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農業の成長産業化に向けた 先進事例集 20153経済産業省 九州経済産業局

農業の成長産業化に向けた 先進事例集 - 九州経済産業局農業の成長産業化に向けた 先進事例集 2015年3月 経済産業省 九州経済産業局 目次

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農業の成長産業化に向けた 先進事例集

2015年3月 経済産業省

九州経済産業局

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目次

6.福岡大同青果(青果卸売会社) 福岡県 --------- 12

7.株式会社共同(物流事業者) 熊本県 --------- 14

3.JAにじ(JA) 福岡県 --------- 06

4.ゼンカイミート株式会社(加工業者) 熊本県 --------- 08

5.株式会社おおやま夢工房(加工・販売事業者) 大分県 --------- 10

8.人吉市 熊本県 --------- 16 9.宮崎県 宮崎県 --------- 18

加工・販売

農業生産

物流・流通

自治体

1.くしふるの大地(農業生産法人) 大分県 --------- 02

2.株式会社さかうえ(農業生産法人) 鹿児島県 --------- 04

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株式会社力の源カンパニー(博多一風堂)が、2009年10月14日、久住高原に農業生産法人として設立。もともとは加工品を扱う企業の原点である“農業”をテーマに従業員が研修するための施設としてスタートした。

事業概要

地域活性化事業について 地域活性化事業にも力を入れている。例えば、農村商社わかば(竹田市運営による道の駅)とコラボしながら「営農者とネットワーク構築→県内外に共同出荷→地域企業とネットワーク構築→新たな食材提供・促進→農業のすばらしさを発信」というサイクルを循環させながら、農業者が元気で営農活動ができる環境作りを行い、竹田市が目指す農村回帰を実現しようとしている。 ・また、ガンジー牧場とコラボしてヨーグルトを共同開発するなど、近隣企業とも硬い絆で活性化に勤めている。

先進的な取組内容 ・農業生産事業については、販売元と密に連携を取り、作付時期、量を選定して出荷を実施している。販売は、外部に主軸をおき、グループ内部は状況に応じて出荷している。また、月間計画、週間計画、日々計画、売上計画・実績状況、各農作業・各業務管理簿、出荷管理、連絡系統などを整備し、業務をすべて見える化している。 ・生産者が適切な製造原価を把握していなければ利益向上はあり得ないと考え、販売価格(卸価格)の「コスト」トレーサビリティーを厳守している。その作物の製造原価を認識し、適正価格をバイヤーに断言できる生産者として、価値観を共有しながら売価調整(腹を割った交渉)を実施し、信頼を得て継続契約に繋げている。

株式会社くしふるの大地 代表取締役 阿河 秀紀 所在地 〒878-0205 大分県竹田市九住町大字白丹7549番地 TEL 0974-64-3220 / FAX 0974-64-3221

一企業の取組みから地域全体の取組みへ

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一企業の研修所からスタートしているので、地域の方々と信頼関係を構築するまでに苦労があった。上記のような地域活性事業などを通じて、これまで信頼関係を築いてきた。

・栽培の基本が分かるだけでは不足である。作付計画→栽培管理→出荷管理→販売、この一連の出荷調整までオペレーションを全員が実行できるようにしている。つまり、一人ひとりが経営者であるという認識を持って業務を遂行している。 ・従業員のうち農業経験者は1名で従来の農業を基にしながらも新たな発想を蓄積して農業を実施している。机上の理屈ではなく、実践がベースである。

約100年の歴史を持ちながら2008年3月に閉校した旧大分県三重農業高校(重政農業)を「くるふしの大地 重政農業」として再構築する。ここの広大な畑地を活用した露地・施設野菜での新規就農者確保に向けた研修及び就農支援を行う。加えて地域(営農者や卒業生)との施設を活用した融和を進めていきたい。 ・「くるふしの大地 重政農業」では県外からの人材を受け入れることも想定しており、今年、旅行業の許可を取ったところである。

