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平成28年度 山地保全調査 (新たな治山・地すべり対策計画手法検討調査) 委託事業 報告書 概要版 平成29年3月 林野庁

平成28年度 山地保全調査 (新たな治山・地すべり …...1 1. 業務概要 1.1. 契約概要 1.1.1. 業務名称 平成28 年度山地保全調査(新たな治山・地すべり対策計画手法検討調査)委託事業

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平成28年度

山地保全調査

(新たな治山・地すべり対策計画手法検討調査)

委託事業

報告書 概要版

平成29年3月

林野庁

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目次

1. 業務概要 ...................................................................................................................... 1

1.1. 契約概要 ............................................................................................................... 1

1.2. 事業フロー ........................................................................................................... 2

1.3. 業務実施体制 ........................................................................................................ 3

1.4. 実施体制図 ........................................................................................................... 3

2. 山地災害事例の整理 .................................................................................................... 4

2.1. 対象とする事例の整理 ......................................................................................... 4

2.2. 山地災害事例 ........................................................................................................ 6

3. モデルケースの作成 .................................................................................................. 16

3.1. モデルケース選定方針 ....................................................................................... 16

3.2. モデルケース・タイムライン案の方針 .............................................................. 17

3.3. モデルケース作成 ............................................................................................... 18

3.4. 各モデルケースについてのリモートセンシング技術の活用効果 ...................... 34

4. 山地災害に対して活用するリモートセンシング手法の整理 .................................... 35

4.1. 山地災害に適用可能なリモートセンシング手法の整理 .................................... 35

4.2. 各手法の活用方法 ............................................................................................... 38

4.3. 現地観測手法とリモートセンシング技術の組み合わせ .................................... 53

5. 指針案のとりまとめ .................................................................................................. 54

5.1. 手引き(案)構成 ............................................................................................... 54

5.2. 手引き(案)とりまとめ .................................................................................... 54

6. 検討委員会の開催 ...................................................................................................... 57

7. 職員向け勉強会の開催 ............................................................................................... 57

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1. 業務概要

1.1. 契約概要

1.1.1. 業務名称

平成 28 年度山地保全調査(新たな治山・地すべり対策計画手法検討調査)委託事業

1.1.2. 履行期間

平成 28 年 9 月 12 日から平成 29 年 3 月 17 日まで

1.1.3. 発注者

東京都千代田区霞が関 1-2-1

林野庁(森林整備部 治山課 施設実行班)

1.1.4. 受注者

東京都港区虎ノ門 3 丁目 17 番 1 号

TOKYU REIT 虎ノ門ビル 2F

一般財団法人 リモート・センシング技術センター

1.1.5. 業務目的

我が国は環太平洋造山帯に位置し、国内に 110 の活火山を有しており、うち 47 火山が気

象庁の常時監視対象とされているなど、常に火山活動及び火山活動に関連する山地災害の

リスクにさらされている。さらに、近年、国内の複数の火山において噴火あるいはその兆

候が観測されているほか、平成 26 年 9 月の御嶽山の噴火のように、明瞭な前兆が観測され

ないまま噴火に至る事例も存在する。このような状況を踏まえ、火山活動及び火山活動に

関連する山地災害への対応を一層強化し、国民の安全・安心を確保することが重要となっ

ている。

火山活動に関連する山地災害に対して、緊急的な治山計画を作成するにあたっては、降

灰や土地の隆起・沈下等の基礎的な情報を収集するため、調査を迅速かつ安全に行うこと

が求められる。これに対して、航空機や人工衛星を利用したリモートセンシングは、火山

噴火直後から多様なデータを安全かつ短時間に入手することが可能であり、また、その精

度も飛躍的に向上していることから、緊急的な治山計画の検討に置いて有益な情報源とな

るものと考えられる。

また、火山活動に関連する山地災害以外にも、火山活動の影響による森林荒廃(火砕流

や火山ガスによる森林枯死等)は、山地災害の要因となるとともに、復旧には長期間を要

することが想定される。これに対して、長期間に及ぶ継続的な火山の観測にリモートセン

シングを活用し、必要が生じた際に観測を実施することで、観測精度の向上と観測機器の

維持管理費の低減を図ることが可能であると考えられる。

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さらに、地すべり・山腹崩壊への対策計画を策定するための基礎的な調査に対しても、

リモートセンシングを活用することにより効率的かつ安全なデータ取得が可能となると考

えられる。

これらのことを踏まえ、本調査業務においては、火山活動に関連する山地災害及び火山

活動に伴う森林荒廃、ならびに地すべり・山腹崩壊に対し、航空機や人工衛星を利用した

リモートセンシング技術を用いて、治山・地すべり対策を計画する手法について検討し指

針案を取りまとめることを目的とする。

1.1.6. 業務項目

本事業の業務項目を表 1.1.1 に示す。

表 1.1.1 業務項目

(1) 山地災害事例の整理

(2) モデルケースの作成

(3) 山地災害に対して活用するリモートセンシング手法の整理

(4) 指針案のとりまとめ

(5) 検討委員会

(6) 職員向け勉強会の開催

(7) 取りまとめ

1.2. 事業フロー

本事業のフローを図 1.2.1 に示す。

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図 1.2. 1 事業のフロー

1.3. 業務実施体制

業務実施体制は以下の通りとし、リモートセンシングを山地災害の調査・復旧計画策定

に活用するための検討を総合的な観点で実施できるよう構成する。

1.4. 実施体制図

(省略)

1.4.1. 業務実施担当者一覧

(省略)

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2. 山地災害事例の整理

平成 27 年度調査で整理した火山関連山地災害 14 事例に加え、近年発生した様々な規模

の地すべり・山腹崩壊について、関係機関の公表資料等をもとに代表的なものを 10 事例選

定し、活動の規模及び特徴、森林や保全対象に対する影響、類似の現象の発生頻度等を整

理した。それぞれの事例について、リモートセンシング調査の実施状況及びその成果の活

用状況を整理した。

2.1. 対象とする事例の整理

山地災害事例の選出に当たり、主に近年に発生した災害であり、リモートセンシング技

術が利用された事例について情報収集を実施し、整理を実施した。その結果、20 事例が候

補として挙げられた。山地災害事例候補の発生日、原因、被災範囲等の情報を整理した表

を表 2.1.1 に示す。

前述の災害 20 事例のうち、火山災害は昨年度業務において検討を実施したことから、山

腹崩壊・土石流・地すべり災害を対象として 10 事例を選定した。結果を表 2.1.2 に示す。

10 事例の詳細について、2.2 以降に示す。

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表 2.1.1 山地災害事例の候補(災害現象)

表 2.1.2 山地災害 10 事例選定結果

熊本地震 H28 2016/4/16 熊本・大分 地震 熊本地震 がけ崩れ・土石流 広域広島豪雨災害 H26 2014/8/20 広島 降雨 集中豪雨 土石流・がけ崩れ 局所平成26年8月豪雨(丹波市土砂災害) H26 2014/8/15 兵庫・北海道・岐阜・京都 降雨 台風11号-12号 土石流・がけ崩れ 局所台風26号(伊豆大島) H25 2013/10/11 東京・千葉・茨城・鳥取 降雨 台風26号 土石流・がけ崩れ 広域山口・島根豪雨 H25 2013/7/26 山口・島根・北海道・鳥取 降雨 集中豪雨 土石流・がけ崩れ 広域九州北部豪雨 H24 2012/7/11 熊本・大分・福岡 降雨 集中豪雨 土石流・がけ崩れ 広域紀伊半島大水害 H23 2011/8/25 奈良・和歌山・三重・静岡・兵庫 降雨 台風12号 土石流・地すべり・がけ崩れ 広域新潟福島豪雨災害 H23 2011/7/26 新潟・福島 降雨 集中豪雨 土石流・がけ崩れ・地すべり 広域東日本大震災 H23 2011/3/11 東北・北関東・長野 地震 東北地方太平洋沖地震 がけ崩れ・地すべり・土石流 広域中越地震 H16 2004/10/23 新潟 地震 新潟県中越地震 地すべり・がけ崩れ 局所

原因発災日災害名称発生年度

被災都道府県 土砂移動現象 被災範囲

災害名称発生年度

発災日 被災都道府県 土砂移動現象 被災範囲

有珠山噴火 H12 2000/3/31 北海道 火山噴火 火山噴火 火山灰・火口噴出型泥流 局所新潟県中越地震 H16 2004/10/23 新潟 地震 新潟県中越地震 斜面崩壊・地すべり 局所鰐塚山豪雨災害 H17 2005/9/4 宮崎 降雨 台風14号 斜面崩壊 局所能登半島地震 H19 2007/3/25 石川 地震 能登半島地震 斜面崩壊 局所中国・九州北部豪雨 H21 2009/7/24 山口・福岡・長崎・佐賀 降雨 集中豪雨 土石流 局所東日本大震災 H23 2011/3/11 東北・北関東・長野 地震 東北地方太平洋沖地震 地すべり・斜面崩壊・がけ崩れ 広域新潟福島豪雨災害 H23 2011/7/26 新潟・福島 降雨 集中豪雨 土石流・斜面崩壊 広域紀伊半島大水害 H23 2011/9/2 奈良・和歌山・三重・静岡・兵庫 降雨 台風12号 土石流・斜面崩壊 広域九州北部豪雨 H24 2012/7/11 熊本・大分・福岡 降雨 集中豪雨 土石流 広域山口・島根豪雨 H25 2013/7/28 山口・島根・北海道・鳥取 降雨 集中豪雨 斜面崩壊・土石流 広域秋田・岩手豪雨災害(仙北市) H25 2013/8/9 秋田・岩手・福島・山形 降雨 集中豪雨 土石流 広域伊豆大島土砂災害 H25 2013/10/11 東京・千葉・茨城・鳥取 降雨 台風26号 土石流 広域台風8号災害(南木曽土石流災害) H26 2014/7/9 長野・福島・沖縄・徳島 降雨 台風8号 土石流 局所平成26年8月豪雨(丹波市土砂災害) H26 2014/8/15 兵庫・北海道・岐阜・京都 降雨 台風11号・12号 土石流 局所広島豪雨災害 H26 2014/8/20 広島 降雨 集中豪雨 土石流 局所御嶽山噴火 H26 2014/9/27 長野・岐阜県 火山噴火 火山噴火 噴石・火山灰 局所長野県神城断層地震災害 H26 2014/11/22 長野 地震 長野県神城断層地震 斜面崩壊・地すべり 局所口永良部島噴火 H27 2015/5/29 鹿児島県 火山噴火 火山噴火 火山灰・火砕流・土石流 局所台風18号災害 H27 2015/9/10 栃木・宮城・福島・長野 降雨 台風18号 土石流 広域※熊本地震 H28 2016/4/14 熊本・大分 地震 熊本地震 地すべり・斜面崩壊・土石流 広域

原因

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2.2. 山地災害事例

2.2.1. 平成 28年熊本地震

熊本地震は平成 28 年 4 月 16 日に熊本益城町を中心として起こった最大震度 7 の地震で

ある。

阿蘇山を中心に土砂移動が 100 カ所以上で発生しており、阿蘇大橋地区の大規模崩壊を

代表に、大規模な崩壊から緩い斜面で起こった斜面崩壊、地すべり、崩壊土砂の土石流化、

崖崩れといった、様々なタイプの土砂災害が発生している。

表 2.2.1 に平成 28 年熊本地震の災害時の規模および特徴を、表 2.2.2 に、災害時の森林

や保全対象に対する影響を示す。

表 2.2.1 平成 28 年度熊本地震の規模および特徴

項目 内容

発生日時 2016 年 4 月 16 日 1 時 25 分 5.4 秒(JST)

気象庁震度階級 震度7(熊本県益城町、西原村)

震源の深さ 12km

気象庁マグニチュード/

モーメントマグニチュード

Mj7.3/Mw7.0

地震の種類 大陸プレート内地震

地震の回数(累計) 4 月 14 日から 7 月 2 日までで 400 回以上の地震

(震度 3 から震度 7)

土砂移動の特徴 阿蘇山を中心に土砂移動が 100 箇所以上で発生

表 2.2.2 平成 28 年度熊本地震の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数 被害総額[百万円]

林地 433 箇所 34,780

治山施設 36 箇所 2,660

林道 1686 箇所 1,290

木材加工施設等 29 箇所 800

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2.2.2. 平成 26年広島豪雨災害

広島豪雨災害は、平成 26 年 8 月 20 日に広島県安佐南区を中心として発生した豪雨災害

である。

土砂災害の特徴として、非常に幅の狭く、かつ斜面に対して非常に長い土砂崩壊が起き

ている箇所が多くみられている。

表 2.2.3 に平成 26 年広島豪雨災害の規模および特徴を、表 2.2.4 に、災害時の森林や保

全対象に対する影響を示す。

表 2.2.3 平成 26 年広島豪雨の規模および特徴

項目 内容

発生期間 2014 年 8 月 20 日

被災地域 広島市安佐北区と安佐南区を中心とする広島県

最多雨量 広島市安佐南区上原 287.0mm

特徴 土砂災害による人的被害としては過去 30 年間で最多

表 2.2.4 平成 26 年広島豪雨災害の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 死者 77 名, 負傷者 44 名 -

林地 105 箇所 6593

治山施設 1 箇所 50

林道 50 箇所 189

森林被害(面積 ha) 45 箇所 18

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2.2.3. 平成 26年 8月豪雨(丹波市土砂災害他)

