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平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等 調査報告書 平成30年2月

平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

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平成29年度アジア産業基盤強化等事業

インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

調査報告書

平成30年2月

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本調査報告書の全体構成

1. 調査の背景・目的・手法 P.3

2. メガEPAがインドネシア自動車産業に与える影響について P.13

3. 裾野産業の現状と、育成の課題 P.40

4. 産業人材の現状と、育成の課題 P.148

5. インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール・アクションプラン・ロードマップについて P.183

2

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1.調査の背景・目的・手法

3

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4

1-1.調査の背景と目的

インドネシアにおけるものづくり産業はこの半世紀、繊維・電機・二輪・四輪と主役を変えながら急速な発展を遂げてきた

しかしながら、急速な発展故に技術移転が追い付かず、ASEAN周辺国と比較し、質・量ともに裾野産業が十分発展しているとはいえない

同国のものづくり産業が今後継続的に発展していくには、裾野産業の強化が不可欠である

インドネシアのものづくり産業は二輪・四輪とも日系企業が高い市場シェアを誇り、裾野産業の発展はインドネシアで操業する日系企業の発展・競争力向上と同義である

従って、日本及びインドネシアのニーズをすり合わせ、両国のものづくり産業が今後いかに協業していくべきか議論し、しかるべき役割分担を検討することにより、我が国進出企業の協力強化の一助とする

調査の背景と目的(仕様書より抜粋)

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210,000

270,000

336,000 350,000 352,000

5,783 9,009 13,282

52,585 60,622 87,103

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

2014実績 2015実績 2016実績 2017計画 2018計画

製造業への投資額

うち金属・機械・電子・自動車・その他輸送用機器への内国投資

うち金属・機械・電子・自動車・その他輸送用機器への外国投資

5

1-2.調査の背景:インドネシアの製造業投資

インドネシア工業省は、製造業への2018年の投資目標を352兆IDR(約2.9兆円)に設定すると発表インドネシア製造業への投資において自動車関連産業の占める割合は相応に高く、かつ外国投資の伸びが堅調である

ことから、製造業へのさらなる内外投資を呼び込むためにも、自動車関連産業の振興は非常に重要

製造業への投資額推移 インドネシア自動車生産台数

254,737

387,541 345,416

500,710

702,508

過去最高1,298,523

1,177,797

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

(*)2017年実績は未公表

(単位:10億IDR) (単位:台)

(出所)インドネシア工業省・投資調整庁(BKPM)・GAIKINDOより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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1-2.調査の背景:インドネシアの概況①(基本データ、マクロ経済動向)

インドネシアの人口は約2.61億人、GDPは約1兆377億USDといずれもASEAN最大

約14,000の島々からなる世界最大の島嶼国家であるが、人口の約6割は国土面積の約7%のジャワ島に集中

一人当たりGDPは1999年以降上昇を継続、経済成長率は2000年以降5%前後を維持

6

インドネシアの基本データ

人口 約2.61億人(2016年、世界第4位)

総面積 約189.08万km2(日本の約5倍)

GDP 約1兆377億USD(実質額、2010年基準)

-15

-10

-5

0

5

10

0500

1,0001,5002,0002,5003,0003,5004,0004,5005,000

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

一人当たり実質GDP(USD, 2010年基準) 年間GDP成長率(%)

一人当たりGDP、経済成長率の推移

(単位:USD) (単位:%)

(出所)日本国外務省ホームページ・World Bank “World Development Indicators”より みずほ総合研究所作成

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1-2.調査の背景:インドネシアの概況②(産業構造)

7

かつては、主力産業は農林水産業、鉱業・採掘業、製造業と言われていたが、名目GDPに占める農林水産業、鉱業・採掘業のシェアは低下傾向にある。近年は第3次産業のシェアがほぼ一貫して4割程度の比率を占め、経済成長の牽引役となっている

製造業のシェアは、2001年をピークに低下傾向にあり、20%台前半で伸び悩んでいる

産業別GDP構成比の推移

(注)2005年~2009年は2000年基準、2010年以降は2010年基準

(出所)インドネシア中央統計局、JCIF(2017)「基礎レポート 第3章 産業構造 インドネシア」より みずほ総合研究所作成

17.1 15.6 13.13 13.93 13.34 13.49 13.45

8.8 12.111.14 10.46 9.83 7.65 7.21

24.127.7

27.41 22.04 21.08 20.97 20.51

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1995 2000 2005 2010 2014 2015 2016農林水産業 鉱業・採掘業 製造業 電気・ガス・水道 建設業

商業・ホテル・飲食 運輸・通信業 金融・不動産賃貸業 その他サービス業

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1-2.調査の背景:インドネシアの概況③(貿易動向)

8

インドネシアの輸出は、新興国の資源需要の高まりを受けて主要品目の鉱物性燃料を中心に2000年代に拡大したが、2012年以降は世界経済の減速を受けて低迷した。輸入は、旺盛な民間消費を背景に輸出を上回る勢いで伸びたが、2012年に減少に転じた

近年、輸出額全体が減少している中、電気機器や道路輸送機器等の機械・輸送機器類の輸出額はほぼ横ばいで堅調に推移している。電気機器や道路輸送機器の輸出に占める割合は拡大しており、その重要性が高まっている

輸出入額の推移(10億USD) 品目別の輸出額( 10億USD )、道路輸送機器の割合の推移

020406080

100120140160180200

1990 1995 2000 2005 2010 2014 2015 2016

輸出(FOB) 輸入(CIF)

(単位:10億USD)

11 12 16 24 47 51 35 28

6 10 12 14

22 23 21 20

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0

50

100

150

200

1990 1995 2000 2005 2010 2014 2015 2016

食料および動物 原材料 鉱物性燃料

動植物性油脂 化学品 工業製品

機械・輸送用機器 その他工業品 特殊取扱品

道路輸送機器の割合

(単位:10億USD)

(出所)JCIF(2017)「基礎レポート 第6章 国際収支と貿易・為替政策インドネシア」、インドネシア中央統計局より みずほ総合研究所作成

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1-2.調査の背景:インドネシアの概況④(FDI動向)

9

インドネシアの貿易相手国を国別にみると、日本は最大の輸出相手国であるが、1990年代以降シェアは大幅に縮小し、1990年から25年間で約30%pt下落している

輸入相手国としては、中国がトップであり、2015年には20.6%を占めている。輸入しているのは主に電気機器、通信機器、繊維製品等である。これにシンガポールの12.6%、日本の9.3%が続く

輸出入ともにASEANのシェアは拡大傾向にある

主要貿易相手国(構成比上位5ヵ国)

輸出相手国 輸入相手国

1990年 2005年 2015年 1990年 2005年 2015年

1位 日本(42.5%)

日本(21.1%)

日本(12.0%)

日本(24.8%)

シンガポール(16.4%)

中国(20.6%)

2位 米国(13.1%)

米国(11.5%)

米国(10.8%)

米国(11.4%)

日本(12.0%)

シンガポール(12.6%)

3位 シンガポール(7.4%)

シンガポール(9.1%)

中国(10.0%)

ドイツ(6.9%)

中国(10.1%)

日本(9.3%)

4位 韓国(5.3%)

韓国(8.3%)

シンガポール(8.4%)

シンガポール(5.8%)

米国(6.7%)

マレーシア(6.0%)

5位 中国(3.2%)

中国(7.8%)

韓国・

マレーシア(5.1%)

オーストラリア(5.5%)

タイ(6.0%)

韓国(5.9%)

(注)()内は構成比

(出所)JCIF(2017)「基礎レポート 第6章 国際収支と貿易・為替政策インドネシア」より みずほ総合研究所作成

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0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

第3次産業 その他第2次産業

自動車・その他輸送用機器 第1次産業

1-2.調査の背景:インドネシアの概況⑤(FDI動向)

10

対インドネシアFDIの実行額では、第2次産業に対する直接投資の伸びが顕著である

国・地域別では、ASEANからの直接投資が36.8%と約3分の1を占める。他方で、日本からの直接投資も自動車関連メーカーを中心に伸長してきた。2016年の日本からのFDI実行額は約54億USDであり、ASEAN(約107億USD)に次ぐ大きさである

産業別FDI実行額の推移 国・地域別FDI実行額

(単位:100万USD) (単位:100万USD)

2,213 6,132 7,979 9,153 10,665

921

713 2,705 2,877

5,401

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2005 2010 2014 2015 2016

ASEAN 日本 中国 韓国

台湾 その他アジア 欧州 米国

オーストラリア その他 ASEANの割合 日本の割合

(出所)インドネシア投資調整庁・JCIF(2017)「基礎レポート 第6章 国際収支と貿易・為替政策インドネシア」より みずほ総合研究所作成

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1-3.調査の手法(コンセプト)

11

調査の手法

① インドネシア自動車産業の現状確認② インドネシア自動車セクターにおける外資サプライヤー・ローカルサプライヤー双方の強み・課題確認③ インドネシア自動車裾野産業の育成発展のために推奨される政策策定

メガEPAがインドネシア自動車産業に与える影響調査

・机上調査

・有識者ヒアリング

・メガEPAに対するインド

ネシアのスタンスとその

影響評価

インドネシア自動車産業の現状と課題

・机上調査(データ調査)

・企業ヒアリング調査

・関係機関ヒアリング調査

・インドネシア・タイ比較による

現状把握・課題抽出

・インドネシアの強み確認

産業人材の現状と課題

・机上調査

・各種データ調査

・関係機関ヒアリング調査

・インドネシアの課題と強み抽出

アクションプランアクションプラン

求められる政策求められる政策

ゴール達成に向けた日尼間の

協働の可能性

理想像(ゴール)の設定理想像(ゴール)の設定

インドネシア自動車産業の

国際競争力向上

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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1-3.調査の手法(調査実施フロー)

自動車業界の課題仮説設定

尼国進出済み日系企業ヒアリング

ヒアリング結果を踏まえ仮説検証

ロードマップ策定・対応策検証

現地関連機関・団体ヒアリング

机上調査による課題仮説設定・検証

ヒアリング結果による課題仮説設定・検証

課題の分類化および課題設定

緊急度 対策・効果の期間 課題の規模

調査実施フロー概略

ロードマップ策定フロー

本邦における尼国未進出企業ヒアリング

現地進出済み日系企業ヒアリング

アクションプラン・ロードマップ策定

12

以下に、本調査の実施フローを示す

①市場②輸出③生産・調達④規制・産業政策⑤インフラ⑥為替⑦情報整備

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2.メガEPAがインドネシア自動車産業に与える影響について

13

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2-1 本調査の対象とするメガEPA

14

本調査では、AEC・ACFTA ・RCEP・TPPを調査対象とする

AECはASEANの分業体制ならびにインドネシアにおける産業集積に大きな影響を与えうるものであり、本調査の中心となるメガEPAである

さらに、インドネシアの最大輸入国である中国とASEANのFTAであるACFTA、中国・インド・日本等の大きな市場を有する国が参加予定のRCEP、インドネシアは参加予定でないもののグローバル・サプライチェーンに大きな影響を与えうるTPPに着目する

(出所)みずほ総合研究所作成

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2-2 インドネシアのメガEPAへのスタンス

15

インドネシアはメガEPAへの参加に消極的な姿勢であると言われており、参加中・交渉中のFTA/EPAの数も少ない。

関税削減による輸入増加を懸念することが大きな理由であり、特に国内政治への強い影響力を持つ中小企業団体が反対していることも、メガEPAに積極的でない一つの要因である

一方で、インドネシア政府は産業振興のための輸出促進には関心があり、米国脱退前のTPPへの参加関心を表明して

いたこともあった(主に繊維の輸出拡大が目的)。しかしながら、インドネシアの主要輸出品目である資源(石炭・ガス等)価格が上昇すると、工業製品の輸出拡大やメガEPAに対する関心はすぐに低下してしまう傾向にある

TPPに関しては米国が復帰すればインドネシアも参加を検討する可能性はあるが、インドネシアはTPPよりも、ASEAN経済統合の進展とRCEPを優先させると考えられる。インドネシアはASEANの盟主であり、ASEANの一部しか参加しないTPPと比較して、RCEPはASEANの枠組みを活用しやすいためである

インドネシアのFTA/EPAへの参加状況(タイとの比較)

インドネシア タイ

発効済み(計10件)○多国間協定(4件)

WTO、APEC、イスラム諸国会議機構(OIC)、ASEAN○ASEAN加盟国としての協定(4件)

オーストラリア・ニュージーランド、中国、インド、韓国※日本ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)はインドネシアのみ未発効

○二国間協定(2件)日本、パキスタン

署名済み(2件)イスラム開発協力会議(D8)、EU(インドネシアEU包括的連携協力協定)

発効済み(計13件)○多国間協定(3件)

WTO、APEC、ASEAN○ASEAN加盟国としての協定(5件)オーストラリア・ニュージーランド、中国、インド、日本、韓国

○二国間協定(5件)オーストラリア、日本、ペルー、ニュージーランド、チリ

交渉中(3件)インド、パキスタン、トルコ

交渉中断(4件)米国、バーレーン、欧州自由貿易連合(EFTA)、EU

(出所)JETROホームページ・有識者ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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2-3 発効済みのメガPEAとその影響

16

本節では、本調査で分析対象とするメガEPAのうち、既に発効しているAECとACFTAについてその概要を確認した上で、インドネシアに与える影響を整理する

AEC、ACFTAの概要

AEC ACFTA

発効年 2015年 2005年(物品貿易協定)

参加国 ASEAN10か国(インドネシア、タイ、マレーシア、

シンガポール、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)

ASEAN10か国、中国

経済規模 約2.6兆USD 約6兆USD

(出所)World Bank “World Development Indicators” より みずほ総合研究所作成

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2-3-1.AEC (1)AEC参加国

17

AECは2015年末にASEANによって発足された。参加国はASEAN10か国である

インドネシアは、人口約2億6,000万人・GDP約1兆ドルと、いずれもASEAN全体の約4割を占め、ASEAN最大の人口とGDPを誇る国家である。一人当たりGDPは3,974USDと、マレーシア(11,028USD)やタイ(5,901USD)に次ぐ水準である

輸出入についてみると、インドネシアの内需の大きさから他のASEANの国家よりも輸出及び輸入のGDP比は小さく、貿易依存度は比較的低い

人口(万人)

GDP(USD)

実質GDP成長率(%)

1人当たりGDP

財・サービスの輸出

(対GDP比)

財・サービスの輸入

(対GDP比)

対内海外直接投資

(対GDP比)

対外海外直接投資

(対GDP比)インドネシア 26,111.5 10,376.9 5.0 3,974.1 21.2 20.7 2.3 1.1タイ 6,886.4 4,063.9 3.2 5,901.4 69.1 57.5 2.3 1.3マレーシア 3,118.7 3,439.4 4.2 11,028.2 70.9 63.3 3.7 3.3シンガポール 560.7 2,949.5 2.0 52,600.6 177.9 152.0 23.8 10.6フィリピン 10,332.0 2,844.8 6.9 2,753.3 28.4 34.3 1.9 1.9ベトナム 9,270.1 1,641.0 6.2 1,770.3 89.8 89.0 6.1 0.6ミャンマー 5,288.5 751.2 6.5 1,420.5 20.8 26.5 6.5 0.0カンボジア 1,576.2 170.0 6.9 1,078.4 61.7 66.1 9.4 0.3ブルネイ 42.3 133.0 -2.5 31,431.0 52.2 32.7 1.3 3.9ラオス 675.8 111.0 7.0 1,642.7 31.0 43.8 7.5 0.0ASEAN 63,862.2 26,480.7 4.5 4,146.5 n/a n/a n/a n/a(参考)中国 137,866.5 95,051.6 6.7 6,894.5 22.0 18.5 2.2 1.6(参考)日本 12,699.5 60,459.1 1.0 47,607.7 17.6 18.0 0.1 3.1

(注)人口、GDP、実質GDP成長率、一人当たりGDPは2016年、財・サービスの輸出、財・サービスの輸入、対内海外直接投資、対外海外直接投資は2015年のデータ

AEC参加国の経済状況

(出所)World Bank “World Development Indicators” より みずほ総合研究所作成

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2-3-1.AEC (2)AECの進展状況

AECはEUのような通貨統合や域外共通関税等を目指す「強い」経済統合は想定しておらず、FTAに投資や熟練労働者の移動の自由化を加えるような経済統合を想定している

AECは、①単一市場・生産拠点、②競争力のある経済地域、③公平な経済発展、④グローバル経済への統合という四つの戦略目標を掲げ、ブループリントに沿ってモノ・サービス・資本・人の移動の自由化を進めている

2015年末時点における貿易自由化率は、ASEAN先行加盟6か国で99.2%、CLMV諸国で93%。2018年1月1日にCLMV諸国の関税が原則すべて撤廃され、CLMV諸国の関税撤廃率は98.1%に高まった。関税率が0%の品目が多く、輸出入で活用されることも多い。FTAの成功事例との評価もある

目標 具体的な内容

単一市場と生産基地(Single Market and Production Base)

物品の自由な移動、サービスの自由な移動、投資の自由な移動、資本の自由な移動、熟練労働者の自由な移動、優先統合分野、食料・農業・林業

競争力のある経済地域(Competitive Economic Region)

競争政策、消費者保護、知的財産権、インフラ開発(輸送・エネルギー・情報通信等)、税制、電子商取引

公平な経済発展(Equitable Economic Development) 中小企業の成長、統合イニシアティブ(CLMV諸国に対する技術支援、人材育成支援)

グローバル経済への統合(Integration into the Global Economy) 経済統合への一貫したアプローチ、グローバル・サプライ・ネットワークの形成

AECブループリントで設定された目標

18

(出所)石川・清水・助川(2016)『ASEAN経済共同体の創設と日本』・三浦(2016)「ASEAN共同体(AEC)の行方―日中のはざまで揺れる6億人市場の帰趨―」・ASEAN (2015) ”A Blueprint for Growth ASEAN Economic Community 2015: Progress and Key

Achievements”・有識者ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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0

2

4

6

8

10

12

14

16(%)

(年)

乗用自動車

(HS8703)貨物自動車

(HS8704)自動車部品

(HS8708)

2-3-1.AEC (3)主な品目の関税撤廃状況

19

自動車関連の関税について、ASEAN6では2010年に乗用自動車・貨物自動車・自動車部品ともに撤廃されている。これはAECの前身であるAFTA時代から引き下げられていたものであり、2002年~2003年には既にASEAN6の関税率は5%以下へと引き下げられていた

CLMV諸国に関しては、2018年1月1日の関税撤廃に伴って自動車関連の関税も撤廃された。ベトナムの輸送機器関連品の一部(バス・乗用車・オートバイ)は2017年までは30%を超える関税率が設定されていたが、それらが撤廃されたことが注目されている

AFTAによる自動車関連の関税引き下げ(インドネシアの削減スケジュール)

(注1)インドネシアのAFTA関税は2008年、2014年、2015年は報告されていないため、2008年は2007年の特恵関税を、2014年、2015年は2013年の特恵関税を用いて算出している

(注2)各関税率は、各HS6桁品目の最高税率をHS6桁品目数で割って算出した単純平均である

ベトナムにおいて2018年1月1日に関税撤廃された輸送機器関連品目

ディーゼルエンジン式バス(10人以上のもの)

その他のバス(10人以上のもの)

乗用車(1,000cc以下) 乗用車(1,000cc超1,500c以下)

乗用車(1,500cc超3,000c以下) 乗用車(3,000cc超)

ディーゼル乗用車(1,500cc以下)

ディーゼル乗用車(1,500cc超2,500cc以下)

ディーゼル乗用車(2,500cc超)

乗用車(その他のもの)

オートバイ(50cc以下) オートバイ(50cc超250cc以下)

オートバイ(その他のもの)

(出所)石川・清水・助川(2016)『ASEAN経済共同体の創設と日本』・金子(2017a)「ASEAN、中国のFTAと自動車・自動車部品貿易①」・

JETRO資料・World Bank “World Integrated Trade Solution”より みずほ総合研究所作成

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2-3-1.AEC (4)課題

20

関税撤廃の進展は評価される一方で、非関税障壁や貿易に関わる事業環境には改善が見られない

特に非関税障壁については、関税撤廃による輸入品の流入への懸念から、悪化する傾向が見られる。このような非関税障壁の導入によって、関税撤廃の効果が薄まる懸念がある

非関税障壁の事例

インドネシア • インドネシア語での商品ラベル表示義務規定• LCCG適合車対応のための現地調達を要請されているが、法規制であるにもかかわらず、具体的な数値目標や現調化定

義などが不明瞭である• 船積前輸出検査が必要であり、非常に煩雑且つ長い輸入プロセスの一因となっている。2012年1月にHSコード体系変更が

行われた際、従来船積前検査対象外であった品種が船積前検査対象となり、通関できなくなったケースもある• 第三者原産地証明取得手続きが煩雑であり、EPAやFTAを締結した国々との貿易において優遇関税を適用するには、特定

原産地証明を出荷ごとに商工会議所に出向いて入手し、輸入国での輸入通関に間に合うように発送する必要がある• HSコードの理解が税関の担当者ごとに変わり、同じ商品を輸入していても違うHSコードが割り当てられることがある。一貫

性がなく、安定した操業に影響がある

タイ • 第三者原産地証明取得手続きが煩雑であり、EPAやFTAを締結した国々との貿易において優遇関税を適用するには、特定原産地証明を出荷ごとに商工会議所に出向いて入手し、輸入国での輸入通関に間に合うように発送する必要がある

• 輸入手続きにおいてタイ語翻訳が必要

ベトナム • 2018年1月1日に自動車の関税が0%へ引き下げられることを踏まえて、2017年10月17日に政令116号が施行され、自動

車の輸入事業者に対して、輸入検査の際の他国当局による車両許可証の提出や、船積みごとの車両検査の義務付けを求める措置を導入している

• 第三者原産地証明取得手続きが煩雑であり、EPAやFTAを締結した国々との貿易において優遇関税を適用するには、特定原産地証明を出荷ごとに商工会議所に出向いて入手し、輸入国での輸入通関に間に合うように発送する必要がある

(出所)三浦(2016)「ASEAN共同体(AEC)の行方―日中のはざまで揺れる6億人市場の帰趨―」・貿易・投資円滑化ビジネス協会(2017)「2017年速報版 各国・地域の貿易・投資上の問題点と要望」JETRO「ATIGAに基づくASEAN域内の関税撤廃が完了―ベトナムの自動

車輸入関税30%もゼロに―」通商弘報2018年1月19日よりみずほ総合研究所作成

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2-3-1.AEC (5)AECが与える影響(①GDPへの影響)

21

ASEANの全加盟国のGDPを押し上げるプラスの効果があり、ASEAN全体では8.0%GDPを押し上げると試算されている。賃金水準の低さを要因として、カンボジアやベトナムへのインパクトはそれぞれ18.0%、14.7%と特に大きくなっている

インドネシアのGDPは2025年までに4.3%拡大すると試算されている。他国と比較して、AEC発足によるGDP押し上げ効果は低い。この背景には、他のASEAN諸国と比較して貿易依存度が低いこと、製造業の生産能力が国内需要に見合っていないことが原因である可能性がある

8.0

4.3

11.09.4 9.6 9.7

14.7

18.0

11.4

2.7

0.02.04.06.08.0

10.012.014.016.018.020.0(%)

AECによるGDP押上効果の試算結果

(出所)Michael G. Plummer, Peter A. Petri and Fan Zhai (2014)”Asessing the Impact of ASEAN Economic Integration on LabourMarkets”, ILO Asia Pacific Working Paper Series, Sep.2014.より みずほ総合研究所作成

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2-3-1.AEC (5)AECが与える影響(②貿易への影響)

22

ASEAN加盟国全体の輸入額・輸出額はともに20%以上増加すると試算されている

インドネシアの輸出額は15.8%、輸入額は16.9%増加すると試算されており、他国と比較して貿易額に与える影響は小さい

0.05.0

10.015.020.025.030.035.040.045.050.0

輸出 輸入

(%)

AECによる貿易額押上効果の試算結果

(出所)Michael G. Plummer, Peter A. Petri and Fan Zhai (2014)”Asessing the Impact of ASEAN Economic Integration on LabourMarkets”, ILO Asia Pacific Working Paper Series, Sep.2014.より みずほ総合研究所作成

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800(USD)(USD)

(年)

ASEANからの

部品輸入額/インドネシア自

動車生産台数

(左軸)

タイからの部

品輸入額/イン

ドネシア自動

車生産台数

(左軸)

部品輸入額計

/インドネシア

自動車生産台

数(右軸)

2-3-1.AEC (5)AECが与える影響(②貿易への影響)

23

AFTA発効後、ASEAN域内からの自動車輸入は2012年までは増加傾向にあり、関税削減によってインドネシア国内市場におけるASEAN域内からの輸入車の浸透度は高まったと言える

一方で、自動車部品は2000年以降、ASEAN域内からインドネシアへの部品輸入額が増加しており、AFTA発効後は、自動車部品は輸入品に代替されていた。しかし、2010年以降の自動車生産の拡大がインドネシアにおける自動車産業の集積を促し、代替効果は弱まったと考えられる

AFTA発効後のインドネシアへの自動車、自動車部品の輸入状況

国内自動車販売1台あたりの自動車輸入額 国内自動車生産1台あたりの自動車部品輸入額

(注)自動車はHS8703・8704に該当するもの、自動車部品はHS8708に該当するもの。

• 部品輸入額の合計は2000年から2007年の間に減少• しかし、その間ASEAN域内からの部品輸入額は500USD以上増加• これは、主に日本からの部品輸入が減少し、ASEAN域内からの輸入に代替されたことによるもの。タイでも同様の傾向が見られたが、ASEANからの輸入額の増加幅はインドネシアより小さい(300USD)。背景には、タイではインドネシアより早く部品産業の集積が進んでいたことがある

• 2013年以降、自動車1台当たりの部品輸入額の合計は低下傾向にある

• 2010年以降にインドネシアにおける自動車生産台数が急速に伸び、それに対応して部品産業の集積が進んできたことが背景にある

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

(USD)

(年)

ASEANからの自動車輸入額/インドネシア国内販売台数

うちタイからの自動車輸入額/インドネシア国内販売台数

(出所)金子(2017a)「ASEAN、中国のFTAと自動車・自動車部品貿易①」・OICA(International Organization of Motor Vehicle Manufactures) Statistics・ World Bank “World Integrated Trade Solution”より みずほ総合研究所作成

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2-3-2.ACFTA (1)ACFTA参加国

24

ACFTAは中国とASEAN10か国で2010年に発効した自由貿易協定である。多くの企業が生産拠点を構える中国と東南アジアの間での物品のやり取りにも頻繁に活用されている

中国の人口はASEANの総人口の2倍以上、GDPはASEANの合計の3倍以上であり、ACFTAによってASEAN諸国は、広大な市場へアクセスすることが可能となった

中国はインドネシアにとって最大の輸入相手国であり、ACFTA発足後の中国からの輸入は拡大を続けている

人口(万人)

GDP(USD)

実質GDP成長率(%)

1人当たりGDP

財・サービスの輸出

(対GDP比)

財・サービスの輸入

(対GDP比)

対内海外直接投資

(対GDP比)

対外海外直接投資

(対GDP比)中国 137,866.5 95,051.6 6.7 6,894.5 22.0 18.5 2.2 1.6インドネシア 26,111.5 10,376.9 5.0 3,974.1 21.2 20.7 2.3 1.1タイ 6,886.4 4,063.9 3.2 5,901.4 69.1 57.5 2.3 1.3マレーシア 3,118.7 3,439.4 4.2 11,028.2 70.9 63.3 3.7 3.3シンガポール 560.7 2,949.5 2.0 52,600.6 177.9 152.0 23.8 10.6フィリピン 10,332.0 2,844.8 6.9 2,753.3 28.4 34.3 1.9 1.9ベトナム 9,270.1 1,641.0 6.2 1,770.3 89.8 89.0 6.1 0.6ミャンマー 5,288.5 751.2 6.5 1,420.5 20.8 26.5 6.5 0.0カンボジア 1,576.2 170.0 6.9 1,078.4 61.7 66.1 9.4 0.3ブルネイ 42.3 133.0 -2.5 31,431.0 52.2 32.7 1.3 3.9ラオス 675.8 111.0 7.0 1,642.7 31.0 43.8 7.5 0.0ASEAN 63,862.2 26,480.7 4.5 4,146.5 n/a n/a n/a n/a(参考)日本 12,699.5 60,459.1 1.0 47,607.7 17.6 18.0 0.1 3.1

(注)人口、GDP、実質GDP成長率、一人当たりGDPは2016年、財・サービスの輸出、財・サービスの輸入、対内海外直接投資、対外海外直接投資は2015年のデータ

ACFTA参加国の経済状況

(出所)World Bank “World Development Indicators”より みずほ総合研究所作成

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2-3-2.ACFTA (2)ACFTAの進展状況

25

ACFTAは枠組協定であり、合意できた部分から先行して関税撤廃が進んでいる。品目ごとの削減スケジュールは下表のとおり

なお、一方の国がNT に分類しているにもかかわらず、他方の国がSLまたはHSLに分類している品目については、互恵規定が定められている。当該品目をNTに分類している国も、同じ品目をSLまたはHSLに分類している他方の国が特恵関税を引き下げるまでは、特恵関税の引き下げを遅らせることができる

ACFTAの関税削減スケジュール

品目 品目の内容 削減スケジュール

EHP(アーリー・ハーベスト・プログラム)

早期に関税を引き下げる品目(主に農水産品やその加工品)

中国・ASEAN6:2006年までに撤廃CLMV:2010年までに撤廃

NL(ノーマル・トラック) 一般スケジュール通りに関税削減を実施する品目

NT1 規程通りに関税を削減する品目中国・ASEAN6:2010年までに撤廃CLMV:2015年までに撤廃

NT2 例外品目中国・ASEAN6:2012年までに撤廃CLMV:2018年までに撤廃予定

SL(センシティブ・トラック) 一般スケジュールよりも自由化を遅らせる品目

ST(センシティブ・リスト) SLのうち比較的早期に関税を削減する品目中国・ASEAN6:2012年までに20%以下に削減、

2018年に5%以下まで削減予定CLMV:2015年までに20%以下に削減

HSL(高度センシティブ・リスト) SLよりも関税の削減を遅らせる品目中国・ASEAN6:2015年までに50%以下に削減CLMV:2018年までに50%以下に削減予定

(出所)高橋(2013)「ACFTA(ASEAN中国FTA)の域内貿易への影響と運用実態」国際貿易と投資・Autumn 2013/No.93、pp.18-41よりみずほ総合研究所作成

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2-3-2.ACFTA (3)主な品目の関税撤廃状況

26

乗用車、貨物車、自動車部品のNT・SL・HSL分類は下表のとおりである。インドネシアは乗用車、貨物車はHSLへ分類しており、40%を超える高水準の関税がかけられている

一方、自動車部品はNTまたはSLに分類されており、2010年には平均10%以下へ引き下げられ、2018年には5%以下へと削減される予定である

ACFTAにおける自動車関連品目のNT・SL・HSLの分類、インドネシアにおける削減スケジュール

乗用車・貨物車

HSコード 品目 インドネシア 中国 タイ

870321 ガソリン乗用車(1000cc以下) HSL HSL HSL

870322 ガソリン乗用車(1000~1500cc) HSL HSL HSL

870323 ガソリン乗用車(1500~3000cc) HSL HSL HSL

870324 ガソリン乗用車(3000cc超) HSL HSL HSL

870331 ディーゼル乗用車(1500cc以下) HSL HSL HSL

870332 デ ィ ー ゼ ル 乗 用 車 ( 1500 ~2500cc) HSL HSL HSL

870333 ディーゼル乗用車(2500cc以上) HSL HSL NT

870421 ディーゼル貨物車(5トン以下) HSL HSL NT

870422 ディーゼル貨物車(5~20トン) HSL SL NT

870423 ディーゼル貨物車(20トン以上) HSL SL NT

870431 ガソリン貨物車(5トン以下) HSL SL NT

807432 ガソリン貨物車(5トン超) HSL SL NT

自動車部品

HSコード 品目 インドネシア 中国 タイ

870810 バンパー関連 SL NT NT

870821 シートベルト NT NT NT

870829 その他の車体関連 SL SL HSL

870830 ブレーキ関連 SL SL HSL

870840 ギヤボックス関連 SL SL HSL

870850 駆動軸・非駆動軸関連 NT SL HSL

870870 車輪関連 SL NT NT

870880 懸架装置関連 SL NT HSL

870891 ラジエーター関連 SL NT HSL

870892 消音装置・排気管関連 SL NT HSL

870893 クラッチ関連 SL NT HSL

870894 ハンドル関連 NT NT HSL

870895 安全エアバック関連 SL SL HSL

870899 その他 SL NT HSL

(出所)金子(2017b)「ASEAN、中国のFTAと自動車・自動車部品貿易②」より みずほ総合研究所作成

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2-3-2.ACFTA (4)課題

27

自動車部品はインドネシア・中国の両国ともにおいてNTまたはSLに分類されており、2017年時点で10%近くへと関税が引き下げられている。2018年にはさらに5%以下へと引き下げられる予定であり、関税削減が進んでいる

一方で、乗用自動車はほとんどの品目がHSLに分類されており、関税削減が進んでいない。また、貨物自動車もインドネシアではHSLに分類されており、過去10数年間関税が引き下げられていない期間が続いた

自動車関連品目の関税削減スケジュール

対中国特恵関税引き下げスケジュール(インドネシア) 対インドネシア特恵関税引き下げスケジュール(中国)

(注1)インドネシアの中国に対する特恵関税は2008年・2014年・2015年は報告されていないため、2008年は2007年の特恵関税を、2014年・2015年は2013年の特恵関税を用いて算出している。中国のインドネシアに対する特恵関税は2012年・2013年・2015年・2016年は報告されていないため、2012年・2013年は2011年の特恵関税を、2015年・2016年は2014年の特恵関税を用いて算出している

(注2)各関税率は、各HS6桁品目の最高税率をHS6桁品目数で割って算出した単純平均である

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

(%)

(年)

乗用自動車(HS8703)貨物自動車(HS8704)自動車部品(HS8708)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

(%)

(年)

乗用自動車(HS8703)

貨物自動車(HS8704)

自動車部品(HS8708)

(出所)金子(2017b)「ASEAN、中国のFTAと自動車・自動車部品貿易②」・World Bank “World Integrated Trade Solution”よりみずほ総合研究所作成

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2-3-2.ACFTA (5)ACFTAが与える影響(貿易への影響)

28

ASEAN6と中国のNT関税が0~5%となった2010年ごろから、中国の対ASEAN輸出は大幅に増加したが、ASEANからの輸出の拡大は限定的であった。ACFTA発効によるインドネシアの対外輸出の拡大幅は4.8%という試算あり

自動車・自動車部品のインドネシアの対中輸出は、ACFTA発効後も拡大は見られなかった。一方、自動車部品の貿易自由化は中国からの輸入部品の利用度を拡大させた。これは、ACFTAの枠組み協定が締結された2002年にはあまり

予想されていなかった高い伸び率で中国の自動車生産が増加し、それに伴って中国の自動車部品産業も成長し、対ASEAN輸出が拡大したためである

中国は、ガソリン車から電気自動車への転換政策を進めており、中国におけるガソリン車生産が縮小すると、中国のガソリン車部品メーカーはASEANに活路を求め、対ASEAN輸出を拡大すると考えられる。タイも電気自動車への転換を進めていることから、特にインドネシアへの輸出が拡大する可能性が高い

ASEAN諸国は自動車部品のように中国からの輸入品に代替されることを危惧して、乗用自動車の対中貿易自由化には慎重な姿勢をとっており、ACFTAにおいて乗用自動車の関税引き下げが進む可能性は当面高くないと考えられる

国内販売1台当たりの自動車輸入額 自動車国内生産1台当たりの自動車部品輸入額

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

(USD)

(年)

中国のインドネシアからの自動

車輸入額/中国国内販売台数

インドネシアの中国からの自動

車輸入額/インドネシア国内販売

台数

0

20

40

60

80

100

120

140

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

(USD)

(年)

中国のインドネシアからの部品輸入額/中国自動車生産台数

インドネシアの中国からの部品輸入額/インドネシア国内生産台数

(注)自動車はHS8703・8704に該当するもの、自動車部品はHS8708に該当するもの。

(出所)Indriyani (2016) “The Effect of ASEAN-China Free Trade Area (ACFTA) on Indonesia Export” Etikonomi, Vol 15(2): pp.125-128・金子(2017b)「ASEAN、中国のFTAと自動車・自動車部品貿易②」・有識者ヒアリング・OICA(International Organization of Motor Vehicle

Manufactures) Statistics・ World Bank “World Integrated Trade Solution”より みずほ総合研究所作成

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2-4. 未発効のメガEPAの概要とその想定される影響

29

本節では、本調査で分析対象とするメガEPAのうち、未発効のRCEPとTPPについてその概要と影響を整理する

RCEPは交渉中であり、TPPはインドネシアが不参加であることから、これらメガEPAについては、インドネシアに及ぼすと想定される影響を整理する

RCEP、TPPの概要

RCEP TPP発効年 未発効 未発効

参加国 インドネシア・タイ・マレーシア・シンガポール・フィリピン・ブルネイ・ベトナム・ミャンマー・カンボジア・ラオス・日本・韓国・中国・インド・オーストラリア・ニュージーランド

シンガポール・マレーシア・ベトナム・ブルネイ・日本・オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・メキシコ・ペルー・チリ※米国は当初参加していたが、2017年に離脱

経済規模 約22兆USD 約12兆USD

(注)TPPの経済規模はアメリカを含んでいない

(出所))World Bank “World Development Indicators”より みずほ総合研究所作成

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30

RCEP参加国の経済状況

2-4-1.RCEP (1)RCEP参加国

RCEPとは、ASEAN10か国及び日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランド・インドの6か国が交渉に参加する広域経済連携である。RCEPが実現すれば、人口約34億人(世界全体の約5割)、GDP約22兆ドル(同約3割)、貿易総額約10兆ドル(同約3割)にのぼる大規模な広域経済圏が出現する

RCEP参加国への輸出額はインドネシアの総輸出額の約5割、総輸入額の約7割を占める

人口(万人)

GDP(USD)

実質GDP成長率(%)

1人当たりGDP

財・サービスの輸出

(対GDP比)

財・サービスの輸入

(対GDP比)

対内海外直接投資

(対GDP比)

対外海外直接投資

(対GDP比)インドネシア 26,111.5 10,376.9 5.0 3,974.1 21.2 20.7 2.3 1.1タイ 6,886.4 4,063.9 3.2 5,901.4 69.1 57.5 2.3 1.3マレーシア 3,118.7 3,439.4 4.2 11,028.2 70.9 63.3 3.7 3.3シンガポール 560.7 2,949.5 2.0 52,600.6 177.9 152.0 23.8 10.6フィリピン 10,332.0 2,844.8 6.9 2,753.3 28.4 34.3 1.9 1.9ベトナム 9,270.1 1,641.0 6.2 1,770.3 89.8 89.0 6.1 0.6ミャンマー 5,288.5 751.2 6.5 1,420.5 20.8 26.5 6.5 0.0カンボジア 1,576.2 170.0 6.9 1,078.4 61.7 66.1 9.4 0.3ブルネイ 42.3 133.0 -2.5 31,431.0 52.2 32.7 1.3 3.9ラオス 675.8 111.0 7.0 1,642.7 31.0 43.8 7.5 0.0中国 137,866.5 95,051.6 6.7 6,894.5 22.0 18.5 2.2 1.6日本 12,699.5 60,459.1 1.0 47,607.7 17.6 18.0 0.1 3.1インド 132,417.1 24,649.3 7.1 1,861.5 19.9 22.3 2.1 0.4オーストラリア 2,412.7 13,431.8 2.8 55,670.9 19.7 21.1 2.7 0.1ニュージーランド 469.3 1,728.9 3.9 36,842.0 27.9 27.2 -0.1 0.0韓国 5,124.6 13,046.6 2.8 25,458.9 45.3 38.4 0.3 1.7

(注)人口、GDP、実質GDP成長率、一人当たりGDPは2016年、財・サービスの輸出、財・サービスの輸入、対内海外直接投資、対外海外直接投資は2015年のデータ

(出所)World Bank “World Development Indicators”・インドネシア貿易省(2016)”RCEP: Strengthening Indonesia7s Position in the Regional Supply Chain”より みずほ総合研究所作成

