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講座 プラズマ理論の技法 3、特異点解析 (日本原子力研究所那珂研究所) Singular Point Analysis TOKUDA Shinji NαたαFμsガon1~召s6α70h Es∫αわ1∫sh〃38ηち/αPαn A言o醜’o En678y R6s6α7ch Zn31々泥16,1わαrαん’31!-0193,/ (Received.20Apri12002) Abstract An introductory reviewis given onrecent developmentsin the methodsf confined plasma.Emphasis is put on the perturbation analysis of a magnet themarginally stablestateasateminalpointofcontinuousspect matching method pertinent to such a problem.The Newcomb equation and inner tial ingredients in the methods and the numerical methods for solving them ar Keywords: magnetohydrodynamic stability,tokamak,spectral analysis,eigenvalue outer region,inner region,Newcomb equation,inner layer eqation,respon 特異点解析というのは相当幅が広いジャンルであり, また,数学的に未解決な問題も残されているので,ここ でその全てを解説することはできない.よって,実際に 私がMHD安定性解析において,どのように特異点解析 を用いているのかを中心にお話しする. まず,序論で簡単な例をもとに特異点解析の概要を述 べ,次にMHD安定性解析における接続問題,それから 理想MHD内部層間題やN’ewcomb間題に対する数値解 法について解説する.その後,少し系統は異なるが外部 モード問題への応用について述べ,さらに抵抗性MHD 内部層問題というのをお話しする. 3.1序論 MHD安定性解析というのは広い意味で「固有値解析」 であると言える[1-3].そして,それを行なう際にしばし ば現れるのが「漸近接続問題」[4]である.ここでは,こ の二つのキーワードに対応する簡単な問題例として,井 戸型ポテンシャル問題とWKB法を紹介する[5]. 以下のような,エネルギーEを固有値とする一次元 Schr6dinger方程式を考える. 慕+争IE-uα)]ψ一・ 境界条件:ψ(0)=0,0<冗<・・ (1) (2) まず,ポテンシャルがない(U(%)=0)場合は自由状態 なので,解は ψ(%)=sin伽 (3) である.固有値Eは任意の定数をとれるので, α厩ho〆s6一配α’ゐ∫oん㍑4αs@吻3∫on.nαんα.ノ磁紘80か 913 J.Piasma Fuslon Res.Vol.78,No.9(2002)913

3、特異点解析 - University of Electro-Communicationsjasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf2002/jspf... · 紹介する.先程の方程式を改めて, 1d2y 7評+ρ(冗)y(冗)=o

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コ 講座 プラズマ理論の技法

3、特異点解析

   徳 田 伸 二

(日本原子力研究所那珂研究所)

Singular Point Analysis

                TOKUDA ShinjiNαたαFμsガon1~召s6α70h Es∫αわ1∫sh〃38ηち/αPαn A言o醜’o En678y R6s6α7ch Zn31々泥16,1わαrαん’31!-0193,/αP召n

              (Received.20Apri12002)

Abstract

An introductory reviewis given onrecent developmentsin the methodsforstability analysisofatoroidally

confined plasma.Emphasis is put on the perturbation analysis of a magnetohydrodynamic system that has

themarginally stablestateasateminalpointofcontinuousspectraWeaddressourselvestotheasymptoticmatching method pertinent to such a problem.The Newcomb equation and inner layer eq.uations are essen-

tial ingredients in the methods and the numerical methods for solving them are(iiscussed.

Keywords:

magnetohydrodynamic stability,tokamak,spectral analysis,eigenvalue problem,asymptotic matching,

outer region,inner region,Newcomb equation,inner layer eqation,response method

 特異点解析というのは相当幅が広いジャンルであり,

また,数学的に未解決な問題も残されているので,ここ

でその全てを解説することはできない.よって,実際に

私がMHD安定性解析において,どのように特異点解析

を用いているのかを中心にお話しする.

 まず,序論で簡単な例をもとに特異点解析の概要を述

べ,次にMHD安定性解析における接続問題,それから

理想MHD内部層間題やN’ewcomb間題に対する数値解

法について解説する.その後,少し系統は異なるが外部

モード問題への応用について述べ,さらに抵抗性MHD

内部層問題というのをお話しする.

3.1序論 MHD安定性解析というのは広い意味で「固有値解析」

であると言える[1-3].そして,それを行なう際にしばし

ば現れるのが「漸近接続問題」[4]である.ここでは,こ

の二つのキーワードに対応する簡単な問題例として,井

戸型ポテンシャル問題とWKB法を紹介する[5].

 以下のような,エネルギーEを固有値とする一次元

Schr6dinger方程式を考える.

慕+争IE-uα)]ψ一・

境界条件:ψ(0)=0,0<冗<・・

(1)

(2)

まず,ポテンシャルがない(U(%)=0)場合は自由状態

なので,解は

ψ(%)=sin伽 (3)

である.固有値Eは任意の定数をとれるので,α厩ho〆s6一配α’ゐ∫oん㍑4αs@吻3∫on.nαんα.ノ磁紘80か

913 J.Piasma Fuslon Res.Vol.78,No.9(2002)913-924

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Joumal ofPlasma an(i Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002

E=(hπ)2/2別>0は連続スペクトルである.これは,量

子力学的には散乱状態を意昧する.一方,

uα)一/謬濃 (4)

のような井戸型ポテンシャルを考えた場合,井戸の深さ

Uoが十分深ければ,そこに離散固有値(点スペクトル)が

存在する.それでは,このような束縛状態が存在するた

めに必要な,最小の深さUoを求めるという間題を考え

てみる.束縛状態の境界条件としては,

ψ(O)=ψ(+○○)=0

y ア=αx

ア=Slnx

!!

