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30 3.本市の目指す地域経済・就業の姿 世界有数のものづくりの中枢圏域である名古屋圏の中心都市として、本市が 今後も持続的な発展を続けるため、次のような将来像を目指します。 3-1 目指す姿 (1)世界の「知」が交流し、イノベーションを生むものづくり経 済圏の中枢都市を目指します ○製造業・商業・各種サービス業等の多様な産業を背景とした多様な交流 本市では、周辺都市を含め特徴的・先端的な技術を有する製造業に加え、 226 万人の人口を擁する大都市として商業及び各種サービス業等が集積して います。これらの多様な産業集積が次世代産業を伸張する要素の一つである と考えられます。 製造業をはじめとする多様な産業とのビジネスチャンス(商談、取引)の 追求による、見本市、展示会や観光及び、大学・研究機関と中小企業との連 携等をはじめとした多様な交流がもたらされることが期待されます。 このため本市はわが国の産業界をリードする国際的な交流拠点として成長 していくことを目指すものとします。 (2)中小企業の持続的成長を目指します ○既存産業の効果的な変革による持続的な成長 現在の社会経済を支えている既存産業は景気低迷による市場の縮小に加え、 国際競争という厳しい環境にさらされています。企業が生き残るためには新 たな分野、領域へ展開していくことも重要であり、中小企業において自身の 変革は必要不可欠です。 例えば、少子高齢化の潮流が強まることが予想されていることからも、福 祉・医療分野等への事業展開は新たな市場を創造していく上でのキーポイン トの一にとなるものと考えられます。 こうした新規事業分野への展開には、従来の集積メリットのみならずネッ トワークメリット(集積地域間のネットワーク、異業種との連携・交流)を 活用していくことも重要です。 こうした方向性を踏まえつつ、「中小企業憲章」(平成22年6月閣議決定) 世界の「知」が交流し、イノベーションを生む ものづくり経済圏の中枢都市を目指します 中小企業の持続的成長を目指します

3.本市の目指す地域経済・就業の姿 (1)世界の …...30 3.本市の目指す地域経済・就業の姿 世界有数のものづくりの中枢圏域である名古屋圏の中心都市として、本市が

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30

3.本市の目指す地域経済・就業の姿

世界有数のものづくりの中枢圏域である名古屋圏の中心都市として、本市が

今後も持続的な発展を続けるため、次のような将来像を目指します。

3-1 目指す姿

(1)世界の「知」が交流し、イノベーションを生むものづくり経済圏の中枢都市を目指します

○製造業・商業・各種サービス業等の多様な産業を背景とした多様な交流

本市では、周辺都市を含め特徴的・先端的な技術を有する製造業に加え、

226 万人の人口を擁する大都市として商業及び各種サービス業等が集積して

います。これらの多様な産業集積が次世代産業を伸張する要素の一つである

と考えられます。 製造業をはじめとする多様な産業とのビジネスチャンス(商談、取引)の

追求による、見本市、展示会や観光及び、大学・研究機関と中小企業との連

携等をはじめとした多様な交流がもたらされることが期待されます。 このため本市はわが国の産業界をリードする国際的な交流拠点として成長

していくことを目指すものとします。

(2)中小企業の持続的成長を目指します

○既存産業の効果的な変革による持続的な成長

現在の社会経済を支えている既存産業は景気低迷による市場の縮小に加え、

国際競争という厳しい環境にさらされています。企業が生き残るためには新

たな分野、領域へ展開していくことも重要であり、中小企業において自身の

変革は必要不可欠です。 例えば、少子高齢化の潮流が強まることが予想されていることからも、福

祉・医療分野等への事業展開は新たな市場を創造していく上でのキーポイン

トの一にとなるものと考えられます。 こうした新規事業分野への展開には、従来の集積メリットのみならずネッ

トワークメリット(集積地域間のネットワーク、異業種との連携・交流)を

活用していくことも重要です。 こうした方向性を踏まえつつ、「中小企業憲章」(平成 22 年 6 月閣議決定)

