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報  告 2013年度オープンキャンパスでのIPUあいらぼ参加者を 対象としたアンケート調査 増成 暁彦 1) ,武島 玲子 1) ,黒田 暢子 2) ,岩本 浩二 3) ,伊藤 文香 4) ,大久保 知幸 5) 髙村 祐子 2) ,福田 友秀 6) ,瀧本 幸司 7) ,正田 傑 8) ,大澤 侑一 9) 1) 茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 2) 茨城県立医療大学保健医療学部看護学科 3) 茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科 4) 茨城県立医療大学保健医療学部作業療法学科 5) 茨城県立医療大学保健医療学部放射線技術科学科 6) 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 7) 慈生会等潤病院 8) 日立総合病院 9) 筑波メデイカルセンター病院 要旨 茨城県立医療大学ではシミュレーション医療教育・研究を充実させることを目的に,IPUあいらぼを2012年度 に開室した。その活用方法の ₁ つにオープンキャンパスでの医療学習体験企画の出展が挙げられ,2013年度オー プンキャンパスにおいて実施した。出展企画は心肺蘇生法体験,静脈採血体験,胃管挿入体験,衛生的手洗い体 験,高齢者体験, PCによる解剖実習体験の ₆ つであった。これらの企画の満足度を調査するため,2013年度オー プンキャンパスIPUあいらぼ参加者を対象にIPUあいらぼに参加した感想のアンケート調査を行った。その結果, 多くの参加者から肯定的な意見が得られた。特に静脈採血体験は参加者が多く,肯定的な意見も多かった。この ことから2013年度オープンキャンパスにおけるIPUあいらぼの企画は参加者の満足度が高かったと考えられる。 キーワード:オープンキャンパス,スキルラボ,シミュレーション医療教育 はじめに 医療教育現場において,実際の状況や出来事,プ ロセスを表現することができるシミュレーション 1) を利用したシミュレーション医療教育は1950年代か ら取り入れられている 2) 。この教育方法の目的は, 実際の患者症例を想定し,それに対する医療を模擬 的に実践することで,そこから必要な知識・観察力・ 判断力・実行力,また医療チームの一員としてのチー ムワークを身につけていくことであり 2) ,授業で習 得した知識,知識の応用力,基本的スキルを実践力 に変容できることから有用な教育手段と成りうる 3) と考えられている。 茨城県立医療大学(以下,本学)では学生の自己 学習による実技能力及び研究能力の更なる向上を図 り,本学のシミュレーション医療教育・研究を充実 連 絡 先:増成 暁彦  茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 〒 305-8577 茨城県稲敷郡阿見町阿見 4669-2 電  話:029-840-2214 FAX:029-840-2314 E-mail:[email protected] 茨城県立医療大学紀要 第 19 巻 A  S  V  P  I Volume 19 IPU あいらぼ参加者を対象としたアンケート調査 151

2013年度オープンキャンパスでのIPUあいらぼ参加 …¡¨ 1.IPU あいらぼの企画および担当スタッフ 7月21日 7月28日 心肺蘇生法体験 看護学生

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報  告

2013年度オープンキャンパスでのIPUあいらぼ参加者を 対象としたアンケート調査

増成 暁彦1),武島 玲子1),黒田 暢子2),岩本 浩二3),伊藤 文香4),大久保 知幸5), 髙村 祐子2),福田 友秀6),瀧本 幸司7),正田 傑8),大澤 侑一9)

1)茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター2)茨城県立医療大学保健医療学部看護学科3)茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科4)茨城県立医療大学保健医療学部作業療法学科5)茨城県立医療大学保健医療学部放射線技術科学科6)東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科7)慈生会等潤病院8)日立総合病院9)筑波メデイカルセンター病院

要旨

 茨城県立医療大学ではシミュレーション医療教育・研究を充実させることを目的に,IPUあいらぼを2012年度

に開室した。その活用方法の ₁ つにオープンキャンパスでの医療学習体験企画の出展が挙げられ,2013年度オー

プンキャンパスにおいて実施した。出展企画は心肺蘇生法体験,静脈採血体験,胃管挿入体験,衛生的手洗い体

験,高齢者体験,PCによる解剖実習体験の ₆ つであった。これらの企画の満足度を調査するため,2013年度オー

プンキャンパスIPUあいらぼ参加者を対象にIPUあいらぼに参加した感想のアンケート調査を行った。その結果,

多くの参加者から肯定的な意見が得られた。特に静脈採血体験は参加者が多く,肯定的な意見も多かった。この

ことから2013年度オープンキャンパスにおけるIPUあいらぼの企画は参加者の満足度が高かったと考えられる。

  キーワード:オープンキャンパス,スキルラボ,シミュレーション医療教育

はじめに

 医療教育現場において,実際の状況や出来事,プロセスを表現することができるシミュレーション1)

