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1 再生医療実現拠点ネットワークプログラム「疾患特異的 iPS 細胞を活用した難病研究」の中間評価結果 平成 27 1 29 (独)科学技術振興機構 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度 評価結果 a) 進捗状況 総合 評価 総合評価コメント b) 成果 c) 研究体制、運営 疾患特異的 iPS 細胞樹立促進のための基盤 形成 京都大学 山中 伸弥 H24 H26 a) やや下回ってい 良好 である 本拠点の目的は多種多様な疾患から疾患特異的 iPS 細胞を樹立して細胞バンクの充実を図ることである。平 26 年度中に累計 100 症例で疾患特異的 iPS 細胞の樹立、寄託が完了する見込みであるなど、全体としては 順調に進捗している。細胞バンクの多様性を増すために、出来るだけ多くの疾患について iPS 細胞を樹立する ことが期待される。 以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。 b) 良好である c) 適切である 高品質な分化細胞・組織を用いた神経系お よび視覚系難病の in vitro モデル化と治療 法の開発 理化学研究所 笹井 芳樹 (~H26. 9京都大学 井上 治久 H26. 10~) H24 H26 a) 達成している 良好 である 視覚系難治性疾患の課題においては理化学研究所の特殊な事情により中断を余儀なくさせられるなど、進捗 の遅れが見られる。現状、疾患特異的 iPS 細胞を用いて、画期的な病態解明や創薬に結びつくような研究成果 が具体的に得られていないため、目標を達成し得るかどうか判断し難い。一方で、神経系難治性疾患の課題は ほぼ予定通りに進んでいる。また、京都大学および理化学研究所の連携体制は相互の優れた技術を補完し得る ものである。製薬企業の参画も順調であり、今後は産業界とのなお一層の協業により成果の創出が期待される。 以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。 b) 良好である c) やや不十分 疾患特異的 iPS 細胞技術を用いた神経難病 研究 慶應義塾大学 岡野 栄之 H24 H26 a) 達成している 良好 である ペンドレッド症候群の病態解析から候補化合物を見出すなど、着実な進捗及び基礎的な検討成果は、今後の 当該分野の研究進展に貢献するものと評価できる。研究体制が整いつつあり、これからの研究の進展が期待さ れる。 以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。 b) 良好である c) 適切である iPS 細胞を用いた遺伝性心筋疾患の病態解 明および治療法開発 東京大学 小室一成 (~H27. 1森田 啓行(代行) H27. 1~) H24 H26 a) 下回っている やや 不十分 である 進捗・成果は、細胞の寄託や製薬企業との連携において遅れている。しかし、疾患特異的 iPS 細胞の樹立及 び心筋への分化方法等を確立したことにより、平成 26 年度内には寄託細胞数等の数値目標を達成予定である。 また、創薬スクリーニングのための基盤技術等が確立されている点は評価できる。しかし、創薬スクリーニン グからの応用開発と製薬企業との連携について具体的に道筋を示す必要がある。 以上により、本拠点の進捗・成果はやや不十分であると判断される。 b) やや不十分であ c) 適切である 疾患特異的 iPS 細胞を活用した筋骨格系難 病研究 京都大学 戸口田 淳也 H24 H26 a) 達成している 優れて いる 創薬スクリーニングに成功し、難治性疾患治療薬の候補を同定して英科学誌 Nature に発表したことは、特 筆すべき成果と言える。疾患特異的 iPS 細胞の樹立、寄託及び連携体制の構築が順調であり、全体としてバラ ンス良く進んでいる。 以上により、本拠点の進捗・成果は優れていると評価される。 b) 優れている c) 優れている 難治性血液・免疫疾患由来の疾患特異的 iPS 細胞の樹立と新規治療法開発 京都大学 中畑 龍俊 H24 H26 a) 達成している 良好 である 今後の血液疾患の病態解明とその治療薬への応用が期待できる。ほぼ計画通りに進捗し、応用に向けてはハ イスループットスクリーニングの系も構築しており、今後の候補化合物の取得に関して、目標を達成すること が期待できる。 以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。 b) 良好である c) 適切である

5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

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1 再

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iPS細胞を用いて、画期的な病態解明や創薬に結びつくよ

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が具体的に得られていないため、目標を達成し得るかどうか判断し難い。一方で、神経系難治