1 世界の「知」が交流し、イノベーションを生む

ものづくり経済圏の中枢都市を目指します

2 中小企業の持続的成長を目指します

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の基本理念のもと、中小企業が持続的に成長していくことを目指すものとし

ます。 図 40 名古屋産業のイメージ

(3)多様な就業ニーズに対応した人材の育成及び雇用の創出を目指します

○産業を支える多様な人材の育成及び就労形態の実現

少子高齢化により就業者数が減少するなかにあって、子育て、介護及び都

市防災等の社会的課題解決分野や、次世代自動車及び航空宇宙等今後の成長

分野を担う、国内外で活躍する高度な次世代の産業人材の確保・育成を、大

学をはじめとする関係機関との連携により推進します。 また、高齢者、若者及び女性をはじめとした多様な労働者層を積極的に活

用する等、時代に即した労働力の有効活用が求められており、こうした雇用

情勢を見極め、多様な働き方が可能となる労働環境づくりを進めます。

3 多様な就業ニーズに対応した人材の育成及び雇用の創出を

目指します

消費・サービス

基盤技術の集積

専門・知的サービス

商 (卸)機能人口

226万都市周辺の

輸出型製造業

歴史・文化・観光資源

立地・自然環境

「じゅう・こう・かん」 都市 名古屋

名古屋の産業キーワード 「しょう」

「重工」感  ・周辺のものづくり大企業 「重厚」感  ・開府400年、長い歴史と文化が息づく 「住」好感  ・市民にとって住みやすいまち↓「住」「工」「観/環」が一体のまち

1つ目の「しょう」 「匠」… ものづくり基盤技術産業の集積      デザイン等知的専門サービス業

2つ目の「しょう」 「商」… 卸・物流等の商機能

3つ目の「しょう」

「消」… 226万都市における消費・サービス

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3-2 重点産業分野

本市が目指す地域産業、就業の姿の実現に向けて、重点的に活性化を図る

産業分野を以下の視点から選定します。 ・地域の強み ・今後の成長性

さらに、「立地・創業件数」や「雇用者数」といった活性化への寄与(影響、

関連性)を考慮し、以下に示す 5 分野を本ビジョンにおける重点産業分野と

し、予算措置を含め重点的な施策の展開を図ります。

表 11 重点産業分野

分野 具体例

(1)環境・エネルギー課題解

決産業 次世代自動車 燃料電池、資源リサイクル、太陽光、有機 EL 等

(2)医療・福祉・健康産業 介護・福祉機器等 (3)クリエイティブ産業 デザイン、ファッション、伝統産業、観光等

(4)先端分野産業 航空宇宙 ロボット、プラズマ等ナノテクノロジー、機能性材料、

バイオ、炭素繊維、ICT、レアメタル等 (5)サポート産業 知的ビジネス支援サービス、ものづくり基盤技術

(参考)国際戦略総合特区「世界最先端スマートモビリティ社会創造・発信特区」

環境や資源を取り巻く状況や次世代自動車等で世界をリードする企業が多数集積する地

域特性を踏まえ、本市は愛知県・地域の産業界等とともに国際戦略総合特区「世界 先端ス

マートモビリティ社会創造・発信特区」を提案しています(平成 22 年 9 月 21 日提案)。

出典:国際戦略特区資料「世界 先端スマートモビリティ社会創造・発信特区」

(愛知県・名古屋市・中部経済連合会・名古屋商工会議所・名古屋大学)