を利用したシミュレーション医療教育は1950年代から取り入れられている2)。この教育方法の目的は,実際の患者症例を想定し,それに対する医療を模擬的に実践することで,そこから必要な知識・観察力・

判断力・実行力,また医療チームの一員としてのチームワークを身につけていくことであり2),授業で習得した知識,知識の応用力,基本的スキルを実践力に変容できることから有用な教育手段と成りうる3)

と考えられている。 茨城県立医療大学(以下,本学)では学生の自己学習による実技能力及び研究能力の更なる向上を図り,本学のシミュレーション医療教育・研究を充実

連 絡 先:増成 暁彦  茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター      〒 305-8577 茨城県稲敷郡阿見町阿見 4669-2 電  話:029-840-2214 FAX:029-840-2314 E-mail:[email protected]

茨城県立医療大学紀要 第 19 巻A  S  V  P  I Volume 19

IPU あいらぼ参加者を対象としたアンケート調査 151

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させることを目的に,本学におけるスキルラボとしてIPUあいらぼを2012年度に開室した。現在,IPUあいらぼはいくつかのタスクトレーナやシミュレータが常設されており,本学の学生の自己学習や付属病院職員特に看護師の実技向上訓練の場として活用されている。スキルラボのそれ以外の活用方法としては地域貢献への利用が挙げられる4)。その ₁ つの方法として,オープンキャンパスの参加者にIPUあいらぼで医療学習を体験してもらうことがあり,それによってオープンキャンパス参加者の満足度が高まる可能性がある。そこで2013年度オープンキャンパスにおいて,IPUあいらぼを体験した人を対象にアンケート調査を行い,その結果まとめたので報告する。

方  法

1.対象 対象は,2013年度に実施された本学オープンキャンパスにおけるIPUあいらぼの参加者とした。

2 .IPUあいらぼでの企画とスタッフ配置 オープンキャンパスにおけるIPUあいらぼの企画は,心肺蘇生法体験,静脈採血体験,胃管挿入体験,衛生的手洗い体験,高齢者体験,PCによる解剖実習体験の ₆ つであった。IPUあいらぼでの企画とそれを担当したスタッフの配置を表 ₁ に,企画の配置を図 ₁ に示す。なお,スタッフの看護師は本学卒業生,看護学生は本学看護学科の学生である。また,受け付けは教員 2 名で対応した。 心肺蘇生法体験にはResusci Anneスキルステーション(Laerdal社製)を用いた。この機器は主に心臓マッサージや人工呼吸のトレーニングを行うことができるもので,CPR手技の良否に対して音声によるリアルタイムフィードバックが行われることが特徴である。今回の企画では主に,担当者の指導の下,参加者に心臓マッサージを体験してもらった

(図 2 )。 静脈採血体験には静脈採血注射モデルⅠ型(高研社製)を用いた。これは注射部位の確認,注射針の刺入,薬液の注入等一連の手技が演習可能なモデルである。今回の企画では担当看護師の指導の下,参

表 1 . I P U あ い ら ぼ の 企 画 お よ び 担 当 ス タ ッ フ

7月21日 7月28日

心肺蘇生法体験 看護学生 1名看護師 1名

看護学生 1名

静脈採血体験 看護師 3名 看護師 3名

胃管挿入体験 随時対応 随時対応

衛生的手洗い体験 看護学生 1名 看護学生 1名

高齢者体験 教員 1名 看護学生 2名

PCによる解剖学実習体験 随時対応 随時対応

合計 8名 10名

企画名担当者・担当人数

表 ₁  IPUあいらぼの企画および担当スタッフ

茨城県立医療大学紀要 第 19 巻152

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加者に静脈採血を体験してもらった(図 ₃ )。 胃管挿入体験には経鼻胃管チューブ挿入マネキン

(Adam Rouilly社製)を用いた。これは胃管挿入について介護者への説明やそのトレーニング用に考案されたマネキンで,実習者が経鼻胃管チューブ及び胃瘻チューブを正しい位置に挿入できているか確認できるようになっている。今回は担当教員の指導の下,参加者に経鼻胃管チューブの挿入を体験してもらった(図 ₄ )。 衛生的手洗い体験にはGlitter bug(Brevis社製)を用いた。これはきちんと手が洗えているかを評価

