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平成29年度日本臨床衛生検査技師会 中部圏支部 血液検査研修会
症例2
症例提示
金沢医科大学病院 検査部
藤田 晴美
25歳 女性
主訴:
現病歴:
既往歴:
ふらつき、高度貧血
めまいで近医受診、高度貧血で採血の結果 Ht15.0%、Hb5.3g/dL WBC2800/μL、PLT27000/μLで当院血液免疫内科紹介となった。
発熱(-)出血傾向(-)
膀胱炎 腸炎
検査所見 TP 8.2 g/dL
ALB 5.1 g/dL
Tbil 0.5 mg/dL
BUN 19 mg/dL
CRE 0.5 mg/dL
AST 19 U/L
ALT 23 U/L
LDH 314 U/L
ALP 127 U/L
Na 139 mEq/L
K 3.7 mEq/L
Cl 105 mEq/L
CRP 0.1以下 mg/dL
フェリチン 347 ng/mL
IgG 1585 mg/dL
IgA 247 mg/dL
IgM 254 mg/dL
ハプトグロビン 61 mg/dL
PT 94.7 %
PT-INR 1.03
APTT 29.5 sec
Fib 251 mg/dl
DD 0.8 µg/mL
FDP 3.1 µg/mL
WBC 2.23 x103/µL
RBC 1.27 x106/µL
Hb 5 g/dL
Ht 13.8 %
MCV 108.8 fL
MCH 39 pg
MCHC 35.9 %
PLT 29 x103/µL
Blast 43.5 %
Pro-Myel 0
Myel 1
Meta-Myel 0.5
Band 0
Seg 8
Lymp 46.5
Mono 0
Eos 0
Baso 0.5
A-Lymp 0
検査所見
末梢血所見
MG×200(BC) MG×400(PB)
末梢血 細胞
MG×1000
血液検査所見まとめ
生化学所見 LDH、フェリチン増加 血液所見 大球性の貧血、白血球減少、血小板の減少 血液像所見 白血球 芽球の出現(43.5%)N/C比大、核型円形~不整 核小体明瞭、核網繊細、辺縁好塩基性
好中球:脱顆粒、 偽ペルゲル様核異常
骨髄所見 MG×200
骨髄検査結果 赤芽球系 12.6 % 顆粒球系 80.6 % 単球系 2.2 % 細網細胞 0 %
前赤芽球 0.4 % 骨髄芽球 41 % 単芽球 0 % 巨核球数 0 %
塩基性赤芽球 4.2 %
好中性
前骨髄球 6.6 % 前単球 0 % その他 0 %
多染性赤芽球 7.6 % 骨髄球 1.4 % 単球系 2.2 % マクロファージ
1.6 %
正染性赤芽球 0.4 % 後骨髄球 0 % % 赤芽球系核分裂像
0 %
巨前赤芽球 0 % 桿状核球 7.6 % リンパ球系 2.2 % 骨髄系核分裂像
0
巨塩基性赤芽球 0 % 分節核球 10.2 % 異型リンパ球 0 %
巨多染性赤芽球 0 %
好酸性
前骨髄球 0 % リンパ芽球 0 %
巨正染性赤芽球 0 % 骨髄球 6.4 % リンパ球系 2.2 %
後骨髄球 0 % %
桿状核球 6.8 % 形質細胞 0.8 % 有核細胞数 223,100 /μL
分節核球 0 % 幼若形質細胞 0 % 巨核球数 6.25 /μL
好塩基球 0.6 % 形質細胞 0.8 % M/E比 6.4
骨髄所見
MG×100 MG×200
細胞密度 巨核球
MG×400
骨髄
MG×400
骨髄
MG×400
骨髄 ×1000
骨髄検査所見
①細胞密度 正~過形成
②脂肪滴 正常
③骨髄巨核球 著減
④M/E比 高
⑤顆粒球系
1)分布密度 増加
2)成熟分化 異常
3)芽球細胞 増加
4)形態異常 有
脱顆粒
ペルゲル核異常 低分葉好中球
5)異形成の合計 1+
⑥赤芽球系
1)分布密度 減少
2)形態異常 なし
⑦巨核球・血小板
1)形態異常 なし
2)血小板産生像 減少
⑧リンパ球系 なし
⑨異常細胞の出現
細胞の大きさ 中~大
N/C比 60~80%、>80%
核の形状 円形~核形不整
核小体 明瞭
核クロマチン 網状繊細
細胞質 好塩基性、空胞
顆粒 なし
細胞質辺縁 塩基性の縁取り
骨髄細胞所見まとめ
・骨髄は正から過形成 ・巨核球は標本上ほとんど観察されない。 ・芽球が41.0%あり分化傾向は若干あり。 ・顆粒球系が優位である ・芽球のN/C比は大きく、核クロマチンは繊細網状 核型不整、 核小体も明瞭である。 ・胞体は塩基性で塩基性の縁取りや空胞も認める。 ・好中球は偽ペルゲル核異常、低分葉核、脱顆粒が あった。
推測される疾患
AML M2? M4?M5? MDS関連?