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(1)環境・エネルギー課題解決産業

世界のエネルギー需要は、特に、新興国での消費の伸びが著しく、平成 42

年(2030 年)には約 1.5 倍に増加すると予測されています。一方、エネルギ

ー需要の拡大は、地球環境問題に直結しており、平成 62 年(2050 年)の世

界の CO2 排出量は、現在の約 2 倍に増加する見通しです。また、各種工業製

品の材料となる鉱物資源も海外からの輸入割合が高く、新興国の発展に伴う

世界的需要の高まり等により資源価格の高騰が予測されています。 このため、エネルギー利用の効率化、資源のリサイクル、従来の資源を使

用しない代替技術の開発促進などによる省資源促進や再生可能エネルギーの

導入によるエネルギー源の多様化など低炭素社会の実現が喫緊の課題となっ

ています。 特に自動車産業が集積する名古屋圏は、自動車からの CO2 排出量削減に取

り組むことで、こうした課題解決にリーダーシップを発揮していくことが期

待されており、COP10(生物多様性条約第 10 回締約国会議)の開催市である

本市としても、ハイブリット車、プラグインハイブリット車、電気自動車等

の次世代自動車産業をはじめ、環境や資源・エネルギー分野を重点産業とし

て振興を図ります。

出典:「産業構造ビジョン 2010」

図 41 世界のエネルギー需要と CO2 排出量の見通し

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(2)医療・福祉・健康産業

本市の 65 歳以上の高齢者の人口構成比(高齢化率)は、18.6%(平成 17

年(2005 年))であり、今後は、さらに高齢化が進むものと予測されていま

す。また、三世代同居や二世帯同居が減少し、高齢者の夫婦のみの世帯や独

居世帯が増加するなど、高齢者の生活環境も大きく変わってきています。 このため、高齢者の日常的な生活を支え、安心・安全を獲得する技術・サ

ービスへのニーズはますます高まるものと考えられます。 一方、名古屋圏には、医療機器、歯科用治療台、車椅子、試薬、メディカ

ルレーザーなどの高いシェアを有するメーカーが多数立地しており、自動車、

機械など、蓄積された技術やノウハウを活かした新規参入も進んでいるなど、

この分野における先進地となることが期待されています。 また、大学においては、再生医療の研究、医療用マイクロマシン、介護ロ

ボット、福祉工学など、新しい学術研究が進められ、医学と工学の連携につ

いても議論されており、本市も産・学・行政との連携等によりこの分野の振

興を図ります。

資料:(独)理化学研究所

なごやサイエンスパークで開発さ

れた介護支援ロボット「リーバ」

資料:名古屋市総務局 ※2010以降は本市において推計の上限値

図 43 生活支援ロボットの事例 3区分別人口構成比

13.4%

13.1%

12.6%

12.2%

11.5%

11.1%

68.0%

65.6%

63.0%

62.1%

62.3%

61.5%

18.6%

21.3%

24.4%

25.7%

26.3%

27.5%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2005年

2010年

2015年

2020年

2025年

2030年

年少人口 生産年齢人口 老年人口

図 42 名古屋市の3区分人口構成比

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(3)クリエイティブ産業

これまでのわが国の産業は、主として高い技術力を背景とした高品質の製

品に優位性を見出してきましたが、新興国の台頭により、厳しいコスト競争

にさらされています。一方、わが国のアニメやファッション等は海外でも人

気が高く、わが国の自然や風土の中から生み出され洗練されてきた美意識や

安全・清潔・おもてなしの心などは、アジア新興国などからの訪日観光客を

惹きつける要素となっており、観光に関わる産業振興につながると考えられ

ます。 このため、地域資源である文化と産業が相互に刺激し合い創造的な活動を

新たに生み出していくために、豊かな感性や新たな発想を持つデザインやア

ートを商品やサービスに加味し、付加価値を高めていく取り組みを促進する

ことが重要です。 名古屋圏において集積する「インダストリアル」分野、「マルチメディア」

分野、「インテリア」分野、「テキスタイル、ファッション」分野などデザイ

ン・ファッション産業に加え伝統産業及び観光等を「クリエイティブ産業」

として位置づけ振興を図ります。

図 44 ターゲットとなる重点市場

①年間売上高ベース

12.0%

35.5%

3.4%

9.4%

4.3%7.9%

5.2%

14.6%11.2%

79.3%

66.4%

75.1%

98.4%

74.9%79.8%

72.6%

12.1%

55.1%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

計 インダストリアル パッケージ グラフィック ディスプレイ インテリア テキスタイル、

ファッション

マルチメディア その他

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

愛知県の全国シェア(左目盛)