し,トレーニングする教材である。汚れにみたてた専用ローションを手に塗った後で,流水にて手を洗い,その後ブラックライト下に手をかざすことで洗い残しの有無や洗い残しの部位を評価できる。今回は通常の使用方法通り,専用ローションを参加者の手に塗布した後流水で手を洗ってもらい,その後ローションの残り具合をブラックライト下で参加者に確認してもらった(図 ₅ )。 高齢者体験には疑似体験セットまなび体≪高齢者用≫(特殊衣料社製)を用いた。これは高齢者の身体の状態を疑似体験し,高齢者の体の機能を学ぶための学習用教材である。今回の企画では参加者にこのセットを装着してもらった状態での歩行を体験してもらった(図 ₆ )。 PCによる解剖学実習体験にはADAM(ADAM社製)と ₃ D踊る肉単(NTS社製)を用いた。ADAMは人体の前額面像および矢状面像を段階的に観察し,各部位の名称を確認できるソフトである。 ₃ D

図 ₁   IPUあいらぼ 企画の配置

図 2  心肺蘇生体験

図 ₃  静脈採血体験

図 ₄  胃管挿入体験

IPU あいらぼ参加者を対象としたアンケート調査 153

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踊る肉単は筋肉の仕組みや動きや起始・停止を自分で動かし見ることができるソフトである。両ソフトとも学生の自己学習を主な目的にしている。今回の企画では参加者に使用方法を説明した後,自由に操作してもらった(図 ₇ )。

4 .アンケート実施 参加者がIPUあいらぼを退出する際,受付にてアンケート用紙の配布,および回収を行った。アンケート用紙を図 ₈ に示す。 回収したアンケートから有効な回答結果を検討した。本報告では自由記述以外の項目に ₁ つでも無回答があった場合は無効回答とした。また,自由記述については一文ずつ整理し,同じ意味内容ごとにカテゴリー化し集計した。

結  果

1.対象 461名の参加者からアンケートの回答が得られ,うち有効回答数は441名(95.7%)であった。その内訳は高校生358名,保護者61名,大学生11名,その他11名であった(表 2 )。本報告では,高校生について「参加した企画」,「IPUあいらぼに参加して,どうでしたか」,「あいらぼに参加して健康や医療に関する知識が深まりましたか」,「またIPUあいらぼに参加したいと思いますか」の結果を本文に示す。

2 .アンケート結果(表 3 ~ 7 ) 各企画の参加人数は衛生的手洗い体験298名

(83%),静脈採血体験271名(76%),心肺蘇生法体験169名(47%),高齢者体験92名(26%),胃管挿入体験36名(10%),PCによる解剖学実習体験17名

( ₅ %)であった(表 ₃ )。 「IPUあいらぼに参加して,どうでしたか」では,

「よかった」352名(98.3%),「どちらともいえない」₆ 名(1.7%),「よくなかった」 ₀ 名( ₀ %)であった(表 ₄ )。 また,IPUあいらぼに参加した感想の自由記述を表 ₅ に示す。「普段できないことが体験できた」という感想が最も多く,「採血を体験できたことがよかった」など静脈採血体験に関する感想も多かった。 「あいらぼに参加して健康や医療に関する知識が深まりましたか」は,「深まった」255名(71.2%),

「やや深まった」100名(27.9%),「あまり変わらない」2 名(0.6%),「変わらない」₁ 名(0.3%)であった(表₆ )。 「またIPUあいらぼに参加したいと思いますか」については「そう思う」303名(84.6%),「まあそ

図 ₅  衛生的手洗い体験

図 ₆  高齢者体験

図 ₇  PCによる解剖実習体験

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図 ₈  参加者アンケート

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表 2  IPUあいらぼ参加者内訳表 2 . I P U あ い ら ぼ 参 加 者 内 訳

男性 74 (20.7) 12 (19.7) 5 (45.5) 3 (27.3) 94 (21.3)

女性 284 (79.3) 49 (80.3) 6 (54.5) 8 (72.7) 347 (78.7)

全体 358 (81.2) 61 (13.8) 11 (2.5) 11 (2.5) 441

その他 合計高校生 保護者 大学生

人 数 ( % )

表 ₃  企画参加人数

表 3 . 企 画 参 加 人 数

心肺蘇生法体験 169 (47.2) 23 (37.7) 7 (63.6) 7 (25.9) 206 (46.7)

静脈採血体験 271 (75.7) 26 (42.6) 7 (63.6) 7 (25.9) 311 (70.5)

胃管挿入体験 36 (10.1) 3 (4.9) 1 (9.1) 1 (3.7) 41 (9.3)

