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yuhsuke-koyama
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ソーシャルゲームの問題点と
ユーザーの特性小山友介(芝浦工業大学)
ゲームという商品の特性▶嗜好性が非常に強い商品
ゼロ円でも要らないモノもある(ワゴンの肥やし)
→単純な価格競争にならない ブランドに対する忠誠心(ロイヤリティ)を持つ
価格を上げても、かなりの消費者はついてくる
経済学用語で言うところの市場支配力を持つ
各ユーザーが「値頃( reasonable)」ラインを持つ 値頃ラインより安ければ購入
1本のゲームからの利益を増やすには?▶大きく 2つの方法
新規ユーザーを増やす 客単価を上げる
▶新規ユーザーを増やすのは非常に難しい 新規タイトルはあまり売れない 既存タイトルの続編はほとんどが縮小再生産
減衰率をどこまで下げられるか、が勝負
広告宣伝費はほとんど無い▶客単価上昇しか方法がない
パッケージゲームでの客単価上昇法価格差別戦略
▶下の 3戦略の組合せ DLC,限定版,廉価版
初回版
人数(需要)
払える上限額
0
廉価版
初回版
人数(需要)
払える上限額
0
限定版
売上
人数(需要)
払える上限額
0
DLC
※これ以外だと,店舗別特典を用意して複数買い誘発もありますが,特殊な例外とします
ソーシャルゲームの特性▶ゲームのパッケージではなく,サービスを販売する 売り切り型でない 顧客を継続的に「もてなす」必要あり
○○キャンペーン,○○イベント...
サービスの対価として,消費者が遊んでいる間は継続的に収入チャンス
▶最低課金単位が小さい:細やかに価格差別可能 10000円払ってもいい人からは 10000円 100円だけ試したい人からは 100円
企業の売上額
人数(需要)
払える上限額
0
ソーシャルゲームの価格差別戦略▶最低課金単位が細かい→演出次第で,本人が払ってもいい上限まで出してもらうことが可能に
▶理論上,ソーシャルゲームでの可能な売上(右図) 三角形のすべての部分だけ払ってもらうことが可能
アイテム課金のビジネスモデルの特徴▶パッケージにない利点が多い
1. 基本料金無料:多数の潜在的な顧客を呼び込む (いわゆるフリーミアムビジネスモデル)
2. パッケージよりずっと細やかに価格差別を行える
1. 100円しか払う気がない顧客からは 100円
2. 5000円まで出せると考えている顧客からは 5000円
3. 10 万円までと考えている顧客からは 10 万円▶ 重要なこと:ビジネスの重心が移動
お金:ゲームエクスペリエンスの対価 モノ(パッケージ)からサービスへ
価格差別戦略:不十分▶ソーシャルゲームのすさまじい高収益
利益高・利益率ともに高い 売上高利益率: 50 %?
非常な高収益:別の理由があるはず 価格差別戦略だけではそこまでいくのか?
▶補助線:頻発する高額支払 子供~高校生が親のアカウントで遊ぶ→高額課金 いい年した大人も高額課金
数十万,百万以上
▶合理性を失わせてるのでは?
「演出」による上限額拡大▶ゲーム内の様々な作り込
み 課金をすることで気持ちよく/楽しくプレイできるデザイン
CEDECでの開発者の発言 月 5000円:俺ツエー
月 30000円:無双
定期的なイベント 1 月は正月, 2 月はチョ
コ・・・
支出するきっかけにする
人数(需要)
払える上限額
0
様々な作り込みで合理的な行動より支払が増加
課金率
モバゲー全体
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
0円 1-300円 301-500円 501-1000円1001-2000円 2001-3000円 3001-5000円 5000円 -
Prospect Theoryの知見とソシャゲ(1)▶Prospect Theoryの知見で,ソーシャルゲーム
での人間行動はある程度説明可能 もっと言うなら,「ハマるゲームデザイン」として,ゲーム産業内に暗黙知化されたノウハウとして存在しているのでは?
1. 人間は損得の計算を「損(得)の総額」ではなく、「基準となる点からの差額」で行う
→1回 300円ずつ徴収することで基準点を毎回ずらす.「 300円出しただけ」という感覚→最終的に 10 万円に.
