6
6.2. 6. 6.2 高瀬研究室 6.2.1 TST-2 球状トカマク装置を用いた プラズマ実験 われるトカマク ,プラズ れる (プラズマ I p プラズマ めに ある。 トカマク にあたるセンターソレノイド(CSを変 させるこ するプラズ マに する。CS トーラス するため,これを いずにプ ラズマを ・維 するこ きれ されるため, しく される。 ている トカマク(STいう CS プラント を大きく 右するため, ある。ST ββ = プラズマ圧 / プラズマが られる いう があり, これ いプラズマ圧 きるこ を意 する。核 プラズマ圧 する ,いかに β プラズマを安 てるかが る。 キャ ンパス TST-2 トカマク( 6.2.13)を い, アプローチによりこれら 題に いる。 6.2.13: TST-2 at Kashiwa Campus. 高周波によるプラズマ生成・維持 TST-2 サイクロトロン(ECマイクロ によるプラズマ ・維 ている。 6.2.14 す。マイ クロ する プラズマが され, れるが,こ いてる。 々に し,ある する し, じた される。これを ジャン ジャンプ プラズマ えた にほぼ する。 ジャンプ dI p /dt [kA/s] パラメータ依 するためだけ く,こ するために ある。 ,ポロイダル PF違い する マイクロ O/X モード) 違い(C PF す), EC パワー(P EC [kW]),EC R ECR [m]), ガス圧(p fill [10 5 Torr]), B z [mT])を い,以 パワー よく きるこ がわかった。 dI p dt = C PF P 2.1 EC R 2.4 ECR p 1.0 fill B 0.4 z られたパワー モデル する きるが, ある。 6.2.14: Time evolutions of two discharges, one with only EC injection, the other with EC injection switching over to RF injection. これま いたプラズマ ・維 いくつか グループ われているが,す EC マイクロ いていた。 TST-2 EC したプラズマに RF21 MHz)パワーを するこ ジャンプを引き こし, を維 するこ めて した( 6.2.14)。こ きる RF RF によりプラズマ され えられる。一 EC きる に運 ,す わち われる がある。こ よう が維 きたこ ,こ が圧 あるこ する。 高周波加熱実験 HHFWイオンサイクロトロン あり, による ST プラズマ するこ き, β プラズマ による い。TST-2 21 MHz HHFW による されている。 140 eV から 210 eV し,イオン 50 eV から 100 eV する。 イオンによる HHFW ,イオン している えられる。 RF こる して 150

6.2 高瀬研究室 C PEC RECR p 6.2.1 TST-2 球状トカ …fusion.k.u-tokyo.ac.jp/publications/activityreport/...6.2. 高瀬研究室 6. 一般物理実験 6.2 高瀬研究室 6.2.1

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6.2. 高瀬研究室 6. 一般物理実験

6.2 高瀬研究室

6.2.1 TST-2球状トカマク装置を用いたプラズマ実験

核融合研究に使われるトカマク装置では,プラズマ中に流れる電流(プラズマ電流 Ip)はプラズマ閉じ込めに不可欠である。通常のトカマクでは変流器の一次巻線にあたるセンターソレノイド(CS)の電流を変化させることで,二次巻線に相当するプラズマに電磁誘導で電流を駆動する。CSはトーラス中心部の貴重な空間を占有するため,これを用いずにプラズマを生成・維持することができれば装置の工学的制約が軽減されるため,炉の小型化が可能となり経済性が著しく改善される。当研究室で研究を行っている球状トカマク(ST)という配位では,CSの有無はプラントの経済性を大きく左右するため,最重要課題である。STでは高 β(β =プラズマ圧力/磁場圧力)のプラズマが得られるという利点があり,これは低磁場でも高いプラズマ圧力を達成できることを意味する。核融合出力密度はプラズマ圧力の2乗に比例するので,いかに高 βプラズマを安定に保てるかが重要な課題となる。本研究室では主に柏キャンパスの TST-2球状トカマク(図 6.2.13)を用い,複数のアプローチによりこれらの課題に取り組んでいる。

図 6.2.13: TST-2 at Kashiwa Campus.

