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有機化学自習課題 8
http://wwwro.meijo-u.ac.jp/labs/ro001/education/index_orgchem.html
8. 巻き矢印 (1):巻き矢印の基本 いよいよ巻き矢印の学習です。有機化学反応では、必ず結合の生成または切断が起こりま
す。つまり、最初に存在していた共有結合が切れたり、新しい結合ができたりします。共有
結合は2個の電子からできているわけですから、結合の変化は「電子の動き」として理解す
ることができます。この電子の動きを矢印で表すのが、巻き矢印です。 最初に、巻き矢印の基本的なルールを覚えましょう。
上の例では、巻き矢印の始点は Cl–上のローンペア(4対あるうちの1つ)です。この巻き矢印の意味は、「始点にあるローンペアを構成する2個の電子 H+に向かって動いて行き、
最終的に H–Cl間の共有結合を作る」ということです。Cl–にはあと3つのローンペア(すな
わち6個の電子)がありますが、それらは反応に関与しません。(関与しない、というのは実
はちょっと言い過ぎですが、今は第一近似としてそう考えることにします。)
上の例では、巻き矢印はローンペアから始まっていました。巻き矢印が結合から始まる例
を次に挙げます。
C CH
H
H
H+ CH3
+ CH
HCH
CH3
H
この2個の電子が
C+に向かって移動する
この場合は、巻き矢印の始点にあるのは C-C 二重結合です。この巻き矢印の意味は、「π結合を作っている2つの電子が CH3+の炭素原子に向かって動いて行き、最終的に新しい C–C結合を作る」ということです。 巻き矢印の始点が単結合のこともあります。その時は、σ結合を作っている2つの電子が
動いて行き、結合は切断されます。次の問題に例が出てきます。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問1:下の反応に現れるすべての巻き矢印について、巻き矢印の始点にある2個の電子(ロ
ーンペアまたは結合)を○で囲みなさい。上の例の青い○を参考にしてください。 (反応に関与しないローンペアもわざと書いてあるので、惑わされないように。)
2. 巻き矢印の始点には、必ず2個の電子がある。それらはローンペアか、または1本の共有結合である。
1. 1本の巻き矢印は2個の電子の移動を表す。
有機化学自習課題 9
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9. 巻き矢印 (2):電子の行き先 前ページで学んだように、巻き矢印の始点は「反応が進むと2個の電子がここから動いて
いく」ことを表します。それでは、その電子の行き先はどこなのでしょうか。 巻き矢印の始点は、ローンペアまたは結合なのでした。電子の行き先も、やはりローンペ
アまたは結合です。2個の電子が動いて行くのですから、当然といえば当然ですね。ただし、
矢印は出発物質(反応式の左半分)の中で書くことになっていますから、行き先のローンペ
アや結合はまだ存在していません。そこで、次のように矢印を書くルールになっています。
このルールは少し複雑ですね。例を見ながら1つずつ理解して行きましょう。
H+ + Cl– H Cl
このσ結合が新しくできる。結合する相手の原子=Hに向かう。
この例では、反応後 H–Cl のσ結合が新しく生成しています。これは(1)のケースで、「結合する相手の原子」、つまり Hを終点として巻き矢印が書かれています。始点は Clのローンペアですから、ローンペアの2つの電子が移動して H–Cl σ結合を作ったということです。
H Cl
このローンペアが新しくできる。ローンペアが属する原子=Clに向かう。
H+ + Cl– この例は、1つ上の例の逆反応です。反応後、Cl–上にローンペアが1つ増えています(左
辺の Cl 原子はローンペア3つ、右辺の Cl–イオンはローンペア4つです)。これは(2)のケースで、終点は新しいローンペアができる Cl原子になります。始点は H–Cl結合ですから、σ結合の2つの電子が移動してClのローンペアになり、σ結合は切断されてH+が脱離します。
CH
HCH
HH
C CH
H
H
H
このπ結合が新しくできる。π結合ができる位置に向かう。
+ H+
この例では、反応後に C‒Cπ結合が新しく生成しています。これは(3)のケースで、「π結合ができる位置にすでにある結合」、つまり左辺の C–C 結合を終点として巻き矢印が書かれています。始点は C–H 結合ですから、σ結合の2つの電子が移動して C–Cπ結合となり、C–H結合は切断されて H+が脱離します。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問1:上の例と同様に、下の反応に現れるすべての巻き矢印について、巻き矢印の終点の原
子または結合を で、また反応後に新しく生成する結合またはローンペアを○で囲みなさい。
CH3 O H + HOCH3 O + H O H
C CCl
HH
HH
HHO+
HC
HCH
HCl– + H O H+
O O
3. 巻き矢印の終点は、原子または結合である。移動する2つの電子が: (1) 新しいσ結合を作るときには、結合する相手の原子が終点になる。 (2) 新しいローンペアを作るときには、そのローンペアが属する原子が終点になる。 (3) 新しいπ結合を作るときには、結合ができる位置にすでにある結合が終点になる。
有機化学自習課題 10