取組における苦労と克服方法

人材育成・人材活用について

事業の課題や事業の展望等

農業生産

取組のポイント

●生産者が適切な製造原価を把握していなければ利益向上はあり得ないと考え、販売価格(卸価格)の「コスト」トレーサビリティーを厳守。

●地域活性化事業を通じて、地域企業や自治体と硬い絆を構築。

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①ケール・キャベツ・ピーマン等の契約栽培、②飼料用トウモロコシの大規模栽培から、飼料商品「サイロールⓇ」の製造・販売、③農業経営IT事業で他の農業生産法人などへ経営IT化の支援を実施している。

事業概要

IT活用について ・耕地面積の拡大に伴い、栽培の効率化と作物の安定供給を図るため、農業工程支援システムを開発した。 ・主たる機能として、圃場や作物別の作付計画及び工程管理や社員の作業状況管理・勤務管理、帳票印刷、社内メール等。これにより、①圃場管理、②作業状況管理、③情報共有、④未来予測が可能になる。 ・さらにそのシステムをバージョンアップし、「農業工程システム」として他社への導入を開始、経営IT化のサポートも行っている。

先進的な取組内容 ・契約栽培の取引先に「絶対納品」するために必要な農業経営手段として、農業経営IT化に取り組む。 ・経済的な利益追求に偏らず、「哲学・環境・経済」の調和による農業価値の向上を理念とし、自社における新卒採用・人材育成や、他事業者の支援事業などを実施。

農業生産法人 株式会社さかうえ 代表取締役社長 坂上 隆 所在地 〒899-7104 鹿児島県志布志市志布志町安楽2873-4 TEL 099-473-1990 / FAX 099-473-1979

IT活用等による経営管理と理念・哲学の追及

ケールを収穫する坂上社長

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事業拡大に伴い従業員が増加、社内でノウハウやリスクをどのように共有すればよいか苦労した。企業の歴史も浅く脆弱な面もある。これらを克服するためにITを使って知を共有化し、データ化して客観的な分析を可能にした。ただし、ITはあくまで管理ツールとして導入しており、ミーティングやOJT(On the job training)も重視している。 ・農業法人という枠ではなく、一民間企業、一中小企業として、やるべきことに取り組んでいる。

・さかうえでは2008年から新卒採用を実施。そして「一人ひとりが農業経営者」を標語に、①実践WORK=OJT、②研修SKILL=機器やITスキル向上、③学習STUDY=科学・技術・経営に関する学びの3本柱で人材育成を行っている。また一般企業で経営スキル等を習得した人を中途採用することで、体制強化につなげるケースもある。 ・マーケティング、採用手法・人材育成、特許、機械開発、などについては、外部の専門家にアドバイスをお願いするなど、外部人材の活用にも取り組んでいる。

農産物というモノを作って売る企業ではなく、お客様に価値を売る企業でありたいと考えており、そのためには目先の利益を追求するのではなく、環境循環・地球の最適化などを追求し、これに共感するパートナーとしてお客様が増えていくことを目指している。

取組における苦労と克服方法

人材育成・人材活用について

事業の課題や事業の展望等

農業生産

取組のポイント

●農業経営を支える農業工程支援システムを独自で開発し、生産管理、圃場管理等に活用。

●農業法人ではなく、一民間企業として成長を考える。

●地球環境の最適化を目指し、利益の追求ではなく価値を生み出す企業経営を行う。

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地域農協としての事業の他に、地域の農産物のブランド化・収益向上のために、加工品開発を行う部署を設置し、独自の加工品開発に取り組む。

事業概要

加工品開発について ブランド化の代表となるトマトスープを開発するため、トマトスープ用の出荷基準を定めた。また、商品価格に占める原料価格は10%程度であるため、多少高く買い取っても商品価格には大きな影響は出ないと判断し、A級品とほとんど差のない価格で買い取り価格を保証した。 ・味付け、協力メーカー探し、パッケージのラベルデザインの作成、成分分析協力者探し、テスト販売のアンケートなどを全てJA職員自身で行った。 ・試作に1年半をかけて開発に至った商品は「平成26年6次産業商品コンクール」で県知事賞を受賞し、道の駅での人気商品になっている。 ・ほうれん草のスープ、トマトカレー、トマトのピューレなど商品展開を続けている。

