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第一部門賞 パネル団 課題中層・低層混在住宅地におけるまちなみ 制作 三條洋次郎・北島正一 金井 均・石井俊光 (フジタ工業横浜支店設計部) 入選者の 言葉 特選(篁部門) 松村正道 山下和正 まず私達の案が特選に選ばれたこと で、関係者特に審査員の先生方に感謝を 申し上げたいと思います。というのは、 この案は与えられた厳しい条件を守るこ とや、現実的な配慮に注意するあまり、 一見して変哲のない地味な案となり、果 してこの内容を審査の上で軽みとっても らえるか、かなり不安だったからです。 私達はこのプロジェクトに対して、二 つの組織から成るジョイントベンチャー として参加しました。デザインは建築家 (山下和正建築研究所)、技術面や調査、 経費負担はハウスメーカー積水化学工業 ポ踏 松村正道氏 一28一 羅一.慶しd■■唄ζ-■1「‘1

一30一...第一部門賞住宅生産振興財団会長賞 パネル団 課題中層・低層混在住宅地におけるまちなみ 制作 三條洋次郎・北島正一 金井 均・石井俊光

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Page 1: 一30一...第一部門賞住宅生産振興財団会長賞 パネル団 課題中層・低層混在住宅地におけるまちなみ 制作 三條洋次郎・北島正一 金井 均・石井俊光

第一部門賞住宅生産振興財団会長賞

パネル団

課題中層・低層混在住宅地におけるまちなみ

制作 三條洋次郎・北島正一

   金井 均・石井俊光    (フジタ工業横浜支店設計部)

入選者の

言葉

特選(篁部門)

          松村正道

          山下和正

 まず私達の案が特選に選ばれたこと

で、関係者特に審査員の先生方に感謝を

申し上げたいと思います。というのは、

この案は与えられた厳しい条件を守るこ

とや、現実的な配慮に注意するあまり、

一見して変哲のない地味な案となり、果

してこの内容を審査の上で軽みとっても

らえるか、かなり不安だったからです。

 私達はこのプロジェクトに対して、二

つの組織から成るジョイントベンチャー

として参加しました。デザインは建築家

(山下和正建築研究所)、技術面や調査、

経費負担はハウスメーカー積水化学工業

ポ踏

松村正道氏

一28一

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ーコ

パネル回

評選

催されるアクティビティの高い場とを計画し

ており,屋外での生活を活性化しようとして

いる。

 表現力もすぐれており,各住戸や,駐車

場,自転車置場等にも景観形成上のきめ細か

い工夫も試みている。

 本提案は,共有庭を囲む30戸程度の住戸を

近隣単位としてグルーピングし,各単位を緑

豊かな水路のあるオープンスペースの連続に

より結びつける全体構成としている。

 オープンスペースには,彫刻広場や図書室

などを設けた静的な場と,各種のイベントが

山下和正氏

がそれぞれ行い、入選の暁には住宅の建

設はハウスメーカーが行うという方式で

す。幸いこれは今回第一段階としては成

功した訳で、今後の実施設計以降の段階

でも協力して成功させたいと思っていま

す。 

プロジェクトチームは山下研より約七

名、積水化学より約六名(若手社員の研

修も含む)の計約十三名(プレゼンテー

ションのスタッフは別)で、現地フィー

ルドサーベイや会食などもとり混ぜて、

定期的なミーティングをもちました。調

査は一般事項の他周辺地区の歴史調査や

景観調査、航空撮影による眺望調査など

も行いました。

 住戸、住棟の型については積水化学工

業の工場生産の技術を生かすべく、さま

ざまな模索がなされた結果、セミデタッ

チドタイプが生れました配置設計につい

ては、このコンペの条件の中で最も厳し

い部分といえますが、幸い私達も数多く

の公営住宅団地設計の経験があり、また

積水化学工業でも住宅供給公社団地のま

一29一

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第一部門賞住宅生産振興財団会長賞

パネル国

中層・低層混在住宅地におけるまちなみ

堀池 秀人

(堀池秀人都市建築研究所)