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ほぼ予定通りに進んでいる。また、京都大学および理化学研究所の連携体制は相互の優れた技術

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当該分野の研究進展に貢献するものと評価できる。研究体制が整いつつあり、これからの研究

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である

今後の血液疾患の病態解明とその治療薬への応用が期待できる。ほぼ計画通りに進捗し、応用

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イスループットスクリーニングの系も構築しており、今後の候補化合物の取得に関して、目標

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以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。

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参考資料4
Page 2: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

2

5. 評価対象課題・評価時期・評価結果

研究課題名 代表機関 代表研究者

採択 年度

評価 年度 総合評価

立 疾患特異的 iPS 細胞樹立促進のため

の基盤形成 京都大学 山中 伸弥

H24 H26 良好である

高品質な分化細胞・組織を用いた神経

系および視覚系難病の in vitro モデ

ル化と治療法の開発

理化学研究所 笹井芳樹(~H26. 9) 京都大学 井上治久(H26. 10~)

H24 H26

良好である

疾患特異的 iPS 細胞技術を用いた神

経難病研究 慶應義塾大学 岡野 栄之

H24 H26 良好である

iPS 細胞を用いた遺伝性心筋疾患の

病態解明および治療法開発 東京大学 小室一成(~H27. 1) 森田啓行(代行)

(H27. 1~)

H24 H26 やや不十分

である

疾患特異的 iPS 細胞を活用した筋骨

格系難病研究 京都大学 戸口田 淳也

H24 H26 優れている

難治性血液・免疫疾患由来の疾患特異

的 iPS 細胞の樹立と新規治療法開発 京都大学 中畑 龍俊

H24 H26 良好である

Page 3: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

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再生医療実現拠点ネットワークプログラム 「疾患特異的 iPS 細胞を活用した難病研究」の中間評価概要

平成 27 年 1 月 29 日

(独)科学技術振興機構

1. 評価時期・評価対象課題数・評価結果

評価時期等 区分 拠点数 評価結果 優れている 良好である やや不十分

H26・中間 樹立拠点 1拠点 1拠点 共同研究拠点 5拠点 1拠点 3拠点 1拠点

2. 評価項目 現在までの進捗・成果

a) 進捗状況について(目標達成度) b) 成果について(成果の科学的・社会的価値) c) 研究体制、運営等について

総合評価

3. 評価の進め方 H26 1) 被評価者による成果報告書及び全体計画書の作成 9 月~10 月 2) 評価委員による書面評価の実施 10 月 3) 評価委員会(ヒアリング)の開催 10 月 21・23 日 4) 評価結果の確定、評価報告書の作成 10 月~12 月 5) 評価結果の公表(JST ホームページへ掲載) 1 月

4. 評価委員 委員長 齋藤 英彦 国立病院機構名古屋医療センター 名誉院長 委員長代理 髙坂 新一 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 所長 小澤 敬也 東京大学 医科学研究所付属病院 病院長 坂田 恒昭 塩野義製薬(株) シニアフェロー 鹿野 真弓 医薬品医療機器総合機構 規格基準部 部長 清野 佳紀 大阪保健医療大学 学長 友池 仁暢 日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 院長 永水 裕子 桃山学院大学 法学部 准教授 吉田 光昭 がん研究会 がん化学療法センター所長

