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プログラム 抄 録 集 日 時 平成 28 年 4 月9日(土) 14:00~18:15 会 場 秋葉原コンベンションホール 当番幹事 帝京大学ちば総合医療センター 内科 小尾 俊太郎 53回 肝癌症例検討会

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プログラム抄 録 集

DIC17 BK

日 時平成 28 年 4月9日(土)14:00~18:15

会 場秋葉原コンベンションホール

当番幹事帝京大学ちば総合医療センター 内科小尾 俊太郎

第53回 肝癌症例検討会

共催

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肝癌症例検討会運営委員

東京大学医科学研究所附属病院放射線科 赤井 宏行 虎の門病院肝臓内科 池田 健次 武蔵野赤十字病院消化器科 泉 並木 慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器) 板野 理 久留米中央病院 板野 哲 埼玉医科大学国際医療センター画像診断科 市川 智章 三井記念病院放射線診断科 衣袋 健司 東京医科大学八王子医療センター消化器内科 今井 康晴 静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科 上坂 克彦 聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科 大坪 毅人 静岡県立総合病院肝胆膵外科 大場 範行 北里大学医療衛生学部病理学 大部 誠 慶應義塾大学医学部病理学教室 尾島 英知 群馬県立がんセンター放射線科 女屋 博昭 帝京大学ちば総合医療センター内科 小尾俊太郎 東京女子医科大学付属八千代医療センター消化器外科 片桐 聡 獨協医科大学第二外科 窪田 敬一 東京大学医学部附属病院肝胆膵外科・人工臓器移植外科 國土 典宏 新百合ヶ丘総合病院肝疾患低侵襲治療センター 國分 茂博 国立がん研究センター東病院放射線診断科 小林 達伺 東京医科大学病院消化器内科 小林 功幸 帝京大学医学部病理学講座 近藤 福雄 日本赤十字社医療センター消化器内科 斎藤 明子 医療法人社団三思会 くすの木病院 高木 均 帝京大学ちば総合医療センター外科 田中 邦哉 東京医科歯科大学大学院肝胆膵外科学 田邉 稔 湘南藤沢徳洲会病院病理診断科 中野 雅行 帝京大学医学部病理学講座 福里 利夫 帝京大学医学部放射線科学教室 古井 滋 日本赤十字社医療センター 幕内 雅敏 山梨大学医学部外科学講座第 1 教室 松田 政徳 杏林大学医学部病理学教室 望月 眞 東京女子医科大学消化器病センター消化器外科 山本 雅一

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第 53 回 肝癌症例検討会

当番幹事:帝京大学ちば総合医療センター 内科 小尾俊太郎

日 時:2016 年 4 月 9 日(土)14:00~18:15

会 場:秋葉原コンベンションホール

東京都千代田区外神田 1-18-13 秋葉原ダイビル 2F TEL 03-5297-0230

共催:肝 癌 症 例 検 討 会

会 場 周 辺 地 区

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ii

検討会運営についてのお願い

1) 発表機材は、PC (Windows)のみと致します。

会場では、Windows 7 の PC をご用意しております。

発表データは、Windows 版 Power Point 2007・2010・2013 で、発表時間内に

終了するようご作成ください。

※ Power Point 2003 以前はサポート外となりますので、ご注意ください。

※ Power Point 2016 は未だ対応しておりませんので、ご注意ください。

※ 動画をご使用の際は、Windows OS に標準搭載されている Windows

Media Playerで再生可能なファイル形式で作成しPower Pointに挿入して

ください。

(動画のファイルは、Power Point のファイルと同一のフォルダー内に保存

してください。)

PowerPoint2010 以降で動画ファイルを埋め込み処理された場合でも、

バックアップとして動画の元ファイルのご用意をお勧め致します。

動画再生に不安がある場合は、PC のお持ち込みをお願い致します。

※ Power Point の「発表者ツール」機能の使用や PC を演台に載せての発表は

出来ませんので、ご注意ください。

※ Mac をご使用の際は、PC のお持ち込みをお願い致します。

(尚、iPad 等での発表は出来ません。)

2) 発表データは、USB メモリーに保存の上、発表開始の 40 分前迄に、会場入口

のデータ受付にて試写をお済ませください。

※ PC をお持ち込みの際は、AC アダプタをお忘れ無くご持参ください。

又、外部映像出力端子が Dsub15p 以外の出力端子の場合は、専用の変換

アダプタもお忘れ無くご持参ください。

3) ご提出頂いた病理標本は、データ受付にてご返却致しますので、速やかに

お受け取りください。

4) 発表時間は、質疑・討論の時間を含まず 3 分です。

※ 発表時間の厳守をお願い致します。

(特に動画をご使用の際はご注意ください。)

演者・座長には発表終了 1 分前に黄ランプ、終了時に赤ランプでお知らせ

致します。

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5) スライドショーのページ送りは、演台にご用意するキーボード・マウスにて、

ご自身の操作でお願い致します。

6) 質疑・討論の際は、所属・氏名を述べてからご発言ください。

肝癌症例検討会のサイトが開設されました。

http://kangan.web.fc2.com/

「TOP」には最新の検討会の情報,

「肝癌症例検討会について」には検討会の紹介・会則・役員名簿,

「過去の検討会」には全 52 回の検討会のテーマ一覧が記されている他,

各回のプログラムをダウンロードできます。

また,「関連雑誌」では本検討会の記録集「Liver Cancer」の特集一覧を閲覧できます。

内容は順次,拡充される予定でございます。ご活用下さい。

第 54 回肝癌症例検討会のお知らせ

次回、第 54 回肝癌症例検討会は下記の要領で行います。

日 時: 平成 28 年 11 月 12 日(土)14:00~18:00

会 場:秋葉原コンベンションホール 東京都千代田区外神田 1-18-13 秋葉原ダイビル 2F TEL. 03-5297-0230

当番幹事:三井記念病院 放射線診断科 衣袋 健司

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iv

プ ロ グ ラ ム

はじめに

1990 年に肝外科研究会から発展して発足した肝癌症例検討会も、四半世紀を

超えて継続され、第 53 回を迎えることになりました。診療科の枠を取り払い、

貴重な一例一例を探究して、肝癌の神髄に迫るとてもユニークな集いであると認

識しております。この度、第 53 回肝癌症例検討会の当番世話人を拝命致しまし

た。身に余る光栄であり、本研究会運営委員会委員長の山本雅一先生をはじめ、

会員の先生方ならびに関係各位に御礼を申し上げます。

さて、四半世紀の時が流れ、肝癌を取り巻く状況も変化して参りました。本邦

の肝癌の主因であった C 型肝炎も、ソフォスブビルによって終焉も間近になっ

てまいりました。さらに英知の結晶によって、本邦の肝癌死亡者数は減少に転じ

ております。一方で、大腸癌をはじめ他の癌腫は、いまだに増加の一途でありま

す。大腸癌は高率に肝転移を来し、肝転移が予後を規定する症例も少なからず存

在します。また化学療法の進歩の一方で、肝転移巣の切除が有効な症例も少なか

らず存在します。そこで今回は、主題にはじめて「転移性肝がん」を取り上げま

した。どのような症例が、治療の対象なのか?生存を延長できるのか?どのよう

にエビデンスを構築すれば良いのか?熱い議論を交わしたいと存じます。さらに

副題として「興味ある症例」を取り上げました。一例一例を丁寧に掘り下げて、

新たな知見を探りたいと存じます。

会員の皆様のご協力を得まして、多数の演題が集まりました。この場をお借り

して感謝申し上げます。春爛漫の秋葉原に集い、議論に花を咲かせましょう。

最後にはなりましたが、運営委員会の先生方、会の運営にかかわる全ての皆様、

そして第 53 回肝癌症例検討会にご参加いただいた皆様に深謝いたします。

平成 28 年 4 月

第 53 回肝癌症例検討会 当番幹事

帝京大学ちば総合医療センター 内科 病院教授

小尾 俊太郎

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第 53 回肝癌症例検討会プログラム

開会の辞 帝京大学ちば総合医療センター 内科 小尾 俊太郎

SESSION I 14:00-14:30

興味ある症例① 座長 日本赤十字社医療センター 斎 藤 明 子

帝京大学医学部 古 井 滋

病理コメンテーター 慶應義塾大学医学部 尾 島 英 知

Ⅰ-1 『乳がん肝転移との鑑別を要したタモキシフェンよる

限局性脂肪肝の一例』 ································································· 2

順天堂大学練馬病院 消化器内科 宗 林 祐 史 他

Ⅰ-2 『高度進行肝細胞癌に対して、集学的治療が奏功した1例』 ·················· 3

公立学校共済組合関東中央病院 消化器内科 宮 川 佑 他

Ⅰ-3 『HBV 既往感染の肝硬変に多発した良性、悪性肝細胞腫瘍の

HE, VB 簡易組織診断』 ································································· 4