高周波によるプラズマ生成・維持

TST-2では電子サイクロトロン(EC)周波数帯のマイクロ波によるプラズマ生成・維持法の研究を行っている。図 6.2.14に典型的な放電波形を示す。マイクロ波を入射するとプラズマが生成され,小さな電流が流れるが,この状態では磁気面は開いてる。電流が徐々に増加し,ある閾値に達すると電流が急激に増加し,閉じた磁気面が形成される。これを電流ジャンプと呼ぶ。電流ジャンプ後のプラズマ電流は,外部より加えた垂直磁場にほぼ比例する。電流ジャンプ前の電流増加率 dIp/dt [kA/s]のパラメータ依存性は,将来の炉に外挿するためだけでなく,この状態の電流駆動機構を解明するためにも重要である。実験結果は,ポロイダル磁場(PF)の曲率の違いと入射する

マイクロ波の偏波方向(O/Xモード)の違い(CPF

で表す),入射 EC波のパワー(PEC [kW]),EC共鳴位置(RECR [m]),充填ガス圧(pfill [10−5Torr]),外部垂直磁場強度(Bz [mT])を用い,以下のパワー則でよく表現できることがわかった。

dIp

dt= CPF

P 2.1EC

R2.4ECR p1.0

fill B0.4z

得られたパワー則を物理モデルで定性的に説明することはできるが,定量的な説明は今後の課題である。

0 . 00 . 51 . 0 0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 0 0 1 2 0I p[kA] T i m e [ m s ]# 5 1 5 5 3 # 5 1 5 5 601234 # 5 1 5 5 6 # 5 1 5 5 3P ECH[kW] F o r w a r dR e f l e c t i o n051 01 5P RF[kW] F o r w a r dR e f l e c t i o n # 5 1 5 5 3図 6.2.14: Time evolutions of two discharges, onewith only EC injection, the other with EC injectionswitching over to RF injection.

これまで波を用いたプラズマ生成・維持の研究は,いくつかのグループで行われているが,すべてEC周波数帯のマイクロ波を用いていた。TST-2では,ECで生成したプラズマに RF(21MHz)パワーを入射することで,電流ジャンプを引き起こし,電流を維持することに世界で初めて成功した(図 6.2.14)。この条件では伝播できるRF波は存在しないので,RFの作る誘導電場によりプラズマ中の電子が加熱されたと考えられる。一方 EC波は伝搬できるので,電子加熱と同時に運動量注入,すなわち電流駆動が行われる可能性がある。このような可能性のない条件で電流が維持できたことは,この電流が圧力駆動型であることを示唆する。

高周波加熱実験

高次高調速波(HHFW)はイオンサイクロトロン周波数の高次高調波帯の速波であり,理論によると誘電率の高い STプラズマ中を伝搬することができ,高 βプラズマでは電子による吸収が強い。TST-2では 21MHzのHHFWによる加熱が観測されている。典型的な例では,電子温度は 140 eVから 210 eVに増加し,イオン温度は 50 eVから 100 eVに増加する。イオンによる HHFWの吸収は弱いので,イオン加熱には不安定性が関与していると考えられる。RF入射時に起こる不安定性としては,電場が閾値を超え

150

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6. 一般物理実験 6.2. 高瀬研究室

ると起きるパラメトリック崩壊不安定性(PDI)が知られている。これはエネルギー・運動量を保存する 3つの波(または準モード)が関与する非線形現象であり,TST-2では RF磁気プローブおよびマイクロ波干渉計で観測されている。入射した HHFWはイオンバーンスタイン波 (IBW) とイオンサイクロトン準モード (ICQM) に崩壊する。HHFWにより励起された PDIの周波数スペクトルをRF磁気プローブで計測した結果を図 6.2.15に示す。入射波の周波数(21MHz)より低周波数側にイオンサイクロトロン周波数だけ離れた 19 MHz付近にサイドバンド(f−1)が見えている。また過去の実験では見られなかった 20.4 MHz付近(fun)にもピークが観測されている。このピークの周波数も f−1のピークと同様にトロイダル磁場強度に依存することがわかった。純粋な水素プラズマでは 20.4 MHzに対応する周波数は考えられず,これまで知られている PDIとは明らかに異なるものである。今後このようなピークが生じる物理過程の解明を進める予定である。

Frequency [MHz]15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

Pow

er [a

.u.]