ノ1

(5)

である.まず,井戸の外側の領域では波動関数は減衰し,

ψ(冗)=o exp(一翫), (%>α)

κ2一一2響    万

(6)

(7)

π/2

、               !、             ’

 ! 、

ノ  、!    、

、、

、 ’!

Fig.1 Condition that the two graphs intersect.

 ノ

/X

や電流分布ということになり,例えば,プラズマの圧力

がある程度高くなれば,そこで束縛状態というのが

MHD方程式から出てきて,そのために閉じ込め圧力の

限界が決まるといったことである.このような問題の解

析方法として漸近接続法[4]が用いられる.

 漸近接続法のすべてを説明するのは大変なことだが,

簡単な問題で,例えば,

と表される.また,井戸の中の領域では

ψ(%)=sin(たκ),(0<%<α)

h2一婆(E+研))

  充

(8)

(9)

d2ツ

欲2+馴κ)y(冗)=o

境界条件:y(0)=y(π)=0

     (?(%)>0(0≦冗≦π)

(12)

(13)

(14)

と表される.ここで,κ=αにおいてψ(%)とdψ/砒が連

続であるという接続条件から,雇=獅/刎に対する方程式

蜘一±(2論)昭(㎞)・漁)<・(1・)

が求まる.よって,Fig.1の交点から,束縛状態が存在す

るために必要な井戸の深さが

・一(,論)毘く多一砺>謙 (11)

のように求まる.このように,固有値問題の一般的な性

質として,まずは自由状態(連続スペクトル)が存在し,

それに対してある程度深いポテンシャルが加えられる

と,東縛状態(点スペクトル)が現れるということが言

える.それが例えば水素の場合では可算無限個あり,中

性子と陽子の場合は一つだけ存在する.そこで,MHD

安定性解析というものを,「固有値問題が点スペクトル

をもつ条件」を求める事であるとみなす.すると,井戸

の深さに相当するものがプラズマの圧力勾配(ベータ値)

といった方程式の固有値Eを求める場合に,WKB法と

いうのが用いられる.この方法は,S,(冗)(乞=O,1,…)と

いう未知関数と小さなパラメータδを用いて,解を

yα)一呵ま耳δ’ )1(15)

のように展開して表し,このS,(冗)を逐次的に決めてい

く手法である.方程式は

歩(薯)2+蜘一・

ま(・薯薯+撃)一・

のように各オーダごとに分解される.

メータδが

  1δ=一 厄

(16)

(17)

(18)

(16)式から,パラ

(19)

と決まり,最初の二つ(So(卑),S1(冗))までを解いた近似

914

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Lecture Note

解(WKB解)として

ツα)一・繍曲[可諏司

と求まる.境界条件を用いると固有値は

Singular Point Ana翌ysis

(20)

  源一 朋  (%一1,2,…)   (21)    兀π煽砒’

という離散的な値に決まる.この結果は,%が大きいほ

どδが小さくなり,より厳密解に近くなることが言える.

 これで何も問題がなければここで終りだが,WKB解

で問題となるのは,もしQ(κ)=0となる点があると,こ

の近似が破綻することである.これの対策としてはいろ

いろ方法があるが,ここでは漸近接続法を用いた手法を

紹介する.先程の方程式を改めて,

1d2y7評+ρ(冗)y(冗)=o (22)

と書き直し,9(O)=0であるとする(E;1/ε2とおい

た).∬=0の近傍でQ(x)=砿という直線で近似できる

とした場合,その近傍では

1d2y7評=一鰐(κ) (23)

S.Tokuda

霧 2霧z

Rcgloll IH’

アm(x)is・scillat・ry, 穿 0ノ

ノバ

κ

RcgiQllIア1(x)isexponential三ydecreas1

           ’         ’職 鴨 聯巴 叩 ぜ

 イ彰 蒙Reglonll IxIく〆く1

という方程式で表され,この%=0は特異点ではない.つ

まり,先程の問題は近似が悪いのであって,もとの方程

式は悪さをしていない.よって,π=0の近傍で別な良い

近似解を見つけて,WKB解とつなげてやればよいこと

になる.これが接続問題である.接続の仕方を簡単に説

明すると,例えばFig.2のようにQ(x)がゼロ点をもって

いた場合,領域皿では振動的な解

ym(%)一F卜Q(冗)r1/4

       ・s㎞[証o緬欲1+9]

が得られ,領域1では指数関数的に減少する解

煎)一6[ρα)1一拠exp[一諾爾d冗1

(24)

(25)

が得られる.ここで,領域Hの解yII(卑)を見つけて

yl(冗),ylil(卑)とつなげてやれば,未知定数F,g,Cの問

の関係が求まり,WKB問題が解けたことになる.そこ

で,領域Hについてはx;厩(α《1)と変換し,%=0

の近傍で引き延ばされた変数オを用いてyII(%)の方程式

x

Fig、2 Three regions for the case when Q(x)is increasing and

   Q(0)=0.