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RCEP参加国の意見の相違

2-4-1.RCEP (2)RCEPの進展状況

RCEPでは、AECと同様に、先に全体の関税自由化率を定める方式が採用されている。全体の自由化率を定めた後は、ACFTAのように段階的に関税を削減していくのか、2国間で品目について交渉するのかは不明である。交渉は停滞しており、品目別の関税撤廃に関する交渉はまだ始まってさえいない

RCEP交渉の停滞要因となっているのは主にインドである。RCEPは関税自由化率を92%にするという目標を打ち出しているが、インドはそれに反対している。一方インドネシアは、自由化率(HSコード6桁に基づく)が既に90%に到達しているため、この数値目標にあまり反対していない

RCEPの交渉が停滞している原因の1つとして、先進諸国とインドやインドネシアの間に、下表のような意見の相違があることも挙げられる

2017年9月のRCEP閣僚会合では、年内に「Key Elementについて」合意するという目標となったが、自由化率の交渉が妥結しない現状では、それさえも難しいと考えられる。有識者ヒアリングによると、RCEPの交渉妥結は早くても2018年末、現実的には2019年以降になると考えられる

先進諸国(日本等)• 従来の2国間FTA、ASEAN+1FTAよりも自由化率を高めたい• RCEP総論にも「既存のASEAN+1FTAからの大幅な改善」を行うことが盛り込まれて

いる

新興国(インド・インドネシア等)

• 二国間FTAやASEAN+1FTAは相手国を限定しているからこそ、高い関税自由化を認めることができた

• 多国間FTAの場合は関税の自由化率は2国間より低いものでなければならない

※既存のASEAN+1FTA等よりも低い自由化率で妥結することは、上記のRCEP総論部分と矛盾する

(出所)有識者ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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2-4-1.RCEP (3)RCEPの進展における課題、(4)RCEPの影響

(3)RCEPの進展における課題

前述したとおり、既存のFTAより高い自由化率を設定したい先進諸国と、それに反対するインドやインドネシア等の新興国の間に意見の相違があり、交渉が停滞している

さらに、具体的な交渉の焦点が物品分野に集中しすぎている。インドは、サービス貿易や投資に強みを持っているため、それらも並行して議論を行っていきたいと主張している。一方で、ASEAN諸国は、サービス貿易や投資に関する議論には消極的である。これは、国家産業政策への影響やサービス業を担う国営企業への影響を懸念するためである

(4)RCEPの影響

RCEP参加国内の関税と非関税障壁がすべて削減された場合の試算として、以下のものがある

インドネシアのGDPを16.7%、輸出を62.3%、輸入を65.2%拡大させる

さらに一般的な懸念として、先進諸国製品の流入によって国内中小企業への打撃が想定される(自動車部品を含む)

RCEPによるGDP押上効果の試算結果 RCEPによる輸出入額押上効果の試算結果

(出所)Michael G. Plummer, Peter A. Petri and Fan Zhai (2014)”Asessing the Impact of ASEAN Economic Integration on LabourMarkets”・ ILO Asia Pacific Working Paper Series, Sep.2014・有識者ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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TPP参加国の経済状況

2-4-2. TPP (1)TPP参加国

TPPの現在の参加国はオーストラリア・ブルネイ・カナダ・チリ・日本・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・ペルー・シンガポール・ベトナムの11ヵ国である。環太平洋の12ヵ国(現在の参加国+アメリカ)は、2015年に環太平洋パートナーシップ協定について大筋合意し、翌2016 年に署名式を行った。しかし、トランプ大統領就任後のアメリカ政府は2017年にTPPからの離脱を正式に表明した

ASEAN主要国からはシンガポール・マレーシア・ベトナムが参加している。インドネシア・タイは参加していない

アメリカが離脱する以前は、TPP交渉参加12か国の経済規模(GDP)は、世界経済の約4割を占め、市場規模(人口)は世界全体の1割を占めていた。しかし、アメリカの脱退によって、TPP内の人口は従来の約6割に、GDPは従来の約4割になった

人口(万人)

GDP(USD)

実質GDP成長率(%)

1人当たりGDP

財・サービスの輸出

(対GDP比)

財・サービスの輸入

(対GDP比)

対内海外直接投資

(対GDP比)

対外海外直接投資

(対GDP比)日本 12699.5 60459.1 1.0 47607.7 17.6 18.0 0.1 3.1カナダ 3,629 18,227 1.5 50,231.9 31.6 34.0 3.5 5.2オーストラリア 2412.7 13431.8 2.8 55670.9 19.7 21.1 2.7 0.1メキシコ 12,754 12,381 2.3 9,707.1 35.1 37.1 3.1 1.1マレーシア 3,118.7 3,439.4 4.2 11,028.2 70.9 63.3 3.7 3.3シンガポール 560.7 2,949.5 2.0 52,600.6 177.9 152.0 23.8 10.6チリ 1,791 2,690 1.6 15,019.6 29.7 29.8 8.4 6.9ペルー 3,177 1,935 3.9 6,089.4 21.3 23.7 4.4 0.1ニュージーランド 469.3 1728.9 3.9 36842.0 27.9 27.2 -0.1 0.0ベトナム 9270.1 1641.0 6.2 1770.3 89.8 89.0 6.1 0.6ブルネイ 42.3 133.0 -2.5 31431.0 52.2 32.7 1.3 3.9(参考)アメリカ 32,313 168,656 1.6 52,194.9 12.5 15.4 2.8 1.7(参考)インドネシア 2412.7 13431.8 2.8 55670.9 19.7 21.1 2.7 0.1(注)人口、GDP、実質GDP成長率、一人当たりGDPは2016年、財・サービスの輸出、財・サービスの輸入、対内海外直接投資、対外海外直接投資は2015年のデータ

(出所))World Bank “World Development Indicators”より みずほ総合研究所作成

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ベトナムの自動車関税に関する合意内容

2-4-2. TPP (2)TPPの進展状況

米国を除く11か国でTPP11が大筋合意され、2017年11月11日に概要が発表された。関税撤廃率100%を目指しており、ほとんどの国で工業製品最終関税撤廃率が100%となっている

自動車に関しても、オーストラリアとメキシコの中古車への関税を除き、全て撤廃される予定である。ベトナムがTPPで初めて日本に対して自動車関税の撤廃を行うことを認めたことが注目されており、大型車(3000cc以上の車両)はTPP発効後10年目で、中小型車(3000cc未満の車両)はTPP発効後13年目で関税が撤廃される予定となっている

高い自由化率を実現する一方で、関税削減のスパンは長期化する傾向にある。関税撤廃率も従来は「10年後までに撤廃される関税率」を示していたが、近年は「最終撤廃率」として約30年後までに撤廃される関税率を示すことが多い。日本のTPPに関する文書でも最終撤廃率が用いられているため、留意が必要である

米国の離脱によって凍結された項目はあるが、貿易自由化に関する項目は凍結されておらず、高水準の貿易自由化は維持されている

有識者によると、米国のTPP復帰は、現政権の間は見込みがない。しかし、次期政権においては、新大統領であってもトランプ第2政権であっても、米国復帰の可能性は十分にある

品目 譲許内容 基準税率

乗用車 3000cc超乗用車 10年目撤廃 77%・80%

3000cc以下乗用車 13年目撤廃 77%~83%

救急車 12年目撤廃 10%

バス 空港バス 12年目撤廃 5%

その他バス 13年目撤廃 83%

トラック 12・13年目撤廃 10%~80%

(注)基準税率とは、関税引き下げが開始される基準となる税率

(出所)菅原(2017)「大筋合意に至ったTPP11 包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定」・経済産業省(2015)「相手国及び我が国の工業製品関税(経済産業省関連分)に関する大筋合意結果の概要」・有識者ヒアリングよりみずほ総合研究所作成

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完全累積制度

2-4-2.TPP (3)TPP進展における課題、(4)TPPの影響

(3) TPP進展における課題

米国の離脱によって、経済規模が大幅に縮小した。これによって、インドネシアを含め、以前TPPへの参加に関心を示していた国のTPPへの参加可能性が低下している

(4)TPPの影響

域外国は域内国への市場アクセスが相対的に悪化し、貿易転換効果が発生する。予想されるインドネシアの貿易額減少率は4%との試算あり。なお、TPP11により、GDPや輸出額の押し上げ効果を最も受けるASEANの国はベトナムとみられている。ベトナムで関税削減や規制改革が進むことで、インドネシアの貿易量が減少すると考えられる

完全累積制度の導入により、TPP参加国内におけるサプライチェーンの活性化や、新たなサプライチェーン構築が行われ、インドネシア企業が参入できなくなると考えられる

• TPP参加国で生産された部品は付加価値基準を満たしていなくても全て付加価値に加算できる制度• 例えばTPP非参加国のインドネシアから部品を調達し、参加国のマレーシアで米国にTPPを利用して輸出する場合、マレーシアの付加価値が小さく原産地規則を満たさない可能性がある

• 一方、TPP参加国のベトナムから調達すれば、ベトナムの付加価値が基準以下であってもマレーシアでの付加価値に加算され、原産地規則を満たす可能性が高くなる

ベトナム

(参加国)

インドネシア

(非参加国)

マレーシア

付加価値加算

付加価値非加算

米国

原産地規則満たさない

原産地規則満たす

部品調達 完成品輸出

(出所)Petri and Plummer (2016) “The Economic Effects of the Trans-pacific Partnership; New Estimates”、早川・椎野(2015)「環太平洋パートナーシップ協定の影響」IDE-JETRO、石川(2016)「TPPのASEANへの影響 ITIメガFTA研究会報告(4)」ITI調査研究シリーズ

No.32より みずほ総合研究所作成

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2-5. 各メガEPAがインドネシアに与える影響(まとめ)

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ASEAN域内では、AFTA等により従来から自由化が進んでいるため、今後その他のメガFTAが発達してきても、ASEANの産業構造に抜本的な影響を与えることはないが、AFTA等で進展したASEAN域内の生産拠点最適化・産業集積は、AECによって強化されると考えられる。インドネシアが参加しているACFTA・RCEPもこの傾向に大きな影響は与えないと考えられ、現在不参加であるTPPに参加した場合も同様である

ASEAN域内の生産拠点最適化が進むことで、既に集積のある地域における産業集積が加速する。インドネシアにはタイに次ぐ自動車産業の集積が存在し、メガEPAによってさらに自動車生産の集積が進むだろう。自動車は輸送コスト

が高く、輸入代替の懸念も低い。一方で、インドネシアにおける集積が十分にない一部の自動車部品や電気機器は外国企業との競争に勝てず、製品が輸入品に代替される懸念がある

各メガEPAがインドネシアに与える影響

プラスの影響 マイナスの影響

AEC

インドネシアのGDPが4.3%、輸出額が15.8%、輸入額が16.9%増加するとの試算あり

既に集積がある自動車産業の集積が進展する見込み 対ベトナムの完成車輸出が増加する見込み

インドネシアにおける集積が十分にない一部の自動車部品や電気機器は、外国企業との競争に勝てず、製品が輸入品に代替される懸念あり

ACFTA 対中国・ASEAN輸出を4.8%増加させたとの試算あり 完成車、自動車部品の中国への輸出は伸びていない。

中国から輸入された自動車部品の利用度が拡大。今後もガソリン車部品を中心に中国から流入する可能性が高い

RCEP

RCEP参加国内の関税と非関税障壁がすべて削減された場合、インドネシアのGDPを16.7%、輸出を62.3%、輸入を65.2%拡大させるという試算あり

域内先進諸国の製品が流入し、国内中小企業が競争に勝てない懸念がある(自動車部品を含む)

TPP ■インドネシア非参加の場合 自動車部品の製品が輸入品に代替されるリスクが低下する

■インドネシア非参加の場合 参加国への輸出減(貿易額減少率は4%との試算あり)

新たなサプライチェーンにインドネシア企業が組み込まれなくなる

(出所)みずほ総合研究所作成

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2-6-1. 完成車・部品メーカーの生産・調達戦略

37

2-6 メガEPAの企業戦略への影響

前節ではメガEPAがマクロ経済に与える影響を中心に整理した。本節では、まず完成車メーカー、部品メーカーの企業戦略について確認した上で、メガEPAを踏まえた企業行動がインドネシアの自動車産業に与える影響を整理する

2-6-1 完成車・部品メーカーの生産・調達戦略

完成車の生産拠点の最大の決定要因は市場の大きさである

部品メーカーの生産戦略は完成車メーカーの意向の影響を強く受ける。完成車メーカーの部品調達においては品質・コスト・納期・物流が重視され、輸入か現地調達を判断する要因となる

完成車メーカー、部品メーカーの企業戦略

完成車メーカー 部品メーカー

生産拠点の立地の最も大きな決定要因は市場の大きさである。近年は生産拠点の集約や車種別の生産分業が行われるようになり、市場に加えて人材、コスト、事業環境、物流といった要因も合わせて拠点の立地が検討される傾向にある

部品調達では、QCD(Quality, Cost, Delivery:品質、コスト、納期・物流)が重視される。QCDの基準がクリアされれば輸入から

現地調達に切り替える傾向にある。また、規模の経済性が働く部品は部品メーカーが日本で大量生産し、各国に輸出しているものを調達することが多い

部品メーカーの生産拠点は完成車メーカーの生産拠点の近隣に立地することがほとんどである。従って、自動車の生産台数が伸びているところに集積する傾向がある

生産戦略では経済合理性が重視されており、日本での生産から現地生産に切り替わらない要因は主に次の3点①加工度が高い②素材調達が日本でしかできない③日本で集中生産しており、現地生産が非効率的となる

部品メーカーが使用する素材やその調達先を変更するためには安全性のテスト等を経た完成車メーカーの承認が必要であり、容易に変更することができないという制約がある

(出所)有識者ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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2-6-2. メガEPAが企業行動と自動車産業に与える影響

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完成車の生産拠点を決定する最も重要な要因は市場の大きさであるため、ASEAN随一の市場が見込まれるインドネシアは、引き続きASEANにおける主要な完成車の生産拠点であり続けると考えられる

現在、インドネシアの完成車生産は国内市場向けが主であるが、輸出向けの完成車を生産し、輸出を拡大することができれば、規模の経済性によりインドネシアの完成車生産の競争力は高まり、インドネシアへの自動車産業の集積がさらに進展するものと考えられる。輸出先として有望なのはマレーシア、フィリピン、ベトナム等のASEAN近隣国である。これらの国ではモータリゼーションが進むと共に、AECによる関税削減もされているため、インドネシアからの輸出を拡大させられる可能性は十分にある

加えて、完成車の生産が拡大すると、それに伴い自動車部品の需要が拡大する。このため、規模の経済性を働かせるだけの需要が見込める自動車部品を、メーカーがインドネシア国内で生産をするようになり、インドネシアの現地調達率が高まっていく可能性がある

一方、メガEPAによる関税削減や非関税障壁の撤廃は輸入コストの低下をもたらし、自動車部品はインドネシアにおけ

る現地調達から輸入品への代替が進む可能性もある。しかし、部品の調達先変更には安全性のテスト等を経た完成車メーカーの承認が必要であり、容易に変更することができないため、部品の輸入代替には時間的猶予があり、すぐにメガEPAによる負の影響が生じるわけではない

ASEANにおける自動車生産はタイ、インドネシアの2極化が進む

インドネシアでは既に生産が行われている車種を中心に、主にマレーシア、フィリピン、ベトナムへの輸出が拡大

自動車生産の拡大に伴い、自動車部品の需要拡大既に生産が行われており、規模の経済性が働く部品を中心に集積が進みうる

(出所)外務省ホームページ・有識者ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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2-7. まとめ

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メガEPAは域内国、特にASEAN諸国間の分業を促し、既に集積がある国への産業集積を加速させる。産業集積が十分にない国における生産は縮小し、産業集積がある国からの輸入品に代替される

インドネシアの自動車産業はASEAN域内ではタイに次ぐ集積がある。ASEANの自動車産業は今後タイ・インドネシア

における二極化が進むと見られている。更なる集積を図るためには、完成車メーカーが国内市場向けだけではなく輸出を想定した自動車生産を行い、インドネシア国内における生産を拡大させることが重要である。自動車生産が拡大することで部品メーカー(裾野産業)の集積も促され、現地調達率が向上すると考えられる

特に、現地生産によって規模の経済性が働く製品の集積が見込まれることから、完成車メーカーや部品メーカーがそれらを集中的に生産し、輸出拡大を図ることが有益だと考えられる

したがって、インドネシアの自動車産業の競争力を高めるためには、インドネシア政府がメガEPAへの積極的な参加等によって輸出振興を行うことが重要となる

一方で、インドネシアの裾野産業はタイと比較して十分に競争力があるとは言えず、メガEPAの影響によって輸入品に代替される懸念がある。部品の輸入品代替には時間がかかると考えられるため、今後のメガEPAの進展・加盟に備えて裾野産業を強化することが重要となる

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3.裾野産業の現状と、育成の課題

40

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インドネシア自動車産業を取り巻く現状(各項目サマリー1/2)

市場 世界有数の自動車市場 特に地方は今後普及段階を迎えるなど

将来的にも有望市場であり続ける

Key Note

足元の販売台数はアセアン国別で最多、ただしGDP/販売台数はアセアンの平均値を下回り、経済水準対比拡大余地あり

全人口の約4%に過ぎないジャカルタにおける販売台数シェアは20%超。ジャカルタ以外での市場拡大余地は大きい

説明

41

輸出 アセアンではタイに次ぐ規模も、その差

は約100万台と大きい 国内市場でシェアの高い車種が輸出で

も存在感発揮

タイはアセアン有数の自動車輸出国の地位を確立し、全世界に向けて120万台を輸出。特にピックアップトラック等商用車強み

インドネシアは近年20万台前後。国内シェアの高いMPVのアセアン向け輸出が牽引。一方、近隣の豪州向けはタイからの輸出シェアが高い

生産・調達 国内市場拡大を見据えた生産規模拡張

の動き 部品調達コストの低減が課題

完成車メーカーは「市場の可能性」を重視した生産体制を構築。近年インドネシアにおける完成車メーカーは生産設備拡張の動き

タイと比較して現地調達率が低い等、部材調達コスト低減が課題

規制・産業政策 外資企業に対する規制が存在 アセアン各国は外資優遇政策を積極的

に打ち出し

外資出資規制、最低資本金規制、外国人就労ビザ等、特に裾野を担う中堅中小企業の進出に影響を及ぼす規制あり

アセアン他国では輸出振興、R&D投資奨励など外資優遇策が充実

インフラ 輸出促進(港湾等)、国内市場の持続的

発展(渋滞緩和)の観点からインフラ整備の重要性は高まっている

現在パティンバン港等輸出インフラ整備は進捗中も、道路網等整備が求められる。また、輸入通関手続等ソフトインフラの改善も課題

都市部渋滞が深刻化。市場拡大を支えるインフラ整備が急務

金融 地場通貨為替の安定化とヘッジ手法の多様化

近年ルピア相場は比較的安定的であり、安定した相場の維持とヘッジ手法の充実は企業業績の安定にも有効

情報整備 関連統計、地場企業情報等の事業検討上必要な情報開示・整備が必要

投資検討、事業FS策定の際の経済マクロ情報、統計資料の充実、英語化が必要。地場企業情報もアライアンス推進において有効

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシア自動車産業を取り巻く現状(各項目サマリー2/2)

人材

労働力は豊富である一方、スキルワーカーの確保が困難

人材教育制度はあるものの、企業が求める水準との乖離あり

現地人材への技術移転停滞

Key Note

豊富な人口を背景に労働力は豊富であるものの、スキルワーカー(高技術保持者、マネジメントクラス)の賃金が高く、製造業離れを起こしているために確保が困難

ポリテクなどの教育機関はあるが、実技面での教育制度充実を希望する企業が多数

技術をもった人材を日本から送り込むことができず、現地人材への技術移転が進んでいない

説明

42

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシア自動車産業を取り巻く現状(総括)

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輸出競争力

裾野産業

経済規模に

応じた国内市場

人材育成

サプライチェーンを俯瞰し、自動車産業の更なる発展を展望する上で「鍵」となる各現状について分析 調査・企業ヒアリングを通じて、①輸出競争力 ②経済規模に応じた国内市場 ③裾野産業発展 ④人材育成の4点が

現状を踏まえたインドネシア自動車産業の発展の為のチャレンジとして位置づけ 企業のグローバル生産戦略の進展、各国の産業誘致・振興政策を鑑み、インドネシアにおいても強み・特徴を活かした

取組みが求められる

裾野産業

部品製造

完成車メーカー

素材・部品輸出

素材製造

完成車生産

販売

輸出

国内販売

海外

国内

輸出

市場

規制・産業政策

インフラ / 金融 / 情報整備

生産・調達

人材

現状を踏まえた

4つのチャレンジ

考察すべき現状

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-1.市場に関する現状・課題・強み

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3-1.市場に関する現状

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現在、インドネシアは世界で4位、ASEANで最大の人口。一方、タイの人口はASEANで4位 インドネシアの人口ボーナスは引き続き継続。タイの人口ボーナスは2000年代に終了し、今後の人口増加が僅少と

推測 人口は市場規模に反映され、現状・将来ともにインドネシアの自動車国内市場はタイを上回る

インドネシア・タイの人口推移・予測(2000~2022年)

人口推移・予測

0

50

100

150

200

250

300(単位:百万人)

インドネシア タイ

年 インドネシア (前年比) タイ (前年比)

2010 237,641 +3,341 67,341 +3882011 241,991 +4,350 67,638 +2972012 245,425 +3,434 67,956 +3182013 248,818 +3,393 68,297 +3412014 252,165 +3,347 68,657 +3602015 255,462 +3,297 68,838 +1812016 258,705 +3,243 68,981 +143

(E)2017 261,989 +3,284 69,095 +114(E)2018 265,316 +3,327 69,182 +87(E)2019 268,684 +3,368 69,251 +69(E)2020 272,095 +3,411 69,305 +54(E)2021 275,550 +3,455 69,345 +40(E)2022 279,048 +3,498 69,369 +24

(単位:千人)

(出所)IMF World Economic Outlook Database October 2017より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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46

2011年以降インドネシアの自動車販売台数がタイを上回る傾向(ただし、2012・13年は、タイで1st Car減税政策を実施した結果、一時的な増加)。今後の国内新車販売数もタイより多いと見込まれる

保有台数の増加余地が大きいことに加え、インドネシアの経済成長に伴い、今後の自動車販売台数増加の可能性あり

新車販売台数(全体量)

インドネシア・タイの新車販売台数(比較)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

インドネシア タイ

タイ:1st Car減税政策を実施

2008~2009年リーマン・ショック

年 インドネシア タイ

2000 309 2622001 299 2972002 318 4092003 354 5332004 483 6262005 534 7032006 319 6822007 433 6312008 604 6152009 484 5492010 765 8002011 894 7942012 1,116 1,436

年 インドネシア タイ

2013 1,230 1,3312014 1,208 8822015 1,013 8002016 1,062 7692017 1,080 8722018 1,160 8502019 1,230 8902020 1,330 930

3-1.市場に関する現状

(単位:千台)(単位:千台)

(出所)GAIKINDO・TMT・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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47

自動車販売数で理論値より低く、保有台数も理論値より低い場合、販売余地が大きいと言える

フィリピン、ベトナム:保有台数は理論値を下回るものの、経済成長に伴い販売台数が加速。保有台数の理論値との差が徐々に減少していくと推測される

インドネシアは、現在の保有台数・販売台数共に余地があり、国内自動車販売余地があるものと推測される

新車販売台数(一人あたりGDPとの比較)

ASEAN一人当たりGDP / 自動車販売台数(2016年)

タイ

インドネシア

マレーシア

フィリピンベトナム

ラオス

カンボジアミャンマー

ASEAN

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000一人当たりGDP(USD)

国 販売台数 理論値 台数差

タイ 769 736 -33

インドネシア 1,062 1,454 +392

マレーシア 580 579 -1

フィリピン 404 430 +26

ベトナム 304 229 - 75

ラオス 29 19 -10

カンボジア 3 8 +5

ミャンマー 4 21 +17

ASEAN 3,155 3,476 + 321

3-1.市場に関する現状

(単位:千台)(自動車保有台数 / 千人)

(出所)IMF World Economic Outlook Database October 2017・各国統計局等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアでは、全人口の約4%にしか過ぎないジャカルタが20%超の自動車販売台数を占めており、ジャワ島全体では70%超の自動車販売台数となる

約40%の人口を占めるジャワ島以外の地域、およびジャカルタ以外のジャワ島にも販売余地があるものと推測される

新車販売台数(地域別)

2016年インドネシアの新車販売台数(地域別)2016年インドネシアの人口(地域別)

スマトラ

56,119 千人(21.69%)

ジャワ(ジャカルタ除く)

136,398 千人(52.72%)

ジャカルタ

10,278 千人(3.97%)

小スンダ列島

14,300 千人(5.53%)カリマンタン

15,635 千人(6.04%)

スラウェシ

18,973 千人(7.33%)

マルク諸島, 2,901 千人(1.12%)

パプア

4,101 千人(1.59%)

スマトラ

151,068 台(15.09%)

ジャワ

(ジャカルタ

除く)

503,486 台(50.28%)

ジャカルタ

203,395 台(20.31%)

小スンダ列島

34,821 台(3.48%)

カリマンタン

49,356 台 (4.93%)スラウェシ

50,499 台 (5.04%)

マルク諸島 2,557 台(0.26%)

パプア

6,131 台(0.61%)

3-1.市場に関する現状

(出所) GAIKINDOより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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49

ASEAN諸国との比較では、ジャワ島(ジャカルタ除く)がフィリピン以上の規模を持つ ジャワ島以外の販売台数は、ベトナムに近い販売台数水準であり、ジャカルタは1国程度の規模 インドネシア全体ではASEAN3ヵ国分の販売台数に達成している状況

地方の自動車販売台数が大きく貢献

地方の重要性①

ジャワ島・ジャワ島以外とASEAN諸国の比較

国(地域) 新車販売台数タイ 769マレーシア 580ジャワ島(ジャカルタ除く) 503フィリピン 404ベトナム 304ジャワ島以外 294ジャカルタ 203ラオス 29ミャンマー 4カンボジア 3

インドネシア= ASEAN3ヵ国分の規模

2016年インドネシアの新車販売台数(地域別)

スマトラ

151,068 台(15.09%)

ジャワ

(ジャカルタ

除く)

503,486 台(50.28%)

ジャカルタ

203,395 台(20.31%)

小スンダ列島

34,821 台(3.48%)

カリマンタン

49,356 台 (4.93%)

スラウェシ

50,499 台 (5.04%)

マルク諸島 2,557 台(0.26%)

パプア

6,131 台(0.61%)

3-1.市場に関する現状

(単位:千台)

(出所)GAIKINDO・各国統計局等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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50

現在、全国平均の保有率を下回る地域が多く、ジャワ島内の保有台数率差も大きい 将来、GDPの成長に伴い、自動車の購入層が増加すると考えられ、現在保有率が低い地域において今後の増加余地

が大きいと推測される

地方の重要性②

2011-2016年平均GDP成長率(地域別)

年インドネシア

GDP成長率(%)ジャワ島以外

平均成長率(%)

2012 6.03 7.362013 5.56 7.322014 5.01 6.252015 4.88 7.252016 5.02 6.79平均 5.30 6.99

地域 自動車保有率

ジャワ島全体島均率 7.9%ジャカルタ 48.7%西ジャワ州 4.6%中部ジャワ州 5.0%ジョグジャカルタ特別州 13.8%東ジャワ州 5.0%バンテン州 2.3%

スマトラ 8.8%小スンダ列島 10.8%カリマンタン 13.9%スラウェシ 10.0%マルク諸島 2.9%パプア 5.2%インドネシア全国平均 8.8%

2015年ジャワ島内・他の地域の自動車保有率

3-1.市場に関する現状

(出所)GAIKINDO・インドネシア統計局・World Bankより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

2024

2025

2026

2027

2028

2029

2030

2031

2032

2033

2034

2035

一人当たりGDP(USD) GDP(億USD) 自動車販売台数

51

インドネシアの経済成長(GDP成長率)が現状と同じペースで進めば、2035年には年間国内販売台数が約245万台との試算になる

その過程で、ジャカルタ以外の地域(ジャカルタ除くジャワ島+その他)は、現在の79.69%から83.29%にシェアを拡大 ただし、現状のGDP成長率以上に国内販売を伸ばさなければ、工業省発表の2035年国内販売目標400万台到達は

困難

地方の重要性③

2035年までの自動車販売台数(試算)

3-1.市場に関する現状

(自動車販売台数)

ジャカルタ20.31%

ジャワ(ジャカルタ除く)50.28%

その他29.40%

2016年

(一人当たりGDP/USD,GDP/億USD)

3,147,125台

(出所)インドネシア統計局・OECD・GAIKINDOより みずほ銀行国際戦略情報部作成

ジャカルタ16.71%

ジャワ(ジャカルタ除く)62.46%

その他20.83%

2035年

【上記試算方法】 2011-2016年の州別平均GDP成長率をもとに2017-2035年までの州別GDPと一人当たり州別GDPを算出。また、2011-2016年の平均一人当たりGDP成長率、平均州別自動車販売増減台数※から、一人当たりGDP成長率1%あたりの州別自動車販売増減台数を算出し、2035年まで適用することで2035年の州別販売台数を計算

※平均州別自動車販売増減台数について、2015年に急激に落ち込んでいることから2015年を除外して計算

OECDデータ使用

(GDP:購買力平価GDP)IMFデータ使用

(GDP:名目GDP)

【上記左図試算方法】 一人当たりGDP成長率を自動車販売台数の増加率として計算

(GDPについて2018~2022年はIMFデータ(名目GDP)、以降OECDデータ(購買力平価GDP)を使用、人口はインドネシア統計局によるデータを使用)

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52

インドネシアにおける新車販売台数において、SUV/MPV車種は半分以上の割合。タイはピックアップトラックに代表される小型商用車が最大の割合を占めており、セグメント別のシェアが両国で大きく異なる

市場に流通している車種・セグメントが国の特徴として挙げられる。現在、インドネシアではMPVの台数がタイを圧倒的に上回り(40倍近く)、販売台数が多い車種を中心に現地製造を行う可能性が高い

新車販売台数(セグメント別)

2016年インドネシアの新車販売台数(セグメント別) 2016年タイの新車販売台数(セグメント別)

乗用車

(SUV・MPV除く)

213,394台(20.10%)

SUV194,569台(18.33%)

MPV431,294台(40.62%)

小型商用車

152,045台(14.32%)

中大型商用車

70,433台(6.63%)

乗用車

(SUV・MPV除く)

272,689台(35.47%)

SUV110,140台(14.33%)

MPV11,311台(1.47%)

小型商用車

346,346台(45.05%)

中大型商用車

28,302台(3.68%)

3-1.市場に関する現状

(出所)GAIKINDO・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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53

インドネシア、タイ両国ともに日系自動車メーカーのプレゼンスが高い。特にインドネシアの場合、98%以上の新車販売台数を日系自動車メーカーが占める

日系自動車メーカーが主要なプレイヤーであることから、日系自動車メーカーの意向を各種政策に反映させることが効果的

新車販売台数(ブランド別)

2016年インドネシアの新車販売台数 2016年タイの新車販売台数

日系

675,850 台(88.07%)

欧米系

77,406 台 (10.09%)

中韓系

14,147 台(1.84%)

日系

1,046,539 台( 98.76%)

欧米系 , 10,647 台(1.00%)

中韓系 , 2,466 台(0.23%)

3-1.市場に関する現状

(出所)GAIKINDO・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-1.市場に関する課題・強み

54

ポイント 説明

インドネシアの自動車市場はASEAN最大規模

ASEANにおいて保有台数・販売台数の規模が最大 ただし、国としての経済水準に見合う自動車販売・保有率を達成せず 自動車販売はジャワ島(特にジャカルタ)に集中

ジャワ島以外の地域もポテンシャルあり。今後、ジャワ島以外の地域で、ベトナム以上の自動車販売台数が期待できる規模あり

インドネシアで最も販売されている車種はMPV

タイよりSUV・MPVの販売が多い。特にMPVは、インドネシア市場の半分以上を占め、タイの40倍近くの台数

販売台数が多い車種を中心に現地製造する可能性が高い

インドネシアでは日系自動車メーカーが圧倒的シェア

インドネシアの自動車市新車販売市場は98%以上が日系自動車メーカー 自動車関連業界・環境については日系の意向・インプットが重要

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-2.輸出に関する現状・課題・強み

55

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3-2.輸出に関する現状

56

0

200

400

600

800

1,000

1,200

インドネシア タイ

タイの輸出台数が圧倒的に多い。国内市場を上回る生産能力を持ち、輸出拠点国になっている インドネシアの輸出台数はまだ少ないが、徐々に増加。ただし2016年は2015年より減少

完成車輸出台数(全体量)

インドネシア・タイの完成車輸出台数推移(比較)

年 インドネシア 前年比 タイ 前年比

2000 0 N.A. 153 +272001 0 N.A. 175 +222002 1 +1 181 +62003 2 +1 235 +542004 10 +8 332 +972005 18 +8 435 +1032006 31 +13 541 +1062007 60 +29 689 +1482008 101 +41 784 +952009 57 -45 536 -2482010 86 +29 896 +3602011 108 +22 736 -1602012 173 +65 1,027 +2912013 171 -2 1,128 +1012014 202 +31 1,128 ±02015 208 +5 1,205 +772016 194 -13 1,189 -16

(単位:千台)

単位:千台

(出所)GAIKINDO・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアとタイは、輸出されている車種が大きく異なる インドネシア国内市場に強いMPVは輸出台数も最大である一方、タイはMPVの輸出を行っていない。タイ国内市場に

強いピックアップトラック(小型商用車)は、輸出台数も圧倒的に多い

現地生産車種は国内市場がメイン。国内販売台数が多いと生産コストが下がり、その結果、輸出競争力が高まることから、国内販売台数と輸出台数の関連が強い

完成車輸出台数(車種別)

2016年インドネシアの完成車輸出台数推移(車種別)

ミニ(A)19,200 台

コンパクト(B)24,979 台

SUV47,839

MPV77,174 台

小型商用車

22,566 台

中大型商用車

2,640 台

2016年タイの完成車輸出台数推移(車種別)

ミニ(A)32,960 台

コンパクト(B)

200,478 台

小型(C)197,498 台

中型(D)6,807 台

SUV161,907 台

小型商用車

577,400 台 総輸出台数1,185,515台

総輸出台数194,397台

3-2.輸出に関する現状

(出所)GAIKINDO・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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58

インドネシアの輸出は主にアジア向けであり、その次に中近東が続く。一方、タイはアジア・オセアニアがメインであるが、インドネシアよりも地域が分散している

輸出車種・輸出地域に違いがあることから、タイからの輸出が多い地域に対してはタイから輸出されていない車種を輸出、もしくはタイからの輸出が多くない地域を狙って輸出することも考えられる

完成車輸出台数(地域別)

2016年インドネシア完成車輸出内訳(地域別) 2016年タイ完成車輸出内訳(地域別)

アフリカ

5,346 台(2.75%)

中近東

52,068 台(26.78%)

アジア

114,048 台(58.67%)

大洋州

750 台(0.39%)

中南米

21,885 台(11.26%)

不明

301 台(0.15%) アフリカ

26,242 台(2.21%)

中近東

155,724 台(13.10%)

アジア

326,237 台(27.45%)

大洋州

328,471 台(27.64%)

中南米

103,225 台(8.69%)欧州

148,110 台(12.46%)

北米

100,506 台(8.46%)

3-2.輸出に関する現状

(出所)GAIKINDO・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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59

完成車の輸出先については、項目ごとに輸出先に偏りがある(例:HSコード870322・870323は幅広な地域に輸出しているのに対し、870431ではほとんど日本とマレーシアのみの輸出に留まっている

フィリピン31.6%

サウジアラビア42.6%

フィリピン77.8%

ベトナム59.0%

シンガポール93.2%

日本85.4%

サウジアラビア19.5%

UAE7.8%

タイ10.6%

タイ38.2%

マレーシア4.0%マレーシア

14.6%

日本10.1%

クウェート7.1% コスタリカ

3.0%

日本2.8%日本1.5%

マレーシア8.2%

フィリピン6.8%

パナマ2.7%

メキシコ7.3%

ベトナム5.8%

他 23.4%

他 30.0%

他6.0%

他0.1%

他1.4%

他0.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

870322

870323

870333

870332

870324

870431

完成車輸出額Top6品目

順位

HSコード

大分類 品目名2014~16年平均輸出額(千USD)

1 870322 乗用自動車

ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る)のみを搭載したものに限るシリンダー容積1,000㏄~1,500㏄

1,093,444

2 870323 乗用自動車

ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る)のみを搭載したものに限るシリンダー容積1,500㏄~3,000㏄

747,745

3 870333 乗用自動車

ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)のみを搭載したものに限るシリンダー容積2,500㏄超

362,952

4 870332 乗用自動車

ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)のみを搭載したものに限るシリンダー容積1,500㏄~2,500㏄

209,086

5 870324 乗用自動車

ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る)のみを搭載したものに限るシリンダー容積3,000㏄超

122,368

6 870431 貨物自動車

ピストン式火花点火内燃機関を搭載したものに限る車両総重量が5トン以下

79,831

輸出先別割合(2016年)

インドネシア完成車輸出(HSコード別・輸出先別)

3-2.輸出に関する現状

(出所)UN Comtradeより みずほ銀行国際戦略情報部作成【対象HSコード】

完成車の対象HSコードは、8701、8702、8703、8704、8705、8716(6桁まで)を使用。対象HSコード数は47項目

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60

完成車輸出額Top6品目 輸出先別割合(2016年)

タイ完成車は広範な地域に輸出しているが、その中でもオーストラリア向け輸出が各分類において多くの割合を占めている

順位

HSコード

大分類 品目名2014~16年平均輸出額(千USD)

1 870421 貨物自動車

ピストン式火花点火内燃機関を搭載したものに限る車両総重量が5トン以下

6,774,578

2 870322 乗用自動車

ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る)のみを搭載したものに限るシリンダー容積1,000㏄~1,500㏄

2,999,054

3 870323 乗用自動車

ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る)のみを搭載したものに限るシリンダー容積1,500㏄~3,000㏄

2,586,236

4 870332 乗用自動車

ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)のみを搭載したものに限るシリンダー容積1,500㏄~2,500㏄

1,601,686

5 870333 乗用自動車

ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)のみを搭載したものに限るシリンダー容積2,500㏄超

1,441,516

6 870431 貨物自動車

ピストン式火花点火内燃機関を搭載したものに限る車両総重量が5トン以下

1,417,825

オーストラリア39.0%

フィリピン16.1%

オーストラリア26.5%

フィリピン29.5%

オーストラリア41.8%

サウジアラビア30.3%

N.Z.7.0%

オーストラリア14.9%

サウジアラビア17.2%

インドネシア20.4%

フィリピン15.9%

オーストラリア18.2%

ベトナム6.7%

メキシコ11.7%

UAE10.1%

オーストラリア8.6%

ラオス10.4%

メキシコ16.4%

マレーシア5.6%

USA9.3%

オマーン6.7%

中国7.5%

N.Z.7.5%

UAE10.5%

フィリピン5.5%

日本8.6%

中国5.3%

トルコ5.0%

ペルー2.7%

オマーン 6.1%

他 36.2%

他 39.4%

他 34.2%

他29.1%

他21.7%

他 18.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

870421

870322

870323

870332

870333

870431

※USA:アメリカ、N.Z.:ニュージーランド、UAE: アラブ首長国連邦

タイ完成車輸出(HSコード別・輸出先別)

3-2.輸出に関する現状

(出所)UN Comtradeより みずほ銀行国際戦略情報部作成【対象HSコード】

完成車の対象HSコードは、8701、8702、8703、8704、8705、8716(6桁まで)を使用。対象HSコード数は47項目

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61

地域戦略・近隣諸国状況① オーストラリア

インドネシアが輸出を拡大していくためには、地域戦略を考えていく必要性あり

例として、完成車輸出に関して、オーストラリア向けの輸出が、インドネシアとタイで大きく異なっている

オーストラリアの自動車販売台数は横ばい状況であるが、SUVの割合が徐々に高まっている(MPVについても同様)

インドネシアからオーストラリアへの輸出は、タイからオーストラリアへの輸出と比べ地理的優位性あり(物流コストの低減の可能性あり)と考えられる

乗用車

450,012台(37.8%)

SUV465,646台(39.2%)

小型商用車236,609台

(19.9%)

大型商用車36,849台

(3.1%)

