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-1- 感染の可能性があるものには 感染経路を遮断するために、 スタンダードプリコーション を実践します スタンダードプリコーションは 日常の感染対策です スタンダードプリコーション(標準予防策)は、汗を除く全ての分 泌物、血液、体液、排泄物、傷のある皮膚、粘膜などを「感染の可能 性がある対象」として対応することです。 感染の有無にかかわらず、患者さんと医療従事者双方に対する医療 関連感染発生リスクの減少を目的に行われます。 感染対策の基本を学びました 2016 年度 新人看護職員研修 感染しない・させないために防護具を 正しく着用しましょう スタンダードプリコーション ~標準予防策~ 2016 年 4 月 5 日(火)/勤医協中央病院みなくる A 主催:看護師教育研修委員会・看護管理室 参加者:看護師 52 人(新人 43 人+中途採用 9 人) 講師 看護管理室 感染管理認定看護師(CNIC) 木村 理恵 医療の現場には 感染の可能性があるものがたくさんあります 母乳 尿 便 血液 傷の 滲出液 胸腔 胸水 腹水 汚物 詳しく! もっと α ス  ワゴン 39 No.

2016年度 新人看護職員研修 感染対策の基本を学びました · 感染しない・させないために防護具を 正しく着用しましょう スタンダードプリコーション

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Page 1: 2016年度 新人看護職員研修 感染対策の基本を学びました · 感染しない・させないために防護具を 正しく着用しましょう スタンダードプリコーション

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感染の可能性があるものには感染経路を遮断するために、スタンダードプリコーションを実践します

スタンダードプリコーションは 日常の感染対策です

 スタンダードプリコーション(標準予防策)は、汗を除く全ての分

泌物、血液、体液、排泄物、傷のある皮膚、粘膜などを「感染の可能

性がある対象」として対応することです。

 感染の有無にかかわらず、患者さんと医療従事者双方に対する医療

関連感染発生リスクの減少を目的に行われます。

感染対策の基本を学びました2016年度 新人看護職員研修

感染しない・させないために防護具を正しく着用しましょう

スタンダードプリコーション~標準予防策~

2016年4月5日(火)/勤医協中央病院みなくるA主催:看護師教育研修委員会・看護管理室参加者:看護師52人(新人43人+中途採用9人)

講師

看護管理室感染管理認定看護師(CNIC)

木村 理恵

医療の現場には感染の可能性があるものがたくさんあります

母乳

尿

便

痰血液

傷の滲出液

胸腔

胸水

腹水

汚物

詳しく!もっと αナース  ワゴン 39No.

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手洗いできないときの代用として、手袋を使わないようにしましょう。「この手袋は処置に使っていないから」と、手袋をはめたまま電話、PHS、パソコンを触る人がいると、手袋の間違った使い方が当たり前になり、注意し合うことができなくなります。絶対にダメです。

スタンダードプリコーションに 必要な防護具

 スタンダードプリコーションを行うにあたって必要となるのが、マ

スク、ゴーグル、ガウン、エプロン、手袋といった防護具です。

 感染対策の相手は、目に見えない微生物です。「自分が感染しない

ように」「人に感染させないように」、感染の可能性がある対象物や微

生物が体に入ってこないよう防護しなければなりません。

●血液や体液の飛散から自分を守る

●鼻・口腔粘膜・呼吸器の防護をする

●自分から発生する微生物から患者を守る

●血液、体液分泌液、排泄物および目で見て体液に汚染したものに触

れる可能性のある時

●粘膜、正常ではない皮膚に触れる時

●気管内・口腔内の吸引

●吸痰

●ブラシを使った口腔ケア

●出血の対応をしている時

●褥瘡の洗浄をしている時

●湿性体液から衣類や身体を守る

 (次の処置に移る時には必ず取り替え、処置が終わったらすぐ脱ぐ)

マスクの適応

手袋の適応

ゴーグルの適応

ガウンあるいはエプロンの適応

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◆防護具を身に着けてみよう

手指衛生 → エプロン → マスク → ゴーグル → 手袋

(エプロン以降の必要がないものは省く)

ココがポイント!