題作

課制

ちづくりに多くの経験をもっているの

で、これらをふまえて現実性の高い提案

ができたものと思っています。近景は当

然として、遠景にも配慮した計画ができ

る立地であったことは幸運であったと思

います。

 最後のプレゼンテーション図面作成の

段階では、不慣れから来る時間のロスが

多く、図面が仕上ったのは結局締切当日

となってしまいました。久し振りのコン

ペ作業は苦しくも楽しかったといえまし

ょう。

 いよいよこれからは、関係者のご協力

を得て実施設計に入るものと思われます

が、優れた「まちづくり」のモデルとし

てふさわしいものに仕上げるべく、最大

の努力をかたむけてゆきたいと考えてい

ます。

             (山下記)

        *

準特選(第二部門)

           原田正彦

 このたび、第二回まちづくりコンペに

ついて「準特選・まちづくり月間実行委

員会会長賞」という名誉ある賞をいただ

くことになりました。昨年の第一回コン

ペで同じ山口を対象とした「ほたるみち

整備計画」で初挑戦してみたものの、見

事に落選という過去があるだけに、今回

のこの受賞は喜びもひとしおです。

一30一

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Σ

パネル回

評懸

場や建ち並ぶ住棟群,シンボリックな列柱空

間やゲートなどの様々な空間装置によって都

市情景を構築することをねらっている。

 また,都市に住むことは空間を共有するこ

とであるという理念のものに,戸別の庭は設

けず全体を共有の庭とし,居住者に都市生活

感としての意識を植えつけることをねらって

いるなど随所に大胆な提案を行っている。

 本提案は,22作品の中で唯一の街区囲み型

の住棟配置による異色作である。周辺の自然

との融合をねらった案が多かった中で,むし

ろ街区の外と内とを隔絶するように,街区の

外周を長大な住棟により囲い込み,都市を構

成する単位として街区に確固としたまとまり

をもたせることを意図している。

 住棟に囲まれた街区の内部においては,広

釘繋、

灘劉鱗

原田正彦氏

 私は学生時代を京都で過ごし、六年前

に山口県に就職したUターン組の一人で

す。故郷に帰って、京都で得た「都市を

みる目」を生かしつつ地元の文化に根ざ

した活動をしてみたいと思っていた私の

関心は、自然と「西の京・山口のまちづ

くり」へと向きました。幸いにして、意

を同じくする友人・上司・先生にも恵ま

れ、研究グループを結成したのが五年

前。この間地道ながらも、山口の歴史的

な町家地区、特に今回のコンペで取り上

げた大殿地区周辺を中心に、実測調査や

住環境調査等を計画的に進め、報告書を

まとめるとともに住民との討論会なども

行ってきました。このコンペ案は、こう

したこれまでのグループによる活動の中

から生まれたアイデアや提案を自分なり

に集大成したものと言えるでしょう。そ

れだけに、今回のこの受賞は私にとって

だけではなく、まちづくり活動を続ける

こうしたグループの仲間たちにとっても

大きな励みとなった事だと思います。

 さて、今回対象とした大殿地区内住民

一31一

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第一■部門賞住宅生産振興財団会長賞

パネル囮

まちなみ改善提案

土井 裕子

 (AD建築設計室)