湘南藤沢徳洲会病院 病理診断科 中 野 雅 行 他

SESSION Ⅱ 14:30~15:10

興味ある症例② 座長 山梨大学医学部 松 田 政 徳

埼玉医科大学国際医療センター 市 川 智 章

病理コメンテーター 帝京大学医学部 高 橋 芳 久 Ⅱ-1 『大型肝細胞癌と鑑別が困難であった肝細胞腺腫の 1 切除例』 ··············· 6

日本赤十字社医療センター 肝胆膵外科 高 本 健 史 他

Ⅱ-2 『術前診断で βカテニン陽性の肝細胞腺腫が疑われ、

腹腔鏡下肝部分切除を施行した 1 例』 ············································· 7

慶應義塾大学 外科学(一般・消化器) 石 井 政 嗣 他

Ⅱ-3 『腫瘍破裂にて診断された細胆管細胞癌と肝細胞癌との

混合型肝癌の 1 例』 ····································································· 8

東京女子医科大学八千代医療センター 消化器外科 濱 野 美 枝 他

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Ⅱ-4 『診断に苦慮した肝類上皮性血管内皮腫の 1 例』 ································· 9

国立がん研究センター東病院 肝胆膵外科 工 藤 雅 史 他

コーヒーブレイク 15:10~15:20

製品紹介 15:20~15:30

アロキシ静注 0.75mg

大鵬薬品工業株式会社 東京支店 学術課 奥 山 樹

SESSION Ⅲ 15:30~16:10

転移性肝癌① 座長 聖マリアンナ医科大学 大 坪 毅 人

三井記念病院 衣 袋 健 司

病理コメンテーター 北里大学医療衛生学部 大 部 誠 Ⅲ-1 『胆管内腫瘍栓を伴う再発大腸癌肝転移の一切除例』 ························· 12

獨協医科大学 第二外科 多 胡 和 馬 他

Ⅲ-2 『肝内胆管癌との鑑別診断が困難であった大腸癌肝転移の 1 例』 ·········· 13

帝京大学ちば総合医療センター 外科 菊地 祐太郎 他

Ⅲ-3 『大腸癌異時性肝内門脈腫瘍栓の一切除例』 ····································· 14

東京都立墨東病院 外科 鹿 股 宏 之 他

Ⅲ-4 『化学療法後に RFA 併用肝切除を試みた直腸癌多発肝転移の 1 例』 ······ 15

木沢記念病院 外科 池庄司 浩臣 他

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vii

SESSION Ⅳ 16:10~16:50

転移性肝癌② 座長 東京医科大学病院 小 林 功 幸

群馬県立がんセンター 女 屋 博 昭

病理コメンテーター 湘南藤沢徳洲会病院 中 野 雅 行 Ⅳ-1 『S 状結腸癌多発肝転移患者に対しラジオ波焼灼術(RFA)

を施行した 1 例』 ······································································ 18

順天堂大学 消化器内科 佐 藤 公 紀 他

Ⅳ-2 『集学的治療が著効した同時性多発肝転移を伴う進行直腸癌の 1 例』 ···· 19

佐々木研究所附属杏雲堂病院 消化器外科 坂 本 敏 哉 他

Ⅳ-3 『PET 検査陰性を示した盲腸癌肝転移の 1 例』·································· 20

東京女子医科大学 消化器外科 小 寺 由 人 他

Ⅳ-4 『計 55 回の肝動注療法と RFA の併用で 5 年の長期生存が

得られた直腸癌肝転移の 1 例』 ··················································· 21

佐々木研究所附属杏雲堂病院 消化器肝臓内科 河 井 敏 宏 他

SESSION Ⅴ 16:50~17:05

基調講演 座長 帝京大学ちば総合医療センター 小尾 俊太郎 『転移性肝がん 内科的治療のエビデンス作成にむけて』

社会福祉法人 三井記念病院 消化器内科 大 木 隆 正

SESSION Ⅵ 17:05~18:15

転移性肝癌③ 座長 静岡県立総合病院 大 場 範 行

国立がん研究センター東病院 小 林 達 伺

病理コメンテーター 杏林大学医学部 望 月 眞

Ⅵ-1 『異時性多発胃癌肝転移に対し 12 回 RFA 施行後の

局所再発に対し拡大右肝切除を施行した 1 例』 ······························· 26

東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科・人工臓器移植外科 伊 藤 大 介 他

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Ⅵ-2 『化学療法不応胃癌多発肝転移に対し 2 度の肝切除が

奏功している 1 症例』 ································································ 27

JR 東京総合病院 消化器外科 竹 村 信 行 他

Ⅵ-3 『集学的治療により長期生存が得られている直腸カルチノイド

肝転移の 1 例』 ········································································· 28

JR 東京総合病院 消化器内科 小田原 成彬 他

Ⅵ-4 『不可逆電気穿孔法で治療し得た肝門部の転移性肝癌の 1 例』 ············· 29

東京医科大学 消化器内科 小 川 紗 織 他

Ⅵ-5 『肝選択的動脈内刺激薬注入法(肝 SASI テスト)が有効だった

膵神経内分泌腫瘍(P-NET)肝転移の 1 例』 ····································· 30

東京医科歯科大学 肝胆膵外科 渡 辺 秀 一 他

Ⅵ-6 『乳癌肝転移に対して肝切除を施行し,早期再発を来した 1 例』 ·········· 31

練馬総合病院 外科 筒 井 り な 他

Ⅵ-7 『同時性肝転移が嚢胞変性した十二指腸神経内分泌腫瘍の 1 切除例』 ···· 32

静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科 内 田 恒 之 他

閉会の辞 帝京大学ちば総合医療センター 内科 小尾 俊太郎

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抄 録 集

S E S S I O N Ⅰ (14:00~14:30)

興味ある症例①

座 長

日本赤十字社医療センター 斎藤 明子

帝京大学医学部 古井 滋

病理コメンテーター

慶應義塾大学医学部 尾島 英知

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-2-

Ⅰ-1 乳がん肝転移との鑑別を要したタモキシフェンよる限局性脂肪肝の一例

順天堂大学練馬病院 消化器内科 1),同 乳腺外科 2)

宗林祐史 1),大久保裕直 1),中寺英介 1),深田浩大 1),井草祐樹 1),宮崎招久 1),北畠俊顕 2),

小坂泰二郎 2),児島邦明 2)

症例:40 歳代女性

2012 年 10 月に右外上乳癌 T2N0M0 StageⅡA に対して右全乳房切除術+腋窩リンパ節

廓清施行。2013 年 7 月から 2015 年 11 月までタモキシフェン 20mg を服用歴あり。

2013 年 10 月単純 CT で肝内 SOL 認めなかったものの,2015 年 10 月の単純 CT では肝

S5 に 13mm 大の低吸収域が出現した。造影 CT を施行すると,平衡相で同部位は低吸収を

示した。

US では肝 S5 表面に高エコー腫瘤あり,CEUS では腫瘤内に明らかな血流増生はなく,

Kupffer 相では欠損造影を示さなかった。Gd-EOB-DTPA 造影 MRI では,肝 S5 表面に

T1 in-phase で等信号,out of phase で低信号を呈す 14mm 大の腫瘤あり。Dynamic study

後期相では辺縁不整な低信号,肝細胞相では軽度の低信号を呈した。PET では肝内含めて

FDG の集積亢進はなかった。

腫瘤肝生検を施行。両側の正常肝組織に挟まれて,区域性に大滴性の脂肪沈着がみられ

た。以上よりタモキシフェンによる限局性脂肪肝と診断した。

タモキシフェンによる脂肪肝の報告はほとんどがびまん性脂肪沈着であるが,本例のよ

うな限局性脂肪肝の報告は散発例しかなく,興味深い症例と考え報告する。

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-3-

Ⅰ-2 高度進行肝細胞癌に対して,集学的治療が奏功した 1 例

公立学校共済組合関東中央病院 消化器内科

宮川 佑,小畑美穂,大澤由紀子,大山博生,後藤絵里子,磯村好洋,瀬戸元子,

外川 修,小池幸宏

症例は 62 歳,男性。左股関節痛で当院整形外科を受診。MRI で左腸骨の転移性骨腫瘍

が疑われ,原発巣精査の CT で門脈腫瘍塞栓を伴う肝細胞癌を認め,当科紹介。多発肺転

移を認め,肝細胞癌 cStageⅣと診断した。腫瘍マーカーは,TAFP:2300 ng/ml,L3F:

58.9 %,PIVKA-2:17100 mAU/ml。まず,左腸骨転移に対する放射線治療を開始し,治

療開始 4 日後に TACE を施行した。放射線治療終了後に,ソラフェニブ 400mg/day を導

入した。内服開始 2 週間後には肺転移の縮小を認め,腫瘍マーカーは,TAFP:41.3 ng/ml,

L3F:55.1 %,PIVKA-2:73 mAU/ml と著明に低下し,PR の判定。内服開始 2 ヶ月後に

は肺転移は消失し,原発巣や左腸骨転移は増大を認めなかった。現在 5 ヶ月経過している

が,PR を維持している。肝予備能が良好な高度進行肝細胞癌に対する治療の第一選択はソ

ラフェニブであるが,本症例では放射線治療と TACE を組み合わせることで,現在まで腫

瘍のコントロールが得られている。高度進行肝細胞癌には,全身化学療法のみならず,局

所治療を組み合わせることで,さらなる予後改善が期待できる。

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Ⅰ-3 HBV 既往感染の肝硬変に多発した良性,悪性肝細胞腫瘍の HE, VB 簡易組織診断

湘南藤沢徳洲会病院 病理診断科 1),湘南鎌倉総合病院 消化器病センター2)

中野雅行 1),魚嶋晴紀 2),金原 猛 2),増田作栄 2),賀古 眞 2)

症例:68 才,男性。脳梗塞で入院加療中,画像検査で偶然肝腫瘍が指摘された。造影 CT

検査で肝前区域に 5cm, 2cm 及び後区域に 2cm の腫瘍性病変が認められた。腫瘍生検で肝

細胞腺腫および肝細胞癌ご診断され,肝区域切除を行った。

病理検査で,画像で指摘された前区域の大きい腫瘍は肝細胞腺腫,小腫瘍は肝細胞癌で,

前者は免疫染色で HNF1α 不活化型肝細胞腺腫,後者は線維被膜で囲まれた壊死した肝細

胞癌であった。後区域腫瘍は周辺に早期肝細胞癌の層を伴った肝細胞癌であった。更に組

織学的検索で画像では指摘されなかった 2 個の早期肝細胞癌の小病変が見つかった。

背景肝は HBs 抗原陰性,HBc 抗体陽性,HCV 抗体陰性の肝硬変であった。良性,悪性

の肝細胞腫瘍の多発症例であった。一般的に,早期肝細胞癌,肝細胞腺腫は腫瘍細胞の異

型,構造の異型が軽度で組織学的鑑別が困難な症例が多い。ビクトリアブルー(VB)は門脈

域の有無の検索が容易で,更に門脈域の弾性線維の染まり具合で薄いと肝細胞腺腫が示唆

される。HE, VB による簡易的病理診断が有用であったのでそのアルゴリズムを紹介いた

します。

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S E S S I O N Ⅱ (14:30~15:10)

興味ある症例②

座 長

山梨大学医学部 松田 政徳

埼玉医科大学国際医療センター 市川 智章

病理コメンテーター

帝京大学医学部 高橋 芳久

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-6-

Ⅱ-1 大型肝細胞癌と鑑別が困難であった肝細胞腺腫の 1 切除例

日本赤十字社医療センター 肝胆膵外科 1),同 消化器内科 2),同 病理部 3)

帝京大学病理学 4)

高本健史 1),斎藤明子 2),井上和人 1),丸山嘉一 1),森戸正顕 1),島田 恵 1),橋本拓哉 1),

熊坂利夫 3),福里利夫 4),幕内雅敏 1)

【症例】24 歳 男性

【主訴】心窩部痛

【既往歴】十二指腸潰瘍 (H.Pylori 陽性),DM

輸血歴:なし,飲酒歴:機会飲酒,喫煙歴:なし

【家族歴】特記なし,肝疾患なし。

【現病歴】心窩部痛があり近医受診。腹部超音波検査にて S7 を中心とする直径約 10cm の

モザイクパターンを示す腫瘍を認めた。造影 CT にて腫瘍は早期濃染 と wash out を認め,

血液検査で PIVKA-II 726 mAU/mL と上昇を認めており,肝細胞癌が疑われ精査加療目的

で当院を紹介受診。

【入院後経過】入院時現症:身長 160cm,体重 60kg,血圧 124/67 mmHg

血液検査所見:AST 18IU/L, ALT 29IU/L, LDH 174IU/L, ALP 303IU/L, γ-GTP48IU/L,

Alb 4.6g/dL, T.Bil 0.5mg/dL, T.Chol 203mg/dL, TG 223mg/dL, HbA1c 6.1%, AFP

0.9ng/mL, PIVKA-II 459mAU/mL, CEA 0.8ng/dL, CA19-9 13U/mL, HCV-Ab (-),

HBs-Ag (-), HBs-Ab (-), HBe-Ag (-), HBe-Ab (-), HBc-Ab (-)

肝動脈造影:後区域枝および A8 からの屈曲した動脈が栄養血管であり,腫瘍全体が濃染

された。一部に濃染の強い結節部分を認めた。

肝細胞癌の診断で肝動脈塞栓術を行い,24 日後に拡大後区域切除術を施行。(手術時間

8 時間 5 分,出血量 260g)経過良好で術後 16 病日に退院。

【病理組織所見】

肉眼所見:13×10×8cm,被膜を認めない比較的境界明瞭な結節,内部にはいくつか色調

の異なる結節部分を認める。

病理組織所見:腫瘍内には胆管の消失,動脈と門脈の伴走する所見を認め,腫瘍細胞に核異

型は殆ど認めず。fc(-), s0, vp0, vv0, b0 であり肝細胞腺腫と診断した。非癌肝は脂肪化を軽

度認めるのみで線維化の所見なし。現在亜型分類のための免疫組織学的染色を行っている。

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-7-

Ⅱ-2 術前診断でβ カテニン陽性の肝細胞腺腫が疑われ,腹腔鏡下肝部分切除を施行

した 1 例

慶應義塾大学 外科学(一般・消化器)1),同 病理学教室 2)

石井政嗣 1),板野 理 1),篠田昌宏 1),北郷 実 1),阿部雄太 1),八木 洋 1),日比泰造 1),

尾島英知 2),北川雄光 1)

【症例提示】

30 代女性。既往歴に特記事項なし。数年前の人間ドックにて肝臓 S8 に高エコー腫瘤を

指摘され,他院にて経過観察されていた。症状はなく,2 年かけて徐々に増大傾向であっ

たため,他院で外科切除を勧められたが,ご本人が当院での切除を希望されたため,当院

紹介受診された。

画像上,腫瘤性病変は肝 S8 に最大で 15mm の腫瘤性病変を 3 か所に認めた。造影 CT

では早期濃染は認めず,造影 MRI にて早期濃染がなく,肝細胞相で uptake を認めていた。

肝細胞腺腫としては非典型的だが,早期濃染はなく,FNH は否定的であり,除外診断とし

て肝細胞腺腫が挙げられた。肝細胞腺腫の中でも脂肪の沈着がなく,肝細胞相で uptake

を認める点で βカテニン活性型が疑われる所見であった。

画像上,肝細胞腺腫が疑われたため,低用量経口避妊薬の内服を中止し,1 か月ほどの

経過観察を行ったがサイズに変化を認めなかった。βカテニン活性型の肝細胞腺腫の場合,

悪性転化の可能性が高いことも考慮し,切除生検の意味も含めて切除の方針とし,腹腔鏡

下肝部分切除術を施行した。術中のソナゾイド造影超音波では 15mm 大の腫瘍のみ同定可

能であったが他の部位は同定できなかった。そのため,同定できる腫瘍と合わせて他の腫

瘤は解剖学的に位置を把握し,腹腔鏡下に肝部分切除を行った。病理所見では肉眼的にや

や白色調で中心に赤褐色調の不整形の領域を伴う病変であった。組織所見としては明らか

な異型に乏しい肝細胞が細索状構造を保ちつつ,類洞の拡張を伴いながら増生していた。

腫瘍の中心部では類洞の拡張により peliosis 様の変化を生じており,壁の厚い静脈様構造

をとる異常な欠陥が孤立性・散在性に認められるが,類洞の血管化は明瞭ではなかった。

なお,組織所見ではβ カテニンの核内異常集積は認めなかった。肝細胞腺腫をはじめとし

た腫瘍性病変を積極的に支持する所見に乏しく,腫瘍性と過形成病変との鑑別が困難な組

織所見であった。

今回,我々は肝細胞腺腫と鑑別が困難であった肝腫瘤症例を経験したので,画像診断,

腫瘤性病変の病理所見の検討を含め報告する。

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Ⅱ-3 腫瘍破裂にて診断された細胆管細胞癌と肝細胞癌との混合型肝癌の 1 例