防護具を着ける前には必ず手指衛生をします

防護具を身に着ける手順

●着る防護具を不潔にしないため

●自分の感染を患者さんに移さないため

●まだ使わない箱の中に残る防護具を汚さないため

その理由

❶エプロンは折り目の内側が患者さんに向くように開く

❷開いたら後ろで止める

❶片手で箱から手袋を出す

❷手袋をはめた手でもう片方を出す

 (手袋は必ず手首まで覆うように広げる)

❶柄の部分を持って着ける

❶鼻・口・顎を覆う

❷ワイヤーの部分を鼻にフィットさせる

❸鼻・口を十分覆

エプロンの着け方

手袋の着け方

ゴーグルの着け方

マスクの着け方

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手袋 → 手指衛生 → ゴーグル → エプロン→ マスク→手指衛生

ココがポイント!

手指衛生は「手袋を外した直後」と「全ての防護具を脱いだ直後」

の2回行います

防護具を外す順序

❶手首側の外側をつかむ

❷手袋の内側が表になるように外す

❸手袋着用の手で外した手袋を握る

❹手袋の内側に手を入れる

❺握っている手袋を包みこむように内側が表になるように外す

❶首の後ろを両手で引っ張る

❷前にたらす

❸裾を両手で持ち、中表になるように丸めていく

❹さらに、小さくたたんで廃棄する

❶柄の部分を持って外す

❶ゴムの部分を持って外す

 (外側も内側もガーゼの部分には触れない)

手袋の外し方

エプロンの外し方

ゴーグルの外し方

マスクの外し方

手指衛生の5つのタイミング

手袋には100枚の手袋のうち3 ~ 5枚ほどにピンホールが開いている可能性があります。使用中に破れたり、外す時に汚染したりする可能性も。手袋内で微生物が繁殖することもあるので、手袋は外した後には必ず手指衛生をすることが大事です

1 患者さんに触れる前

2 清潔無菌にする前

3 体液暴露のリスクの後

4 患者さんに触れた後

5 患者さんの周りに触れた後

外した防護具はあちこちに置かずゴミ箱に捨てるかビニール袋

に入れ密閉します。そして最後に忘れず手指衛生をします。

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感染症に合わせて追加する 感染経路別予防策

 感染経路別予防策は、感染している患者さんや感染の疑いがある患

者さんに対して、標準予防策に追加して行う予防策です。感染症が拡

大しないように感染経路を遮断することを目的とし、感染経路(接触

感染・飛沫感染・空気感染)によって対策内容が異なります。

 患者さんのベッドサイドに、感染予防策を一目で伝達するマーク(接

触感染予防策、飛沫感染予防策、接触感染+飛沫感染予防策)を掲示。

空気感染予防対策のマークは部屋の外側に掲示されています。

感染経路を知って遮断する方法を学びましょう

~感染経路別予防策~

接触感染予防策の実際

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA)、多剤耐性緑膿菌感

染症、ESBL、ノロウイルス感染症、クロストリジウム・ディシフル

(CD)など

●部屋は個室管理が望ましい

●同一疾患の患者さんの場合は集団隔離(コホーティング)も可能

●特別な換気システムは不要、部屋のドアは開けていても構わない

●ベッドの間隔を1m以上離れるようにしてカーテンで仕切る

●外来では、できるだけ速やかに仕切られた区域に収容する

【手袋】入室時は必ず手袋を着用し、病室を出る時に外す

【必要に応じてガウン・エプロン】衣服が、患者さんや病室内環境表面、

病室内の物品に触れる時、もしくは患者さんが失禁状態、オムツ管理、

下痢、回腸瘻、人口肛門増設がある時

患者専用にするのが望ましい。専用にできない場合には患者ごとに必

ず洗浄または消毒する。

接触感染予防策が必要な感染症

病室(患者配置)