平成 26 年 8 月 15 日から 17 日にかけて兵庫県丹波市市島町を中心とした約 87km2

の範囲において土砂災害や洪水による被害が多発した。兵庫県によると丹波市で死者 1 名、

重軽傷者 4 名、全壊家屋 17 戸、半壊・一部損壊家屋 48 戸、床上浸水 140 戸、床下浸水

723 戸にのほる甚大な被害が報告されている

表 2.2.5 に平成 26 年 8 月豪雨災害の規模および特徴を、表 2.2.6 に、災害時の森林や保

全対象に対する影響を示す。

表 2.2.5 丹波市土砂災害の規模および特徴

項目 内容

発生期間 平成 26 年 8 月 15 日-8 月 17 日

被災地域 近畿、北陸、東海地方

最多雨量 24 時間で 414mm

特徴 豪雨により大量の土砂が流出し、山裾の住宅が被害を受けた。

土砂が河川を埋塞し、集落・農地に浸水が広がった

兵庫県庁資料より作成

(出典:http://web.pref.hyogo.jp/nk21/documents/6gouusaigainozyoukyou.pdf)

表 2.2.6 丹波市土砂災害の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 死者 1 名, 負傷者 4 名 -

林地 203 箇所 12,374

治山施設 30 箇所 759

林道 1,680 箇所 4,811

森林被害面積 65ha 41

林野庁資料により作成 ※数量には丹波市以外の日本国内の被害を含む

(出典:http://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/joho/pdf/h26_t11saigai.pdf)

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2.2.4. 平成 25年台風 26号(伊豆大島災害他)

平成 25 年 10 月に発生した台風 26 号により、伊豆大島・三原山火山麓の斜面にて局所的

に土石流が発生した。溶岩(14 世紀の噴火)に堆積していた火山灰を主体とする表層土が

崩壊したものである(表層崩壊:崩壊の深さは、概ね1~2m)。

表 2.2.7 に平成 25 年台風 26 号 8 月豪雨災害の規模および特徴を、表 2.2.8 に、災害時の

森林や保全対象に対する影響を示す。

表 2.2.7 平成 25 年台風 26 号(伊豆大島災害)の規模および特徴

項目 内容

発生期間 2013 年 10 月 11 日 3:00 – 10 月 16 日 15:00(JST)

最低気圧・最大風速 930hPa・45m/s

移動距離 3820km

被災地域 伊豆諸島北部、房総半島東岸、

三陸沖(温帯低気圧に変わる)、北海道

特徴 24 時間雨量が 800mm を超える豪雨により、

伊豆大島・三原山火山麓の斜面にて同時多発的な土石流が発生。

表 2.2.8 平成 25 年台風 26 号(伊豆大島災害)の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 死者 40 名, 負傷者 130 名 -

林地 57 箇所 2,413

治山施設 19 箇所 719

林道 118 箇所 688

森林被害面積 2,010ha 977

林野庁資料及び消防庁資料より作成

(出典: http://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/joho/pdf/h25_t26gougouusaigai.pdf,

http://www.fdma.go.jp/bn/台風第26号による被害状況等について(第37 報).pdf)

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2.2.5. 平成 25年山口県・島根県豪雨

平成 25 年 7 月 26 日から 8 月 3 日にかけて、山口県・島根県で豪雨が発生した。河川が

氾濫したことを契機に、土砂災害による住家、農地の浸水、道路の被害が多数発生した。

表 2.2.9 に平成 25 年山口県・島根県豪雨災害の規模および特徴を、表 2.2.10 に、災害時

の森林や保全対象に対する影響を示す。

表 2.2.9 平成 25 年山口県・島根県豪雨の規模および特徴

項目 内容

発生期間 平成 25 年 7 月 26 日-8 月 3 日

被災地域 山口県・島根県

最多雨量 津和野町で 24 時間あたり 381.0mm

特徴 島根県、山口県では各地で河川の氾濫や土砂災害による住家や農地の浸

水、道路の被害が多数発生。

気象庁資料より作成(出典:

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/saigaiji/saigaiji_201302.pdf

表 2.2.10 平成 25 年山口県・島根県豪雨の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 死者 1 名 -

林地荒廃 694 箇所 15,152

治山施設 44 箇所 373

林道施設等 3,791 箇所 7,031

森林被害面積 調査中 同左

林野庁資料及び土木学会資料により作成

( 出典: http://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/joho/pdf/h25_baiukitounogouusaigai.pdf 、

http://www.jsce.or.jp/committee/jiban/yamaguchi_higai.pdf)

※数量には山口県・島根県以外の日本国内の被害を含む

※死者数は山地災害に直接係るもののみ計上

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2.2.6. 平成 24年九州北部豪雨

平成 24 年 7 月 11 日から 14 日にかけて九州地方での記録的な大雨により、河川の氾濫、

土砂災害が発生して、全体 2,000 棟の家屋で洪水被害が発生した。また、一宮地区を中心

に多くの箇所で土砂崩壊が発生した。主要道路や線路も遮断され、交通機関に影響が出た。

表 2.2.11 に平成 24 年九州北部豪雨の規模および特徴を、表 2.2.12 に、災害時の森林や

保全対象に対する影響を示す。

表 2.2.11 平成 24 年九州北部豪雨の規模及び特徴

項目 内容

発生期間 平成 24 年 7 月 11 日-14 日(JST)

被災地域 熊本県、大分県、福岡県

最多雨量 熊本県阿蘇市阿蘇乙姫で 816.5mm

特徴 記録的な降雨により河川の氾濫や土砂災害が発生した。

全体で約 2000 棟の家屋で洪水被害等が発生した。

表 2.2.12 平成 24 年九州北部豪雨の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 死者 22 名 -

林地 1,500 箇所 43,614

治山施設 113 箇所 2,928

林道 5,325 箇所 10,109

森林被害面積 4ha 8

林野庁資料より作成

(出典: http://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/joho/pdf/h24_baiuzenzengouu_taiou.pdf)

※数量には九州北部以外の日本国内の被害を含む

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2.2.7. 平成 23年台風 12号災害

平成 23 年の 8 月 25 日から 9 月 5 日の豪雨により、地盤が緩み、紀伊半島各地で土石流、

地すべり、崖崩れの土砂災害が発生した。

表 2.2.13 に平成 23 年台風 12 号の規模および特徴を、表 2.2.14 に、災害時の森林や保全

対象に対する影響を示す。

表 2.2.13 平成 23 年台風 12 号災害の規模及び特徴

項目 内容

発生期間 2011 年 8 月 25 日 9:00 –9 月 5 日 15:00(JST)

最低気圧・最大風速 970hPa・25m/s

最多雨量 和歌山県新宮市で 1 時間に 132.5mm

特徴 6 日間続いた台風 12 号による降雨の影響で地盤がゆるみ、紀伊

半島各地で土石流、地滑り、崖崩れ等の土砂災害が発生した。

奈良県・和歌山県・三重県において航空写真判読等により崩壊

箇所を読み取ったところ約 3,000 箇所にのほり、崩壊土砂量約

1 億 m3(京セラドーム大阪約 80 杯の量に相当)と推定された。

河道閉塞が 17 箇所で発生し、とくに奈良県五條市赤谷、十津

川村長殿、栗平、野迫川村北股、和歌山県田辺市熊野(いや)

では大規模な河道閉塞が形成された。

表 2.2.14 平成 23 年台風 12 号災害の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害者数・被害箇所数 被害総額[百万円]

人的 死者 9 名 -

林地 935 箇所 81,914

治山施設 126 箇所 2,023

林道 5,038 箇所 14,596

森林被害面積 14ha 9

気象庁 HP 及び国土交通省近畿地整資料より作成

(出典:

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2011/20110830/20110830.html

http://www.kkr.mlit.go.jp/plan/saitaishien/kiihantou/kiihantou-kirokushi.pdf)

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2.2.8. 平成 23年 7月新潟・福島豪雨

平成23年7月26日から30日にかけて、集中的に猛烈な雨が長時間におよび降り続けた。

図 2.2.8 に氾濫した羽根川を示す。家屋が被害に見舞われている様子が確認できる。

平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨の規模および特徴を表 2.2.15 に、災害時の森林や保全対象

に対する影響を表 2.2.16 示す。

表 2.2.15 平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨の規模及び特徴

項目 内容

発生期間 2011 年 7 月 26 日-7 月 30 日

被災地域 新潟県中越地方 下越地方 ならびに福島県会津地方

最多雨量 新潟県三条市で国土交通省の雨量計で 1000mm

特徴 7 月 27 日から 30 日にかけての 4 日間の長時間におよぶ降雨

県土の約半分を占める広範囲での降雨

短時間に強い降雨

新潟県資料より作成

(出典:http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/612/745/h23gouunokiroku,0.pdf)

表 2.2.16 平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 特になし 特になし

林地 439 箇所 16,030

治山施設 2 箇所 11

林道 2,257 箇所 7,934

林野庁資料より作成

(出典:ttp://www.rinya.maff.go.jp/j/saigai/joho/pdf/niigata-fukusimagouu.pdf)

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2.2.9. 平成 23年東日本大震災

平成 23 年 3 月 11 日に東日本で大きな地震が発生した。宮城県栗原市では震度 7 を記録

した。

特徴的な箇所として、福島県天栄村において、表層崩壊が起こっている。

表 2.2.17 に平成 23 年東日本大震災の規模および特徴を、表 2.2.18 に、災害時の森林や

保全対象に対する影響を示す。

表 2.2.17 平成 23 年東日本大震災の規模及び特徴

項目 内容

発生日時 2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分 18.1 秒(JST)

気象庁震度階級 震度7(宮城県栗原市)

震源の深さ 24km

気象庁マグニチュード/

モーメントマグニチュード

Mj8.4/Mw9.0

地震の種類 海溝型地震

地震の回数(累計) 3 月 11 日から 4 月 30 日までで 600 回以上の地震(震

度 3 から震度 7)

特徴 土砂崩壊の事例が 100 以上

表 2.2.18 平成 23 年 東日本大震災の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害箇所数等 被害総額[百万円]

人的 死者 15,852 名、行方不明者 3287 名 -

林地 458 箇所 34,580

治山施設 275 箇所 126,211

林道施設 2,632 箇所 4,164

森林被害面積 1,065ha 960

農水省資料より作成

(出典:http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/rinya_taiou.html、

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/rinya_110401_htmi1.html )

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2.2.10. 平成 16年新潟県中越地震

平成 16 年 10 月 23 日新潟県川口町を中心として震度 7 の地震が発生した。

林野関連の被害箇所は 647 箇所と多く、災害のタイプでも、崖崩れ、土石流、地すべりと、

様々なタイプの災害が起きている

表 2.2.19 に平成 16 年新潟県中越地震の規模および特徴を、表 2.2.20 に、災害時の森林

や保全対象に対する影響を示す。

表 2.2.19 平成 16 年新潟県中越地震の規模と特徴

項目 内容

発生日時 2004 年 10 月 23 日 17 時 56 分(JST)

気象庁震度階級 震度7(新潟県川口町)

震源の深さ 13km

気象庁マグニチュード/

モーメントマグニチュード

Mj6.8/Mw6.6

地震の種類 大陸プレート内地震

地震の回数(累計) 10 月 23 日から 11 月 30 日までで震度 6 強が 2 回、

震度 6 弱が 1 回

また、有感地震を 877 回計測

特徴 土砂崩壊の事例が 200 以上

表 2.2.20 平成 16 年新潟県中越地震の森林や保全対象に対する影響

被害の種類 被害者数・被害箇所数 被害面積 被害総額[百万円]

林野関係 647 ha 23,792

新潟県資料及び農水省資料より作成

( 出 典 : http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/864/780/chuetsujisin.pdf 、

http://www.maff.go.jp/j/saigai/zisin/0410.html)

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3. モデルケースの作成

2.山地災害事例の整理で作成した山地災害事例(平成 27 年度整理 14 事例および本年

度整理 10 事例)のうち、リモートセンシングが実施されている事例を 6 件選定した。この

6 件について、既存の地形変化量のデータから不安定土砂量及び分布等を算出し、これに基

づき適切な治山・地すべり対策工法を検討し緊急的な治山・地すべり対策計画のモデルケ

ースを作成した。

モデルケースの作成を通じて、リモートセンシングを緊急的な治山・地すべり対策に活

用する高価を、対策の実施までに要する時間及びコスト、対策工の精度向上、対策実施箇

所の選定状況の変化等の多角的な観点から検証した。

3.1. モデルケース選定方針

モデルケース選定においては平成 27年度整理 14事例および前述の山地災害 10事例の中

のリモートセンシングが実施されている事例からの選定を基本とした。

このうち、降雨、地震、火山噴火を誘因とする山地災害で、各災害種別で特徴が異なる

災害を選定した結果、表 3.1.1 の 6 事例をモデルケースとした。

なお、これら 6 事例に加えて昨年度実施業務のモデルケース 2 事例(新燃岳噴火・荒砥

沢地すべり(H20 岩手・宮城内陸地震))についても今年度実施の委員会の指摘を反映し、

同様の形式に従ってモデルケースおよびタイムライン案を作成した。

表 3.1.1 モデルケース 選定理由

災害種別 名称 選定理由

降雨 平成 23 年台風 12 号災害

(紀伊半島大水害)

大規模土砂災害が複数の市町村で多数発生

平成 25 年台風 26 号災害

(伊豆大島災害)

降雨による土石流であるが、火山噴火に伴う堆

積物(火山灰やスコリア)と風成層(レス)の

互層であることが特徴

平成 27 年 8 月豪雨

(広島豪雨災害)