2017年オーストラリア自動車販売台数内訳オーストラリア自動車販売台数推移

500,000

600,000

700,000

800,000

900,000

1,000,000

1,100,000

1,200,000

1,300,000

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

乗用車 SUV 小型商用車 大型商用車 Total

3-2.輸出に関する現状

総販売台数1,189,116台

車種別販売台数

(単位:台)

Total販売台

(単位:台)

(出所)MARKLINESより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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62

地域戦略・近隣諸国状況② ベトナム

ベトナムでは、2017年にインドネシアからの自動車輸入が急増

トヨタが、SUV車種であるフォーチュナーをベトナム生産からインドネシア生産に切り替えたことにより、輸出が急拡大したと考えられる(生産・調達パートでも別途説明)

自動車メーカーが現地生産する車種を変更することで、一国の輸出量に大きな変化を与えることが確認できる

ベトナムの輸入国内訳推移

タイ

25,119 台20%

インドネシア

3,454 台3%

中国

26,719 台21%

韓国

26,539 台21%

インド

25,146 台20%

アメリカ

3,288 台3%

日本

6,150 台5%

ドイツ

2,508 台2%

その他

6,611 台5%

タイ

34,336 台30%

インドネシア

3,884 台4%

中国

10,939 台10%

韓国

20,204 台18%

インド

22,000 台19%

アメリカ

3,442 台3%

日本

7,209 台6%

ドイツ

3,251 台3%

その他

8,302 台7%

タイ

38,244 台39%

インドネシア

16,829 台17%

中国

11,966 台12%

韓国

8,909 台9%

インド

5,570 台6%

アメリカ

3,316 台4%

日本

3,284 台3%

ドイツ

1,611 台2%

その他

7,484 台8%

2015年総輸入台数125,534台

2016年総輸入台数113,567台

2017年総輸入台数97,213台

3-2.輸出に関する現状

(出所)ベトナム税関総局より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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63

インドネシアの部品輸出額は増加傾向にあるが、タイの部品輸出額との差は徐々に開きつつある

タイの部品輸出額は右肩上がりに推移しており、完成車輸出拠点のみならず、部品供給拠点になっていると考えられる

インドネシア・タイ生産・輸出台数、部品輸出額推移(比較)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

生産台数(イ)輸出台数(イ)生産台数(タ)輸出台数(タ)部品輸出額(イ)部品輸出額(タ)

折れ線グラフ(単位:百万USD)

棒グラフ(単位:千台)

部品輸出額(全体量)

3-2.輸出に関する現状

(出所)UN Comtrade・GAIKINDO・TAIA・日本自動車部品工業会資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成【対象HSコード】

日本自動車部品工業会の輸出入統計で使用されているHSコード(6桁まで)を使用。対象HSコード数は111項目

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3-2.輸出に関する現状

64

自動車部品輸出額Top20品目(2014~2016年平均)

(ご参考)インドネシア部品輸出額

輸出順 HSコード 品目名 平均輸出額(千USD)

1 401110 ゴム製空気タイヤ 乗用自動車用 1,293,6752 854430 点火用配線セット (車両、航空機又は船舶に使用する種類のものに限る) 718,2883 870840 ギヤボックス及びその部分品 659,4074 870899 部分品及び附属品 その他のもの 298,7975 870870 車輪及びその部分品・附属品 トラクター用除く 275,1386 871410 モーターサイクル・部品(モーターサイクルのもの) 246,9337 870829 車体 その他部分品 附属品(その他) 204,2208 850710 ピストンエンジン始動用鉛蓄電池 192,2869 840991 ガソリンエンジン 部分品 自動車用 190,612

10 852721 自動車用ラジオで音声の記録用又は再生用の機器と結合してあるもの(外部電源によらなければ作動しないものに限定)

149,655

11 840999 エンジン 部分品 自動車用 120,79212 840734 内燃機関(シリンダー容積が1000cc超のもの 87類用) 107,74213 841430 圧縮機、自動車エアコン用 96,29614 842123 潤滑油、燃料油用ろ過器 95,44715 870850 駆動軸、非駆動軸 及びその部分品 95,37416 851829 拡声器(自動車用) 88,55717 401120 ゴム製空気タイヤ バスと貨物自動車用 88,27918 870891 ラジエーター及びその部分品 82,99719 840732 内燃機関(50cc~250cc 87類車両用) 82,61620 392690 その他のもの(※自動車用のシャシばね及びそのばね板を含む) 78,155

(出所)UN Comtrade・日本自動車部品工業会資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成【対象HSコード】

日本自動車部品工業会の輸出入統計で使用されているHSコード(6桁まで)を使用。対象HSコード数は111項目

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3-2.輸出に関する現状

65

自動車部品輸出額Top20品目(2014~2016年平均)

(ご参考)タイ部品輸出額

輸出順 HSコード 品目名 平均輸出額(千USD)

1 870899 部分品及び附属品 その他のもの 2,652,6562 401110 ゴム製空気タイヤ 乗用自動車用 1,959,1553 840820 ディーゼルエンジン セミディーゼル 87類用エンジン 1,115,8434 401120 ゴム製空気タイヤ バスと貨物自動車用 1,051,9685 841430 圧縮機、自動車エアコン用 1,024,024

6 852721 自動車用ラジオで音声の記録用又は再生用の機器と結合してあるもの(外部電源によらなければ作動しないものに限定)

896,283

7 870829 車体 その他部分品 附属品(その他) 881,8818 392690 その他のもの(※自動車用のシャシばね及びそのばね板を含む) 828,7739 840991 ガソリンエンジン 部分品 自動車用 661,65510 870840 ギヤボックス及びその部分品 592,84611 401699 その他のゴム製品 535,37912 841590 部分品 自動車エアコン用 533,62513 871410 モーターサイクル・部品(モーターサイクルのもの) 525,78814 870894 ハンドル、ステアリングコラム及び ステアリングボックス並びにこれらの部分品 519,16015 854430 点火用配線セット (車両、航空機又は船舶に使用する種類のものに限る) 468,63316 840734 内燃機関(シリンダー容積が1000cc超のもの 87類用) 456,55517 870830 ブレーキ及びサーボブレーキ並びにこれらの部分品(ブレーキライニングを除く) 429,77718 830230 取付具 卑金属製 393,31519 870895 安全エアバック(インフレーターシステムを有するものに限る)及びその部分品 366,34420 870850 駆動軸、非駆動軸 及びその部分品 366,046

(出所)UN Comtrade・日本自動車部品工業会資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成【対象HSコード】

日本自動車部品工業会の輸出入統計で使用されているHSコード(6桁まで)を使用。対象HSコード数は111項目

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3-2.輸出に関する現状

66

下記5項目の部品について、全体的にアメリカ・日本・タイ向け輸出が多い

自動車生産拠点として考えられる拠点に部品を輸出し、グローバル最適調達を行っていると考えられる

順位

HSコード

大分類 品目名2014~16年平均輸出額(千USD)

1 401110 ゴム製タイヤゴム製空気タイヤ(乗用自動車用)

1,293,675

2 854430 配線電気部品点火用配線セット (車両、航空機又は船舶に使用する種類のものに限る)

718,288

3 870840 自動車用部品・付属品

ギヤボックス及びその部分品 659,407

4 870899 自動車用部品・付属品

部分品及び附属品その他のもの

298,797

5 870870 自動車用部品・付属品

車輪及びその部分品・附属品 トラクター用除く

275,138

(ご参考)インドネシア部品輸出額(輸出先別)

部品輸出額Top6品目 輸出先別割合(2016年)

(出所)UN Comtradeより みずほ銀行国際戦略情報部作成

アメリカ52.8%

アメリカ20.3%

アメリカ0.0%

アメリカ1.1%

アメリカ

4.0%

日本7.4%

日本

29.6%

日本

1.5%

日本

9.1%

日本

60.7%

タイ

2.7%

タイ

11.9%

タイ

29.6%

タイ

26.8%

タイ

8.7%

マレーシア4.6%

シンガポール14.5%

メキシコ20.3%

マレーシア33.7%

ドイツ10.8%

オーストラリア3.9%

オーストラリア5.4%

ブラジル14.5%

フィリピン7.4%

オランダ3.4%

他28.6%

他18.3%

マレーシア11.9%

インド6.2%

他12.2%

他22.1%

他15.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

401110

854430

870840

870899

870870

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3-2.輸出に関する現状

67

下記5項目の部品について、日本・アメリカ・インドネシア向け輸出が多いが、インドネシアに比べると、より世界各国に輸出している

特定の国に集中して輸出を行っているわけではなく、自動車部品の輸出拠点(世界の自動車部品工場)となっている

順位

HS 大分類 品目名2014~16年平均輸出額(千USD)

1 870899 自動車用部品・付属品

部分品及び附属品その他のもの

2,652,656

2 401110 ゴム製タイヤゴム製空気タイヤ(乗用自動車用)

1,959,155

3 840820 ピストン・同部品ディーゼルエンジンセミディーゼル 87類用エンジン

1,115,843

4 401120 ゴム製タイヤゴム製空気タイヤ バスと貨物(自動車用)

1,051,968

5 841430 エアコン 圧縮機、自動車エアコン用 1,024,024

(ご参考)タイ部品輸出額(輸出先別)

部品輸出額Top6品目 輸出先別割合(2016年)

(出所)UN Comtradeより みずほ銀行国際戦略情報部作成

マレーシア14.8%

アメリカ47.0%

南アフリカ24.7%

アメリカ21.5%

アメリカ18.6%

インドネシア9.4%

日本5.9%

インドネシア20.2%

オーストラリア7.4%

日本15.8%

日本8.6%

中国5.0%

アルゼンチン19.4%

ベトナム7.4%

インド14.0%

ベトナム7.4%

マレーシア4.2%

マレーシア6.6%

マレーシア6.0%

南アフリカ5.6%

南アフリカ6.4%

オーストラリア4.0%

フィリピン4.8%

エジプト5.2%

オランダ5.1%

他53.4%

他33.9%

他24.3%

他52.5%

他40.9%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

870899

401110

840820

401120

841430

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3-2.輸出に関する課題・強み

68

ポイント

完成車輸出が少ない

説明

現状インドネシアの完成車輸出台数は約20万台であり、タイの約120万台と比較すると約6分の1の規模に留まる

小型商用車輸出はタイに圧倒的な優位性あり、MPVについてはインドネシアに強みがある

インドネシアで自動車現地生産する場合、まずは国内市場がメイン。国内販売台数が多いと生産コストが下がり、その結果、輸出競争力が高まるため、国内販売と輸出台数の関連が強い(輸出だけ増やそうとしても難しく、国内販売とリンクしている部分がある)

MPVに優位性

オーストラリアへの輸出に可能性

周辺地域の車種別嗜好を見ると、MPV・SUVについて、マレーシアでは20%程度、フィリピンでは30%程度の割合を占めており、それらの国への輸出ポテンシャルがあると考えられる(実際に、フィリピンでは全体的にタイとインドネシアからの輸入が多数を占める)

また、タイでは乗用車・商用車ともにオーストラリア向け輸出が多い一方、インドネシアでは少なく、地理的優位性が活かされていない可能性あり(タイとオーストラリアは二国間FTAを締結済み。一方、インドネシアとオーストラリアはFTAについて現在交渉中であるものの、発行

までには至っていない。この差とも考えられるが、一方で関税率は現時点でもタイ・インドネシアで変わりはない)

輸出コスト削減の観点から、オーストラリアへの輸出について、タイからインドネシアへ移管するメリットがある可能性あり

部品輸出も少ない タイの部品輸出はインドネシアの2倍 タイは裾野産業が広く生産台数も多いことから、部品輸出も多いと推測 全体的にインドネシアは部品の輸入超過国である一方、タイは部品の輸出超過国である

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状・課題・強み

69

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3-3.生産・調達に関する現状

70

インドネシア・タイの自動車部品について、生産台数の増加に伴い、輸入額・輸出額両方ともに増加しており、生産台数と概ね類似⇒現地調達が進む一方、グロバール最適調達戦略の考えにより複数箇所から調達

部品輸入額は生産台数の増減と関連あり⇒生産に必要な部品のみ輸入

部品輸出は増減幅が小さい※⇒現地生産の一部を輸出

※2008-2009年はリーマンショックの影響で一時的に落ちたもの

インドネシアの自動車生産台数と部品輸出入額推移

(単位:百万USD)(単位:千台)

自動車生産台数・部品輸入額(比較)

タイ自動車生産台数と部品輸出入額推移

(単位:百万USD)(単位:千台)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

生産台数(イ) 部品輸入額(イ) 部品輸出額(イ)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

生産台数(タ) 部品輸入額(タ) 部品輸出額(タ)

(出所)UN Comtrade・GAIKINDO・TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成【対象HSコード】

日本自動車部品工業会の輸出入統計で使用されているHSコード(6桁まで)を使用。対象HSコード数は111項目

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3-3.生産・調達に関する現状

71

自動車部品輸入額Top20品目

(ご参考)インドネシア部品輸入額

輸入順 HSコード 品目名 輸入額(千USD)

1 870899 部分品及び附属品 その他のもの 853,0542 870840 ギヤボックス及びその部分品 490,0633 840991 ガソリンエンジン 部分品(自動車用) 417,1224 392690 その他のもの(※自動車用のシャシばね及びそのばね板を含む) 397,2125 871410 モーターサイクル・部品(モーターサイクルのもの) 322,9566 870829 車体 その他部分品 附属品(その他) 307,0467 840999 エンジン部分品 自動車用 298,2028 870850 駆動軸、非駆動軸 及びその部分品 271,8469 841430 圧縮機、自動車エアコン用 251,80310 840820 ディーセルエンジン・セミディーセルエンジン 213,01211 870894 ハンドル、ステアリングコラム、ステアリングボックスと関連部分品 197,56012 848340 無段変速機 (自動車用と特定されていない) 196,40813 848310 伝導軸(カムシャフト・クランクシャフト等) 193,92014 401194 ゴム製空気タイヤ(自動車用、幅101.6㎜超、リム径61㎝超え) 189,76215 841490 ファン、自動車用ガスタービン過給器の部分品 178,41916 870830 ブレーキ及び関連部分品(ブレーキライニングを除く) 170,04917 401699 その他のゴム製品 142,70418 842129 液体のろ過器及び清浄機 135,18219 401120 ゴム製空気タイヤ バスと貨物自動車用 135,02920 841590 部分品 自動車エアコン用 118,718

【対象HSコード】

日本自動車部品工業会の輸出入統計で使用されているHSコード(6桁まで)を使用。対象HSコード数は111項目

(出所)UN Comtrade・日本自動車部品工業会資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

72

日本から直接輸入されている部品は、JIEPAの規定で、2018年以降関税撤廃対象が拡大

日本からの輸入関税率(部品)

自動車関連部品の関税率(日本⇒インドネシア)①

部品名(大分類) 部品(中分類) HSコード(4桁) HSコード(6桁) 2017年輸入関税率 2018年以降

エンジン及びその部品

ガソリンエンジン 84078407.21~32 0.00% 0.00%

8407.33 0.00%~1.36% 0.00%8407.34 0.00% 0.00%

ディーゼルエンジン 8408 8408.20 0.00%~1.36% 0.00%ガソリンエンジン本体部品 8409 8409.91 0.00% 0.00%ディーゼルエンジン本体部品 8409 8409.99 0.00% 0.00%エンジン用バッテリー 8507 8507.10 0.00% 0.00%エンジン用発電機 8502 8502.11~8502.12 0.00% 0.00%エンジン用点火装置 8511 8511.10~8511.90 0.00% 0.00%

ろ過器 8421

8421.23 0.00% 0.00%8421.29 0.00% 0.00%8421.31 0.00% 0.00%8421.99 0.00% 0.00%

ガスケットとメカニカルシール 84848484.10~8484.20 0.00% 0.00%

8484.90 0.00% 0.00%

過給機及びその部品 84148414.59 0.00% 0.00%8414.90 0.00% 0.00%

排気装置及びその部品 8708 8708.92 1.36% 0.00%ラジエター及びその部品 8708 8708.91 1.36% 0.00%

(出所)関税率規定原文:PERATURAN MENTER KEUANGAN REPUBLIK INDONESIA NOMOR 30/PMK.010/2017 & NOMOR 63/PMK.010/2017日本自動車工業会・インドネシア財務省・インドネシア関税局・World Tariffより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

73

日本から直接輸入されている部品は、JIEPAの規定で、2018年以降関税撤廃対象が拡大

日本からの輸入関税率(部品)

自動車関連部品の関税率(日本⇒インドネシア)②

部品名(大分類) 部品(中分類) HSコード(4桁) HSコード(6桁) 2017年輸入関税率 2018年以降

車体及びその部品

車体(原動機あり) 8706 8706.00 0.00%~3.64% 0.00%

車体(原動機なし) 8707 8707.10 5.45% 0.00%8707.90 0.00%~3.64% 0.00%

ガラス 7007 7007.11 0.00% 0.00%7007.21 0.00% 0.00%

バンパー 8708 8708.10 0.00%~1.36% 0.00%金属製ブラケット 8302 8302.30 0.00% 0.00%金属製キーセット 8301 8301.20 0.00% 0.00%シート 9401 9401.20 0.00% 0.00%シートベルト 8708 8708.21 0.00% 0.00%エアバック及びその部品 8708 8708.95 0.00% 0.00%バックミラー 7009 7009.10 0.00% 0.00%その他の車体部品 8708 8708.29 0.00%~1.36% 0.00%

車体電装品

ワイヤーハーネス 8544 8544.30 0.00% 0.00%

照明・音響・電熱機器 8512 8512.20~8512.40 0.00% 0.00%8512.90 0.00% 0.00%

電球 8539 8539.10~8539.20 0.00% 0.00%

エアコン及びその部品 8415 8415.20 0.00% 0.00%8415.90 0.00% 0.00%

ラジオとカーステレオ 8527 8527.21~8527.29 0.00% 0.00%時計 9104 9104.00 0.00% 0.00%

(出所)関税率規定原文:PERATURAN MENTER KEUANGAN REPUBLIK INDONESIA NOMOR 30/PMK.010/2017 & NOMOR 63/PMK.010/2017日本自動車工業会・インドネシア財務省・インドネシア関税局・World Tariffより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

74

日本から直接輸入されている部品は、JIEPAの規定で、2018年以降関税撤廃対象が拡大

日本からの輸入関税率(部品)

自動車関連部品の関税率(日本⇒インドネシア)③

部品名(大分類) 部品(中分類) HSコード(4桁) HSコード(6桁) 2017年輸入関税率 2018年以降

パワートレイン及びその部品

クラッチ及びその部品 8708 8708.93 1.36% 0.00%トランスミッション及びその部品 8708 8708.40 0.00% 0.00%駆動軸(デフを含む)と非駆動軸及びその部品

8708 8708.50 1.36% 0.00%

その他の動力伝導装置 8483 8483.10~8483.90 0.00% 0.00%

タイヤ・ホイール

タイヤ 40114011.10 0.00% 0.00%4011.20 0.00% 0.00%4011.40 0.00% 0.00%

チューブ 4013 4013.10 0.00% 0.00%ホイール 8708 8708.70 1.36% 0.00%

ステアリング及びその部品

ステアリング及びその部品 8708 8708.94 0.00% 0.00%

サスペンション及びその部品

懸架装置 8708 8708.80 1.36% 0.00%鉄鋼製シャシばねと板ばね 7320 7320.10 1.36% 0.00%

ブレーキ及びその部品

ブレーキ 8708 8708.30 0.00% 0.00%

ブレーキの摩擦材 68136813.20 0.00% 0.00%6813.81 0.00% 0.00%6813.89 0.00% 0.00%

その他の部品その他の部品 8708 8708.99 0.00%~1.36% 0.00%逆止弁 8481 8481.30 0.00% 0.00%

(出所)関税率規定原文:PERATURAN MENTER KEUANGAN REPUBLIK INDONESIA NOMOR 30/PMK.010/2017 & NOMOR 63/PMK.010/2017日本自動車工業会・インドネシア財務省・インドネシア関税局・World Tariffより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

75

素材に関しては輸入関税が多く残存。特に自動車部品の素材となる鋳鉄や鋼が多く対象

日本の自動車関連製造業者は、特定用途免税制度(USDFS)の使用が可能。USDFSの使用によって、一部の素材が免税となる

日本からの輸入関税率(素材)

自動車関連素材の関税率(日本⇒インドネシア)

主要素材 使用される主要な部品 HSコード分類 HSコード(4桁) 輸入関税率2018年以降

(予定)USDFS対象(*1)

鋳鉄、鋼車体・フレーム・シャフト、シリンダーブロック等エンジン部品

第2節:鉄及び非合金鋼 7208~7217 1.88%~MFN(*2) 1.56%~MFN ○

鉄鋼製品・鋳鉄製品 第73類 0.5%~MFN 0.00%~MFN △

鋳鉄製の管・溶接 7303~7305 MFN MFN △

アルミニウム ピストン・シリンダーヘッド アルミニウム及びその製品 第76類 0.00%~MFN 0.00%~MFN ×

鉛・亜鉛エンジンメタル類、バッテリー・ハンダ

鉛及びその製品 第78類 0.00%~MFN 0.00%~MFN ×

亜鉛及びその製品 第79類 0.00% 0.00% ×

セラミックス センサー・排出ガス浄化用部品 その他の陶磁製品 6914 2.73% 0.00% ×

銅 電装品・ラジエター・電線 銅及びその製品 第74類 0.00%~0.45% 0.00% ×

合成樹脂ステアリングホイール・バンパー・ラジエターグリル・ボディー部

プラスチック及びその一次製品

3901~3914 0.00%~0.91% 0.00% △

ゴム タイヤ・防振用部品 ゴム及びその製品 第40類 0.00% 0.00% △

繊維 シート・シートベルト 人造繊維製品 第54類 0.00% 0.00% ×

皮革 シート・バッキング革 第41類 0.00% 0.00% ×

革製品 第42類 0.00% 0.00% ×

(*2)MFN: Most Favored Nation(特恵税率:税率は項目によって2.00%~15.00%)(*1)○:対象、△:一部対象、×:対象外

(出所)関税率規定原文:PERATURAN MENTER KEUANGAN REPUBLIK INDONESIA NOMOR 30/PMK.010/2017 & NOMOR 63/PMK.010/2017日本自動車工業会・インドネシア財務省・インドネシア関税局・World Tariffより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

76

特定用途免税制度(USDFS)とは、日本とインドネシア経済連携協定の枠組みにおいて、利用者に対して特別な関税率を供与される制度

USDFSを通じた特別便宜が図られている工業分野が15分野指定されており、その中に自動車関連産業も含まれる 工業分野はインドネシアの準産業分類(KBLIコード)で分類・指定 対象企業自身が輸入者の場合のみ使用のみ可能。つまり、メーカー企業自身が直接輸入する場合のみUSDFS

を使える

特定用途免税制度(USDFS)

USDFS特別便宜の利用が可能な工業分野(自動車分)

大分類 サブ分野 KBLIコード

自動車およびその部品

四輪あるいはそれ以上の乗客・貨物自動車産業

34100

四輪あるいはそれ以上の自動車のカロツェリア産業

34200

四輪あるいはそれ以上の自動車の部品や補完品産業

34300

二輪および三輪自動車産業 35911

二輪および三輪自動車の部品・補完品産業

35912

他の欄に分類されない電気機器産業 31900

USDFS特別便宜の利用が可能な工業分野(その他)

大分類 サブ分野 KBLIコード

電気・電子およびその部品

電気を使った家庭用器具産業 29302

ジオ、テレビ、録音・録画機の産業 32300

重機・建機 鉱業・採掘・建設用機械産業 29240

エネルギー補助

蒸気機械・タービン・リール産業 29111

発電機械産業 31102

トランスフォーメーター・整流器・ボルテージスタビライザー産業

31103

電気パネル、スイッチギア産業 31201

タンカー・液体保管のための器具・金属製コンテナー産業

28120

石油ガス製品の加工・供給・蔵置のための建築物産業

45226

(出所)JETROホームページ・インドネシア工業省ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

77

USDFS制度を利用する場合、2種類の申請が必要① USDFSの利用するための工業検査証明書申請② USDFS制度自体の利用申請

利用手続きについて、概ね以下の通りの流れとなる

①工業検査証明書の取得

工業大臣が指定したサーベイヤー(国営P.T. Surveyor Indonesia)が発行する特定用途免税制度登録証明書(SKVI-USDFS)を取得 1年間の物品輸入計画(RIB)が必要 検査は3段階(初期検査、生産検査、最終検査)にて行う 検査料は輸入価額の最高1%であり、全額を製造輸入業者が負担する 証明書の有効期間は1年間(毎年の更新が必要)

申請における必要な書類a. 社設立証書と最新の変更証書の写し又は官報に記載されたものb. 工業事業許可書(IUI)と拡張許可書(ある場合)の写しc. 納税者番号(NPWP)の写しd. 課税業者番号書の写しe. USDFS 関税免税譲許を受ける前の年間税納税証の写しf. 製造輸入業者番号(API-P)の写しg. 会社所在証明書の写しh. 通関登録番号(NIK)i. 物品輸入計画(RIB)j. 生産ライン設備能力データk. 譲許を受ける前の過去12ヶ月間の生産・販売(輸入・国内)・労働力・年間税納税を含む会社概要(会社取締役が署名のこと)l. 生産プロセスフロー図・生産機器のリストとレイアウトm. 申請者・事業開発実施者・下請け業者及びその他USDFS を利用する関係者が検証を受ける用意がある旨の表明書

特定用途免税制度(USDFS)

(出所)JETROホームページ・インドネシア工業省ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する現状

78

②USDFS申請

利用者は以下を添付して通関技術局長宛てに申請。通関技術局長の審査を経て、USDFS関税率の使用についての財務大臣決定を受ける 納税者番号(NPWP) 通関基本番号(NIK) USDFS工業検査証明書(SKVI - USDFS)

申請が受理された場合、関税技術局長は、財務大臣の名義により、特定用途免税制度の枠組みにおける関税率利用に関する財務大臣決定書を発行

③輸入(通関)

通常の輸入通関書類のほか、輸入申告書(PIB)に以下を添付する ②USDFS申請にて財務大臣決定書(写) 原産地証明書(JIEPAフォーム) USDFS工業検査証明書(SKVI - USDFS)

輸入申告書(PIB)に記載が必要の内容 関税率の便宜コード ②USDFS申請にて財務大臣決定書の決定番号 原産地証明書のレファレンス番号 品目分類番号とUSDFSにおける関税率

輸入品の数量・種類・仕様が財務大臣決定の記載と異なる場合、量の超過分や種類の異なる品には一般関税率が課される

特定用途免税制度(USDFS)

(出所)JETROホームページ・インドネシア工業省ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-3.生産・調達に関する課題・強み

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ポイント 説明

国内市場規模が大きいことが現地生産を行う前提条件となっている

現地で多く販売されている車種・モデルを現地生産に切り替えることが通例 販売台数が少ない車種は、AECの関税撤廃により地域内の別工場(例えばタ

イ)からCBUを輸入したほうが効率的

主要輸出車種と国内主要販売車種に相関関係あり

国内市場規模が大きいために現地生産を行なっている車種は、コスト面で輸出競争上有利

その結果、タイはASEAN域内の商用車輸出の主要拠点となっている インドネシアもタイと同様、国内シェアが大きいMPV・SUVを地域内に輸出

政策により一定車種を現地生産にシフト 政策により部品の現地調達率が増加傾向

代表的な政策はタイのEco Car Program・インドネシアのLCGC政策

自動車メーカーは、政策に適応するため、新たな車種や既存車種の改良で現地生産に切り替える(ホンダのBrioシリーズ・トヨタのAgya等)

現地調達に関する指定があり、自動車メーカーが部品を現地調達化させる動きも見られる

インドネシアで原材料の輸入に関税が発生 日系専用のUSDFS制度があるものの、実務上

利用が困難

AEC・JIEPAで部品の輸入関税概ねゼロであるが、素材に関税が掛かりコストが上がるため、現地調達するインセンティブが低い

USDFS制度利用は、企業自身が輸入を行うことが条件であり、商社を通じて素材を輸入する企業が多いことから、利用ができないケース多数

現地調達率が上がっているものの、タイより低い インドネシアの現地調達率は全体的に6割に留まる。タイは、強みを持つ商用

車に関して、全体的に約9割の現地調達が可能

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-4.規制・政策に関する現状・課題・強み

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3-4.規制・投資優遇に関する現状

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インドネシアネガティブリスト

対象業種区分

2016年ネガティブリストでは、対象業種において次の区分けで規制が設けられている。

1. 中小・零細企業、協同組合のために留保される分野

2. 中小・零細企業、協同組合とのパートナーシップが条件付けられる分野

3. 外資比率が制限される分野4. 地域が限定される分野5. 特別許可を要する分野6. 内資100%に限定される分野7. 外資比率と地域が限定される分野8. 特別許可が必要で外資比率が制限される分野9. 内資100%に限定され、特別許可が必要な分野10.ASEAN諸国の投資家対象の外資比率あるいは地域が限

定される分野

特定の条件付きで開放されている事業分野

A. 農業セクターB. 林業セクターC. 海洋・漁業セクターD. エネルギー・鉱物資源セクターE. 工業セクターF. 国防・警備セクターG. 公共事業セクターH. 商業セクターI. 観光・創造経済セクターJ. 運輸セクターK. 情報通信技術セクターL. 金融セクターM. 銀行セクターN. 労働セクターO. 教育セクターP. 保健セクター

インドネシアでは、2016年5月12日付の大統領規程2016年第44号(以下、2016年ネガティブリスト)にて、投資が禁止されている業種として小売業、運輸・輸送業保健衛生分野、教育関連事業、マスコミ関連等が定められている

またそれ以外にもネガティブリストに定められる一部業種に関しては、パートナーシップが条件付けられている事業分野や、特定の条件付きで開放されている事業分野があり、外資企業の参入に制限が設けられている

自動車産業に関しては、自動車製造はネガティブリスト対象外となっており、基本的には外資100%で会社設立が可能。

しかしポンプ・コンプレッサー産業などの一部自動車部品事業がネガティブリストの対象となっており、パートナーシップが条件付けられている

インドネシア外資規制

(出所)JETRO ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイの外資規制概要

タイでもインドネシアと同様に、 1999年外国人事業法(Alien Business Act/Foreign Business Law)により、外国企

業(外国資本が50%以上)に対し、以下3カテゴリーに分けられた43業種への参入を制限

基本的には製造業を除くほとんどの業種が外資規制の対象となっており、外資企業による出資比率は50%以下と規定されている

自動車産業に関しては、完成車および自動車部品製造業は外資規制の対象外であり、外資100%で会社設立可能

3段階のネガティブ・リストの形態 例外規定

リスト1業種(9業種) 「外国企業」の参入禁止:マスコミなど 特別の理由により外国人の営業が認められない事業

なし

リスト2業種(3類/13業種) 禁止だが閣議承認を経た商務大臣の許可があれば可能

第1類 国家安全保障に関する事業:飛行機・国内陸上・ 海上航空運輸など

第2類 国家の安全に関する文化・工芸の保護に関する事業:タイの芸術・工芸品取引など

第3類 天然資源または環境に影響を及ぼす事業:さとうきびからの製糖など

閣議決定に基づいた商務大臣の許可を取得することにより外国人が参入する可能性あり

なお、別途出資比率規制(タイ40%以上)や取締役数規制(タイ人5分の2以上)等あり

リスト3業種(21業種) 外国人に対して競争力が不十分な業種(21業種)

:建設業・卸売業(資本金1億バーツ未満)・小売業(資本金1億バーツ未満・一店舗当たり資本金2,000万バーツ未満)・その他サービスなど

外国人事業委員会の決定に基づいた商務省事業開発局長の許可や、タイ投資委員会(BOI)の投資奨励を取得することにより外国人が参入できる可能性あり

タイ外資規制

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)タイ商務省・JETRO ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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会社設立に関わる規制比較

インドネシアの現行の会社法は2007年に制定されたものであり、全161条で構成

インドネシアでは外資企業の場合、最低資本金に加え、最低投資額も定められている

一方タイでは会社法における最低資本金に関する規制はない(別途、労働許可取得や事業ライセンス取得に関わる最低資本金はあり)

インドネシア タイ

最低資本金

最低授権資本 : 5,000万ルピア

最低引受授権資本 : 授権資本最低25%

外資企業の場合は最低資本金25億ルピア

会社法による最低資本金規制はなし

(ただし、外国人の労働許可取得に際し、外国人1人あたり200万バーツの資本金が

必要。一部業種において事業ライセンス取得に際し資本金制限があるケースもある)

最低投資額

外資企業の場合、投資調整庁(BKPM)による個別承認(外国企業設立承認時に、企業毎に最低投資額を決定

土地建物を除く最低投資額合計は100億ルピア

会社法による投資額規制はなし

インドネシア・タイ会社法

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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分類 インドネシア タイ

ネガティブリスト

記載業種は外資出資比率制限や条件あり(例)自動車部品製造に関連するものは、釘・ナット・ボルト産業(KBLI25952)、発動機コンポーネント・部品産業(KBLI28113)等は地場企業とのパートナーシップ義務付けあり

記載業種により外資出資比率に条件ありただし自動車部品製造業に関しては外資100%での進出可能

最低資本金最低授権資本 : 5,000万ルピア最低引受授権資本 : 授権資本最低25%外資企業の場合は最低資本金25億ルピア(約2,100万円)

会社法による規制なしただし、外国人の労働許可証取得に際し、外国人1人あたり200万バーツ(約700万円)の資本金が必要

最低投資額 土地建物を除く投資額合計が100億ルピア(約8,500万円)超 会社法による投資額規制なし

企業ヒアリング最低資本金規制(含む最低投資額)が進出のハードルとなっている(インドネシア未進出日系企業より)

最低資本金や最低投資額に関する規制がないので、(インドネシアと比べて)参入しやすい

インドネシアとタイの外資規制を比較した場合、全般的にインドネシアがタイよりも厳しい

自動車製造業であれば原則両国ともに100%での進出が可能であるものの、大きく異なるのは最低資本金・最低投資額であり、インドネシアの場合、初期投資額合計が1億円弱となる

上記に関して、裾野を形成していると考えられる中小企業にとって一つのハードルとなる

外資規制比較

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)タイ商務省・JETRO ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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輸入一般規定(商業大臣規定2015年第48号)

輸入取引は原則、輸入業者認定番号(API)を有する輸入業者に

限定。輸入業者は財務省関税総局に登録して通関システムへのアクセス承認を得ることも必要

輸入品は新品であることが原則。別途法令規定や大臣権限、他の政府機関からの提案や技術的見解等により、大臣が中古状態で輸入可能な品目を定めることがある

輸入禁止品目を除き、特定品目の輸入に際し、別途輸入管理規定が定められることがある。輸入管理方法は以下

‐製造輸入業者として認定(自己使用のために輸入する場合)

‐登録輸入業者として指定(他者へ販売/譲渡のため輸入する場合)

‐輸入承認‐サーベイヤーリポート‐他の輸入許可メカニズム

輸入が規制される品の輸入業者は、通関前に必要な許認可を商業大臣その他から取得しておくことが義務付けられている

輸出入取引に関しては輸出入禁止/ 規制品目が定められており(工業商業大臣決定1997 年第230 号)、品目ごとに改正/改定が繰り返されている。更に品目によって輸出入港の制限も定められている

輸入は輸入業者認定番号(API)を取得した事業者に限定されており、特定品目の輸入においては別途輸入承認を要するケースもある

更に「国内物流規定」に基づき、輸入後は小売業者への物品流通が禁止されており、輸入事業者はディストリビューターを介して販売しなければならない(商業大臣規定2016 年第22 号)

輸入業者認定番号(API)規定(商業大臣規定2015 年第70 号)

API は一般輸入業者の認定番号であるAPI-U と、製造輸入業者の認定番号API-P の2 種類。保有は1 社につき1 種類のみ

APIは5 年更新。外国投資(PMA)企業はBKPM へ申請 API保有企業は商業省ポータルサイトを通じた輸入報告義務あり API 無しで輸入可能な品目は、一次輸入品・プロモーション品・

学術研究用の物品・再輸入品・非売用サンプル等に限定

認定番号 輸入品

API-U(一般輸入業者用)

事業許可に記載された取扱品目を輸入することが可能

API-P(製造輸入業者)

原則自社の生産工程で使用する資本財、原材料、補助材、材料物品の輸入に限定

一部、輸入承認の取得により、事業開発と投資の目的のための完成品も輸入可能(新品に限り、同API-P 企業と特別関係にある海外企業からの輸入のみ)

インドネシア輸入規制①

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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SNI取得義務がある品目例

さらに特定品目の輸入に関しては、SNI*(インドネシア国家規格)証使用製品証明(SPPT-SNI)の取得が義務付けられている

該当製品を輸入する場合、輸入業者はSPPT-SNIを取得し、SNI 証あるいはSPPT-SNI を付する必要がある

SNI規格の対象製品には、自動車用安全ガラスやタイヤ等もの自動車部品も含まれている

(*) SNI :単なる製品規格にとどまらず、サービスや(管理)システム・プロセス・人員(技能)・試験方法・デザイン等の標準化にも及ぶ包括的な規格

対象品目 規定 詳細

ガラス2015 年9月29 日付工業大臣規定2015年第80 号(No.80/M-IND/PER/9/2015)

① 自動車用安全ガラスa. Tempered Safety Glass b. Laminated Safty Glass

② ガラス板③ 鏡

a. アルミめっきシート鏡 b. 銀めっきシート鏡

タイヤ2015年9月29日付工業大臣規定2015年第76号(No.76/M-IND/PER/9/2015)

a.乗用車用b. 軽トラ用c. トラック・バス用d. 二輪車用e. 自動車両の内タイヤ(乗用車・軽トラ・トラック・バス・二輪車)f. ホイール装着済タイヤ

亜鉛メッキ鋼板(Baja Lembaran

Lapis Seng)

2012年2月27日付工業大臣規定2012年第38 号(No.38/M-IND/PER/2/2012)

HSコード7210.41.11、7210.41.12、7210.41.19、7210.49.11、7210.49.12、7210.49.13、7210.49.19、7212.30.11、7212.30.12、7212.30.13、7212.30.14、7212.30.19 に該当する亜鉛メッキ鋼板(Baja Lembaran Lapis Seng)

インドネシア輸入規制②

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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2017年1月1日より鉄鋼及び鉄鋼製品の新たな輸入規制が導入され、レール・ナット・ボルトなどを対象に、471品目で事前の輸入承認や船積み前検査が必要となった(商業大臣規定No.82/M-DAG/PER/12/2016号)

自動車産業に関連しているものでは、HSコード7320の「鉄鋼製のばね、自動車用シャシばね、ばね板など」などが含まれる

ただし、条件を満たす場合には船積前検査対象外となるなど、規定の対象外となるケースもあり

輸入承認

輸入承認を取得する場合、工業省の技術診断書を取得の上で、必要書類を添付して商業省の電子申請システム「INATRADE」を通じて国際貿易総局長宛に申請する(申請が受理された場合3営業日以内に輸入承認書が発行)

必要書類は以下の通り① API-PまたはAPI-U② 工業省大臣あるいは指名を受けた公務員の技術診断書③ 販売契約書あるいは発注証明書(API-U保有会社の場合)④ 鋼材材質証明書(合金鋼輸入の場合)

輸入承認を取得した企業は、輸入実績の有無にかかわらず、3ヶ月に1度、翌四半期15日までにINATRADEを通じて商業省に報告し、報告書の写しを工業省に提出する義務を負う

ただし、承認を制限することによる実質的な輸入枠管理(輸入割当)あり

船積前検査の内容

輸入承認書を取得したAPI保有者は、当該品目輸入の都度、政府指定のサーベイヤーによる船積み前検査を行う義務あり

船積み前検査の内容は以下の通り① 原産地および積荷港② 物品の説明と関税分類(HSコード)③ 種類、数量、物品の仕様④ 鋼材材質証明書と輸入する鉄鋼、合金鋼との照合⑤ (要件がある場合のみ)インドネシア国家強制規格(SNI)⑥ 仕向港

規定対象外

「自動車部品およびその部品産業、電気電子およびその部品産業、造船およびその部品産業、金型産業、重機産業およびその部品産業のAPI-P保有会社」などについては船積み前検査対象外

自由貿易地域・自由貿易港・保税蔵置場への搬入や、売買用でないサンプル・研究目的の物品・一時輸入品やプロモーション品などは本規定の対象外となる

インドネシア輸入規制③

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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非関税障壁例

船積み前検査

国内産業の保護及び輸入品の品質・数量・輸入価格や通

関分類の妥当性の確認が目的であり、対象品目はエレク

トロニクスやタイヤなど25品目

輸入検査プログラムは政府系検査会社であるKerja SamaOperasi Sucofindo-Surveyor Indonesia(KSO SCISI)社が担当