個人防護具

患者ケアに使用される器具

Page 6: 2016年度 新人看護職員研修 感染対策の基本を学びました · 感染しない・させないために防護具を 正しく着用しましょう スタンダードプリコーション

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飛沫感染予防策の実際

空気感染予防策の実際

院内で多いインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、百日咳、咽頭ジフ

テリア、髄膜炎菌髄膜炎、風疹、流行性耳下腺炎など

結核や麻疹、水痘など

●原則個室管理

●インフルエンザなどで咳をあまりしていない場合は、同一疾患患者

の集団隔離(コホーティング)も可能

●特別な換気システムは不要、部屋のドアは開けていても構わない

●ベッドの間隔を1 ~ 2m以上離れるようにしてカーテンで仕切る

※飛沫感染する微生物の飛沫核は水分を多く含んでいるため、飛んで

も1 ~ 1.5mくらいで床に落ちる

●隔離個室が原則

●室内は陰圧で、部屋の中の空気が廊下に出ない環境に収容

●ドアは常時閉める

※空気感染する微生物の飛沫核は、いつまでも空気中を漂っているこ

とから知らないうちに吸い込んでしまう

【サージカルマスク】患者さんに1m以内に近づく時は(部屋に入る

前に)サージカルマスクを着用し、患者さんが病室外へ出る時は患者

さんがサージカルマスクを着用する

【N95マスク】0.3μm以上の粒子を95%以上ろ過するN95マスク

を着用する

飛沫感染予防策が必要な感染症

空気感染予防策が必要な感染症

病室(患者配置)

病室(患者配置)

個人防護具

個人防護具

マスクのフィルター部分にマジックで名前を書くとその部分のフィルター機能が得られないので、名前

は書かないこと。マスクを両手で完全に覆って息を吐き、マスクの周囲から息漏れがないかフィット性

を確認(鼻や顎のところは空気が出入りしやすいので注意)。

Page 7: 2016年度 新人看護職員研修 感染対策の基本を学びました · 感染しない・させないために防護具を 正しく着用しましょう スタンダードプリコーション

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演習 場面に合わせて必要な防護具を選ぶ

【ケース1】採血……手袋

【ケース2】痰を吸引……ゴーグル、手袋、ガウン

【ケース3】嘔吐物の処理

     ……サージカルマスク、手袋、ガウン、ゴーグル

【ケース4】下痢の患者さんのオムツ交換

     ……サージカルマスク、手袋、ガウン

【ケース5】結核疑いの陰圧個室に入院している患者さんの

      バイタル測定……N95マスク

【ケース6】インフルエンザで入院した患者さんの上半身清拭

      ……サージカルマスク

【ケース7】膀胱留置カテーテルを挿入されている患者さんの尿廃棄

      ……手袋、ガウン、サージカルマスク

【ケース8】仙骨部の褥瘡の洗浄

      ……ゴーグル、サージカルマスク、手袋、ガウン

【ケース9】患者さんから採血した検体を検査室に持っていく

      ……手袋

【ケース10】喀痰からMRSAの検出がある患者さんの体位交換

      ……手袋とガウン

【ケース11】大量の血液で汚染された床を清掃

      ……ゴーグル、サージカルマスク、手袋、ガウン

【ケース12】点滴の調整……サージカルマスク、手袋

【ケース13】点滴の針を抜針……手袋

※ガウンはエプロンでも可

処置をする時、何を身に着けるかに迷ったら「スタンダードプリコーション」と「感染経路別予防策」の考え方に基づいて防護具を選びましょう。感染に関することで疑問に思ったり困ったことがあったら、感染制御室にいつでも来てください。

防護具のイラストが描いてあるカードを使って、そのケースに必要な

ものを選びました