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10. 巻き矢印(3):巻き矢印が表す電子の動き方 巻き矢印の始点と終点の意味はわかりましたか。次は、1本の巻き矢印が表す電子の動き
方をもう少し詳しく見てみましょう。もう一度 H+と Cl–の反応を見てみます。
H+ + Cl– H Cl
この2個の電子が
H+に向かって移動する このσ結合が新しくできる
巻き矢印の始点にある2個の電子が移動して、終点が原子ならローンペアかσ結合が新し
くでき、終点が結合ならそこにπ結合が一つ加わる、ということを学びました。ここで、巻
き矢印が表す電子の動き方について、もう一つ大切なルールを覚えておきましょう。
上の例だと、Cl上のローンペアの2個の電子は、反応後は Hと Clで共有されています。反応前後で Clが共通の「所有者」になっています。別の例も見てみましょう。
C CH
H
H
H+ CH3
+ CH
HCH
CH3
H
この2個の電子が
C+に向かって移動する このσ結合が新しくできる
a b c a b c
この例では、Ca–Cbπ結合の2個の電子が移動して、新しく Cb–Ccσ結合を作っています。
反応前後で Cbが共通の「所有者」です。このように、巻き矢印で移動する2つの電子には、
反応前後で必ず共通の「所有者」(原子)があります。縁もゆかりもないところにいきなり電
子を飛ばさないように、よく注意しましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:下の巻き矢印①、②について、移動する電子を反応前後で共通に所有している原子を
それぞれ示しなさい。
考え方:①では S–H結合の電子が S上のローンペアになるので、反応前後で共通の所有者はS です。②では O 上のローンペアの電子が O–H 結合になるので、反応前後で共通の所有者は Oです。 答: ---------------------------------------------------------------------------------- 問1:下の巻き矢印について、移動する電子を反応前後で共通に所有している原子をそれぞ
れ示しなさい。(わからない時は、「始点の電子(ローンペアまたは結合)」と「終点の電子(ロ
ーンペアまたは結合)」がどこにあるか見つけましょう。)
4. 1本の巻き矢印で移動する2つの電子は、反応前後で共通の1つの原子に所有(または共有)される。
CH3 S H + H O CH3 S + H O H
1 2
CH3 S H + H O
1 2
1 2
C CH
H
H
H3CH Cl+ C C
H
H
H
H3CH + Cl–
1
2
C CCl
HH
HH
HHO+
HC
HCH
HCl– + H O H+
1
2 3
有機化学自習課題 11
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11. 巻き矢印(4):よくある間違い これまでの巻き矢印はすべて正しく書かれていましたが、いざ自分で巻き矢印を書こうと
思うと、なかなかうまくいかないものです。落とし穴にはまらないように、「よくある間違い」
について見ておきましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 間違い例1:
「O–H が切れて O 上にマイナスができるんだもん!」と、O–H 結合から生成物のマイナス電荷に向けて矢印を書いてしまいました。気持ちはわかりますが、巻き矢印は必ず「反応
の左辺の中で」書きましょう。 正解:
---------------------------------------------------------------------------------- 間違い例2:
「H+が O 上に移動するから…」と、H+が移動する方向に矢印を書いてしまいました。巻
き矢印が表すのは「電子の動き」で、「原子の動き」ではありません。新しい O–H 結合を作る「電子」がどこから来るかを考えましょう。また、右辺の窒素原子が持つローンペアがど
こから来たかも書き表す必要があります。 正解:
---------------------------------------------------------------------------------- 間違い例3:
二重結合への付加は電子の動きがイメージしにくいかも知れませんが、「π結合の電子が動
いてσ結合を作る」のが基本です。ところが、上の矢印は、π結合ではなく炭素原子からス
タートしています。炭素原子上にはローンペアはありませんから、これは間違いです。勝手
にローンペアを書いてしまう人もいますが、「ないものはない」のです。 正解:
このように、π結合の真ん中からスタートしなくてはいけません。微妙な差ですが、ちゃ
んとわかるように描き分けましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 間違い例4:
これは、「縁もゆかりもないところ」に電子を飛ばしてしまった例です。Cのローンペアがいきなり Oのローンペアになることはありません。二重結合の移動も表現されていません。 正解:
有機化学自習課題 12
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12. 巻き矢印(5):1本の巻き矢印を書く(結合→ローンペア、ローンペア→結合)
いよいよ巻き矢印を自分で書いてみましょう。まず、巻き矢印が1本だけの反応です。こ
のような反応では、1本の結合が生成または切断されることになります。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:最初は、新しい結合が生成するパターンです。まず、左辺と右辺で「なくなる結合