輸入者がKSO SCISIに輸入貨物の検査を申請し、KSOSCISIは申請受理後、輸出国の指定検査会社を通じ、船

積み前検査を手配

必要書類の準備後、検査が実施され、輸入通関に必要な

サーベイヤーレポートが輸入者に発行

輸入ライセンスの取得

インドネシアにおいて輸入を行う場合、P111で記載した

API-P(製造業者向けのライセンス)・API-U(非製造業向

けのライセンス)と呼ばれる輸入ライセンスが必要

上記ライセンス以外に、HSコードごと(品目ごと)に固有の

ライセンスが必要なものが存在する

HSコード別に必要となるライセンスについては、INTR(

Indonesia National Trade Repository)にて確認可能で

あり、同時に輸入時の関税・諸税を一括して確認すること

が可能

インドネシアには輸入割当やSNIの強制適用などの他に、船積前検査や輸入ライセンスの取得などの非関税障壁が存在する

例)船積前検査(詳細下記記載)・輸入ライセンス取得・インドネシア国家規格(SNI)の強制適用の拡大・輸入数量枠管理(輸入割当)など

非関税障壁の多さが、日系企業が通関などの諸手続の煩雑さとして問題点と考えている部分である

インドネシア輸入規制④

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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規制などの運用における現状

法令や規制など定められている制度があるが、それらの運用において不透明なものがあり、対応に困難する状況が発生する

法令や規制が変更される頻度が多く、日系企業は、対応に迫られる必要がある一方で、それらの変更通知が担当官に周知されていないこともある

通関の際のHSコードの理解や税務面での運用など、担当官による裁量が大きい部分があると考えている日系企業が多数存在

インドネシア運用面①~概観

日系企業の声(含むヒアリング) 現状

1. 規制の変更頻度が多い (現地完成車メーカー)

法令・規制の変更や新発令などが多い(次貢に記載)2. 規制や法令等が変更されたとしても担当者まで周知

徹底されていない

3. 通関等の諸手続が煩雑 (現地部品メーカー)手続自体は簡素化方向であるものの、原産地証明の否認など一部運用が厳格化されている

4. 通関に時間がかかる (現地部品メーカー) 通関所要時間については改善の傾向にある

5. 担当官によって(HSコード等に関する)理解に違いがある (現地部品メーカー)

輸入品目についてのHSコード事前教示制度あり

6. 税務の不透明さ (現地完成車メーカー)還付金申請をした場合、必ず税務調査が行われることとなり、その結果追徴課税を課されるケースが多数

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)日系企業ヒアリング・JETRO資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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企業はFTAやEPAなどの恩恵を受けるため、特恵関税制度を利用するが、その際に原産地証明書が必要となる

原産地証明とは、貨物の原産地、つまり貿易取引される輸出品や輸入品の国籍を証明すること

インドネシアにおいては、原産地証明書が否認されることが多々あり、企業が特恵関税を利用できない事態が多数あり

また、実際に輸入を行うとき、担当者によるHSコードの理解が異なり、関税がかかってしまうこともあり

HSコードの理解の乖離をなくすため、HSコードについての事前教示制度あり

原産地証明制度の否認

原産地証明書は協定に基づき輸入国税関(インドネシア税関)が確認

するが、インドネシアにおいては原産地証明書の記載内容がインボイ

スと完全に一致しない場合否認するという厳しい運用がなされている

また、原産地から出航して第三国で積み替えてインドネシアに入港す

る場合、途中で開梱作業が行われると原産地資格を喪失したり、積替

地における当局発行の非加工証明書が要求されるケースがある(た

だし、非加工証明書の発行に関する手続は積替地ごとに異なり、かつ

煩雑であるため、発行されないケース多数)

非加工証明書がなく、原産地証明書が否認される事例も多数あり

インドネシアが原産地証明書に対して運用を厳しくしている背景には、

ACFTAによる中国からの輸入激増等により国内産業が反発し、FTA全般の適用に対して及び腰になっていることがある

HSコード事前教示制度

担当者によるHSコードの理解の乖離をなくすことや、関税率などの

予見により不測の追徴課税リスクを減らすため、2016年12月より品

目分類(HSコード)に関する事前教示の手続を改定(財務大臣規定

第194/PMK.04/2016号)した

新規定では具体的な手続と所要時間が明示され、本制度を利用しや

すくなった

一方で日系企業の中には、同制度があることを知りつつ、使用したこ

とがないとする企業も存在し、その理由として、一度決定されたHSコ

ードに関して、異議申立てができるかどうか不明確であるという意見

もあるなど、実際の運用に関して不明な点が多数ある

ただし、本制度の運用がより明確になり、利用が一般的になれば、

HSコードの理解に関して乖離が発生することは十分に減少すると

考えられる

インドネシア運用面②~原産地証明書の否認と担当者によるHSコードの理解

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアの通関手続きには「チャネル」と呼ばれる検査ごとの分類あり

多くの日系企業がインドネシアの通関手続きを煩雑と考えているが、インドネシア側も各種改善を図っている

インドネシア通関手続き(輸入)

① 輸入関税の納付

基本関税や付加価値税・物品税などHSコードによって

規定されている税金を納付

② 輸入申告

輸入申告書を添付書類とともに提出

③ 書類審査

申告内容や添付書類・輸入関税の計算等の審査

④ 現物検査(一部のみ)

箱や包装などを開梱するなどしての検査

⑤ 搬出許可

輸入通関チャネル

インドネシアの輸入通関においては、検査が必要な貨物ごとに「チャネル」(カテゴリ

ー)を設け、それぞれで通関にかかる時間や内容が異なる(チャネルにより左記記

載の手続が異なる)

「チャネル」の種類として、レッドライン・グリーンライン・イエローライン等がある

•レッドライン:書類審査と現物検査の双方が行われ、通関に最も時間がかかる

•イエローライン:書類審査を行い、審査通過してから貨物がリリースされる(状況

によっては現物検査が入ってくる可能性あり)

•グリーンライン:原則検査なし(一般企業が輸入を行う場合においては最も通関に

時間がかからないチャネル)

この他、MITAと呼ばれるグリーンラインよりも優先されるプライオリティレーンも存在

し、優良輸入者に対して付与される

また、認定事業者(AEO)として認定された場合、MITA相当となるブルーラインのチ

ャネルとなり、通関上の各種優遇措置が受けられる

ジェトロの調査によると、通関等の諸手続が煩雑だと感じている日系企業の割合は徐々に減少してきているとされ、インドネシア政府による対応

が見てとれる

輸入者が初めて輸入する際は原則レッドラインからで、輸入実績を積むことによりイエロー・グリーンラインへと引き上げられるが、現在はグリー

ンラインの割合を増やす傾向にあることや、レッドラインからイエロー・グリーンラインに移行するペースが速くなっていると感じる事業者もいる

AEOに関しては、政府は他国との相互認証を推進しており、貿易円滑化を推進している

インドネシア運用面③~通関手続

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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輸出入管理法の関係規則 通関手続き

貨物がタイに到着もしくはタイから出港する際は、輸入者もしくは輸出者は付属書類を添付して税関に通関申告を行わなければならない

税関関税率法令は、ASEAN統一関税率に従って輸入関税を8桁に修正したものの、従来のEDIを通しての通関手続きは8桁システムに適合していないため、電子通関システム(E-Customs)がEDIシステムに代わって導入

通関手続及びその他通関規制手続きを電子的に行おうとする者(企業または個人)は、登録・特典部、手続標準・価格部、税関総括管理部もしくは関税支署に業者登録する必要がある

商務省による輸入規制として、輸入許可取得必要品目が25品目、関税割当対象として輸入証明書が必要な産品が22品目、輸入課徴金が課せられる品目が3品目定められている(輸出入管理法(B.E. 2522(1979))関係規則)

その他工業省による危険品・国家通信委員会(NTC)による通信機器・タイ工業規格(TISI)による鉄鋼製品に対する制限等の輸入制限があり、輸入禁止品目は10品目。自動車関連では中古タイヤが対象品目となっている

輸入許可取得必要品目 証明書が必要な輸入品目

1. 薬品および製薬製品2. クレンブテロール化合物3. アルブテロールおよびサルブタモール4. 石碑用または建築用の石の一部5. 中古車6. 中古バイク7. 中古の輸送用自動車(30人以上の乗客用)8. 中古ディーゼルエンジン9. 金10. コイン11. 骨董品12. 違法コピー品製造用機械13. 凹版印刷機およびカラーコピー機14. プラスティックのくず15. チェーンソー16. 魚粉(60%未満のタンパク質含有量の魚肉)17. カフェイン18. 過マンガン酸カリウム19. 揮発性亜硝酸アルキル20. 動物飼料の小麦

1. 豚の臓物2. エシャロット3. オレンジ

4. 扇風機、炊飯器および電球

5. 新品のタイヤ6. 給湯器

タイ貿易規制

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイ関税局は2015年3月に下記通達を発効 (1)関税評価の事前教示サービスに関する通達(No.38/2558) (2)関税分類の事前教示サービスに関する通達(No.39/2558) (3)原産地の事前教示サービスに関する通達(No.40/2558)

通達に基づき、輸出入業者は関税局に下記事項を事前に 問い合わせ、書面で回答を受けることができる

a.関税賦課のベースとなる輸入品の評価額がいくらになるのかb.輸入品の関税分類(HSコード分類)がどの項目に分類される

のかc.自由貿易協定(FTA)締結国からの製品輸入に際して当該

輸入品がFTAの特恵関税適用を受けるための原産地基準を 満たしているかどうか

書面による回答内容は2年間有効で、この期間法的拘束力を持つ

タイの税関では2017年より、原産性に関する事前教示制度(Advance Tariff Ruling)の運用を開始。物品の輸入申告前の時点で、関税分類番号(HSコード)や関税率(関税額)などの開示を受けることができるようになったため、輸入時の受け取り否認リスクの軽減が図られている

さらにタイ税関では顧客サービスの改善ならびに国際基準への対応を目指すべく、「Customs 4.0.」を方針として掲げ、民間との連携姿勢を明示。「Customs Alliance Program」として個別企業への部署横断型のコンサルチームを発足し、課題解決を図るスキーム構築や、運用改善に努めている

タイの事前教示制度 Customs Alliances Program

タイ運用面

タイ通関

民間機関

Customs Alliances

アドバイス

意見交換

課題解決のた

めの論争削減

課題の

早期解決

時間短縮 コストカット 透明性向上

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO ホームページ・ヒアリング・タイ税関資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアとタイの貿易規制と運用面での障壁を比較した場合、インドネシアはタイよりも規制が多く、運用面においても不明確な部分が多い

分類 インドネシア タイ

輸入規制

輸出入禁止/規制品目あり 品目により輸出入港の制限あり 輸入業者認定番号(API)を取得する必要あり SNI(インドネシア国家規格)強制適用あり

輸出入禁止/規制品目あり

その他非関税障壁

輸入数量枠管理(輸入割当)あり 船積前検査あり API以外のライセンスを取得する必要がある品目あり

運用

法令の変更頻度が高く、担当者への周知徹底がされていない 原産地証明の否認が頻発し、FTAなどの特恵関税の利用困難 インドネシア政府としても手続簡素化・事前教示制度などの対策

をとっている

以前はFTAの適用否認があったものの、現在ではASEANの枠組みである「ATIGA調整委員会」で統一的な指針が示されるなど、解決済み

事前教示制度による制度的改善あり

企業ヒアリング 担当者によりHSコードの理解が違う 急な輸入割当が発生し、輸入できなくなるケースあり 通関の時間が長い

通関などの運用面について、大きな問題点はあまりないとの認識

貿易規制・運用面比較

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO・ヒアリング等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアの自動車産業は、1920年代に米国系自動車メーカーGM社により本格的な自動車生産が開始

1970年代以降に自動車及び同部品の国産化政策が実施され、日本を中心とした外資系自動車メーカー及び部品メーカーの直接投資・技術移転により本格的に自動車生産が進んだ

現在では自動車産業は重点産業とされ、インドネシア政府は自動車を国の輸出産業に発展させることを目指している

95

1969年 インドネシアにおける自動車の普及が本格化。インドネシア自動車協会(GAIKINDO:ガイキンド)設立

1976年 工業大臣令307号、No.37/M/SK/8/1976「商用車組立における国産コンポーネント使用義務についての決定」。商用車のCKD部品として輸入される部品のリストから段階的に部品を削除し輸入を禁止

1980年代 工業大臣令1982年第295号および1987年428号において、ATPMと呼ばれる自動車の流通・販売の公認代理店制度が開始。自動車

関連ビジネス(輸入・販売促進・卸売・メンテナンス等)に関しては、国内企業を代理店として指名することが義務付けられた

1996年 1993年よりスタートしたインドネシア国内における自動車内製化プロジェクトにおいて、現地調達比率に応じた輸入関税の減免/優遇を規定

1999年 1996年の関税優遇施策が自動車国内生産を充分に活性化させるに至らなかったため、完成車輸入が再び解禁 同時にインドネシア政府は、国内の部品メーカーに対し、日系メーカーとのパートナーシップを構築するよう要請

2007年 2007年税関長官規定により、輸出向けの自動車生産に必要となる部品やスペアパーツの輸入関税を撤廃。ただし、2008年に本規定は終了(以降本規定に関連した新規定はなし)

2013年 大統領令2013年第41号において、省エネルギーかつ低価格自動車の生産に関する政策プログラム(LCEP)が発表され、低価格エコカー(LCGC)制度が正式に開始された

2014年 大統領令2014年第22号において、付加価値税(VAT)に掛かる大統領令2013年第41号を改変し、特定の輸入高級車に賦課される

奢侈税が75%⇒125%へ引き上げられた

2015年 経済対策パッケージ5弾において輸入輸送機器へのVAT免除項目を追加。2015年後半の輸入車両増加に貢献

自動車産業に関わる制度・規制の沿革

インドネシア自動車産業関連政策

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)「平成26年度アジア産業基盤強化等事業(経済産業省)」・PT MHCT Consulting Indonesia資料等よりみずほ銀行国際戦略情報部作成

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1990年代は保護主義政策の下、現地調達率の引き上げを課題とし、現地調達率に応じた優遇政策を展開し、徐々に生産および国内販売台数を伸ばした

一方、国産化推進重視により、輸出強化政策は2005年以降に開始しており、輸出台数はタイと比較し伸び悩んでいる

2013年よりグリーンカー優遇政策開始に伴い、生産台数は国内販売台数を上回り、輸出に向けた生産余力確保が徐々に進んでいる

インドネシア各政策と自動車生産・販売・輸出動向

(千台)

インドネシアにおける自動車生産・販売・輸出台数推移

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

生産台数 国内販売台数 輸出台数

低価格エコカー(LCGC)制度開始

輸出向け自動車生産に

関わる部品やスペアパ

ーツの輸入関税撤廃

自動車部品生産に関する税優遇規定交付

通貨危機

自動車国産化施策撤回

リーマンショック

2001年~<外資誘致と国内産業保護の両輪>外資誘致、国内販売推進、輸出拡大方針の策定

1990~2000年<保護主義政策>国産化推進、国民車計画

ローカルコンポーネントとペナルティ規制(現地調達以外の特定品目に関するペナルティ課税)

ローカルコンポーネントとインセンティブ規制(現地調達率に応じた輸入関税免除)

国民車政策。国産化率60%以上の場合、奢侈税免除

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所) GAIKINDO・「平成26年度アジア産業基盤強化等事業(経済産業省)」・PT MHCT Consulting Indonesia資料等よりみずほ銀行国際戦略情報部作成

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1990年代より部分的に自由化政策を開始しており、完成車輸出増加に向けた投資奨励策を実施した結果、2007年以降輸出が国内販売を上回っている

2011年からのファーストカー減税政策により、国内販売が急増したものの、一時的な需要の先食いの結果、その後数年間の販売台数は伸び悩む結果となった

(千台)

タイにおける自動車生産・販売・輸出台数推移

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

生産台数 国内販売台数 輸出台数

ファーストカー減税政策

通貨危機

リーマンショックEco Car

政策第1弾乗用車の輸入解禁、モデル数・車種数の制限廃止、組立工場新設禁止解除

Eco Car 政策第2弾

自動車・部品向け投資奨励再開(地方の工場立地や完成品輸出を条件とした税制優遇)

「第1次マスタープラン」法人税優遇、FTA拡大による輸出アクセス改善

2001年~自由化政策期

1990~2000年部分的自由化政策期

自動車産業保護政策期

大洪水

タイ各政策と自動車生産・販売・輸出動向

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)TAIA・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 現在

1960年代:完成車(CBU)の輸入関税引き上げ。一方で現地組立(CKD)キッ

トの輸入関税を引き下げて自国での自動車組立を誘致

1970年代~1991年:国産化政策1978年には完成車の輸入が禁止され、販売はタイ製の自動車のみ

1975年より現地調達(LC)制度の導入実施。制度が年々厳しくなり、1980年代にはLC制度のピーク。LC制度は、現地調達率だけではなく、部品分野も指定2000年、WTOの協定よりLC制度廃止

<外資誘致 + 輸出促進>1990年代:自由化政策、輸出に注力1985年より禁輸措置は段階的に緩和。外資規制の緩和も実施。通貨危機後、輸出向け政策導入

2000年代:税制で現地産業を保護。CKDキットの輸入関税引き上げ。2002年より外資規制の反面、税制などの恩典で外資の投資誘致

2006年より、日本とタイ政府は「自動車裾野産業人材育成プロジェクト」を導入。

技術提携・移転、現地産業の高度化について管理する機関を設立

1950年代:スカルノ政権の「BentengProgramme」により、

国産自動車育成開始。しかし1960年代は2,000台規模に留まる

1970年代:国産化政策1969年より段階的に完成車(CBU)の輸入禁止1976年より現地調達(LC)制度の導入開始1980年代までLC制度の対象部品を段階的に増加

1969年~1990年代:輸入代替工業化。スハルト政権が外資の誘致により自動車生産を段階的に拡大し、地場財閥とのJVが急増

<保護主義・政策>1990年代:国産化推進・国

民車計画。税金・規制の過度な優遇など目立ち、米・欧・日とのWTO論争に発展。WTOからの勧告により、自動車国産化施策撤回

アジア通貨危機後、IMFによる構造調整の条件で自動車産業自由化。スハルト政権後、政策方針が不明確。2006年より、部品の現地調達率をあげるため、IKDシステムを導入

タイ

インドネシア

生産量

1999年:89,007台 2016年:1,177,389台

1999年:322,761台 2016年:1,944,417台

2010年:702,508台

2010年:1,644,513台

1989年:約250,000台

1989年:約280,000台

1979年:約100,000台毎年約2,000台

1979年:約90,000台1969年:約10,000台

インドネシアの自動車産業発展の経緯は、タイとの類似点が多数

しかし国際貿易ルールの潮流や政策タイミングなどのわずかな差により、タイは自動車産業の集積にいち早く成功

自動車産業関連政策 比較

政策のターニングポイント

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所) 各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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自動車産業は重点産業(優先産業)に分類され、今後も発展が期待されている分野であるものの、各政策において具体的な内容の記載なし

現在、工業省内でインダストリー4.0の工程表が準備されており、IOTやオートメーションなどを用いて製造業などの革新を目指すとされる

国家中期開発計画2015-2019(RPJMN)

国家産業開発計画2015-2035(RIPIN)

経済加速・拡大マスタープラン

2011-2025(MP3E1)

<キーワード>「海洋国家」

「高付加価値と人材育成による工業開発」「インドネシア国内の均一な開発

【新産業法によって策定を義務付けられているマスタープラン】

裾野産業・中小企業関連政策を担う10の優先産業

<目標>2035年にGDP貢献度30%、

輸出増・輸入減ジャワ島以外40%に増加

<10の優先産業>食品

薬品・化粧・医療機器繊維・革・靴・その他

輸送機器電子・ICT

発電機械・部品・材料

農業基本金属・非金属材料

基礎科学

同じ10の優先産業

【国家レベルの開発計画】

RPJPNを補完・推進相互に関連

RPJMNに基づいて策定

<目標>「6つの経済回廊」に沿って、「8つの重点分野」に基づき、

「22の主要な経済活動」を発展させる

<ジャワ経済回廊の重点分野>繊維産業

自動車・機械産業食料・飲料産業

電気産業海運産業

石油化学産業鉄鋼産業

セメント産業 工業省戦略計画2015-2019

(RENSTRA)

国家長期開発計画2005-2025(RPJPN)

インダストリー4.0(第4次産業革命)

インドネシア国家政策①~全体像

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)「平成26年度アジア産業基盤強化等事業(経済産業省)」・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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2005年~2025年までの国家計画を定めた国家長期開発計画(RPJPN)は、インドネシアの上位計画にあたり、国家の長期的な目標が定められている

国家長期開発計画は、計画性・効率性の観点から4つの段階に分かれ、それぞれ5年間ずつの国家中期開発計画(RPJMN)として定められているが、具体性には欠けている

現在、第3段階(国家中期開発計画2015-2019)に差し掛かっている

国家長期開発計画

発展・自立し、公正で民主的であり、平和

で統一された国を確立すること

2025年の一人当たり所得USD6,000、貧困

層人口5%以下

安全レベルでの食料自給率の達成と維持

第1回 国家中期開発計画(2005-2009) 弟2回 国家中期開発計画(2010-2014) 弟3回 国家中期開発計画(2015-2019) 弟4回 国家中期開発計画(2020-2025)

第3回 国家中期開発計画(2015-2019)

人材開発・重点産業・公平な成長(地域格差)

「海洋国家」、「高付加価値と人材育成による工業開発」、「インドネシア国内均一開発」

9,000の中・大企業と、20,000の中小企業を育成。そのうち50%はジャワ島外を想定

重点投資分野:農業・石油・鉱業・機械・繊維・輸送・エレクトロニクス・部品原材料の製

造・グローバル生産ネットワークを活用する産業

中小企業を大手完成車メーカーのバリューチェーンへ組み込み

生産効率の向上(機械・労働力・産業クラスターでの範囲の経済の活用)

技術経営(MOT)の習得

国内企業の経営能力向上や新製品開発の増加

ビジョン・ミッション

国家中期開発計画

目標

重点開発方針

キーワード

高付加価値と人材育成による工業開発

インドネシア国家政策②~国家開発計画

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)「平成26年度アジア産業基盤強化等事業(経済産業省)」・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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自動車産業に関してインドネシア工業省は、戦略目標やロードマップを示している 戦略目標: 高効率と高い世界競争力を兼ね備えた自動車産業 戦略: ①部品産業に焦点、②小型商用車・中型MPV・二輪車産業の継続的強化、③自動車技術獲得の手段と

しての排気量1.2リットル以下の小型乗用車産業の育成 政策: ①国内自動車市場の育成、②輸出の振興、③産業構造の育成、④投資の奨励策

インドネシアの環境政策にも通じている部分があり、LCGC政策にも結びついている

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MPV・小型商用車・環境に優しい車両の生産基地

MPV・小型商用車のエンジン・変速機生産

MPV・小型商用車用部品のサプライヤー

2010年

MPV・24tまでの商用車・SUV・低燃費・低排出の小型セダンの生産基地

MPV・小型商用車の設計・開発の80%を担う

24tまでの商用車・SUV・低燃費・低排出の小型セダンのエンジン・変速機生産

24tまでの商用車,SUV,小型セダン向け部品のサプライヤー

2015年

MPV,SUV,低燃費・低排出の小型セダン、24t超の商用車・中型セダン・ハイブリッド車の生産基地

小型セダン・SUVの設計・開発の80%を担う

ハイブリッドシステム、統合ECUの生産

24t超の商用車・中型セダン・ハイブリッド車用部品のサプライヤー

2020年

MPV・SUV・小型セダン・24t超の商用車・中型セダン・ハイブリッド車・高級車の生産基地

中型セダンの設計・開発の80%を担う

高級車向けパワートレインの生産

高級車向けサプライヤー

2025年

インドネシアにおける自動産業発展ロードマップ

インドネシア産業政策①~自動車産業発展ロードマップ

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)インドネシア工業省資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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LCGCプログラム(Low Cost Green Car) LCEプラン(Low Carbon Emission)

主要メーカーのLCGC対象者

2013年5月大統領令2013年第41号を発令により、低二酸化炭素排出プログラム(LCEP)がスタート。免税等のインセンティブにより、環境に優しい自動車購入のハードルを下げることで普及加速を図る狙い

一方、LCEPにおいては、対象となる車種条件の規定が明確でなかったことから、自動車産業振興策LCGC(Low Cost Green Car )プログラムを追加発表。潜在的に大きな需要の伸びが期待できる比較的所得水準の低い初めての自動車購入者に対し、訴求力のある価格を備えた新規格の販売促進を図った

インドネシア自動車工業会(GAIKINDO)は、この販売振興政策を通じ、「同クラスの車両販売台数は2017年以降の新車販売において30~35%を占める可能性もある」と予想している

グリーンカー優遇政策

インドネシア産業政策②~販売振興政策

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)各社ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイは、「タイランド1.0」から始まる国家戦略に従い、ステージに応じたターゲットを軸に、産業振興を推進。その結果、段階的に着実な成長を実現し、ASEANにおけるリーディングカントリーとしての位置付けを確立

タイランド3.0までの施策により、一定のGDP水準の確保には成功した一方、近年における経済成長率は停滞気味の状況が継続(中所得国の罠)

「中所得国の罠」を乗り越え、更なる経済発展に向けた飛躍を図るべく、産業の高度化を図る重点産業10業種を設定

タイの経済開発モデルの変遷

農耕・家内工業を中心とした経済基礎構築タイランド1.0タイランド1.0

タイランド2.0タイランド2.0

工業化

軽工業・輸入代替・廉価な労働力を活用

グローバル化

タイランド3.0タイランド3.0 重工業・輸出促進・海外からの直接投資

中所得国の罠・環境負荷の不均衡・所得格差等の課題解決に向けた新たな国家戦略を策定 ⇒ タイランド4.0

中所得国の罠・環境負荷の不均衡・所得格差等の課題解決に向けた新たな国家戦略を策定 ⇒ タイランド4.0

日系企業の投資支援により、経済成長をサポート日系企業の投資支援により、経済成長をサポート

Thailand 4.0 [産業の高度化・高付加価値化]

タイランド4.0における10の重点産業

タイ政府が奨励する10の重点産業は、①次世代自動車、②スマートエレクトロニクス、③メディカル&ウェルネス・ツーリズム、④農業・バイオテクノロジー、⑤先進的な食品、⑥ロボット工学、⑦医療ハブ、⑧航空・ロジスティクス、⑨バイオ燃料・バイオ化学、⑩デジタル

①~⑤の既存の有望産業(Sカーブ産業)の強化、⑥~⑩の次世代産業(新Sカーブ産業)の育成により、産業の高度化・高付加価値化を目指す

タイ国家政策①~「タイランド4.0」戦略

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)MHCB Consulting (Thailand)資料・BOI・各種報道より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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近時GDP成長が低調である中、中進国の罠を回避し、「長期的に持続可能な成長」達成に向け、産業の高付加価値化・技術革新が牽引する高度経済成長を目指す国家戦略 今後20年をかけて価値創造経済を推進していく国家開発戦略であり、投資主導型転換ロードマップに沿った成長を図る

空港・港湾を始めとした物理的なものに留まらず、知的・社会分野も視野に入れた総合的なインフラ開発・重点産業の開発等を、様々な政府支援および国際的連携・協力を用いつつ推進する計画

タイランド4.0の推進エリアとして、首都バンコク東部の3県を対象エリアとする「EEC(Eastern Economic Corridor、東部経済回廊)」開発PJは、タイランド4.0の主柱の1つ

経済成長イメージタイの経済開発モデルの推移

重点産業の開発実現による持続的成長へ

タイ国家政策②~「タイランド4.0」戦略

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)MHCB Consulting (Thailand)資料・BOI・各種報道より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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東部臨海地域のチョンブリ・ラヨン・チャチュンサオの3県に跨る地域特化型開発計画であり、予算・エリア・面積ともにASEAN最大規模の投資プロジェクト

東西経済回廊・南北経済回廊の中心に加え、インド洋・太平洋・CLMV諸国と中国南部を結ぶ域内連結性、既往の東部沿岸地域における成功実績等を勘案し、戦略的立地として選定

10の重点産業の集積、産業の拡大を見込んだインフラ開発、新都市開発を行い、タイランド4.0の実現を図る

当初5年間で、同地域に1兆5,000億バーツ以上の投資を官民で行い、地域の更なる発展を図る

チャチュンサオ

チョンブリ

ラヨン

EEC対象エリア EECの開発計画

新都市・病院

4,000億バーツ(115億米ドル)

観光

2,000億バーツ(57億米ドル)

高度産業誘致

5,000億バーツ(140億米ドル)

高速道路

353億バーツ(10億米ドル)

複線鉄道

643億バーツ(18億米ドル)

高速鉄道

1,580億バーツ(45億米ドル)

レムチャバン港

880億バーツ(25億米ドル)

マプタプット港

101.5億バーツ(3億米ドル)

ウタパオ国際空港

2,000億バーツ(57億米ドル)

タイ国家政策③~「EEC」プロジェクト

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)BOI・各種報道より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイでは自動車産業に関わる政策として、工業省とタイ自動車研究所(Thailand Automotive Institute:TAI)が5年間のマスタープランを策定。具体的な推進施策は、タイ投資委員会(BOI)や科学技術環境省などと連携して推進

過去2002年は「アジアのデトロイトとして自動車産業の集積」、2007年には「ASEANの生産ハブ」、2012年には「グローバル生産ハブ」といったビジョンを設定し、自動車生産拡大を図ってきた

特に2012年からは、付加価値の創出と競争力強化に不可欠な要素として自動車の研究開発分野における技術移転や

開発拠点の集積に注力。自動車業界は技術開発のスピードが速いことに加え、環境や安全基準への充足が今後さらに重視されることから、研究やテスト技術の取り込みが持続可能性におけるキーファクターと位置づけられている

第1次マスタープラン(2002-2006年)第1次マスタープラン(2002-2006年) 第2次マスタープラン(2007-2011年)第2次マスタープラン(2007-2011年) 第3次マスタープラン(2012-2016年)第3次マスタープラン(2012-2016年)

「Detroit of Asia」・自動車産業の発展・集積・1トンピックアップの生産・輸出拠点化、関連コンポーネントの国産化推進

・ 通貨危機からの早期脱却

・2006年までに自動車生産100万台(目標は2005年に前倒しで達成)

・法人税優遇等の恩恵付与・FTA拡大により輸出市場へのアクセス改善

「世界市場への輸出拡大を軸に自動車産業の発展を目指す」・基本方針は第一次マスタープランと同様

・部品拠点としての発展を目指す

・2010年に自動車生産200万台(内100万台を輸出)に伸ばす

・Eco Car政策(投資恩典、物品税減税)

「グローバルな環境車生産拠点としての成長を目指す」・ 2021年までに持続的な自動車産業の発展

・高付加価値を創出できるサプライチェーン育成

・自動車生産能力を2017年に300万台まで伸ばす

・Eco Car政策第2弾・新物品税制の導入

ビジョン

目標

施策

ビジョン

目標

施策

ビジョン

目標

施策

タイ産業政策①~自動車産業マスタープラン

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)TAI資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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2017年からの第4次マスタープランでは、タイの国家戦略「タイランド4.0」の基本方針である産業の高度化に則り、10年後のビジョンとして、電気自動車や次世代自動車の生産拡大およびR&D機能強化を掲げている

次世代自動車は、「タイランド4.0」においてタイ政府が重点産業として掲げる10業種の一つであり、タイ投資委員会は税制面インセンティブを付与し、政府は主要完成車メーカー及びベンチャー企業に投資を呼びかけている

タイランド4.0インダストリー4.0次世代自動車

タイランド4.0インダストリー4.0次世代自動車

ビジョン2027 “タイは、高付加価値な経済を創出し、世界におけるエコカーのR&D拠点となる”

①テクノロジー、R&D

イノベーション

④市場

開発推進機関

開発推進機関

政策・政府協力

政策・政府協力

グローバルパートナーシップ・連携

グローバルパートナーシップ・連携

ICE (ガソリン、ディーゼル).国際基準、軽量化、エンジン効率、.CO2排出量削減、生産性次世代自動車.エンジン・モーター効率、最先端技術.ソフトウェアアプリケーション.バッテリー、充電ステーション

②HRD4.0高度スキルの強化開発知識と社会への普及R&D, 開発能力

デジタル化による国際マネジメントシステム

グローバルサービスソリューション

⑥ロジスティックス/マネジメントセンター

ITインテリジェンスビックデータマネジメント. 財務管理

⑤サプライヤー

技術移転R&D, 設計機能オートメーションSMEsスタートアップ

③教育・研究

.最先端技術に対する教育インダストリー4.0に向けたマネジメントシステムに対する教育アカデミックアライアンス

タイ産業政策②~第4次自動車産業マスタープラン

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)TAI・BOI ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 108: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

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工業省とタイ自動車研究所(TAI)は、2012年に金属技術センター(MTEC)や科学技術開発局 (NSTDA)、化学技術環境省と連携し、共同研究や技術開発に関する枠組みとして、テクノロジーロードマップを策定

本ロードマップは短期計画・中長期計画・長期計画の3パートで構成されており、各施策により研究開発やエンジニアリグ拠点の設立と拡大を推進している

まずは完成車メーカーのR&D部門を呼び込むことで、ASAENにおける研究開発、エンジニアリング拠点というイメージを確立し、それに続いて大手部品メーカーの研究開発センターの進出を通じて、ASEANにおける技術分野のリーダーというポジションを構築する狙い

短期計画 <2012-2014年> 中長期計画 <2015-2018年> 長期計画 <2019-2021年>

ターゲット

業界構造ASEANの中核的生産拠点化とR&D能力に対する強化と持続

ASEANにおけるR&Dハブへの拡大 世界的な開発プロジェクトに参画

車種・エンジンシステム

ICEシステム(ECUによる電子制御)

- ハイブリッド

- - 燃料電池

部品

エクステリア

軽量化 エレクトロニクス化 多機能化インテリア

ブレーキ・サスペンション

電装品 総合ソフトウェア EMC モーター駆動

生産 QCDEE(品質・コスト・納期・環境・為替) 部品設計 システムデザイン

施策

R&D インターコネクション(安全性・エネルギー・環境対応)・現地化

ユーザーへの快適さ追求・リバースエンジニアリング・バッテリー・モーター

バイオ素材

知識・インフラ・相互交流 R&Dセンター 中核的研究機関 知識、情報共有センター

方針・基準 HRD(人的資源開発)-インフラ拡充-インセンティブ

タイ産業政策③~自動車技術に関わる政策ロードマップ

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)TAI・BOI ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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192 170 227 230 347 360

672 631

370 299 280

423 383 311 248

347 327

593 529

372 328 333

67 78 77

71

106 106

171 171

140 173 156

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

乗用車 商用車(1トンピックアップ) 商用車(その他)

109

タイでは2011年に国内内需の拡大のための消費刺激策として、新車購入時税還付制(ファーストカー減税プログラム)を実施

2012年12月末の申請期限まで、タイ国内の新車販売台数は過去最大の140万台超まで拡大した 一方、需要の先食いにより2013年以降の国内新車販売台数は伸び悩むとともに、家計債務が増加し消費者の購買力

低下を招く結果にもつながった

ファーストカー減税政策概要 タイ国内自動車販売台数推移

(単位:千台)ファーストカー減税政策に

より、2012年の国内新車

販売台数は、前年比180%に増加

新車購入時税還付制(ファーストカー減税)

経緯 2011年9月インラック政権下、公約で掲げて

いた消費刺激策「新車購入時税還付制(ファーストカー減税)」を実施

期間 2011年9月~2012年12月末

条件 自動車を初めて購入する21歳以上タイ国籍

の国民 5年間の転売禁止期限あり

対象車種 排気量1,500cc以下の乗用車、ピックアップ

トラック、ダブルキャブ

インセンティブ 自動車物品税を最大10万バーツまで全額

還付

タイ産業政策④~販売振興政策

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)TAI資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアにおける投資優遇制度

インドネシアでは、2007年4月26日付法律第25号の投資法(第18条)により特定の条件を満たす事業に対する優遇措置を制定(現状では、日系企業が本法律による優遇措置を受けるケースはほとんどない)

その他の外資企業に対する奨励政策として、下記のような各種優遇措置が存在する

条件 優遇措置

多くの労働者を雇い入れる

高い優先分野に含まれる

インフラ開発を含む

技術移転を実施する

先駆的な事業を実施する

辺境地、後進地、境界地域またはその他必要とみなされる地域への投資

自然環境保護の維持を行う

研究開発、革新活動を行う

零細・中小企業または協同組合とパートナーシップを締結する

国産の資本財、機械または設備を利用

一定期間内に実施した投資額に応じて一定レベルまで課税所得を引き下げ

国内で生産できない生産に必要な資本財、機械又は設備の輸入にかかる関税の免除又は軽減

一定期間及び一定条件において生産に必要な原材料又は補助財の関税の免除又は軽減

国内で生産できない生産に必要な資本財、機械又は設備の輸入にかかる付加価値税の一定期間内の免除又は留保

減価償却又は減耗償却の加速

特に特定地域に立地する特定分野に対する土地建物税の軽減

新投資法による優遇 各種優遇措置

1. 特定の投資に対する法人所得税一時免税(タックスホリデー) 〔財務大臣規定2015年第159号〕

2. 特定業種・地域への投資に対する法人所得税便宜(タックスアローワンス) 〔政令2016年第9号〕

3. 保税区 〔財務大臣規定2013年第120号〕

4. 税制上の優遇措置 〔財務大臣規定2015年188号〕

5. 自由貿易地域・自由貿易港 〔政令2012年第10号〕

6. 経済統合開発地域(KAPET)に所在する企業への優遇措置 〔大統領令2000年第20号〕

7. 経済特区 〔2009年第39号経済特区法〕

インドネシア投資優遇制度①

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO ホームページ・JJC資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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自動車産業に関わる奨励政策

自動車産業においては、保税区・自由貿易区・経済統合開発地域(KAPET)など地域に関わる奨励政策を利用可能 一方、奨励政策の対象地域は、下記の通りジャワ島以外の地域が中心となっている

地域 主な優遇措置

保税区(KB)(原則工業団地に所在)例:Kawasan Berikat Nusantaraなど

原材料や資本財などの輸入にかかる関税免除、その他輸入にかかる諸税免除 輸入手続を経ず国内保税区域内の他企業へ製品供給可能。この際、付加価値税なども免除 保税区域外の下請工場に加工に出す場合、製品を引き取り時の付加価値税等免除

自由貿易地域・自由貿易港 輸入関税、付加価値税免除(対象地域からインドネシア国内に持ち込まれる物品を除く)

経済統合開発地域(KAPET) 製造活動に直結する資本財、原材料、その他機器の輸入に対し、前払い法人所得税(PPh22)免除 所得税における減価償却および割賦弁済期間の短縮 課税年度翌年から継続的に最長10 年間の繰越欠損 所得税法第26 条に定めた配当金に対する所得税の50%免除

経済特区 所得税便宜、輸入関税の留保、輸入にかかる諸税の不徴収、地方税・課徴金の減免、土地や各種許認可などにおける便宜供与

【経済特区】 【自由貿易地域・自由貿易港】 【KAPET(経済統合開発地域)】

ナツナ島(リアウ州)ビアク(パプア州)バトゥリチン(南カリマンタン州)ササンバ(東カリマンタン州)サンガウ(西カリマンタン州)

マナド・ビトゥン(北スラウェシ州)ムバイ(東ヌサトゥンガラ州)パレ・パレ(中部スラウェシ州)

セラム(マルク州)ビマ(西ヌサトゥンガラ州)バトゥイ(中部スラウェシ州)

ブトン、コラカ、クンダリ(東南スラウェシ州)

カハヤン、カプアス、バリト(中部カリマンタン州)サバン(アチェ特別州)

インドネシア投資優遇制度②

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)JETRO・BKPMより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアにおいて、日系自動車メーカーはジャカルタから東に位置する工業団地に多く進出しており、自動車生産の一大拠点となっている

一方で、ジャカルタ周辺以外にはほとんど進出していない

(ご参考)主要日系自動車メーカーの進出地域

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)各社ホームページ等より PT MHCT Consulting Indonesia作成

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タイではタイ投資委員会(Thailand Board of investment :BOI)により、全7分野120業種以上の事業に対して投資恩典制度が定められている