1

210

410

610

810f0

f-1 fun

図 6.2.15: Frequency spectrum of PDI driven byHHFW, measured by RF magnetic probe.

マイクロ波反射計でHHFW成分と IBW成分の強度を調べると,両者とも 10kHz程度の激しい振幅変調を示す。図 6.2.16は両成分の関係を縦軸横軸に示したものであり,それらの間に非線形(この場合は2乗)の関係があることわかる。また,異なる運転条件の放電でも同じ線上にあることから,この非線形性は,比較的狭い空間の現象であることを示唆し,IBWが減衰しやすい(すなわちプラズマに吸収されやすい)波であることと矛盾しない。

高速光計測

プラズマ中を伝搬する波動を直接計測するため,高速光計測の開発を行っている。過去の実験では検出器にフォトダイオードを用いていたが,フォトダイオードは半導体であるため真空容器内で乱反射した電磁波の影響を強く受けるので,外部より励起された波動の検出には適していない。平成 19年度にはフォトダイオードに比べると電磁波の影響を受けにくい光電子増倍管を用い,プラズマ中の HHFWの検出に成功した。しかしプラズマからの光量が多く,光電子増倍管の線形性が無い領域での測定であるため,

1 0 � 71 0 � 61 0 � 51 0 � 7 1 0 � 6 1 0 � 5 1 0 � 4P ower( f ci)

P o w e r ( f 0 )P o w e r ( f 0 ) 2

図 6.2.16: Dependence of the 1st lower sideband(f−1) power on the pump wave (f0) power. Differ-ent symbols distinguish discharge types.

入射電力依存性等の定量的な測定には至っていない。今後,定量測定ができるようにすること,PDIにより励起された波動を測定することを目標に,高速光計測のダイナミックレンジを改善する予定である。

マイクロ波反射計

� 1 0 1R e a l p a r t( c ) C o r r e c t e d( a ) R a w ( b ) R a w

0 . 0 0 . 5 1 . 0A m p l i t u d e( d ) C o r r e c t e d

図 6.2.17: Complex amplitudes and histograms ofthe absolute amplitude for raw data (a) and (c),and for corrected data (b) and (d).

マイクロ波反射計はマイクロ波をプラズマに入射し,プラズマ中のカットオフ層からの反射波を測定する手法である。カットオフは密度の関数なので,反射波の位相を測定することにより,プラズマ中の密

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6.2. 高瀬研究室 6. 一般物理実験

度に関する情報が得られる。実際のプラズマ測定では,回折効果により反射波の振幅が大きく変動し,しばしば位相測定が困難になる。これまで一般的な測定条件での回折効果の表式は知られておらず,多くの場合は数値計算によって個々のケースでの影響が調べられていた。今回ガウスビームと真空中でのスカラー波の伝搬(ホイヘンスの原理)を仮定することで,一般的な条件での測定電場の解析表現を得た。また,揺らぎが凍結乱流である場合には,回折効果を補正できることがわかった。図 6.2.17は,テストデータに対する回折効果の補正の様子を示したものである。ヒストグラムは振幅の分布を示したもので,回折効果がない理想的な場合には,振幅は一定でヒストグラムは δ関数となる。補正によって,振幅の広がりを減少させることに成功した。実際の測定データに適用するためには,ノイズの効果,凍結乱流からのずれ,補正の良し悪しの評価方法等を考慮した手法を確立する必要がある。