Prospect Theoryの知見とソシャゲ(2)2. 損得の評価:基準点から離れるにつれて・・・
得:プラス評価の伸び幅が弱まる(逓減) 損:マイナスの評価の伸び幅が強まる(逓増)
→1回あたりの支出額が高額になると忌避感が強まるので、安価( 100円~ 300円程度)に押さえる
Prospect Theoryの知見とソシャゲ(3)3. 確率が小さい現象に対して、人間はその発生確
率を過剰に見積もりがちである。言い換えると、「ほぼ 100 %」の現象に対しては「 100 %でない」ことに過剰に反応し「わずかだが可能性がある」現象に関しては「確率がゼロでない」ことに過剰に反応する
→ユーザーは実際の確率以上に「レアアイテムが当たるかもしれない」と考えやすい
▶これら 3つの知見:“ Prospect Theory”からの帰結
ソーシャルゲーム依存度判定(1)1. いつも頭のなかでソーシャルゲームのことばかり考えている。
2. 興奮を求めてソーシャルゲームに使う金額が次第に増えている。
3. ソーシャルゲームをやめようとしてもやめられない。
4. ソーシャルゲームをやめているとイライラして落ちつかない。
5. いやな感情や問題から逃げようとしてソーシャルゲームをする。
DSM-IVをソーシャルゲームに合うように改変
ソーシャルゲーム依存度判定(2)6. (コンプ)ガチャで欲しいカードが出ないと、
使ったお金をムダにしたくなくて、いつまでも(コンプ)ガチャをやり続ける。
7. ソーシャルゲームの問題を隠そうとして、家族やその他の人々に嘘をつく。
8. ソーシャルゲームの元手を得るために、詐欺、盗み、親のクレジットカード番号を盗み見する、横領、着服などの不正行為をする。
9. ソーシャルゲームのために、人間関係や仕事、学業などがそこなわれている。
10.ソーシャルゲームでつくった借金を他人に肩代わりしてもらっている。
ユーザー特性調査▶データソース:ゲームを日常的にプレイしているユーザー 2060人 10 代, 20 代, 30 代, 40 代, 50 代の男女それぞれ
200人 データ選別用アンケートを 3 万人から以下のうち少なくとも 1 種類に関して「日常的に遊ぶ」と回答した人のみをピックアップ 家庭用ゲーム
PCのオンラインゲーム
ソーシャルゲーム
(ソーシャル以外の)
ケータイゲーム
1次調査(スクリーニング調査)約3万サンプル
2次調査(本調査)10代から50代の男女各200サンプル
「家庭用ゲーム・オンラインゲーム」もしくは「ソーシャルゲーム・モバイルゲーム」を現在利用している人のみに限定
ユーザ間の交流
▶ゲームを遊ぶ際の交流 一人で遊ぶ人がほとんど
▶ゲームの紹介・勧誘 家庭用の方が積極的 ソーシャルはあまり勧誘しない
78.3%
11.2%
0.7%
13.5%
78.2%
6.1%
8.5%
9.7%
67.9%
17.1%
10.6%
17.0%
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0%100.0%
基本的に一人
周囲の友人・知人
ネットの友人・知人
家族
家庭用のみ オンライン・ソーシャル 両方遊ぶ
40.8%
30.1%
27.9%
44.1%
38.7%
39.0%
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0%
家庭用
オンライン
ソーシャル
家庭用
オンライン
ソーシャル
両方利用経
験あり
家庭用
のみ
オンライン
・ソー
シャルの
み
遊んでいるゲームを紹介・勧誘するか
ゲームで重視する要素(クロス)
0% 25% 50% 75% 100%
ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者ソーシャル未経験ソーシャル経験者
操作
のシン
プルさ
シナリ
オ・世
界観
グラ
フィッ
クキャラ
クターサ
ウンド
緊張
感・スリル
コミ
ュニケー
ション
比較
・ランキ
ング対戦
不要 どちらでもない 重要
重要という回答が過半数を超える 4項目
「操作のシンプルさ」以外は家庭用によく見
られる特徴
ソーシャルの経験有無で評価が変わる 3項目
ゲームで重視する要素(因子分析)▶ 前スライド各質問で因子分
析 主因子法・バリマックス回転
▶ 出来すぎぐらいキレイに 2
軸
▶ 縦軸:家庭用ゲーム的因子 サウンド,グラフィック,
キャラクター,シナリオ・世
界観
▶ 横軸:ソシャゲ的因子 対戦,比較・ランキング,コ
ミュニケーション
▶ 面白さとして 2つの因子は個別のもの
-.500
.000
.500
1.000
-.500 .000 .500 1.000
操作のシンプルさ
対戦比較・ランキング
コミュニケーション
緊張感・スリル
グラフィック
サウンド
キャラクターシナリオ・世界観
ゲームハード価格の主観的評価▶本体価格(定価)を提示した上で各ハードに対し高い( 5)~安い( 1)について 5 件法で質問
▶ 3 グループで 4, 5と回答した比率を計算し,横軸をハード価格としてプロット 家庭用のみ遊ぶ オンライン orソシャゲの