先進的な取組内容 ・農協として地域の農家の収入向上につながる新規事業に取り組む部署を設置。青果物の輸出、加工品開発などに取り組み、試行錯誤を重ねて、取り組みの方向性を「個別農家が手作りで生産しているジャムやお菓子などではなく、個別農家では取り組むことの難しい免許が必要な技術や工場との交渉が必要な商品を開発する」ことに定めた。 ・地域の中で生産量の多いトマトをブランド化する商品を作る為、まじめで添加物のないフリーズドライのトマトスープの商品開発に挑戦した。

JAにじ 営農部 園芸流通課 販売開発(外商)担当 考査役 佐藤 賢二 所在地 〒839-1332 福岡県うきは市吉井町福益417番1 TEL 0943-76-5520 / FAX 0943-76-5540

農家の収入向上につながる加工品開発

開発したフリーズドライトマトスープ

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加工品を作る過程で提携する事業者の選定や関係性構築に腐心した。製造物責任を明確にするために委託生産ではなく買い取り方式で連携体制を構築したり、加工過程を丸投げするのではなく加工の仕方について事業者の現場に立ち会い協議を行って品質向上に努める等、納得のいく商品開発・生産体制づくりのためにトライ&エラーを重ねながら、取り組みを行った。

・開発の主担当である佐藤氏自身、もともとはJAの中で商品開発などに携わった経歴はなく、一からの挑戦であった。また補助金の活用もしていないため、潤沢ではない予算の中での新事業開発であったが、逆に連携企業や期限などの制約もなく納得のいく商品づくりを行うことができた。専門家等の活用もしていないため、佐藤氏自身で試作品を作ったり、様々な関係機関に話を聞きに行ったりする中で、加工品開発に関するノウハウを習得することができた。机上の勉強ではなく、現場での実践が何より人材育成には有効だとのことであった。

今後は営業力の強化が必要だと考えている。現在も大手スーパーとの商談などを行っているが、農業生産者にとってさらに頼りになる存在になっていくために、販路拡大に努めたい。

取組における苦労と克服方法

人材育成・人材活用について

事業の課題や事業の展望等

加工・販売

取組のポイント

●地域の農産物のブランド化と収益向上の推進を理念に、品質にこだわった原料買取基準を作成するとともに、農家へ好条件の買取価格を提示。

●JA職員が自ら試行錯誤をして、加工品開発を実施。納得のいく品質を実現するため、自らが徹底的に関与。

JAにじ直売所「耳納の里」での商品販売

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・全開連(全国開拓農業協同組合連合会)の組織生産者が飼育する肉牛を「自らの手で消費者に届けたい」との思いで設立された。開拓組織は九州では大分県を除く6県にあり、組織の肉牛を中心として、と畜・加工・販売を行っている。 ・現在はイスラム教徒向けのハラールビーフの加工と販売に力を注いでおり、ムスリム(イスラム教徒のこと)を雇用し、2014年12月にはインドネシア向けに牛肉の出荷を開始したところである。

事業概要

農作物の海外への輸出について ・少子高齢化による人口減少や嗜好の変化による消費量の減少を考えれば、日本への渡航者向け供給体制と海外向け輸出が重要と考えている。 国内向けの消費減少が予想される中で、海外への輸出は、生産者が継続的に生産する上では重要となると考える。

先進的な取組内容 ・牛肉に特化した加工場という特色を活かして、ハラールビーフへの取り組みを開始した。また、2014年には、九州農政局よりハラール事業所としての認定を受け、事業推進を目指している。

ゼンカイミート株式会社 代表取締役社長 羽田 昭二 所在地 〒868-0303 熊本県球磨郡錦町西字花立62番 TEL 0966-38-1500 / FAX 0966-38-0429

ハラールフードへの先進的な取組を実践

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・ハラールビーフとなるためには、製造過程で先ずムスリムが関わることが前提となる。 ・ムスリムを雇用する上で、日本人従業員と如何にコミュニケーションが円滑に取れるかが重要となる。日本語が話せるムスリムが望まれるところである。