BOIの対象業種は、業種分類(グループ)に応じた基本恩典と追加恩典が定められており、税務恩典に加え、外資企業によるマジョリティ出資や土地保有を可能とした税制以外の恩典も享受することができる

グループ 法人所得税免除機械

輸入税免除

輸出向け

生産用原材料輸入税免除

税制以外の恩典

A1 国の競争力を向上させる、デザインや、研究開発(R&D)に主眼を置いたナレッジベースの事業

8年間(上限なし)+メリットによる追加恩

○ ○ ○

A2国の発展に貢献するインフラ事業、タイ国内の投資が少ないか、またはまだ投資が行われておらず、付加価値の創出に高度技術を使用する事業

8年間+メリットによる追加恩典 ○ ○ ○

A3 既にタイ国内に生産拠点が少数あるものの、国の発展にとって重要な高度技術を使用する事業

5年間+メリットによる追加恩典 ○ ○ ○

A4技術がA1-A3ほど高度でないものの国内原材料の付加価値を高め、サプライチェーンを強化する事業

3年間+メリットによる追加恩典 ○ ○ ○

B1 高度技術を使用しないものの、バリューチェーンにとって重要な裾野産業

競争力向上のための追加恩典と、地方分散のための追加恩典(一部業種)

○ ○ ○

B2 高度技術を使用しないものの、バリューチェーンにとって重要な裾野産業

- - ○ ○

タイ投資優遇制度①

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)BOI ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイにおける自動車産業に対する投資奨励制度例

タイ投資奨励制度では、自動車産業に対し完成車製造に加え各部品ごとの恩典あり さらに中小企業(SMEs)向けの恩典措置や、投資エリアに対する追加恩典も設定されている

BOI No. 事業活動 グループ法人所得税免除

条件一般 SMEs[*1] EEC[*2]

4.6 一般車両製造 B1 - - -

4.7 車両エンジン製造 A3 5 年 -プロジェクトは以下5部品の内4部品以上を含む部品製造でなくてはならない。シリンダーヘッド・シリンダーブロック・クランクシャフト、カムシャフト、連結ロッド

4.7 エンジン組立て A4 3 年 - -4.8.1 ハイテク技術による車両部品製造

4.8.1.1 触媒コンバーター用基盤 A2 8 年 - 4.8.1.2 電子燃料噴射システム A2 8 年 - 4.8.1.3 自動車変速機 A2 8 年 - 4.8.1.4 電子制御装置 (ECU) A2 8 年 - 4.8.2 自動車安全性・省エネ部品の製造

4.8.2.1 アンチロックブレーキシステム (ABS) または電子制御力配分装置 (EBD) A2 8 年 -

4.8.2.2 電子安定制御l (ESC) A2 8 年 - 4.8.2.3 回生協調ブレーキ A2 8 年 - 4.8.2.4 アイドリングストップシステム A2 8 年 - 4.8.2.5 自動緊急ブレーキシステム A2 8 年 - 4.8.3 ハイブリッド車、充電式電気自動車(BEV)、プラグイン電気自動車(PHEV)の製造

4.8.3.1 電池 A2 8 年 - 4.8.3.2 走行モーター A2 8 年 - 4.8.3.3 エアコンシステム A2 8 年 - 4.8.3.4 バッテリーマネジメントシステム(BMS) A2 8 年 - 4.8.3.5 駆動制御装置(DCU) A2 8 年 - 4.8.3.6 車載型充電器 A2 8 年 - 4.8.3.7 ソケット/入口継手 A2 8 年 -

[*1]SMEに対する条件:1. 投資額(土地代および運転資金を除く)

:50万バーツ以上2. タイ人個人の出資比率:51%以上3. 負債資本比率:3対1以下4. 1,000万バーツ以下の国内調達中古機械の

使用も許可されるが、プロジェクト全体で機械総額の50%以上が新品であること。

5. 事業全体の固定資産純額(土地代および運転資金を除く):2億バーツ以下

[*2]東部経済回廊: 東部経済回廊の投資奨励措置に基づき、5年間の法人所得税50%の減税が適用

1. 対象事業はチャチュンサオ県、チョンブリー県、ラヨーン県から成る東部経済回廊に位置すること。

2. 2. 奨励対象事業は法人所得税に関する恩典を受ける権利が失効した日から5年間、対象事業活動より生じた純利益の50%の法人税減税が認められる。

タイ投資優遇制度②

3-4.規制・投資優遇に関する現状

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BOI No. 事業活動 グループ法人所得税免除

条件一般 SMEs[*1] EEC[*2]

4.8.3.8 DC/DCコンバータ A2 8 年 - 4.8.3.9 インバータ A2 8 年 - 4.8.3.10 携帯型電気自動車充電器 A2 8 年 - 4.8.3.11 電気回路ブレーカー A2 8 年 - 4.8.3.12 電気自動車スマート充電システム A2 8 年 - 4.8.3.13 商用電気自動車の前部/後部シャフト A2 8 年 - 4.8.4 自動車用ゴムタイヤ製造* A2 8 年 8 年 4.8.5 以下を含む燃料装置の製造

4.8.5.1 燃料ポンプ A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.5.2 インジェクションポンプ A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.5.3 インジェクター A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.5.4 燃料パイプ/チューブ A4 3 年 5 年 -4.8.6 以下を含むトランスミッションシステム部品の製造

4.8.6.1 サンギア A3 5 年 7 年 4.8.6.2 リングギア A3 5 年 7 年 4.8.6.3 シフトギア A4 3 年 7 年 4.8.6.4 トランスファーケース A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.5 トルクコンバーター A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.6 キャリアー A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.7 プロペラシャフト A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.8 ドライバーシャフト A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.9 ユニバーサルジョイント A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.10 ディファレンシャル A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.6.11 トランスミッションケース A3 5 年 7 年 4.8.7 以下を含むエンジンシステム部品の製造

4.8.7.1 ターボチャージャー A3 5 年 7 年 プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.7.2 タービンブレード A4 3 年 5 年 -4.8.7.3 タービンハウジング A4 3 年 5 年 -4.8.7.4 ベアリングハウジング A4 3 年 5 年 -4.8.7.5 シリンダーヘッド A4 3 年 5 年 -4.8.7.6 シリンダーブロック A4 3 年 5 年 -4.8.7.7 クランクシャフト A4 3 年 5 年 -4.8.7.8 カムシャフト A4 3 年 5 年 -4.8.7.9 コネクティングロッド A4 3 年 5 年 -4.8.7.10 バルブ A4 3 年 5 年 -

3-4.規制・投資優遇に関する現状

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BOI No. 事業活動 グループ法人所得税免除

条件一般 SMEs[*1] EEC[*2]

4.8.8 以下を含む安全部品の製造

4.8.8.1 エアバッグ/安全ベルト A4 3 年 5 年 -4.8.8.2 エアバッグインフレーター、ガス発生器、ガス発生剤 A3 5 年 7 年

4.8.8.3 エアバッグ用部品:イニシエータ、クーラントフィルター A4 3 年 5 年 -4.8.8.4 安全ベルト用部品:インターロック、リトラクター A4 3 年 5 年 -4.8.9 ブレーキシステム部品の製造

4.8.9.1 ブレーキブースター A4 3 年 5 年 -4.8.9.2 ブレーキキャリパー A4 3 年 5 年 -4.8.9.3 ブレーキマスターシリンダー A4 3 年 5 年 -4.8.9.4 ブレーキホイールシリンダー A4 3 年 5 年 -4.8.9.5 ホイールハブ A4 3 年 5 年 -4.8.9.6 ブレーキパイプ/チューブ A4 3 年 5 年 -4.8.9.7 ブレーキセット A4 3 年 5 年 -4.8.10 サスペンションシステム部品の製造

4.8.10.1 ショックアブソーバー A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.10.2 ボールジョイント A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.11 ステアリングシステム部品の製造

4.8.11.1 パワーステアリングポンプ A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.11.2 ラック&ピニオン式ステアリング A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.12 冷却装置部品の製造

4.8.12.1 ウォーターポンプ A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.13 排気装置部品の製造

4.8.13.1 触媒コンバータ A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.13.2 排気触媒 A4 3 年 5 年 -4.8.14 空調システム部品の製造

4.8.14.1 エアーコンプレッサー A4 3 年 5 年 - プロジェクトは、BOIが承認する部品成型と組立プロセスを有すること

4.8.15 高張力鋼車体部品の製造 A4 3 年 5 年 - 引張強度(Ultimate Tensile Strength: UTS)が700MPa以上の鉄鋼を使用すること

4.8.16 車両用ボールベアリング製造 A4 3 年 5 年 - プロジェクト内でスチールボールを内製すること

4.8.17 その他の車両部品製造 - 2 年 -4.13 燃料電池の製造 A2 8 年 -

3-4.規制・投資優遇に関する現状

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BOI No. 事業活動 グループ法人所得税免除

条件一般 SMEs[*1] EEC[*2]

4.16 ハイブリッド電気自動車(HEV)及び部品の製造 - - - -

-対象事業者は総合計画書を提出し部品・原材料の現地調達を行う-対象事業者は証明書発行後3年以内に電池、走行モーター、BMS、DCU (事業4.8.3に提示)等の主要部品を1種類以上製造すること-対象となるHEVは国連規則のL、M、又はNタイプの承認を得る-申請書は2017年12月31日までに提出すること-既にエコカー計画の奨励対象となっている場合、対象事業者はHEVの製造を実際のエコカー生産の対象に含めることができる

4.17 プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び部品の製造

- 3-6 年 - -

-対象事業者は総合計画書を提出し部品・原材料の現地調達を行う-対象事業者は証明書発行後3年以内に電池、走行モーター、BMS、DCU (事業4.8.3に提示)等の主要部品を最低1種類以上製造する-対象となるPHEVは国連規則のL、M、又はNタイプの承認を得ること-申請書は2018年12月31日までに提出すること-既にエコカー計画の奨励対象となっている場合、対象事業者はPHEVの製造を実際のエコカー生産の対象に含めることができる

4.18 充電式電気自動車(BEV)及び部品の製造 - 5-10 年 - -

- 証明書発行後は以下の通りとする 1、2年目は、完成車であるBEVの輸入は免税となる 3年以内にBEVの組立が開始されること 6年以内に電池、走行モーター、BMS、DCU (事業4.8.3に提示)等の主要部品を最低1種類以上製造すること- 対象となるBEVは国連規則のL、M、又はNタイプの承認を得ること。- 申請書は2018年12月31日までに提出すること- 既にエコカー計画の奨励対象となっている場合、対象事業者はBEVの製造を実際のエコカー生産の対象に含めることができる

4.19 充電式電気バス及び部品の製造 - 3-6 年 5-8 年 -

- 対象事業者は総合計画書を提出し部品・原材料の現地調達を行うこと。- 対象事業者は証明書発行後3年以内に電池、走行モーター、BMS、DCU (事業4.8.3に提示)等の主要部品を最低1種類以上製造すること- 申請書は2018年12月31日までに提出すること

7.27 充電スタンド - 5 年 - -

- 対象事業者は設備及び部品調達計画を提出すること- 対象事業者は電気自動車スマート充電システム開発計画を提出すること- 対象事業者は1つ以上の急速充電及び4つ以上の普通充電を有すること- 対象事業者は証明書発行後3年以内にISO18000証明書を受領すること- 申請書は2018年12月31日までに提出すること

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)BOI ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイ政府は、2017年2月に「特定産業競争力強化法」を施行し、Thailand4.0政策に基づく投資奨励制度を制定。これは国の課題に対応し、従来の手段では誘致出来ないインパクトの大きい新たな投資を呼び込むためのもの

研究開発・イノベーションの促進・専門人材の育成に対する投資支援策として、下記のような恩典を付与 当制度を利用した研究開発分野に対するプロジェクトは、2017年間で20件以上の認可事例が発表されている

投資・費用の種類免税上限の

追加額

1自社、国内での外注、海外機関と共同で実施する R&D (研究開発)

300%

2技術・人材開発基金、教育機関、専門分野の訓練センター、研究機関、科学技術分野の政府機関に対する支援

100%

3 国内で開発された技術の使用ライセンス料 200%

4 高度技術研修 200%

5タイ資本比率が51%以上のLocal Supplier (国内サプライヤー)に対する高度技術研修および技術的なアドバイス

200%

6 自社、国内での外注による製品 200%

タイ R&Dセンターに対する投資優遇事例

BOIの技術分野の能力開発策(プロジェクト価値に応じた追加恩典)

最初の3年間の総売上高に対する投資・費用

追加法人税免除期間(上限金額も追加)

1 1% または > 2億バーツ 1年

2 2% または > 4億バーツ 2年

3 3% または > 6億バーツ 3年

投資・費用割合に応じた追加恩典

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)BOI ホームページ・各種報道等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイでは、タイランド4.0政策を支援するため、高技能を持つ外国人専門家を引き付けることを目的として、2018年2月1日より「スマートビザ」を開始

10種類のターゲット産業を置き、技術革新を主導することでタイ経済の高度化を目指す

対象 主な内容

SMART T

最大4年間の滞在許可 出入国管理事務局への報告が90日から1年間

に1回へと緩和(90日ルールの緩和) 再入国許可の取得必要なし

配偶者と子供の滞在許可とワークパーミットなしでの就労許可

SMART I

最大4年間の滞在許可 90日ルールの緩和 再入国許可の取得必要なし 配偶者と子供の滞在許可 配偶者のワークパーミットなしでの就労許可

SMART E同SMART I(ただし詳細条件に関して一部違いあり)

SMART S

1年間の滞在許可(その後2年以内の更新可) 90日ルールの緩和 再入国許可の取得必要なし 配偶者と子供の滞在許可 配偶者のワークパーミットなしでの就労許可

タイ 就労ビザに対する恩典事例

3-4.規制・投資優遇に関する現状

ターゲット産業は以下の10産業① 次世代自動車② スマート・エレクトロニクス③ ウェルネス/メディカル・ツーリズム④ 農業/生物工学⑤ 食品⑥ オートメーション/ロボット⑦ 航空・宇宙⑧ バイオ・エネルギー/バイオ・ケミカル⑨ デジタル⑩ 医療

受給資格者は以下の通り SMART T:専門家(Highly-Skilled Experts/Talents) SMART I:投資家(Investors) SMART E:経営者(Senior Executives) SMART S:スタートアップ(Startup Entrepreneurs) 家族(Spouse and Children of SMART Visa holders)

ターゲット産業と受給資格者

(出所)BOI ホームページ・各種報道等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイでは、現地に進出した日系自動車メーカーとのビジネスを通じて事業拡大を行ったり、日系企業による技術指導を通じて成長した地場の自動車部品メーカーの存在感も強い

近年はタイの自動車部品メーカーによる日系企業の買収や、ASEANを超えて海外進出を行うケースもあり、日系企業の進出による地場企業育成の効果も見られる

社名 企業概要 日系企業による影響

Thai SummitGroup (TSG)

タイ最大の自動車部品メーカー。1977年バンコク都内で4輪・2輪車向けや家具向けシートの修理、生産を開始

現在ではサミット・オート・ボディ(SAB)、サミット・オートシート(SAS)などグループ会社30余社、全従業員数約15,000人、売上高3,000億バーツ超のグループ企業に成長。中国やインド、北米にも拠点を設置している

日系の技術を積極的に導入し、日系自動車向け部品生産で急拡大

さらに日系の金型技術を取り入れるべく、2009年には、自動車ボディ用の金型製造を行うオギハラを買収した

Siam Motors Group

1952年設立。当初は新車・中古車販売店としてスタートしたが、その後海外発の日産販売店になり、日産組立工場を設立

現在は、タイ最大の自動車販売会社であると共に、部品製造、建機販売も行うグループ企業に成長し、関連企業47社によるグループ売上高は2,000億バーツを超える

1960年代より、各種自動車部品製造へ事業を拡大し、日系の技術やノウハウを取り入れるべく、日本電池・リケン・NSK・カヤバ工業など積極的に合弁を設立

SomboonAdvance

Technology (SAT)

1962年設立のSomboon Spring社が前身で、アクスルシャフト・リーフスプリング・ブレーキドラムなどを製造

2005年に SATはタイ証券取引所の上場し、グループの総売高は約100億バーツ

主要顧客として三菱自動車・いすゞ・トヨタ・ホンダなどを持ち、日系ビジネスにより事業拡大

日系技術を取り入れるべく、日清紡ソムブーンオートモーティブ・ヤマダソムブーン、ツチヨシソムブーン等の合弁を多数設立し成長

タイ 外資企業進出の影響を通じた地場企業の成長事例

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)各社ホームページ・各種報道等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアとタイの産業政策を比較した場合、両国共に産業政策自体はあるものの、タイのほうがインドネシアよりも具体的な内容となっている

販売振興政策に関して、インドネシア・タイも類似した内容となっており、どちらも環境に配慮した政策となっている

投資優遇制度に関して、インドネシアでは企業が集積しているジャカルタ周辺での投資優遇はほとんどない一方、地域発展のためジャワ島以外での投資優遇は整備されている。一方、タイでは産業に対する基本恩典など、投資優遇制度は非常に充実している

分類 インドネシア タイ

産業政策国家開発計画をはじめとした各種産業政策があるが、具体的な内容を伴う政策は少ない

国家政策「タイランド4.0」に加え、工業省とタイ自動車研究会によるマスタープランのもと、販売振興や投資優遇等の政策を実施

販売振興政策

LCGC(Low Cost Green Car)プログラム:排気量など各種条件を設け、低燃費車に対する優遇税制

LCE(Low Carbon Emission)プログラム改訂版(未発表):乗用車で先進的な低二酸化炭素排出の動力をもつものに対する優遇税制

2011年には「ファーストカー減税」による販売促進政策実施 2017年からは電気自動車の販売振興を目的とした物品税

優遇開始

投資優遇制度 地域による優遇措置あり

(土地・建物税の減税、前払い法人税免除など) 保税地域優遇措置あり

業種に応じて付与される基本恩典あり(法人税免除、機会輸入税免除、ビザ・労働許可証の優遇など)

他追加恩典制度あり(競争力向上、地方分散、産業地区開発へのメリットがある場合など)

企業ヒアリング 産業政策が不明確、または周知徹底されていない 投資優遇が少なく、ジャカルタではほとんどない

ファーストカー減税は一時的な販売振興に過ぎず、長期的な政策が望ましい

投資優遇制度が多く、政府も外資企業の誘致に積極的

産業政策・投資優遇制度 比較

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-4.規制・投資優遇に関する現状

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項目 インドネシア タイ

基本恩典 なし

業種別基本恩典あり(7分野120業種以上の事

業に対し、法人所得税免除・輸出向け生産用原材料輸入税免除・税制以外の恩典などの恩典が付与)

タックスホリデータックスアローワンス

あり(ただし条件が厳しく、特定産業に従事する企業や大規模投資を行う企業など、一部に限られる)

なし

経済特区などの地域別優遇

保税区、自由貿易地域・自由貿易港、経済統合開発地域、経済特区などに区分されるエリアへの優遇制度あり(各種諸税の免除など。ただし、対象地域がジャワ島以外の地域が多く、利用している企業は少数)

地方分散や産業地区開発への恩典あり

その他

基本恩典のほか、追加恩典として上記地方分散や産業地区開発への恩典、競争力向上メリットによる恩典あり

Thailand 4.0政策に基づく投資奨励制度あり(特定産業に投資した場合の優遇制度)

投資優遇制度 比較

インドネシアとタイの投資優遇制度を比較した場合、インドネシアは優遇制度はあるものの、制度利用の条件などの制限があり、活用できるものが少ない

タイでは基本恩典などを含め、多くの企業が通常の事業を行う上で利用することができる優遇制度が充実している

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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ポイント 説明

外資規制、貿易規制による障壁あり

資本金や投資額の規定による新規進出のハードルあり。裾野産業を形成する中小企業の参入障壁となっている

原材料輸入に際しても、複雑な輸入規制や運用面の課題があり、ルールを整備することで、裾野産業における生産活動の向上ひいては輸入拡大にも繋がる可能性ある

利用可能な投資優遇・恩典制度が少ない

優遇制度自体はあるものの、現状企業活動を行う上で得られる優遇制度が少ない タイと比較した場合、タイでは輸出強化のため、BOIの投資恩典として原材料・資材の

輸入関税の優遇あり 外資企業による生産量拡大を通じた輸出競争力の強化の必要性あり タイでは、外資企業とのビジネスや技術指導による地場企業の成長あり

具体的内容の産業政策を検討する必要性あり(例:国内市場拡大)

国家開発計画など、国家が目指す姿が記載されている政策あり ただし、具体的内容を伴う政策は少数 LCGCプログラム等のグリーンカー優遇政策を通じ、同車両の販売台数は増加傾向 タイでは工業省ならびにTAI(タイ自動車研究所)がマスタープランを作成、各関連省

庁の協力の下、段階に応じた政策を実施。インドネシアにおいても同様に、官民ならびに各省庁が連携したマスタープランが必要

運用面における不透明性や複雑性あり

HSコードの事前教示制度や原産地証明書の運用に関して、不透明な部分あり

輸入ライセンスについて、品目別に必要となること、業種により輸入ライセンスが異なることなどにより複雑性が増加

運用面での明確化・簡素化にすることで、輸入コストの減少に繋がる

3-4.規制・投資優遇に関する現状

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-5.インフラに関する現状・課題・強み

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インドネシア幹線道路

3-5.インフラに関する現状

ジャワ島はほとんどの主要都市が幹線道路で結ばれているが、高速道路網はまだ全エリアでは整備されていない。一方、ジャワ島以外の島では、道路整備自体が遅れている状況

鉄道はほとんどが非電化の単線で占められており、ジャワ島以外では旅客運送をほとんど行なっていない

インドネシア道路状況①

(出所)JBIC資料・JETRO「ASEAN物流ネットワークマップ」より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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タイの幹線道路

一方、タイはほぼ全土で道路網(高速道路網)が整備されている状況

また、インドネシアには約14,000の島があると言われており、物流網・道路網の全島整備が容易に進まない

インドネシア全土

インドネシア タイ

道路舗装率 約57% 約98%

島の数 約14,000 約1,400

3-5.インフラに関する現状

インドネシア・タイ道路状況②

(出所)各種文献より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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インドネシアの海上輸送は外国貿易の約9割、国内貿易の約8割を占めるといわれ、サプライチェーンの重要な役割を担っている

世界のコンテナ取扱量トップ50内にタンジュンプリオク港(26位:ジャカルタ)、タンジュンペラク(46位:スラバヤ)が入っているものの、タイのレムチャバン港(21位:バンコク)に劣後

タンジュンプリオク港は以前から容量オーバーによる港の貨物滞留時間の長期化が問題視されていたが、2016年に新コンテナターミナルができたことにより、やや改善。また、カラワン東部のパティンバン新港を計画中であり、第1期工期が完了すればコンテナ取扱い375万TEU、自動車取扱量60万台との試算もあるが、まだ着工にも至っていない状況

世界コンテナ取扱量ランキング

タンジュンプリオク港はインドネシアにおいて最大のコンテナ取扱港であり、

港湾貨物の半分以上を取り扱う

3-5.インフラに関する現状

インドネシア・タイ港湾

順位 港 国名 TEU 増減率 順位 港 国名 TEU 増減率1Shanghai China 36,537,000 3.5 26Tanjung Priok Indonesia 5,201,118 ▲11.82Singapore Singapore 30,922,300 ▲8.7 27Colombo Sri Lanka 5,185,467 5.73Shenzhen China 24,204,000 0.7 28Lianyungang China 5,009,000 0.14Ningbo-Zhoushan China 20,620,000 6.1 29Tokyo Japan 4,629,000 ▲5.45Hong Kong China 20,114,000 ▲9.7 30Valencia Spain 4,615,196 3.96Busan South Korea 19,469,000 4.2 31Algeciras Spain 4,515,768 ▲0.97Guangzhou China 17,624,900 6.0 32Jawaharlal Nehru India 4,480,000 0.78Qingdao China 17,510,000 5.3 33Jeddah Saudi Arabia 4,188,215 ▲0.79Dubai UAE 15,592,000 2.2 34Sharjah/Khorfakkan UAE 4,142,000 9.0

10Tianjin China 14,100,000 0.4 35Felixstowe UK 3,980,000 ▲2.911Rotterdam Netherlands 12,235,000 ▲0.5 36Manila Philippines 3,975,747 4.312Port Klang Malaysia 11,890,000 8.6 37Port Said Egypt 3,850,000 ▲2.813Kaohsiung Taiwan 10,264,420 ▲3.1 38Santos Brazil 3,779,999 2.614Antwerp Belgium 9,654,000 7.5 39Taicang China 3,760,000 21.215Dalian China 9,450,000 ▲6.7 40Savannah US 3,737,400 11.716Xiamen China 9,182,800 7.1 41Colon Panama 3,577,427 8.817Tanjung Pelepas Malaysia 9,120,000 7.0 42Seattle/Tacoma US 3,529,084 4.018Hamburg Germany 8,821,481 ▲9.3 43Dongguan/Humen China 3,362,657 16.319Los Angeles US 8,160,457 ▲2.2 44Piraeus Greece 3,330,000 ▲7.120Long Beach US 7,192,066 5.4 45Ambarli Turkey 3,220,506 ▲7.721Laem Chabang Thailand 6,780,000 3.0 46Tanjung Perak Indonesia 3,120,683 0.522New York/New Jersey US 6,372,000 10.4 47Balboa Panama 3,078,101 ▲4.923Yingkou China 5,922,000 5.5 48Marsaxlokk Malta 3,064,005 6.824Ho Chi Minh City Vietnam 5,788,084 7.8 49Vancouver Canada 3,054,467 4.925Bremen/Bremerhaven Germany 5,300,000 ▲8.6 50Tanger Med Morocco 2,964,324 ▲3.8

(出所)Containerisation International Top100 Container Ports2016より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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128

首都交通に関して、インドネシアはようやく第一区間のMRTライン工事中・第一区間の一部LRTライン工事中

MRT第一区間は2019年初頭、LRT第一区間の一部は2018年8月の開業を目指しているが、MRTは13駅15.6kmのみ・LRTは4駅5.8kmのみであり、第二期・第三期拡張が進んで行かない限りは、大きなモーダルシフト(輸送手段の転換)は起こりづらい状況

ジャカルタのMRTライン(現在:第1区間建設中) ジャカルタのLRTライン(現在:第1区間の一部建設中)

3-5.インフラに関する現状

インドネシア:ジャカルタ首都交通①

(出所)各種文献より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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129

バンコクのBTS/MRTライン(運行中)

一方、バンコクは既にBTS/MRT合計で計5路線77駅、線路総距離109.6kmで運行中

これに加え、2018年にはBTSの新駅4駅、2019年にもさらに4駅完成予定であり、MRTも2019年に延伸が計画されている

これ以降もさらなる延伸が計画されており、2029年には線路総距離が現在の約5倍となる515kmとなるという試算もある

バンコクのBTS/MRTライン(建設中)

3-5.インフラに関する現状

タイ:バンコク首都交通②

(出所)各種文献より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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130

インドネシア、特にジャカルタ近郊の渋滞が劣悪な状況。英Castrol社が2015/2月に世界78都市を対象に行なった調査によると、ジャカルタが最も渋滞していている都市第一位になった。また、世界的な渋滞調査を行うTom Tom Trafficによると、2016年においてジャカルタは世界で三番目に渋滞が深刻な都市となった

ジャカルタ・バンコク・東京において、1,000人当たりの四輪・二輪保有台数、1㎢当たりの四輪・二輪台数を比べたところ、総じてジャカルタは過密度が高い水準であり(特に二輪)、道路の渋滞が恒常化している一因となっている

ジャカルタ・バンコク・東京の二輪・四輪および道路状況

(出所)以下統計データよりみずほ銀行国際戦略情報部作成二輪・四輪保有台数…ジャカルタ(各種報道)・バンコク(タイ国家統計局2015)・東京(自動車検査登録情報協会2017/9末)人口…ジャカルタ(中央統計局2016)・バンコク(国家統計局2015)・東京(東京都ホームページ2017/11/11集計)面積…ジャカルタ(ジャカルタ特別州資料2009)・バンコク(在東京タイ国大使館2018)・東京(国土交通省地理院2017/10/1時点)

3-5.インフラに関する現状

478 633

288

0

200

400

600

800

ジャカルタ バンコク 東京

1,000人当たりの四輪保有台数(単位:台)

1,332

391

34 0

500

1,000

1,500

ジャカルタ バンコク 東京

1,000人当たりの二輪保有台数(単位:台)

7,553

3,498

1,807

0

2,000

4,000

6,000

8,000

ジャカルタ バンコク 東京

1㎢当たりの四輪台数(単位:台)

21,054

2,161 215 0

5,00010,00015,00020,00025,000

ジャカルタ バンコク 東京

1㎢当たりの二輪台数(単位:台)

ジャカルタ・バンコク・東京 首都交通③

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国名 LPI Ranking LPI Score 通関手続きの効率度①

輸送に関わるインフラの質②

国際輸送価格競争力③

物流サービスの品質④

貨物追跡能力⑤

定時度・スケジュール達成度⑥

シンガポール 5位 4.14p 4.18p 4.20p 3.96p 4.09p 4.05p 4.40p マレーシア 32位 3.43p 3.17p 3.45p 3.48p 3.34p 3.46p 3.65p

タイ 45位 3.26p 3.11p 3.12p 3.37p 3.14p 3.20p 3.56p インドネシア 63位 2.98p 2.69p 2.65p 2.90p 3.00p 3.19p 3.46p ベトナム 64位 2.98p 2.75p 2.70p 3.12p 2.88p 2.84p 3.50p フィリピン 71位 2.86p 2.61p 2.55p 3.01p 2.70p 2.86p 3.35p ラオス 152位 2.07p 1.85p 1.76p 2.18p 2.10p 1.76p 2.68p

ミャンマー 113位 2.46p 2.43p 2.33p 2.23p 2.36p 2.57p 2.85p カンボジア 73位 2.80p 2.62p 2.36p 3.11p 2.60p 2.70p 3.30p

日本 12位 3.97p 3.85p 4.10p 3.69p 3.99p 4.03p 4.21p

131

World Bank による『世界競争力レポート』『国際LPI(Logistics Performance Index)2016』によると、インドネシアのインフラ・物流水準は総じてタイよりも下位となっている

世界競争力レポートにおけるASEAN主要国順位(世界137ヶ国中)

国際LPI(Logistics Performance Index) 2016におけるASEAN主要国順位およびポイント

3-5.インフラに関する現状

インドネシア・タイ物流全般

国名インフラ全体

世界競争力指数

道路 鉄道 港 空港 電気供給携帯電話普及率

固定電話普及率

シンガポール 2位 2位 4位 2位 1位 3位 23位 27位 3位マレーシア 22位 23位 14位 20位 21位 36位 28位 71位 23位

タイ 43位 59位 72位 63位 39位 57位 5位 91位 32位インドネシア 52位 64位 30位 72位 51位 86位 18位 104位 36位ベトナム 79位 92位 59位 82位 103位 90位 44位 96位 55位フィリピン 97位 104位 91位 114位 124位 92位 88位 105位 56位ラオス 102位 94位 N/A 127位 101位 75位 131位 60位 98位

カンボジア 106位 99位 94位 81位 106位 106位 52位 115位 94位日本 4位 6位 2位 21位 26位 10位 42位 9位 9

(出所)World Bankデータベースより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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№ 国名

①商品輸入にかかる時間(日数)

2014年データ

②輸入書類にかかる時間:書類審査時間含む(時間)

2015年データ

③輸入コスト(1コンテナ当たりのUSD)

2014年データ

④輸入に関する諸費用(USD)

2016年データ

日数7ヵ国中順位(短い順)

時間7ヵ国中順位(短い順)

1コンテナ当たりのUSD

7ヵ国中順位(安い順)

USD 7ヵ国中順位(安い順)

1 インドネシア 26日 7位 144時間 7位 647$ 4位 383$ 5位

2 タイ 13日 4位 4時間 3位 760$ 5位 233$ 2位

3 日本 11日 3位 3時間 1位 1,021$ 7位 299$ 3位

4 シンガポール 4日 1位 3時間 1位 440$ 1位 220$ 1位

5 マレーシア 8日 2位 10時間 4位 600$ 2位 321$ 4位

6 フィリピン 15日 5位 96時間 5位 915$ 6位 580$ 7位

7 ベトナム 21日 6位 106時間 6位 600$ 2位 392$ 6位

132

World Bank による各通関指標をまとめると、日本・ASEAN主要国比較において、インドネシアは総じて低い順位にある

特に商品輸入にかかる時間・輸入書類にかかる時間は7ヵ国中7位という状況

各通関指標の日本・ASEAN主要国比較

<World Bank IBRD-IDA(国際開発協会)による各項目の定義>

①商品輸入にかかる時間・・・輸入相手国の倉庫から仕向国の倉庫まで商品を輸入するためかかる全ての手続きに要する時間(暦日)。もしも追加費用を

支払うことにより時間が短縮されるのであれば、そちらを採用する。

②輸入書類にかかる時間・・・当該国関係機関による輸入書類に関わる全ての手続きに要する時間(輸入相手国倉庫から仕向国倉庫に到着するまで)。

③商品輸入コスト・・・輸入相手国の倉庫から仕向国の倉庫到着までの20フィートコンテナ輸入にかかわる費用。輸入にかかわる全ての費用を算入。

④輸入に関する諸費用・・・税関規則遵守に関する費用、入境時の諸検査費用、ならびに関係当局において必要な全ての費用。

3-5.インフラに関する現状

インドネシア・タイ税関

(出所)World Bank “IBRD-IDA(国際開発協会)”より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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2017年度ジェトロ調査においても、貨物到着から輸入通関手続き完了までにかかる平均日数に関して、インドネシアのほうがタイよりも長いという声が多い

3-5.インフラに関する現状

133

通関アンケート

(出所)JETRO「2017年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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2016年に他社が調査した海外ヒアリング調査においても、インドネシアにおける物流の課題が列挙されている

タイも課題はあるものの、賄賂の要求等の不透明な要求は少ない

3-5.インフラに関する現状

134

物流に関する調査

インドネシア タイ

陸上輸送 内陸輸送は道路輸送依存度が高い 国内貨物・旅客輸送の約9割を道路輸送に依存 2015/4月にネアックルン端が開通し、バンコク-プノ

ンペン-ホーチミン間の陸路輸送が短縮

海上輸送 国際・国内輸送とも海運が重要

タンジュンプリオク港(ジャカルタ)、タンジュンペラク港(スラバヤ)等の5大港がある

主要港はレムチャバン港、バンコク港、マムタプット港など。最大のレムチャバン港は7つのコンテナターミナルを有し、大型船の入港が可能

航空輸送 主要空港は、スカルノハッタ国際空港(ジャカルタ)・

ジュアンダ国際空港(スラバヤ)・デンパサール国際空港(バリ)等

スワンナプーム空港(バンコク新国際空港)は2本の滑走路を有するタイ最大の空港

商慣習 賄賂要求などの不透明な支払を要求される 特になし

インフラ

交通渋滞が深刻。ジャカルタのタンジュンプリオク港から自動車産業が集積するジャカルタ東部工業団地まで向かう高速道路が1本しかない

港湾・海運も設備が悪く、海上運賃も高い

バンコク港(タイ第二位の港)が混雑している コンテナ積卸用クレーンがよく壊れている

トラック輸送 ドライバーの質が低く、車両の整備状態も良くない 日本の共載物流、混載サービスはない ドライバーの質が低い

通関・関税

ルールが頻繁に変更される 規制変更の公布から施行までの期間が短い 通関に時間がかかる、賄賂の要求がある、HSコードの

解釈が恣意的

税関職員による恣意的な運用。税関で税収を上げようとする報奨金制度が存在し、税関職員が何かと文句をつけてくる

事前教示制度が機能していない

(出所)平成28年度経産省調査「アジア産業基盤強化等事業」より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-5.インフラに関する課題・強み

135

ポイント 説明

道路が総じて未整備 道路舗装率がタイより低く、物流網が全土に整備されていない(タイではほぼ

ほぼ全土で道路網(高速道路網)が整備されている 道路の整備状況が悪く、陥没等が多い

海上輸送が容量オーバーに近い

ジャカルタのタンジュンプリオク港が容量オーバーに近い→ジャカルタ東部にパティンバン新港建設が計画されているが、まだ未着工。

ただしパティンバン新港が開港すれば、従来タンジュンプリオク港だけであったモノの流れが変わり、渋滞緩和が期待できる

島の数が多く、インドネシア全土への輸送網整備に時間を要する

首都交通網は改善が図れつつあるも、依然として渋滞が慢性化

ジャカルタ中心部から東の工業団地にかけての高速道路が一ルートしかなく、渋滞が慢性化

自動車とバイクの道路占有面積が道路総面積を超えて交通が麻痺するグリッドロック状態と言われている(タイと比べると人口・面積当たりの二輪保有台数に圧倒的な違いがある)

そのため、タンジュンプリオク港から各工場まで1日1配送前後という企業が多く、回転率が悪いため、コストが上昇

MRT・LRTを着工中であるが、ここ数年では第一区間のみで線路距離も短いため、モーダルシフトには時間を要する。一方タイは既にBTS/MRT合計で5路線77駅、線路総距離109.6kmで運行中であり、さらなる延伸計画中

ただし、高速道路利用料支払の電子マネー化、高速道路(アウターリンク)整備等による渋滞緩和が進められている

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-5.インフラに関する課題・強み

136

ポイント 説明

通関にかかる時間が長くコストが高い

税務職員による不透明な運用が多い 不透明な商慣習

最近は、検査なしで通関できる「グリーンライン」の比率が上昇傾向ではあるものの、依然として通関にかかる時間が長くコストが高い

HSコードの解釈が恣意的 規制が急に発表されたり、公布から施行までの期間が短い

ジョコウィドド政権によるインフラ整備開発計画により、ジャワ島以外の港・高速道路・空港整備が進められている

経済政策パッケージにおいても物流整備・改善が図られている 一方でインフラ全般について改善が進められている

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-6.金融に関する現状・課題・強み

137

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3-6.金融に関する現状

138

インドネシアにおける外貨規制は主に以下の通り

インドネシアルピア建ての海外送金禁止・10万ドル以上の外貨送金時のエビデンス提出・2.5万ドル以上のルピア売りの際のエビデンス提出など、タイバーツに比べて細かい規制が存在。また2015年のルピア使用義務により、国内外貨決済は原則不可となった

これは、前ページ記載のルピア下落に歯止めをかけるべく、当局がモニタリングを強化した一環と思われる

インドネシア・タイ比較 外貨規制①

項目 インドネシア タイ

通貨 ルピア バーツ

海外送金 ルピアでの海外送金不可 外貨でも10万米ドル相当以上の場合、取引銀行

経由中銀へのエビデンス提出要 バーツ・外貨ともに海外送金自由

輸入取引 国際貿易取引で通常行なわれている方法で決済

可能 国際貿易取引で通常行なわれている方法で決済

可能

輸出取引 輸出申告書登録月後3ヶ月目の末日までに、国内

の外国為替銀行で受領することが義務付け(オフショア口座での受取不可)

輸出日から360日以内に決済

自国通貨による外貨購入 月間2.5万ドル相当を超えるルピア売却(外貨購入)

にはエビデンスが必要 実需原則

国内決済(国内自国通貨使用)

2015年のルピア使用義務により、国内外貨決済は原則不可

国内外貨決済は原則不可

(出所)JETRO資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-6.金融に関する現状

139

前ページのルピア使用義務以外にも、2014~2015年にかけて「鉱物等輸出のL/C決済義務」や「外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制」等が実施された

特に、「外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制」は全ての業種に適用されるものであり、該当企業においては、期中の事務負担(3ヶ月に一度の中銀報告)、為替ヘッジ等による追加コスト負担が発生。また、外貨建て親子ローンの際にも外部格付取得が必要となるなど(一部例外規定あり)、企業の資金調達にも制約が発生

なお、タイにおいては同様規制は存在しない

項目 インドネシア タイ

その他①

鉱物等輸出のL/C決済義務(2015)(鉱物等を輸出する際、輸入者発行のL/Cをもとに決済する必要あり)→仮にグループ会社への鉱物輸出であったとしても、輸入者のL/C発行が

必要。従来のTT送金に比べ追加のL/C発行コスト・事務負担が発生(ご参考:インドネシアみずほ銀行におけるL/C発行規定手数料0.5%/3ヶ月)

同様の規制なし

その他②

外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制(2014)(外貨債務を有する企業は、一定の通貨ヘッジ比率・ 流動性比率・外部格付取得が必要)→一定のヘッジ比率・流動性比率を満たすためには、一定の外貨負債額に