6.2.2 MHD不安定性とモード数同定法の開発

当研究室では,イギリスにある世界最大級の ST装置MASTにおいて,STに固有の不安定性である内部再結合現象(IRE)の物理機構の解明を目指した共同研究を英国原子力機関(UKAEA)と行っている。MASTでは放電の前半で小規模な IREが,また放電の最後にプラズマ崩壊(ディスラプション)を伴う大規模な IREが頻繁に観測され,プラズマの性能を制限している。三次元理論シミュレーションによると,圧力駆動の低波数モードが非線形結合を経て成長した結果,プラズマは変形し,崩壊に至る。通常の(アスペクト比の高い)トカマクプラズマでも観測される鋸歯状振動との違いは,安全係数 qが 1となる面より外側の位置から熱・粒子分布の崩壊が起きることであり,複数のモードの非線形結合による崩壊が IREを特徴づける。大規模 IREでは,前兆振動としてのm/n = 2/1(m,nはトロイダル,ポロイダルモード数)のテアリングモード(TM)が崩壊の直前で発生し,成長する場合が多い(時定数は数ms)。IREを伴う複数のショットにおいて,軟X線強度分布は q = 2面付近での崩壊を示しているが,高エネルギー粒子起因の不安定性(EPM)が,TM発生より約 50ms前の時間帯で発生している場合もある。小規模 IREでは,トムソン散乱法で測定した電子圧力勾配は IRE以前の時間帯で増加しており,圧力勾配に駆動される不安定性であることが示唆される。電流立ち上がり速度と圧力勾配や不安定性との明確な相関は見られなかった。IREが起きる条件を調べるために,q = 2面における圧力勾配 (dP/dr)と磁気シア(S = (r/q)(dq/dr))を比較した結果,磁気シアが高い時は IREはより高い圧力勾配で起きることがわかった(Fig. 6.2.18)。平成 20年度には,MAST装置において圧力分布や電流分布をトロイダル磁場や粒子供給により変化させ,不安定性発生の条件を明らかにする実験を行い,高時間分解能で計測した軟 X線強度分布から,崩壊直前のモードの振る舞い

を調べる予定である。

0 20 40 60 80 1000

1

2

3

4

5

Pressure gradient at q=2 [kPa/m]

Magnetic s

hear

at q=

2

図 6.2.18: Trajectories of magnetic shear and pres-sure gradient at the q = 2 surface prior to IRE.Different symbols indicate different discharges. Redcircles indicate instances just before IRE.

ST プラズマの断面は非円形で,トーラス内側と外側のトロイダル磁場の非対称性が通常のトカマクよりもはるかに大きいので,ポロイダルモード数を同定するのは容易ではない。そこで 3次元ヘリカルフィラメント電流モデルを用いて,磁気計測で測定される信号を再現した。複数のフィラメントはトロイダル方向に均等に分布させ,各フィラメントの電流値もモード数に応じて決定した(Fig. 6.2.19)。3次元のモード構造をよく反映していると考えられる,磁力線に沿ったヘリカルフィラメントモデルと,トロイダル方向の軸対象フィラメントモデルを比較した結果,ヘリカルフィラメントの場合トーラス内側ではポロイダル磁場が近接するフィラメント同士により相殺しあうことがわかった。m/n = 2/1モードに対して磁気プローブ上での信号を算出し,実験で得られた信号と比較した結果,誤差は 2倍程度違い,モード同定におけるヘリカルフィラメントモデルの優位性が定量化された。

0.0 1.0

Mirnov coils

Fila

me

nt

Cu

rre

nt

[A]

Poloidal angle [turn]

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

0.2 0.6 1.0 1.4

R[m]

-0.5

0.0

0.5

Z[m

]

0.2 0.6 1.0 1.4

R[m]

-0.5

0.0

0.5

Z[m

]

0.0 1.0

Poloidal angle [turn]

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

Mirnov coils

Fila

me

nt

Cu

rre

nt [A

]

図 6.2.19: Models with axisymmetric (left) and he-lical (right) filaments. Bottom figures show loca-tions of filaments in a poloidal cross section (left)and poloidal distribution of filament currents.

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6. 一般物理実験 6.2. 高瀬研究室

6.2.3 プラズマ乱流によるメゾスケール構造形成

プラズマ中に存在する密度・温度などの勾配により,プラズマは乱流状態にある。乱流は,プラズマの大きさとイオンラーマー半径の中間のメゾスケールの構造を自発的に作り出し,この構造がプラズマの輸送に大きな影響を与える。メゾスケールの構造には帯状流(ZF)と呼ばれる波がある。ZFは核融合プラズマにおいては乱流による異常輸送を著しく減らす働きがあるため,非常に重要である。木星の帯状模様なども ZFであり,自然界に普遍的に存在する構造として物理学的にも興味深いものである。トロイダルプラズマにおける ZFは測地線音波(GAM)と呼ばれる振動モードを伴う。ZFとGAMは非線形的に結合しているため,GAMの固有モードの解析も必要不可欠である。平成 19年度は GAMに注目し,以下の研究を行った。