を導く.冗=0におけるρ(冗)の傾きがαであるとき,

α≡ε2/3α一1/3と定義してやれば,(23)は

d2yII

dオ2=砂II(オ) (26)

というAiryの微分方程式[4]になる.この解はAiry関数

ん(オ),β(オ)を用いて,

ツII(オ)=z)ん(渉)+Eβ(オ)

で表されるが,Airy関数はオ→・○において

州一嘉1/4expチオ3/2

Bf(オ)一が1/4exp暑渉3/2

(27)

(28)

(29)

という形に漸近することが知られている.まず,yII(オ)

のオ→+・・とyl(冗)のκ→0とを接続することで,

D=2冴(αε)一1〆66,E=0 (30)

が求まり,さらに,ッII(オ)のオ→一・・とyIII(κ)の

%→0とを接続することで,

  (αε)1/6   πF=海P=26・9=π

(31)

が求まる.このように,ッ(冗)のWKB近似であるッ1(ヱ)とyII王(劣)の両方が適切な領域が存在しない場合に,

ッII(∬)を用いることで二つの領域を漸近接続することが

できた.MHD理論では領域1,皿を外部領域,領域∬を

内部領域(または内部層)と呼ぶ.内部領域では,特殊

関数の漸近展開がしばしば活躍する.

3.2 MHD安定性解析における接続問題

 それでは,これまでの話がどのようにMHD安定性解

析につながるのかを説明する.ここでは方程式系は一流

915

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Joumal ofPlasma and Fusion Research Vol.78,No.9 September2002

体を考える[6,7].

∂ρ

一十▽・(ρ∂)=0∂ピ

 Dρ可u=一▽カ+ノ×B

携(カρ一「)一・

E+u×.B;ηブ

ただし,

D  ∂一=一十u・▽Dオ ∂オ

(32)

(33)

(34)

(35)

(36)

また,変位電流を無視した準定常なマクスウェル方程式

を用いる.

▽×B=μoブ

▽・B=0

∂B

一+▽×E=0∂オ

▽プー0

プラズマの平衡条件は,∂/∂オ=0とu=0より,

▽ρ=ノ×B

(37)

(38)

(39)

(40)

(41)

であり,これらを基礎方程式とする.幾何学的な配位は

トカマクに代表されるような軸対称配位を考える[8]

(Fig.3).軸対称系(プ,~,φ)における平衡磁場は

B=▽φ×▽ψ+F▽φ (42)

で表され,ψ(7,z);collstは磁気面(B・▽ψ=0)に相当

し,Fはトロイダル磁場を与える関数である.平衡条件

から,F=F(ψ),ρ一ρ(ψ)のようにψだけの関数で表さ

れることがわかる.さらにトカマク配位の特徴として,

トロイダル磁場凧耽FI▽φ1はポロイダル磁場β1,=1▽φ

×▽ψ1より十分大きい状況を想定する(Bt》Bi,).

 実際にMHD方程式を取り扱うときには,磁気面関数

ψを座標系に用いるのが便利であり,磁束座標系(ψ,θ,φ)がよく使われる.ここで二つの回転角を用いて

いるが,トロイダル角φは先程の軸対称系と同じであ

り,厳密に定義できるのに対し,ポロイダル角θの定義

には任意性がある.例えば,θを

Z

Φ醸議

裟慧

慧難

難難螺警

難嚢鍵馨

Fig.3 Axisymmetric(tokamak)configuration

   B・▽φ9(ψ)二B.▽θ

r

(43)

となる(磁力線を直線にみる)ように定義することは常

に可能ではあるが,これの力学的アナロジーを議論する

ときりがないので,ここでは深く立ち入らない.このよ

うなトーラス上のベクトル場の特徴として,有理面とい

うのがある.これは,

9(ψ,,,/,、)一塾L

    %

(44)

のように安全係数g(ψ)が有理数となるような磁気面

ψ,珈のことであり,この面上では磁力線がポロイダル方

向に%回,トロイダル方向に窺回廻って閉じている.

 MHD理論ではこの有理面が重要で,しばしば問題と

なる、ある物理量を表すスカラー関数∫(ψ,θ,φ)はθ,φ

の二重周期関数であり,一般に

∫(ψ,θ,φ)一Σ痴(ψ)exp[i(漉θ一%φ)]

     ”’,”

(45)

のように展開される.ある別,%の成分に着目する(ヘリ

シティを決める)と,

916

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Lecture Note SingularPolntAnalysis S.Tokuda

B・▽万1~,n=i(吻B・▽θ一ア2B・▽φ)ガ,1,、,

   =i[(B・▽θ)(窺一アη(ψ))]ガ,,,,、

(46)

(47)

より,磁力線に沿ったガ,,,“の変化はψ刀,/,、という有理面上

でゼロになることがわかる.つまり,磁力線とヘリシ

テイが一致している物理量は,磁力線に沿って一定であ

ることがわかる.ある意味当たり前のことを表してはい

るが,このことが現実に様々な問題を引き起こす.例え

ば有理面のために方程式が解けなかったり,物理的には

磁場の弾性がそこで消失したりする.

 また,具体的に運動方程式をみてみると,中性流体と

は異なるMHDの特徴として,.渦が発生しやすいことが

挙げられる.オイラー方程式の場合はヘルムホルツの渦

定理(渦の不生不滅)が流体力学の教科書[9]に必ず書か

れているが,MHD方程式の場合にはあまりそういうこ

とは書かれていない.それは,平衡状態でない限り,一

般には

▽×(ノ×B)≠0 (48)

であり,渦が発生しやすいからである.もう一つMHD

において重要なのは準中性条件▽ゴニ0であり,これを

用いると渦度に対する方程式(Shear-Alfv6n則)[8]が得

られる.