本市の愛知県シェア(右目盛)

図 45 デザイン業における愛知県の業種別全国シェア及び本市の業種別愛知県シェア

資料:経済産業省「特定サービス産業実態調査(デザイン・機械設計業編)

出典:「産業構造ビジョン 2010」

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(4)先端分野産業

「産業構造ビジョン2010」では、天然資源に恵まれないわが国が、長

期に渡り競争力を維持・向上させるにはイノベーションにより、世界のフロ

ンティアを開拓し続けることが必要とされており、以下の 10 分野を特に有望

な先端分野と捉え、支援することを提言しています。

名古屋圏のものづくりは、自動車産業や工作機械を中心に、多数のリーデ

ィング企業を頂点に、技術的に高度な部品・素材メーカーが集積することで

強みを発揮してきました。また、国の統計によると、航空機・航空機部品生

産額に占める中部地域の割合は、全国の約 50%に達するといわれています。

このほか、「なごやサイエンスパーク」の公的研究機関や大学などとの共同に

より、さまざまな研究開発が行われています。 今後は、地域が優位性を持つ航空機関連、新素材、工作機械などの産業集

積を活かすとともに、中小企業の参画を促しながら、本市経済を担う産業と

して先端分野産業の振興を図ります。

【有望な先端分野】

①ロボット ②航空機 ③宇宙 ④高温超伝導 ⑤ナノテク ⑥機能性化学 ⑦バイオ医療品 ⑧炭素繊維 ⑨高度 IT ⑩レアメタル

出典:「産業構造ビジョン 2010」

出典:「産業構造ビジョン 2010」より

図46 世界の宇宙産業の売上げ推移(2003年~2008年)

出典:「東海3県の航空機産業動向調査」(2009.10)

帝国データバンク

表 12 「航空機・同付属品製造業」の

都道府県別所在社数

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(5)サポート産業

情報サービス、コンサルタントや会計等の知的ビジネス支援サービスは企

業活動の及ぶ分野を広く包括しています。製造業においても、ITを活用し

たサービスなど、事業環境の変化に伴う新たな業務を外部の専門業者から支

援を受けるケースが増えています。

また、新規分野進出やイノベーションに取り組む中小企業に対し、技術開

発、販路拡大に関する支援を行ったり、名古屋圏のものづくりの基盤技術を

指導するなどのサポート産業の振興を図ります。

表 13 本市サービス業(他に分類されないもの)の事業所数の推移

資料:経済産業省「平成 20 年 特定サービス業実態調査」

事業所数

H13→H18増減率(%)

  生活関連 12,046 11,580 ▲ 3.9 洗濯・理容・美容・浴場業 7,701 7,531 ▲ 2.2 その他の生活関連サービス業※ 1,495 1,497 0.1 娯楽業 1,596 1,276 ▲ 20.1 自動車整備業 1,254 1,276 1.8

  企業関連 10,566 11,046 4.5 専門サービス業(他に分類されないもの)※ 6,234 6,320 1.4 機械等修理業(別掲を除く) 824 828 0.5 物品賃貸業 730 682 ▲ 6.6 広告業 557 585 5.0 その他の事業サービス業※ 2,221 2,631 18.5

  社会関連 2,477 2,536 2.4 学術・開発研究機関 39 70 79.5 廃棄物処理業 114 139 21.9 政治・経済・文化団体 842 849 0.8 宗教 1,455 1,450 ▲ 0.3 その他のサービス業※ 27 28 3.7

(注)1.民営とは、国及び地方公共団体の事業所を除く事業所。

   3.※印に含まれる業種については別表参照。

資 料:総務省「事業所・企業統計調査(平成18年)」

平成13年 平成18年

2.サービス業(他に分類されないもの)については、中分類業種を便宜的上3種類型(生活・企業・社会)に分類。

中分類項目 主な業種(小分類項目)