(1) GAM のポロイダル固有関数 高アスペクト比・円形断面プラズマにおいて,ジャイロ運動論方程式をもとに,イオンラーマー半径の高次のオーダーまで考慮した GAM固有モード解析を行い,実周波数,減衰率,固有関数を得た。本研究により,固有関数のパリティーが明らかになり,トーラスの上下対称性が破れることがわかった。この対称性の破れは実験観測可能な大きさであるため,モデルの妥当性も検証可能であることがわかった。

(2) GAMの径方向固有関数 (1)の研究をもとに,GAMの径方向構造を解析した。プラズマは径方向に温度・密度勾配を持つため,それらをモデルにより簡単化し,径方向構造を決める方程式を導いた。径方向にはプラズマ・真空境界が存在するため,径方向にも固有モードが存在し,実周波数・減衰率は連続ではなく離散的に存在することがわかった。また径方向構造は固有周波数と 1対 1に対応し,径方向の存在領域が変化することがわかった。この結果は,実験で観測されていた結果を説明できるものであった。

(3) 不純物イオン存在下の GAM の固有モード(1),(2)の研究をさらに不純物イオンの存在する系に拡張させた。実際のプラズマには不純物が存在するため,この拡張は非常に重要である。この研究により,周波数の解析的表現を得,1イオン系における GAMの周波数に比べ,現実のプラズマでは周波数は小さくなることがわかった。それに伴い,減衰率も変化する。この研究はイオンの実効的質量を測定する GAM分光測定において精度を上げるために非常に重要な結果である。

6.2.4 JT-60Uトカマクにおける自発電流によるプラズマ電流駆動実験

日本原子力研究開発機構の JT-60Uトカマクを用いて,プラズマが自身の圧力勾配により自発的に流すブートストラップ電流 IBS による電流駆動実験のデータ解析を行っている。この実験では,垂直入射

および反電流駆動方向の接線入射の中性粒子ビーム入射(NBI)のみを用い,非誘導電流駆動は負の寄与しかしないようにしている。この間,電磁誘導による電流駆動もゼロないしは負であることが示せれば,IBS が全プラズマ電流を上回る「ブートストラップオーバードライブ(BSOD)」が達成されたと結論される。これは,プラズマ中に自発的に流れる IBSにより,プラズマ電流の全てが駆動されるという,自己維持トカマクプラズマが実現されたこと,また BSODによりプラズマ電流を増加させることが可能であることを示す画期的な成果であり,経済的競争力の高い核融合炉の実現にとって大変意義の高いものである。しかしこのような放電ではプラズマ中心付近で電流密度がゼロとなる「電流ホール」という状態にあり,それぞれの電流成分の推定誤差が大きい。BSOD達成の信頼性を高めるため,いくつかの異なるプラズマ制御を用いた実験の解析を進めている。

6.2.5 プラズマ合体を使った超高ベータST

プラズマ生成・維持の研究

STの高 β・高閉じ込め特性を活用すれば,小型装置で体積中性子源或いは発電実証を実現し,核融合開発の加速に貢献することができる。STの特徴である高 β を更に高めた「超高ベータ STプラズマ」を生成・維持するための新手法を開発することを目的とし,新装置UTST(図 6.2.20)を建設し,実験を開始している。ST核融合炉で採用されるためには,トーラス中心部の CSを用いない方法でなければならない。具体的には,真空容器外コイルを用いてプラズマを 2個生成し,これらの合体に伴う磁気リコネクション(磁力線の繋ぎ換え)による磁場から粒子へのエネルギー変換を利用した超高ベータ STプラズマ(トロイダルベータが 30–50%)の新生成法の開発,および HHFWなどの先進的 RF手法による高ベータ STプラズマの維持を目指している。平成19年度には,コイル電源系の増強,加熱用のNBI装置の設置などを行った。

図 6.2.20: Newly constructed UTST device forultra-high β ST plasma formation.