/ローンペア」、「生成する結合/ローンペア」をそれぞれ特定しましょう。「なくなるローン
ペア」は左辺の O上のローンペア、「生成する結合」は右辺の O–H結合ですね。そこで、「ローンペアの電子が H に向かって動き、新しい結合を作る」ことを表すために、「O 原子のローンペア」から「H原子」に向かって巻き矢印を書きます。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 問1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。ローンペアはすべて書いてあります。
---------------------------------------------------------------------------------- 例2:
考え方:今度は、結合が切れるパターンです。前と同じように、左辺と右辺で「なくなる結
合/ローンペア」、「生成する結合/ローンペア」をそれぞれ特定しましょう。「なくなる結合」
は左の H–O 結合、「生成するローンペア」は右の O 上のローンペアの1つですね。そこで、「H–O結合の真ん中」から「O原子」に向かって巻き矢印を書きます。 答:
注意:巻き矢印は反応式の左辺の中で書きます。右辺の–OHの O原子に向かって巻き矢印を書いてしまうのは、よくある間違いの一つです(前ページの間違い例1)。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問2:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。ローンペアはすべて書いてあります。
有機化学自習課題 13
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13. 巻き矢印(6):1本の巻き矢印を書く(結合→結合) 1本の巻き矢印で、結合の生成と切断を同時に表現することもあります。ある結合が切断
される際に、その結合を形成していた電子対を使って同時に別の結合が生成する場合です。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:ローンペアはありませんから、左辺と右辺で「なくなる結合」、「生成する結合」を
探します。左辺の C–C 二重結合が右辺では単結合になるので、「π結合」がなくなっています。右辺では、右側の Cに新しく C–H結合が増えています。そこで、π結合の中心から H+
に向けて巻き矢印を書きます。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 例2:
考え方:二重結合が移動しているのは明らかですが、あくまでも「なくなる結合」「生成する
結合」に注目します。なくなる結合は「左の2つの C の間のπ結合」、生成する結合は「右の2つの Cの間のπ結合」ですから、π結合の中心から「結合ができる位置」の中心に向けて巻き矢印を書きます。 答:
注意:これはアリルカチオンの共鳴ですが、似ているようでもアリルアニオンの共鳴は巻き
矢印のつき方が違います。20ページ参照。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問 1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。
有機化学自習課題 14
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14. 巻き矢印(7):2本の巻き矢印を書く(酸塩基反応) 次に、2つの電子対が同時に移動する反応について考えてみましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:まず、今までと同じように、「なくなる結合(ローンペア)」「生成する結合(ローン
ペア)」を特定します。下のようになりますね。
「なくなる」のは O–H 結合と N 上のローンペア(左辺の青い丸囲み)、「生成する」のはO上のローンペアと N–H結合です(右辺の赤い丸囲み)。 つぎに、どの電子対(結合、ローンペア)がどこに動くかを考えます。上の場合、O–H結合の電子対が O 上のローンペアになり、N 上のローンペアの電子対が N–H 結合になるのが最も自然な動きです。これを巻き矢印で表すと、下のようになります。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 下のように書いてしまった人はいませんか? 巻き矢印は原子の移動ではなく「電子対の
移動」ですから、間違えないようにしてください。
(間違い)
下の巻き矢印も間違いです。O–H の結合電子が N–H の結合電子になって、一見良さそうに見えますが、これだと O 上に新しくできるローンペアの電子の出所がありません。また、N上にもともとあったローンペアは行き場所がなくなってしまいます。
(間違い)
この反応は、水とアンモニアの酸塩基反応でした。次の問では、同じタイプの反応につい
て、巻き矢印の書き方を練習しましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問 1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。
有機化学自習課題 15