東京女子医科大学八千代医療センター 消化器外科

濱野美枝,中村 努,大石英人,片桐 聡,鬼澤俊輔,平井栄一,飯野高之,石井雅之,

石多猛志,岡野美々,毛利俊彦,新井田達雄

症例:47 歳 女性

既往歴:特記すべき事なし

現病歴:2015 年 8 月 4 日気分不快,意識消失発作出現し,当院救急外来に搬送された。

入院時現症:BP 64/40,HR 78 回/分,BT 37.4 度,意識清明,四肢冷感著明,湿潤あり。

顔面,眼瞼結膜蒼白。心窩部圧痛あり。

入院時血液生化学所見:WBC 17190/μl,Hb 9.4 g/dl,Plt 25.1 万/μ,alb 3.3g/dl,T-bil

0.4mg/dl,AST 8U/l,ALT 6U/l, ALP 156U/l,BE -6.8,AFP 4451.5ng/ml,HBsAg(-),

HCVAb(-)と,貧血,アシドーシスを認めた。糖尿病等なく,TM では AFP は高値であっ

たが,肝炎は陰性だった。

腹部 CT 検査にて肝表面,脾周囲,ダグラス窩に血性腹水と思われる液体貯留を認め,脾

臓頭側に径 8cm の腫瘍を認めた。腫瘍からの出血と診断し,緊急に血管造影検査を施行し

たところ,肝動脈抹消に腫瘍濃染を認めた。肝細胞癌破裂と診断し,塞栓術を施行した。

全身状態は落ち着いたため,一旦退院後,9 月 6 日,肝細胞癌に対する根治術を施行した。

手術所見:腹水はなく肝は正常肝であった。播種性腫瘍は認めず,腹水洗浄細胞診も陰性

であった。腫瘍は肝外側から突出するように存在し,肝左葉には肝内転移も認められなかっ

た事から肝外側の部分切除を行った。

病理組織学的所見:肉眼的に径 7cm と 3cm の腫瘍が重なり合うように存在していた。大

きい方の腫瘍では肝表面側に壊死領域があり,それに続いて線維成分に富む結合織性腫瘍

が広く認められた。組織学的に細い腺管構造と索状構造が認められ,腺管腔は膜,索状部

は細胞の隙間の細胞膜がEMA陽性,抗肝細胞抗体は陰性で細胆管細胞癌の所見であった。

壊死部は鍍銀染色で索構造陰影とその間に細網線維が認められ,肝細胞癌を示唆する所見

であった。小腫瘍は腺腔構造とその間を埋める充実部分が認められた。腺細胞はサイトケ

ラチン,EMA ともに陰性,充実部分は抗肝細胞抗体が陽性であった。肝細胞癌と胆管系(?)

細胞の癌の混合型が考えられた。

術後経過は良好であったが 4 ヶ月後の CT で残肝に再発を認めた。Vp3 であったため,

主腫瘍に対して追加切除施行,今後化学療法施行予定である。

腫瘍破裂にて診断された細胆管細胞癌の報告はなく,非常に稀な症例を経験したので報

告する。

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Ⅱ-4 診断に苦慮した肝類上皮性血管内皮腫の 1 例

国立がん研究センター東病院

肝胆膵外科 1),同 放射線診断科 2),同 病理診断科 3),同 肝胆膵内科 4)

工藤雅史 1),小林達伺 2),後藤田直人 1),高橋進一郎 1),加藤祐一郎 1),北口和彦 1),

西田保則 1),中山雄介 1),高橋大五郎 1),大久保悟志 1),相澤栄俊 1),小西 大 1),

小嶋基寛 3),高橋秀明 4)

症例は 70 歳代女性。検診にて胸部異常影を指摘,前医 CT 検査にて多発肺結節を認め,

精査加療目的に当院呼吸器内科紹介受診となった。多発肺結節については前医と比較し著

変なく経過観察の方針となったが,転移性肺腫瘍鑑別のために行った PET-CT 検査にて,

肝 S2 に FDG の集積が認められた。腹部造影 CT 検査でも肝 S2 の同部位に長径 17mm の

比較的境界明瞭な半球状の腫瘤が認められ,動脈相,門脈相,静脈相いずれも造影効果を

認めず,脂肪成分や石灰化も認められなかった。肝 MRI 検査では,T2 強調画像で高信号,

T1 強調画像で低信号を呈し,脂肪成分を含まない腫瘤であった。EOB-MRI では CT 同様,

動脈相,門脈相での造影効果を認めず,肝細胞相で EOB の取り込み低下を認めた。硬化型

血管腫や FNH が考えられたが,画像上の確定診断は困難で経皮的肝生検を行った。生検

結果では硬化性血管腫もしくは類上皮性血管内皮腫が鑑別として考えられた。外科的切除

を含めた治療の説明を行ったが,本人希望により経過観察の方針となった。3 ヶ月後の CT

検査では著変を認めなかったが,さらに 3 ヶ月後の CT 検査では肝 S2 の病変は 22mm に

増大し,肝 S8 に 14mm の結節影が新たに出現しており,外科的切除の方針となった。術

中所見では肝 S2 と S8 の腫瘍の他に,肝両葉の表面に数 mm 大の白色結節が多数認められ

た。そこで肝 S2 の増大を認めた病変と,肝 S3 表面の結節を 1 ヶ所切除した。切除標本は

いずれも肉眼的に境界不明瞭,白色充実性,弾性硬な腫瘍であった。組織学的には,線維

化および硝子化を伴った基質を背景として卵円形の細胞が一部細血管様構造を呈して認め

られ,肝類上皮性血管内皮腫を考える所見であった。免疫染色では CD31(+),CD34(+),

Desmin(-),D2-40(+),Ki-67<5%,FactorⅧ(+),S100(-)であり,腫瘍における血管内

皮マーカーが陽性であり類上皮性血管内皮腫に矛盾しない所見であった。病理組織学的診

断,臨床経過および画像所見から,初診時に指摘された肺結節に関しても類上皮性血管肉

腫の肺転移と考えられた。類上皮性血管内皮腫は比較的稀な腫瘍であり,当院での経験お

よび若干の文献的考察を踏まえ報告する。

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S E S S I O N Ⅲ (15:30~16:10)

転移性肝癌①

座 長

聖マリアンナ医科大学 大坪 毅人

三井記念病院 衣袋 健司

病理コメンテーター

北里大学医療衛生学部 大部 誠

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Ⅲ-1 胆管内腫瘍栓を伴う再発大腸癌肝転移の一切除例

獨協医科大学 第二外科

多胡和馬,青木 琢,櫻岡祐樹,松本尊嗣,田中元樹,白木孝之,小菅孝之,礒 幸博,

加藤正人,下田 貢,窪田敬一

症例は 68 歳男性,200X 年にS状結腸癌(StageⅡ)に対してS状結腸切除術,D3 郭清施

行(病理:tub2, pSS, pN0, ly0, v0)。201X 年に肝 S3,翌年に S7/8 の転移性肝癌に対して

肝部分切除術施行(病理:Liver metastasis from colon cancer)。2014 年には総胆管内まで

進展する胆管腫瘍栓を認める S8 の転移性肝癌に対して,肝部分切除,胆管切開腫瘍栓摘出

術を施行された(病理:adenocarcinoma, metastatic liver)。2015 年,右前区域胆管枝か

ら右肝管へ進展する腫瘍栓を認める最大径 5cmの肝右葉を占拠する転移性肝腫瘍が確認さ

れ,経回腸静脈的門脈右枝塞栓術に引き続き,根治切除術を施行された(病理:

adenocarcinoma, metastatic liver)。手術所見は,術中超音波を用いて腫瘍栓局在を確認

し,中枢の右肝管切開をすることで前区域胆管枝から右肝管への進展を認める胆管腫瘍栓

と腫瘍を含有する肝右葉を en block に摘出した。病理所見上は 1,2 回目の摘出腫瘍からは

明らかな胆管腫瘍栓の所見はなかった。3,4 回目の摘出した胆管腫瘍栓は壊死した

adenocarcinoma 成分であった。転移性肝癌の肝内胆管浸潤は約 6%と稀であると報告され

ている。今回,繰り返す胆管腫瘍栓を伴う転移性肝癌に対する系統的切除を施行し得た一

例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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Ⅲ-2 肝内胆管癌との鑑別診断が困難であった大腸癌肝転移の 1 例