土石流が複数の市町村で多数発生

地震 平成 16 年新潟県中越地震 震度 7 の本震に加え、震度 5 弱以上の余震が

断続的に発生。大小規模の地すべりが多く発生

火山噴火 平成 27 年御嶽山噴火 水蒸気爆発により火山灰が堆積

平成 27 年口永良部島噴火 水蒸気爆発により噴石及び火砕流が発生

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3.2. モデルケース・タイムライン案の方針

モデルケース作成に当たり、林野庁から提供された資料に加えて、インターネット上に

公開されている公式資料の収集に基づいて災害対応状況を時系列に整理した。

さらに利用可能なリモートセンシング技術の活用による治山事業対策について災害対応

シミュレーションを実施し、その活用状況を時系列に取りまとめたタイムライン案(シミ

ュレーション結果)の作成を行った。

モデルケースにおけるシミュレーション結果の見方について、以下に示す。

◆各モデルケースにおけるシミュレーション結果の見方

シミュレーション結果図は各災害の対応を時間軸に沿って示したものであり、大きく上

下 2 段に分割されている。上段では発災時を起点とした実際の災害対応を示し、下段では

本手引きに基づいて各リモートセンシング技術を災害に適用した例を示している。

図 3.2.1 モデルケース概要

以下、整理したモデルケースおよびシミュレーション結果を示す。

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3.3. モデルケース作成

作成したモデルケース 8 事例を 3.3.1~3.3.8 に示す。

3.3.1. 平成 26年広島豪雨災害

3.3.1.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

本ケースは被災範囲が局所的であるため、航空レーザ測量および無人航空機(UAV)な

ど計測範囲は狭いものの詳細なデータを取得できるリモートセンシング技術を早い段階で

投入し、情報収集等に利用することが期待できる。

①航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)

航空レーザ測量は天候が回復した 8 月 23 日に実施されており、災害前後の差分解析によ

る土砂量算出や図面作成などに有効利用されている。

②無人航空機(UAV)による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、経過モニ

タリング(モニタリング期)

曇天が続いていた 20 日のうちに無人航空機(UAV)の投入を実施することで、航空レー

ザ測量よりも早い対応が取れたと考えられる。また治山事業実施中の施工管理や経過観察

のために無人航空機(UAV)が利用できる。

③合成開口レーダによる干渉解析モニタリング

災害復旧後の滑落崖における安全監視や、治山事業実施箇所以外の斜面における変状を

監視するため合成開口レーダの干渉解析により定期的に斜面監視を実施することが考えら

れる

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平成26年 広島豪雨による土砂災害発生時の林野庁対応状況H26(2014)8/20

8/21 8/22 8/23 8/24 8/25 8/26 9/1 10/1 11/1 12/1H27(2015)1/1

2/1 3/1 4/1 5/1 6/1

土石流発生(AM03:20-)

調査

対策

その他

航空レーザ測量(災害分布域)

空中写真<斜め撮影>

リモー

トセンシング技術の利用例

年月日

活動状況等

林野庁対応

空中写真

ALOS-2

リモセン技術を利用した対応

実際の災害対応

航空機SAR

航空レーザ計測

空中写真<垂直撮影>

光学リモートセンシング

合成開口レーダ

無人航空機(主要崩壊・個別)

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

干渉解析モニタリング

8/21 ヘリによる被害状況調査

8/20 現地調査(概況調査) 8/22~25 現地調査(詳細調査)

9/4~5 現地詳細調査(森林総研)

8/26

土石流センサー設置

8/22~9月 土砂撤去・大型土嚢設置

9/4、5 土石流センサー運用開始

8/22 土石流センサー

設置事前踏査

8/27 関連災害調査

設計

9/5 関連災害

申請書提出

1月 土石流安全対策工設置

8/23

9/5~3/26 現地踏査、地形・地質土壌調査、気象調査、林況・植生等調査、 荒廃地等調査、

荒廃森林調査施設等整備計画、森林整備計画、LPデータ差分解析、

土石流発生メカニズムの検証、施設効果の検証治山施設点検

9/5~3/26 検討委員会

9月 治山ダム、山腹工設置開始

8/22

・オルソフォト

作成・DSM

(表層モデル)

作成

対策工の検討

治山計画の立案

撮影・処理

計測

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM差分解析

9/5

8/28-31

土石流センサー

設置箇所検討土石流センサー

設置

処理

実施せず

実施せず(航空レーザ測量で対応)

UAVモニタリング

3ヶ月の前倒し

効果が期待

・主要崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図作成

・小規模崩壊抽出

・総崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図の作成

災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

地盤変動解析により

二次災害のリスクを評価

・施工管理

・二次災害リスク評価

・植生回復モニタリング

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

大規模崩壊

分布把握

発注状況確認

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3.3.2. 平成 25年伊豆大島豪雨災害

3.3.2.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

本ケースは被災範囲が限定的であるため、航空レーザ測量および無人航空機(UAV)な

ど計測範囲は狭いものの詳細なデータを取得できるリモートセンシング技術を早い段階で

投入し、情報収集等に利用することが期待できる。

①航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)

航空レーザ測量は天候が回復した 10 月 18 日に実施されており、災害前後の差分解析に

よる土砂量算出や図面作成などに有効利用されている。

②無人航空機(UAV)による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)

曇天が続いていた 20 日のうちに無人航空機(UAV)の投入を実施することで、航空レー

ザ測量よりも早い対応が取れたと考えられる。

③合成開口レーダによる干渉解析モニタリング(モニタリング期)

災害復旧後の滑落崖上部斜面における変状監視や、治山事業実施箇所以外の斜面変状を監

視するため合成開口レーダの干渉解析により定期的に斜面監視を実施することが考えられ

る。

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平成25年 台風26号災害(伊豆大島)災害発生時の林野庁対応状況H25(2013)10/16

10/17 10/18 10/19 10/20 10/21 10/22 10/25 10/27 10/29 11/1 11/7 12/1H26(2014)1/1

2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1

土石流発生

調査

対策

その他

年月日

リモー

トセンシング技術の利用例

林野庁対応

航空機SAR

航空レーザ計測

リモセン技術を利用した対応

実際の災害対応

活動状況等

空中写真<斜め撮影>

航空レーザ測量(災害分布域)

無人航空機(主要崩壊・個別)

合成開口レーダ

空中写真<垂直撮影>

光学リモートセンシング

発注状況確認

干渉解析モニタリング

空中写真による地表撹乱状況確認

空中写真による土砂生産・流木・堆積状況の確認

10/17 ヘリによる現地調査(関東森林管理局)

10/18 10/27

島内に国有林なし ヘリ調査のみ実施

10/25 11/7

・荒廃状況の確認(全域・詳細)

・二次災害リスク分析

現地調査

箇所の抽出

計測

処理

実施せず

実施せず(航空レーザ測量で対応)

荒廃状況の

確認(概要)

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

現地調査

の実施

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

・小規模崩壊抽出

・総崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図の作成

・オルソフォト

作成・DSM

(表層モデル)

作成

・主要崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図作成

災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

撮影・処理

地盤変動解析により

二次災害のリスクを評価

撮影

大規模崩壊

分布把握

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3.3.3. 平成 23年紀伊半島水害

3.3.3.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

降雨に伴う広域災害であるため、災害直後は悪天候下でも計測が可能な合成開口レーダを

利用し、天候回復後は光学リモートセンシングや各種航空機調査を順次投入することで、迅

速かつ効率的な情報収集を行うことが考えられる。

①合成開口レーダによる大規模崩壊調査(概況調査期)、斜面変状調査(モニタリング期)

悪天候下であっても合成開口レーダを用いることにより観測を行い、大規模な崩壊につい

ては抽出することが出来る。モニタリング期には災害復旧後の滑落崖上部斜面における変状

監視や、治山事業実施箇所以外の斜面変状を監視するため合成開口レーダの干渉解析により

定期的に斜面監視を実施することが考えられる。

②光学リモートセンシングによる崩壊調査(概況調査期)、経年モニタリング(モニタリン

グ期)

雲に覆われている範囲は利用できないが、天候が回復したところから光学リモートセンシ

ングで取得された画像を判読・解析することで比較的小規模な崩壊や河道への土砂流出状況

が確認できる。

またモニタリング期には紀伊半島全体について光学リモートセンシングを用いた効率的

な崩壊地の拡大・植生回復状況モニタリングの適用が考えられる。

③航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(詳細調査期)

大規模崩壊などの緊急的に対策が必要な箇所や、治山事業を実施する箇所に対して優先的

に航空レーザ測量を実施し、土砂量の算出や治山事業の基図としての詳細地形図を取得する。

④無人航空機(UAV)による施工管理(モニタリング期)

治山事業実施中の施工管理や経過観察のために無人航空機(UAV)モニタリングの実施

が考えられる。

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平成23年 紀伊半島大水害発生時の林野庁対応状況H23(2011)9/2

9/3 9/4 9/5 9/6 9/7 9/8 9/9 9/10 9/11 9/12 9/13 9/14 9/15 10/1 11/1 12/1H24(2012)1/1

2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 12/1

十津川村で大規模土砂災害多数発生

五条市宇井地区、野迫川村北俣地区、那智勝浦町、田辺町で大規模土砂災害発生

調 査

対 策

その他

空中写真<垂直撮影>

航空レーザ測量(崩壊集中箇所)

無人航空機(主要崩壊・個別)

年月日

活動状況等

実際の災害対応

リモー

トセンシング技術の利用例

リモセン技術を利用した対応

航空レーザ計測

林野庁対応

空中写真

TerraSAR-X

航空機SAR

空中写真<斜め撮影>

合成開口レーダ

光学リモートセンシング

9/6 ヘリ調査

(十津川地区)

9/15

現地調査

(概況調査・詳細調査)

(十津川地区)

1/6 緊急・恒久対策

(施設災)決定通知

(十津川地区)

1/18 緊急・恒久対

策(災関)決定通知

(十津川地区)

9/20 災害報告

取りまとめ

(十津川地区)

9/9 災害速報(第1報)

(十津川地区)

9/26 ~30

山地災害対策緊

急展開チーム派遣

(十津川地区)

5/22 十津川地区

全体計画調査業務

(十津川地区)

2/8 和歌山県から

民有林直轄事業の打診

(紀伊田辺地区)

2/27 ~28 現地調査

(踏査)(紀伊田辺地区)

(林野庁治山課・局・和歌山県)

4/16 ~17

現地調査(踏査)

(紀伊田辺地区)

4/11~18

民直対象箇所整

理(紀伊田辺地区)

5月 治山事業所設置箇所

検討(紀伊田辺地区)

5/18 和歌山県

民有林直轄治山事業

全体計画調査業務

請負契約(紀伊田辺地区)

7/9 局事前事業評価

技術検討会(第三者委員

会)(紀伊田辺地区)

7月 H25概算要求

ヒアリング(紀伊田辺地区)

8/9 事前評価林野庁修正

(紀伊田辺地区)12/25 H24補正(1次)

箇所付検討(紀伊田辺地区)

5/18~11/22 地形・地質・土壌調査、気象調査、林況・植生等調査、荒廃地等調査、社会的特性調査、施設等整備計画(紀伊田辺地区)

9月~12月 荒廃現況確認、対策工の選定

(渓間工・山腹工)(十津川地区)

5月~25年/1月 現地踏査、地形・地質・土壌調査、気象調査、林況・植生等調査、荒廃地等調査、社会的特性調査、施設等整備計画

(十津川地区)

9/23 4/2 9/7 12/2712/1211/199/27 3/1 4/9

9/14

ヘリ調査

(十津川地区)

災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

干渉解析モニタリング(※オプション)

計測・処理

撮影・処理

(オプション)

荒廃状況の

確認(概要)

観測

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

災害前後

変化抽出

観測

判読・災害前後変化抽出災害前光学衛星画像

取得状況調査・

取得手続き

治山計画の立案観測機器設置

箇所検討観測機器設置

9/5

9/6

9/8 9/9 9/20 10/6 11/19 1/21 4/21 6/28 7/2 7/31 8/22 9/2

9/29 6/18 10/5

天川村川合(深谷)地区山腹工 ~H26年3月

十津川村小井谷地区山腹工 ~H25年1月

長殿(テラ谷)地区渓間工

五百瀬(ヒウラ谷)地区山腹工・渓間工 ~H25年5月

高津 渓間工 ~H25年1月

山天地区山腹工・渓間工 ~H25年6月

内野地区渓間工 ~H25年2月

野尻地区渓間工 ~H25年6月

堂平地区地すべり対策工 ~H25年2月

坪内地区渓間工 ~H25年6月

栃尾(桑谷)地区渓間工 ~H25年6月

檜股地区渓間工 ~H25年2月

折立地区山腹工・渓間工 ~H25年1月

9/13-22

現象および荒廃状況の詳細分析(土砂量・二次災害リスク等)

対策工の検討

経年モニタリング(※オプション)

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

・小規模崩壊抽出

・総崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図の作成

・オルソフォト

作成・DSM

(表層モデル)

作成

・主要崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図作成 UAVモニタリング

主要崩壊

分布把握

大規模崩壊

分布把握

・施工管理

・二次災害リスク評価

・植生回復モニタリング

・崩壊面積推移把握

・植生回復モニタリング

地盤変動解析により

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

撮影

撮影・処理

オルソフォト作成・崩壊地判読

大規模崩壊

分布把握

発注状況確認

SAR/光学衛星の利用により効果

的な航空レーザ測量の投入が

可能(6日間の短縮)

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24

3.3.4. 平成 16年新潟県中越地震

3.3.4.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

広域山地災害が突発的に発生したことから、衛星リモートセンシング技術による状況把握

を即時展開し、重点調査箇所において航空機リモートセンシングを順次投入し、情報の高精

度化をはかる。

災害後も斜面の安定性が確認されるまでは継続的モニタリングが必要であるため、定期的

に観測が可能な衛星リモートセンシング技術が有効利用できる。

①合成開口レーダによる大規模崩壊調査(概況調査期)、斜面変状調査(モニタリング期)