み 両方遊ぶ
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000
高いと
感じた人の
割合
価格[円]
家庭用のみ オンライン・ソーシャルのみ
両方プレイ経験あり 線形 (家庭用のみ)
線形 (オンライン・ソーシャルのみ) 線形 (両方プレイ経験あり)
PSVITA
WiiU
PlayStation3
Xbox360
ニンテンドー3DS
オンライン・ソシャゲのみ:ハード価格に厳しい
両方プレイ:ゲーム好き→ハード価格に寛容
家庭用のみ:その中間
ユーザー特性(おまけ)卒論データより▶ 中高生データ
( 2012 年 12 月実施) 私立 A学園(中高一貫の男子校)
中学生 180人,高校生200人
▶ゲームユーザーの傾向 経験率 5 割,現役率 3 割
中>高>大
プレイ経験者中の課金率2 割程度
小山研の卒論調査より
67
55
20
29
40
18
84
94
34
0% 20% 40% 60% 80% 100%
中学
高校
パイロット調査
今も遊んでいる
過去にやっていた
遊んでいない
※パイロット調査:芝浦工大 1, 2年生(ほぼ男子)
23
17
69
85
0% 20% 40% 60% 80% 100%
中学
高校
ある
ない
参考:コンプガチャ
コンプガチャ規制とその対応▶消費者庁:「絵合わせ」のみ規制 「カード合わせ」に関する景品表示法(景品規制)の運用基準の公表について( 2012 年 6 月 28 日)
▶一般社団法人ソーシャルゲーム協会( JASGA)設立 2012 年 11 月 8日 現在,自主規制議論中 「何がコンプガチャか」のガイドラインは作成
ガチャ自体を辞める気は無いらしい
コンプガチャの問題点1. 販売しているのが「アイテムが手に入る”かもしれない”くじを引く権利」であること
アイテムをそのまま販売しているのではない
2. ( 1と関連して)ユーザーが欲しいアイテムを手に入れるまでにかかる金額が不明
「ガチャ 1回 300円、コンプガチャの最終商品の価格が 10 万円」だとしても、消費者に商品価格は明示されていない
3. くじ 1回あたりの支出額が少額で、かつ、くじ1回あたりにかかる時間が短い
気がついたら高額課金,と言うことが起こりうる
スマートフォン普及後のソシャゲこの 1 年で急激にスマホシフト
1. ゲームが複雑に 画面解像度が大幅上昇 端末性能が飛躍的に上昇 UIがタッチパネルに Webベースで、ネイティブアプリとしての開発も
2. ガワネイティブがやりづらい
→開発コストが高騰
KLab2011年度四半期決算短信より抜粋
12 ―月 2月 3 ―月 5月 6 ―月 8月 9 ―月 11月0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
スマホ・ネイティブアプリ スマホ・Web経由ガラケー
Klabの 2011年 12月~ 2012年 11月のモバイルゲーム売上比率
ソシャゲの今後▶ コンプガチャ騒動後:増収減益
まだまだ高収益だが,限界も見えた
▶ 未だに「ガチャ」以外のビジネスモデルが無い パズル&ドラゴンズ(ガンホーゲームズ)ですら,収益源は廃人のガ
チャ
▶ 消費者庁がガチャ規制まで踏み込むかが,今後の鍵騒動前 1騒動後 2騒動後 騒動前 1騒動後 2騒動後 騒動前 1騒動後 2騒動後
Klab 3660 3299 3546 1446 931 -212 39.5% 28.2% -6.0%
Cave 651 661 518 82 -15 -46 12.6% -2.3% -8.9%
ドリコム 1875 1901 2176 251 18 200 13.4% 0.9% 9.2%
アクセルマーク 471 562 475 57 -11 -6 12.1% -2.0% -1.3%
クルーズ 1781 2284 3196 278 477 460 15.6% 20.9% 14.4%
ボルテージ 2195 2218 2407 465 -107 181 21.2% -4.8% 7.5%
*エイチーム 685 1224 1836 262 341 750 38.2% 27.9% 40.8%
合計 11318 12149 14154 2841 1634 1327 25.1% 13.4% 9.4%
**ガンホーゲームズ 1936 2730 12159 685 1251 6897 35.4% 45.8% 56.7%
***合計(参考値含 ) 13254 14879 40467 3526 2885 9551 26.6% 19.4% 23.6%
単位:百万円売上高 営業利益 営業利益率
結語:ソーシャルの利点はどこか?▶日本のゲーム産業が海外で不利な点がカバーされ,
日本のゲーム産業の優れた点が生きている分野
1. 2Dのイラストに非常に高い付加価値がつく。2. プレイヤーを熱中させる、きめ細やかな作り込
みがとても重要である。3. 据置機ほどの高度な技術/システム設計能力を必要としない。
▶早く業界を健全化させ,世界市場に出て行くべし