帝京大学ちば総合医療センター外科

菊地祐太郎,廣島幸彦,笠原康平,川口大輔,村上 崇,松尾憲一,小杉千弘,首藤潔彦,

幸田圭史,田中邦哉

【背景】肉眼的に胆管内進展をきたす大腸癌肝転移は 10~44%と比較的高頻度と報告され

るが,術前画像診断上,肝内胆管癌との鑑別診断が一般に困難である。S 状結腸癌の診断

時に中枢側の肝内胆管拡張を伴った肝腫瘤性病変を認め,肝内胆管癌と診断した結腸癌同

時性肝転移例を経験したので報告する。

【症例】症例は 65 歳の女性で,血便を主訴に近医を受診し,下部消化管内視鏡検査で S 状

結腸癌と診断され当科紹介受診した。術前 CT 検査で肝 Sg2 に動脈相で low density であ

り,門脈相・平衡相で淡く ring 状に enhance される径 21×16mm の腫瘍性病変認めた。

また本腫瘍より中枢側に肝門近傍から拡張した B2 肝管 (最大径 8.2mm)を認めた。ただし

拡張肝管内には腫瘍栓を示唆する所見はなく,癌の壁内進展を示唆する胆管造影所見も認

めなかった。ERCP での細胞診は ClassⅡであった。拡張肝管内には明らかな壁不整像は

なく,左 1 次分枝および左右肝管合流部から行った step biopsy も全て癌陰性であった。以

上から術前診断は S 状結腸癌(T3, N0, M0, StageⅡ)および末梢型の腫瘤形成型+胆管浸潤

型の肝内胆管癌と診断した。S 状結腸癌は狭窄を伴っており,また腹腔鏡下で低侵襲での

切除が可能と判断し結腸癌手術を先行した。術中所見で肝 Sg2 の腫瘍は肝表面に露出する

白色の結節性病変として確認された。結腸術後 50 日目に肝腫瘍切除を行った。ERCP の

step biopsy の結果から肝外胆管は温存し,左肝管 1 次分枝 (左右分岐直後)で肝管切離を

行う肝左葉+左尾状葉切除および D2 郭清の方針とした。左肝管 1 次分枝の切離断端の術中

迅速診断で癌陰性であり胆管の追加切離は行わなかった。術後経過は良好で第 14 病日に退

院となった。切除標本肉眼所見で肝腫瘍は径 27×17mm の白色結節であり,拡張した B2

肝管壁は白色に肥厚し内部に腫瘍栓と多量の粘液を認めた。病理所見では腺管構造は大き

く核はクロマチンに濃染し S 状結腸癌の組織像に酷似していた。免疫組織学的検索では

CK7 陰性,CK20 陽性であり,S 状結腸癌の所見と一致しており最終的に大腸癌の肝転移

と診断した。拡張した B2 肝管の壁内への癌浸潤はなく壁肥厚は線維化所見のみであった。

したがって術前の胆管拡張の原因は腫瘍栓及び腫瘍が産生した粘液によるものと考えられ

た。本症例は大腸癌の術後補助化学療法として XELOX 療法を施行し 3 ヶ月経過現在,無

再発生存中である。

【まとめ】術前に肝内胆管癌との鑑別が困難であった大腸癌肝転移例を経験した。画像所見

等示唆に富む症例であり文献的考察を含めて報告する。

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Ⅲ-3 大腸癌異時性肝内門脈腫瘍栓の一切除例

東京都立墨東病院 外科 1),同 検査科 2),同 放射線科 3)

鹿股宏之 1),脊山泰冶 1),谷澤 徹 2),木村祐太 1),谷 圭吾 1),那須啓一 1),蕨 雅大 2),

高橋正道 3),松岡勇二郎 3),稲田健太郎 1),真栄城 剛 1),宮本幸雄 1),梅北信孝 1)

【目的】大腸癌の転移形式として,肝実質に腫瘤を形成せず門脈内にのみ転移することは稀

であり報告例は限られている。今回我々は,門脈内に腫瘍栓を形成した異時性大腸癌肝転

移の一切除例を経験したため報告する。

【症例】68 歳,女性。1986 年に大腸癌に対して回盲部切除術を施行した。2006 年,横行

結腸癌と S 状結腸癌に対して結腸右半切除術,S 状結腸切除術を施行した。2011 年,S 状

結腸癌術後の吻合部再発に対して低位前方切除術,D3 リンパ節郭清を施行した。2013 年

4 月,右半切除術後の吻合部再発に対して結腸部分切除術を施行した。その後,mFOLFOX6

を 12 コース施行した。2014 年 5 月,経過観察 CT で肝内に低濃度腫瘍を認め肝転移疑っ

た。術直前の解析用 CT では,短期間に低濃度腫瘍は前区域グリソン鞘に沿って進展を示

し前後区域分岐部まで到達していた。腫瘍マーカーの上昇はなかった。胆管の拡張は認め

ず,転移性肝癌の門脈内腫瘍栓の診断で手術を行った。

【結果】術中エコーでも門脈内に腫瘍栓を認め,前後区域枝分岐部に進展していたため,右

肝切除術を行った。手術時間 5 時間 33 分,出血量 426g であり,術後は順調に経過し 7 病

日退院となった。切除標本の肉眼所見では,門脈前・後区域枝分岐部から抹消にかけて,

門脈内に充満する白色腫瘤がみられた。組織学的には粘液湖中に浮遊する低分化な粘液癌

で,印環細胞様の成分も混在していた。2013 年の局所再発切除標本の腫瘍細胞と類似してお

り,大腸癌の肝転移再発と診断した。また,切除標本を検索しても腫瘍は門脈内に限局して

おり,肝実質内の腫瘤形成はみられなかった。術後補助化学療法として Xeloda を 8 コース

投与し,肝切除後 18 ヶ月現在無再発生存中である。

【結語】肝実質に腫瘤を形成せず門脈内腫瘍栓として発育した,非常に稀な転移形式と考え

られた。治癒切除後により長期生存の可能性がある。

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Ⅲ-4 化学療法後に RFA 併用肝切除を試みた直腸癌多発肝転移の 1 例

木沢記念病院外科 1),同 病理診断科 2)

池庄司浩臣 1),尾関 豊 1),鳥居 寛 1),山本淳史 1),伊藤由裕 1),坂下文夫 1),今井直基 1),

山田鉄也 2)

症例は 70 歳の女性で 2015 年 3 月に排便異常を主訴に近医を受診し,精査加療目的に当

院に紹介となった。初診時の CT 検査で多発肝転移と直腸腫瘍を疑われた。大腸内視鏡検

査では直腸 Ra に全周性狭窄を伴う 2 型腫瘍を認め,同部位からの生検で高分化型腺癌と

診断した。ダイナミック CT 検査で,約 3cm~5mm 程度まで,多発する肝転移は肝両葉全

区域にまたがり合計 16 個認めた。高度の多発肝転移を伴う切除不能直腸癌として,回腸ス

トーマ造設後に FOLFOX+アバスチン療法を開始した。経過中,腫瘍の縮小効果を認め,

腫瘍マーカーも低下していった。約 7 ヶ月間,合計 14 サイクル施行し,2015 年 11 月に治

療開始より初めて腫瘍マーカーの上昇傾向を認めた。EOB-MRI で肝内の 16 病変は全て確

認できるものの最大径 15mm 以下まで縮小しており,新規病変の出現は認められなかった

ため,この段階で切除を考慮し,肝機能の評価を行い,ICG-R15:21%, ICG-K:0.124 であっ

た。手術は原発巣の切除ならびに,肝転移に対しては部分切除と RFA を併施して R0 切除

を目指した。十分な IC のもと 2015 年 12 月上旬に手術を行った。直腸低位前方切除を行っ

たのち,術中エコーで確認できた肝転移巣に対して RFA を 5 か所 5 病変に対して,肝部分

切除を 6 か所 9 病変に対して行った。S5,S7 の 2 病変は術中のエコーで同定することが

できず全病変の治療には至らなかった。

術後 1 週間の造影 CT 検査で治療効果を確認した。術中に同定できなかった 2 病変は CT

では確認することができた。その他の病変は RFA を行った部分も含め画像上良好な治療効

果が得られた。病理では切除した 9 病変の全てに viable な腺癌細胞を認めた。患者は術後

第 21 病日に軽快退院した。術後の回復を待って 2016 年 1 月下旬より 5-FU/LV+アバス

チン療法を再開した。今後残存病変に対しては Real-time Virtual Sonography (RVS) を

使用して RFA を行う予定である。

16 個の直腸癌多発肝転移に対して,全身化学療法後に R0 切除を試みた本症例について

若干の考察を加えて報告するとともに,今回の当科での治療方針ならびに手術につき検討

したい。

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S E S S I O N Ⅳ (16:10~16:50)

転移性肝癌②

座 長

東京医科大学病院 小林 功幸

群馬県立がんセンター 女屋 博昭

病理コメンテーター

湘南藤沢徳洲会病院 中野 雅行

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Ⅳ-1 S 状結腸癌多発肝転移患者に対しラジオ波焼灼術(RFA)を施行した 1 例