災害直後には天然ダムを引き起こすような大規模山腹崩壊・地すべりの検出への利用が考

えられる。加えて干渉 SAR によるモニタリングから地すべりの進行状況を中心とした斜面

の不安定性を評価することが考えられる。

②光学リモートセンシングによる崩壊調査(概況調査期)、経年モニタリング(モニタリン

グ期)

天候が安定している状況では光学リモートセンシング画像を用いることで広域での山腹

崩壊・地すべりの抽出、河道への土砂流出状況確認が可能である。また崩壊地の拡大・植生

の回復状況を定期的にモニタリングする手段としても利用可能である。

③航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、土砂生産モニ

タリング(モニタリング期)

山腹崩壊や地すべりによる大規模な地形変状が広域に渡って分布していることから航空

レーザ測量により DEM を取得し、土砂量算出や治山事業基図のために利用することが期待

できる。

また継続的に実施することで土砂生産の収束状況把握や斜面安定状況の確認にも利用可

能である。

④無人航空機(UAV)による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、施工管理

(モニタリング期)

河道閉塞箇所など、緊急的に情報を取得する必要がある特定の場所について、航空レーザ

測量を待たずに無人航空機(UAV)の先行投入の実施が考えられる。また治山事業実施中

は施工管理のため無人航空機(UAV)を利用した地形測量・写真撮影が有効である。

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25

平成16年 中越地震発生時の林野庁対応状況H16(2004)10/23

10/24 10/25 10/26 10/27 10/28 10/29 10/30 10/31 11/1 11/10 11/20 12/1 12/10 12/20H17(2005)1/1

1/15 2/1 3/1 4/1 H18(2006) H19(2007) H20(2008) H21(2009) H22(2010) H23(2011) H24(2012)

17:56 本震 -M6.8 震度718:11 余震 -M6.0 震度6強18:34 余震 -M6.5 震度6強19:45 余震 -M5.7 震度6弱

14:21 余震 -M5.0 震度5強

00:28 余震 -M5.3 震度5弱06:04 余震 -M5.8 震度5強

10:40 余震 -M6.1 震度6弱

調 査

対 策

その他

年月日

実際の災害対応

空中写真

リモー

トセンシング技術の利用例

リモセン技術を利用した対応

航空レーザ計測

林野庁対応

航空機SAR

活動状況等

合成開口レーダ

空中写真<斜め撮影>

光学リモートセンシング

航空レーザ測量(崩壊集中箇所)

無人航空機(主要崩壊・個別)

空中写真<垂直撮影>

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

10/28ヘリによる

被害状況調査

法枠工、土留工、アンカー工、なだれ予防柵工ほか(貫地区)

谷止工、土留工、法枠工、アンカー工

ほか(呼坂地区)

法枠工、土留工ほか(浦ノ山地区)

法枠工、土留工、水路工、横孔ボーリング排水工ほか(風口地区)

谷止工、集水井工、水路工、横孔ボーリング排水工ほか(妙見地区)

谷止工、法枠工、土留工ほか(楢木地区)

谷止工、法枠工、土留工ほか(冷子沢地区)

集水井工、水路工、法枠工、土留工ほか(朝日地区)

法枠工、土留工、谷止工、流路工

ほか(下屋敷地区)

杭打工、排土工、押え盛土工、集水井工、谷止工ほか(滝之上地区)

法枠工、集水井工、谷止工、横孔

ボーリング排水工ほか

(中つるね地区)

11/1~7

現地調査

10/2911/21 7/19

11/8~21

山地災害危険地区

・治山施設緊急点検

平成17年~24年度 直轄地すべり防止事業

10/26

災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

干渉解析モニタリング(※オプション)

計測・処理

実施せず

荒廃状況の

確認(概要)

観測

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

災害前後

変化抽出

観測

判読・災害前後変化抽出

災害前光学衛星画像

取得状況調査・

取得手続き

治山計画の立案

観測機器設置箇所検討 観測機器設置

詳細現象分析(土砂量・二次災害リスク等)

対策工の検討

11/24-29

UAVモニタリング(適宜撮影;施工管理・植生回復状況把握)撮影・処理

(オプション)

崩壊地面積推移・植生回復モニタリング(※オプション)SAR/光学衛星の利用により

効果的な航空レーザ測量の投

入が可能(1ヶ月の短縮)

土砂生産モニタリング(※オプション)

・オルソフォト作成

・DSM(表層モデル)作成 ・主要崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図作成

主要崩壊

分布把握

大規模崩壊

分布把握

・小規模崩壊抽出

・総崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図の作成

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

撮影

大規模崩壊

分布把握

発注状況確認

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26

3.3.5. 平成 27年口永良部島噴火

3.3.5.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

火山噴火であるため火口付近の有人航空機による立ち入りは出来ないことから、衛星リモー

トセンシング技術および無人航空機(UAV)が調査の中心的役割を担う。

①無人航空機(UAV)による火口状況把握、土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調

査期)

火砕流被災範囲および火口付近の詳細な状況を調査する手段として無人航空機(UAV)

の活用が考えられる。

②合成開口レーダによる火口状況・降灰分布把握、地形変化把握(概況調査期~モニタリン

グ期)

悪天候下では SAR を用いた状況把握が利用できるほか、干渉 SAR により火山活動に伴

う地形変動を監視し、以後の火砕流・土石流の流下範囲に影響がないか調査する手段として

利用が可能である。

③光学リモートセンシングによる降灰範囲・森林荒廃状況の把握(概況調査期~詳細調査期)、

植生回復モニタリング(モニタリング期)

光学リモートセンシング技術を利用することにより降灰の分布や森林荒廃状況を遠隔か

ら把握・監視することが考えられる。

④航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、土砂生産モニ

タリング(モニタリング期)

噴火後は飛行制限がかかるため火口付近の状況把握はできないが、飛行可能範囲直下の

DEM を取得することで山麓の火砕流等の土砂流出状況を把握するほか、飛行制限が解除さ

れた後には全域のレーザ測量を行うことで今後の噴火対応のための基礎情報を取得するた

めに利用できる。

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27

平成27年 口永良部島噴火時の林野庁対応状況

H27(2015)5/29

5/30 5/31 6/1 6/2 6/3 6/4 6/11 6/18 6/19 7/1 8/1 9/1 10/1 10/21 11/1 12/1 12/25H28(2016)1/1

2/1 3/1 4/1 5/1 6/14 6/25 10/20

新岳噴火(水蒸気爆発) 09:59火砕流が海岸まで到達

噴火 06:18噴火 09:43200m上空までの噴煙を確認

レベル5に引き上げ レベル3

噴石 3.5km火砕流 3km

噴石2km火砕流2.5km

一部地域を除き避難指示を解除

噴石2km火砕流2km

調 査

対 策

その他

空中写真<垂直撮影>

空中写真<斜め撮影>

年月日

リモー

トセンシング技術の利用例

リモセン技術を利用した対応

実際の災害対応

航空機SAR

航空レーザ計測

UAV

噴火警戒レベル

警戒範囲

林野庁対応

ALOS-2

活動状況等

UAV

合成開口レーダ

光学リモートセンシング

航空レーザ測量(飛行可能区域)

発注状況確認

上空(警戒範囲外)

ヘリによる被害状況調査

(林野庁九州森林管理局)

11/6

現地調査12/1~2

現地調査

1/13

現地調査

11/25

災害関連緊急治山事業を申請

H28~H29 復旧治山事業実施

既存施設の修

繕~H29.3.17

9/18 9/11 9/12

干渉解析モニタリング(地殻変動状況確認)

計測

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

処理

観測

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

観測 植生回復モニタリング観測噴火前後

変化抽出解析

噴火前後

変化抽出

現象、地盤変動、荒廃状況、降灰分布の詳細分析

5/29

12:53

5/29

23:436/1 6/10 6/12

12/9

現地調査の実施

計測

・処理

噴火前後解析 観測 噴火前後解析

対策工の検討

治山計画の立案

現地調査箇所の抽出

災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

災害前光学衛星画像

取得状況調査・

取得手続き

・土砂動態の詳細把握

・二次災害危険箇所評価

・治山事業基盤図作成

・オルソフォト作成

・DSM(表層モデル)

作成

・オルソフォト作成

・DSM(表層モデル)作

撮影・

処理

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

・土砂動態の詳細把握

・二次災害危険箇所評価

・植生回復モニタリング

撮影・

処理

・噴火口内状況の確認

・火口周辺地形の確認

・森林荒廃状況の確認

・地形変化把握(干渉SAR解析)

・降灰分布把握(強度画像解析等)・地形変化把握(干渉SAR解析)

・降灰分布把握(強度画像解析等)

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

撮影噴火現象把握

撮影噴火現象把握

実施せず(無人航空機で対応)

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28

3.3.6. 平成 26年御嶽山噴火

3.3.6.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

火山噴火であるため火口付近の有人航空機による立ち入りは出来ないことから、衛星リモ

ートセンシング技術および無人航空機(UAV)が調査の中心的役割を担う。

①無人航空機(UAV)による火口状況把握、土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調

査期)

火砕流被災範囲および火口付近の詳細な状況を調査する手段として無人航空機(UAV)

の活用が考えられる。

②合成開口レーダによる火口状況・降灰分布把握、地形変化把握(概況調査期~モニタリン

グ期)

悪天候下では SAR を用いた状況把握が利用できるほか、干渉 SAR により火山活動に伴

う地形変動を監視し、以後の火砕流・土石流の流下範囲に影響がないか調査する手段として

利用が可能である。

③光学リモートセンシングによる降灰範囲・森林荒廃状況の把握(概況調査期~詳細調査期)、

植生回復モニタリング(モニタリング期)

光学リモートセンシング技術を利用することにより降灰の分布や森林荒廃状況を遠隔か

ら把握・監視することが考えられる。

④航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、土砂生産モニ

タリング(モニタリング期)

噴火後は飛行制限がかかるため火口付近の状況把握はできないが、飛行可能範囲直下の

DEM を取得することで山麓の火砕流等の土砂流出状況を把握するほか、飛行制限が解除さ

れた後には全域のレーザ測量を行うことで今後の噴火対応のための基礎情報を取得するた

めに利用できる。

Page 31: 平成28年度 山地保全調査 (新たな治山・地すべり …...1 1. 業務概要 1.1. 契約概要 1.1.1. 業務名称 平成28 年度山地保全調査(新たな治山・地すべり対策計画手法検討調査)委託事業

29

平成26年 御岳山噴火時の林野庁対応状況

H26(2014)9/27

9/28 9/29 9/30 10/1 10/2 10/3 10/4 10/5 10/6 10/7 10/8 10/9 10/10 11/1 12/1H27(2015)1/1

2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1

水蒸気爆発

レベル3

火山灰

調 査

対 策

その他

合成開口レーダ

光学リモートセンシング

航空レーザ計測(飛行可能区域)

空中写真<垂直撮影>

リモー

トセンシング技術の利用例

リモセン技術を利用した対応

空中写真<斜め撮影>

無人航空機

実際の災害対応

年月日

火山活動

噴火警戒レベル

警戒範囲

林野庁対応

ALOS-2

航空レーザ計測

航空機SAR

FORMOSAT-2

9/27 災害対策本部設置(中部森

林管理局、木曽森林管理署、飛騨

森林管理署、岐阜森林管理署)

9/28 長野県、長野県木曽地方事務所、木

曽町、王滝村、岐阜県下呂市および高山

市の災害対策本部に職員を派遣

10/1~31 治山ダム(濁沢川)の除石工事開始

9/28ヘリコプターによる被

害状況調査(長野県)

9/28~10/17 松本内閣府大臣政務官の

長野到着をもって政府現地対策本部を

長野県に設置。局担当官を派遣

9/28~29 地上調査

9/28 西村内閣府副大臣を団長とする政

府調査団に局計画保全部長および治山

課専門官が合流

10/1~2 現地調査(森

林総合研究所、長野

県)

10/4 監視カメラ

土石流センサー設置

(濁沢川)

10/6 現地調査(中部地

整 、専門家)10/7 ヘリコプターによ

る調査(専門家)

10/7 土石流センサー運用開始

監視カメラ設置地点で雨量計の運用

開始

10/8 除石工事再開

10/9 局長が木曽町長および大滝

村長に対応状況を説明

10/10 二次被害(土石流)防止策に

ついて王滝村に説明

10/10

土石流センサーと連動した

サイレン・赤色灯の運用を開始

10/14

現地調査(中部地整、専門家)

10/15 除石工事再開

10/9 除石工事および監視・観測体

制につき王滝村に説明

11/26~3/31 監視システム保守点検(濁沢川)

2/26~3/25 復旧治山工事(濁沢川)

3/24~11/30 復旧治山工事(倉本湯川)

9/28

9/29 9/30

撮影・処理

9/28 9/29 9/30

10/2

10/2 10/6 10/7

3/24~H28/3/25 復旧治山工事(濁沢川)

治山計画の立案

現象、地盤変動、荒廃状況、降灰分布の詳細分析

現地調査

の実施

干渉解析モニタリング(地殻変動状況確認)

観測

観測 植生回復モニタリング噴火前後

変化抽出解析

噴火前後解析災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

災害前光学衛星

画像

取得状況調査・

取得手続き

撮影・

処理

・広域の降灰分布を確認

・森林荒廃状況を確認

土石流センサー

設置箇所検討土石流センサー

設置

・オルソフォト作成

・DSM(表層モデル)

作成

・噴火口内状況の確認

・火口周辺地形の確認

・森林荒廃状況の確認

現地調査箇所

の抽出

対策工の検討

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

・土砂動態の詳細把握

・二次災害危険箇所評価

・治山事業基盤図作成

・地形変化把握(干渉SAR解析)

・降灰分布把握(強度画像解析等)

