6
XCAR2A-Z1J1-01 必修テーマ 学習時間 30 到達目標 基本的な実験操作や実験器具を説明できたうえで,ヨウ素滴定や COD などに関する化学反応式 も作成でき,量的関係を表して計算できる。 中和滴定 CHECK1  中和の量的関係 酸と塩基が過不足なく中和するためには,酸の H + と塩基の OH - の物質量が等しくならなけれ ばならない。 (酸の H + の物質量) = (塩基の OH - の物質量) (酸の価数) * (反応する酸の物質量) = (塩基の価数) * (反応する塩基の物質量) TRY1 ある濃度の塩酸 10.0 mL をちょうど中和するのに必要な 1.0 * 10 -3 mol/L の水酸化カルシ ウム水溶液の体積は 16.0 mL であった。この塩酸のモル濃度〔mol/L〕を有効数字 2 桁で求めよ。 〔考え方〕 〔解答欄〕 解 答 中和反応を化学反応式で表すと次のようになる。 2 HCl + Ca(OH) 2 CaCl 2 + 2 H 2 O 求める塩酸のモル濃度を mol/L〕とすると,次式が成り立つ。 (酸の価数) * (反応する酸の物質量) = (塩基の価数) * (反応する塩基の物質量) 1 * * 10.0 1000 = 2 * 1.0 * 10 -3 * 16.0 1000 ∴ = 3.2 * 10 -3 mol/L3.2 * 10 -3 mol/L HCl 1 価の酸, Ca(OH) 2 2 価の塩基。 CHECK1  理論「滴定」を究める

30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

XCAR2A-Z1J1-01

必修テーマ 学習時間

30分

到達目標 基本的な実験操作や実験器具を説明できたうえで,ヨウ素滴定や CODなどに関する化学反応式も作成でき,量的関係を表して計算できる。

中和滴定1  CHECK1  中和の量的関係 酸と塩基が過不足なく中和するためには,酸のH+と塩基の OH-の物質量が等しくならなければならない。     (酸のH+の物質量)=(塩基の OH-の物質量)     (酸の価数)*(反応する酸の物質量)=(塩基の価数)*(反応する塩基の物質量)

TRY1

 ある濃度の塩酸 10.0 mLをちょうど中和するのに必要な 1.0 * 10-3 mol/L の水酸化カルシウム水溶液の体積は 16.0 mLであった。この塩酸のモル濃度〔mol/L〕を有効数字 2桁で求めよ。

〔考え方〕

〔解答欄〕            

解 答

 中和反応を化学反応式で表すと次のようになる。     2 HCl + Ca(OH)2 CaCl2 + 2 H2O

 求める塩酸のモル濃度を ≈ 〔mol/L〕とすると,次式が成り立つ。     (酸の価数)*(反応する酸の物質量) =(塩基の価数)*(反応する塩基の物質量)

     1 * ≈ * 10.01000

= 2 * 1.0 * 10-3 * 16.01000

    ∴ ≈ = 3.2 * 10-3 〔mol/L〕 答 3.2 * 10-3 mol/L

HClは 1価の酸,Ca(OH)2は2価の塩基。

 CHECK1 

理論「滴定」を究める

Z会
ポイント
医学科入試では,化学基礎・化学の基本事項の理解を前提に,標準問題から応用問題まで幅広く出題されます。そこで,まずは重要・頻出項目について,「必修テーマ」の中で小分けされた「CHECK」で確認し,「TRY」で演習するという,CHECK&TRYの反復型学習スタイルを通して,基本事項をしっかりと定着させることができます。
Page 2: 30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

XCAR2A-Z1J1-02

  CHECK2  中和滴定 中和の量的関係から,濃度が未知の酸または塩基の水溶液の濃度を求める操作。

  CHECK3  中和滴定の実験操作

暗記

 上記の操作を複数回行ってそれらの平均値をとることが多い。また,標準溶液とは,濃度が正確にわかっていて,他の水溶液の濃度を求めるのに使われる溶液のことであり,空気中で安定なシュウ酸二水和物 (COOH)2 ・ 2 H2Oなどを用いて調製する。なお,(COOH)2 ・ 2 H2Oは酸化還元滴定の標準溶液にも用いられる。

  CHECK4  実験器具の使用上の注意点

暗記

 上記の実験器具の使用上の違いは,試験でも出題されやすいので,理由とともに覚えておこう。また,器具の乾燥方法について,ガラス器具は加熱すると体積が少し変化してしまうため,ホールピペット,ビュレット,メスフラスコなど,溶液の正確な体積を測定するための器具は,加熱せずに自然乾燥させる。ビーカーや三角フラスコなどは加熱乾燥してもよい。合わせて覚えておこう。なお,酸化還元滴定においても,上記の中和滴定と同じ実験器具が用いられることを押さえておくこと(→  CHECK9  )。

Page 3: 30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

XCAR2A-Z1J1-03

滴定曲線2  CHECK5  滴定曲線 中和滴定において,滴下した酸または塩基の水溶液の体積と,混合水溶液の pHの関係を表した曲線。

  CHECK6  中和点 酸と塩基が過不足なく中和する点。

  CHECK7  滴定曲線と指示薬 中和点の前後で,pHは急激に変化する。その大きな pH変化に変色域が重なる指示薬を用いることによって,中和点を正確に測定できる。 中和滴定では,次の指示薬がよく用いられるので覚えておこう。