その他の生活関連サービス業

旅行業、衣服裁縫修理業、物品預り業、火葬・墓地管理業、葬儀業、結婚式場業、冠婚葬祭互助会、写真現像・焼付業等

専門サービス業(他に分類されないもの)

法律事務所、特許事務所、公証人役場、司法書士事務所、公認会計士事務所、税理士事務所、獣医業、建築設計業、測量業、その他の土木建築サービス業、デザイン業、機械設計業、著述・芸術家業、写真業、興信所等

その他の事業サービス業速記・ワープロ入力・複写業、商品検査業、計量証明業、建物サービス業、民営職業紹介業、警備業、労働者派遣業等

その他のサービス業 集会場、と畜場等

本市のデザイン産業、機械設計業の契約先産業比率

(事業所数)

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0%

建設業

製造業

電気・ガス・熱供給・水道業

情報通信業

運輸業

卸売・小売業

金融・保険業

不動産業

飲食店, 宿泊業サービス業

(同業者を除く)公務

同業者

その他

図 47 本市のデザイン産業、機械設計業の契約先産業比率(事業所数)

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3-3 重点地域

これら重点産業分野が展開、集積する、「臨海部」、「都心部」、「サイエンス

パーク」の 3地域を重点地域として設定します。

表 14 重点地域

地域 内容

金城ふ頭 【交流促進ゾーン】人・モノの交流の場 臨海部 大江地区

等 【集積促進ゾーン】重点産業分野の誘致・創業、研究開発の場

都心部 【交流促進ゾーン】人・モノの交流の場 【集積促進ゾーン】重点産業分野の誘致・創業、研究開発の場

なごやサイエンス

パーク 【集積促進ゾーン】重点産業分野の誘致・創業、研究開発の場

ささしま地区

ナビ金山

都心部

金城ふ頭

臨海部

大江

ナディアパーク

名古屋駅

ナビ白金

医工連携インキュベータ

なごや

サイエンスパーク

✈中部国際空港

✈県営名古屋空港

●知の拠点

テクノヒル名古屋

サイエンス交流プラザ

クリエイション・コア名古屋

工業研究所

図 48 交流・集積地域

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3-4 産業技術の振興

(1)産業技術の振興に関する基本的な考え方

産業技術の進歩・発展は、本市の指定する重点産業分野の成長や産業活動の

活性化をもたらし、企業経営の発展や雇用機会の創出を促進します。また、当

該分野の発展には基盤となる技術力の向上が不可欠であり、これは名古屋圏に

集積する中小製造業の経営や雇用の安定化につながります。 このほかにも、産業技術は、高齢化や環境といった社会的課題解決の基礎と

なり、その進歩・発展は市民の安全・快適な暮らしに大きく寄与するものと考

えます。 以上の考えに基づき、本市では、中小企業をはじめとする民間、国、県及び

大学・研究機関等との連携を強化し、重点産業分野の育成及び当該分野への中

小企業の参入を支援します。また、当該分野の振興に不可欠な技術群として集

中的振興技術分野を定め、資金や人的・物的資源を効率的に投入します。 本市工業研究所(以下「工業研究所」という。)においては、技術課題の解決

や新製品・新技術の開発への支援を通じて中小企業の技術力を底上げし、ボト

ムアップによる重点産業分野への中小企業の参入を推進します。 また、本市「なごやサイエンスパーク」においては、重点産業分野に関する

先導的な研究を行い、重点産業分野の活性化を目指します。

≪集中的振興技術分野≫

①基盤(サポート)技術

他の集中的振興技術分野を支え、基礎となる既存のサポート技術群のこと

で、競争力のある高付加価値製品の開発のためには、基盤技術力の底上げ

が不可欠です。

図 49 連携による産業技術振興

市・工業研究所・サイエンスパーク

中小企業

重点産業分野

重点産業分野

参入支援

大学

県 ・研究機関

連携

連携