順天堂大学 消化器内科

佐藤公紀,清水 遼,林 学,谷木信仁,三浦寛子,金澤 亮,石井重登,伊藤智康,

斉藤紘昭,崔 仁煥,渡辺純夫,椎名秀一朗

50 代女性。2013 年 12 月に Medan University Hospital (Indonesia)にて S 状結腸癌,

多発肝転移,卵巣浸潤と診断され,S 状結腸切除,広汎子宮全摘術を施行した。2014 年 1 月

より同院にて XELOX+ bevacizumab を開始した。経過中,Grade 3 の体重減少を認め,

capecitabine を減量し,Grade 2 の末梢性感覚ニューロパチーを認め,oxaliplatin を中止

した。9 コース終了後,RFA を希望して来日した。6 月 17 日の CT では肝転移を 12 箇所

と腹腔内リンパ節転移を 1 箇所に認めた。化学療法前と比較すると RECIST 基準で SD-PR

と評価された。一旦帰国後,8 月 7 日に MRI を撮影,左葉に 5 病変,右葉に 8 病変を確認

した。最大は S2 内部の 27mm であった。8 月 8 日,mass reduction 目的で入院となった。

入院時,身長 151 cm,体重 66 kg。腹部に手術瘢痕あり。CEA 3.7 ng/ml,CA19-9 24 U/ml。

8 月 11 日,Covidien 社 cool-tip を用いて 8 病変に RFA を施行した。立位で S2 肝裏面,

S2 内部,S4 横隔膜下,S8 横隔膜下病変を焼灼し,仰臥位で S7/8 と S8 病変を焼灼した。

また,人工腹水下で S6 肝裏面と肝表面病変を焼灼した。術翌日の CT では S2 肝裏面病変

頭側の margin がやや不十分であったが,明らかな残存は認めなかった。なお,RFA 前に

は検出されなかった病変を S7 に認めた。8 月 15 日,margin 不足の S2 肝裏面病変を含む

7 病変を焼灼した。坐位で S2 肝裏面 post RFA 頭側と S2 肝表病変を焼灼し,造影超音波

下で S2 左肝静脈右側病変を焼灼した。仰臥位で fusion imaging (GE 社製,Volume

navigation)と造影超音波を使用し,S8 の 3 病変と S7 病変を焼灼した。術翌日の CT では

明らかな遺残は認めなかった。退院後,帰国し,Medan University Hospital にて

irinotecan + bevacizumab を開始した。7 コース終了後の 2015 年 1 月,再度来日した。

1 月 13 日の MRI,1 月 14 日の CT では再発は肝 S4 の 5mm,S6 の 10mm のみであった。

1 月 19 日,RFA を施行した。仰臥位で fusion imaging を使用し,S6 病変を焼灼し,右半

側臥位,人工腹水下で S4 病変を焼灼した。術翌日の CT では病変の残存は認めなかった。

退院後は Medan University Hospital で化学療法を継続し,再発なく経過している。RFA

を併用することにより,化学療法のみでは根治的治療が期待できないような多数の病変が

存在する症例でも良好な結果を得ることができうると思われた。また,fusion imaging や

造影超音波は RFA を行なう際に極めて有用と思われた。

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Ⅳ-2 集学的治療が著効した同時性多発肝転移を伴う進行直腸癌の 1 例

佐々木研究所附属杏雲堂病院 消化器外科

坂本敏哉,川本 潤,篠田公生,西田孝宏,寺中亮太郎

近年,遠隔転移を伴う進行結腸直腸癌に対する集学的治療は,分子標的薬を含めた新薬

の登場や安全な手術手技の確立等により,再発後の平均生存期間が 3 年を超える状況と

なった。しかしながら,集学的治療における局所療法を行う時期(局所療法あるいは全身化

学療法先行),局所療法後における補助化学療法を含めた至適抗癌剤の選択や投与期間等に

おいては未だ標準的治療が定まっていないのが現状である。

今回我々は,同時性多発肝転移を伴う進行直腸癌に対して集学的治療が奏功した 1 例を

経験したので報告する。症例は,65 歳,男性。腹痛を主訴に近医受診,腹部精査で肝右葉

に 16.2cmの単発性巨大肝転移(S5678)および肝S3に 3cmの多発肝転移を伴う亜全周性進

行直腸癌の診断となった。明らかなリンパ節腫脹や腹水は認めなかった。その後当科紹介

となり,初回治療として開腹低位前方切除+リンパ節郭清術を施行した。切除病理結果は,

adenocarcinoma 4.0×4.7cm type2 tub1>tub2 ss INFb ly1 v1 n0 aw(-) ow(-)であった。

術後は腫瘍の K-ras 変異がないことを確認,CV ポート留置後より FOLFOX+Pmab を 3

コース行った。その後の治療評価造影 CT で肝転移巣は PR の判定となった。安全に肝切

除が可能であると判断し,開腹肝右葉切除+肝 S3 部分切除術を行った。切除病理結果は

adenocarcinoma tub1>tub2 S5678 : 8.9×7.7×8.5cm SM(-) Grade 1b S3 : 3.3×2.7×

2.8cm SM(-) Grade 1b であった。初回肝切除後は,画像上評価病変を認めなくなったこ

とで,Adjuvant TS-1 内服を 9 コース行った。しかしながら,TS-1 内服終了後に施行し

た腹部造影 CT で肝 S3 に 4cm の新たな単発性転移巣を認めたため,開腹肝外側区域切除

術を行った。切除病理結果は,adenocarcinoma tub1>tub2 S3 4.2×3.7×4.0cm SM(-)

Grade 1b であった。再肝切除後は Adjuvant FOLFOX+Pmab を 3 コース行った後,さら

に Adjuvant TS-1 内服を 9 コース行った。その後の評価 PET-CT では明らかな再発病変

は認めず,初回手術から 3 年が経過するが無再発生存中である。集学的治療が著効した多

発肝転移を伴う進行直腸癌の 1 例を経験したので若干の文献を加えて報告する。

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Ⅳ-3 PET 検査陰性を示した盲腸癌肝転移の 1 例

東京女子医科大学 消化器外科

小寺由人,有泉俊一,高橋 豊,尾形 哲,大森亜紀子,山下信吾,米田五大,片桐 聡,

江川裕人,山本雅一

症例は 70 歳代の女性。検診の便鮮血反応陽性にて近医受診され盲腸癌を指摘,加療目的

に紹介受診,2013 年 6 月に腹腔鏡下回盲部切除術施行となった。

当院初回受診時より肝内に小さな低吸収域を認めていたが,PET 検査陰性,US 等も転

移性病変を疑う所見に乏しかった為,経過観察となっていた。

盲腸癌の病理検査では,well diff. adenocarcinoma (tub1>muc) SM ly1, v0, LN+(5/10)

であった。盲腸癌が Stage IIIbであった事と肝内の低吸収域を考慮し術後補助療法として

mFOLFOX6 施行となった。

2013 年 7 月には肝門部にリンパ節転移が出現したため Bmab が追加となった。

その後合計 22 コースの化学療法が施行された。化学療法施行中,肝の低吸収域は変化を

認めなかったが,肝門部のリンパ節転移に増大傾向を認めた為,切除目的に当科紹介受診

となった。肝低吸収域は肝両葉に認めた為,2 期手術を予定し,2015 年 3 月に肝拡大後区

域切除術+リンパ節郭清を,2015 年 8 月に肝部分切除を施行した。

病理検査結果は結節内に多量の粘液を認める mucinous adenocarcinoma であり,盲腸癌

の肝転移,リンパ節転移と診断した。

近年大腸癌に対する化学療法の効果は非常によく,肝転移巣に対してもしばしば,腫瘍

の縮小や消失を経験する。

化学療法の効果判定には PET 検査がよく用いられるが,PET 陰性腫瘍は,その対処に

悩まされることも多い。今回我々が経験した PET 陰性腫瘍に対し文献的な考察も加え報告

する。

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Ⅳ-4 計55回の肝動注療法とRFAの併用で5年の長期生存が得られた直腸癌肝転移

の 1 例

佐々木研究所附属杏雲堂病院 消化器肝臓内科

河井敏宏,佐藤新平,杉本貴史,佐藤隆久,菅田美保,小尾俊太郎

【緒言】転移性大腸癌に対する抗癌剤治療は,1980 年代後半から 5-FU+LV 併用療法,1990

年代前半のイリノテカンの登場,2000 年代以降のオキサリプラチン併用療法や分子標的薬

の出現により大腸癌患者の生存期間は大幅に改善したと言える。しかし,これら標準療法

による副作用出現や PD となった場合の予後は現在でも不良である。今回,副作用のため

化学療法が中止となったが,計 55 回の肝動注療法と RFA の併用で約 5 年の長期生存が得

られた直腸癌肝転移の 1 例を経験したので報告する。

【症例】75 歳男性。

【既往歴】70 歳時に前立腺肥大指摘。

【現病歴】2006 年 8 月より血便出現し,他院にて精査にて直腸癌・同時性多発肝転移指摘

された。同年 10 月に低位前方切除術及び左肝部分切除施行した。同年 11 月に右葉に残存

する転移性肝癌に対し 5-FU+LV 療法開始した。肝転移は PD と判定され,2007 年 2 月

当院紹介となった。全身化学療法は希望されず当院にて動注ポート造設し,2007 年 2 月か

ら 2009 年 6 月まで Weekly high dose 5-FU(WHF; 1000mg/m2を 1~2 週に 1 回投与)を

計 36 コース施行した。2009 年 7 月 S2 に新出病変認め RFA 目的で入院となった。

【経過】入院時 CT 画像所見では肝右葉の径 7cm の低吸収域の他,新出病変として S2領域

に径 3cm,径 2.7cm のやや境界不明瞭な低吸収域が見られた。ソナゾイド造影超音波では

B-mode 超音波と比較し境界明瞭な defect として描出され,ソナゾイド投与下で RFA を施

行した。RFA 施行後 WHF を再開したが,CEA および CA19-9 は漸増傾向にあった。2010

年8月大腸内視鏡検査においてRb~肛門縁にかけ,大きさ4~5cm大の2型腫瘍が見られ,

直腸局所再発と診断した。本人・家族と相談し手術等積極的な治療は希望せず,UFT+LV

療法及び WHF の併用で経過観察する方針となった。2011 年 7 月に肝不全および DIC を

発症し永眠された。

【考察】肝転移巣に対し WHF を継続することにより比較的長い期間 SD を維持することが

できた。また,左葉の再発に対し RFA によって局所制御に成功し,病勢の進行を抑制し長

期生存に貢献したと考えられた。若干の文献的考察を加え報告する。

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S E S S I O N Ⅴ (16:50~17:05)