Bく▽×霧)一B惣・▽(台)+2κB・▽ρ(49)

これによると,渦を生成する項は二つあって,一つは磁

場に平行方向の電流の湾曲による項であり,もう一つは

磁場の曲率(κ)と圧力勾配による項である.圧力が低

い場合や,曲率のないスラブ形状の場合は第二項はゼロ

であり,第一項が効いてくる.しかし,ここで大事なの

は,第一項は有理面においてゼロになることで,これが

方程式に特異性を出す原因となる.

 以上は渦度の磁場に平行な成分に対する方程式の話で

あるが,運動方程式だけでもまだ解くべき方程式が二つ

残されている.これらをなるべく簡約化して扱いやすく

する方法,すなわち,簡約化されたMHD方程式(re-

ducedMHD equation)の導出法としては色々提案されて

いるが,考え方としては二通りに分けられる[7,8].一つ

は,方程式にグローバルに適用されるパラメータ(例え

ばアスペクト比)が非常に小さい(または非常に大きい)

として,簡約化する方法である.もう一つは,そのよう

なことができない場合に,特定の領域,あるいは特定の

モードだけを解析の対象にする考え方である.ここでは

一番簡単な簡約化方法として,アスペクト比が1より十

分大きく(アスペクト比展開),ベータ値が有限でありな

がら,低いという近似を用いる.7本のMHD方程式を

線形化し,1本にまとめると,静電ポテンシャルψに関

する固有値間題は

哉{[γ2+∫(冗)]割+P(劣)ψ(%)一・

という形で表される[8].

のため固定境界条件

ψ(0)=ψ(1)=0

(50)

領域は区間(0,1)とし,簡単

(51)

を考える.ここで,γ2が固有値であり,関数八x)は区間

(0,1)において∫(x)≧0を満たす.つまり,固有値γ2

が正(不安定側)であれば,その固有関数はeXI)(γオ)で

成長することに相当する.また,γ2が負(安定側〉であ

るときは,

ヨ冗A∈(0,1),γ2十∫(冗A)=0 (52)

であるため,γ2は連続スペクトルに属することがわか

る.また,八%o)=0を満たす点κoが存在することが問題

となり,すなわち,そこが有理面に相当する.

 我々の目的は,ポテンシャルV(κ)がベータ値βに依

存して変化する際に,最初に不安定固有値γが現れる

ベータ限界β、,を求めることである.これは安定性解析

における一つの課題である.もう一つは,そのγが現れ

るときのγのβ依存性を求めることであり,つまりβ。,

の近傍で

γ=6(β一βcr)α (53)

としたときの,指数αを求めることである(Fig.4).こ

の二番目の課題については,かつて議論されたことも

あったが,単純に方程式を解くだけでは求まらないた

め,不可能であろうと思われていた.この間題について

は後で述べるように,また別の手法を必要とする.

 私がこの研究を始めたころは,理想MHD方程式を解

く数値計算が世界中で行なわれ[10,11],このβ、,を求め

ようとしたが,数値的には求まっても,なかなか厳密と

はいえなかった.なぜなら,β。,の近傍ではγ2は非常に小

さく,1γ2+∫(冗)1の所が有理面においてゼロに近づ

き,方程式自身が特異になるためである.このような困

難を解決する自然な方法として用いられるようになった

のが接続問題である.

 まず,有理面(∫(卑o)一〇)近傍を内部層,その外側を

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Joumal ofPlasma an(i Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002

γ

β67

βFig、4 Critical betaβcrl unstable modes appearforβ>βGr.

外部領域と見なす.いま,問題としている不安定固有値

γ2が現れ始めるところ(β=βcr)では,成長率に相当す

るγ2がアルヴェン周波数よりもずっと低いので,∫(冗)

がゼロでない外部領域ではγ2(プラズマの慣性)は無視

できる.すると,

計(冗)劇+7(冗)ψ一・ (54)

が外部領域に対する方程式となり,これはNewcomb方

程式と呼ばれている.この方程式において有理面は確定

特異点[!2]となっている.

 一方,内部層においては∫(π)がゼロになるため,プラ

ズマの慣性γはいくら小さくても無視できない.そこで,

∫(冗)の冗=万o近傍の振る舞いを,

∫(%)一(冗一%。)2あ,あ>0 (55)

としよう.ここで,定数ズ)は磁場のシアに関係する量で

ある.独立変数の引き延ばしを

       γκ一κo=ε2,ε=一《1       孫

のように行なえば,内部層方程式は

晶[(1+~2)讐レ伽一・

(56)

(57)

で表される(P=7(%o)贋)).これはWKBでいうところ

の特殊関数で記述される部分になっており,これならば

解析的に解くことができる(解は引数が虚数のルジャン

ドル関数になる).

 「なぜ,元の方程式をそのまま解かずに,このような

接続問題を用いるのか」と疑問に思われるかも知れない.

確かにそういう側面もあるが,接続間題を解くことには

いくつかの利点がある.第一に,物理モデルの拡張性が

挙げられる.物理モデルが理想MHDであろうと抵抗性

MHDであろうと,外部領域の方程式はN’ewcomb方程式

のままであり,変わるのは内部層方程式だけである.っ

まり,Newcomb方程式を解析的,数値的に解く手法が

すでに得られていれば,後は物理モデルに敏感な内部層

方程式を有理面においてのみ解くだけで良い.実際には

様々な問題を含んでいるが,このような意味で接続問題

は拡張性の良い手法である.第二に,数値計算の有利性

というのがある.元の方程式をそのまま解くよりも,接

続問題を用いた方が,数値計算の高速性,高分解能が期

待できる.第三は,結果の解析性である.すなわち,接

続問題は物理について見通しの良い解析的な結果を得る

ことができる.