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

実施せず(無人航空機で対応)

撮影噴火現象把握

発注状況確認

Page 32: 平成28年度 山地保全調査 (新たな治山・地すべり …...1 1. 業務概要 1.1. 契約概要 1.1.1. 業務名称 平成28 年度山地保全調査(新たな治山・地すべり対策計画手法検討調査)委託事業

30

3.3.7. 平成 23年新燃岳噴火

3.3.7.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

火山噴火活動であるため有人航空機調査は飛行範囲が制限されるため、火口周辺は無人航

空機(UAV)による調査が利用できる。降灰分布は広域に渡ることから衛星リモートセン

シング技術が活用できる。特に本災害では頻繁に噴火を繰り返したため、衛星リモートセン

シングによる定期観測が経過監視の上で有効である。

①無人航空機(UAV)による火口状況把握、土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調

査期)

火口付近の詳細な状況を調査する手段として無人航空機(UAV)の活用が考えられる。

②合成開口レーダによる火口状況・降灰分布把握、地形変化把握(概況調査期~モニタリン

グ期)

悪天候下では SAR を用いた状況把握が利用できるほか、干渉 SAR により火山活動に伴

う地形変動を監視し、以後の火砕流・土石流の流下範囲に影響がないか調査する手段として

利用が可能である。また噴火口周辺など降灰厚が著しい範囲については SAR の強度画像に

よる把握が可能である。

③光学リモートセンシングによる降灰範囲・森林荒廃状況の把握(概況調査期~詳細調査期)、

植生回復モニタリング(モニタリング期)

光学リモートセンシング技術を利用することにより広域の降灰分布や森林荒廃状況を遠

隔から把握・監視することが考えられる。

④航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、土砂生産モニ

タリング(モニタリング期)

噴火後は飛行制限がかかるため火口付近の状況把握はできないが、飛行可能範囲直下の

DEM を取得することで山麓の火砕流等の土砂流出状況を把握するほか、飛行制限が解除さ

れた後には全域のレーザ測量を行うことで今後の噴火対応のための基礎情報を取得するた

めに利用できる。

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31

平成23年 霧島山(新燃岳)噴火時にリモートセンシング技術を有効利用した場合H23(2011)1/10

1/27 1/28 1/29 1/30 1/31 2/1 2/10 2/20 3/1 3/10 3/20 4/1 4/10 4/20 5/1 5/10 5/20 6/1 6/10 6/20 7/1~

準ブリトニー式噴火 ブルカノ式噴火(継続的) ブルカノ式噴火(断続的) 小規模噴火

レベル2 レベル3 レベル3 レベル3 レベル3

噴石2km 噴石2km 噴石4km 噴石3km

火砕流3km 火砕流3km 火砕流3km

(

調

)(

)

1/26

小規模噴火

本格的マグマ噴火

林野庁対応

ALOS/PALSAR

航空レーザ測量

航空機SAR

実際の災害対応

噴火警戒レベル

警戒範囲

火山活動

年月日

リモー

トセンシング技術の利用例

リモセン技術を利用した対応

TerraSAR-X

無人航空機

空中写真<垂直撮影>

航空レーザ計測(飛行可能区域)

光学リモートセンシング

合成開口レーダ

空中写真<斜め撮影>

1/27~降灰新調査(宮

崎県森林管理署都城支

署および鹿児島森林管

理署)

1/28~既存治山施

設の荒廃状況調査

(宮崎県)

1/29~30

現地調査

2/2~3

現地調査

2/9~ 降灰状況

調査(宮崎県都城

市および高原町

の国有林)

2/9~ 治山対

策のための詳

細調査

3/15~16

渓流調査

4/18~20

専門家現

地調査

6/2

植生影響

調査

6/23~24

渓流調査(集

中豪雨後)

2/10 緊急治山対策発表

2/14 土石流センサー設置・配信

2/14 堆積土砂の除去(荒襲川)

3/3 緊急対策工事開始(4箇所)

3/25 監視カメラ設置

1/28 1/30

1/31

2/1

2/3

2/8

2/15 2/18

2/20 2/25

2/7 2/12 2/18

2/4

2/6 2/9

2/10 2/18

2/23 2/28

2/1 2/6 2/12 2/232/17

2/7

2/26

2/1

対策工の検討 治山計画の立案

現象、地盤変動、荒廃状況、降灰分布の詳細分析

現地調査

の実施

土石流センサー

設置箇所検討

土石流センサー

設置

現地調査箇所

の抽出

計測・処理

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

・土砂動態の詳細把握

・二次災害危険箇所評価

・治山事業基盤図作成

撮影・

処理

・オルソフォト作成

・DSM(表層モデル)作

観測 植生回復モニタリング噴火前後

変化解析

災害前光学衛星画像

取得状況調査・

取得手続き ・広域の降灰分布を確認

・森林荒廃状況を確認

・噴火口内状況の確認

・火口周辺地形の確認

・森林荒廃状況の確認

観測

噴火前後

解析災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

・地形変化把握(干渉SAR解析)

・降灰分布把握(強度画像解析等)

干渉解析モニタリング(地殻変動状況確認)

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

実施せず(無人航空機で対応)

撮影 撮影 撮影噴火現象把握

噴火

現象

把握 噴火現象把握発注状況確認

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32

3.3.8. 平成 20年岩手・宮城内陸地震(荒砥沢地すべり)

3.3.8.1. 想定されるリモートセンシング技術の活用例

①合成開口レーダによる大規模崩壊調査(概況調査期)、斜面変状調査(モニタリング期)

災害直後には天然ダムを引き起こすような大規模山腹崩壊・地すべりの検出への利用が考

えられる。加えて干渉 SAR によるモニタリングから地すべりの進行状況を中心とした斜面

の不安定性を評価することが考えられる。

②光学リモートセンシングによる崩壊調査(概況調査期)、経年モニタリング(モニタリン

グ期)

天候が安定している状況では光学リモートセンシング画像を用いることで広域での山腹

崩壊・地すべりの抽出、河道への土砂流出状況確認が可能である。また崩壊地の拡大・植生

の回復状況を定期的にモニタリングする手段としても利用可能である。

③航空レーザ測量による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、土砂生産モニ

タリング(モニタリング期)

航空レーザ測量により DEM を取得することで、滑落崖上部斜面を中心としたクラック発

生状況の把握、土砂量算出や治山事業基図に利用できる。また継続的に実施することで土砂

生産の収束状況把握や斜面安定状況の確認にも利用可能である。

④無人航空機(UAV)による土砂量算出・地形測量(概況調査期~詳細調査期)、施工管理

(モニタリング期)

広域災害が発生した中で荒砥沢地すべりのような最優先で状況把握が求められる対象に

ついては、航空レーザ測量を待たずに無人航空機(UAV)の先行投入の実施が考えられる。

また、治山事業実施中は施工管理のため無人航空機(UAV)を利用した地形測量・写真撮

影が有効である。

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33

平成20年岩手・宮城内陸地震(荒砥沢地すべり)発生時の林野庁対応状況H20(2008)6/14

6/15 6/16 6/17 6/18 6/19 6/20 6/23 9/1 10/1 11/1 12/1

○地震発生(6/14 8:43)

(M7.2,最大震度6強)

○地すべり発生

(斜面長:1300m、幅:900m、

面積約98ha、最大震度100m

以上、不安定土砂量6700万㎡)

(

調査

)(

)

年月日

リモー

トセンシング技術の利用例

リモセン技術を利用した対応

航空レーザ計測

航空機SAR

空中写真<斜め撮影>

合成開口レーダ

光学リモートセンシング

空中写真<垂直撮影>

航空レーザ測量(崩壊集中箇所)

無人航空機(主要崩壊・個別)

実際の災害対応

活動状況等

TerraSAR-X

林野庁対応

ALOS/PALSAR

7/1(発生)1ヶ月後

8/1

6/15 林野庁、宮城

県合同ヘリ調査

6/20~22、6/25~

26 林野庁・宮城

県・岩手県合同の

現地調査

6/18~ 土石流センサー、監視カメラを設置

6/18~ 国有林林道の緊急整備

6/23-24

6/15

最大落差150mの滑落崖

が形成

・崖錐の拡大

・冠頭部拡大亀裂下方が5

~6m程度沈下

・伸縮計の伸び量:10㎜/日

・湛水地形成

7/1~H21.9/3 GPS観測

7/2~12/ 伸縮計観測

6/14 林野庁治山課対策

室に情報連絡室を設置(9:30)

6/14 東北森林管理局にお

いて「災害対策本部」を設置(9:00)

6/15 東北森林管理局に

おいて「現地対策本部」を

設置(10:50)

6/16~ 林野庁に「平成20年岩手・宮城内陸地震災害

対策本部」を設置

7/14~

東北森林管理局職員を栗原災害

対策本部に派遣

6/25~7/21

「治山技術エキスパート部隊」を

現地に派遣

6/16

7/19

・オルソフォト作成

・DEM作成

・災害前後DEM

差分解析

災害前SAR画像

取得状況調査・

取得手続き

干渉解析モニタリング(※オプション)

計測・処理

荒廃状況の

確認(概要)

観測

災害前レーザDEM

取得状況調査・

取得手続き

災害前後

変化抽出

観測災害前光学衛星画像

取得状況調査・

取得手続き

治山計画の立案

観測機器設置

箇所検討

観測機

器設置

詳細現象分析(土砂量・二次災害リスク等)

対策工の検討

UAVモニタリング(適宜撮影;施工管理・植生回復状況把握)撮影・処理

(オプション)

崩壊地面積推移・植生回復モニタリング(※オプション)

土砂生産モニタリング

(※オプション)

・オルソフォト作

・DSM(表層モデ

ル)作成

・主要崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・治山事業基盤図作成

大規模崩壊

分布把握

・小規模崩壊抽出

・総崩壊面積の算出

・土砂量の算出

・二次災害危険箇所評価

・治山事業基盤図の作成

判読・災害前後変化抽出

主要崩壊

分布把握

個別災害

対策工の検討

全体計画

優先順位検討

撮影発注状況確認

大規模崩壊

分布把握

発注状況確認

撮影・処理

オルソフォト作成・崩壊地判読

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3.4. 各モデルケースについてのリモートセンシング技術の活用効果

8 事例のモデルケースについて、それぞれリモートセンシング技術の活用効果を検討した。

表 3.4.1 に検討結果を示す。

表 3.4.1 リモートセンシング技術の活用効果

災害種別 名称 リモートセンシング技術の活用効果

降雨 平成 23 年台風 12 号災害

紀伊半島大水害

土石流センサの設置を 1 日短縮

治山計画の立案を 3 カ月前倒し

平成 25 年台風 26 号災害

伊豆大島災害

荒廃状況の確認(概要)、現地調査箇所の抽出、

現地調査の実施に資する

荒廃状況の確認(全域・詳細)、二次災害リスク

分析が可能

平成 27 年 8 月豪雨

広島豪雨災害

効果的な航空レーザ測量の投入が可能

(6 日間短縮)

地震 平成 16 年新潟県中越地震 効果的な航空レーザ測量の投入が可能

(1 ヶ月短縮)

地すべり地周辺の斜面について長期的なモニタ

リングが可能

平成 20 年岩手・宮城内陸地震

栗駒山荒砥沢地すべり

荒廃状況の確認(全域・詳細)、二次災害リスク

分析が可能

地すべり地周辺の斜面について長期的なモニタ

リングが可能

火山

噴火

平成 23 年新燃岳噴火 噴火後の降灰分布の面的な把握が可能

火山活動に伴う地形変動の有無把握について長

期的なモニタリングが可能

平成 27 年御嶽山噴火 荒廃状況の確認(全域・詳細)、二次災害リスク

分析が可能

平成 27 年口永良部島噴火 荒廃状況の確認(全域・詳細)、二次災害リスク

分析が可能

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4. 山地災害に対して活用するリモートセンシング手法の整理

モデルケースの整理結果を踏まえ、想定される山地災害や現地条件等を分類し、それぞれ

に対して想定される対策タイムライン、適用可能なリモートセンシング手法を整理した。

併せて、リモートセンシング手法と組み合わせることで精度向上等が期待される現地観測

手法についても整理した。

4.1. 山地災害に適用可能なリモートセンシング手法の整理

4.1.1. 手法選定の考え方

モデルケースにおいて、山地災害の対応フェーズを事前調査、概況調査、詳細調査及び復

旧計画策定、長期モニタリングの 4 つのフェーズに分類し、各フェーズにおけるリモート

センシング技術の活用シミュレーションを実施した。そこで、前出の山地災害の対応フェー

ズに対して適用可能なリモートセンシング手法を整理した。

また、想定される山地災害については、山地災害事例の整理に基づき、降雨・地震を誘因

とする山地災害と火山噴火を誘因とする山地災害に分類するとともに、災害規模を広域と局

所に大別して整理することとした。なお、対象とした山地災害と災害規模の考え方を表 4.1.1

に示す。

表 4.1.1 対象とした山地災害と災害規模の考え方

誘因 山地災害種別 災害規模

広域 局所

降雨・地震 山腹崩壊 複数の都道府県

あるいは

多数の市町村で

災害現象を確認

単独あるいは

隣接する市町村で

災害現象を確認

土石流

地すべり

火山噴火 降灰 災害現象が

山麓市街地まで

到達する

災害現象が

山麓市街地まで

到達しない

溶岩流

火砕流

森林荒廃

3.モデルケースの作成で整理した情報を元に、降雨・地震と火山噴火の災害フローにおい

ては、各フェーズにおける取得すべき情報が異なるため、それぞれについて、災害フローの

各フェーズにおけるリモートセンシング技術の適用性について整理を行った。

4.1.1.1. 降雨・地震を誘因とする対応フローに関する検討

降雨・地震を誘因とする災害時のリモートセンシング技術の活用について、リモートセン

シング技術を適用可能な範囲、リモートセンシング技術を用いて取得すべき情報、および、

期待されるリモートセンシング手法の検討を行った。結果を表 4.1.2 に示す。

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また、図 4.1.1 に検討結果をもとに作成した降雨・地震におけるリモートセンシング技術