基 調 講 演

座 長

帝京大学ちば総合医療センター 小尾俊太郎

「転移性肝がん 内科的治療のエビデンス作成にむけて」

演 者

社会福祉法人 三井記念病院 消化器内科 大木 隆正

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MEMO

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S E S S I O N Ⅵ (17:05~18:15)

転移性肝癌③

座 長

静岡県立総合病院 大場 範行

国立がん研究センター東病院 小林 達伺

病理コメンテーター

杏林大学医学部 望月 眞

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Ⅵ-1 異時性多発胃癌肝転移に対し12回RFA施行後の局所再発に対し拡大右肝切除を

施行した 1 例

東京大学医学部附属病院

肝胆膵外科・人工臓器移植外科 1),同 胃食道外科 2),同 病理部 3),同 放射線部 4)

伊藤大介 1),河口義邦 1),長谷川 潔 1),山下裕玄 2),阿部浩幸 3),五ノ井 渉 4),

有田淳一 1),赤松延久 1),金子順一 1),阪本良弘 1),瀬戸泰之 2),國土典宏 1)

背景:胃癌肝転移に対する治療戦略はまだ確立していない。今回,異時性多発肝転移に対

するラジオ波焼灼術療法(RFA)後の局所再発に対し,拡大右肝切除を施行した症例を経験

したため報告する。

症例:49 歳男性。3 年前の健康診断で胃接合部癌を指摘され,胃全摘,胆嚢・脾臓摘出,

D2 リンパ節郭清術が施行された。病理所見は Adenocarcinoma (pap>tub1>tub2), Locus

UE/Less, Type 3, 5.0×4.0cm, pT3(SS), int, INFb, ly0, v3, LN1(1/64), pPM0(1.0cm),

pDM0(14.0cm), HER2:score3+であり,総合評価は fT3N1H0P0CY0M0, Stage IIIB,

CurA であった。補助化学療法として S-1 を施行したが,術後 8 ヶ月目に肝転移再発(最大

径 16mm,3 コ)を指摘された。S-1+CDDP+Trastuzumab を開始したが,開始 3 ヶ月目

の CT で肝転移の増大がみられたため,wPTX+Trastuzumab に変更した。レジメン変更

後 4 ヶ月目の CT で増大傾向を認め,tri-weekly CPT-11+ Trastuzumab に変更した。肝

転移再発後の化学療法施行中に,肝外再発病変を認めなかったため,肝転移巣に対して,

他院で RFA を施行された(計 12 回)。化学療法,RFA の併用にて,肝再発から 22 ヶ月間

病勢はコントロールされていた。12 回目の RFA 施行後の CT で RFA 後の多発局所再発を

認め,RFA による局所コントロールは困難と判断された。また長期にわたり肝以外の転移

がないことより,手術の適応の可否につき,当科紹介となった。門脈塞栓術後に拡大右肝

切除を施行した。術中に横隔膜浸潤を認め,この部位を含む,5 ヶ所の viable な肝転移巣

が切除されたが,いずれも切離断端陰性であった。合併症なく,術後 9 病日で退院した。

術後 4 か月経過し,現在無再発生存中である。

結果:本例で肝再発が指摘された時点での肝切除の適応は考えにくく,化学療法を導入し,

のちに RFA を追加したのはやむをえない選択だったと思われるが,局所再発や横隔膜浸潤

をきたしても画像上診断が難しい点が RFA の問題点である。胃癌肝転移に対する肝切除の

意義はエビデンスが少ない状況だが,今後最適な適応条件を模索する必要がある。

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Ⅵ-2 化学療法不応胃癌多発肝転移に対し 2 度の肝切除が奏功している 1 症例

JR 東京総合病院 消化器外科

竹村信行,三田英明,隈本 力,三木健司,小菅智男

【はじめに】胃癌肝転移に対する肝切除成績は,5 年生存率 10 から 40%と報告されている

が,その多くの報告が,肝転移個数ならびに大きさの限られた症例に対してのものである。

巨大な病変,多発病変,化学療法不応症例に対する肝切除,ならびに再肝切除の有用性は

明らかでないが,今回 3rd-line 化学療法が不応であった胃癌多発肝転移に対し 2 度の肝切

除が有効であった症例を経験したので報告する。

【症例】症例は 67 歳男性,前医にて胃癌に対して幽門側胃切除施行(SE, N0stageIIB),術

後8か月間までS-1による補助化学療法施行。1年後のCTにて3個の肝転移 (最大径2cm)

を指摘,切除の適応が無いと判断されたため,1st-Line 化学療法として S-1+CDDP+Her

を 9 か月間施行,次いで 2nd-line として CPT-11 を 1 年,3rd-line として S-1+Doce+Her

を 1 年施行された。3rd-line 化学療法が不応となったが,多発肝転移病変は全て右肝に限

局しており,切除の可能性を求めて当科紹介となった。明らかな肝外病変認めず,これ以

上の化学療法継続の効果も望めないと判断し,右肝切除術を施行した(手術時間,出血量)。

標本腫瘍最大径 7.5cm,総腫瘍数 9 個。術後経過は良好にて術後 7 病日に退院。術後 S-1

による補助療法を行っていたが,初回肝切除 4 か月目に残肝 S4 に 3 個肝転移再発を来し

た。S-1 継続のままさらに 3 か月間新規病変の出現が無い事を確認した上で,肝 S4 切除を

施行した(手術時間,出血量)。再肝切除後も経過良好で術後 12 病日に退院。S-1 による化

学療法を継続,現在再肝切除後 12 か月無再発生存中である。

【考察】胃癌肝転移に対する肝切除の有用性は報告されてはいるが,その多くが個数や大き

さの限られた症例に対する成績であり,多発肝転移に対する肝切除,肝転移再発に対する

再肝切除の意義は明らかではない。多発胃癌肝転移化学療法不応例に対して,充分にイン

フォームドコンセントを行った上で初回右肝切除を施行,多発再発も来したが前回切除区

域近傍の再発であり,前回の主病変の肝内転移の遺残と判断し再肝切除を施行した。

【結語】3rd-line までの化学療法が不応となった胃癌多発巨大肝転移症例に対し,2 度の肝

切除が奏功している症例を経験したので報告する。

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Ⅵ-3 集学的治療により長期生存が得られている直腸カルチノイド肝転移の 1 例

JR 東京総合病院 消化器内科 1),臨床検査科 2)

小田原成彬 1),内野康志 1),大前知也 1),赤松雅俊 1),関 邦彦 2),岡本 真 1)

症例は 41 歳男性。2008 年 6 月時々便に血液が混じるとの主訴で当院消化器内科外来受

診した。その際の便潜血検査は 2 回中 1 回陽性であった。7 月下部消化管内視鏡検査施行

したところ,直腸に 25mm,一部潰瘍を伴う易出血性の 1 型腫瘍を認めた。生検では,粘

膜固有層から粘膜筋板に,充実性あるいはリボン状,腺管状の異型細胞の結節状増殖が認

められ,免疫組織化学的に chromogranin A が腫瘍細胞に陽性を示し,直腸カルチノイド

と診断した。9 月当院消化器外科にて低位前方切除術を施行した。術後病理診断は,

Carcinoid tumor, 2.5x2.0cm, type1, pMP, int, INFb, PM0, DM0, ly1, v1, n(+)=3/10 で

あった。2009 年 1 月 CT で肝転移を疑う病変を最大 1.2cm,5 個認めた。2 月カルチノイ

ド肝転移に対しラジオ波焼灼術(RFA)を施行した。その後,2009 年 5 月 4 個,7 月 5 個,

11 月 4 個の肝転移に対し RFA を施行した。2009 年 7 月より TS-1,2010 年 5 月よりサン

ドスタチンの投与を行った。しばらく再発は無かったが,2013 年 11 月肝転移 2 個再発し

RFA 施行した。その後,2014 年 8 月 2 個,2015 年 1 月 3.0cm,1 個,4 月 2 個,8 月 2 個

の再発に対しRFA施行した。現在までに計27個の肝転移に対し計9回のRFAを施行した。

そのほとんどは 1.5cm までの小病変であった。経過中 RFA の際,同時に施行した肝腫瘍

生検でカルチノイド肝転移の診断を得ている。2015 年 11 月の EOB-MRI では明らかな再

発なく,サンドスタチンの投与を継続しながら現在も生存中である。現在でも,遠隔転移

を伴う消化管神経内分泌腫瘍に対する確立した治療選択肢は少ないが,今回集学的治療に

より長期生存が得られた 1 例を経験したため報告する。

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Ⅵ-4 不可逆電気穿孔法で治療し得た肝門部の転移性肝癌の 1 例