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②機能性・軽量部素材

エレクトロニクスや自動車産業をはじめとした多様な分野に利用される機

能性材料(半導体、機能性高分子等)や軽量材料(炭素繊維強化プラスチ

ック、軽量金属等)などの高付加価値な材料、及びその材料に高度な加工

を施した部材、並びにその製造・加工技術です。

③ナノテクノロジー

物質を原子や分子のサイズにおいて制御する技術で、新素材やデバイスの

開発等に応用されます。スケールを極めて小さくすることにより独特の特

性が発現し、新機能を有するナノ素材やコンピュータの小型・高機能化等

へと、多様に展開されています。

④環境対応技術

環境浄化、資源・エネルギー、廃棄物処理、リサイクルをはじめとし、広

く環境保全に関する技術で、環境・エネルギー課題解決産業として環境ビ

ジネスの側面も注目を受けています。

⑤信頼性技術

製品設計、故障診断、検査・評価、モニタリング等の多様な技術から構成

され、使用者に安全と安心を提供することを目的に、工業製品の耐用期間

中の故障を未然に防止する技術です。

⑥ICT(Information and Communication Technology) 情報インフラを支える社会基盤であるとともに、わが国産業の国際競争力

の源泉であり、情報家電、OSや検索などのソフトウェア、携帯電話など

の通信機器が代表例です。

⑦CAE(Computer Aided Engineering) 工業製品の設計や開発工程に数値解析を利用する技術で、工程の一部をシ

ミュレーションに置き換えることにより、開発スピードの向上やコストの

低減が可能です。

図 50 集中的振興技術分野

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(2)工業研究所における基本的な方針

工業研究所では、中小企業の基盤技術を強化するため、中小企業が日々直

面する技術課題の解決を支援すること、及び意欲ある中小企業とともに、技

術の高度化・差別化を進め、新製品・新技術の開発・実用化に取り組むこと

を支援の要として当地域の基盤産業の振興に注力してきました。

しかし、長期にわたる経済不況や低炭素化の時流において、輸送用機械器

具製造業が大きな割合を占める名古屋圏の産業構造は大きな転換点にきてお

り、今後は新規分野での需要が拡大する一方で、基盤を支えてきた下請型の

中小企業の多くは新たな対応を迫られており、さらにそれが進むと考えられ

ます。そこで、工業研究所では、やる気のある中小企業がオンリーワンの技

術を取得して、発注元の経営戦略やコスト競争などの「外的要因に左右され

やすい下請型」から顧客の需要を喚起する「イニシアティブを有する提案型」

へと転換し、新たな産業形態に対応できるよう、基盤技術のレベルアップを

強固に支援します。

また、工業研究所は、次世代産業等に関する情報や技術シーズを提供し、

基盤技術力の向上をベースとした中小企業の「新たな産業」への参入を推進

します。支援にあたっては、当地域の公設試験研究機関や大学等との連携を

強化するとともに、公的技術ハブとして企業間の技術連携を推進します。

1 技術のセーフティネット構築(課題解決型技術支援)

健全な企業経営のためには恒常的な新技術や新製品の開発が不可欠ですが、

中小企業の多くは製品クレームや不良品対策に忙殺され、開発が後手に回っ

ているのが実情です。また、近年では海外での生産品の品質管理も大きな課

題です。

⇒「基盤技術の支援強化」「技術支援メニューの充実と利便性の向上」

工業研究所では、中小企業の抱える様々な課題を迅速・効率的に解決する

ためにユーザビリティ(使い勝手)とユーティリティ(有効性)をさらに向

上させ、中小企業の技術の底支えとして強固なセーフティネットを構築しま

す。また、技術の継承、ものづくり人材の育成に関しても企業のニーズを踏

まえた人材養成事業を実施します。

2 技術の見える化と総合支援(開発型技術支援)