の適用性を示す。

表 4.1.2 降雨・地震を誘因とする災害時のリモートセンシング技術の活用について

適用される範囲 取得すべき情報 適用が期待されるリモートセンシング

概況調査 ・被災想定範囲全域・被災画像・被災範囲抽出結果

・空中写真(斜め撮影)・光学リモートセンシング・合成開口レーダ

詳細状況調査 ・山地災害発生箇所

・土砂移動現象の面積・土砂移動現象のボリューム・詳細地形情報

・空中写真(斜め/垂直撮影)・航空レーザ測量・光学リモートセンシング・合成開口レーダ・無人航空機

モニタリング ・山地災害発生箇所

・詳細地形情報・植生回復状況・天然ダム

・空中写真(垂直撮影)・航空レーザ測量・光学リモートセンシング・合成開口レーダ・無人航空機

図 4.1.1 降雨・地震におけるリモートセンシング技術の適用性

4.1.1.2. 火山噴火を誘因とする対応フローに関する検討

火山噴火を誘因とする災害時のリモートセンシング技術の活用について、リモートセンシ

ング技術を適用可能な範囲、リモートセンシング技術を用いて取得すべき情報、および、期

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待されるリモートセンシング手法の検討を行った。結果を表 4.1.3 に示す。

また、図 4.1.2 に検討結果をもとに作成した火山噴火におけるリモートセンシング技術の

適用性を示す。

表 4.1.3 火山・噴火を誘因とする災害時のリモートセンシング技術の活用について

適用される範囲 取得すべき情報 適用が期待されるリモートセンシング

概況調査 ・火山噴火発生箇所

・広域にわたる降灰分布状況・溶岩流・火砕流・噴石や火山ガスによる 森林荒廃範囲・土砂移動現象の有無、影響範囲・道路交通網の利用可能状況

・空中写真(斜め撮影)・光学リモートセンシング・合成開口レーダ・無人航空機

詳細状況調査 ・山地災害発生箇所・降灰分布+降灰厚・土砂移動現象(分布・面積・ボリューム)

・空中写真(斜め/垂直撮影)・航空レーザ測量・光学リモートセンシング・合成開口レーダ・無人航空機

モニタリング ・山地災害発生箇所・災害による植生への影響・災害発生時からの回復状況

・空中写真(垂直撮影)・航空レーザ測量・光学リモートセンシング・合成開口レーダ・無人航空機

図 4.1.2 火山噴火におけるリモートセンシング技術の適用性

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4.1.1.3. 各対応フローに対する考察

図 4.1.1 および図 4.1.2 より、災害対応の初期段階では、解像力は低いが広域の情報を取

得可能な衛星リモートセンシングや概況把握を得意とする航空機リモートセンシングの斜

め撮影の適用性が高く、災害対応の中・後期段階では、解像力が高く、詳細把握を得意とす

る航空機リモートセンシングの垂直撮影や航空レーザ測量、無人航空機(UAV)リモート

センシングの適用性が高くなり、災害フローの各段階においての役割が明確であることがわ

かる。なお、この傾向は災害規模にほほ関係しておらず、また、誘因にも関係しないことが

わかる。

一方、衛星リモートセンシングは航空機リモートセンシングや無人航空機(UAV)リモ

ートセンシングでは一般的となっていない解析技術を利用できる場合があり、その場合、

中・後期段階でも活用機会があることがわかる。

4.2 項より、各リモートセンシング技術について適用性をまとめる。なお、より詳細な内

容については、付属資料 1 に示す。

4.2. 各手法の活用方法

4.2.1. 空中写真の活用

4.2.1.1. 準備

1)災害前のデータの調査及び入手

斜め撮影・垂直撮影いずれの場合も航空測量会社への撮影指示を出すに当たり、撮影対象

範囲を設定する必要がある。報道や現地で得られた災害報告、所管する地域を元に撮影を実

施する範囲を決定する。

2)関心領域の発注状況の確認

災害発生時には自身が発注を必要と考えた地域について、自身の機関以外の機関が別途撮

影を実施している場合がある。

国土地理院は災害後に主体的に撮影を実施しているほか、国土交通省の該当地域を管理す

る地方整備局が撮影を発注している可能性があるため、重複発注を避けるために確認する必

要がある。

4.2.1.2. 発注

他機関による撮影が実施されていない場合、撮影の発注を行う。

災害対応撮影が可能な航空測量会社に対して以下の事項を連絡し発注手続きを行う。

撮影の種別(斜め撮影・垂直撮影)

撮影対象範囲

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最優先撮影対象範囲(必要に応じて)

地上分解能

近赤外画像撮影の有無

オルソフォト作成の有無

崩壊地判読の有無

移動土砂量算出の有無

4.2.1.3. 計測

空中写真撮影は有人航空機による撮影となるため、有視界飛行が可能な日中であり、雲の

少ない天候となっている必要がある。最寄りの飛行場から現地までの移動があるため、飛行

場付近の天候が安定しており離陸が可能な条件となっていることも必要である。

空中写真による取得可能情報と、取得可能面積の目安を表 4.2.1 に示す。

表 4.2.1 取得可能情報と取得可能面積の目安

取得可能情報 山地災害分布、森林荒廃状況、荒廃流域から河川への土

砂流入状況

取得可能面積 垂直撮影:~50km2/日・機

斜め撮影:~数百 km2/日・機(撮影枚数に依存)

4.2.1.4. 概況調査への活用

概況調査は斜め撮影による広域の主要な山地災害の撮影によって行われる。

写真が撮影された地点と、撮影された写真を分析することで、山地災害が発生した範囲お

よび山地災害の代表的な現象が把握できる。

全体的な災害分布の概況把握をしたい

空中写真(斜め撮影)により災害状況を把握しやすい写真を取得する。

短時間で広域の撮影が可能だが、広域にわたる災害の場合には大規模な現象が中心となり、

小規模な現象や災害発生の中心的な地域から離れているものは撮影されない可能性がある。

災害直後に実施される斜め撮影では大規模な現象を中心に様々な角度から撮影を実施す

る。撮影された写真は被害の集中している地域や発生している現象、規模等の把握・分析に

利用される。

火口付近の状況を確認したい

空中写真(斜め撮影)は飛行可能区域からの遠方撮影となるため、火口内部は確認できな

いが、直感的に現象が確認できるため状況分析に有効である。

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降灰分布を確認したい

空中写真撮影のために用いる航空機は降灰範囲(噴煙影響範囲)内を飛行することができ

ないため、飛行可能区域からの限定的な撮影となる。

降灰範囲の土地被覆は、灰色になるため肉眼でおおよその降灰の範囲を直感的に把握する

ことが可能である。

4.2.1.5. 詳細状況調査・復旧計画策定への活用

詳細状況調査は垂直撮影により、面的に網羅された空中写真によって行われる。

取得された写真による崩壊地判読から山腹崩壊・土石流・地すべりの分布・個数・面積が

取得され、山地荒廃の状況が定量的に評価可能となる。

災害現象を分析したい(山腹崩壊)

空中写真から得られる高い解像度の画像と、DSM(数値表層モデル)による三次元での

災害現象の確認、および分析の結果が入手可能となる。

崩壊面積・個数を把握したい

取得された写真による崩壊地判読から山腹崩壊・土石流・地すべりの分布・個数・面積を

抽出することで、山地荒廃の状況が定量的に評価可能となるデータが入手可能である。

空中写真判読では地すべりや崩壊の「場所」や「面積」の取得に加えて、地すべりの「詳

細なブロック」や土石流の「流下範囲」など、詳細な情報まで現象を分析しながら図化する

ことが可能であり、復旧対策検討の基礎資料となる。

災害現象を分析したい(火山噴火)

火山活動が活発な状況では飛行可能区域からの撮影に制限されるため、比較的遠方からの

撮影となるが、火山噴火に伴う土砂移動現象を立体的に臨場感ある形で撮影できるため、災

害現象の分析には有効な手段である。

森林荒廃の把握をしたい

空中写真(垂直撮影)から得られる高い解像度の写真によって、目視で森林荒廃の状況を

把握することが可能である。

4.2.1.6. 長期的なモニタリングへの活用

空中写真により被災地域を定期的に撮影することで、災害後の荒廃・復旧状況の推移を把

握することが可能である。

荒廃状況の経過確認をしたい

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空中写真(垂直撮影)による定期的な撮影と、それに基づく崩壊地判読を行うことにより、

災害直後と比較して、崩壊地のスケールの拡大・縮小を分析できる画像を入手することが可

能である。

植生の回復状況把握をしたい

空中写真(垂直撮影)により、崩壊地の植生回復状況を把握できる画像を入手することが

可能である。

4.2.2. 航空レーザ測量の活用

4.2.2.1. 準備

1)災害前のデータの調査及び入手

災害前の航空レーザ測量成果があるかどうかの調査を実施する。

災害前の DEM があった場合には災害前後の DEM 差分解析により、土砂量の算出等の詳

細な現象把握が可能になる。DEM 取得状況の調査は『航空レーザ測量ポータルサイト

(http://www.sokugikyo.or.jp/laser/portal/)』で行う。

2)他機関による発注状況の確認

空中写真撮影と同様、航空レーザ測量についても国土交通省の該当地域を管理する地方整

備局が撮影を発注している可能性があるため、発注状況の確認を行うと重複発注が避けられ

る。

4.2.2.2. 発注

他機関による撮影が実施されていない場合、撮影の発注を行う。

災害対応撮影が可能な航空測量会社に対して以下の事項を連絡し、発注手続きを行う。

撮影対象範囲

最優先撮影対象範囲(必要に応じて)

レーザ点密度

崩壊地判読の有無

移動土砂量算出の有無

4.2.2.3. 計測

航空レーザ測量は空中写真撮影と同様に有人航空機による撮影となるため、有視界飛行が

可能な日中であり、雲の少ない天候となっている必要がある。最寄りの飛行場から現地まで

の移動があるため、飛行場付近の天候が安定しており離陸が可能な条件となっていることも

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必要である。

取得可能情報と、取得可能面積の目安を表 4.2.2 に示す

表 4.2.2 取得可能情報と取得可能面積の目安

取得可能情報 植生下を含む DEM、詳細地形図(1m 等高線)、微地形判読図、土砂量(要

災害前 DEM)

取得可能面積 ~30km2/日・機

(条件:山間地域・レーザ点密度 1 点/m2)

4.2.2.4. 概況調査への活用

航空レーザ測量は、計測から DEM 作成までに一定の期間を要するため、広域災害におけ

る概況調査としての利用には適していない点に注意が必要である。

局所的な投入の場合でも 1 週間程度の時間がかかる。

4.2.2.5. 詳細状況調査・復旧計画策定への活用

航空レーザ測量で取得される DEM およびオルソフォトからは災害復旧計画の基図とな

る等高線図面等の資料を作成可能である。

また、DEM に基づく微地形判読画像を作成することにより、斜面上のクラックなど二次

災害の危険性に関する分析にも利用することが出来る。

崩壊面積・個数を把握したい

航空レーザ測量で取得されたオルソフォトや災害前後の DEM の差分解析による崩壊地

の判読から、山腹崩壊・土石流・地すべりの分布・個数・面積が取得され、詳細な山地荒廃

の状況が定量的に評価可能となる。DEM が取得できることにより、植生に覆われた場所の

土砂動態が把握できることから空中写真だけの判読に比べて高い精度で崩壊面積・個数の算

出が可能である。

災害現象の分析(山腹崩壊)をしたい

航空レーザ測量を利用することで、植生下を含む、広域の詳細な地形と空中写真が取得で

きる。地形判読・写真判読により、山地災害現象を分析することが可能である。

災害現象の分析(火山噴火)をしたい

航空レーザ測量は有人航空機による計測であるため、火山活動が活発な状況下では飛行可

能区域のみ利用可能な点に注意が必要である。主に火砕流・土石流などが発生した渓流の山

麓部において火山噴出物の堆積把握などの詳細把握に利用が可能である。

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地形変動の把握をしたい

航空レーザ測量は飛行可能範囲でのみ利用可能であるため取得範囲は限定されるが、植生

に覆われた場所であっても DEM が取得できるため詳細な標高の変動が把握できる。

土砂量の算出をしたい

土砂量の算出には DEM が直接面的に取得できる航空レーザ測量が最も有効である。

地形測量をしたい

航空レーザ測量は植生下の DEM も取得が可能であるため広域の地形測量が可能である。

ただし火山噴火活動によって飛行禁止区域が設定されている場合は飛行可能範囲下のみの

データ取得が可能となる。

4.2.2.6. 長期的なモニタリングへの活用

長期的なモニタリングへの活用として以下の事例を示す。

土砂生産状況の確認をしたい

航空レーザ測量をモニタリング技術として利用することにより、植生に覆われた地盤面や

植生の高さを取得し、災害後の経過を詳細に分析したデータを入手することが可能である。

荒廃状況の経過・土砂生産状況の確認をしたい

航空レーザ測量を定期的に行うことで、継続的に災害ごと比較した崩壊分布の拡大・縮小

状況、および土砂生産状況を把握した結果を入手可能である。

植生の回復状況把握をしたい

航空レーザ測量を用いた植生回復状況モニタリングでは、植生の面的な分布に基づく平面

的な回復傾向に加えて、植生の高さ(樹高)や樹冠の大きさ・厚さなど高度な森林情報も解

析によって取得可能となる。

斜面・山体の変状監視をしたい

航空レーザ測量を用いた斜面の変状監視は、標高差分解析による鉛直方向の変状評価と、

画像解析による水平方向の変状の 2 種類の方法で結果を入手することが可能である。

いずれも場合もわずかな変状を監視する場合には繰り返し航空レーザ測量を行い、少なく

とも 2 時期の DEM データを取得する必要がある。

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4.2.3. 光学リモートセンシングの活用

4.2.3.1. 準備

被災地の被害情報を収集する際に、観測データの有無を確認する必要がある。

衛星データについては、災害時に以下のサイトで観測データの公開が行われるケースが多い。

以下のサイトでは、災害名での検索が可能なため、災害時には該当データが存在するかど

うかを確認する必要がある。

だいち防災 WEB(https://bousai.jaxa.jp/)