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6.2. 高瀬研究室 6. 一般物理実験

<報文>

(原著論文)

[1] M. Sasaki, K. Itoh, A. Ejiri, Y. Takase: RadialEigenmodes of Geodesic Acoustic Modes, Contrib.Plasma Phys. 48, 68 (2008).

[2] M. Sasaki, K. Itoh, A. Ejiri, Y. Takase: Mod-ification of Symmetry of Poloidal Eigenmode ofGeodesic Acoustic Modes, Plasma Fusion Res. 3,009 (2008).

[3] T. Yamada, A. Ejiri, Y. Shimada, T. Oosako,J. Tsujimura, Y. Takase, Y. Torii, M. Sasaki,H. Tojo, T. Masuda, H. Nuga, N. Sumitomo,S. Kainaga, J. Sugiyama: Reflectometry for Den-sity Fluctuation and Profile Measurements in TST-2, Plasma Fusion Res. 2, S1037 (2007).

[4] H. Tojo, A. Ejiri, Y. Takase, Y. Torii, T. Oosako,M. Sasaki, T. Masuda, Y. Shimada, N. Sumitomo,J. Tsujimura, H. Nuga, S. Kainaga, J. Sugiyama:Soft X-ray Emission Profile and Mode StructureDuring MHD Events in the TST-2 Spherical Toka-mak, Plasma Fusion Res. 2, S1065 (2007).

[5] H. Tamai, T. Fujita, M. Kikuchi, K. Kizu,G. Kurita, K. Masaki, M. Matsukawa, Y. Miura,S. Sakurai, A.M. Sukegawa, Y. Suzuki, Y. Takase,K. Tsuchiya, D. Campbell, F. Romanelli: Prospec-tive performances in JT-60SA towards the ITERand DEMO relevant plasmas, Fusion Engineeringand Design bf 82, 541 (2007).

[6] T. Fujita, H. Tamai, M. Matsukawa, G. Ku-rita, J. Bialek, N. Aiba, K. Tsuchiya, S. Sakurai,Y. Suzuki, K. Hamamatsu, N. Hayashi, N. Oyama,T. Suzuki, G.A. Navratil, Y. Kamada, Y. Miura,Y. Takase, D. Campbell, J. Pamela, F. Romanelli,M. Kikuchi: Design optimization for plasma per-formance and assessment of operation regimes inJT-60SA, Nucl. Fusion 47, 1512 (2007).

[7] H. Takenaga, the JT-60 Team: Overview of JT-60U results for the development of a steady-stateadvanced tokamak scenario, Nucl. Fusion 47, S563(2007).

[8] J.E. Menard, M.G. Bell, R.E. Bell, S. Bernabei,J. Bialek, . . ., Y. Takase, . . ., : Overview of re-cent physics results from the National SphericalTorus Experiment (NSTX), Nucl. Fusion 47, S645(2007).

[9] A. Ejiri, Y. Shimada, T. Yamada, T. Oosako,Y. Takase, H. Kasahara: Relative Frequency Cal-ibration for Fast Frequency Sweep Microwave Re-flectometry, Plasma Fusion Research 2, 040(2007).

[10] Y. Nagashima, K. Itoh, S.-I. Itoh, A. Fujisawa,M. Yagi, K. Hoshino, K. Shinohara, A. Ejiri,Y. Takase, T. Ido, K. Uehara, Y. Miura, JFT-2Mgroup: In search of zonal flows by using direct den-sity fluctuation measurements, Plasma Phys. Con-trol. Fusion 49, 1611 (2007).

[11] T. Yamada, A. Ejiri, Y. Shimada, T. Oosako,J. Tsujimura, Y. Takase, H. Kasahara: Direct mea-surement of density oscillation induced by a radio-frequency wave, Rev. Sci. Instrum. 78, 083502(2007).

[12] Y. Torii, A. Ejiri, T. Masuda, T. Oosako,M. Sasaki, H. Tojo, H. Nuga, Y. Shimada, N. Sum-itomo, J. Tsujimura, S. Kainaga, J. Sugiyama,Y. Takase: First Observation of RF-Induced Visi-ble Light Fluctuations, Plasma Fusion Res. 2, 023(2007).

