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東京都内で最大級の電力ユーザーで ある東京都下水道局は 2014 年 6 月に エネルギー基本計画「スマートプラン 2014」を発表した。下水道事業の総 エネルギー使用量に占める再生可能エ ネ ル ギ ー と 省 エ ネ ル ギ ー の 割 合 を、 20% 以上に高める意欲的な目標を掲げ ている。 同プランの達成に向けて、4 つの方針 が示された。「再生可能エネルギー活 用の拡大」、「省エネルギーのさらなる 推進」、「エネルギースマートマネジメン トの導入」、「エネルギー危機管理対応 の強化」である。 特にエネルギースマートマネジメントと エネルギー危機管理対応の観点で大き な役割を担うのが、大容量蓄電池だ。日 本ガイシが実用化したメガワット級の蓄 電システム、NAS電池が葛西水再生セ ンター(江戸川区)に設置されたのは 2001年 の こと。東 京 都 下 水 道 局 は NAS電池のファーストユーザーである。 「当初は電力負荷のピークカットと契 約電力の低減によるコスト削減、環境 負荷の低減、電源の安定化などが主な 目的でした。それが、東日本大震災後 の電力事情の変化などを受けて、NAS 電池の役割も若干変わりました。現在 では、エネルギースマートマネジメント における危機管理対応の強化とデマンド レスポンスを重視しています」と、東京 都 下水道局 計画調整部 エネルギー・ 温暖化対策推進担当課長の山田 欣司 氏は語る。 NAS 電池の多面的な効果を評価し て、同局はその設置数を増やしてきた。 水処理などの拠点となる 20 カ所の水再 生センターのうち、19 カ所に NAS 電池 が設置されており(図 1)、合計の蓄電 容量は 29 万キロワット時に達する。同 局は国内外を含めて最大規模のNAS 電池ユーザーでもある。 デマンドレスポンスとは、ピーク時に 電力使用を抑えた需要家にインセンティ ブを与えて、電力供給の安定化を図る 仕組みである。下水道事業においても、 ピーク時には汚水を、地下にある下水 道の幹線に貯留しておき、それ以外の 時間帯に処理することでピーク負荷を 減らすといった取り組みを進めている。 「東京都下水道事業経営レポート 2015」に よ ると、下 水 道 事 業 で 2014 年度に 68 億円のコストを縮減し ている。59億円の計画値を9億円上回 る数値だ。同レポートはこの成果を 「NaS電池を活用したピーク電力の削 減などにより計画以上に維持管理コス トを縮減したことによるもの」と評価し ている。 また、センター間をつなぐ圧送管を通 じた汚泥の融通など、エネルギーの広 域での最適化を図る水再生センター間 の連携も進めている。今後はより高度 なエネルギー管理の最適化を図っていく 考えも示されており、NAS電池の大容 量蓄電能力を活かしたデマンドレスポン スなどにも活躍が期待される。(図 2) 危機管理対応の強化という観点で は、非常用発電設備の拡充や電源の 分散化などの施策が進められている。 都民の生活や事業活動に不可欠な下 水道事業という、首都の都市機能を持 続することはもちろん、昨今の温暖化 が原因とされるゲリラ豪雨といった急 速な下水量の増加への対処とその防災 など、安全安心の維持でもNAS電池は 貢献している。 山田氏は「大雨の時は、街が浸水し ないよう、ポンプで下水管の水を大量 に汲み上げて処理するため、電気をフ ルに使います。電力会社からの送電に 頼るだけでは、災害時に停電した場合、 下水処理ができなくなります。災害から 街を守るという観点では、電源の分散 と、多様な電源の確保が重要で、非常 用発電設備や太陽光発電、小水力発 電はもとより、NAS 電池もその一つと して非常時対応を支えています」と説 明する。 送電の停止または制限があった場 合、ポンプなどの大型設備を動かすた めには相応の規模を持つ電源が必要 だ。大容量の NAS 電池は、危機管理 対応の重要な役割を担っている。 東京の下水道事業には長い歴史が ある。水処理技術などの先進性におい ても注目され、そんな下水道局の施設 には、国内外からの視察が絶えない。 「政府関係者や自治体などからの視 察を多く受けています。ほとんどの方 が水処理施設とともに、エネルギー関 連施設も見学しています」と山田氏。 地方創生の柱として、自治体主導の地 域エネルギーシステムの整備が進む 中、世界の大都市のモデルをめざす 東京都の先進的な取り組みにも貢献し ている日本ガイシのNAS電池。エネル ギーの地産地消時代での活躍が期待 される。 都市や地域の電力の地産地消に貢献するNAS電池 VOL.3 都市のエネルギーマネジメントを 革新する日本ガイシのNAS 電池 自治体主導のエネルギーシステムの整備が進む中、需要家側に設置された複数の蓄電池を群制御し、エネルギーを 最適運用する取り組みが期待される。都市のエネルギーマネジメントを高度化し、災害にも強い街づくりを進めるには、 大容量蓄電池が不可欠の要素となる。日本ガイシのNAS電池はエネルギー地産地消時代の都市整備に貢献している。 東日本大震災後に変わった NAS 電池の担う役割 より広域で、高度化した エネルギーマネジメントをめざす 停電や電力使用制限などに備え 電源の分散化を進める [お問い合わせ] 日本ガイシ株式会社 www.ngk.co.jp 図2 図1 NAS 電池の導入実績 左写真 2015年に東京都下水道局葛西水再生センター(江戸川区)に設置された NAS電池