 ここで,理想MHD安定性における変分原理について

言及する[!,6,8].プラズマの変位ξによる全エネルギー

変化は

確一劫IQ+ξ圃2+酬▽・ξ12+・1るi2}dτ

で表される.ここで,

Q一▽×(ξ×B)

  ▽ψnレ=     ξn=ξ・π  1▽ψド

(58)

(59)

(60)

0=21▽ヵe,1[κ、、一σ2B2+σ(B×π)・▽×(B×π)  (61)

 ノ・Bσ=  B2

(62)

積分の中の第一項は磁場によるポテンシャルエネルギー

で,compressionalAlfv6n項とshearAlfv6n項を含む.第

二項は圧縮性の項である.0には閉じ込めプラズマの圧

力からの寄与と磁力線に平行な電流からの寄与の両方が

含まれている.境界条件を満たし,2乗可積分な任意の

変位ξを代入した時,四が負になるものが存在すれ

ば,プラズマは不安定である.よって,第三項が不安定

性を引き起こす原因であることがわかり,例えば,磁力

線が曲率をもたず,一様な平衡は常に0=0であり,安

定であることがわかる.また,この躍を停留にするよう

なξを求めるEuler方程式が,先程のNewcomb方程式

918

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Lecture Note SlngularPoint Analysis S.Tokuda

と一致する.

それでは,N’ewcomb方程式

蜘一計(冗)劇+照)ψ一・ (63)

を解いてみる.f(冗o)=0となる点物は確定特異点であ

り,その近傍では

昔(オ・審)一Pψ一・

D-7(κ・),オーレ%。

  あ

(64)

(65)

と表される.よって,確定特異点のまわりのFrobenius角皐[12]壱よ

ψ(万)=団レ,[劣「レー1

ンー一音+μ・μ一(青+P)翅

(66)

(67)

                      1と求まる.ここで,μが実数であるための条件P>一一                      4は,Suydam安定条件と呼ばれる.もし,この条件が破れ

ると,N’ewcomb方程式の解は有理面の近傍で無限回振

動し,不安定側に可算無限個(ゼロに収束する)の固有

値が存在することが証明されている.トカマクにおいて

も,このSuydam条件を使ってプラズマ閉じ込めの安定

性のチェックが行なわれている(SuydamMercier条件

と呼ばれる)[6].以下では,Suydam条件は満たされて

いるとし,レは実数とする.すると,1球は二乗可積分な

解,囲一レー1は二乗可積分でない解となり,プラズマの分

野では前者を「小さい解」,後者を「大きい解」と呼んで

いる.

 以上は特異点近傍における解の振る舞いであるが,外

部領域全体については

魚)=(炉冗。)2

照)一(μ2一去)一β2(岡2

境界条件:ψ(0)=ψ(1)=0

(68)

(69)

(70)

のように,∫や7が2次関数の場合において解析解が求

まっている.このとき,左側(κ<冗o)の解は

ψα)一{轡)+締)1淵

ψセ(κ)一(会)μr(・一μ)lzr一㌦(β1~1)

(71)

(72)

ψ£(x)一(書)一μF(1+μ)[~1}毘卿)(73)

で表される.ただし,z=冗一冗oであり,Bessel関数

       綱一(着鳳諾黙) (74)

を用いている.接続するために必要な情報は冗→掬一〇

の極限における解の挙動であり,今の場合は

ψ1!(x)㏄lzr1!2一μ

ψ£(%)㏄12r1〆2+μ

(75)

(76)

である.ここで,姥(冗)は二乗可積分でないので「大きい

解」,輔(κ)は二乗可積分なので「小さい解」だとわかる.

未定係数姥とぺについては,境界条件ψ(0)=0より,両

者の間の比だけが求まる.

∠一1一豊一ψ£(o)

L6£ ψセ(o)

一一(書) F(㍑牝(農1)(77)

この』ジは歴史的な意味で一1をつけているが,これは二

乗可積分な解に対する二乗可積分でない解の割合であ

り,接続データと呼ばれる.Newcomb問題を解くとい

うことは,要は境界値間題Nψ=0を解いて,接続データ

を求めることに帰着される.

 また,右側の解(x>%o)についても同様に接続データ

が存在する.外部領域を解いた結果を整理すると,以下

のようになる.

卿)一/紗)+姥α)

卿)一臨α)+嬬α)

(ズく劣o)

(卑>κG)

(%<πo)

(%>πo)

一般解:ψ(冗)=OI、ψL(%)+6RψR(冗)

(78)

(79)

(80)

ここで行なったことは別の見方をすれば,境界点κ=0

から境界条件を満たす解で出発し,確定特異点x=掬

まで解析接続したときの,小さい解と大きい解の比を求

めたと解釈できる[12コ.こう考えると,有理面が複数あ

る場合でも,境界点から確定特異点へ,確定特異点から

確定特異点へと次々に解析接続を行うことによって,接

続データを求めることができる.