・インドネシア向け出荷頭数の安定化 ・国内向けハラールビーフの出荷量拡大

人材育成・人材活用について

今後の課題や展望等

加工・販売

取組のポイント

●ハラールフードの将来の成長に着目し、目下の利益よりも中長期的な事業の広がりを重視した行動を取っている。

●インドネシアへの牛肉輸出のために、認証団体から「ハラール認証」を取得。

・ハラールに関する認証基準は、国によって異なっている。 目指す国を定め、認証を取得するべきと考える。 ・ハラール基準を遵守した生産工程管理が重要となる。

取組における苦労と克服方法

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大山町(現在:日田市に合併)が地域の農業と観光業の発展を支援するために設立した第三セクター。宿泊施設、温泉、体験工房等の交流事業と、梅酒・梅ジュース等の開発・生産販売を行っている。

事業概要

加工品開発・海外輸出について ・大山町に多く植わっている鶯宿梅という物語性に優れた品種を活かした梅酒、地域のバラ農園のバラを使って色づかせたピンク色の梅酒、有田焼の窯元である深川製磁の青い瓶に入れた贈答用の高級梅酒など、地域の資源を活用したり、商品の魅力を最大化させたりする工夫を凝らした様々な商品を開発し続けている。 梅ジュースの開発も行っており「樹上完熟梅飲料 Vibrato」を販売し、大手航空会社の機内飲料として好評を得た。この梅ジュースの開発には12年かかっており、樹上完熟梅を使用という生産地だからこそできる原材料の活かし方をした。

先進的な取組内容 ・大山町が一村一品運動として60年近く栽培してきた梅の消費量・価格が低迷してきたことを危惧した町が、梅農家を支える為に第三セクターとして株式会社おおやま夢工房を設立。市場価格の2倍以上の価格保証を行い梅農家を支えつつ、品質・デザインによる商品力の向上と独自の販路開拓に取り組む。 ・特に海外市場の開拓には早期から取組み、アメリカやアジアへの輸出を行っている。

株式会社おおやま夢工房 代表取締役 三笘善八郎 所在地 〒877-0201 大分県日田市大山町西大山4587番地 TEL 0973-52-3000 / FAX 0973-52-3344

生産者を支えるため高付加価値商品を開発

贈答品市場に対応した梅酒の開発

商品開発時の初期段階からデザイナーを入れて理念を共有するなど、 CI・デザインを重要視している。特に海外の販路開拓を行う際は、各国の嗜好に合わせたデザインやネーミングを行うなど周到な戦略を実施している。

深川製磁とのコラボ商品「梅花爛漫」

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梅酒は大衆的なイメージが浸透していたため、高級・高付加価値の梅酒はなかなか国内マーケットに受け入れられなかった。そこで、フランス・ボルドーのワインフェスティバルにて試飲をしてもらったところ好評を博し、国内の高級市場開拓につながった。

・開発を主導しているのは、専務取締役総支配人の緒方英雄氏である。緒方氏はもともとは大山町の職員であったが、第三セクター設立と同時に職員を辞めて、事業に注力することとなった。 ・九州大学の学生を夢社員として20名程認定し、様々な研究において協力を得ている。デザイン系の学校とも連携して、イベント等での協力を得ている。地域づくり・人材育成の双方にとって、小さな成功体験を蓄積していくことが重要である。 ・農業は大変な知的集約産業であるため、幅広い教養が必要である。

国内にも海外にも、文化を創造していくような戦略が必要である。ライフスタイルの発信まで含めて田舎の良さを打ち出して行くとともに、農業の社会的位置づけを向上させるため、「新田舎流ライフスタイル研究所」の設立を検討している。地域づくりのためには、単純に商品を打ち出すだけではなくて、観光・交流まで含めた色々な仕掛けを行うことが大事だと考えている。 ・地域の方向性にはイスラエルのキブツという農村共同社会の考え方を参考にしている。

取組における苦労と克服方法

人材育成・人材活用について

事業の課題や事業の展望等

加工・販売

取組のポイント

●地域の特産である梅の消費量の低下という危機に対し、地域独自で梅の加工品開発を行い、農家へ好条件の買取価格保証を実施。

●大手メーカーとは異なる戦略をとり品質・デザインにこだわった商品開発を実施するとともに、高級市場の販路を開拓。

海外向けの商品展開

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生産・物流・流通・消費を全て俯瞰した先行く取組

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創業以来、福岡を拠点として青果物の卸売を行っている。福岡市内に3ヶ所ある青果市場・西部市場・東部市場は、2016年春先に建設中の新青果市場に統合される。