Page 4: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

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再生医療実現拠点ネットワークプログラム 中間評価報告書

プログラム名 疾患特異的 iPS細胞を活用した難病研究 樹立拠点

拠点名 疾患特異的 iPS細胞樹立促進のための基盤形成

代表機関名 京都大学

研究代表者名 山中 伸弥

1.研究概要

iPS 細胞は、患者を含む特定の個人由来の多能性幹細胞として樹立できる点で画期的であり、患者から樹立

された iPS細胞(疾患特異的 iPS細胞)を用いた難治性疾患の病態解析、創薬、治療法開発が期待されている。

一方で、リプログラミング技術の発展とともにヒトES細胞/iPS細胞の遺伝子改変技術も進歩を遂げており、これら

の細胞の遺伝子改変を行って疾患・病態解析が行われる時代の到来が予測される。

このような状況において本拠点は、様々な疾患特異的 iPS 細胞の樹立、及び疾患責任遺伝子に改変を加え

たヒト iPS 細胞の作製を行い、それらの細胞を公的な細胞バンクに寄託し、我が国における疾患解析や創薬研

究等の研究基盤の確立を目指す。

2.評価結果

現在までの進捗・成果

a)進捗状況について

医療機関との連携によりこれまでに収集した試料に関して、疾患特異的 iPS 細胞の樹立、寄託、細胞の品質

管理に向けた取り組み等が順調に進捗している点は評価できる。しかし、事業終了までに 200 以上の疾患につ

いて疾患特異的 iPS細胞を樹立し、寄託することが本拠点の目標であるが、試料収集先の一部の医療機関との

連携体制の構築が遅れたことなどにより、疾患特異的 iPS 細胞を樹立した疾患数において進捗の遅れが見られ

る。

以上により、本拠点の進捗は当初計画・目標からやや下回っていると判断される。

b)成果について

疾患特異的 iPS細胞の支持細胞を用いない樹立方法、一連化した樹立作業工程の構築や、ゲノム編集技

術による遺伝子改変 iPS 細胞を作製する技術の確立などは優れた成果であり、これらの技術により樹立・作製さ

れた細胞の寄託が進むと各疾患の病態解明に大きく役立つと期待される。

以上により、本拠点の成果は良好であると評価される。

c)研究体制、運営等について

多忙な代表研究者に代わって本拠点をマネジメントする権限を有する者を早急に選定する必要がある。試料

収集先の一部の医療機関と連携体制の構築が遅れたものの、患者ドナーへのインフォームドコンセント説明資

料作成等において、拠点内の研究者や共同研究拠点との連携は効果的に進められており、樹立拠点としての

機能を果たしている点は評価できる。

以上により、本拠点の研究体制、運営等は適切であると評価される。

Page 5: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

2

総合評価

本拠点の目的は多種多様な疾患から疾患特異的 iPS 細胞を樹立して細胞バンクの充実を図ることである。

平成 26年度中に累計 100症例で疾患特異的 iPS細胞の樹立、寄託が完了する見込みであるなど、全体として

は順調に進捗している。細胞バンクの多様性を増すために、出来るだけ多くの疾患について iPS 細胞を樹立す

ることが期待される。

以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。

Page 6: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

1

再生医療実現拠点ネットワークプログラム 中間評価報告書

プログラム名 疾患特異的 iPS細胞を活用した難病研究 共同研究拠点

拠点名 高品質な分化細胞・組織を用いた神経系および視覚系難病の in vitroモデル化と治療法

の開発

代表機関名 独立行政法人理化学研究所(平成 24年 4月~平成 26年 9月)、京都大学(平成 26年 10

月~)

研究代表者名 笹井 芳樹(平成 24年 4月~平成 26年 9月)、井上 治久(平成 26年 10月~)