安価な人件費と豊富な資材に支えられ、生産拠点として新興諸国の台頭が

著しく、今後ともコスト競争のさらなる激化が予想されます。中小企業にお

いては独自技術による高付加価値製品の開発を進め、外的要因に左右されや

すい下請型からイニシアティブを有する提案型へと転換していく必要があり

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42

ます。

⇒「製品化までのトータルサポート」「試作支援センターの創設」

工業研究所では、設計から試作・評価に至る製品化までの技術面を総合的

にサポートする試作支援センターを創設し、新技術・製品の開発を支援しま

す。また、外部資金を活用した研究開発を推進し、技術シーズを中小企業へ

積極的に移転します。

3 環境対応技術の確立と普及

二酸化炭素排出量の削減、廃棄物処理や資源リサイクル等の環境課題への

対応は、すべての企業に課せられた責務である反面、環境ビジネスとしての

チャンスでもあります。中小企業が参入するための環境対応技術の確立と普

及が求められています。

⇒「環境施策に資する研究開発の推進」「環境課題に対応した技術支援の強化」

工業研究所では、環境浄化や資源リサイクル等の環境課題に対応した研究

を推進し、得られた技術シーズを中小企業へと積極的に移転します。

4 次世代産業技術の確立と普及

全世界的な低炭素化社会への流れにおいて、従来の内燃機関自動車に加え、

電気自動車をはじめとした新たな技術分野への対応が求められています。自

動車産業が高度に集積する当地域では次世代産業の育成・振興が急務となっ

ており、中小企業では、新分野進出や事業転換を視野に入れた技術力の強化

が必要です。

⇒「次世代産業に関する研究開発の推進とサポート体制の確立」

工業研究所では、次世代産業に関する情報収集と研究開発を推進し、情報

や技術シーズの提供を通して中小企業の次世代産業分野への参入を支援しま

す。

図 51 中小企業の技術力向上を支援

4 次世代産業技術の確立と普及4 次世代産業技術の確立と普及

3 環境対応技術の確立と普及3 環境対応技術の確立と普及

技術の見える化と総合支援(開発型技術支援)

技術のセーフティネット構築(課題解決型技術支援)