 次にNewcomb間題に随伴する固有値問題というもの

919

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Jouma夏of Plasma an(l Fusion Research VoL78,No.9 September2002

を導入する[13,14].Newcomb方程式ノ〉ψ=0は同次方

程式であるので,通常は二乗可積分な解はもたず,確定

特異点のまわりで二乗可積分でない成分が含まれる.し

かし,これがたまたま二乗可積分な自明でない解をもつ

ことがあり(刀ガ=0),このときは臨界安定状態と解釈

される.なぜそう言えるのかを理解するために,New-

comb方程式に随伴する固有値問題

ノ〉ψ(冗)=一λρ(%)9(%)

ρ(π)一(炉劣。)2ρ。,ρ。>0

(81)

(82)

を考える.ここで,確定特異点でゼロになる2次関数

ρ(冗)を用いたのは,数学的には重み関数を意味する.つ

まり,関数空間における内積を

γ,λo

γ

  、β,, \

 、、

λo、、

β

(ξζ)一垢1ξ(冗)ζ(冗)ρ(冗)砒(83)

Fig.5 βcristhezeropointofbothγandλo.

で定義する.さらに,双線形形式

騰ζ)一五1←器一%ζ)砒 (84)

を考える(これは理想MHDのポテンシャルエネルギー

に対応する).随伴固有値問題において,固有値λに対応

する固有関数をξλとすると,λ=W(ξλ,ξλ)より,λは

ちょうど仮想変位ξλによるエネルギー変化に相当し,負

のλが存在することは不安定であることを意味してい

る.ちなみに,この固有値間題は数学的にSturm-

Liouville型[1]に分類され,固有値λはすべて離散固有

値で,最小固有値λoが存在する.また,異なる固有値に

属する固有関数ξ,ζが互いに直交することも知られてい

る((ξ,ζ)=O).

 このような随伴固有値問題を考える利点は大きい.も

との固有値間題と随伴固有値問題を比較してみる.

毒{[γ2+∫(κ)]幕}諏β)ψ(%)一・

計(x)盤}+[vα;β)+λρα)1ρα)一・

(85)

(86)

まず,随伴固有値問題の最小固有値λoの符合が正から負

へ変わる時のβの値が,もとの固有値間題に対する臨界

ベータ値β,,を与えている(Fig.5).さらに,もとの固有

値問題を解くのは困難であるのに対し,随伴固有値間題

の最小固有値は数値的に容易に求まる.さらに,前にも

述べたγのβ依存性を調べるのにも役立つ.ポテンシャ

ルU(絹β)がβに関して滑らかな関数とすると,最小固

有値λ0はβの正則関数であることが期待でき,β。,近傍

λo=oβ(β一βcr), 6β<O (87)

と近似できる.後は,γとλoの関係を求めたいわけだが,

それは内部層方程式の解と接続することによって決ま

る.

 内部層方程式は物理モデルによって敏感に形を変える

が,理想MHDに限れば現在までに二つしか提案されて

いない.一つは圧縮性を無視したゼロ・ベータモデル

で,

蓋[(1+z・)糾Pψ一・

という比較的簡単な方程式である.

デルで,

(88)

もう一つは圧縮性モ

器[(1+z・)讐HP+(、+無釦・]ψ一・(89)

であり,β,は比熱比をいれた圧力と磁場の比である.ち

なみに,内部層方程式に現れる物理量はすべて有理面に

おける値(定数)を用いればよい.これらの解は一般的

に,

9(~)=6eψe(Z)+6()ψ,)(Z) (90)

のような,偶関数ψ,(一Z)=ψ。(~)と奇関数ψ。(一2)=

一ψ、、(Z)の線形結合で表せる.どちらのモデルを採用し

920

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Lecture Note Singular Point ARalysis S.Tokuda

たにせよ,接続に関わるZ→・・の極限では,内部層方程

式はNewcomb方程式に近づくので,先程のFrobenius

解と同様な

ψe(2)~4nメー1/2一μ+2-1/2+μ

ψ()(2)~4監㍉()Z-1/2一μ+2-1/2+μ

(91)

(92)

という振舞いを示す(ズ1〆2+μは二乗非可積分,ズ1/2ツ

は二乗可積分).つまり,内部層間題とは内部領域の接続

データ4、,,.,4、,,。を求めることに帰着される.

 それでは実際に接続を行なう[15].外部のNewcomb

方程式は左側の解と右側の解を用いて,

ψ(冗)=OLψL(劣)+ORψR(冗)

内部層方程式は偶関数解と奇関数解を用いて,

ψ(9)=6eψe(2)+6。ψ。(Z)

(93)

(94)

と解ける.手続きとしては,Z→一・・での内部の解と

冗→κo-0での外部の解を接続し,z→+・・での内部の

解と劣→κ〇+Oでの外部の解を接続すればよい.この結

果,係数CR,6L,Ce,C・に対する4つの一次方程式を得

る.この連立一次方程式が自明でない解をもつ条件か

ら,いわゆる分散関係式が得られる,結果だけ示すと,

γ一伝転) ) (95)

である.ここでλGは負なので,4.,,+4i,、,。<0が成立す

ることが必要である.実際に理想MHDの内部層方程式

を解くと,数値計算の結果はこの条件を常に満たしてい

る.しかし,解析的な証明は,まだ,できておらず,今

後の課題である.さて,これによってγとあの関係が求

まったので,かねてからの目的であった成長率γのβ

依存性は,

γ㏄(β一βc,)1/(2μ) (96)

は,加=Oの解を二乗可積分な関数X(z)と二乗可積分

でない関数Y(Z)の和として,

9(z)=X(9)+y(z) (99)