事業概要

農作物の海外への輸出について 通常、傷みやすいイチゴや軟弱野菜類はエアー便輸送による輸出がメインであったが、新たに開発したCA(鮮度保持)システムコンテナを活用することで船便輸送による輸出が可能となった。昨年は香港やシンガポールへ船舶によるテスト輸送を実施し、積極的な青果物輸出ビジネスに取り組んでいる。 船便輸送が軌道にのれば、大幅な輸送コストのカットにつながりアジアへの更なる販路が期待できる。

先進的な取組内容 新青果市場には定温(15℃・5℃)で対応できる卸売場の面積が現在の1400㎡から9946㎡と大幅に拡大し、要冷蔵の商品を外気の温度にさらすことなく卸売場内で搬出入できる。冷蔵システムを構築することで、青果流通の川上である産地と川下である販売店、双方の期待に応えられるコールドチェーンが実現する。

福岡大同青果株式会社 代表取締役社長 大野 憲俊 所在地 〒812-0893 福岡市博多区那珂6丁目23番1-134号 TEL 092-475-9059 / FAX 092-474-0045

ホームページのリニューアル(モバイル、タブレットへの対応可能)のほか、食品メーカーと一緒になって食のPR活動を行う等、情報発信を強めている。

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物流・流通

取組のポイント

●生産者、物流、仲卸、流通、消費者、一連の関係者が業務で抱える課題の解決につながる取組を率先して実行。

●卸売会社が食育を自ら推進し、中長期的な視点で地域の農業の活性化を促進。

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既存の青果卸売業は屋外の卸売場での作業が中心であったが、現在は販売方法が変わってきている。食のトレンドの把握、各種媒体からの情報収集、新しい食べ方の普及や検討、商談に至るまで幅広い感性が必要である。 青果卸売業界で働く人は男性が多いが、青果物の購入層は主婦を中心に女性が多い。消費者ニーズに応えるためにも、業界全体で女性が働きやすく、活躍できる環境づくりが重要といえる。

・生産者と直接契約をおこなっている大手量販店もあるが、取り扱う品質やサイズが指定され、契約量に過不足が生じた場合などは産地の負担が大きくなる。卸売会社を通してもらえると、契約外で生じた商品についても販路を提供するなど、調整の役割を担い役立つことができる。 新青果市場では一般消費者を対象に料理教室を開催できる施設や市場見学ルートが設置される予定である。青果物の卸売りだけでなく、市民に開かれた食育学習の場として、九州の野菜・果物の魅力を伝えることも重要な仕事である。

人材育成・人材活用について

今後の課題や展望等

・現代の食事スタイルの多様化に対応していかなければならない。特に若い世代の青果物摂取量を増やすことを課題としている。また他の企業と連携して意見交換をするなど消費者ニーズの情報を収集している。 家庭で食の決定権を持つ消費者の多くは女性である。消費者目線を持つために、福岡市青果市場内の業務に携わる女性でグループを作り消費推進活動等を実施している。

取組における苦労と克服方法

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九州全域のネットワークを構築し、中小規模の運送会社が水平分業で対等関係を構築しながら共同配送を行っている。現在は8社の連携で約100台のトラックがある。これにより、九州全域への配送を可能にしている。 ・農作物に限らず、カゴ車単位での配送サービスを行っている。現在は少量で多頻度の配送ニーズが高まっている。「小口混載」に対応できることが重要となっている。

事業概要

農業で応用できるサービス ・小口で集荷ができる点は農業分野に応用できる。本来、小口での配送は農作物に特化したものではない。しかし、少量を頻繁に配送することは、新鮮な農作物の配送に適している。

先進的な取組内容 ・鮮度管理については独自の技術と理念を持つ、物流・鮮度管理の専門家の大竹一郎氏の技術を用いている。大竹氏の技術と理念に対して同じ価値観を持つ九州のグループで業務を行っている。

ハブアンドスポークの考えで、熊本をハブとして流通網を構築している。熊本を中心に物流センター、スーパー、食品系の研究センター等を設立しており、南九州への配送も便利である。