単球の数は20%以下だな・・・
特殊染色
ペルオキシターゼ染色 エステラーゼ二重染色
×200 ×200 POX(+) ASD(+)
HE染色 骨髄生検
過形成骨髄、顆粒球系細胞は芽球細胞が全造血細胞の90%を占める。顆粒少ない。核は類円型で核小体を有し核の偏在傾向乏しく骨髄芽球の腫瘍性増殖が考えられる。M/E=5.1以上。赤芽球、巨核球高度減少。
CD34(+) PGM1(-) MPO(+)
免疫染色
M1?M2?
表面マーカー CD13 63.8
CD33 21.6
CD34 92.8
CD56 37.1
CD38 90.2
HLA-DR 88.8
MPO 87.6
TdT 28.4
遺伝子・染色体検査
・46,xx,t(8;21)(q22;22)[18]/46,xx )[2]
総分析細胞数 20細胞中 18細胞に異常を認めた
・AML1(RANX1)-MTG8(RANX1T1) キメラ mRNA定量 290000 コピー/μgRNA
追加検査まとめ
・N/C比大の芽球が41%認められた。 ・ペルオキシターゼ染色陽性であった。 ・エステラーゼ二重染色はASDのみ陽性であった。 ・細胞表面マーカーはCD13、CD34、HLA-DR、MPO、CD38陽性、 CD56、 CD33、TdTは弱陽性であり骨髄球系の細胞が示唆された。 ・骨髄生検は幼若芽球細胞が全造血細胞の90%を占める。免疫組織化学 的にCD34,MPO陽性、PGM1陰性であり骨髄芽球の腫瘍性増殖が示唆 された。 ・遺伝子、染色体検査でt(8;21)(q22;q22RUNX1RUNX1T1 陽性であった。
診断
FAB分類
AML-M2 WHO分類 反復性遺伝子異常を伴うAML
AMLwith t(8;21)(q22; q22);RUNX1-RUNX1T1
AMLwith t(8;21)(q22;q22);RUNX1-RUNX1T1
AML-M2
・ t(8;21)(q22;22);RUNX1-RUNX1T1を有するAMLで、一般的に 好中球における成熟傾向を示す。 ・ 本邦では若年者に発現することが多く頻度はM2症例中の約10%に認 められる。 ・芽球の特徴大小不同、核型不整、アウエル小体が多様性(好中球にも 認める)成熟型好中球ではペルゲル様の核異常を認める。低顆粒を認 める。細胞辺縁が好塩基性の縁取り状に染まっているように見える。 ・POX染色は芽球から好中球にかけて強度にそまる。
AMLwith t(8;21)(q22;q22);RUNX1-RUNX1T1
AML-M2
・細胞表面マーカーはCD34、HLA-DR、CD13の発現をほぼすべての 症例で認めるがCD33の発現は比較的弱い。CD19のリンパ系マーカ ーを発現することもある。
・また、CD56やKIT遺伝子変異の存在が予後に悪影響を及ぼす可能性が ある。
・t(8;21)(q22;22);RUNX1-RUNX1T1を有すると芽球の比率が20% 未満でもAMLと診断され、比較的予後良好である。