題作

課制

の、地区環境に対する関心には極めて高

いものがあります。かつて一の坂川の改

修計画が進められた時、「ホタルの保

存」を求めた住民運動が起こったよう

に、私が今回提案したひろぽの核となる

「レンガの館」や「野村酒場」も住民の

強い要望によってかろうじて保存された

建物なのです。これらの再生問題も含め

て、この地区の将来を語る「大殿を考兄

る会」の設立総会が、四月末住民三一〇

〇名を集めて開かれます。私の受賞もい

つしか話題となっており、この会で「大

殿文化散策のみち計画案」を発表するこ

とになりました。この案を単なる夢で終

わらさない為にも、今後共こうした住民

との対話を繰りかえし、私達グループの

活動も各方面で積極的にアピールし、地

区全体としてのまちづくりの機運をどん

どん盛りあげていこうと決意を新たにし

ているところです。どうか、今後の山口

のまちづくりにも是非ご注目いただきた

いと思います。

一32一

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Σ

パネル囮

選 評

 延岡市の昭和町通りは,昔は市東端の十貫

港に至る流通の道として賑わったが港が閉鎖

されてからは,商家も倉庫もすたれて風情が

失われてしまった。この道筋には,部分的に

は歩道や,並木もあるが道全体としてはいか

にも殺風景である。

 本提案は,通りに面する公営住宅団地の敷

地や,仕舞屋前面の空地等を借りて歩道化

し,側溝には蓋を掛け,空地や並木周りに修

景ブロックを置くことにより,余り費用をか

けずに,豊かな,虚しい道路空間を創り出そ

うとするものであり,実現性のたかいすぐれ

た提案と思われる。Σ

審査風景 審査会場に展示された作品パネル

コーIIIーコ

一33一

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第二部門賞住宅生産振興財団会長賞

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課題 まちなみ改善提案

制作 河崎 泰了

    (工学院大学大学院一年)

轟翻曇繍惣雛

無識.筆

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一難露

パネル国

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蓋一部門賞

三七洋次郎

 当敷地を踏査したのは、昨年十一月末

の、初冬で、うす寒い日差しの中だった

ように記憶している。やぶをかきわけ畑

地を横切り、農家の庭へ抜けて、あのあ

たりが計画敷地ではないかと仲間と話し

合った。周囲は山林に囲まれ豊かな自然

を呈しており、この地域性に立脚した、

明確な土地利用方式をみつけ出す難しさ

を†二分に意識させられた。

 この環境が破壊につながるようなまち

造りであってはならない。これが私達の

共通の認識であった。

 一般的な計画手法としてはまず児童公

園位置を設定し、敷地内道路を引込み住

棟を配置し、残った部分に駐車場と緑地

を設けることであろうが当計画地にこの

手法を採用することに私達は不満であっ

た。他に方法はないか。きっとあるはず

である。この手法をみつけ出すことが私

達のテーマとなった.まず計画敷地四㎞

+一・七㎞のスケールの認識から始ま

り、住棟配置と敷地に対する住戸部分の

占める密度がチェックされ、空地の出来

るだけ多く取れる案へと収敏していっ

一34一

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Σ

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選 評

 大和の中心である奈良地方も、時代の波に

洗われて、伝統的集落そのものも変容すると

ともに、周辺に出来る新輿住宅地によって、

まちの風情が段々損われて来ている。本提案

は、現存するまちなみを改善するというより

は、新しく出来る住宅地の作り方に対する提

コーIIII」

案であり、住宅地の背割線に樹木や敷石を置

き、通り庭田露地を入れ込ませて楽しい空間

を創造し、その空間を共同管理することによ

って、連帯感を醸成しようとするものであ

り、ハード・ソフト両面から伝統的まちなみ

の再生を図るものである。

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罵緊延ま叢鞭等紬:識縫・懸鍔搾,轟藁蔀犠縛『舞勲ご∴』

継鞍藷輔翼コ毒盛趨

粥《繋轟儲ご庭幽~継4」謎∵壼♂墨継《1調帯衰隅三隅『‘一・・。叩.‘凹  .。.。      .。..』 ・一・

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象轍

鮭・群群

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艇鉦輔や

       戯阪

1 諺

パネル国

 た。空地は当然緑化されねぽならない。

 「住居スペースの残りが緑ではなく、緑

 の中に住居を配置したい」。

  公園とタウンハウスの共存が可能とな

 る計画案を造ろう。

  そればかりではない、人と住居と車、

 人と住居と樹木、分譲住戸と賃貸住戸、

若年世帯と老齢世帯、高層と低層等が明

解に分離されるのではなく、混在、共

存、共有の状態にあることこそが都市環

境であるという理念が認識、確認され計

 画に盛り込まれていった。

  最後まで問題となったのは、課題にあ

るまちなみという門葉であった。

  まちなみとは、ある意志をもって造ら

れた道、建物、植裁、構築物等が自然環

境と人間との融合で生み出される景観の

ことであり、絶えず変化してゆくもので

あろう。私達はその景観の要素として

道、屋根、樹木をとりあげ、敷地の高低

に沿わせた樹間の屋根のナチュラルなリ

ズム感を主張したつもりである。

 以上を、コンペの設計主旨への補足説

明と兼ねたい。

 期せずして、入選の栄誉に与かり、私

.達の模索の方向が間違ってはいないこと

が立証され、一同喜びに絶えない次第で

ある。

一35一