[13] A. Ejiri, Y. Takase: Toroidal current initiation inlow aspect ratio tokamaks based on single-particleorbit analysis, Nucl. Fusion 47, 403 (2007).

(国内雑誌)

[14] 高瀬雄一他:炉心プラズマの定常化に向けたトーラスプラズマ開発の現状と展望, J. Plasma Fusion Res.83, 413 (2007).

[15] 東井和夫,武智学,大舘暁,榊原悟,庄司多津男,徳沢季彦,江尻晶:高速イオン励起MHD不安定性とそれらによる高速イオン輸送, J. Plasma Fusion Res.83, 1000 (2007).

[16] 松田慎三郎,西尾敏,長山好夫,高瀬雄一,飛田健次,小西哲之,岡野邦彦,中村信吉,小野靖:実用炉に向けた核融合炉開発, IEEJ Journal 128, 74 (2008).

(学位論文)

[17] 海永壮一郎: “Electron temperature and densitymeasurements in TST-2 spherical tokamak plas-mas” (修士論文).

<学術講演>

(国際会議)

一般講演

[18] Y. Takase: “LHCD Scenarios for Spherical Toka-mak Plasmas” 17th Topical Conference on RadioFrequency Power in Plasmas, Clearwater, USA, 7–9 May 2007.

[19] M. Sasaki: ”Geodesic Acoustic Mode in toroidalplasmas” 11th International Workshop on PlasmaEdge Theory in Fusion Devices, Takayama, Japan,23–25 May 2007.

[20] T. Oosako: ”Combline antenna for Lower Hy-brid Current Drive start-up experiments in TokyoSpherical Tokamak-2”, 2nd Korea-Japan workshopon heating technology of Fusion plasmas, Jeju, Ko-rea, 16–17 August 2007.

[21] A. Ejiri: ”Design optimization of microwave reflec-tometry using Kirchhoff integral” 13th Int. Sympo-sium Laser-Aided Plasma Diagnostics, Takayama,Japan, 18–21 Sept. 2007.

[22] S. Kainaga: ”Electron temperature and den-sity measurements on TST-2” 13th Int. Sympo-sium Laser-Aided Plasma Diagnostics, Takayama,Japan, 18–21 Sept. 2007.

154

Page 6: 6.2 高瀬研究室 C PEC RECR p 6.2.1 TST-2 球状トカ …fusion.k.u-tokyo.ac.jp/publications/activityreport/...6.2. 高瀬研究室 6. 一般物理実験 6.2 高瀬研究室 6.2.1

6. 一般物理実験 6.3. 坪野研究室

[23] H. Tojo: ”Internal reconnection events studies inthe MAST spherical tokamak” 13th Int. Workshopon Spherical Tori 2007, Fukuoka, 10–12 Oct. 2007.

[24] A. Ejiri: ”RF start-up and heating experimentson the TST-2 spherical tokamak” 13th Int. Work-shop on Spherical Tori 2007, Fukuoka, 10–12 Oct.2007.

[25] M. Sasaki: ”GAM eigenmode in multi-ion sys-tem” 17th Int. Toki Conference and 16th Int.Stellarator/Heliotron Workshop 2007, Toki, Gifu,Japan, 15–19 Oct. 2007.

[26] H. Tojo: ”Temporal evolution of the pressureprofile and mode behavior during internal recon-nection events in the MAST spherical tokamak”17th Int. Toki Conference and 16th Int. Stellara-tor/Heliotron Workshop 2007, Toki, Gifu, Japan,15–19 Oct. 2007.

[27] A. Ejiri: ”Measurements of rf wave by microwavereflectometry on the TST-2 spherical tokamak”US-Japan WS on Millimeter-Wave Plasma Diag-nostics, UC Davis, USA, 25–27 Feb. 2008.

[28] A. Ejiri: ”Response of microwave reflectometry un-der generalized configuration” US-Japan WS onMillimeter-Wave Plasma Diagnostics, UC Davis,USA, 25–27 Feb. 2008.