カゴ車単位で温度調整も可能であるため鮮度管理ができる。

株式会社共同 代表取締役社長 山下 敏文 所在地 〒861-1113 熊本県合志市栄3766-24 TEL 096-248-1133 / FAX 096-248-5880

共同配送により新鮮な農産物の配送を実現

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・チームワークを高めて物事にチャレンジすることを社訓に掲げている。個人の能力も重要であるが、一人では完結できない仕事のため、それ以上に組織力が重要となる。 個人の能力よりも「ハート(熱意、好奇心、積極性等)」が重要である。専門知識は熱意を持って業務の中で学習すればよいと考えている。

・モーダルシフトが完成すれば物流は変わってくると思う。その際には、また何か仕事のやり方が変わってくるかもしれない。 会社の横の敷地に新鮮な農産物を大勢で食べられる施設を建設している。九州の多くの食材の配送に関わっているため、従業員や関係者を招いて一体感を強めたり感謝する場を増やしていきたい。

人材育成・人材活用について

今後の課題や展望等

物流・流通

取組のポイント

●消費者ニーズをより満たすために、少量を頻繁に配送する「小口混載」が求められることを先取りしている。

●同じ価値観や理念を持つ企業で事業を行うことで、連携が円滑に行われている。

共同配送は業務の管理がそれだけ増えるので大変である。それについては、ITを用いて共同配送を円滑にするためのシステムを活用している。1日何千というカゴ車が動くため、管理を行う必要があり、独自に構築している。 ・九州全域に物流ネットワークを構築する際には他地域の同業者と連携が必要であるが、同じ理念を持つ企業と連携を図ることに留意した。

取組における苦労と克服方法

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人吉市ではイスラム教徒(ムスリム)の食事である「ハラールフード」の加工に力を入れている。これは、熊本・宮崎・鹿児島の三県が全国有数の農業・畜産県であり、また日本初のインドネシアとトルコのハラール認証を受けたゼンカイミート株式会社が隣接地域に位置するという地理的要件と、世界人口の1/4を占め、約16億の人口を有するといわれるイスラム圏の中でも、特に成長がめざましい東南アジアのハラール市場に着目したことによる。 ・この取り組みを「地域資源を活かした人吉ハラール促進区を実現するための地域再生計画」として国に提案し、2015年1月に国が重要課題に掲げる地方創生に向けた地域再生計画として第1号の認定を受けた。 ・計画では、ハラール関連企業の集積(セントラルキッチン化)をはじめ、企業の輸出支援のほか、訪日旅行者及び国内居住者向けハラールツーリズムなども推進していく。

構想の概要

人吉市 経済部 商工振興課 所在地 〒868-8601 熊本県人吉市麓町16番地 TEL 0966-22-2111 / FAX 0966-24-7869

ハラールフードのセントラルキッチン化構想

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ムスリム16億人市場

と 畜 加 工 関連事業

物 流

地元農産物

ハラール関連事業の集積により、「立地競争力」を強化。

セントラルキッチンの構築

アウトバウンド

保 存

一貫したコールドチェーンの確立により、「輸出競争力」を強化。

コールドチェーンの構築

八代港 鹿児島空港

国レベルによる出口戦略の確立により、「海外競争力」を強化。 ⇒ハード・ソフトの海外展開

出口戦略の確立

地域資源を最大限活用した生産体制の確保により、「産地集積力」を強化。

アグリフードクラスターの形成

産地牛肉 国産飼料

先端技術やマーケットイン手法等を活用した起農家の創出により、「産業競争力」を強化。

アグリプレナー(起農家)の創出IT農業

地域間連携

6次産業化

マーケティング

農商工連携

ソフトビジネス

各国窓口(インドネシア、マレーシア、UAE、トルコなど)

FVC成功のための5つの戦略

農畜産業の成長産業化

化粧品原料

(認証など)

(コールドチェーン)

(コールドチェーン)

(コールドチェーン)

産学金官連携

フードバリューチェーン戦略事業イメージ

畜産が盛んな南九州3県(鹿児島1位、宮崎2位、熊本4位) と畜場が既に立地しているため馴染みのある地域性 5ha級の工業用地を確保しセントラルキッチンの形成に優位 2020年までにスマートIC整備することでスムーズな物流が可能