1.研究概要

本拠点では、京都大学と理化学研究所がこれまで再生医療などの開発を通して蓄積してきたヒト iPS 細胞の

樹立技術、分化技術、純化技術などを応用して、神経系および視覚系の疾患モデル細胞・組織を形成する。そ

れらを厚生労働省難治性疾患研究班(以下、難治性疾患研究班と呼ぶ)の臨床研究者に技術提供することで、

未だ病因・病態に不明な点が多い神経系および視覚系の難治性疾患に対する研究の推進と画期的な治療法

の開発への貢献を目指すものである。京都大学が「神経系難治性疾患」、理化学研究所が「視覚系難治性疾

患」、「神経内分泌系難治性疾患」および「神経系難治性疾患」を担当し、かつトップクラスの臨床研究者が参

加・研究連携を行うことで、高い国際競争力を生み出し、成功例を創出することが期待される。さらに、こうした基

盤を国内の創薬企業での研究開発にも拡げ、難治性疾患・稀少疾患に対する治療薬の開発を大幅に加速する

ことを目指している。

2.評価結果

現在までの進捗・成果

a)進捗状況について

理化学研究所が担当している視覚系難治性疾患、神経内分泌系難治性疾患の疾患特異的 iPS細胞の樹立

数が 18件、細胞寄託数も 2件と、進捗状況はほぼ良好である。また、ES細胞を用いた分化誘導法については、

下垂体前葉への効率的な培養技術を開発し、難治性疾患研究班への技術移転を完了するなど、良く進展し

ている。しかし、疾患特異的 iPS細胞を用いた疾患モデル作製では、一部疾患において研究進捗に遅れがみら

れる。一方、京都大学が担当している神経系難治性疾患においては疾患特異的 iPS細胞の樹立数が 155件、

細胞寄託数も 28件と概ね順当に進展している。

以上により、本拠点の進捗は当初計画・目標をほぼ達成していると評価される。

b)成果について

京都大学では神経系難治性疾患における疾患特異的 iPS細胞の樹立が進んでおり、一定の成果を挙げてい

る。また、論文投稿においては 29件と優れており、特許出願も 4件と知的財産への配慮もなされている。製薬企

業の参画についても 5 件と順調である。しかしながら、視覚系難治性疾患、神経内分泌系難治性疾患の課題な

どでは進捗の遅れから、評価できる成果が得られていない項目が散見される。また、樹立した疾患特異的 iPS細

胞を用いた病態解明や創薬スクリーニングの研究も遅れているため、明確な目標を持って進めることが望まれ

る。

以上により、本拠点の成果は良好であると評価される。

Page 7: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

2

c)研究体制、運営等について

神経内分泌系難治性疾患においては、順調に研究が進められているが、視覚系難治性疾患、神経内分泌

系難治性疾患の課題において進捗の遅れが散見された。これらの研究進捗を鑑みると、研究が適切に把握・管

理されていたとは言い難い。突発的な事情もあったが、研究体制は不十分であったと言える。一方で、京都大学

を代表機関、理化学研究所を分担機関とする新体制では、情報交換が活発化する等、状況は改善されつつあ

る。

以上により、本拠点の研究体制、運営等はやや不十分であると判断される。

総合評価

視覚系難治性疾患の課題においては理化学研究所の特殊な事情により中断を余儀なくさせられるなど、進

捗の遅れが見られる。現状、疾患特異的 iPS 細胞を用いて、画期的な病態解明や創薬に結びつくような研究成

果が具体的に得られていないため、目標を達成し得るかどうか判断し難い。一方で、神経系難治性疾患の課題

はほぼ予定通りに進んでいる。また、京都大学および理化学研究所の連携体制は相互の優れた技術を補完し

得るものである。製薬企業の参画も順調であり、今後は産業界とのなお一層の協業により成果の創出が期待さ

れる。

以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。

Page 8: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

1

再生医療実現拠点ネットワークプログラム 中間評価報告書

プログラム名 疾患特異的 iPS細胞を活用した難病研究 共同研究拠点

拠点名 疾患特異的 iPS細胞技術を用いた神経難病研究

代表機関名 慶應義塾大学

研究代表者名 岡野 栄之

1.研究概要

神経変性疾患研究における細胞生物学的あるいは生化学的な病態解析は、患者における病変部位のアク

セスの困難さから、これまでモデル細胞やモデル動物を用いた解析が主体であった。しかしながら、これらのモ

デルは必ずしも病態を反映しているとは限らない。また、死後脳を用いた解析においては、発症初期あるいは発

症前の細胞生物学的、生化学的変化をとらえることが困難という問題点があった。疾患特異的 iPS 細胞を用い

ることによって、様々な構成細胞を有する神経系において、患者の成体内で起きている現象を生体外で再現す

ることが可能となってきた。

本拠点では、これまで開発してきた疾患特異的 iPS細胞樹立方法と、神経疾患を解析するための各種神経系

細胞への分化誘導方法を更に効率化して、厚生労働省難治性疾患研究班(以下、「難治性疾患研究班」)にそ

の技術を移転することとしている。それにより、難治性疾患研究班において神経疾患 iPS細胞を用いた解析を実

現化し、特に創薬研究を中心に国内における神経変性疾患の研究全体の加速を行うものである。

2.評価結果

現在までの進捗・成果

a)進捗状況について

6疾患 11症例から疾患特異的 iPS細胞を樹立し、理化学研究所バイオリソースセンター(以下、「理研BRC」)