都市や地域の電力の地産地消に貢献するNAS電池 VOL.3 都市 ...都市や地域の電力の地産地消に貢献するNAS 電池VOL. 3 都市のエネルギーマネジメントを

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 東京都内で最大級の電力ユーザーである東京都下水道局は2014年 6月にエネルギー基本計画「スマートプラン2014」を発表した。下水道事業の総エネルギー使用量に占める再生可能エネルギーと省エネルギーの割合を、20%以上に高める意欲的な目標を掲げている。 同プランの達成に向けて、4つの方針が示された。「再生可能エネルギー活用の拡大」、「省エネルギーのさらなる推進」、「エネルギースマートマネジメントの導入」、「エネルギー危機管理対応の強化」である。 特にエネルギースマートマネジメントとエネルギー危機管理対応の観点で大きな役割を担うのが、大容量蓄電池だ。日本ガイシが実用化したメガワット級の蓄電システム、NAS電池が葛西水再生センター(江戸川区)に設置されたのは

2001年のこと。東京都下水道局はNAS電池のファーストユーザーである。 「当初は電力負荷のピークカットと契約電力の低減によるコスト削減、環境負荷の低減、電源の安定化などが主な目的でした。それが、東日本大震災後の電力事情の変化などを受けて、NAS電池の役割も若干変わりました。現在では、エネルギースマートマネジメントにおける危機管理対応の強化とデマンドレスポンスを重視しています」と、東京都 下水道局 計画調整部 エネルギー・温暖化対策推進担当課長の山田 欣司

氏は語る。 NAS電池の多面的な効果を評価して、同局はその設置数を増やしてきた。水処理などの拠点となる20カ所の水再生センターのうち、19カ所にNAS 電池が設置されており(図1)、合計の蓄電容量は29万キロワット時に達する。同局は国内外を含めて最大規模のNAS電池ユーザーでもある。

 デマンドレスポンスとは、ピーク時に

電力使用を抑えた需要家にインセンティブを与えて、電力供給の安定化を図る仕組みである。下水道事業においても、ピーク時には汚水を、地下にある下水道の幹線に貯留しておき、それ以外の時間帯に処理することでピーク負荷を減らすといった取り組みを進めている。 「東京都下水道事業経営レポート2015」によると、下水道事業で2014年度に68億円のコストを縮減している。59億円の計画値を9億円上回る数値だ。同レポートはこの成果を「NaS電池を活用したピーク電力の削減などにより計画以上に維持管理コストを縮減したことによるもの」と評価している。 また、センター間をつなぐ圧送管を通じた汚泥の融通など、エネルギーの広域での最適化を図る水再生センター間の連携も進めている。今後はより高度なエネルギー管理の最適化を図っていく考えも示されており、NAS電池の大容量蓄電能力を活かしたデマンドレスポン

スなどにも活躍が期待される。(図2)

 危機管理対応の強化という観点では、非常用発電設備の拡充や電源の分散化などの施策が進められている。都民の生活や事業活動に不可欠な下水道事業という、首都の都市機能を持続することはもちろん、昨今の温暖化が原因とされるゲリラ豪雨といった急速な下水量の増加への対処とその防災など、安全安心の維持でもNAS電池は貢献している。 山田氏は「大雨の時は、街が浸水しないよう、ポンプで下水管の水を大量に汲み上げて処理するため、電気をフルに使います。電力会社からの送電に頼るだけでは、災害時に停電した場合、下水処理ができなくなります。災害から街を守るという観点では、電源の分散と、多様な電源の確保が重要で、非常用発電設備や太陽光発電、小水力発

電はもとより、NAS電池もその一つとして非常時対応を支えています」と説明する。 送電の停止または制限があった場合、ポンプなどの大型設備を動かすためには相応の規模を持つ電源が必要だ。大容量のNAS電池は、危機管理対応の重要な役割を担っている。 東京の下水道事業には長い歴史がある。水処理技術などの先進性においても注目され、そんな下水道局の施設には、国内外からの視察が絶えない。 「政府関係者や自治体などからの視察を多く受けています。ほとんどの方が水処理施設とともに、エネルギー関連施設も見学しています」と山田氏。地方創生の柱として、自治体主導の地域エネルギーシステムの整備が進む中、世界の大都市のモデルをめざす東京都の先進的な取り組みにも貢献している日本ガイシのNAS電池。エネルギーの地産地消時代での活躍が期待される。

都市や地域の電力の地産地消に貢献するNAS電池 VOL.3都市のエネルギーマネジメントを革新する日本ガイシのNASⓇ電池

自治体主導のエネルギーシステムの整備が進む中、需要家側に設置された複数の蓄電池を群制御し、エネルギーを最適運用する取り組みが期待される。都市のエネルギーマネジメントを高度化し、災害にも強い街づくりを進めるには、大容量蓄電池が不可欠の要素となる。日本ガイシのNAS電池はエネルギー地産地消時代の都市整備に貢献している。

東日本大震災後に変わったNAS電池の担う役割

より広域で、高度化したエネルギーマネジメントをめざす

停電や電力使用制限などに備え電源の分散化を進める

[お問い合わせ] 日本ガイシ株式会社 www.ngk.co.jp

図 2

図1 NAS 電池の導入実績

左写真 2015年に東京都下水道局葛西水再生センター(江戸川区)に設置されたNAS電池