衛生的手洗い体験 298 (83.2) 34 (55.7) 5 (45.5) 8 (29.6) 345 (78.2)

高齢者体験 92 (25.7) 4 (6.6) 3 (27.3) 3 (11.1) 102 (23.1)

PCによる解剖学実習体験

17 (4.7) 2 (3.3) 0 (0) 1 (3.7) 20 (4.5)

合計 883 92 23 27 1025

高校生 保護者 大学生 その他 合計

人 数 ( % )

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表 ₄  IPUあいらぼに参加した感想表 4 . I P U あ い ら ぼ に 参 加 し た 感 想

よかった 352 (98.3) 59 (96.7) 11 (100) 11 (100) 433 (98.2)

どちらともいえない 6 (1.7) 2 (3.3) 0 (0) 0 (0) 8 (1.8)

よくなかった 0 (0) 0 (0) 0 (0) 0 (0) 0 (0)

合計 358 61 11 11 441

高校生 保護者 大学生 その他 合計

人 数 ( % ) 表 5 . I P U あ い ら ぼ に 参 加 し た 感 想 ( 自 由 記 述 )

参加した感想 高校生 保護者 大学生 その他 合計

楽しかった 32 0 0 1 33

さまざまな体験ができた 21 1 0 0 22

新たな知識が得られた 4 0 0 1 5

普段体験できないことができた 59 5 1 0 65

実際に体験できたことがよかった 33 4 0 0 37

心肺蘇生法体験がよかった 25 2 0 1 28

静脈採血体験がよかった 58 3 1 1 63

手洗い体験がよかった 37 4 0 1 42

高齢者体験がよかった 11 0 0 0 11

スタッフの対応がよかった 20 3 0 0 23

進路の参考になった 3 1 0 0 4

その他 16 3 2 0 21

合計 319 26 4 5 354

件 数

表 ₅  IPUあいらぼに参加した感想(自由記述)

IPU あいらぼ参加者を対象としたアンケート調査 157

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表 ₆  健康や医療に関する知識の深まり

表 ₇  IPUあいらぼにまた参加したいか

表 6 . 健 康 や 医 療 に 関 す る 知 識 の 深 ま り

深まった 255 (71.2) 37 (60.7) 7 (63.6) 5 (45.5) 304 (68.9)

やや深まった

100 (27.9) 23 (37.7) 4 (36.4) 5 (45.5) 132 (29.9)

あまり変わらない

2 (0.6) 1 (1.6) 0 (0) 1 (9.1) 4 (0.9)

変わらない 1 (0.3) 0 (0) 0 (0) 0 (0) 1 (0.2)

合計 358 61 11 11 441

高校生 保護者 大学生 その他 合計

人 数 ( % )

表 7 . I P U あ い ら ぼ に ま た 参 加 し た い か

そう思う 303 (84.6) 45 (73.8) 9 (81.8) 8 (72.7) 365 (82.8)

まあそう思う 49 (13.7) 15 (24.6) 2 (18.2) 3 (27.3) 69 (15.6)

どちらともいえない 5 (1.4) 0 (0) 0 (0) 0 (0) 5 (1.1)

あまり思わない 1 (0.3) 1 (1.6) 0 (0) 0 (0) 2 (0.5)

思わない 0 (0) 0 (0) 0 (0) 0 (0) 0 (0)

合計 358 61 11 11 441

高校生 大学生 その他 合計保護者

人 数 ( % )

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う思う」49名(13.7%),「どちらともいえない」 ₅名(1.4%),「あまり思わない」 ₁ 名(0.3%),「思わない」 ₀ 名( ₀ %)であった(表 ₇ )。

考  察

 2013年度のオープンキャンパスでIPUあいらぼに参加した高校生に感想をアンケート調査した結果,₉ 割以上の高校生が「参加してよかった」と答え,IPUあいらぼに「また参加したい」と答えた者は「そう思う」と「まあそう思う」を合わせて ₉ 割以上であった。この 2 つの結果から今回の企画は高校生参加者の満足度が高かったと考えられる。 参加した感想で最も多かったものは「普段できないことが体験できた」であった。IPUあいらぼにおける今回の企画のなかの心肺蘇生法体験,静脈採血体験,胃管挿入体験などは本学の学生が練習する技術であり,高校生は普段体験することができない。そのためこの非日常的な体験が高校生参加者の満足につながったと考える。なかでも静脈採血体験は満足度の高い企画だった可能性がある。静脈採血体験の参加人数は271名と今回の企画の中で 2 番目に多かった。また,高校生参加者の感想でも「採血を体験できてよかった」,「採血体験が楽しかった」など肯定的な回答が数多くみられた。医療体験実習のうち満足度の高いものは将来へ活かせる体験であるという研究報告がある5)。今回の対象は本学のオープンキャンパスに参加している高校生のため,医療従事者を志望しているもしくは医療に興味があると考えられる。そのため静脈採血体験が将来に生かせると感じ,満足度が高かった可能性がある。大坪らは将来へ活かせる体験以外で満足度の高い医療体験実習は達成感が得られる体験であると報告している5)。看護技術の難易度を分類した報告によると。静脈採血は ₄ 段階評価の ₃ 段階目にあたり6),難しい技術である。難しい技術を体験し,成功できたことで達成感を得てそれが高い満足につながったと思われる。 その他の感想としては「実際に体験できたことがよかった」が上位に挙げられていた。今回のオープンキャンパスでは本学学生や付属病院職員の自己学習用に設置してあるタスクトレーナやシミュレータを用いたため,参加者も実際の医療に近い体験をす