への寄託が進んでいる。各種神経系細胞への分化誘導の条件検討も着実に進められ既に分化誘導の効率化

が進み、技術移転が行われているなど、計画は順調に進捗しており、研究目標の達成度も良好である。なお、

創薬スクリーニングについては一層の加速が望まれる。

以上により、本拠点の進捗は当初計画・目標を達成していると評価される。

b)成果について

ペンドレッド症候群の病態解析から候補化合物を見出している点は評価できる。その影響範囲は iPS 細胞に

関する研究全般に及ぶ可能性が考えられる。難治性疾患研究班への技術移転も進んでおり、多くの大学に研

究が普及する可能性を示唆している。また、転写因子搭載アデノウイルスベクターを作製して運動ニューロンへ

の高効率な分化誘導を可能にしたこと、及びベクター残存の確認、テラトーマ形成試験による分化能確認、核

型解析、リンパ芽球由来 iPS 細胞株などのゲノム解析による品質評価を行ったことなど、基礎的な検討において

も今後の研究に有用な情報が得られつつある。

以上により、本拠点の成果は良好であると評価される。

Page 9: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

2

c)研究体制、運営等について

多くの疾患を対象としており、疾患によっては難治性疾患研究班とどのように連携するか具体的な方策が一

部曖昧な点はあるが、技術移転は進んでおり、多くの大学で iPS 細胞を用いた研究を行える可能性を示唆して

いる。また、疾患特異的 iPS 細胞から神経系細胞への分化や品質評価等に関しては、代表機関の慶應義塾大

学と分担機関の東京大学(医学部・医科学研究所)の間で成果を共有して適切に連携が図られている。また、

製薬企業との情報共有にも配慮しており、創薬に向けた速やかな応用が期待される点も評価できる。今後、製

薬企業や大学等の公的研究機関との一層の協力が望まれる。

以上により、本拠点の研究体制、運営等は適切であると評価される。

総合評価

ペンドレッド症候群の病態解析から候補化合物を見出すなど、着実な進捗及び基礎的な検討成果は、今後

の当該分野の研究進展に貢献するものと評価できる。研究体制が整いつつあり、これからの研究の進展が期待

される。

以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。

Page 10: 5.評価対象課題・評価時期・評価結果2 5.評価対象課題・評価時期・評価結果 研究課題名 代表機関 代表研究者 採択 年度 評価 年度

1

再生医療実現拠点ネットワークプログラム 中間評価報告書

プログラム名 疾患特異的 iPS細胞を活用した難病研究 共同研究拠点

拠点名 iPS細胞を用いた遺伝性心筋疾患の病態解明および治療法開発

代表機関名 東京大学

研究代表者名 小室一成(平成 24年 4月~平成 27年 1月)、森田 啓行(代行・平成 27年 1月~)