東京医科大学 消化器内科

小川紗織,杉本勝俊,吉益 悠,竹内啓人,笠井美孝,佐野隆友,古市好宏,小林功幸,

中村郁夫,森安史典

不可逆電気穿孔法(Irreversible Electroporation: IRE)は,癌細胞にナノサイズの小孔を

開けることによりアポトーシスを誘導し癌を治療するという,次世代を担う局所治療法と

して注目されている。その最大の特徴は血管,胆管,神経等の組織を構築する支持組織を

温存し癌細胞を壊死せしめる点,および,熱アブレーション治療でしばしば観察される heat

sink effect がない点である。従って,熱アブレーション治療の適応とならない,太い血管

を巻き込むように存在する腫瘍を治療する際に非常に有用である可能性がある。今回我々

は,門脈前区域枝と後区域枝の叉に存在する,径 25mm 大の転移性肝癌(膣原発)を IRE

で治療する経験を得たのでその有効性と安全性を中心に報告する。

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Ⅵ-5 肝選択的動脈内刺激薬注入法(肝 SASI テスト)が有効だった膵神経内分泌腫瘍

(P-NET)肝転移の 1 例

東京医科歯科大学 肝胆膵外科 1),分子腫瘍医学分野 2)

渡辺秀一 1),工藤 篤 1),石川喜也 1),千代延記道 1),水野裕貴 1),大庭篤志 1),巌 康仁 1),

佐藤 拓 1),大畠慶映 1),上田浩樹 1),赤星 径一 1),伊藤浩光 1),光法雄介 1),松村 聡 1),

藍原有弘 1),伴 大輔 1),落合 高徳 1),田中真二 2),田邉 稔 1)

[背景]SASI テストは機能性 P-NET の局在診断を行う重要な検査である。当科では機能性

P-NET 肝転移に対して肝 SASI テストを施行し,内分泌症状の責任病変の特定を試みてい

る。2014 年 1 月〜2016 年 1 月までに,機能性 P-NET 肝転移に肝 SASI テストを施行し,

7 例中 5 例で腫瘍の支配肝動脈分枝に step up をみとめた。step up がある部位は全例肝病

変に一致しており,内分泌症状の責任病変である可能性が示唆された。今回,我々は肝 SASI

テストで標的を絞って治療を行うことにより症状緩和が可能であった 1 例を経験したので

報告する。

[症例提示]70 歳女性。非機能性 P-NET に対し膵尾部切除術施行後,異時性肝転移再発が

あり,複数回の肝切除・肝動脈化学塞栓術施行した。その後血中インスリン増加を伴う低

血糖症状出現あり,肝転移巣の中にインスリノーマが出現したことによる低血糖症状と診

断した。持続ブドウ糖点滴を要するコントロール不良の低血糖症状が出現したため当科紹

介された。肝 SASI テスト施行したところ,残肝の S5・外側区でインスリンの step up を

みとめたため同部位を標的として DEB-TACE を施行した。施行後より血糖値上昇あり,

施行 9 日目より持続ブドウ糖点滴不要となり退院した。

[結語]機能性 P-NET 肝転移に対する肝 SASI テストは内分泌症状の責任病変の特定に寄

与し,治療方針決定に役立った。

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Ⅵ-6 乳癌肝転移に対して肝切除を施行し,早期再発を来した 1 例

練馬総合病院 外科 1),慶應義塾大学医学部外科学教室 一般・消化器外科 2)

筒井りな 1),栗原直人 1),板野 理 2),牧野暁嗣 1),市原明子 1),松浦芳文 1),井上 聡 1),

飯田修平 1)

患者は 69 歳女性。左乳癌[浸潤性乳管癌,核異型度 1,ER,PgR ともに陰性(<5%),

HER2 (3+)]に対して術前化学療法後 (FEC 100 療法),乳房切除術および腋窩リンパ節郭

清を施行し,術後補助化学療法 (Weekly Paclitaxel 療法,Trastumab 療法)を施行した。

初診時より認めた肝転移巣(肝 S5 1.2cm 大,肝 S8 1cm 大)は化学療法にて一旦は cCR を

得たが,初発時から 2 年 3 ヶ月後に肝転移再発(肝 S5/8 2.5cm 大)を認めた。単発の肝転移

巣であり,切除自体の予後延長効果と転移巣の病理学的診断を目的に腹腔鏡下肝部分切除

術を施行した。術後に腫瘍マーカーは正常値化し,術 1 ヶ月後より Trastumab 療法を開始

したが,術後 4 ヶ月で肝両葉に多発再発を認めた。初回診断時に肝転移を伴う乳癌は 5-20%

と稀ではあるが,その予後は 6 ヶ月未満と非常に不良である。薬物療法を行っても生存期

間中央値は 16 ヶ月〜25 ヶ月,5 年生存率は 8.5%にとどまる。一方で,選択された乳癌肝

転移症例に対する肝切除の 5 年生存率は 34〜48%と報告されている。本症例においても切

除予後が良好な因子のいくつかを満たしていたため,予後延長効果を期待して外科的治療

を選択したが早期に再発を来す結果となった。文献的考察を含めて報告する。

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Ⅵ-7 同時性肝転移が嚢胞変性した十二指腸神経内分泌腫瘍の 1 切除例

静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科 1),同 病理診断科 2)

内田恒之 1) ,伊藤貴明 1),杉浦禎一 1),岡村行泰 1),山本有祐 1),蘆田 良 1),上村 直 1),

宮田隆司 1),加藤吉康 1),甲賀淳史 1),大木克久 1),佐野周生 1),佐々木恵子 2),上坂克彦 1)

症例は 67 歳男性。検診で肝機能障害を指摘され前医を受診した。CT で肝に嚢胞性腫瘤,

十二指腸に腫瘤性病変を認め,精査加療目的に当科紹介受診となった。

造影 CT では,十二指腸球部から下行脚にかけて動脈後期相で最も濃染され,遅延性の

造影効果を呈する 35mm 大の腫瘤性病変を認めた。また,肝左 3 区域に多発する嚢胞性腫

瘤を認めた。嚢胞辺縁は肥厚しており,十二指腸腫瘤と同様の造影パターンであった。肝

嚢胞性腫瘤は右肝動静脈,右肝管への浸潤は認めなかった。

EOB-MRI では,肝嚢胞性腫瘤は造影 CT と同様の造影パターンを示した。嚢胞内部は

T1WI で低から高信号までの様々な信号強度を,T2WI では種々の程度の高信号を示し,一

部で鏡面像を認めた。

上部消化管内視鏡検査では,十二指腸球部に 40mm大の辺縁不整な隆起性病変を認めた。

HE 染色では胞巣状に増殖する類円形の核を有する腫瘍細胞を認めた。免疫染色で

Synaptophysin,Chromogranin-A が陽性であり,神経内分泌腫瘍と診断した。

以上から嚢胞変性を伴う同時性肝転移を有する十二指腸神経内分泌腫瘍と診断し,膵頭

十二指腸切除,肝左 3 区域切除術を施行した。

病理組織診断では,肉眼的に十二指腸球部に 44×41mm 大の粘膜下腫瘍を認めた。HE

染色では,類円形の核を有する細胞が索状配列を示し増殖していた。腫瘍は固有筋層へ浸

潤し,静脈・リンパ管侵襲を認めた。また,多発する肝嚢胞性腫瘤の肉眼所見は,白色調

の線維性隔壁により多房性で,暗赤色で泥状の液体を内包しており,その周囲に褐色の腫

瘍を認めた。HE 染色では,十二指腸病変と同様に索状配列を呈し増殖する類円形核を有

する細胞が増殖しており,出血を伴っていた。十二指腸,肝病変とも,免疫染色では

Synaptophysin,Chromogranin-A が陽性であり,Ki-67 index は 20%以下であった。以

上より肝転移を伴った十二指腸神経内分泌腫瘍 G2 と診断した。

神経内分泌腫瘍は出血や壊死により嚢胞変性すると考えられている。本症例においては

肝病変の腫瘍細胞周囲に出血を認めることから,出血が関与し嚢胞変性をきたしたと推察

された。文献的考察を加え報告する。

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プログラム抄 録 集

DIC17 BK

日 時平成 28 年 4月9日(土)14:00~18:15

会 場秋葉原コンベンションホール

当番幹事帝京大学ちば総合医療センター 内科小尾 俊太郎

第53回 肝癌症例検討会

共催