これによって、研究スタッフは手間のかかる作業から解放され、DNA の収量も大幅に増えた。
バイオバンクのプロセスについて学生に説明をするConny Mathay 氏
IBBL の Biospecimen Science 部門の責任者 Fay Betsou 氏
「驚くべき結果でした。DNA 収量は、自動化プロセスを使用すると 10 ~ 15 % 高まります。」
ると従来のリキッドハンドリングだけでなくバフィー コートの抽出も自動化できる確かな可能性があると感じていました。これは決して簡単なプロセスではありませんでした。そのおもな理由は、バフィー コートの膜そのものに各サンプル間で量や粘性、特性のばらつきがあるためです。しかし Tecan の技術チームと何回か話し合った後、数か月間協力して自動化システムを共同開発しました。」と Betsou 氏は述べた。
IBBL の血液サンプルは、すべて最初に血球計算と CRP の測定を実施し、血球数や炎症状態といった基本的な背景データを作成する。遠心分離した血液採取用チューブを Freedom EVO プラットフォームにセットする。このプラットフォームには、ロボット マニピュレータ(RoMa)や 8 チャネル リキッドハンドリング(LiHa)およびピック &プレース(PnP)アーム、チューブ インスペクション ユニット(TIU)、Xtr-96 フラットベッド スキャナ(FluidX)、Xsd-96Pro & Xsd-48Pro
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Freedom EVO と IBBL チーム
モジュール(FluidX)、HEPA フィルターで浄化したエアを作業台に供給する BDK モジュールなどを取り付けている。血清や血漿、尿の分注にも使用できるこのワークステーションは、バフィー コートの収量と品質を最大化し、交叉汚染のリスクを最小化するよう最適化している。チューブは TIU に移動し、レーザー ビームを使用してバフィー コートの膜の位置を特定する。その後、LiHa がスパイラルな動きでバフィー コートを吸引し、専用のチューブに移す。「LiHa は、きわめて正確な位置合わせとスピードでバフィー コートの膜を吸引し、このプロセスを標準化するため、技術者間のばらつきがなくなります」と Betsou 氏は述べた。バリデーションプロセスの途上で IBBL は、自動化システムによってバフィー コート産物に含まれる赤血球やヘモグロビンの持ち込みが減少し、純度が高まることを発見した。また、白血球細胞の分布もほぼ同等で、DNA の平均収量も手作業プロセスに比べ大幅に改善した。「驚くべき結果でした。DNA 収量は、自動化プロセスを使用す
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ると 10 ~ 15 % 高まります。バフィーコートを手作業で分離するには複雑な手順が必要ですが、Freedom EVO システムを使用すると、現在 24 サンプルをわずか 16 分で処理できます。我々はこのシステムに非常に満足しています。近い将来 Tecan とは、別の生物検体研究プロジェクトでも協力したいと考えています。」と Betsou 氏は述べた。
Tecan のバイオバンキングソリューションについての詳細は、www.tecan.co.jp/applications/biobanking/ を参照してください。
IBBL についての詳細は、www.ibbl.lu を参照してください。
■この記事は2012年9月発行 Tecan Journal 3/2012に掲載されているユーザーストーリーを抜粋、翻訳したものです。ご質問、ご要望は下記までお願いします。
テカンジャパン株式会社TEL. 044-556-7311/FAX. 044-556-7312E-mail: [email protected]