1.研究概要

心疾患は日本における死因の第 2 位を占めている。医学の発達により様々な心疾患の病態が解明され治療

法が開発されたが、遺伝性心筋疾患(心筋症、遺伝性不整脈)の病態解明および病態に基づいた治療法の開

発は進んでいない。遺伝性心筋疾患の病態解明および治療法開発を妨げる最大の要因は、解析に必要な量・

質の心筋細胞を遺伝性心筋疾患患者から得ることができない点であり、疾患特異的 iPS細胞由来心筋細胞を用

いて心筋症患者と同一の遺伝子を有する心筋細胞を解析することで、遺伝性心筋疾患の病態が明らかになると

考えられる。

本拠点の目的は、厚生労働省難治性疾患克服事業研究班(以下、「難治性疾患研究班」)と共同で遺伝性

心筋疾患の患者から疾患特異的 iPS 細胞を樹立、心筋細胞へと分化させた後に純化させた心筋細胞の表現

型を解析することで、遺伝子変異と患者の表現型をつなぐ心筋細胞の異常を明らかにすることである。事業終

了時までに 50名以上の患者から疾患特異的 iPS細胞を樹立、品質確認の上で理化学研究所バイオリソースセ

ンター(以下、「理研 BRC」)に寄託するとともに、製薬企業とともに心筋細胞を用いた創薬スクリーニング系を 5

件以上確立し、遺伝性心筋疾患治療薬の候補化合物を 1つ以上同定することを目標にしている。

2.評価結果

現在までの進捗・成果

a)進捗状況について

現時点で理研BRCに寄託した細胞は無い。寄託候補の細胞や心筋に分化した細胞の品質評価は確立途上

にあるが、研究計画時の寄託細胞数等の数値目標は、予定通り達成可能との言明があった。予てから、代表機

関と分担機関との連携不足が指摘されており、目標達成に向けて研究体制の再構築がこれからの課題である。

以上により、本拠点の進捗は当初計画・目標をやや下回っていると判断される。

b)成果について

分化細胞の一部の心筋誘導細胞の特性はよく調べられている。その全ては、分担機関である慶應義塾大学

の成果であり、学術雑誌に原著論文として報告されている点は評価できる。また、創薬スクリーニング系が立ち

上がったことから、今後の進捗が期待できる。一方、理研 BRCへの寄託が進んでおらず、また製薬企業の参画

もない。製薬企業を含めた多くの機関において、分化細胞が活用されるための明確な戦略が求められる。

以上により、本拠点の成果はやや不十分であると判断される。

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c)研究体制、運営等について

難治性疾患研究班との連携体制がこれまで不十分であり、疾患特異的 iPS 細胞から分化させた心筋細胞の

評価体制について、難治性疾患研究班の機能的な組織化が望まれる。具体的なテーマに基づいた製薬企業と

の連携はこれからの課題である。一方で、研究発足時から生じていた機関間の連携不足は、分担機関を整理す

るなどの研究体制の見直しによって解消しつつある点は評価できる。

以上により、本拠点の研究体制、運営等は適切であると評価される。

総合評価

進捗・成果は、細胞の寄託や製薬企業との連携において遅れている。しかし、疾患特異的 iPS細胞の樹立及

び心筋への分化方法等を確立したことにより、平成 26 年度内には寄託細胞数等の数値目標を達成予定である。

また、創薬スクリーニングのための基盤技術等が確立されている点は評価できる。しかし、創薬スクリーニングか

らの応用開発と製薬企業との連携について具体的に道筋を示す必要がある。

以上により、本拠点の進捗・成果はやや不十分であると判断される。

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再生医療実現拠点ネットワークプログラム 中間評価報告書

プログラム名 疾患特異的 iPS細胞を活用した難病研究 共同研究拠点

拠点名 疾患特異的 iPS細胞を活用した筋骨格系難病研究

代表機関名 京都大学

研究代表者名 戸口田 淳也

1.研究概要

骨・軟骨・骨格筋領域には数多くの遺伝性疾患が存在しているが、多くの疾患に対して根治的な治療法がな

いだけではなく、進行を抑制することも困難な場合が多いため、新規治療法の開発が切望されている。

本拠点では、厚生労働省難治性疾患研究班(以下、「難治性疾患研究班」)との連携のもとに収集した、稀少

な筋骨格系の難治性疾患患者の体細胞より iPS 細胞を樹立することとしている。さらに、これまでに培った分化

誘導技術を用いて、疾患特異的 iPS 細胞を疾患原因となっている骨、軟骨、骨格筋細胞に分化させる。できた

細胞の品質評価を行った上で、その細胞を用いて難治性疾患研究班及び製薬企業とともに病態解明並びに創

薬研究を進めることにより、革新的治療薬の開発を推進することを目的としている。

2.評価結果

現在までの進捗・成果

a)進捗状況について

平成 24年度発足から年次を追って順調に課題に取り組んだ結果、84症例から疾患特異的 iPS細胞を樹立、

60 例で品質評価を実施し、8 例を理化学研究所バイオリソースセンターに寄託している。また、分担機関と製薬