見合う外貨資産保有もしくは為替予約等によるヘッジが必要(ご参考:3ヶ月物の為替予約コスト年率約2.5%)

→外貨建て親子ローンの場合でも格付取得が必要であり(一部例外措置あり)、企業の資金調達がやりづらくなる傾向にある

同様の規制なし

インドネシア・タイ比較 外貨規制②

(出所)JETRO資料・インドネシアみずほ銀行Standard Tariffより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-6.金融に関する現状

140

為替市場については、下記の通り、インドネシアよりもタイのほうが市場が発達している

またインドネシア・タイともに為替予約は実需原則ではあるものの、インドネシアにおいては期間1年超の為替予約は流動性に乏しく、実際の取引は難しい(タイは2年程度まで可能)

そのため、企業において一年超の支払が発生した場合(例えば多額の設備投資を2年かけて分割支払等)、NDFなどの

スキームを採用しない限りは為替ヘッジすることが困難であり、将来の事業計画の算定に制約が発生する可能性あり

項目 インドネシア タイ

オフショア市場の有無(*) インドネシアルピアのオフショア市場なし タイバーツのオフショア市場あり

為替予約 可能(実需原則) 可能(実需原則)

先物為替予約期間6ヶ月程度まで流動性に懸念なし期間1年程度まで可能

期間6ヶ月程度まで流動性に懸念なし期間2年程度まで可能

通貨スワップ 期間5年までの市場取引が一般的 原則10年まで市場取引あり

通貨オプション一応市場は存在するも、流動性低く、実際の

取引は難しい 2005年の規制緩和でスキーム拡大

(*)国内銀行を介さない非居住者間の自国通貨の売買・決済を「オフショア市場」と定義

インドネシア・タイ比較 外貨規制③

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-6.金融に関する現状

141

多くの中小外資企業にとって資金調達の拠り所となる親子ローンについて、インドネシアは許可制ではないものの、中銀への事前報告および事後報告が必要(さらに親子ローンが残存する限りは中銀への定例報告必要)

そのため、緊急的な資金需要への対応に制約があることに加え、事務負担も発生

なお、タイには同様の規制はない

項目 インドネシア タイ

親子ローン 許可制ではなく事前および事後報告制ではあるが、

下記のような細かい手続きが必要となる

大きな制約となる規制なし(非居住者から居住者に対する外貨貸付に制限はない。資本や貸付は自由に国内に持ち込めるが、一定期間内に公認銀行または外貨預金口座に入金要)

インドネシア・タイ比較 外貨規制④

インドネシアにおける親子ローン手続概要

親子間契約

中銀への事前報告

送金

中銀への事後報告

会社登録用紙の取得中銀のWebサイトへアクセス会社情報を中銀宛Emailで送付(2015年3月6日中央銀行回状(Surat Edaran,17/4/Dsta)

インドネシア国内銀行への送金

長期(1年超)・短期(1年以内)ともに中銀報告が必要ローン実施翌月15日までに中銀宛にオンラインで報告実施毎年3月15日までに、借入計画を報告(修正報告は7月1日まで)毎年6月15日、12月15日までに、借入会社の財務情報を報告

(出所)JETRO資料・インドネシア中央銀行発表資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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3-6.金融に関する現状

142

項目 インドネシア タイ

外部格付(S&P長期)2017/12月現在

BBB-(安定的) A-(安定的)

外部格付(Moody’s)2017/12月現在

Baa3(ポジティブ) Baa1(安定的)

政策金利 4.25%(7日物リバースレポ金利) 1.50%(翌日物レポ金利)

CPI(消費者物価指数) 3.61%(2017/12月単月) 0.67%(2017年速報値)

GDP成長率 5.1%(2017/12月推計値) 3.71%(2017/10推計値)

外貨準備 1,302億ドル(2017/12/29時点) 1,961億ドル(2017/12月)

貿易収支 +118億ドル(2017年) +139億ドル(2017年)

経常収支 ▲170億ドル(2017/10月推計値) +482億ドル(2016年)

対外債務 3,472億ドル(2017/11時点) 1,483億ドル(2017年3Q)

対外債務の対GDP比 34%(2017/11時点) 40.6%(2017/10月推計値)

(出所)各種資料より みずほ銀行国際戦略情報部作成

(ご参考)インドネシア・タイにおける財務指標

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3-6.金融に関する課題・強み

143

海外送金・両替時のエビデンス提出 実需原則を徹底するため止むを得ない部分はあるものの、事務負担が大きい

ルピア使用義務 LME取引等ドルベースの商品においても国内ルピア決済が義務付けられる結果、

企業に新たな為替リスクが発生

鉱物等輸出のL/C決済義務 対象企業に新たなコスト負担(L/C発行コスト)・事務負担発生

外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制 為替ヘッジ(為替予約等)による追加コスト発生 期中の事務負担(3ヶ月に1度の中銀報告) 外貨建て親子ローン時の外部格付取得など、企業の資金調達に制約

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

厳しい外貨規制 対外外貨債務規制・ルピア使用義務など、急に施行されるものが多く、対応が困難

規制の細則が出ておらず判断に困る場合が多い。当局に照会しても、担当官によって見解が一致しないケースがある

ポイント 説明

(以下、主な外貨規制)

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3-7.情報整備に関する現状・課題・強み

144

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145

情報整備環境不十分

HSコード別貿易データ(インドネシア統計局)

• 加工可能データにて取得不可

英語表示不十分

• 税関ホームページ・INTR(Indonesia National TradeRepository)・BKPM・国税総局・商業省など

整備環境良好

GAIKINDOによる自動車関連データの整備

• 現状pdfでの表示のみとなっているため、加工可能データとなればより

便利

BKPM日本語サイト

• インドネシアの環境や進出の際の手続など、基礎的情報が日本語で

整備されており、日系企業にとっては非常にポジティブ材料となる。一

方で、必要ライセンス等がわかるようになればさらに便利

INTR(Indonesia National Trade Repository)• HSコード別の規制等が一覧化されるため便利だが、使用しづらい

国税総局

• 税法施行に係る税関連法規が検索可能だが、英語表記がなく不便

商業省

• 日本語表記が一部あるものの、整備不十分

全般的にインドネシアの各種情報取得が困難

加工可能データ(Excelなど)での取得ができないこと、サイトがインドネシア語のみでしかないこと、継続的なデータが整備されていないことなど、各種要因がある

日系企業からも、取得したいデータが無いなどの声あり

一方、インドネシア自動車協会(GAIKINDO)の自動車市場関連データはセグメント別に詳細に整備されている

企業ヒアリング

日本親会社から資料の提出を求められたとしても、定量的なデー

タがない

経済政策パッケージで言語の英語化が進められており、以前より

英語のデータを取得しやすくなった

3-7.情報整備に関する現状

インドネシア情報整備状況例

(出所)各種政府機関・協会ホームページ・ヒアリング等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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146

インドネシアが前ページのような状況である一方、タイは基本的に情報が充実している

タイではサイトの英語表示が充実しており、インドネシアよりも情報は取得しやすいと言える

また、前ページ記載の情報以外に、タイでは企業の財務情報を有料で取得することができ、投資家目線から必要とされる情報についても取得可能な一方、インドネシアでは上場企業以外財務情報を取得することが難しい

タイとの比較

HSコード別貿易データ

• タイではHSコード別に加工可能データでの取得が可能

他政府機関系サイト

• タイでは原則政府機関系サイトに関しては英語での表示

可能

企業の財務情報

• インドネシアでは証券取引所から上場企業のみデータを

取得することができるが、非上場企業に関するデータの取

得は非常に困難。一方、タイでは有料であるものの、商務

省のデータベースから、株式会社であれば上場・非上場に

関わらず、情報を取得することができる

Harmonize System(タイ商業省)により貿易データを取得可能

DBDタイ企業の財務情報の取得可能

3-7.情報整備に関する現状

インドネシア・タイ比較 情報整備状況

(出所)タイ商務省ホームページ・DBDホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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147

ポイント 説明

貿易データが加工可能ファイルで取得できない データの集計期間に限りがある

貿易データを加工しにくいこと、データの集計期間に偏りがあることから、企業が事業策定を行う際に必要なデータを取得することが難しい

インドネシア企業の財務データを取得することが困難 投資家にとってインドネシア企業の財務情報が取得できないため、実態が

わかりにくく、インドネシア市場への参入のハードルとなっている

一部サイトではHSコードごとの規制やライセンスが一覧化されている

INTRではHSコードごとの規制やライセンスを簡単に調べることができ、企業はあらかじめ対応することができる

BKPM日本語サイトが充実している 特にインドネシアへの進出を検討している日系企業にとって、基本的な情報を日本語で入手することができることが大きなメリット

各省庁のサイトにおいて英語表示されている部分に限りがある

英語表示に限りがあり、サイトを進むとインドネシア語表示のみとなり、日系企業含む外資企業にとって必要な情報を探すことが困難となる

3-7.情報整備に関する課題・強み

(出所)現地ヒアリングより みずほ銀行国際戦略情報部作成

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4.産業人材の現状と、育成の課題

148

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4-1.教育制度・教育機関の現状・課題・強み

149

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4-1.インドネシアの教育制度概要①

150

教育制度は、初等教育6年・中等教育前期3年・中等教育後期3年・高等教育(大学)4年の6・3・3・4制 中等教育後期から学術教育と職業教育に分かれる。なお、2014年度から中等教育後期は義務教育化

2012年の大統領令によりインドネシア資格枠組み(IQF)が導入されており、教育・職業訓練の到達段階を9つ階層に分け、得られた能力に対する基準が設けられている

1 2 3 4 5 6 7 8 9

初・中等教育(小学校・中学校)

普通科高校

職業訓練高校

ディプロマ4

ディプロマ3

学士

修士

博士

プロフェッション

スペシャリスト2

スペシャリスト1

学術教育

職業訓練

教育

IQFレベル

ディプロマ2

ディプロマ1

ワーカーレベルエンジニアレベル

専門家レベル

(出所)Ministry of Education and Culture, “Indonesia Educational Statistics in Brief 2015/2016”・OECD/ADB, ”Education in Indonesia”,2015・独立行政法人大学評価より みずほ総合研究所作成

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4-1.インドネシアの教育制度概要②

151

中等教育後期における職業教育を担う職業高校(SMK)が、製造業におけるワーカーを輩出する

ポリテクニック(以下、ポリテク)・アカデミー・コミュニティカレッジといった職業教育を専門とする高等教育機関は、ワーカーに加えてエンジニアを輩出する

また、大学・専門大学・単科大学といった高等教育機関は、エンジニアや経営を担うマネジメント人材、R&Dを担う専門家を輩出する

高校(SMA) 中等教育後期において学術教育を提供する教育機関

職業訓練高校(SMK) 中等教育後期において職業教育を提供する教育機関

大学(University) 文系・理系・技術系の様々な領域において、学術教育・職業教育を提供する高等教育機関

専門大学(Institute)・単科大学(College) 文系・理系・技術系の特定の領域において、学術教育・職業教育を提供する高等教育機関。単科大学は、専門大学よりもより小規模

ポリテクニック(Polytechnic)・アカデミー(Academy)

文系や理系の複数の領域において、職業教育を提供する高等教育機関。ポリテクが3つ以上の学科を設置しなければならないのに対し、アカデミーは1つ以上の学科から設立可能

コミュニティ・カレッジ(Community College)

1つ以上の領域の職業教育を提供する高等教育機関。2012年の高等教育法で設けられた新たな学校種。IQFレベル3~4を提供する教育機関として、政府が全国に設置を計画

学校種 概要

中等教育後期

高等教育

(出所)OECD/ADB, ”Education in Indonesia”,2015・独立行政法人大学評価より みずほ総合研究所作成

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4-1.タイの教育制度

152

タイの教育制度は6・3・3・4制であり、インドネシアと同様

職業教育については、中等教育前期においてサーティフィケイト課程(3年間)が存在。後期中等教育からは職業訓練高校があり、高等教育では大学のほか職業訓練高等専門学校において職業教育が実施される

タイでは、インドネシアと異なり、中等教育前期から職業教育課程が存在する

1 2 3 4 5 6 7 8 9

初・中等教育(小学校・中学校)

普通科高校

職業訓練高校

(Diploma

学士教育

学士

修士

博士

Diplom

a

博士(Advanced

Diplom

a

修士(Graduate

学術教育

職業訓練

教育

IQFレベル相当

専門学校

職業訓練高等

※タイでは、中等教育前期において職業訓練を行うサーティフィケイト(Certificate)課程が存在する3年間のコースで課程を修了した者には、正規教育課程の中学卒業程度の認定書(Certificate)が授与される

(出所)株式会社三菱総研(2017年)「タイの産業人材育成分野への支援の評価」・Overseas Vocational Training Associationホームページよりみずほ総合研究所作成

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4-1.中等教育後期における職業教育

153

SMKの卒業生の94%が新卒で就職するため、日系企業にとってSMKはワーカーの重要な供給源である

現在、インドネシア教育文化省では、ワーカー増加のため、SMKへの進学率上昇を目指している。2014年度においてSMA及びSMKへの進学率は半々であったが、2015年度にはSMA48.6%・SMK51.4%と、SMKの進学率がSMAを上回った。教育文化省は2020年までにSMKへの進学率を60%とすることを目標としている

一方、タイは、2014年度に33.8%であった職業訓練高校への進学率は、2015年度に35.9%へと上昇したが、インドネシアの51.4%とは約15%の差がある。つまりインドネシアの方がタイよりも職業訓練高校への進学率が高い

インドネシア タイ

普通科高校48.6%

職業訓練高校51.4%

普通科高校64.1%

職業訓練

高校35.9%

2015年度の入学者数の割合

(出所)Ministry of Education and Culture, “Indonesia Educational Statistics in Brief 2015/2016”,・OECD/ADB, ”Education in Indonesia”,2015・タイ教育省(2015) “สถิติการศึกษาของประเทศไทย ปีการศึกษา 2557-2558 (Education statistics of Thailand Academic year 2014-2015)”より

みずほ総合研究所作成

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4-1.中等教育後期における職業教育

154

SMKのカリキュラムは、教育文化省傘下のSMK教育委員会が策定。一般教養科目と専門教育科目の比率は、3年コース、4年コース共に専門教育科目に重点が置かれている

しかし日系企業からは、新卒ワーカーが受けてきた教育の質が低く、自社で一から教育しなければならないなどの批判が挙がっている。(実践教育のためのツールがないことも問題視されている)

これを受けて、「SMKイニシアティブ」や「SMK活性化戦略」を開始し、現在SMKの改革を実施中

SMKイニシアティブ

SMK活性化戦略

・教育文化省が実施・資金を投入し、2020年までにより高度なSMKを1,650校設立することを目指す

・2015年時点において90校を設立

・SMK教育委員会が実施・以下の10のステップによりSMKの改革を目指す

【10のステップ】①教員の質の改善、②管理・運営の電子化、③産業界との連携強化、④カリキュラムの改編、⑤技術開発研究所、⑥映像教材と映像を使用したe-Reportシステムの導入、⑦プロフェッショナル認定試験の普及、⑧学校設備の整備、⑨地方のSMKの拡充、⑩地域の企業等との連携による地域活性化

新卒ワーカーに対する日系企業の声 2014年開始

2017年開始

・エンジニア系はなかなか集まらず、高卒でも電気関連・機械関連等の知識が不足している

・オペレータークラスは計算ができない、掃除の仕方を知らないなど、根本的に問題あり。学力が賃金に見合っていない

・ワーカーとして働く従業員は、学歴や学力といった次元ではなく、そもそも教育内容が悪すぎる

・ワーカーはほとんどスキルがないため、自ら育てた方が効率的

・大学までの教育は10年くらい遅れているのではないか・学校で培った技術が実ビジネスとはギャップがある・インドネシアの工業高校と日本の工業高校のレベルが違うため、同じだと考えてはいけない

【参考】・基礎知識を提供する機関や制度がないため、業界全体の質が上がらない

・技術学習用のテキストや工学便覧がインドネシア語で存在しない。一般的な教育資料・資格・セミナー等の教育機会がないことは問題

(出所)現地ヒアリング・各種文献より みずほ総合研究所作成

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4-1.高等教育における職業教育

155

高等教育における職業教育は、ポリテクを始めアカデミー・AKで実施される。このほか、大学・専門大学・単科大学においても専門的な職業教育が実施される

高等教育では、SMAから進学する学生が、大学またはポリテクに進学するケースが多い。一方、SMKから進学する学生は、アカデミーまたはAKに進学する割合が高い。職業教育を受けたSMKの卒業生がポリテクへ進学しないのは、入学試験が学問的能力重視の傾向にあり、技術的能力が軽視されているため。また、ポリテクに代替するAKへの進学も学問的能力を重視する傾向にある。結果として、SMK卒業生の3次教育への進路は限定的となっている

インドネシアにおける学術教育と職業教育自体の進学率は、学術教育は約80%・職業教育は約20%である。一方、タイは学術教育は78%・職業教育は約22%であり、インドネシアとほぼ同等

学術教育81%

職業教育19%

学術教育78%

職業教育22%

2014年度の入学者数の割合

インドネシア タイ

(出所)インドネシア研究・技術・高等教育省(2015) “STATISTIK PENDIDIKAN TIGGI 2014/2015 (Statistic of Higher Education)”タイ教育省(2015) “สถิติการศึกษาของประเทศไทย ปีการศึกษา 2557-2558 (Education statistics of Thailand Academic year 2014-2015)”より

みずほ総合研究所作成

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4-1.高等教育における職業教育

156

ポリテクに対しては、経験のある教員が不足している、座学中心で就職してから必要な技術が身に着けられないなど、教育内容に対する批判が挙がっている

このような問題を踏まえて、工業省は、実技中心の授業を目指すポリテクプログラムや工業団地内へのポリテク設立を進めるなど、ポリテク改革を実施中

ポリテクプラグラム

工業団地内・特別経済区域にポリテク設立

・工業省が実施

・様々な自動車メーカーと共同で自動車産業にマッチするようカリキュラムを改善する取組み

・座学中心のカリキュラムから実技を重視にシフトし、カリキュラムをより実践的なものとする

・カリキュラム改善後は、ポリテクの設備を更新。

・ポリテクニックに経験のある教師が不足しているため、自動車メーカーに対して教師をインターンシップに派遣。自動車メーカーからゲスト講師を招くなどの取組みを実施

・工業団地内及び特別経済区域にポリテクの設立を推進

・産業振興に必要な人材の養成を目指す・これらのポリテクは、全て3 in 1トレーニングシステムを導入

し、①職業訓練、②技術評価、③就業支援の三段階でトレーニングを実施予定

2015年開始

開始予定

ポリテク査察内容

・工業省傘下のポリテクは座学中心であり、実践的な内容をあまり教えられていない

・そもそも教師に産業界出身者が少ない、機械設備が整備されていない

・金型研修に使用可能なものが一通り揃っているが、一度も稼働させたことがない状態のものも多く、ほとんど活用されていない

(出所)Times Indonesia記事(2017年2月17日)・Republik Indonesia記事(2017年11月22日)・JETRO実地調査・現地ヒアリングよりみずほ総合研究所作成

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4-1.インドネシア自動車インスティテュート(IOI)

157

インドネシアでは2016年、自動車産業の競争力強化のため、工業省、大学、企業が一体となって研究機関を設立

企業に対する人材開発支援やコンサルティングを実施するほか、R&Dも実施。自動車技術専門のポリテクも所有する

現在、自動車産業における能力基準の策定を計画しているが、新設の組織であり、民間企業との連携実績に乏しい

項目 概要

組織概要・2016年5月、自動車産業の人材育成の推進のため、工業省により設立された研究機関

・インドネシアの自動車産業の競争力を強化し、自動車産業の発展のけん引役として、インドネシア自動車産業開発ロードマップを実施することを目的とする

組織構造

・主に、以下の3つの部が存在【人的資本開発部】・対象となる組織に見合った効率的な学習指導やコーチング・ソリューションを提供。無料のオンライン・ディプロマコースを開設しており、サプライチェーンについて学習するコース等を整備

【企業連携部】・ビジネスアドバイザリーサービス、製品エンジニアリングサービス、企業用ITサービス、ビジネスプロセスサービス、分

析と情報管理、クラウドサービス等を提供【エンジニアリング部】・安全性に関する研究や、エンジン等の新製品の設計と既存製品の改善、新しい生産プロセスの計画・設計を実施。ディーゼル、ガソリン、LPG、CNG等のあらゆる種類のICエンジンの設計、開発、評価を行っている

大学・企業との連携・工業省や研究・技術・高等教育省、技術評価機構(BTTP)、技術系の単科大学(Institute)、ジャカルタのポリテクニック・トヨタモーター等がメンバー

主な取組み・工業省と協力し、自動車産業の従業員に対する国内労働能力基準(SKKNI)を策定する計画

・基準は、自動車関連の川上産業から川下産業のすべてを網羅し、労働者の質と熟練度の指針になるものとの考え。海外からの労働力流入の歯止めとする狙いもある

(出所)Institut Otomotif Indonesiaホームページ・現地ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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4-1.タイ自動車インスティテュート(TAI)

158

概要

・タイが自動車産業の発展の中心となり、かつ競争力を高めるために、1998年9月に閣議決議により、政府部門と民間部門の協力のもとに設立した組織(タイ工業省所管)

・管理部門、研究部門及びR&D試験センターの3部門で構成

項目 概要

社内研修・一般企業内にて、主に品質管理システム・ファシリティマネジメント・製造開発システムの3つの研修サービスを提供

・研修は36の項目内容があり、各項目1~2日間の研修期間となっている

公開研修・研修内容は、社内研修と同じ3分野であるが、その中の14項目のみ提供・毎年、事前に研修日時及び研修の時間割を設定して参加者を募集・1コース研修費用は、2日間で1人約3,000バーツ

自動車人材開発プロジェクト(AHRDP)・研修コースは一般研修生用と指導者用の2コースが存在・一般研修生用は3~4日間の研修コースで年間4コースから7コースを実施・指導者用への参加希望者は最初に一般研修用の同講座を修了する必要あり

自 動 車 人 材 育 成 機 関 プ ロ ジ ェ ク ト(AHRDIP)

・タイ政府と日本政府間の協力プロジェクト・自動車産業および自動車部品業界の人材育成のために設立・R&Dベーシック、R&DのVA/VE、日本ものづくり(設備保全、TPM等)、テスティング(事故品分析等)品質管理、自動車のプレス型成型を日本人講師が実施

・デンソー・トヨタ・日産・ホンダ等の民間企業部門との連携プロジェクトであり、これらの大手企業の社内研修コースや実施計画を活用。自動車産業へ研修コースと技能テストを提供

人材育成実施状況

1998年という早い段階から、タイ自動車産業発展のために設立された組織

自動車専門機関として、政策の提言・コンサルティング・人材育成等の分野にサービス提供

JETROやトヨタ・日産といった民間企業との連携実績あり

(出所)株式会社三菱総研(2017年)「タイの産業人材育成分野への支援の評価」・JETROバンコク(2016年)「タイで生産活動を行うにあたり活用可能な技術・技能認証制度,人材育成スキームにかかる実態調査」より みずほ総合研究所作成

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4-1.インドネシアの産学連携事例

159

ミトラ・インダストリMM2100・2012年、日系企業の多く入居するMM2100工業団地内に

SMK「ミトラ・インダストリMM2100」を設立・丸紅と地元財閥アルゴ・マヌンガルの合弁会社が開発・運営・SMAやSMKを卒業した学生のレベルが低く、採用してから社内で研修や教育を受けさせる必要があったため設立。

・学校運営は学費の他、企業の協賛金や実習設備・機械の提供、企業からの実習講師派遣で実施

・生徒数は3学年で約1,000名・ビジョンは「産業界と教育界を結びつけること」であり、知識や技能だけでなく、態度や姿勢にも重点を置く

・カリキュラムは基礎的教育のほか、理論に関する講義・実習科目等充実。就職、進学、起業支援も行う

・教育文化省からモデル校指定を受けている・2018年1月には、亜細亜大学の生徒と交流

インドネシア企業と日系企業が合弁で、工業団地内にSMKを設立

日系企業の支援を受け、産業人材を育成

トヨタ、自動車製造の教育機関を設立

・トヨタ自動車は2015年、インドネシアで自動車製造の教育機関を設立・事業費は700億ルピア(約6億1,500万円)・教育機関トヨタ・インドネシア・アカデミー(TIA)は、西ジャワ州カラワン県に

ある現地製造子会社トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMIN)の第3工場内に設立

・1年専門学校の資格を取得する予定で、トヨタ・インドネシア財団が運営・敷地面積は1ヘクタールで、校舎や学生寮、実技訓練施設などを併設・入学はSMKの卒業生を対象とし、初年度は32人を受け入れ・将来は年間100~150人、今後10年で1,000人以上を受け入れる予定・卒業後はトヨタ・グループなどへの入社を想定。学生の学費や寮費は無料

・現場で即戦力となるため、授業では車両製造工程で使用する機器を導入。豊富な経験を持つ技能者による講義もあり、高度な技術の習得が可能

・国家職業訓練認可庁(BNSP)の国家技能検定試験への参加も検討中

・インドネシアにおける自動車産業の国際競争力の強化や東南アジア諸国連合(ASEAN)での存在感を高める狙いがある

・愛媛トヨタ自動車は2016年、インドネシアの国立職業訓練校(南スラウェシ州バンタエン県)に「自動車整備科」を設立

・3年間の整備技術指導により自動車整備士を育成・愛媛トヨタは2008年からインドネシアへの技術者派遣等を行っている

愛媛トヨタ自動車、自動車整備科を設立・いすゞアストラモーターインドネシアは2015年、コモンレール

等を含む最新のディーゼル技術を教える「いすゞ教育プログラム」を北スマトラ州メダンのSMK Mandiri Medanに開設

・同社は、2014年にジョグジャカルタ市のSMK 2 Klatenにも教育コースを開設している

いすゞ、SMKに教育コースを開設

(出所)通商弘報(2017年1月17日)「工業団地内の工業高校で産業人材を育成―日系企業が開校準備に奔走」・じゃかるた新聞(2018年1月18日)「亜細亜大の20人が交流」・じゃかるた新聞(2015年11月4日)「トヨタアカデミー設立 自動車の技能者育成 西ジャワ州カラワン10年で1,000人輩出へ」・

Akademi Komunitas Tyota Indonesiaホームページ・いすゞ(2016)CSRレポート・愛媛トヨタホームページより みずほ総合研究所作成

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4-1.インドネシアの産学連携事例

160

アストラ専門学校

・地場財閥であるアストラが1995年に設立

・設立の理念は、①卒業時にすぐにでも実践現場で働ける技術者の養成、②高校の卒業者が最も進学したくなる学校作り、③アストラのためだけの学校ではなく、インドネシアは一つ

・上記スローガンのもとに、卒業後の進路は学生の自由意思であり、必ずしもアストラ系の企業に就職する必要はない

・大学では、理論を重視した学習を実施するが、同校は、理論よりも機械等の使用方法、仕組み等の実務を重視

・3 年目にはアストラグループ企業でのインターン制度あり・インドネシア全土から入学応募がある。2011年度には2,012人の志願者があり、このうち225名が合格しており、競争率は約9倍と非常に高倍率。入学者の60%はSMK卒

・授業料は年間1,200万ルピア(約12万円)と非常に安く、学校運営経費の約3割しか授業料で賄っていない。奨学金も存在することを考慮すると、ほとんどがアストラ財閥資金での運営といえる

・日本の専門学校のノウハウに興味を示しており、教官のレベル向上やカリキュラムの改善のために提携の意向がある

Akademi Tehnik Mesin Industri (ATMI)

・1968年、スイスに本部を置くカトリック財団の資金をもとに、香港企業との共同事業で中部ジャワのスラカルタで設立

・ATMI最大の特徴は、学校に併設して実習工場を所有していること。生徒に実際の現場環境を体験させる。2直制で残業もあり、近隣の工業団地内の企業からの下請け業務を積極的に受注

・研修生は、社員から生産現場で実地研修を受ける。ビジネスユニットの受託売り上げが学校経営の資金源

・実習工場には、各種工作機械、スタンピング・マシン、金型製作ライン、CAD/CAM等が充実しており、生徒一人当たり1台の機械の所有が方針

・1年間の入学者数は80名弱。工業科、普通科から成る。少数精鋭主義で生徒数は増やさない方針。年間の卒業生は35~45名程度。殆どが企業に就職するが、一部は大学に進学

・日本との連携にも前向きであり、教授陣のレベルアップ、機械設備の更新、認定試験制度の導入(熱処理、表面処理など機械金属加工の資格)などに興味を示している

民間企業が独自に設立した職業訓練学校が存在

いずれも自社企業の経験に基づいて、実践的なカリキュラムを提供

教師陣のレベルアップやカリキュラムの改善等において、日本との連携を希望

(出所)JETRO(2013)「ASEANの産業人材育成ビジネスに関わる進出日系企業のニーズと人材育成事例」より みずほ総合研究所作成

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4-1.タイの産学連携事例

161

タイでは自動車産業において、トヨタを始めとした日系企業やドイツ等の先進国企業と産学連携を推進

トヨタの取組み

・1973年、トヨタはタイに対する教育支援及び技術移転を開始

【大学との連携】

・チュラロンコン大学工学部に自動車工学科を共同で設立。自動車技術の実験室を大学に寄付

・チュラポーン工科大学自動車工学科のワークショップ改革に貢献。学習資材やエンジンを寄贈

・クリカンゴン職業短大とプラドボス学校に自動車技術ワークショップ講座を寄贈

【トヨタ自動車技術学校】・1998年、トヨタ自動車技術学校を設立

・教育省と提携して自動車工学、車体修理、スプレー塗装に関する技術や知識の移転のため、T-TEP(TOYOTA Technical Education Program)、B&P T-TEP(Body and Paint TOYOTA Technical Education Program)プログラム及び学習用の資材やエンジンも提供

・プログラムは、自動車技術コースと自動車技術管理コースに分かれる。プログラムの主な目的は、学生が各分野でのスペシャリストになり、さらに効果的かつ効率的に問題解決ができ、戦略的な計画が立てられるマネージャーを養成すること

・学生は、良いマネージャーやリーダーになれるように、コミュニケーション及び対人スキルも教育される

ホンダの取組み

・1999年、教育省職業局と共同でアユタヤに自動車工業技術短大(Automobile Industry Technical College:AITC)を設立

・自動車産業界を支える高度な技術を持つ人材を育成する取組み・AITCは、アユタヤ地方における最初の自動車訓練施設

メルセデスベンツの取組み

・メルセデスベンツは、 Samutprakan工科短大と連携してメルセデスベンツの

電気系統や自動車機械部分の上級卒業証書レベルの学生を、デュアル職業訓練生(※)として受け入れている

・コースは修了まで約2年半、同社の専門家により工場で訓練を実施。実施訓練のほか、学生はSamutprakan工科短大の講義を受講

・学生は訓練の間、日給約200バーツの賃金を受け、特に優れた学生は認定販売店から奨学金をもらい、金銭面と住居の支援を受けることができる

・卒業後、学生は自動的にメルセデスベンツ認定販売店のアフターサービス部門に就職

※民間企業が職業訓練機関と連携して従業員に研修を行う制度。期間は通常3年間で、そのうち半分以上をOJTに費やす。企業と研修生の間で契約を交わし、研修

手当として給与が支給される。研修生は技術あるいは職業短大に入学し、職業に関係した科目を理論と実務の両面から学ぶ。企業は、従業員を通常週2日、短大のコースに通わせる。修了証書(Certificate)は、熟練労働者レベルあるいは技術者・認定レベルが授与される。

(出所)森純一(2014)「タイとベトナムにおける産業人材育成・獲得の状況」・ユニコ(2005)「タイ国自動車産業における技術人材育成プロジェクト」・OVTA(2009)「タイ」・山下(2004)「タイにおける自動車部品鉱業の発展と輸出基地化」・株式会社 三菱総研(2017年)

「タイの産業人材育成分野への支援の評価」より みずほ総合研究所作成

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4-2.産業人材の現状・課題・強み

162

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55

113

0

20

40

60

80

100

120

2015年 2030年需要予測

4-2.インドネシアにおける職業教育の位置づけ

インドネシアには、2015年時点で約5,500万人の豊富なワーカー・エンジニアが存在。しかし、経済加速・拡大マスタープラン(MP3EI)に基づくと、2030年には約1億1,300万人と、2倍超のワーカー・エンジニアが必要と試算。このため、インドネシアにおいて更なるワーカーの養成が急務

他方、インドネシアにおけて職業教育の位置づけは低い。職業教育は学術教育に劣後するものと社会的に考えられている。企業人事でも、専門技術を保有したワーカーより学位を重視する傾向

2010~2017年における製造業の雇用成長率は27.0%と、金融・不動産関連サービス業(119.1%)を大きく下回る

インドネシアの雇用成長率インドネシアのワーカーの数

2倍以上

(百万人) (%)

-0.5

62.2

13.5

37.3

19.5 28.817.8 25.5

58.7

15.7-7.3

15.327.0

99.0

47.9

31.0

-2.2

119.1

34.2

16.0

-20.0

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

140.0

農林水産業

鉱業・採石業

製造業

電気・ガス・水

建設業

卸売・小売等

輸送・通信

金融・不動産等

その他サービス

全体

2003-2010 2010-2017

163

(出所)ADB(2016) “Analysis of Trend and Challenges in the Indonesian Labor Market”・OECD/ADB, ”Education in Indonesia”,2015よりみずほ総合研究所作成

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4-2.労働人口

164

インドネシアの労働力人口は2016年時点で約1億2,500万人と、タイの約3,800万人を大きく上回る

タイが失業率が近年1.0%を下回る水準で推移するなど、国内の労働力不足が顕在化している一方で、インドネシアの労働力は依然として豊富な状況

インドネシアは合計特殊出生率も高く、これから先も労働力の供給が衰える懸念は少ない。一方、タイは、現状でも労働力が逼迫しているにもかかわらず出生率は低く、少子高齢化が懸念されており、労働力の供給に不安を残す

労働者数の推移 失業率の推移

0

20

40

60

80

100

120

140

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017インドネシア タイ

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

インドネシア タイ

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

インドネシア タイ

合計特殊出生率の推移

(百万人) (%) (%)

1.0

(年) (年) (年)

(出所)World Bank “World Development Indicator”より みずほ総合研究所作成

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4-2.生産性

165

インドネシアとタイの労働生産性は、第3次産業において大きな開きがある。一方、第2次産業については、ほとんど差がない

インドネシアの第2次産業における労働生産性は、タイに遜色ないといえる

産業分類別労働生産性の比較(産業別付加価値/従事者数) 参考:2次産業の労働生産性の比較

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

2次産業(インドネシア) 2次産業(タイ)

(USD)

(年) (年)0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

1次産業(インドネシア) 2次産業(インドネシア) 3次産業(インドネシア)

1次産業(タイ) 2次産業(タイ) 3次産業(タイ)

(USD)

(出所)World Bank “World Development Indicator”より みずほ総合研究所作成

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4-2.人材の質・確保

166

インドネシアの人材の強みは、真面目で勤勉であり、リーダーの下で技術をしっかりと吸収することである

また、ワーカークラスは自社で教育を行えばしっかり仕事をし、確保も難しくない点では日系企業から評価されている

一方、マネジメント層は質の高い人材は不足しており、確保が容易ではない。結果として、技術指導にも支障をきたしている

総合的な人材の強み

・インドネシアの強みは人柄が真面目であり、一回教えたことはやり続けること

・インドネシア人は人柄が温厚であり、トラブルが比較的少なく、丁寧に教えれば技術を吸収してくれる

・インドネシアの強みは、身近な仲間との団結力。個々の力はたいしたものではないが、リーダーシップを発揮する牽引役がいれば、力を発揮することが可能

・タイより親日国家であり、日本語人材が多いのが利点・アルファベットが読め、英語でのコミュニケーションがタイよりは取りやすい

・マネジメントクラスが足りていない状況。高い給料を出せば人材が集まってくると思われるが、コスト的に難しい

・若手に教えるスタッフがすぐにやめる。マネージャークラスはいない、責任感がない

・電気・機械設備や税務財務が分かるような特定のスキルを持っている人は少ない、もしくは給料が高い。電気・機械設備は、マシンを動かせる人はいるが、メンテできる人がいない

・3~5年ぐらいで転職する習慣があり、教えられるようになった人材もいなくなる

・現在、マネージャークラスの確保は難しく、特に技術系のマネージャーが取りにくい。日本語ができ実務経験のある人や、日本語はできないが優秀な人は、ジョブホップする

・マネージャー・エキスパートクラスは取りにくい。部長クラスは地方から採用していることもある

・特に技術系のマネージャーが取りにくい。R&D拠点があれば、サービス業に流れている優秀な人材が製造業に回帰する可能性はある

・マネージャークラスなど高スキルをもつ人材を採用できない

・ワーカークラスは契約社員で回せている・金型は時間が必要だが、溶接は技術力がある・現場のワーカーはそれほどひどくはなく、比較的しっかり仕事を

する印象・ワーカーレベルは問題ない・真面目・ワーカーレベルはすぐに集めることができる

ワーカーの確保

マネジメント層の確保

(出所)現地ヒアリングより みずほ総合研究所作成

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4-2.産業別労働人口の構成

167

131.82%

21.17%

313.18%4

0.32%5

6.56%

623.08%

74.52%

82.93%

916.42%

業種コード

1 農林水産業 6 観光関連・小売・飲食業

2 鉱業 7 流通・通信業

3 製造業 8 金融・不動産業

4 電気・ガス・水道供給業 9 公共・福祉関連サービス

5 建設 10 その他

インドネシアとタイと産業別労働人口の構成は非常に類似している。このため、タイはインドネシアにとって、良い比較対象であると考えられる

製造業のシェアは、インドネシアが約13.2%である一方、タイは約16.9%と若干タイの方が割合が大きい

131.40%

20.18%

316.85%4

0.59%5

6.63%

624.42%

73.86%

81.96%

96.02%

108.09%

インドネシア タイ

産業別労働人口構成

(出所)インドネシア統計局、タイ統計局資料より みずほ総合研究所作成

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4-2.製造業における学歴別労働人口の構成

168

インドネシアにおいて、製造業に従事する労働者のうち、大学または専門学校を卒業したのは10%以下である。一方、タイは20%近くの労働者が大学または専門学校を卒業している

インドネシアは、製造業においてマネジメント層となる人材を欠いていると考えられる

計19.33%

1.62%8.24%

23.89%

22.94%

20.49%

17.28%

1.64%

3.90%

無学歴

小学校(未卒業)

小学校

中学校卒業

普通高等学校卒業

職業訓練高校(SMK)卒業

高等職業訓練学校卒業

大学卒

計5.54%4.32%

12.37%

20.52%

21.78%

16.88%

4.81%

7.94%

11.39%無学歴

小学校(未卒業)

小学校

中学校卒業

普通高等学校卒業

職業訓練高校卒業

高等職業訓練学校卒業

大学卒

インドネシア タイ

製造業の学歴別労働人口構成

(出所)インドネシア統計局、タイ統計局資料より みずほ総合研究所作成

Page 169: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

3.98% 0.25%

13.86%

1.50%2.81%

25.20%

6.51%8.91%

18.09%

18.89%1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

4-2.大卒の就業先の構成

169

3.04% 0.87%5.69%

0.57%

2.62%

12.59%

3.27%

11.50%

59.85%

1

2

3

4

5

6

7

8

9

インドネシアは公共・福祉関連サービスに半数以上の大卒が就業するなど、大卒の就業先の中心はサービス業であり、製造業への就業割合は10%に満たない

一方、タイはサービス業への就業が主であるものの、製造業への就業割合も13.9%とインドネシアの2倍以上

業種コード

1 農林水産業 6 観光関連・小売・飲食業

2 鉱業 7 流通・通信業

3 製造業 8 金融・不動産業

4 電気・ガス・水道供給業 9 公共・福祉関連サービス

5 建設 10 その他

公共・福祉関連サービス

製造業製造業

インドネシア タイ

大卒の就業先構成

(出所)インドネシア統計局、タイ統計局資料より みずほ総合研究所作成

Page 170: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45% 首都圏

サラブリ

チャチェン

サオ

チョンブリ

シーサ

ケット

スリン

プーケット

ウタラ

ディット

4-2.最低賃金

170

インドネシアにおける経営上の最大の懸念は「従業員の賃金上昇」。日系企業に対するアンケートでは、タイも「従業員の賃金上昇」が最大の課題となっているが、インドネシアはタイよりも、課題として挙げた企業の割合が20%近く大きい