[29] Y. Takase: ”Plasma start-up and heating experi-ments on TST-2” US-Japan RF Physics Workshop,PPPL, USA, 27–28 Feb. 2008.

招待講演

[30] Y. Takase: ”Nation-Wide Collaborative ST Re-search Program in Japan”, 13th Int. Workshop onSpherical Tori 2007, Fukuoka, 10–12 Oct. 2007.

(国内会議)

一般講演

[31] 杉山純一:TST-2球状トカマクプラズマにおけるECHスタートアップ実験 第 46回若手夏の学校(鬼怒川温泉)2007年 8月 7日–9日.

[32] 江尻晶: 「TST-2における高次高調速波入射実験」電気学会プラズマ研究会「プラズマ一般,球状トカマク」(東京)2007年 8月 20日–21日.

[33] 高瀬雄一:「アメリカおよびイギリスにおける ST型CTFの検討状況」 電気学会プラズマ研究会「プラズマ一般,球状トカマク」(東京)2007年 8月 20日–21日.

[34] 佐々木真:「GAMの径方向固有モード」 日本物理学会第 62回年次大会(札幌)2007年 9月 21日–24日.

[35] 足立裕樹: 「TST-2 における 21MHz RF 加熱時の可視光の高速測定」 日本物理学会第 62回年次大会(札幌)2007年 9月 21日–24日.

[36] 大迫琢也: 「LHCD start-up用コムラインアンテナの特性計測」日本物理学会第 62 回年次大会(札幌)2007年 9月 21日–24日.

[37] 杉山純一: 「球状トカマク TST-2における X-mode及び O-mode入射での ECHstartupの比較」プラズマ・核融合学会第 24回年会(姫路)2007年 11月 27日–30日.

[38] 大迫琢也:「TST-2における高次高調速波によるパラメトリック崩壊不安定性」プラズマ・核融合学会第 24回年会(姫路)2007年 11月 27日–30日.

[39] 渡邉理: 「TST-2における ECHプラズマ電流生成」研究会「球状トカマク炉への展望と課題」(土岐)2008年 1月 31日–2月 1日.

[40] 渡邉理: 「ECH start up and RF sustainment onTST-2」境界プラズマ研究会,土岐,2008年 2月 28日–29日.

[41] 東條寛: 「球状トカマクにおける MHD 事象の解析」, 第11回若手科学者によるプラズマ研究会,那珂,2008年 3月 17日–19日.

[42] 足立裕樹: 「TST-2における高次高調速波によるパラメトリック崩壊不安定性」第11回若手科学者によるプラズマ研究会,那珂,2008年 3月 17日–19日.

[43] 渡邉理: 「高周波密度振動に対する電子衝突励起,脱励起発光の応答」日本物理学会第 63回年次大会(大阪)2008年 3月 22日–26日.

[44] 海永壮一朗:「TST-2球状トカマクにおける高次高調速波による電子加熱の検証」日本物理学会第 63回年次大会(大阪)2008年 3月 22日–26日.

[45] 佐々木真: 「Zonal FlowとGAMの非線形競合過程」日本物理学会第 63 回年次大会(大阪)2008 年 3 月22日–26日.

招待講演

[46] 高瀬雄一: 「日本における ST 研究の現状と将来展望」プラズマ・核融合学会第 24回年会(姫路)2007年 11月 27日–30日.

(セミナー)

[47] 高瀬雄一:プラズマ物理から核融合への挑戦「ロード・マップとタイムテーブル 球形トカマク」五月祭特別講演・討論企画: 徹底討論・核融合「点火&アフター」(東大)2007年 5月 28日.

[48] 高瀬雄一: “Japanese ST Programme - Status &Plans -”  ST Workshop, Culham, UK, 22-23 May2007.

[49] 江尻晶:プラズマ研究と計測の発展 第 46回若手夏の学校(鬼怒川温泉)2007年 8月 7日–9日.

6.3 坪野研究室本研究室では重力と相対論に関する実験的研究を

進めている。その中でも、重力波検出は一貫して研究室の中心テーマとなっている。現在は、高感度なレーザー干渉計を用いた重力波検出に力を注いでいる。これらの研究に関連して、熱雑音や精密計測に関する研究も同時に進めている。

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