センチネルアジア(https://sentinel.tksc.jaxa.jp/sentinel2/topControl.jsp)

国際災害チャータ(https://www.disasterscharter.org/web/guest/home)

4.2.3.2. 発注

4.2.3.1 のサイトにおいてデータが公開されておらず、かつ、光学リモートセンシングデ

ータが必須である場合は、発注作業を行う必要がある。発注の際、衛星によって仕様は異な

るが、指定が必要な主な条件として、以下が挙げられる。

・ 観測日

・ 災害発生地点の緯度経度

処理レベル:GIS で他のデータとの重ね合わせを行うことが目的であれば、オルソやジ

オコードと明記されたデータが望ましい。なお、主な光学リモートセンシングデータの仕様

及び価格を表 4.2.3 に示す。

表 4.2.3 主な光学リモートセンシングデータの仕様及び価格

※印の価格については、販売元へ問合せが必要(RESTEC:https://www.restec.or.jp)

パンクロ

(白黒)

マルチ

(カラー)機関名 国名

新規

撮像アーカイブ

新規

撮像アーカイブ

WorldView-1 0.5 - 1 17.6 11 10:30Digital

Globeアメリカ ※ ※ ※ ※ RESTEC

パンクロ

50/60cm

スタンダード2A

WorldView-2 0.46 1.85 1 16.4 11 10:30Digital

Globeアメリカ ※ ※ ※ ※ RESTEC

4バンド

50/60cm

スタンダード2A

WorldView-3 0.3 1.24 1 13.1 16 10:30Digital

Globeアメリカ ※ ※ ※ ※ RESTEC

4バンド

50/60cm

スタンダード2A

GeoEye 0.41 1.65 1 15.3 14 10:30Digital

Globeアメリカ ※ ※ ※ ※ RESTEC

4バンド

50/60cm

スタンダード2A

Pleiades-10.7

(0.5)

2.8

(2)2 20 24 9:30

AIRBUS

Defence

&

Space

フランス 3,000 2,400 100 25 RESTEC -

SPOT6,72

(1.5)

8

(6)2 60 12 10:00

AIRBUS

Defence

&

Space

フランス 680 560 500 100 RESTEC

6mカラー

新規撮影:340円/km2

アーカイブ:220/km2

RapidEye -6.5

(5)5 77 12 11:00

Planet

Labsアメリカ 260 260 1,000 100 RESTEC レベル1b

運用機関価格

(円/km2) 販売

問合せ先

分解能(m) 日本通過

時間

(時±30分)

備考

最低購入面積

(km2)衛星名

基数

(基)

観測幅

(km)

回帰

日数

(日)

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4.2.3.3. 計測

悪天候下で雲のかかっている範囲については情報取得することが出来ないが、天候の快復

を狙って光学リモートセンシングによる観測を実施することでより詳細に広域の被災状況

を把握することが可能である。取得可能情報と、取得可能面積の目安を表 4.2.4 に示す。

光学リモートセンシングデータの一般的な分解能は、数 10cm~数 m 程度になる。また、

観測幅は 10km~70km 程度の範囲となる。

表 4.2.4 取得可能情報と取得可能面積

取得可能情報 山地災害分布、森林荒廃状況、荒廃流域から河川への土砂流入状況

取得可能面積 100~数百 km2/日 (撮影分解能に依存)

4.2.3.4. 概況調査への活用

概況調査への活用事例として、以下事例を示す。

災害前後の目視判読をしたい

災害前後の光学リモートセンシングデータを取得し、2 データを目視で確認することによ

り、変化箇所をいち早く検出することが可能である。

道路情報等、基盤情報との重ね合わせをしたい

GIS に、衛星データと道路情報を重ね合わせることによって、被災箇所を確認すると同

時に、被災箇所へ向かう際に使用する道路に影響が無いかどうか、確認した結果を入手する

ことが可能である。

森林荒廃の把握をしたい

植物の光合成が盛んな(活性度が高い)状態では、植物は赤色の光を多く吸収し、近赤外

の光を跳ね返す、という特徴がある。この特徴を利用した指数に NDVI(Normalized

Difference Vegetation Index)といった指数がある。

森林荒廃が起こった箇所では、NDVI が著しく下がる特徴を利用して、災害の前後の

NDVI 画像を作成することにより、森林の荒廃状況を把握した結果を入手することが可能で

ある。NDVI は以下の式で算出が可能である。

NDVI =NIR − Red

NIR + Red

ここで、NIR は近赤外光、Red は赤色光である。

図 4.2.1 は NDVI 画像の例で、左が災害前、右が災害後を示す。

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ⒸJAXA、広島工業大学を加工

図 4.2.1 NDVI による森林荒廃の把握解析例

NDVI を用いることで森林の活性度を、色の濃淡で表すことができる。NDVI 画像では緑

が濃くなるほど森林の活性度が強いことを示す。災害が起こった際は、土地の状況が森林か

ら裸地へ変化するため、活性度を見ることで森林消失域を見逃さず検出できる。

火口付近の状況確認をしたい

衛星は高高度から計測しているため、噴煙の影響を受けずに有人航空機が侵入できない火

口真上から撮影が可能である。利用する衛星の種別によっては空間分解能数十 cm 程度の鮮

明な画像が取得でき、ある程度詳細な調査も可能である。

ただし、地表(特に火口周辺)が雲や噴煙によって覆われている場合は視認できない。

全体的な災害分布の概況把握(火山噴火)をしたい

光学リモートセンシングは観測範囲内の山地災害の有無が面的に取得されるため、見落と

し無く客観的に災害発生の分布を把握しやすい。

降灰分布の確認をしたい

降灰分布は広域にわたることが多く、高高度から広範囲を観測することのできる光学リモ

ートセンシングを用いた画像解析によって影響範囲を把握することが可能である。ただし、

得られる情報は面的なものであり、降灰の厚さを推定することは困難である。

4.2.3.5. 詳細状況調査・復旧計画策定への活用

詳細状況調査・復旧計画策定への活用として、以下の事例を示す。

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森林荒廃の把握をしたい

森林荒廃は植生の活性度に大きく作用することから、概況調査で紹介した NDVI 画像を

用いることで、森林荒廃の把握が可能である。また、火山噴火に伴う森林荒廃は広域にわた

ることが多いことから、広域観測を得意とする光学リモートセンシングが特に有効である。

4.2.3.6. 長期的なモニタリングへの活用

長期的なモニタリングへの活用として、以下の事例を示す。

植生の回復状況把握をしたい

広域に渡って荒廃した植生をモニタリングする場合には光学リモートセンシングによる

植生解析が有効である。

4.2.4. 合成開口レーダ(SAR)の活用

4.2.4.1. 準備

被災地の被害情報を収集する際に、観測データの有無を確認する必要がある。

衛星データについては、災害時に以下のサイトで、観測データの公開が行われるケースが

多い。以下のサイトでは、いずれも災害名で検索が可能なため、災害時には必要データが存

在するかどうかを確認する。

・ だいち防災 WEB(https://bousai.jaxa.jp/)

・ センチネルアジア(https://sentinel.tksc.jaxa.jp/sentinel2/topControl.jsp)

・ 国際災害チャータ(https://www.disasterscharter.org/web/guest/home)

4.2.4.2. 発注

前述のサイトにおいてデータが公開されない時は、発注を行う。

その際、発注の仕様は衛星によって異なるが、発注者から指定が必要な主な条件として、

以下が挙げられる。

・ 観測日

・ 緯度経度

・ 偏波

・ オフナディア角(衛星鉛直直下と衛星のレーダ照射方向のなす角度)

・ モード:衛星によって異なるが、主に、分解能は荒いが、広域を見ることのできる

「広域観測モード」か、分解能は高いが、局所しか見ることのできない「局所観測

モード」を選択することになる

・ 処理レベル:GIS で他のデータと重ねて確認することが目的であれば、オルソやジ

オコードと明記されたデータが望ましい。

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なお、主な合成開口レーダ(SAR)の仕様及び価格を表 4.2.5 に示す。

表 4.2.5 主な合成開口レーダ(SAR)の仕様及び価格

※印の価格については、販売元へ問合せが必要(以下、主な販売元)

パスコ: http://www.pasco.co.jp/products/sar-satellite/

JSI(日本スペースイメージング社):http://www.spaceimaging.co.jp/order/

RESTEC: https://www.restec.or.jp/solution/pricelist

4.2.4.3. 計測

合成開口レーダ(SAR)のデータは、夜間の観測や、雲の下の観測が可能なため、他の

センサと比較して観測機会が多いことが特徴である。

取得可能情報と、取得可能面積の目安を表 4.2.6 に示す。

合成開口レーダ(SAR)の衛星データの一般的な分解能は、1m~100m 程度になる。また、

観測幅は 10km~数 100km の範囲となる。

表 4.2.6 取得可能情報と取得可能面積

取得可能情報 大規模山地災害の分布

取得可能面積 約 2500km2 (ALOS-2 の Stripmap モードの場合)

4.2.4.4. 概況調査への活用

合成開口レーダ(SAR)は雲を透過して地表を観測できるため、「雲や火山の噴煙に覆わ

れた領域」、「夜間など他の手段では情報が収集しにくい環境」で調査する技術として有用で

ある。1、2 日程度で情報の取得が可能である。

悪天候下での状況確認をしたい

悪天候により、航空リモートセンシングや光学リモートセンシングの利用が難しい中で大

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規模な崩壊を迅速に把握したい場合、災害前後の合成開口レーダ(SAR)の画像を目視で

確認することにより、大規模な変化状況を取得する。夜間であっても観測が可能であり、

1-2 日程度で情報の取得ができる。ただし、解像度などの問題により規模の小さい崩壊は検

出が難しい。

現地までのアクセス可否の確認をしたい

大規模な土砂移動現象が発生した範囲と既存の道路情報を重ね合わせた結果を入手する

ことにより、被災箇所へ向かう際に使用する道路に影響が無いかどうかを確認することが可

能である。

火口付近の状況確認をしたい

合成開口レーダ(SAR)は噴煙などを透過して地表を撮影できる能力を有しており、画

像より火口周辺の地形状況が可能である。

空中写真(斜め撮影)に比べて地上分解能が低く視認性は劣るが、悪天候・夜間において

も安定的に情報取得が可能となる。

降灰分布の確認をしたい

合成開口レーダ(SAR)は、降灰厚が数十 cm を超えるような箇所では利用可能であるが、

降灰厚が 10cm 程度の場合は電波が灰を透過してしまい状況を把握できない可能性が高い。

4.2.4.5. 詳細状況調査・復旧計画策定への活用

合成開口レーダ(SAR)の干渉解析により災害現象に伴う地形変動を把握することで、

今後の災害リスクの分析や復旧計画への反映に利用できる。

地形変動の把握をしたい

火山活動が活発な状況下では合成開口レーダ(SAR)の干渉解析を行うことで地形変動

箇所の抽出を行うことが有効である。

急斜面部では観測及び解析ができない場所があることと、得られる情報は変動量であり、

標高そのものでは無い点に注意が必要である。

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©国土地理院

http://www.gsi.go.jp/chirijoho/chirijoho40099.html

図 4.2.3 秋田県東成瀬地区における狼沢地すべりの干渉 SAR 解析例

図 4.2.3 は、秋田県東成瀬地区における狼沢地すべりに対応した干渉 SAR 画像である。

画像全体の青緑色の箇所については、変動が見られない箇所を表しており、黄色から紫の箇

所は、なんらかの変動がみられた個所である。

図 4.2.3 では、斜面方位(斜面の向いている方向)より、北西方向に変動があったことを

画像から推察可能である。

4.2.4.6. 長期的なモニタリングへの活用

合成開口レーダ(SAR)の干渉解析は広域にわたる斜面のモニタリング技術として有用

である。

変動量の推定をしたい

干渉 SAR 技術を用いることにより、地すべりの変動量を確認することが可能である。国

土地理院の以下のサイトが参考となる。

http://gisstar.gsi.go.jp/sar-jisuberi/process1-top.htm

斜面(山体)の変状監視をしたい

合成開口レーダ(SAR)のデータを用いた干渉解析を行った結果を入手することにより、

斜面の変状を監視することが可能である。この場合、年 3~4 回程度、定期的に取得される

データを用いて広域の山間地域から斜面の変動を検出できるため、広域モニタリング手法と

して有効である。GNSS測量の測量機をどこに据えるかの調査情報においても参考になる。

4.2.5. 無人航空機(UAV)の活用

4.2.5.1. 準備

他機関による発注状況の確認をしたい

空中写真撮影、航空レーザ測量と同様、航空レーザ測量についても地方整備局が撮影を発

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注している可能性があるため、発注状況の確認を行うと重複発注が避けられる。