ることができた。シミュレーション教育では臨床場面を疑似的に体験できることが望ましい2)とされており,同様のことが高校生のオープンキャンパスでも考えられる。このことからIPUあいらぼは本学学生の学習だけでなく,高校生対象のオープンキャンパスでも有用であるといえる。 高校生以外の参加者についても高校生と同様にほとんどの者が「参加してよかった」と答え,「また参加したいか」という問いにも「そう思う」もしくは「どちらかといえばそう思う」と答えている。これらのことから高校生以外の参加者についても今回の企画は満足度の高い企画だったと推測される。また, ₉ 割以上の者が健康や医療に関する知識が「深まった」もしくは「やや深まった」と答えていることから,オープンキャンパス時にIPUあいらぼを利用することで地域住民への保健・健康教育の機会を提供できたと考える。安川はシミュレーションラボの活用には地域社会単位での活用が必要であると述べており4),今回の企画も地域社会単位での活用の₁ つになると考える。その他の地域社会単位での活用方法としては地域住民を対象とした一次救命処置講習会などが挙げられ4),他施設で行われている7)。今後はIPUあいらぼでも地域住民を対象とした一次救命処置講習会等を実施することで,本学の地域貢献に活用していく必要がある。 本報告の結果はあくまでオープンキャンパスIPUあいらぼの参加者を対象としたものであり,この結果は本学の学生に当てはまるものではない。本学の学生がIPUあいらぼを利用する場合はシミュレーション医療教育の効果にもある通り,授業で正しい知識や知識の応用力,基本的スキルを学習した上で,それを実践力に変容できる利用方法が望まれる。今後は本学の学生利用者についてもアンケートを行いIPUあいらぼのより有効な活用方法を模索する必要がある。

まとめ

 2013年度の本学オープンキャンパスの参加者から,IPUあいらぼを体験した感想をアンケートにより収集した。その結果,多くの参加者から肯定的な意見が得られた。このことからIPUあいらぼで医療学習体験を行うことは,参加者の高い満足度が得ら

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れることが示唆された。

謝  辞

 2013年度オープンキャンパにおいて,IPUあいらぼの運営にご協力いただきました皆様に心よりお礼申し上げます。

文  献

₁ ) Pamela, R.J., Corinne, W.: 看護教育におけるクリニカル・シミュレーション:アメリカにおける変遷と傾向.インターナショナルナーシング・レビュー.2008;31(4):19-36

2 ) 織 井 優 貴 子: 第 ₈ 回2008 International Meeting on Simulation in Healthcareリポート.インターナショナルナーシング・レビュー.2008;31(4):48-51

₃ ) 武島玲子:「第 ₁ 回救急・救命日米シミュレーション医学教育合同シンポジウム」に参加して.茨城医療大学紀要.2008;13:115-117

₄ ) 安川文朗:公共資本としての医学シミュレーション~提供と負担のしくみを考える~.日本臨床麻酔学会誌.2012;32(1):94-103

₅ ) 大坪芳美,酒井隆信:医科学 ₁ 年生早期体験実習における実習の効果度と満足度の比較検討.医学教育.2011;42(1):1-7

₆ ) 厚 生 労 働 省HP「 看 護 基 礎 教 育 の 充 実 に関 す る 検 討 会 報 告 書 」 http://www.mhlw.go . jp / sh ing i /2007 /04 / d l / s0420 -13 . pd f .

(20/04/2007update)₇ ) 鈴木利哉,別府正志,奈良信雄:わが国の医学

部におけるスキルラボの整備状況及びスキルラボにおけるシミュレーション講習会の現状調査.医学教育.2009;40(5):361-365

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