で表されるときに,}7(z)を解析的に与えて,X(2)に関

する境界値問題

五X=一Ly (100)

に変換する.これは二乗可積分な間題なので,有限要素

法なり差分法なりで数値的に解くことができる.境界条

件は,~→・・でX(~)~4、,z剛一1であることがわかって

いるので,これを満たすような条件を与えなければなら

ない.しかし,ここでは,数値計算の都合上,計算領域

を一2R<2く2Rに限定し,十分大きな2=娠において,

(L¥  レ+1一=   Xd2   zR

(101)

という条件を課する.次に,内部層問題で我々が求めた

いのは接続データであるので,X(~)から』i,,を抽出しな

ければならない.その方法の一つは,X(之)の漸近形か

ら評価する方法で,もとの方程式は

澱一嬢μ一1(・+象+舞+…)(102)

という振る舞いをすることがわかっているので,数値計

算結果の比をとって

 _X(~R)411

   XR(103)

のように求める.これは2=娠という点だけにおけ

る,ゼロに近いもの同士の比をとるので,あまり精度の

よいものではない.そこで,もう一つの方法はGreen

の公式を用いたもので,全領域の積分が境界値によって

決まるという性質を利用して,

と求まる.

3.3 理想MHD内部層問題の数値解法 内部層問題

P[綱一五二[y(α)一x(酬dg

     14、1=一     P[X,}/1   2(2レ+1)

(104)

Lψ一器[(1+22)糾Pψ一・

        1Z)=レ(レ+1),レ>一一

        2

(99)

(98)

(105〉

のように求める[16].どちらの方法が収束性が良いか

は,状況によって異なるが,2次元のNewcomb間題で

はGreenの公式の方法しか使えない.

の数値解法としては応答法[16,1]が用いられる.これ

921

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Joumal ofP圭asma and Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002

3.4Newcomb問題の数値解法 Newcomb間題の方も同じく応答法が使われるが,若

干ややこしくなる[13,14].Newcomb方程式の解

ψL(κ)を,臨界安定から少しずれたλoに対応する固有関

数ξLO(κ)を用いて,

              ハ   ψL(x)一ξL。(冗)+λ。[ηL(κ)+ΩLξL(%)] (106)

            へひのように表現する.ここで,ξム(%)は二乗可積分でない

Frobenius級数であり,すでに与えられているとする.

これによって,二乗可積分な部分死(κ)に対する方程式

       へ 砺L=ρξLO一ΩL腰L

ηL(0)=η1.(1)=0

(107)

(108)

となり,これを数値解法で解く.具体的にはこれを変分

形式で表して,確定特異点を自然境界条件とした有限要

素法を用いる.

 しかし,Fig.6のような現実に近いトーラス配位の安

定解析を行なうためには(7,θ)の二次元で解かなければ

ならない.ここではポロイダル角θをフーリエ展開に

よって

    ぴξ(角θ)一Σξ、(7)exp(i1θ)

    1=一ル1

のように離散化するが,互いに独立ではないので,

ξ(7)=[ξ一“(7),…,ξM(7)γ

(109)

(110)

として,すべての変数を同時に解かなければならな

い.2次元のNewcomb方程式は

腰一一諺(乙幕)一番(腔)+Mll+κξ一・

                   (111)

Q.4

0,3

0.2

O.1

Z  O一〇。1

・0,2

一〇.3

一〇、4

              (a)

’丁皆川響糟  ……醒劉ぎビ川γ雪へPワ傑「     i    l

襟夢         華

0・60・7α80・9ポ」1・21・3t4

Fig.6 Toroidal configuration used in the MARG2D code.

のように表され,有理面筋(解=切(7,。))における境界

条件はξ,,,に対しては自然境界条件,ξ1(伊別)に対し

ては連続条件とする.このような拡張をすることで1次

元の場合と同様な方法が適用できる.

 これらの手法を用いたMARG2Dの結果と従来のERATOJ(ERATOコード[11]の原研改良版)の結果を

Fig.7に示す.ERATOJでは不安定状態(λ<o)のみ同

定できるため,十分に不安定なβ」の値から固有値を求

め,順次,β」の低い値へ外挿して,β・・を推測していた。

一方,MARG2Dでは,不安定状態も安定状態(λ>0)も

同定できるので,β,,が綺麗に求まっている.また,ERA-

TOJで行っていたβ,,の推測も真の値に近かったことが,

初めて確認できた.

という形になるが,L,M,κといった行列はここには書

ききれない程,複雑な式になる.この方程式の特徴とし

ては,確定特異点となる有理面が複数存在しており,

2M+1個の一次独立な解のうち,「大きい解」と「小さい

解」が一つずつ存在し,残りはすべて正則解であること

が知られている.2次元Newcomb方程式に対する随伴

固有値問題は

Nξ=一λRξ

齢(響一%)2

(112)

(113)

3、5外部モード問題への応用 ここでは,トーラスの外部境界(7=α)において非同

次な境界条件が与えられた場合を考える.変分原理のあ

まり知られていない性質[17]として,Newcomb方程式

を満たす関数の集合をS={ξ瞬ξ=0}とすると,

ξ(7),η(7)∈Sならば作用積分は

w[ξηH購1衡>+音〈◎ILl讐>

           +去く讐1乙の(・14)

922

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Lecture Note

     dξ。 ξξα=ξ(α)rr一薔(α)・etc・

  1怖一喜(M+納

Singular Point Ana王ysis

(115)

(116)

のように境界値での値のみによって決まるという性質が

ある.