地域の強み

グローバルな取組が、ローカル経済を復活させる ⇒ 地方創生

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自治体

取組のポイント

●企業の支援を行うことをきっかけに、地域全体の活性化につなげる構想を策定。

●事業の拡大支援に終始せず、インバウンドの促進や国内のイスラム教徒への観光誘致など、事業を派生させる活動を推進。

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取組の内容 ・日本有数の畜産地域であることや、ハラール認証を取得した牛肉加工場が隣接しているという地域の強みを活かして、ハラールビーフへの取り組みを開始した。さらに、2015年には、国から地域再生計画の認定を受け、事業を推進している。

畜産の飼料は、現在外国から輸入された配合飼料が主であるが、国産の飼料用稲や米などを使うことで、国内の農業の活性化につなげられるよう模索している。

セントラルキッチン化(食肉センター、レトルト加工、調味料加工、弁当製造、化粧品製造、物流事業所など、ハラ-ル関連企業の集積を図ること)を目指すとともに、ムスリム観光客の誘致を行うため、2014年11月に2回、九州在住のムスリムを対象にモニターツアーを行った(日帰り、1泊各1回)。ツアー参加者は、facebookやTwitterで自らムスリムの同胞等に対して情報発信を行った。ムスリムは全国に10万人おり、東南アジアにおいても富裕層のムスリムが増加していることもあり、市場の広がりが期待できる。

・人吉市では、ハラール関連事業のほかラーメンをはじめ中華料理等に用いられるきくらげの生産支援を行っている。現在日本に流通しているきくらげのほとんどが外国産である。現在、人吉市では国産きくらげの生産を積極的に支援しており、高級デパート等で販売している。

今後の課題や展望等

・国際展開をするに当たり、語学力及びコミュニケーション力が重要になってくる。単に生産だけではなく、今後は調整力、経営の知識、交渉力等が求められる。

求められる人材について

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平成25年3月にフードビジネス振興構想を策定し、農林水産業を核とした宮崎県経済の拡大を図り、「食を通じた産業競争力の強化と雇用の創出による地域の活性化」を目指している。もともとは県内産業をどうするべきかという基本線からスタートしている。 ・そこでは、生産→製造→販売だけでなく、さらに誘致(観光客誘致、企業誘致)→波及(鉄骨資材の製造、農業機械の製造)という5つの領域からトータルに取り組むこととし、そのテーマとして食(フード)を取り上げた。 ・こうしたフー ドビジネス推 進のため、フ ードビジネス 推進会議等の 設置、戦略産 業雇用創造プ ロジェクトの 採択・実施、 フードビジネ ス相談ステー ションの開設、 6次産業化地 域相談会、等を 実施している。 ・また、フードビジネスプロジェクトの推進については3つのフェーズを設定している。①拡大:宮崎牛など強い部分の拡大、②挑戦:農業バリューチェーンの構築により弱い部分を強化、③イノベーション:新技術の活用等、である。

フードビジネスの推進

宮崎県 総合政策部 フードビジネス推進課 所在地 〒880-8501 宮崎県宮崎市橘通東2-10-1 TEL 0985-26-7052 / FAX 0985-26-0047

フードビジネス人材育成の推進

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・26年度の重点施策として人財づくり(フードビジネス人材育成)を行っている。厚生労働省の地域人づくり事業を活用して、フードビジネス人材育成プログラム(みやざきフードビジネスアカデミー)を事業展開している。これはフードビジネス関連企業の成長段階(創業ステージ→展開ステージ→成長ステージ)や目的に応じて必要なスキルを身につけるための長期セミナーである。

フードビジネス人材育成の推進

自治体

取組のポイント

●フードビジネスの課題は、事業承継・事業計画の明確化、組織・中核人材の育成、商品企画・販売。

●経営者を支える中核的な人材を内外で育成し経営者マインドを醸成すること、経営計画をブラッシュアップするためのサポート体制の構築が必要。

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平成26年度産業経済研究委託費 「農業の成長産業化へ向けたバリューチェーン構築のための人材関連調査」事例集 平成27年3月 発行 経済産業省 九州経済産業局 地域経済部産業人材政策課 産業部産業課農業成長産業化支援室 調査請負企業 株式会社NTTデータ経営研究所