暗記指示薬 変色域

メチルオレンジ pH 3.1(赤)~ 4.4(黄) 酸性側フェノールフタレイン pH 8.0(無色)~ 9.8(赤) 塩基性側

 また,次に 3パターン(①~③)の滴定曲線を示す。

 ①~③の中和点での pHの違いは,中和点で塩が生成していることによる。塩の水溶液の液性は,その塩のもとになった酸や塩基の強弱によって決まる。中和点での水溶液の液性と,適切な指示薬をまとめると,次のようになる。

中和のパターン 液性 適切な指示薬① 強酸 + 強塩基 中性 フェノールフタレイン,メチルオレンジ② 弱酸 + 強塩基 塩基性 フェノールフタレイン③ 強酸 + 弱塩基 酸性 メチルオレンジ

Page 4: 30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

XCAR2A-Z1J1-04

〔解答欄〕 ⑴  a          b          c       

     ⑵  a          b          c       

解 答

a  強酸に弱塩基を滴下するので,中和点付近での大きな pH変化は酸性側に偏る。よって,指示薬はメチルオレンジが適切である。

b  強酸に強塩基を滴下するので,中和点付近での大きな pH変化は酸性側から塩基性側に大きくまたがる。よって,指示薬はメチルオレンジでもフェノールフタレインでもどちらでもよい。

c  弱酸に強塩基を滴下するので,中和点付近での大きな pH変化は塩基性側に偏る。よって,指示薬はフェノールフタレインが適切である。

⑴  a  エ   b  イ   c  ア⑵  a  ウ   b  ア   c  イ

 CHECK7 

どちらを用いても,中和点付近の大きな pH変化の中に,指示薬の変色域が含まれる。

TRY2

 次の a~ cの中和滴定について,⑴,⑵に答えよ。

a  0.10 mol/L塩酸に 0.10 mol/Lアンモニア水を滴下 b  0.10 mol/L塩酸に 0.10 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下 c  0.10 mol/L酢酸水溶液に 0.10 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下

⑴  a~ cの滴定曲線として適切なものを次のア~エの中からそれぞれ選び,記号で答えよ。

⑵  a~ cで使用する指示薬について述べた文として適切なものを次のア~ウの中からそれぞれ選び,記号で答えよ。

 ア フェノールフタレインとメチルオレンジのどちらでもよい。 イ フェノールフタレインは使えるが,メチルオレンジは使えない。 ウ フェノールフタレインは使えないが,メチルオレンジは使える。

Page 5: 30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

XCAR2A-Z1J1-05

逆滴定3  CHECK8  逆滴定 塩基性(または酸性)の気体や固体などの試料の量を求めるには,まず試料を過剰の酸(または塩基)と完全に反応させ,その後,未反応の酸(または塩基)を標準溶液で中和滴定することで,間接的にその量を決定する。

 ここで,入試でよく出題される逆滴定のパターンについて考えてみよう。 まず,①気体のアンモニア NH3を過剰の硫酸 H2SO4に完全に吸収させる。そして,未反応のH2SO4を②濃度のわかっている水酸化ナトリウム NaOH水溶液で中和滴定する。このことからNH3の物質量を求めるという流れである。 このとき,中和の量的関係 (酸のH+の物質量)=(塩基の OH-の物質量)(→  CHECK1  )から,NH3 ,H2SO4 ,NaOHについて,次の関係が成り立つ。

     (H2SO4から生じるH+の物質量) =(NH3から生じる OH-の物質量)+(NaOHから生じる OH-の物質量)

TRY3

 0.10 mol/Lの希硫酸 25.0 mLに,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチルオレンジを指示薬として 0.10 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,12.0 mL

で中和点に達した。希硫酸に吸収されたアンモニアの物質量〔mol〕はどれだけであったか。有効数字 2桁で答えよ。

〔考え方〕

〔解答欄〕              

Page 6: 30 理論「滴定」を究める 医学科入試では,化学基 …TRY3 0.10 mol/L の希硫酸25.0 mL に,ある量のアンモニアを吸収させ,反応後の溶液全体をメチ

XCAR2A-Z1J1-06

解 答

 希硫酸H2SO4は 2価の酸,アンモニア NH3と水酸化ナトリウムNaOHはそれぞれ 1価の塩基である。吸収されたアンモニアの物質量を ≈ 〔mol〕とすると,次式が成り立つ。

    ∴ ≈ = 3.8 * 10-3 〔mol/L〕 答 3.8 * 10-3 mol/L

 CHECK8 

硫酸とアンモニアから生じた硫酸アンモニウムは,強酸と弱塩基からなる正塩であり,水溶液中で加水分解して弱酸性を示す。本問の滴定における中和点では,硫酸ナトリウムの他に硫酸アンモニウムも生成しているので,滴定の終点は弱酸性になる。よって,指示薬として,変色域が pH

3.1~ 4.4のメチルオレンジを用いる。

 炭酸ナトリウム Na2CO3を塩酸 HClで中和滴定すると,図のように 2カ所に中和点がある滴定曲線が得られる。これは,Na2CO3が次式のように 2段階に反応することによる。

  Na2CO3 + HCl NaCl + NaHCO3  ①   NaHCO3 + HCl NaCl + H2O + CO2  ② 

 ①式の中和点(第 1中和点)は,生成した NaHCO3(弱酸 + 強塩基から生じる塩)により水溶液が弱塩基性を示すので,フェノールフタレインの変色(赤色→無色)で確認できる。 ②式の中和点(第 2中和点)は,生成した炭酸(H2O +

CO2)により水溶液が弱酸性を示すので,メチルオレンジの変色(黄色→赤色)で確認できる。

二段階中和コラム