 ポロイダルモード数(1=0,±1,…,±ハ4)に対して,

▽2(α)=0(1ヂ吻),ylll2(α)=1

という境界条件を与えたときの解

(117)

1.5

λ

0

一1.5

  1『1【  し掴ARG2D

  l  l  三く   ゆき

  }

  l  l    $

  1

コ1  ”

ERATOJ

S.Toku(1a

61σ5λ

41σ5

210魑5

.0

一21σ5

一41α5

yln(粥)=1理転(7),…,瑠(7)γ(窺二〇,±1,…7±M)

                   (118)

は基底関数である.すなわち,任意の自由境界モードに

対する一般解は,ある係数物を用いて,

ξ(7)一Σ物y籾(7)

   7n

(119)

という線形結合で表される.先程の変分原理の性質よ

り,変位ξによるポテンシャルエネルギーの変化W[ξ,ξ]は表面の変位ベクトル劣=(荒M,…,勘ソで表さ

れるため,

叫ξ,ξ1=倒川め (120)

であり,行列ハは基底関数{y刀2(7)}によって与えられ

る.そして,沌の最小固有値が負であれば,外部キンク

モードは不安定である.

 このような基底関数の計算方法においても,やはり応

答法が使える.基底関数を

y刀~(7)=Xア72(7)+Hフ77(7) (121)

のように表し,π”~(7)に非同次境界条件を満たすベク

トル関数を与えれば,X’π(7)は通常の同次境界値問題

〈収177(り=一く四η7(γ),X刀~(α)=0 (122)

の解として解くことができる.

 しかし,このような手法で外部キンクモードを解くζ

とにあまり利点はないが(非同次境界の安定性を解けば

それで済むため),抵抗性壁モードの安定性解析におい

てフィードバック制御を行なうような場合は,唯一の有

効な解析手法となる[18].

3.6 抵抗性MHD内部層問題 理想MHD的にプラズマが安定であるということは,

0 0.2  0.4  0.6  0、8   1

      β」

一61α5

1.2

Fig.7 Graphsofλo by MARG2Dand ERATOJ.Thepointwhere   ノしo crosses theβJ line isβcr。

スペクトルの複素平面の不安定側に固有値が存在しない

ことである.非理想MHD効果によって不安定固有値γ

が現れたとする.この時,理想MHDの安定スペクトル

であるアルヴェン周波数ωAに比べて,γの絶対値が十分

小さい(γ《のA)と仮定すれば,これまでと同様にプラズ

マを外部領域と内部層に分けることができる.つまり,

外部領域は理想MHD(Newcomb方程式)で記述され,内

部層では非理想効果が支配的になるので,要はこれらの

接続問題に帰着される.

 抵抗性MHD内部層方程式で最も簡単な(圧縮性のな

い)モデルは

d2ψ  _

γdz2=z二

   d2   d2εγE=一評(~ψ)+d22

(123)

(124)

であり,ここでψは静電ポテンシャル,8は磁力線に平

行な電場である.無限遠(Z→・・)における境界条件は

Newcomb方程式の解から与えられ,

i(z)=0

ψ(2)㏄!+立

    2

(125)

(126)

であり,ここでは6が接続データに相当する.これに対

しては応答法が適用できるが,解析的に固有値γに対す

る6(γ)は

ビ1(γ弓蕃1畿ll斜 (127)

923

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Joumal ofPlasma an(l Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002

と求めることができる.

 また,γを時問微分∂/∂渉に戻し,境界条件を

卿)一ψ・・(オ)(1+妾)(128)

とおくことで,初期値問題を数値的に解くこともできる

[19].これは強制磁気再結合のように,外部境界が時間

的に変動する場合に有効な解析手法となる.

3.7 まとめ

 磁場閉じ込めにおけるプラズマのMHD不安定性と

は,スペクトルの一部が,安定側にある連続スペクトル

から不安定側へ「こぼれ落ちる」ことと捉えることがで

きる.不安定側にこぼれ落ちたスペクトルは点スペクト

ル(固有値)として観測される.漸近接続法はこのよう

な観点からの安定性解析の理論的な技法であり,理想

MHDベータ値限界の解析を例にして,この手法を紹介

した.MHD安定性理論における漸近接続法では:New-

comb方程式と内部層方程式が活躍し,したがって,これ

らの方程式の数値計算法も議論した.

 連続スペクトルに対する摂動として,方程式のエル

ミート性を壊さない摂動(ベータ値限界の場合)と壊す

摂動一特異摂動と呼ばれる一とがある.電気抵抗が重要

な役割を果す抵抗性壁モードや抵抗性MHDモードは後

者の場合である.これについては簡単に触れるにとど

まった.エルミート性を壊す摂動の他の例はプラズマ回

転である.このような場合にも漸近接続法は有効であろ

うと思われる.

 この方法が関心をもたれるのは,数学的な面白さだけ

でなく,トカマクの安定性解析に役立つ実用的な方法と

なりえるからである.しかしながら,漸近接続法にもと

づく実際的な解析はまだまだ不十分であり,今後の一層

の発展が期待される.

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=}      心小=ンぶ/ぶ際記ひ=ひ號畷小P層ぶる心イ窟〉瞭く冶心ひ離卒繋小物、財ぶ箪

き1漁稔由罷  !1馨日本原子力研究所主任_大阪大学工1

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924