企業との間で、細胞の樹立や解析の工程を確立し、研究の推進体制を整備している。

以上により、本拠点の進捗は当初計画・目標を達成していると評価される。

b)成果について

軟骨無形成症及びタナトフォリック骨異形成症に対して創薬スクリーニングを行い、スタチンの有効性を明ら

かにして英科学誌Natureに発表したことは高く評価できる。また、難治性疾患研究班に対して、技術講習会を 3

回、及び骨・軟骨領域、骨格筋領域に分かれての最新の分化誘導技術の解説、細胞の使用に関する問題点の

把握と対策の検討を行う領域カンファレンスを 4回行うなど、技術移転も順調に進んでいる。その結果、5疾患で

一次スクリーニングを行うなど、具体的な成果が上がりつつある。細胞の品質管理、創薬スクリーニングに向けた

具体的取り組みも順調に進んでいる。

以上により、本拠点の成果は優れていると評価される。

c)研究体制、運営等について

難治性疾患研究班を含め、多くの機関で順調に連携が図られ、難治性疾患患者からの検体採取に努めてい

る。また、製薬企業とも共同で研究を進めている。

以上により、本拠点の研究体制、運営等は優れていると評価される。

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総合評価

創薬スクリーニングに成功し、難治性疾患治療薬の候補を同定して英科学誌 Nature に発表したことは、特筆

すべき成果と言える。疾患特異的 iPS細胞の樹立、寄託及び連携体制の構築が順調であり、全体としてバランス

良く進んでいる。

以上により、本拠点の進捗・成果は優れていると評価される。

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再生医療実現拠点ネットワークプログラム 中間評価報告書

プログラム名 疾患特異的 iPS細胞を活用した難病研究 共同研究拠点

拠点名 難治性血液・免疫疾患由来の疾患特異的 iPS細胞の樹立と新規治療法開発

代表機関名 京都大学

研究代表者名 中畑 龍俊

1.研究概要

本拠点は、疾患特異的 iPS細胞を用いて、難治性血液・免疫疾患の病態解明、新たな治療の開発を目指し、

15の厚生労働省難治性疾患研究班(以下、「難治性疾患研究班」)と連携し、25疾患から疾患特異的 iPS細胞

の樹立を行うこととしている。

担当分野は血液・免疫細胞(血球系)分野である。iPS細胞由来の血球分化系では、胎児期造血を再現する

ほか、成熟血球の機能解析も十分可能であることが判明しており、iPS細胞を用いた病態解析が疾患の本態に

迫る研究になり得ると期待される。また、血液疾患の根治的治療は、多くの場合、造血幹細胞移植に頼っており、

より低侵襲の特異的治療が多くの疾患で望まれている。

また、代表機関と分担機関が連携・分担して講習会等を実施し、iPS細胞技術の普及にも貢献している。

2.評価結果

現在までの進捗・成果

a)進捗状況について

11疾患 20症例から 41株の疾患特異的 iPS細胞を樹立し、品質確認後、23株を理化学研究所バイオリソー

スセンターに寄託するなど、比較的順調に進んでいる。また、応用方面ではハイスループットスクリーニングの系

も構築しており、今後の候補化合物の取得に向けて期待できる。一方、EBウイルスを用いた不死化リンパ球から

の疾患特異的 iPS細胞樹立については、特性を検証する必要がある。

以上により、本拠点の進捗は当初計画・目標を達成していると評価される。

b)成果について

骨髄異形成症候群からの疾患特異的 iPS 細胞樹立と病態解析の成果は評価できる。また、ファンコニ貧血に

ついては候補化合物を同定した。疾患特異的 iPS 細胞由来の分化細胞を用いた指標により、効果を示す化合

物が見出されたことは評価できる。どのような細胞を用意して、どのような評価・測定系を構築するかは疾患ごと

に異なる難しい問題になると思われるが、それらのモデルとも位置付けられる。今後の血液疾患の病態解明とそ

の治療薬開発への応用が期待できる。また、論文発表、製薬企業の参画、技術移転・普及活動などが着実に行

われている。

以上により、本拠点の成果は良好であると評価される。

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c)研究体制、運営等について

代表機関と分担機関、難治性疾患研究班の連携を図り、代表機関では難治性疾患研究班の施設から複数

の研究員を受け入れている。また、製薬企業からも研究員の受け入れが 1社あることから、推進体制・運営はよく

検討されていると評価できる。

一方、製薬企業との連携体制を一層強固なものにし、参画企業を増やすことが望まれる。

以上により、本拠点の研究体制、運営等は適切であると評価される。

総合評価

今後の血液疾患の病態解明とその治療薬への応用が期待できる。ほぼ計画通りに進捗し、応用に向けては

ハイスループットスクリーニングの系も構築しており、今後の候補化合物の取得に関して、目標を達成することが

期待できる。

以上により、本拠点の進捗・成果は良好であると評価される。