●企業間連携の推進

●地域他機関との連携強化

重点産業分野

サポ

ート産

業分

「下請型」から「提案型」へ

支援にあたり

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(3)なごやサイエンスパークにおける基本的な方針

なごやサイエンスパークは、ものづくり産業を支える研究開発拠点を形成

し、産・学・行政が連携して研究開発を促進することにより地域の持続的な

発展を目的として進めている事業です。

Aゾーンでは、平成 9 年に独立行政法人理化学研究所などが入居する研究

開発センターが開館したのをはじめ、先端技術連携リサーチセンターや独立

行政法人産業技術総合研究所中部センターなどが開館しており、概成してい

ます。各施設では、ナノテクノロジーを支えるプラズマ技術の産業応用、先

端的な部素材開発や生産技術の研究開発等が行われています。

また、研究開発型企業の集積を図るCゾーン(テクノヒル名古屋)につい

ても、19 社(平成 22 年 10 月現在)が立地しており、各立地企業では、もの

づくり技術を活かした製品などの幅広い研究開発が行われています。

今後とも、当地域における先端的な研究開発の拠点としての機能を発揮す

ることにより、次世代産業を創出・育成し、地域産業の振興を図っていきま

す。このため、当地域で培われてきたものづくり技術や 先端のナノテクノ

ロジーを活かし、産・学・行政が連携した研究開発を支援していきます。

1 ナノテクノロジーなどの先端技術を活かした研究開発の促進

なごやサイエンスパークを核として、当地域に集積する大学、企業、研究

機関等が持つナノテクノロジーをはじめ、セラミックスなどの部素材関連技

術、ロボット技術、航空宇宙関連技術、次世代自動車関連技術など、次世代

産業の基盤となる技術の研究開発や既存技術の高度化を促進します。

このため、特にAゾーンにおいては、産学連携コーディネータの活用等に

より、次世代産業の創出につながるこれらの先端的な研究開発プロジェクト

の誘導を積極的に図るとともに、産・学・行政間、各研究者間の情報交換・

交流を促進し、なごやサイエンスパークにおける研究開発機能の更なる強化

を推進します。また、財団法人名古屋産業振興公社(プラズマ技術産業応用

センター)の活用等により、企業への技術波及を促進し、次世代産業の創出・

育成や地域産業の高度化に結び付けていきます。

2 環境負荷を低減させる産業技術にかかる研究開発の促進

現在、なごやサイエンスパークでは、名古屋大学と本市との包括的連携協定

により、環境調和型・持続可能社会の構築に向けた共同研究が実施されている

ほか、環境負荷を低減させる部素材等の研究開発が行われています。今後とも

世界的な競争の激化が予想される中で、ものづくり産業が集積する当地域が生

き残っていくためには、このような環境関連技術の高度化を図ることは必要不

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可欠です。

このため、引き続き産・学・行政の一層の連携や共同研究の創出に積極的に

努めることなどにより、環境関連技術の研究開発の促進を図ります。

3 研究機関等の誘致等

なごやサイエンスパークが研究開発拠点としての機能を 大限発揮できる

よう、Bゾーンにおける大学・研究機関等の誘致や、ふれあいゾーンの整備

を推進します。

Bゾーンについては、大学や企業に対して積極的な情報提供等を行い、早

期の誘致に努めるほか、ふれあいゾーンについては、市民が科学技術にふれ

あい、興味・関心を深めることを目的とした「市民と先端科学技術のふれあ

いの場」を整備するため、整備内容等について検討を進めます。

図 52 名古屋サイエンスパーク配置図

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(参考)なごやサイエンスパーク事業の概要

昭和62年3月、①自動車、メカトロニクス、ファインセラミックスなどの既存産

業の活性化、②エレクトロニクス、バイオ、情報など先端技術産業の振興、③都市的な商業機能・サービス機能の強化、④産・学・行政の連携、⑤優秀な人材が集まるまちづくり、などを目的とした「産業活性化計画」が、名古屋市産業振興懇談会より提言されました。 この計画の中で、研究開発機能の強化に向けた施策の柱の一つとして、産・学・行政の連携した研究開発拠点の建設が打ち出され、本市ではこれを受け翌年の昭和63年から事業をスタートさせました。 志段味地区に、公的な研究機関が集積する「Aゾーン」、大学等の誘致を進めている「Bゾーン」、研究開発型企業の集積を進めている「Cゾーン・テクノヒル名古屋」、市民に先端科学技術を紹介する「ふれあいゾーン」の4つのゾーンを設定し、事業を展開しています。

【Aゾーンにおける公的研究機関の主な研究内容等】

研究機関 研究内容

(独)理化学研究所 ○介護支援ロボットの研究開発 ○生物制御に基づくロボットの自律制御に関する研究 ○人間―ロボット協調による生活支援に関する研究

(財)名古屋産業科学研究所 ○SiC(シリコンカーバイド)の単結晶を用いた超硬工具の研究開発

(財)中部科学技術センター ○自己整合技術を用いた有機光テープモジュールの開発

(独)産業技術総合研究所中部センター

○無機材料等を中心とする先端工業材料に関する研究開発 ○製造エネルギーの 小化、製造プロセスの低コスト化等の要素技術の開発やそれらを 適に組み合わせた環境負荷の少ない革新的な部材化技術の開発など

(財)名古屋産業振興公社 (プラズマ技術産業応用

センター) ○プラズマ技術にかかる研究成果の地域への波及 ○プラズマ技術の産業応用

(独)産業技術総合研究所中部センター、名古屋市工業研究所

○ナノ技術を応用した表面機能化に関する研究 ○セラミックスの耐熱部品及び耐摩耗部品への応用に関する研究

名古屋大学エコトピア科学研究所、名古屋市工業研究所 等

○燃料電池の開発と応用