賃金上昇率も、直近ではタイが5%以下であるのに対し、インドネシアは8%以上の上昇が継続している 一方で、インドネシアは最低賃金の決定方法が明確になったことで、コストの透明性が増したとの意見あり

経営上の課題 2017年従業員の賃金上昇(n=427) 80.8%

原材料・部品の現地調達の難しさ(n=238) 64.3%

通関手続きが煩雑(n=428) 59.7%

経営上の課題 2017年従業員の賃金上昇(n=594) 63.0%

原材料・部品の現地調達の難しさ(n=339) 54.0%

通関手続きが煩雑(n=595) 50.6%

【最低賃金決定方法】

・政府は2015年に最低賃金の上昇率を以下のフォーミュラで決定

(最低賃金の上昇率)=(インフレ率)+(実質GDP成長率)

【最低賃金決定方法】

・政労使で構成される中央賃金委員会において、生計費、消費者物価、生産コスト、生産者物価、生活水準、生産能力、財・サービス価格、ビジネス環境、GDP、社会・経済環境の10項目を考慮して決定される

2~3%

36~40%12~58%

8%

(年) (年)

インドネシア タイ

最低賃金

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70% ジャカルタ

特別県

ブカシ県

カラワン県

バンドン県

スマラン県

タンゲラン

スラバヤ県

(出所)JETRO通商弘報2015年12月21日・2016年12月21日・公益財団法人国際金融情報センター(2017)「基礎レポート第4章雇用・物価 タイ」より みずほ総合研究所作成

Page 171: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

92

158

256

167

353

148

274

187

322268

704

169

387

0

100

200

300

400

500

600

700

800

インドネシア タイ

農林水産業

鉱業・採石業

製造業

建設業

卸売・小売・宿泊・外食業

金融業

全産業平均

4-2.業種別賃金動向

171

製造業の賃金は、鉱業・採石業、金融業と比較して7割以下の水準であり、平均賃金を下回っている状況 賃金的な魅力から、これらの業種に優秀な人材が流出してしまっている懸念あり

一方、タイの製造業における賃金は金融業の約半分であり、相対的にインドネシアよりも製造業の賃金が低く抑えられている

(注)2017年1月時点の為替により計算

(USD/月)

インドネシア タイ

業種別賃金動向

(出所)公益財団法人国際金融センター(2017)「インドネシア」・公益財団法人国際金融センター(2017)「タイ」より みずほ総合研究所作成

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4-2.役職別賃金動向

172

ワーカークラスについて、タイでは製造業のワーカーと非製造業のワーカーでは2倍の賃金差が存在。一方、インドネシアでの賃金格差は約1.5倍

マネージャークラスについて、タイでは製造業と非製造業の賃金差は3%未満。一方、インドネシアでは製造業と非製造業の賃金差は約15%と、タイの5倍以上の賃金差が存在

(注)基本給:諸手当を除いた給与、2017年10月時点

ワーカー(製造業):作業員。正規雇用の一般工職で実務経験3年程度の場合。請負労働者及び試用期間中の作業員を除く

マネージャー(製造業):正規雇用の営業担当課長クラスで大卒以上、かつ実務経験10年程度の場合

ワーカー(非製造業):正規雇用の一般職で実務経験3年程度の場合。ただし派遣社員及び試用期間中の社員は除く

マネージャー(非製造業):正規雇用の営業担当課長クラスで大卒以上、かつ実務経験10年程度の場合

320

1,008

338

1,403

455

1,151

668

1,442

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

ワーカー マネージャー ワーカー マネージャー

インドネシア タイ

製造業 非製造業

(USD/月)

インドネシア タイ

役職別賃金動向

(出所)JETRO(2017年)「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」より みずほ総合研究所作成

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4-2.インドネシアの技能認定制度

173

インドネシアが実施するLSP制度及びエンジニア資格制度は、日系企業に認知されておらず、ほとんど利用もない状態

一方、インドネシア金型工業会の推進する資格制度は、毎年社内で従業員を受験させるなど一定の活用が見られる

職種別検定機関(LSP)制度

【全体概要】・政府から認可された外郭団体である職種別検定機関(LSP)が、原則として1専門分野に、1LSPが資格認証を行う(複数の認証を行うLSPも存在)

・2016年には全国に311のLSPが存在。2015年に200のLSPが認証されるなど近年増加傾向。これは、現政権が技能者・技術者育成のために技能資格制度整備を推進しているため

・LSPによる認証制度は、SMK生等の職業教育の受講者を主に対象としている

・技術資格と現場の技術評価の性格が強い能力資格の二つの資格系統で成り立ち、各3段階のレベルをもつ

・今後、民間企業が参加しやすい資格制度へと変更予定【参考:自動車技術LSP】・2010年に設立。拠点が15カ所、試験場が94箇所所有の全国組織・毎年受講者は7,000人、合格者は4,000人・民間企業の受講者は、自動車修理店などの中小企業の修理工が中心。自動車メーカー・部品メーカーなどの大手企業の従業員の受講生は皆無

・コースは、ジュニア(オペレーターレベル)・シニア(技術官・分析官レベル(オペレーターの上級))・マスター(技術官・分析官レベル)の3段階

インドネシア金型工業会の技能資格制度

・日系企業各社が現地で実施する社内技能評価制度を基準に国家技能資格制度として発展

・より客観的な方法で技能評価を行う日本の技能評価制度を採用・インドネシア金型工業会が中心。トヨタ・パナソニック・デンソー・荏原等の現地日系企業が協力

・機械検査・金型仕上げ・設備保全・樹脂成型・金型プレス・研削・フライス加工の7分野の技能資格制度を整備

・技能試験の受講者はほとんどがインドネシア金型工業協会加盟の日系企業ないし合弁企業。試験官も同様

エンジニア資格制度

・2014年制定のエンジニア関連法11号に基づいて、インドネシアエンジニアリング協会が運営

・JICAと共同で工学分野に特化したインドネシアエンジニアリング教育認定機構の設立を推進

・分野は、土木・建設、機械、電気・電子、産業等多岐にわたり、初級、中級、上級と3等級が存在

・2015年時点で、取得人数は累計9,000人

(出所)JETROバンコク(2016年)「タイで生産活動を行うにあたり活用可能な技術・技能認証制度・人材育成スキームにかかる実態調査」よりみずほ総合研究所作成

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4-2.タイの技能認定制度

174

タイの技術・技能資格は、存在こそ一定の認知がされているものの、日系企業が求めるレベルの認定には至っておらず日系企業はほとんど利用していない

技能資格については、最低賃金と連動しているものがあり、有資格者はコスト高となるため、敬遠する企業も存在

エンジニア委員会によるエンジニア資格認定

・法令に基づいて、エンジニア委員会が実施・ライセンスの位置づけにある国家資格であり、有資格者は登録した技術部門の技術業務を実施可能となる

・対象分野は、以下の7分野 ①土木②鉱業③機械④電気⑤インダストリアルエンジニアリング

⑥環境⑦化学・レベルは、①準エンジニア、②プロフェッショナルエンジニア、③シニアプロフェッショナルエンジニア、④補助エンジニアの4階級

・現在、自動車・食品の二つの分野等、17の分野を追加することが検討中。これらはライセンスという位置づけではなく、当該分野を振興する目的

労働・社会福祉省 技能開発局による技能資格認定

・労働・社会福祉省 技能開発局が所管・運営・働く上で身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度

・ものづくり分野からサービス分野まで200以上の幅広い分野において、3段階のレベルで技能基準を作成。しかし、技能検定試験が行われているのは、そのうち66分野

・産業分野では、旋盤加工や溶接等の分野で技能検定試験が行われているが、受講者の98%(2015年度)は基礎レベル(レベル1)の受験者

・タイにおいては技能検定試験の合格者が通常の最低賃金よりも上乗せされてた賃金を享受できる制度が存在。2016年4月時点で35分野が技能検定資格と最低賃金が連動している

(出所)外務省「タイの技能人材育成」・JETROバンコク(2016年)「タイで生産活動を行うにあたり活用可能な技術・技能認証制度、人材育成スキームにかかる実態調査」・バンコク日本人商工会議所「日系企業動向調査(2013年度下期、2016年度上期」より

みずほ総合研究所作成

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4-3.就労制度に関する現状・強み・課題

175

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4-3.インドネシアの就労ビザの現状

176

就労ビザの取得は、定められている職種の範囲内で、かつ定められた在留期間に限って就労が認められている。また、インドネシアの場合は、年齢・学歴・役職によって、就ける職が制限されるケースが存在

申請からビザ発給許可証(VTT)まで最短1.5ヶ月が必要 外国人労働者雇用許可証(IMTA)の取得前に、駐在員1人当たり月100ドル、1年分計1,200ドルの外国人労働者雇用補

償金(DKPTKA)を指定銀行へ納付が必要

外国人労働者の要件

① 役職に応じた学歴② 役職に応じた能力を有することの証明書または5年以上の

実務経験③ インドネシア人に対して知識・技術移転を行う誓約書の提出④ 6ヶ月超勤務の外国人労働者について、納税者番号(NPWP)

の保有及び社会保険制度(BPJS)への加入⑤ インドネシア保険会社の保険へ加入

取得フロー

RP

TKA

:

((外国人労働

者雇用計画書)の申請

外国人労働者利用補償

基金(D

KP

TKA

)

在日大使館にて就労ビ

ザの申請

ビザ発行されてから、

90日以内にインドネシ

アに入国

IMTA

:外国人労働者雇

用許可証の申請、取得

VTT

(ビザ発給許可書)

の申請

外国人労働者が就任できない役職 外国人労働者が以下の業務を担当する役職につくことは禁止:

① 人事② 法務③ 健康、安全、環境関連④ サプライチェーンマネージメント⑤ 品質管理と検査

実務上、労務関連の書類についてはインドネシア人の人事マネージャーが署名することが一般的

1つの会社において複数の役職を兼務することは禁止

(出所)JETRO・労働者保護法及び各種資料より みずほ総合研究所作成

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4-3.タイの就労ビザの現状

177

タイ法人設立後、外国人(日本人を含む)がタイにて就労するにあたっては、滞在査証(Non Immigrant Business VISA:Bビザ)および労働許可証(Work Permit)を取得する必要あり

入国管理局は、外国人1人のビザ延長資格を得るために、雇用主である企業に最低4人のタイ人を雇用することを求めている

ビザ種類

申請料

THB USD

労働許可(所要時間1~10日)

3ヶ月 750 21.40

6 ヶ月 1,500 42.80

1年 3,000 85.59

2年 6,000 171.18

1年間ビザ(所要時間1~30日) 1,900 54.21

再入国許可(所要時間1日)

シングルエントリー 1,900 54.21

マルチプルエントリー 3,800 108.42

外国人がタイにて就労するためには、Bビザと労働許可証の両者を取得する必要があり(タイには、いわゆる「就労ビザ」というものは存在しない)Bビザはタイへの入国許可、労働許可証はタイでの就労許可、という立て付けとなっている

①Bビザ移民法(Immigrant Act)に基づき、移民局(入国管理局)より入国目的に適合した滞在査証(ビザ)を取得することが必要となる

②労働許可証外国人労働法に基づき、外国人は労働省(雇用局)より労働許可証(Work Permit)を取得する

両者は管轄官庁が異なるものの制度的には対を成し、労働許可証が更新できないとBビザも更新できないという仕組み

取得フロー

在外タイ大使館または

領事館にてB

ビザを取

得 入国審査で90日間の滞

在許可を取得

ビザと労働許可の期限

内に、まずビザの延長

申請。入国日より1年

間の滞在許可を取得

ビザの延長許可後に、

労働許可も延長申請

をし、ビザの期限と連

動して延長

滞在許可期間内に労働

許可申請を行う

通常、90日間の滞在許

可期間内に労働許可が

おりる

(出所)JETRO・労働者保護法及び各種資料より みずほ総合研究所作成

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4-3.就労に関する現状

178

インドネシアとタイの3年間の統計を比較すると、タイの1日系企業当たりの在留邦人数は3倍以上 学歴条件等のため、徐々に短期ビザが取得しにくくなっている

項目 2014年 2015年 2016年

日系企業数 1,641社 1,725社 1,783社

在留邦人数(民間企業関係者) 40,374人 31,203人 32,841人

在留邦人数/日系企業数 24.6人 18.09人 18.42人

項目 2014年 2015年 2016年

日系企業数 1,766社 1,697社 1,810社

在留邦人数(民間企業関係者) 8,515人 8,664人 9,053人

在留邦人数/日系企業数 4.82人 5.11人 5.00人

就労制度に対する日系企業の声

・ビザの取得条件に学歴条件があり、技術があるのにインドネシアに送れない人がいる。就労ビザの取得は、人材育成や工場の運営に影響が大きい

・3カ月(短期・中期)のビザ取得は苦労している・まだそれほど問題となっていないが、ビザ取得が難しくなってきている

日系企業・在留邦人数推移

インドネシア タイ

(出所)外務省「海外在留邦人数調査統計」・JETRO資料より みずほ総合研究所作成

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4-3.就労ビザの取得:比較

179

項目 インドネシア タイ

法律上の条件:分かりやすさ

△• 就労ビザ分類条件が多く分かりづらい• 交差している判決・規制が多い。改正頻度も多い• 情報がなかなか取りにくい

○• ビザについての規制よくまとめている

• ビザと就労許可の制度が分かれているが、役割の分担が明確されていて、取得フローが分かりやすい

• 情報が取りやすい

就労要件

ו 役職・業界の規制あり。サプライチェーン管理と

品質管理の制限が産業に影響あり

• 役職に応じた能力を有することの証明書または5年以上の実務経験が必要

• 規制改正提案の頻度が多く、インドネシア語の習得など、厳しい条件を出している案もある

△• 現地採用の割合条件あり(外国人1人のビザ延長

資格を得るために、雇用主である企業に、最低4人のタイ人を雇用することを求めている)

コスト

△• IMTAの取得後、駐在員1人当たり月100ドル、

1年分計1,200ドルの外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)を指定銀行へ納付が必要

• ビザ・就労許可種類によるコストが変わる。最大USD300弱ぐらいが掛かる

ビザ申請から入国まで必要の時間

△• 申請からVTTまで最短1.5ヶ月が必要になる• VTTの発行後、入国ビザの申請が始まる

○• ビザ発行に最短1日~最長30日かかる• 入国後、労働許可申請。最短1日で発行できる

(出所)JETRO・労働者保護法及び各種資料より みずほ総合研究所作成

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4-4.産業人材育成に関する強み・課題

180

Page 181: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

181

ポイント 説明

政府は、職業教育を担うSMKやポリテクで改革に着手している

「SMKイニシアティブ」や「SMK活性化戦略2017」により、SMKの教育内容、設備、企業との連携等に関する改革が進められている

実技中心の授業を目指すポリテクプログラムや、工業団地へのポリテク設立を促進している

政府は、職業教育を担うSMKやポリテクで改革に着手している

「SMKイニシアティブ」や「SMK活性化戦略2017」により、SMKの教育内容、設備、企業との連携等に関する改革が進められている

実技中心の授業を目指すポリテクプログラムや、工業団地へのポリテク設立を促進している

ポイント 説明

技術を持つマネジメントクラスを育成しうるポリテクが量質ともに不足している

SMK卒業者の電気関連、機械関連の知識や、計算スキル、整理整頓・掃除等への意識が不足している

設備やテキスト等の整備がなされていない

職業教育を行うポリテクニックやアカデミ、AKの入学試験は、学力重視の傾向にあり、SMK卒業生の進学が限定的になっている

インドネシアでは職業教育の位置づけが低く、専門技術を持っているかよりも、学術教育の学位を重視する傾向にある

大学卒業者の製造業就職率は約5.7%(タイは13.6%) 製造業就職者における高等教育修了者は、全体の10%以下(タイは20%程度) 製造業のマネジメントクラスの賃金は、非製造業に比べ15%も低いことが原因の1つと考

えられる。(タイではこの賃金差が3%未満)

大学卒業者の製造業経験のある教師が不足している 座学が中心で、就職してから必要な技術が十分に身に着けられない

SMKにおける教育が、企業の必要として

いるワーカーの技術水準に達しておらず、ワーカーの質が賃金上昇に見合わない

SMK卒業生の高等教育課程への進学率

が低く、十分な年数職業教育を受けたマネジメント人材の育成に結び付いていない

マネジメントクラスとなりうる高等教育出身者の製造業就業率が低い

産業人材育成に関する強み

職業教育制度に関する課題

(出所)現地ヒアリングより みずほ総合研究所作成

4-4.産業人材育成に関する強み・課題

Page 182: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

182

ポイント 説明

現地に実地経験が豊富な人材が不足している 日本から専門家を派遣することにコストがかかる

基礎知識を習得するための一般的な教育資料やセミナーも存在せず、ベーシックな知識や技術を学ぶ機会に乏しい

人材の定着が難しく、コストをかけて再教育を行うインセンティブにかける

インドネシアが実施するLSP制度やエンジニア資格制度等の技能認定制度、インド

ネシア金型工業会が実施する検定試験が存在するも、利用は限定的。試験のレベルも産業界のニーズに応えられるようなレベルではない

企業内研修によってマネジメントクラスを育成することが困難

ワーカーの再教育を行う機会が限定的

技術評価システムの整備が不十分

ポイント 説明

就労ビザの取得が年齢・学歴・役職によって制限されており、実地経験が豊富な技術者でも、インドネシアに派遣することが難しい

申請からVTTの取得まで1.5か月必要、外国人労働者雇用補償金が必要といったように、就労ビザを申請するためのコストが高い

短期ビザの取得が難しくなっており、出張等を通した日本からの技術移転が難しくなっている

日本から技術者を派遣することが困難

短期の訪問による技術移転が困難

資格制度、基礎技能教育機会に関する課題

就労ビザに関する課題

(出所)現地ヒアリングより みずほ総合研究所作成

4-4.産業人材育成に関する強み・課題

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5.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール・アクションプラン・ロードマップ

183

Page 184: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-1.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール

184

Page 185: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

185

輸出競争力強化

裾野産業の

高度化

国内市場の

持続的発展

人材育成

インドネシアの特性を最大限活かした選択的優遇政策の実施

コストダウンに貢献する制度、規制の構築

技術力を有する日本の裾野産業と地場企業との連携強化支援

日系企業のR&D機能の導入によるインドネシア裾野産業の高度化への貢献

進出日系企業における技術指導

日本の技術支援による人材育成制度の高度化

技術認定制度の充実による、製造業における高度人材の確保

経済規模に見合った無理なく安定的な国内市場発展を実現

「市場拡大」・「輸出拡大」・「裾野産業発展」の3つのゴールが有機的に結びつき、産業の持続的発展を実現 インドネシア・日本官民で各アクションプラン実施において連携

具体的施策

日尼連携

日尼官民協議会の設置による裾野産業発展プロジェクトへの継続的サポート

インドネシアの産業の持続的発展インドネシアの産業の持続的発展

輸出拡大輸出拡大

国内市場拡大

裾野産業育成

裾野産業育成

≪3つのゴール≫

≪5つのアクションプラン≫

その他 外資誘致に関わる情報基盤や為替管理などの金融制度多様化

5-1.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール

ゴールイメージとアクションプラン

Page 186: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

インドネシアの産業の持続的発展インドネシアの産業の持続的発展

186

調査を通じ、今回のプロジェクトにおけるゴールイメージとして「市場拡大」・「輸出拡大」・「裾野産業発展」の3つを設定

各ゴールは個別の目的として捉えられるべきではなく、各々が相互に影響を及ぼす「不可分」なものとして三位一体で推進を図ることで、インドネシアの産業基盤の底上げを図り、持続的発展の実現につながるものと考える

輸出拡大輸出拡大

国内市場拡大

裾野産業育成

裾野産業育成

≪市場を求め裾野産業は集積≫

部品メーカーへのヒアリングでは市場

規模により投資を判断するとの声あり

現地調達率向上によりコストダウンす

れば、経済規模に見合った国内販売に

も寄与

≪市場成長に伴い輸出も拡大≫

国内販売と輸出は相互に影響。多

くの完成車メーカーが国内市場を

ターゲットとして生産能力を拡充

安定的な国内市場拡大によりコス

トダウンや、国内市場の強みを活

かした競争力のある輸出拠点とし

ての地位確立が期待できる

≪裾野産業成長により

輸出競争力強化≫

輸出競争力確保のため、裾野産業育

成による品質向上が必須

裾野産業集積により現地調達率が上

がりコストダウンが図れれば輸出競争

力も上昇

5-1.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール

3つのゴールイメージ

Page 187: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

187

輸出競争力強化

裾野産業の

高度化

国内市場の

持続的発展

人材育成

輸出優遇制度の充実 ①特定車種(SUV/MPV)、②部品、③地域別(周辺国及びオセアニア)輸出への優遇

例)原材料/部品輸入に係る関税、輸入にかかる諸税免除、輸出付加価値増加分に応じた税額控除 コストダウン化推進 ファクトリーオートメーションの推進 例)FA化投資に係るタックス・アローワンス 特定用途免税(USDFS)の適用条件緩和・手続の簡素化 予見可能かつ堅固で透明性のある法規制の遂行 官民対話の場の設置、日尼連携による法制度整備

外資優遇・規制緩和 業種・規模別の最低資本金の設定 例)自動車部品製造業(中小企業)では現地企業とのJVを条件とした最低

資本金・最低投資額引き下げ R&Dセンター誘致 費用計上の上限拡大による減税効果 地場企業への技術移転 技術移転を前提とした合弁企業への税制優遇

教育制度の充実 SMK/ポリテクの充実(実技面) 例)産学連携による実践的カリキュラム構築 資格制度の充実 ワーカー向け技能認定制度の整備 例)ものづくりベーシック講座受講による認定付与 就労ビザの条件緩和

例)学歴/年齢/就業地規則要件の撤廃

インフラ整備 渋滞解消・道路網の整備(港から都市部、都市間道路) 格差是正・地方開発 地方投資促進→中間層の育成 地元のリソースを活用した地場産品の高付加価値化、国内外市場へのアクセス支援

その他

為替管理等金融制度の要件緩和 輸出取引や為替ヘッジ規制に関わる要件緩和、資金調達手続きの簡素化 情報基盤整備 データベースおよび表示整備

5-1.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール

アクションプラン

Page 188: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

188

アクションプランの実行にあたっては、各々の施策を実施するだけでなく、横断的に進捗状況を管理、モニタリングし関係部局間の円滑なコミュニケーションや取り纏めを組織的に推進する機能が必要となる

インドネシア・日本の政府機関および、民間企業による「日尼官民協議会」を設置し、推進施策や事業計画について協議・決定を行うほか、実行状況のモニタリングを行い、裾野産業発展に向けた継続的サポートが有効と考える

日尼官民協議会

輸出競争力強化裾野産業の

高度化

国内市場の

持続的発展人材育成 その他

≪5つのアクションプラン≫

実行状況モニタリング

推進施策・計画立案

実行状況モニタリング

推進施策・計画立案

官民協議会(ステアリングコミッティ)

日本業界団体

専門家コンサルティング機関

専門家コンサルティング機関

インドネシア政府関連各省庁

インドネシア業界団体

日本政府関連機関

助言・提言等

5-1.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール

日尼官民連携

Page 189: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

インドネシア政府

日本企業日本政府

インドネシアで製造した製品の海外輸出強化 地場企業への技術移転・人材育成

インドネシアの産業振興ならびにインドネシア自動車産業の自立的発展の達成のためには、日本政府・日本企業との連携も重要である

インドネシア政府・インドネシア企業・日本政府・日本企業の4者が一体となって課題解決に取り組むことにより、インドネシア産業のさらなる発展を目指す

投資誘致・投資環境改善(各種規制緩和・優遇政策等)

法規制・インフラ整備 教育制度改善・高度外国人材のビザ要件緩和 官民対話

日本からの投資促進 日尼企業のビジネスマッチング 日本からの専門家派遣を通じた地方産品の

レベルアップ/対日アクセス支援

インドネシア企業

2

日本等外国企業からの技術移転・高度人材育成による地場裾野産業の自立的発展

ファクトリーオートメーション促進

5-1.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたゴール

189

Page 190: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2.インドネシア自動車産業裾野発展に向けたアクションプラン

190

Page 191: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

191

Page 192: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

192

輸出競争力強化に関するアクションプラン全体感

インドネシアが輸出を拡大していくためには、①現状におけるインドネシアの特性を最大限に活かし、②将来的・継続的な輸出拠点となるための輸出競争力を強化する必要がある

①現状におけるインドネシアの特性を最大限に活用し、選択的優遇政策(輸出優遇制度)を実施する ②将来的・継続的に輸出競争力をつけていくためには、全体的なコストダウンを行うことで価格競争力をつける

具体的アクションプラン

輸出優遇制度の充実

①特定車種(SUV/MPV)、②部品、③地位別(周辺国及びオセアニア)輸出への優遇

• 輸出付加価値増加分に応じた所得控除

• SUV/MPVの生産割合に応じた法人税の減免

• 原材料/部品輸入に係る関税、輸入にかかる諸税免除

コストダウン化推進

① ファクトリーオートメーション(FA)の推進

• FA化投資の資本的支出に対するCapital Allowanceを認める

② 特定用途免税(USDFS)の適用条件緩和、手続の簡素化

• 商社などメーカー以外の企業に対してもUSDFSの適用を認める

• 申請における書類の一部免除

法規制の安定的な運用

Page 193: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

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輸出競争力強化:輸出優遇制度の充実 背景①

①特定車種(SUV/MPV)に関する優位性

【2016年インドネシア車種別輸出内訳】

【2016年タイ車種別輸出内訳】

②部品輸出の重要性

【インドネシア・タイ生産・輸出台数、部品輸出額】

インドネシアはタイと比較してSUV/MPVの輸出割合が多い。輸出量全体はタイより少ないものの、輸出量を拡大する余地は十分にあると推測

タイは生産・輸出台数が多く、裾野産業も集積していることから、完成車輸出と同様に部品輸出額も多い 裾野産業が集積し、部品を製造するようになれば必然的に部品輸出も増えていく

インドネシアではSUV/MPVの

割合が半分以上を占める一方、

タイでは15%未満

タイの部品輸出量はインドネシ

アの2倍以上

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

(出所)GAIKINDO・TAIA・UN Comtradeより みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 194: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

194

輸出競争力強化:輸出優遇制度の充実 背景②

【2016年インドネシア車種別輸出先内訳】 【2016年タイ車種別輸出先内訳】

【2017年オーストラリア車種別販売内訳】

③周辺国及びオセアニアへの可能性

地域戦略を明確化し、戦略的に輸出を拡大していくことも必要

タイからの輸出が多い乗用車において、オーストラリア向け輸出の割合が大きい一方、インドネシアが多く輸出している乗用車においてオーストラリア向けはほとんどない

また、オーストラリアでは現在SUVやMPVへの人気が高まっていることから、インドネシアが強みを持つ車種において、地理的優位性を利用してインドネシアからの輸出に切り替えることによる物流コストの低減などのメリットがあると推測

タイでは多く輸出されている乗用自動車の全てがオーストラリアへ多くの割合で輸

出されている一方、インドネシアではほとんどない

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

(出所)UN Comtrade・MARKLINESより みずほ銀行国際戦略情報部作成

乗用車

450,012台(37.8%)

SUV465,646台(39.2%)

小型商用車236,609台

(19.9%)

大型商用車36,849台

(3.1%)

総販売台数1,189,116台

オーストラリアでは販売台数の約4割をSUVが

占め、MPVも人気が高い

Page 195: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

195

輸出競争力強化:輸出優遇制度の充実 アクションプラン詳細

輸入に係る諸税として、以下のような税あり 付加価値税・奢侈品販売税・前払い法人税・物品税など

現状、保税区や自由貿易地域、経済統合開発地域や経済特区などに同様の優遇制度はあり

ただし、地域や適用条件が厳しいことから上記地区域における優遇制度を利用している日系企業はほとんどいない状況

従って本提案における優遇は、地域に係らず優遇を付与するものである

また、条件として全体取引のうちの輸出取引に対する下限を設けることも考えられるが、現状の保税区のように50%以上の輸出取

引では国内市場をメインとする自動車産業ではハードルが高く、熟考が必要

対象 具体例 特徴

特定車種(SUV/MPV)輸出(完成車メーカー向け)

輸出付加価値増加分に応じた所得控除(※1) SUV/MPVの生産割合に応じた法人税の減免

当初はインドネシアに強みであるSUV/MPVを活かすことで輸出拡大、将来的にはセダン車などにも適用可能

インドネシア独自の優遇制度

部品輸出(部品メーカー向け)

原材料/部品輸入に係る関税、輸入にかかる諸税免除(※2)

部品メーカーがインドネシアで部品を生産拡大することで享受できる恩恵

特定地域への輸出 輸出付加価値増加分に応じた所得控除 地域戦略に基づいた輸出先の開拓 インドネシア独自の優遇制度

(※2)原材料/部品輸出に係る関税、輸入に係る諸税免除(※1)輸出付加価値増加分に応じた所得控除

マレーシアは輸出促進のため、製造業に関して下記優遇制度あり 輸出額の付加価値の増加分(value of increase in export)に

ついて以下の金額相当額の所得控除が認められる 輸出品の付加価値が30%以上の場合、輸出増加額の10% 輸出品の付加価値が50%以上の場合、輸出増加額の15%また、地場資本60%以上の製造業の会社は、以下の所得控除が認められる 著しい輸出の増加を達成した場合、輸出増加額の50% 新規輸出市場を開拓した場合、輸出増加額の50% 当該業種において最も著しい輸出増加を達成した企業に対し

て、輸出増加額全額

アクションプランに関して、具体的な優遇例を下記記載 本アクションプランに関しては、全てインドネシア政府による施策となる

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

(出所)JETRO資料・KPMG資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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196

輸出競争力強化:コストダウン化推進 背景

特定用途免税(USDFS)の重要性

大分類 サブ分野

自動車および

その部品

四輪あるいはそれ以上の乗客・貨物自動車産業

四輪あるいはそれ以上の自動車のカロツェリア産業

四輪あるいはそれ以上の自動車の部品や補完品産業

二輪および三輪自動車産業

二輪および三輪自動車の部品・補完品産業

他の欄に分類されない電気機器産業

USDFSの適用対象において、自動車産業に該当するものは以下表の通り

ただし、メーカーが直接輸入する場合に限る

多くの企業が部品を直接ではなく商社などを経由して調達するため、部品自体はUSDFSの適用範囲であったとしも、実際には関税がかかっている場合があるため、コストが上昇する

事務手続面においても、必要書類の準備や申請に関して複雑かつ時間がかかる

USDFS対象産業(自動車産業)

周辺諸国がFA化に関して既に行動を開始している状況であり、インドネシアもFA化により生産性を上げることで人件費などコスト削減を早急に行う必要あり

商社経由での部品輸入に関してもUSDFSが適用された場合、関税分のコスト低減により輸出競争力向上の余地あり。また、手続を簡素化することで、企業が本制度を利用しやすくなる

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

(出所)各社ホームページ・各種新聞報道・JETRO資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

他国のオートメーション化投資に係る優遇措置例

【マレーシア】

製造業における肯定の自動化を推進する目的で以下のような特別なCapital Allowanceが認められる 労働集約的産業(ゴム製品、プラスチック、木材、家具、繊維等)

• 自動化投資の資本的支出に対して400万リンギットを限度とした200%のCapital Allowance

その他の産業• 自動化投資の資本的支出に対して200万リンギットを限度とし

た200%のCapital Allowance

【タイ】生産効率性を上げる(自動化など)ための投資について以下の恩典 機械の関税免除、3年間の法人税免除

【シンガポール】

工場建物や新規生産設備などの認定資本支出に関して、通常資本控除100%に加え、適格設備投資の30%もしくは50%の追加控除が可能

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日本は、1996年以降ベトナムの法整備支援プロジェクトを開始

し、①各種法律の立法作業への助言、②法体系整備への助言、③人材育成を3本柱とした技術協力を実施

フェーズ3(2003年7月~2007年3月)では、民商事分野立法支援・法曹強化を2本柱とし、日本の法学者・法務省・最高裁・日本弁護士連合会の協力のもと、下記活動を実施

1.プロジェクトA:民法を中心とした民商事分野立法支援(1) 日越に民法草案作業部会発足、専門家による助言・指導(2) 日越に知的財産法規の作業部会発足、専門家ワークショップ開催(3) 日越に民事訴訟法作業部会及び倒産法作業部会発足,(4) 民法と整合性確保のためワークショップ開催や助言・指導

2.プロジェクトB:法曹強化(1) 日越に法曹養成機関強化のため作業部会発足(法曹養成学校、

最高人民検察院、最高人民裁判所)、越の法曹育成計画、法曹養成機関の組織・運営やカリキュラム準備のため指導・助言

(2) 日越に判決様式標準化のため作業部会発足(最高人民裁判所、法曹養成学校)、マニュアル準備指導・助言、普及セミナー実施

(3) 活動計画作成、テキストや参考図書提供等

197

輸出競争力強化:法規制の安定的な運用 背景

JICAによるベトナムの法整備支援事例

1.プロジェクトA:民法を中心とした民商事分野立法支援

(1) 改正民法の最終草案起草

(2) 知的財産関連法規に関する基礎知識修得,草案起草

(3) 民事訴訟法及び倒産法の最終草案起草

(4) 民法に関連する法案準備促進(不動産登記法、担保取引

に関する国会令、国家賠償法、判決執行法)

2.プロジェクトB:法曹強化

(1) 新規法曹の養成機関設立

(国家司法学院)を視野に、

既存トレーニングプログラム

や教材の改善

(2) 判決様式標準化、全法曹に

アクセス可能な情報整備

(3) ハノイ国家大学法学部生の

日本法理解と講師育成

法整備支援プロジェクト(フェーズ3) 【成果】

インドネシアの自動車産業が輸出競争力を有するには、新たな法規制のみならず、その法規制が将来的に安定して運用されていくための体制整備が重要である

日尼連携による協議機関を通じ、法規制の立法作業に加え、運用面の体制整備や担い手育成についても推進していく必要がある

(出所)JICA ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

Page 198: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

198

輸出競争力強化:コストダウン化推進 アクションプラン詳細

a. 社設立証書と最新の変更証書の写し又は官報に記載されたものb. 工業事業許可書(IUI)と拡張許可書(ある場合)の写しc. 納税者番号(NPWP)の写しd. 課税業者番号書の写しe. USDFS 関税免税譲許を受ける前の年間税納税証の写しf. 製造輸入業者番号(API-P)の写しg. 会社所在証明書の写しh. 通関登録番号(NIK)i. 物品輸入計画(RIB)j. 生産ライン設備能力データk. 譲許を受ける前の過去12ヶ月間の生産、販売(輸入・国内)、労働力、年間税納税を含む会社概要会社取締役が署名のこと)l. 生産プロセスフロー図、生産機器のリストとレイアウトm. 申請者、事業開発実施者、下請け業者及びその他USDFS を利用する関係者が検証を受ける用意がある旨の表明書

アクションプラン 具体例

FA化投資に係るCapital Allowance FA化投資の資本的支出に対し、●●(例:100億)ルピアを限度として200%のCapital Allowanceを認める

特定用途免税(USDFS)の適用条件緩和・手続の簡素化

商社などメーカー以外の企業が輸入する自動車部品に関しても、USDFSの適用を認める 申請における書類の一部免除

USDFS利用のための工業検査証明書の取得申請書類

アクションプランに関して、具体例を下記記載 本アクションプランに関しては、全てインドネシア政府による施策となる

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

(出所)JETRO資料・KPMG資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 199: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

199

輸出競争力強化:ゴールイメージ

インドネシアの現状の強み、明確化された地域戦略などを活かした輸出優遇制度を導入 将来的・継続的な輸出拠点となるためのコストダウン化を実施 以上のような方法により輸出競争力を強化し、インドネシアの目標である「2035年輸出台数150万台」を目指す ただし輸出競争力向上のためには、国内市場の持続的発展や裾野産業の育成・高度化もあわせて進めることが前提

輸出拡大

国内市場拡大

裾野産業育成

裾野産業育成

≪3つのゴール≫

現在

約20万台

2020年25万台

2030年90万台

2035年150万台

輸出優遇制度の導入

• ①特定車種(SUV/MPV)、②部品、③地域別(周辺国及びオセアニア)輸出への優遇

コストダウン化の推進

• ファクトリーオートメーションの推進

• 特定用途免税(USDFS)の適用条件緩和・手続簡素化

法規制の安定的な運用

輸出台数目標(工業省より)

5-2-1.輸出競争力強化に向けたアクションプラン

(出所)各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 200: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

200

Page 201: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

201

インフラの整備・開発

ジャカルタの渋滞解消

①道路を全般的な拡張・修復:ジャカルタは自動車過密度が高いうえ、道路の老朽化が激しい

②信号増設・十字路の整備:ジャカルタ市内には信号がある十字路が少ないため、進路変更ができず渋滞発生

③市内公共交通の充実:市内短距離通勤者や自動車未保有車の公共交通シフト

道路網の整備(港から都市部、都市間道路)

①都市間道路・地方インフラ整備:ジャワ島内外のインフラ整備により渋滞解消や地方の市場創出

格差是正・地方開発

地方投資促進(地方投資優遇・都市開発)→中間層の育成

①地方投資優遇:企業の地方進出後押し、地方開発による地方雇用創出→所得水準上昇による地方市場開発

②都市開発:地方における所得水準・教育水準の向上により、各地方における都市開発を促進。これにより優秀な人材のジャカルタへの流出を防止

③ローカル資源の活用:地方における現地製品の活用や人材育成を通じ、産業活性化を図る地元のリソースを活用した地場産品の高付加価値化、国内外市場のアクセス整備

インドネシアの多くの国民にとって、自動車は人生で数少ない高額な買い物。そのため、自動車を購入するには一定水準の購買力が必要

即効性のある効果を狙ってその場しのぎの政策を打ち出すより、規模に見合った無理なく安定的な国内市場発展が望ましい

今後の自動車購入層の広がりに対応すべく、自動車を心地よく使えるインフラ環境(渋滞解消等)を整える必要がある

国内市場の持続的発展:全体イメージ

具体的アクションプラン

Page 202: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

202

裾野産業の高度化・拡大は、自動車販売台数・輸出台数と密接な関係がある 需要の拡大によって生産量が増加、これに伴い裾野産業のさらなる誘致拡大の可能性が高まる

ただし、タイのFirst Car減税政策のように、政策によって急に需要を喚起すると、後々の反動が大きい ハイリスク・ハイリターンよりも安定的な国内市場発展が重要

国内市場の持続的発展:背景(全体イメージ)①

タイの新車販売台数推移・生産稼働率の関連

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

1st Car減税前の駆込み需要

により、販売台数が急増。

フル生産に近く、生産が販売

に追い付かない状況年 タイ 前年比

2009 549 -66

2010 800 +251

2011 794 -6

2012 1,436 +642

2013 1,331 -106

2014 882 -449

2015 800 -82

2016 769 -31

2017 872 103

政策実施後、台数激減、

稼働率急落

現在、余剰生産能力の解消が

課題になっている

単位:千台

2013~2016年ま

での減少は合計667,547台>

2012年の増加数

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

単位:千台

(出所)TAIAより みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 203: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

203

下図の通り、ASEANにおける一人当たりGDPと自動車販売台数を比較したところ、多くの国が一直線上に位置 一方、インドネシアは直線の下に位置しており、現時点においてもまだ国内販売できる余地があるものと思われる

(約40万台の国内販売余地あり) 従って、この乖離を埋める政策が採られるべきである (他の政策との摩擦や衝突が生じない政策) 短期的な需要喚起策ではなく、長期安定的な持続的発展策の一つとして、インフラの改善が挙げられる

例:渋滞が購買意欲を減退させている⇒購買意欲惹起のための渋滞解消

国内市場の持続的発展:背景(全体イメージ)②

ASEAN一人当たりGDP/自動車販売台数(2016年)

タイ

インドネシア

マレーシア

フィリピンベトナム

ラオス

カンボジアミャンマー

ASEAN

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000一人当たりGDP(USD)

自動車販売台数/千人

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

392,094.02台

(出所)IMF World Economic Outlook Database October 2017・各国統計局等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 204: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

204

渋滞等の問題により、自動車購入意欲減退⇒市場拡大を支えるインフラ整備が急務 自動車の機能(迅速な移動等)を十分発揮できない環境下では、高額な出費をするインセンティブが減退する