運用に伴う届出をしたい

モニタリングの平時の撮影では航空法に基づき飛行許可の申請が必要となる。平時運用の

際は飛行開始予定日の少なくとも 10 開庁日前に申請書を提出する必要がある。なお、申請

が混み合う可能性があるため 3~4 週間前の申請が推奨される。

緊急時において飛行許可申請は不要となるが、複数の UAV が上空を運行する可能性が高

いため現地災害対策本部を通じて飛行方法(日時、飛行場所など)を調整する必要がある。

4.2.5.2. 発注

他機関による撮影が実施されていない場合、撮影の発注を行う。

撮影会社に対して以下の事項を連絡し発注手続きを行う。

・撮影対象範囲

・撮影目的(航空局への申請に必要)

・成果の種別(単写真、オルソフォト、地形モデル)

4.2.5.3. 計測

基本的に市街地での運用は不可とされているが、災害発生時に限り緊急運用が許されてい

る。取得可能情報と、取得可能面積の目安を表 4.2.7 に示す。

表 4.2.7 取得可能情報と取得可能面積

取得可能情報 山地災害分布、森林荒廃状況

取得可能面積 ~4km2/日・機(離発着場所から計測対象地域までの距離による)

4.2.5.4. 概況調査への活用

UAV は飛行時間が限られること、飛行ルートを明確にする必要があることから、限定さ

れた範囲に対しての調査に用いる。

火口付近の状況確認をしたい

UAV は飛行禁止可能区域であっても投入が可能であるため、噴火活動時の噴火口上空で

動画や写真撮影を行うことができる。人間が入ることの出来ない場所において、詳細な状況

確認が可能となる。

4.2.5.5. 詳細状況調査・復旧計画策定への活用

詳細状況調査・復旧計画策定への活用として、以下の事例がある。

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災害現象の分析(火山噴火)をしたい

UAV は噴火口付近までの飛行が可能であるため、空中写真(斜め撮影)よりも近づいた

状況での撮影が可能となる。そのためより詳細な土砂移動現象の分析した結果を入手するこ

とが可能となる。また撮影した写真を解析することにより詳細なオルソフォトや DSM の作

成も可能であるため、GIS による被災範囲の面積・土砂量算出した結果を入手することも

可能である。

森林荒廃の把握をしたい

UAV で取得できる高解像度の写真によって目視判読から森林荒廃の状況を把握した結果

を入手することが可能である。また、肉眼で見える可視画像に加えて近赤外波長帯を撮影で

きるカメラを利用した場合、光学リモートセンシングと同様に植生の活性度から森林荒廃を

評価した結果を入手することも可能である。

地形変動の把握をしたい

UAV で取得できる三次元モデルは表層高(DSM)となるため、裸地・荒廃地での地形変

動は詳細に把握した結果を入手できるものの、植生に覆われた場所での精度は航空レーザ測

量に比べて劣る。

土砂量の算出をしたい

UAV によって取得できる DSM と、災害前の DEM の解析により土砂量の算出を行った

結果を入手することが可能である。

ただし、植生に覆われている場所では植生の高さを含んでいるため、航空レーザ測量と比

較すると解析できる範囲が限定的となり、精度も低下する。

地形測量をしたい

UAV の画像から地形を取得する場合、画像解析では植生部の表面高(DSM)が取得され

るため、植生域以外の部分での利用に限られる点に注意が必要となる。

構造物・裸地・渓流などが適用可能範囲として挙げられる。

4.2.5.6. 長期的なモニタリングへの活用

特定の渓流・治山工施工箇所など、場所が限定され繰り返し計測を実施するモニタリング

では UAV による写真撮影および地形モデル取得した結果を入手することが有効である。

土砂生産状況の確認をしたい

オルソフォトから土砂生産の範囲や性質を判読することができ、DSM からは生産土砂量

の算出した結果を入手することが可能となる。

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植生の回復状況把握をしたい

UAV を用いた植生回復状況モニタリングでは、植生の面的な分布に基づく平面的な回復

傾向に加えて、画像解析から取得できる DSM から植生の高さ情報も取得した結果を入手す

ることが可能となる。

施工管理のため現地写真・地形取得をしたい

特定の治山事業実施箇所において安全管理・進捗管理のために定期的に写真・地形を取得

する。

4.3. 現地観測手法とリモートセンシング技術の組み合わせ

現地での観測手法と組み合わせることにより、精度向上が期待されるリモートセンシング

解析手法、および、リモートセンシング技術を使用することで現地調査の精度が向上する事

例について検討を行った。検討結果を以下に示す。

【合成開口レーダを用いた差分干渉解析と GNSS 補正】

地すべり地に GNSS を配置する際、差分干渉解析画像を参照して、配置個所の最適化を

図ることが期待でき、現地計測の精度向上最適化が期待される。

また、定量的な計測実施のため、差分干渉画像における誤差を GNSS の計測結果から低

減する技術が提案されている。地上計測とリモートセンシング技術を併用することで、山地

災害対応の最適化・精度の向上が期待できる。

【無人航空機と現地基準点】

通常、無人航空機により撮影された画像、または、それより作成される地形情報を精度良

く取り扱うためには、観測範囲内の基準点を用いて位置の補正を行っている。無人航空機を

用いた観測を行った箇所の、特徴点の位置情報を測量し、観測画像の位置補正時に使用する

ことで、より精度の高い画像データの生成が可能である。

【航空レーザ測量と現地踏査】

航空レーザ測量では、微地形を把握出来ることから、現地踏査では確認しきれないクラッ

クを把握することが可能となり、最適な現地調査対策範囲の検討に活用できる。

【リモートセンシング解析と現地踏査】

リモートセンシング技術全般において、地上を俯瞰することが出来るため、地上調査で把

握した山地災害個所について、立体的に災害状況を把握でき、地上踏査のみでは分からない

被害状況を把握することが出来る。

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5. 指針案のとりまとめ

2.山地災害事例の整理、3.モデルケースの作成、4,山地災害に対して活用するリモートセ

ンシング手法の整理の内容を踏まえ、山地災害に対する治山・地すべり対策へのリモートセ

ンシングの活用に関する指針案を取りまとめた。

指針案の取りまとめにあたり、文書の位置づけについて検討を行った。

検討の結果、リモートセンシング技術の活用に関して統一的な方針を示す「指針」ではな

く、各現場状況に応じて柔軟に対応するための参考となる「手引き」としての位置付けとす

ることが望ましいと判断し、検討委員会においてもこの方針が了承されたため、以降名称を

「指針(案)」から「手引き(案)」に変更することとした。

5.1. 手引き(案)構成

手引き(案)は、「本編」、および、「参考資料」で構成される。本編では山地災害への対

応にリモートセンシング技術を活用する方法や留意点を示し、本編を参照することで、災害

対応が円滑に行えるように構成した。また、参考資料に本編を補足する情報を掲載し、より

詳細な情報を得たい場合や具体的な事例を参照できるようにした。

また、本編は 2 部構成となっており、「第Ⅰ部」では、山地災害および調査・復旧計画策

定の概要、リモートセンシング技術の概要を示し、基礎的な事項として理解しておくべき内

容を整理した。「第Ⅱ部」では、リモートセンシング技術を活用するための具体的な方法や

留意点を示し、実際の災害対応における段階、目的毎に必要な項目を参照できるようにした。

以下、本編の構成を示す。

第Ⅰ部 基本事項

1.山地災害の概要、

2.山地災害に対する調査・復旧計画策定の概要

3.リモートセンシング技術の概要

4.リモートセンシング技術の特性表

第Ⅱ部 リモートセンシング技術を活用した調査復旧計画策定手法

1.手法の考え方 (フローをベースに記述)

2.各手法の検討 (各リモートセンシング技術の活用の内容を記述)

5.2. 手引き(案)とりまとめ

手引き(案)とりまとめ作業について、特に重要であったポイントについて、以下に示す。

当初、手引き(案)作成時の文書構成として、局面ごとに概況把握(発生後数日間~1 週

間)、詳細把握および復旧策定計画(発生後 1 週間~2 ヶ月間)、モニタリング(発生後 1 年

間~数年間)の 3 種類を設定した上で、それぞれの局面で必要となるリモートセンシング技

術の活用についてとりまとめ、記述した。同様に、誘因ごとに降雨・地震・火山噴火の 3

種類を設定し、それぞれの誘因から発生する災害について、局面・規模ごとに適用可能なリ

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モートセンシング技術をとりまとめた。さらに、災害発生時からの経過時間によって活用可

能なリモートセンシング技術を確認できる形式で手引き(案)を作成した。

当初の手引き(案)の構成案を以下に示す。

第1部 山地災害および調査・復旧計画策定の概要

第2部 リモートセンシング技術の活用

第3部 リモートセンシング技術を活用した調査・計画手法

1 誘因別の対策におけるリモートセンシング技術の活用

1.1 概況把握(発生後数日間~1 週間)

1.2 詳細把握および復旧計画策定(発生後 1 週間~2 か月間)

1.3 モニタリング(発生後 1 年間~数年間)

2 誘因・災害種別・規模ごとのリモートセンシング技術活用例

2.1 降雨に伴う山地災害への利用

2.2 地震災害に伴う山地災害への利用

2.3 火山噴火に伴う山地災害への利用

上記構成について、第 2 回検討委員会において、利用者が作業目的別に適用可能なリモ

ートセンシング技術を確認できることが望ましい、といった修正指摘があり、構成を変更し

た。変更後の手引き(案)の構成を以下に示す。

1. 手法選定の考え方

1.1. 降雨・地震を誘因とする対応フロー

1.1.1. 事前調査

1.1.2. 概況調査(発災後数日間~1週間)

1.1.3. 詳細状況調査および復旧計画策定(発災後1週間~2ヶ月間)

1.1.4. 長期的なモニタリング(発災後 2か月~数年間)

1.2. 火山噴火時の対応フロー

1.2.1. 事前調査

1.2.2. 概況調査(発際後数日間~1週間)

1.2.3. 詳細状況調査および復旧計画策定(発災後1週間~2ヶ月間)

1.2.4. 長期的なモニタリング(発災後 2か月~数年間)

2. 各手法の活用方法

2.1. 空中写真

2.2. 航空レーザ測量の活用 .

2.3 光学リモートセンシングへの活用

2.4 合成開口レーダ(SAR)の活用

2.5 無人航空機(UAV)の活用

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変更後の手引き(案)は、利用者が状況に応じて、どのようなリモートセンシング解析手

法を活用できるか、利用者がフローを確認すれば判断できるような構築とした。

選択した解析手法の詳細については、利用者がフローを確認した際に、詳細を記述してい

る項目番号へ移ることができるようフローを構成した。第 3 回検討委員会において、上記

の構成案の了承をいただいた。

フローの例として、降雨・地震を誘因とする概況調査のフローを図 5.1.1 に示す。

図 5.1.1 概況調査時の災害時対応フローの例

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6. 検討委員会の開催

本事業の実施に当たって専門的な見地から検討を行うため、有識者 3 名およびオブザー

バー3 名からなる検討委員会を設置した。検討委員会は、以下の内容で 3 回実施した。

日時・場所 内容

第一回検討委

員会

平成 28 年 10 月 28 日

(金)

10:00~12:00

(一財)リモート・センシング

技術センター

第八会議室

調査の実施方針及び整

理する項目について

第二回検討委

員会

平成 29 年 1 月 11 日

(水)

13:27~16:43

(一財)リモート・センシング

技術センター

セミナールーム

モデルケースの内容及

びリモートセンシング

手法の選定内容

第三回検討委

員会

平成 29 年 2 月 16 日

(木)

13:30~15:57

(一財)リモート・センシング

技術センター

コンファレンスルーム 1

指針案の内容及び取り

まとめ

7. 職員向け勉強会の開催

林野庁職員のリモートセンシング技術に関する理解を深め、今度の活用を促進することを

目的に職員向けの勉強会を開催した。開催日時、対象、参加人数、開催状況は以下の通りで

あった。

開催日時:平成29年3月15日(水) 14:00~15:00

対象:林野庁職員

参加人数:14名

開催状況:

本業務では衛星リモートセンシング、航空機リモートセンシング、無人航空機(UAV)

リモートセンシングを対象に整理を行ったが、広義のリモートセンシングの説明、及び、リ

モートセンシング技術における本業務で対象としたリモートセンシング技術の位置づけを

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説明し、各リモートセンシング技術について特徴、事例や留意点を説明した。また、本業務

で整理した山地災害の調査および復旧計画策定におけるリモートセンシング技術の適用性

と活用機会を説明し、災害規模に依らず、概況調査には低分解能且つ広域観測可能なリモー

トセンシング技術の活用機会が多いこと、詳細調査には高分解能のリモートセンシング技術

の活用機会が多いことを説明した。

また、質疑対応の結果として、特記すべき事項を以下に示す。

【無人航空機リモートセンシングの運用、地形計測・作成時の留意点】

計測および地形の精度を高めるために、地上計測(基準点の配置)が必要である。

墜落するリスクが高いため、墜落を前提とした運用、墜落リスクを可能な限り低減する

ための安全対策に留意が必要である。

広域観測や長大斜面の観測時には綿密な事前計画をたて、複数機準備して作業効率を向

上させるなどの工夫をすると良い。

【データ共有について】

空中写真や航空レーザ測量は、公的な業務で観測されたデータに関しては共有する仕組

みがあり、申請により共有可能である。また、同一組織の場合は組織内で共有が可能で

ある。

衛星リモートセンシングはライセンス管理が厳しく、データの共有は航空写真や航空レ

ーザ測量と比較して現状は難しい。但し、衛星データから作成されたポリゴンや成果物

については共有が可能で、実際に国土地理院の 1/25,000 地形図の更新や国土数値情報

の土地利用図で衛星データが利用され、その情報が共有されている。

無人航空機(UAV)リモートセンシングは、現状は共有できる仕組みがない。

以上