現在、ジャカルタは自動車過密度が高い水準であり、渋滞が恒常化。国民が受容できるレベルを超えてしまっている 道路インフラが整備されていないため、運転者が勝手に判断して走る⇒信号機が足りなく、既存信号も無視することが

ある。その結果、さらなる渋滞が発生 インドネシアの公共交通の発展が遅れており、そのため二輪・タクシーの利用が多く、渋滞が深刻化

国内市場の持続的発展:ジャカルタの渋滞解消 背景

ジャカルタ・バンコク・東京の四輪過密度(比較)

インドネシア国家開発企画庁(バペナス)の試算によると、2017年のジャカ

ルタと近隣の西ジャワ州ブカシ・ボゴール・デポック・バンテン州タンゲランの交通渋滞による経済損失額は、年間100兆ルピア(約8100億円)に達する見通し。損失額のうち、年間67兆5000億ルピアをジャカルタが占める。

運輸省首都圏交通管理局(BPTJ)の幹部は、自動車の普及台数が道路インフラの受容可能台数を超えているのが渋滞の主な原因であるほか、公共交通機関の利用者が減少傾向にあることも一因だと分析した。

サンケイビズ、2017年12月26日

ジャカルタ周辺、渋滞による経済損失(記事)

項目 シンガポール 東京都 ジャカルタ市

舗装道路総延長(km) 3,496 24,523 約7,650

信号機数 2,269 15,772 約314

信号密度(機数/km2) 0.65 0.64 約0.04

2015年信号機数・信号密度(比較)

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

478 633

288

0

200

400

600

800

ジャカルタ バンコク 東京

1,000人当たりの四輪保有台数(単位:台)

7,553

3,498 1,807

0

2,000

4,000

6,000

8,000

ジャカルタ バンコク 東京

1㎢当たりの四輪台数(単位:台)

(出所)ASEAN Statistical Yearbook 2016/2017・各種新聞記事より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 205: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

205

自動車産業の発展のためには、ジャカルタ市内インフラだけではなく、都市間インフラも重要 インドネシア内(またはジャワ島内においても)、地域によって自動車保有率に大きな差異が発生

道路建設により、全般的にインドネシアの道路が拡充され都市開発が進展、これによりジャカルタ一極集中が緩和される⇒ジャカルタ以外の地方都市開発により、各都市間における長距離旅行がより多様化し、車の需要が高まる

国内市場の持続的発展:道路網の整備 背景

地域 自動車保有率

西ジャワ州 4.6%中部ジャワ州 5.0%東ジャワ州 5.0%バンテン州 2.3%

ジャワ島全体島均率 7.9%マルク諸島 2.9%

パプア 5.2%インドネシア全国平均 8.8%

2015年自動車保有率が全国平均より低い地域 ジャワ島においては、ほとんどの主要都市が幹線道路で結ばれているが、高速道路網はまだ全エリアでは整備されていない。一方、ジャワ島以外の島では、道路整備自体が遅れている状況

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

(出所)GAIKINDO・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 206: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

206

ジェトロは2016年10月末より、インドネシア商工会議所(KADIN)と連携しKADINのビジネスサポートデスク内に「インドネシア・日本ビジネスマッチング・サポートデスク(IJ-BMSD)」を設置

インドネシアの中堅・中小企業と日本の中小企業のマッチング支援を促進する事を目的として、インドネシアの中小企業による自社の製品や専門知識の紹介やウェブサイト利用をサポート

ジェトロはインドネシアの輸出有望産品を発掘するため、日本から食品分野2名・工芸品分野1名の専門家を派遣

調査を通じた地方産品のレベルアップを図ると共に、対日アクセスを支援

トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア社(PT. Toyota Motor Manufacturing Indonesia 以下、TMMIN)のカラワンエンジン工場では、合計約600名の新規雇用を行うと共に、TMMIN従業員等の生産のスキルや知識を高めるため、敷地内にインドネシアで3番目となるラーニングセンターを開設

トヨタの創業理念である、「クルマづくりを通じて、社会に貢献すること」を掲げ、政府やパートナーと協力したインドネシア経済・社会の発展への貢献姿勢を打ち出している

TOYOTAインドネシアによるCSR事例JETROによる地方開発支援事例

ビジネスマッチング

輸出有望産品の発掘調査

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

国内市場発展に向けた地方エリアの開発に際しては、現地のリソースを活用した産業育成も重要な要素となる

日本では、下記のような官民それぞれによるローカルリソースの開発・育成支援を行った事例もあり、日尼における官民連携協議会においても、ローカル資源の活性化による開発支援の検討が必要

国内市場の持続的発展:地方都市促進策 背景

(出所)JETRO・TOYOTAウェブサイト・各種新聞記事より みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 207: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

207

国内市場の持続的発展:アクションプラン詳細

アクションプラン 具体例 担い手

1 ジャカルタの渋滞解消

道路の全般的な拡張・修復

信号増設・十字路の整備

市内公共交通の充実 主な担い手はインドネシア政府

であるものの、官民連携協議会による協議、推進が必要となる

民間の支援プロジェクトが進行している一方、日本政府のODA支援などでより発展しやすい環境を作る可能性がある

2道路網の整備

(港から都市部・都市間道路) 都市間道路・地方インフラ整備

3 地方投資促進→中間層の育成(地方投資優遇・都市開発)

地方投資優遇

都市開発(計画・運用)

ローカル資源の活用

4 地場リソース活用

地元のリソースを活用した地場産品の高付加価値化

国内外市場へのアクセス支援

国内市場の持続的発展に関わる具体的なアクションプランは下記の通り

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

Page 208: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

208

インフラ改善により国内市場ボリュームの安定的な成長が図られる 以下の方法により国内市場販売を支え、インドネシアの目標である2035年自動車販売台数400万台を目指す

国内市場の持続的発展:ゴールイメージ

輸出拡大輸出拡大

国内市場拡大

裾野産業育成

裾野産業育成

≪3つのゴール≫

ジャカルタの渋滞解消

• ①道路の全般的な拡張・修復、②信号増設、十字路の整備、③市内公共交通の充実

道路網の整備(港から都市部、都市間道路)

• 都市間道路・地方インフラ整備

地方投資促進策(地方投資優遇・都市開発)

• ①地方投資優遇、②都市開発、③ローカル資源の活用

現在

約100万台

2020年125万台

2035年400万台

販売台数目標(工業省より)

5-2-2.国内市場の持続的発展に向けたアクションプラン

(出所)IMF World Economic Outlook Database (October 2017)・OECD・World Bankより みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 209: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

209

Page 210: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

210

外資優遇・規制緩和

① 業種・規模別の最低資本金の設定

例)自動車部品製造業(中小企業)では現地企業とのJVを条件とした最低資本金・最低投資額引き下げ

② 業種・規模別の投資優遇政策

R&Dセンター誘致

① 費用計上の上限拡大による減税効果

地場企業への技術移転

① 技術移転を前提とした合弁企業への税制優遇

技術力を有する日本の裾野産業を誘致するとともに、インドネシア地場企業との連携を推進することで、自動車部品サプライヤーの技術力強化を支援するもの

インドネシアの自動車業界の競争力を強化するためには、最先端技術を有する日系企業のR&D機能を誘致する必要あり。 R&D機関で開発された製品は同地での製造開始が予想され、新たなサプライヤー集積を図る機会となると同時にインドネシアにおける裾野産業の高度化へも大きく貢献するもの

このように外資企業導入による産業の底上げを図るべく、投資誘致を促進し、地場企業への技術移転も促進できるような政策が必要

裾野産業の高度化:全体イメージ

具体的アクションプラン

Page 211: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

211

インドネシアでは、外資参入に際し、最低資本金や最低投資額の規制が存在。インドネシアの場合、初期投資額合計が1億円弱となるため、裾野を形成する中小企業にとってのハードルとなっている可能性がある

タイと比較した場合、上記参入障壁により自動車産業における競争力向上が阻害される要因になりうることから、特に誘致を強化すべき産業や、企業の規模に応じた部分的な緩和措置を行うことが有効と考える

具体的には、高付加価値な自動車部品を製造業するサプライヤーや中小企業に対する緩和、または技術移転に向けた現地企業とのJVを条件とした最低資本金・最低投資額引き下げが挙げられる

裾野産業の高度化: 外資優遇・規制緩和 背景①

会社設立に関わる規制比較

分類 インドネシア タイ

最低資本金

最低授権資本 : 5,000万ルピア最低引受授権資本 : 授権資本最低25%外資企業の場合は最低資本金25億ルピア(約2,100万円)

外国人の労働許可証取得に際し、外国人1人あたり200万バーツ(約700万円)の資本金が必要

最低投資額土地建物を除く投資額合計100億ルピア(約8,500万円)超

会社法による投資額規制なし

企業ヒアリング

最低資本金規制(含む最低投資額)が進出のハードルとなっている(インドネシア未進出日系企業より)

最低資本金や最低投資額に関する規制がないので、(インドネシアと比べて)参入しやすい

進出済自動車関連メーカーの資本金割合

4.5%

26.3%

16.9%27.6%

6.6%

7.4%

2.1%5.3%

2.9% 0.4%1,000億超

100億超1,000億以下

50億超100億以下

10億超50億以下

5億超10億以下

3億超5億以下

1億超3億以下

5,000万超1億以下

1,000万超5,000万以下

1,000万以下(0除く)

2.7%

21.6%

14.3%

23.4%7.3%

8.5%

3.5%

11.8%

5.8% 1.0%インド

ネシア

タイ

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

(出所)JETRO ホームページ・現地ヒアリング・各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

資本金3億円以下の企業の割合はインドネシア10.7%に対しタイは22.2%(中小企業庁による製造業の

中小企業者の定義)

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BOI No. 事業活動法人所得税免除 機械

輸入税免除

輸出向け

生産用原材料輸入税免除

条件一般 SMEs[*1] EEC

4.8.8.1 エアバッグ/安全ベルト 3 年 5 年 -

4.8.8.2 エアバッグインフレーター、ガス発生器、ガス発生剤

5 年 7 年

4.8.8.3 エアバッグ用部品:イニシエータ、クーラントフィルター

3 年 5 年 -

4.8.8.4 安全ベルト用部品:インターロック、リトラクター 3 年 5 年 -

4.8.9.1 ブレーキブースター 3 年 5 年 -

4.8.9.2 ブレーキキャリパー 3 年 5 年 -

4.8.9.3 ブレーキマスターシリンダー 3 年 5 年 -

4.8.9.4 ブレーキホイールシリンダー 3 年 5 年 -

4.8.9.5 ホイールハブ 3 年 5 年 -

4.8.9.6 ブレーキパイプ/チューブ 3 年 5 年 -

4.8.9.7 ブレーキセット 3 年 5 年 -

212

タイではサプライヤー強化に向けた製造品目や企業規模に応じた投資恩典として、法人税免除や輸出用原材料の関税免除等の優遇制度あり

投資恩典も外資による新規投資検討に際する重要な要素となることから、ASEANにおける競争力強化のためには特定産業に対する優遇制度の充実も裾野産業集積には必要と考える

具体的には、最低資本金・最低投資額の規制同様に、高付加価値な自動車部品や、インドネシアで優位性のある車種製造(MPV・SUV等)に関わるサプライヤーへの恩典付与や、裾野産業形成する中小企業に対する優遇措置などが考えられる

裾野産業の高度化: 外資優遇・規制緩和 背景②

タイにおける自動車産業に対する投資奨励制度例

[*1]SMEに対する条件:1. 投資額(土地代および運転資金を除く)

:50万バーツ以上2. タイ人個人の出資比率:51%以上3. 負債資本比率:3対1以下4. 1,000万バーツ以下の国内調達中古機械の

使用も許可されるが、プロジェクト全体で機械総額の50%以上が新品であること。

5. 事業全体の固定資産純額(土地代および運転資金を除く):2億バーツ以下

事業活動(製造品

目)ごとに恩典制定

企業規模に応じた恩典

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

(出所)BOI ホームページより みずほ銀行国際戦略情報部作成

Page 213: 平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業 ...平成29年度アジア産業基盤強化等事業 インドネシア裾野産業育成支援ロードマップ策定等

213

近年、自動車メーカーは製造拠点のあるASEAN地域にR&Dセンターを設置し、開発・設計・評価機能の現地化を進め

ているが、主要メーカーの開発拠点設置状況を比較した場合、インドネシアに製造・販売拠点を有するメーカーでも、タイに開発拠点を有するケースが多い

背景として、タイは2012年自動車産業マスタープランにより、ASEANにおける競争優位性確保のため開発拠点誘致を方針に掲げ、優遇恩典を設定していることも要因の一つと考えられる

R&Dセンターの設置により最先端の技術導入が見込まれる上に産業の高度化が図れる。加えて、当該機関で開発さ

れた新製品の製造が同地で行われれば、新たな裾野産業の招致にも繋がるため、開発拠点の取込みは重要なポイントとなる

裾野産業の高度化: R&Dセンター誘致 背景①

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

(出所)各種情報より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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214

主要完成車メーカーでも開発拠点を複数国保有しない企業もあり、R&Dセンターの機能や設備上、一度設置をされると移転が困難であることも鑑みれば、R&Dセンターの早期取込は必須

タイ政府は昨年2017年にR&Dセンターを含む高度な技術呼び込みに対する恩典を新たに追加したばかりであり、ASEANにおける競争力向上のためにも、開発拠点誘致のための優遇政策検討が必要である

なおタイにおける新制度では、企業へ直接的な免税を行うのではなく、費用の計上額を条件に応じて引き上げることによる減税効果を与えるものであり、このような単純な免税・減税以外の恩典制度も検討の一つと考える

裾野産業の高度化: R&Dセンター誘致 背景②

投資・費用の種類免税上限の

追加額

1自社、国内での外注、海外機関と共同で実施する R&D (研究開発)

300%

2技術・人材開発基金、教育機関、専門分野の訓練センター、研究機関、科学技術分野の政府機関に対する支援

100%

3 国内で開発された技術の使用ライセンス料 200% 4 高度技術研修 200%

5タイ資本比率が51%以上のLocal Supplier (国内サプライヤー)に対する高度技術研修および技術的なアドバイス

200%

6 自社、国内での外注による製品 200%

タイにおける新たな恩典制度

最初の3年間の総売上高に対する投資・費用

追加法人税免除期間(上限金額も追加)

1 1% または > 2億バーツ 1年

2 2% または > 4億バーツ 2年

3 3% または > 6億バーツ 3年

タイの投資・費用割合に応じた追加恩典

例えば1億円投資した場合、3億円投資したものとして費用計上

が可能になる

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

(出所)BOI資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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215

前述の通り、裾野産業の高度化にあっては、外資企業の誘致によるサプライヤー集積や技術導入が必要であるものの、インドネシアの産業基盤を一層育成するためには、地場企業への技術移転が必要となる

外資企業への優遇を強化するのみでなく、地場企業の育成を促す観点から、地場企業との合弁により特に高度な技術移転を前提とする企業へは、更なる税制優遇などを設定することも産業高度化の手法と考える

また、インドネシアの国家開発計画において、産業の競争力強化のためには地場企業をグローバルサプライチェーンに組み込む必要があると述べられており、地場企業への技術移転は有益な手法である

裾野産業の高度化: 地場企業への技術移転 背景

タイにおける地場企業成長例

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

社名 日系企業による影響

ThaiSummitGroup(TSG)

日系の技術を積極的に導入し、日系自動車向け部品生産で急拡大

さらに日系の金型技術を取り入れるべく、2009年には、自動車ボディ用の金型製造を行うオギハラを買収した

SiamMotorsGroup

1960年代より、各種自動車部品製造へ事業を拡大し、日系の技術やノウハウを取り入れるべく日本電池やリケン、NSK、カヤバ工業など積極的に合弁を設立

SomboonAdvance

Technology (SAT)

主要顧客として三菱自動車、いすゞ、トヨタ、ホンダなどを持ち、日系ビジネスにより事業拡大

日系技術を取り入れるべく、日清紡ソムブーンオートモーティブ、ヤマダ・ソムブーン、ツチヨシ・ソムブーン等の合弁を多数設立し成長

外国直接投資(FDI)による地場企業への技術移転分析(論文)

論文名 結論

Productivity Gaps and vertical Technology Spillovers from Foreign Direct Investment: Evidence from Vietnam

ベトナムのサプライヤーは中間レベルのTFP(全要素生産性)を持つ企業から最も強くTFP向上の影響を受ける

低い生産性は地場企業の生産性向上に寄与しないものの、高すぎるとイノベーションが必要になるため、中間レベルの生産性を持つ外資企業が最も大きな影響を与えると推測

How Will the Origin of FDI Affect Domestic Firm's TFP? -Evidence from Vietnam

地場企業の規模ごとにFDIの影響を推定。中小企業(50人以下)の場合FDIによる地場企業への技術移転効果が生じやすくなるという結果

中小企業のほうが外資企業からの技術導入に柔軟に対応できるためだと推測

How Firm Capabilities Affect Who Benefits from Foreign Technology

FDIによって導入された技術の恩恵を受ける地場企業は、①吸収力の高い(R&Dを行っている)、②人的資本水準が高い、③技術能力が低い企業

③は、技術水準が低い企業ほど高いリターンが生じるプロセスに低コストでアクセスしやすくなるためと推測

(出所)各種報道・各種論文等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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裾野産業の高度化:アクションプラン詳細

アクションプラン 具体例 担い手

1 外資優遇・規制緩和

資本金・最低資本金規制緩和①高付加価値な自動車部品を製造業するサプライヤー②中小企業

外資優遇制度の整備①高付加価値な自動車部品②特定車種(MPV・SUV等)に関わるサプライヤー③中小企業

主な担い手はインドネシア政府であるものの、官民連携協議会による協議、推進が必要となる

2 R&Dセンター誘致

R&Dセンター誘致に関わる優遇整備

(費用の計上額を条件に応じて引き上げることによる減税効果等)

3 地場企業への技術移転地場企業への技術移転を前提とした合弁を行う企業に

対する税制優遇等

上記に加え、インドネシア地場企業からの要望事項をヒアリングする必要あり

裾野産業の高度化に関わる具体的なアクションプランは下記の通り

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

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裾野産業の高度化:ゴールイメージ

規制の部分的緩和や優遇政策を設定することで、参入障壁裾野産業を形成する中小企業を中心とした外資企業の誘致を強化し、サプライヤー集積を図る

外資のサプライヤーにより高度な技術が導入されれば、インドネシアの地場企業に対する技術移転機会も創出され、インドネシアにおける自動車産業の底上げが期待されるとともに、競争力強化にもつながる

輸出拡大輸出拡大

国内市場拡大

裾野産業育成

≪3つのゴール≫

1.外資優遇・規制緩和

• 特定業種・規模別の最低資本金設定

• 特定業種・規模別の投資優遇政策

2.R&Dセンター誘致

• 外資企業による開発拠点設置に向けた優遇制度整備

3.地場企業への技術移転

• 技術移転を前提とした合弁企業への優遇政策

優遇・規制緩和

外資企業参入

地場への技術移転

裾野産業高度化

5-2-3.裾野産業の高度化に向けたアクションプラン

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218

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

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5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

219

インドネシアの産業が持続的発展をしていくには、産業を支える人材も育成していくことが不可欠である。現状のインドネシアの人材に関する課題を鑑みると、人材育成を促進するための方策として以下の3点が考えられる

① 日本の技術支援による職業教育制度の充実

② 技術認定制度の充実による、製造業における高度人材の確保

③ 進出日系企業の従業員が、現地人材に技術指導を行いやすくするための就労ビザの条件緩和

具体的アクションプラン

職業教育制度の充実

① SMK・ポリテクプログラムの活用・強化

② より実践的なカリキュラムへと改善

③ 教員の質の改善

資格制度・基礎技術習得機会の充実

① 技能認定制度の充実

② ものづくりベーシック講座の開設

就労ビザの条件緩和

① 学歴・年齢要件など技術者へのビザ要件緩和

② 担当者による裁量を排除するための基準の明確化

産業人材育成に関するアクションプラン全体感

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産業人材育成:職業教育制度の充実 背景①

日系企業の声

インドネシアは2030年までに2015年対比2倍以上のワーカー・エンジニアが必要となっている 一方、SMK・ポリテクは、インドネシアの裾野産業を支える人材の供給源であるが、SMK・ポリテクに対してカリキュラ

ムが実践的ではない・教員の質が低い等の課題が存在し、産業界から期待された質の人材を輩出できていない状況

・エンジニア系はなかなか集まらず、高卒でも電気関連、機械関連等の知識が不足している

・オペレータークラスは計算ができない、掃除の仕方を知らないなど、根本的に問題あり

・ワーカーとして働く従業員は、学歴や学力といった次元ではなく、そもそも教育内容が悪すぎる

・ワーカーはほとんどスキルがないため、自ら育てた方が効率的・大学までの教育は10年くらい遅れているのではないか・学校で培った技術が実ビジネスとはギャップがある・インドネシアの工業高校と日本の工業高校のレベルが違うため、同じだと考えてはいけない

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

(出所)ADB資料・現地ヒアリングよりみずほ総合研究所作成

55

113

0

20

40

60

80

100

120

2015年 2030年需要予測

インドネシアのワーカーの数

2倍以上

(百万人)

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産業人材育成:職業教育制度の充実 背景②

実践的なカリキュラムの構築・産業界のニーズの反映・経験のある教員の不足といった課題の解決のためには、産業界の協力が必要である

タイは1990年代から産学連携を強力に推進し、人材育成に取り組んでいる。インドネシアでも日系企業が工業団地内にSMKを設立するといった取組みはあるものの、限定的である

現在、工業省でもSMK・ポリテクに対して「SMKイニシアティブ」や「ポリテクプログラム」、「リンクアンドマッチプログラム」などの改革に着手しており、こうした取組みを産学連携と組み合わせて、さらに発展させていく必要がある

政府による施策

SMKイニシアティブ(教育文化省)・資金を投入し、より高度なSMKを、2020年までに1,650校設立することを目指す

・2015年時点において、90校を設立 SMK活性化戦略(SMK教育委員会が実施)

・10のステップによりSMKの改革を目指す【10のステップ】①教員の質の改善、②管理・運営の電子化、③産業界との連携強化、④カリキュラムの改編、⑤技術開発研究所、⑥映像教材と映像を使用したe-Reportシステムの導入、⑦プロフェッショナル認定試験の普及、⑧学校設備の整備、⑨地方のSMKの拡充、⑩地域の企業等との連携

による地域活性化

ポリテクプログラム(工業省)・自動車メーカーと共同で自動車産業にマッチするようカリキュラムを改善する取組み

リンクアンドマッチプログラム(工業省)・SMKにおける職業教育訓練に産業界が参画し、産業界のニーズにマッチした人材の育成を行う取組み

工業団地内・特別経済区域にポリテク設立

現在までのインドネシアにおける産学連携事例

インドネシア自動車インスティテュート(IOI)・2016年、自動車産業の競争力強化のため、工業省、大学、企業が一体となって設立。企業に対する人材開発支援やコンサルティングを実施するほか、自動車技術専門のポリテクも所有

工業団地内へのSMK設立・2012年、丸紅と地元財閥アルゴ・マヌンガルによって、MM2100工業団地内にSMK「ミトラ・インダストリMM2100」を設立

・「産業界と教育界を結びつけること」をビジョンとしており、知識や技能だけでなく、態度や姿勢にも重点をおいている

・教育文化省からモデル校指定を受けるなど、国内での注目度も高い

SMKへの教育コースの設置・いすゞアストラモータ-インドネシアはが最新ディーゼル技術を教える「いすゞ教育プログラム」を北スマトラ州メダンのSMKに開設

・ジョグジャカルタ市のSMKにも同様の教育コースを開設している

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

(出所)現地ヒアリング・各種資料よりみずほ総合研究所作成

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産業人材育成:職業教育制度の充実 アクションプラン詳細

アクションプランに関して、具体的な優遇例を下記記載 産学連携を強化して、産業界のニーズに沿った人材の輩出を目標とする

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

内容 具体例 主な担い手

SMK・ポリテクプログラムの活用・強化

SMK・ポリテクプログラムの予算の利用 SMK・ポリテクの新設、設備の更新 工業団地内(MM2100等)SMK設立のノウハウ共有・横展開 SMK・ポリテクと日系企業の地域・学科に応じた連携方策検討

インドネシア政府・官民連携協議会

カリキュラムの改善

座学中心のカリキュラムから実技重視にシフトし、カリキュラムをより実践的なものへ改善① 産業界のニーズを反映した教材の開発② 日系企業の社内研修制度、評価制度の共有

学生の日系企業へのインターン派遣(実務経験の獲得)

教員の質の改善 企業からSMK・ポリテクへの講師派遣(実践的授業の実施) 教員の企業へのインターン派遣・企業で高度技術習得

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223

産業人材育成:資格制度の充実 背景

SMKポリテクの改革には時間がかかることが想定されることや、就職してからも再訓練の機会を提供する必要から、必要な技術の統計化を図り、再訓練の機会を提供する必要がある

インドネシアには、ワーカーの能力を図るものとして職種別検定試験(LSP)やエンジニア資格制度、インドネシア金型工業会が実施するものなど存在する一方で、認知度はあまり高くなく、日系企業の利用は進んでいない

また、基礎知識を習得するための一般的な教育資料やセミナーがないため、現場に必要な知識・技術を持った新卒に乏しい状況

現状、日系企業は裾野産業の中小企業進出が少ないため、大きな問題は生じていないが、中小企業が自社で全て人材育成することは難しいと考えられる

職種別検定機関(LSP)制度

政府から認可された外郭団体である職種別検定機関(LSP)が、原則として1LSP当たり1専門分野に資格認証を行う(複数の認証を行うLSPも存在)

2016年には全国に311のLSPが存在。2015年に200のLSPが認証されるなど近年増加傾向。これは、技能者・技術者育成のために、現政権が技能資格制度整備を推進しているため

LSPによる認証制度はSMK生等の職業教育の受講者が主な対象

技術資格と現場の技術評価の性格が強い能力資格の二つの資格系統で成り立ち、各3段階のレベルをもつ

今後、民間企業が参加しやすい資格制度へと変更予定

インドネシア金型工業会の技能資格制度

・日系企業各社が現地で実施する社内技能評価制度を基準に国家技能資格制度として発展

・より客観的な方法で技能評価を行う日本の技能評価制度を採用・技能試験の受講者はほとんどがインドネシア金型工業協会加盟の日系企業ないし合弁企業。試験官も同様

エンジニア資格制度

・2014年制定のエンジニア関連法11号に基づいて、インドネシアエンジニアリング協会が運営

・分野は、土木・建設、機械、電気電子産業等多岐にわたり、初級・中級・上級と3等級が存在

・2015年時点で、取得人数は累計9,000人

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

(出所)JETRO資料よりみずほ総合研究所作成

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224

産業人材育成:資格制度の充実 アクションプラン詳細

アクションプランに関して、具体的な優遇例を下記記載

技能認定制度の充実とモノづくりベーシックスキル講座を開設することで、産業人材の能力透明化と基礎技術の養成を目標とする

内容 具体例 主な担い手

技能認定制度の充実

各種技能認定制度を国が公認する試験制度に一本化①日本の「技術士」・「技能士」試験の体系整理②金型工業会の認定試験ノウハウの共有③多様な職種における国家技能認定試験の導入に向けた

SESPP事業(日本・厚生労働省が実施)の活用④IOIの取組の活用

認定試験の整備・実施①必要な認定技能の整理・認定試験の作成②認定試験の周知③合格者及び企業への優遇措置・インセンティブの検討

インドネシア政府・官民連携協議会

ものづくりベーシック講座の開設

教材セミナープログラムの作成①IOIの取組の活用・強化②各企業の社内研修制度・評価制度の共有

ものづくり講座の実施①各企業への講座の周知②中小企業との連携(人材育成面)の推進③企業からの講師の派遣

IOI・官民連携協議会・インドネシア政府

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

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産業人材育成:就労ビザの条件緩和 背景

インドネシア・タイ ビザ取得要件比較

インドネシアでは、作業を教える従業員も転職するなど、技術を継承する現地人材が不足。このため、日本人熟練工を派遣し、現地従業員に対して技術移転をする必要あり

しかし、ビザ取得には学歴/年齢条件や就業地規則等があり、その運用も不透明。結果として、日本からの人材派遣が減少し、人材育成や工場の運営に支障が出ている状況

短期・中期での技術移転やマシンの整備・調整にも支障が出るケースあり

雇用主である会社は、まず外国人雇用計画書(RPTKA)の承認を得た後(「外国人の就業規制」の記載参照)、IMTAを労働省の「外国人労働者オンライン」を通じて、労働者配置総局外国人労働者雇用管理局長宛て申請する。IMTAの有効期間は最長1 年間で、RPTKAに応じて延長が可能である。<IMTAの申請に必要な書類>①RPTKAの承認決定書 ②外国人労働者のパスポート ③外国人労働者雇用補償金(DKP-TKA)納付証明書④カラー証明写真 ⑤外国人労働者に付くインドネシア人(後継)の指名書 ⑥外国人労働者の卒業証明書⑦外国人労働者の履歴書 ⑧雇用契約書案 ⑨インドネシア法人の保険会社の保険証書

IMTA就業地規則

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

インドネシア タイ

外国人労働者の要件

① 役職に応じた学歴② 役職に応じた能力を有することの証明書または5年以上

の実務経験

③ インドネシア人に対して知識・技術移転を行う誓約書の提出

④ 6ヶ月超勤務の外国人労働者について、納税者番号(NPWP)の保有及び社会保険制度(BPJS)への加入

⑤ インドネシア保険会社の保険へ加入

外国人労働者に対する学歴や実務経験などの明確な要件は基本的になし

学歴要件に関して明示されていないものの、卒業証明書の提出は必要であり、実務経験など総合的な判断により決定される

(出所)JETRO(2017)「インドネシア 外国人就業規制・在留許可・現地人の雇用「在留許可」詳細」よりみずほ総合研究所作成

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226

タイ政府は、2017年に「スマートビザ」という外国人専門家に対する新たな枠組みを設定。具体的には、タイが重点業種として掲げる特定10業種の外国人専門家・投資家等に対し、4年間の滞在許可や定期的な報告義務の緩和措置を与えるもの

当制度は、タイ政府が経済の高度化として推し進める「タイランド4.0」の一環として開始するもの。2018年2月1日より申請の受付を開始しており、タイ投資委員会(BOI)は年間約1,000人ほどの申請を見込んでいる

恩典

4年間の滞在許可 出入国管理事務局への居住地報告義務の緩和

(通常90日⇒年1回報告のみ) 一時帰国による再入国許可免除

対象業種

①次世代自動車、②スマートエレクトロニクス、③メディカル&ウェルネス・ツーリズム、④農業・バイオテクノロジー、⑤先進的な食品、⑥ロボット工学、⑦医療、⑧航空・ロジスティクス、⑨バイオ燃料・バイオ化学、⑩デジタル

対象者

高度な技術を有する専門家 投資家 経営者 スタートアップ企業(在留許可1年)

承認方法 ビザ申請時に、BOI事務局、デジタル経済振興機構、外務省な

どの公的機関による承認が必要(手続期間は約30日)

スマート ビザ概要

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

(ご参考)就労ビザに対する政策事例(タイ)

(出所)BOI Webサイト等よりみずほ銀行国際戦略情報部作成

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産業人材育成:就労ビザの条件緩和 アクションプラン詳細

アクションプランに関して、具体例を下記記載

(※1)・現地人材に対して技術指導を行う日本人熟練工は、高卒であるケースが多い・定年退職した日本人熟練工が技術指導を行う場合、通常、年齢は60歳以上・技術移転は一朝一夕で実施できないため、現地人材が技術を吸収するには、1年以上のまとまった滞在期間が必要

・IMTA就業地規則有効期間は最長1年間で都度延長が必要であり、企業負担が大きい

(※2)・労働移住大臣規定では「学歴」・「年齢」・「滞在期間」が明確に定義されておらず、運用面であいまいさが残る

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

内容 具体例 主な担い手

技術者へのビザ要件緩和

ビザ要件の緩和(※1)① 現地人材に対する技術指導を目的として、就業・短期滞在する

技術者を対象② ビザ発給にあたり、学歴・年齢要件の撤廃もしくは緩和、滞在期

間の幅広い許可、IMTA就業地規則の緩和 主な担い手はインドネシア政府であるものの、官民連携協議会による協議・推進が必要となる

基準の明確化(担当者の裁量の排除)

労働移住大臣規定における学歴・年齢・滞在期間等の数値による明確化(※2)① 製造業における最終学歴を高校、高専卒の外国人技術者と明記② 60歳以上の外国人技術者への就労許可の明記③ ビザ要件を満たす外国人技術者の1年以上の滞在許可の明記

各種調整 VISA要件に関する外務省、労働移住省、工業省での調整 インドネシア外務省、日本国外務省での調整

インドネシア政府及び日本政府

(出所)JETRO「通商弘報」等よりみずほ総合研究所作成

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産業人材育成:ゴールイメージ

教育制度の充実やビザ条件を緩和することでの技術移転の円滑化により、現地のワーカー人材・マネジメント人材の質を向上させる。また、資格制度を充実させることにより、産業人材に必要な能力の透明化を図る

以上の施策は、産業人材を質・量ともに強化し、裾野産業の発展・高度化に資する ワーカーの育成により、高付加価値な製品のインドネシア国内における製造が可能になる

マネジメント人材の育成によりインドネシア人によるインドネシア人技術者への教育が可能になることにより、自国内での自立した技術向上が生まれる(インドネシア独自の強みの創造、発展につながる)

ワーカー人

材の育成

マネジメント

人材の育成

ワーカーの数の確保

就労ビザの条件緩和就労ビザの条件緩和

高付加価値な製造が可能に

&企業内育成コストの削減ワーカーの質の確保

自立した

技術向上インドネシア人による技術教育が可能に

ワーカー需要増に対応可能に

(2030年までに2015年比2倍増)

インドネシア

独自の強みの

創造・発展

産業人材の育成・高度化

ゴール③:裾野産業の

育成、高度化へ

資格制度の充実

育成効果を強化

能力の透明化

教育制度の充実

教育制度の充実

5-2-4.産業人材育成に向けたアクションプラン

228

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229

5-2-5.その他のアクションプラン

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230

その他に関するアクションプラン全体感

インドネシアの産業の持続的発展に関して、メインイシューではないものの、インドネシア産業に資する政策を導入する必要あり

日系企業はインドネシアに対して、資金調達面や為替リスクに対してネガティブなイメージを所持しているため、ネガティブイメージの払拭が必要

企業がインドネシアへの進出を検討する際、統計データなど各種情報収集が必要となるため、必要な情報開示や情報整備が必要

具体的アクションプラン

金融関連規制の緩和

① 外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制の要件緩和:手続きの簡素化、外部格付取得要件緩和

② 親子ローン手続きの簡素化:実施後1回の報告だけにする等

情報整備

① 統計データの整備

② 地場企業データベースの整備:非上場企業を含むデータベースを利用可能とする

③ 規制の可視化:該当ライセンスによる関連規制の一覧化

④ サイトの英語表示の整備

5-2-5.その他のアクションプラン

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その他:金融関連規制の緩和 背景・アクションプラン詳細

各種規制・条件に関するタイ比較とアクションプラン

外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制は、期中の事務負担(3ヶ月に一度の中銀報告)、為替ヘッジ等による追加コスト負担発生。また、外貨建て親子ローンの際にも外部格付取得が必要となるなど、企業の資金調達にも制約発生

親子ローンについて、インドネシアは許可制ではないものの、中銀への事前報告および事後報告が必要。そのため、緊急的な資金需要への対応に制約があることに加え、事務負担も発生

項目 インドネシア タイ

外貨建て対外債務の為替リスクヘッジ規制

外貨債務を有する企業は、一定の通貨ヘッジ比率・流動性比率・外部格付取得が必要

一定のヘッジ比率・流動性比率を満たすためには、一定の外貨負債額に見合う外貨資産保有もしくは為替予約等によるヘッジが必要

外貨建て親子ローンの場合でも格付取得が必要で あり(一部例外措置あり)、企業の資金調達に制約発生

同様の規制なし

親子ローン中銀への事前報告および事後報告が必要

親子ローンが残存する限りは中銀への定例報告必要

大きな制約となる規制なし

アクションプラン

手続きの簡素化 外部格付取得要件緩和

実施後1回の報告だけにする等

5-2-5.その他のアクションプラン

(出所)JETRO資料等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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232

その他:情報整備 背景

情報整備に関するタイ比較

統計データについて、多くのデータが集計されているものの、継続して集計されていなかったり、最新年度がやや古いものがあるため、投資検討や事業FS策定の際に求める情報を取得できないケースあり。また、HSコード別の輸出入統計など、国別など詳細なデータが揃っているがエクセルなどの加工可能データで取得することができない場合あり

地場企業のデータベースに関して、タイでは有料で整備されているが、インドネシアでは非上場企業について取得することができない

事業ごとの規制や必要ライセンスなど、手間をかけずに調べることができれば非常に便利 ホームページに関して、英語表示が整備されている部分が少ない

項目 インドネシア タイ

統計データ整備

統計局ホームページから取得可能な統計について、継続した集計がされていない統計データあり

エクセル等の加工可能データで取得できない場合あり(例:HSコード別の貿易データ)

インドネシアと同様、継続した集計がされていない統計データあり

各種省庁・団体によるデータ整備がすすむ

地場企業データベース整備 上場企業に関してはインドネシア証券取引所から

財務情報の取得が可能だが、非上場企業については取得困難

DBD(タイ商務省)にて株式会社(上場/非上場に関わらず)のデータ取得可能(有料)

規制の可視化 INTRサイト内でHSコードにかかる規制に関しては

一覧化されているが、その他事業に関する規制については別途調べる必要あり

一覧化されているものなし

サイトの英語表示整備 インドネシア語のみ、あるいは一部英語表記のサイ

トが多数 各ホームページに関して英語表示が整備されてい

るものが多数

5-2-5.その他のアクションプラン

(出所)各省庁・関係機関ホームページ等より みずほ銀行国際戦略情報部作成

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その他:情報整備 アクションプラン詳細

アクションプランに関して、具体例を下記記載

内容 具体例 担い手

統計データ整備 統計データの継続的な収集 加工可能データでの整備

インドネシア政府 各省庁・機関・協会等

地場企業データベース整備

非上場企業なども含めたインドネシア企業のデータベースを構築し、有料を条件として取得可能とする

インドネシア政府

規制の可視化 KBLIコードを入力することで、関連する規制や必要ライセンスなどが表示される

ホームページの整備 主な担い手はインドネシア政

府であるものの、官民連携協議会による協議、推進が必要となる

サイトの英語表示整備

各種サイトの英語表示整備 特に税関・INTR・BKPMについては全てのページを英語表示対応とする

5-2-5.その他のアクションプラン

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5-3.ロードマップ

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1.輸出競争力強化

2.国内市場の持続的発展

短期 中期 長期

輸出優遇制度の充実

■特定車種(SUV/MPV)

コストダウン化推進

■特定用途免税(USDFS)の適用条件緩和・手続きの簡素化

■ファクトリーオートメーションの推進

■渋滞解消

・FA化投資に係るcapital allowance

インフラ整備

■部品

■道路網の整備

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裾野産業高度化に向けたロードマップ①

国内市場

輸出

現在生産:約120万台輸出:約20万台

2020年目標 2030年目標

輸出:90万台(工業省より)

生産:150万台輸出:25万台(工業省より)

2035年目標販売:400台輸出:150万台(工業省より)

■地域別

格差是正・地方開発

法規制の安定的な運用

5-3.ロードマップ

■地方投資促進→中間層育成■地元のリソース活用による地場産品の高付加価値化、国内外市場へのアクセス支援

※本ロードマップの各プランは、優先度合いに応じて段階的に実施するものと想定

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3.裾野産業の高度化

4.人材育成

5.その他

教育制度の充実

外資優遇・規制緩和

■業種、規模別の最低資本金規制緩和

R&Dセンター誘致

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裾野産業高度化に向けたロードマップ②

■業種、規模別の外資優遇制度整備

■優遇制度整備

地場企業への技術移転

■技術移転を前提とした合弁企業への税制優遇

■教育制度の充実

■資格制度の充実■就労ビザの条件緩和

・SMK・ポリテクの充実

・ワーカー向け技術認定制度の整備

・学歴・年齢・就業地規則要件見直し

為替管理制度の要件緩和

情報基盤整備

■輸出取引やヘッジ規制に関わる条件緩和

■データベース・表示整備

■資金調達手続きの簡素化

短期 中期 長期

5-3.ロードマップ

※本ロードマップの各プランは、優先度合いに応じて段階的に実施するものと想定

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