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15. 巻き矢印(8):2本の巻き矢印を書く(求電子付加) 13ページで、エチレンに対するプロトン化を巻き矢印で表現しました。この反応では巻き矢印が1本でしたが、求電子付加反応では2本の巻き矢印が登場することもあります。実例
を見てみましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:まず、今までと同じように、「なくなる結合(ローンペア)」「生成する結合(ローン
ペア)」を特定します。下のようになりますね。
「なくなる」のは C–Cのπ結合と O–H結合、「生成する」のは C–H結合と Oのローンペアです。電子の動きとして最も自然なのは、π結合の電子対が C–H 結合になり、O–H 結合の電子対が O上のローンペアになることです。巻き矢印で表すと、下のようになります。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- できましたか? この反応では、巻き矢印は2本とも「結合」が始点です。巻き矢印を書
く時に、結合の真ん中から書き始めるように気をつけてください。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問 1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。
(C, H を省略する表記は苦手だ、という人も多いですね。有機化学の学習が進むとこの表記が増えてきますから、できるだけ慣れておきましょう。)
(たくさんあるローンペアに惑わされないで! Br上のローンペアは増減していませんよ。)
有機化学自習課題 16
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16. 巻き矢印(9):2本の巻き矢印を書く(求核置換反応) 前ページは求電子剤の反応でした。今度は求核剤の反応を考えてみましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:今までと同じように、「なくなる結合(ローンペア)」「生成する結合(ローンペア)」
を特定します。下のようになります。
さて、なくなる電子対(青色)と生成する電子対(赤色)はどれとどれが対応しているの
でしょうか。一見すると、C–Brの結合電子が C–Oの結合電子になるように見えますが、それだと困ったことになります。O のローンペアの電子対が Br のローンペアの電子対に移動することになってしまい、これは 10ページのルール4に違反しています。なぜなら、反応前は O に所有されていた電子対が反応後は Br に所有されることになり、反応前後で共通の所有者がないからです。 (間違い)
正しくは、C–Br の結合電子が Br のローンペアになり、O のローンペアが C–O の結合電子になります。この反応は SN2反応ですが、反応機構を考えてもこの電子の流れが妥当と言えます。 答:
SN2は背面攻撃ですから、こんな風に書くと一層それらしくなりますね。
---------------------------------------------------------------------------------- 問1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。
有機化学自習課題 17
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17. 巻き矢印(10):巻き矢印とローンペアを自分で書く(1) 前ページまでの問題では、必要なローンペアはすべて記入されていました。しかし、実際
に有機反応を記述する時には、ローンペアはいちいち記入しないことがよくあります。この
ような場合に正しく巻き矢印をつけるためには、「なくなるローンペア」「生成するローンペ
ア」を自分で見つけないといけません。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:ローンペアが書かれていませんから、まずローンペアがどこにあるかを探します。
形式電荷はすでに書かれていますので、「ローンペアの数=(価電子数-共有結合数-形式電荷)
÷2」の式が使えます。左辺の Oの上に2つ、右辺の Oの上に1つのローンペアがあることがわかりますね。 ここからは、前ページまでと同じように考えます。左辺の Oのローンペアが1つ減り、代わりに O–H結合が1つ生成します。つまり、「Oのローンペアから Hに向かって」巻き矢印を書けばよいことになります。書かれていないローンペアは自分で補います。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 前ページまでは、下のようにすべてのローンペアを書いていました。もちろんこれでも間
違いではありませんが、なるべく簡潔に、反応に関与するローンペアだけを書けるようにな
るとよいですね。その方が、必要な電子の動きがわかりやすくなります。
まずは、巻き矢印が1本のパターンで練習しましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。反応に関与するローンペアを書き入
れること。
有機化学自習課題 18
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18. 巻き矢印(11):巻き矢印とローンペアを自分で書く(2) つづいて、巻き矢印が2本必要な反応についても練習しましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:前ページと同じように、まずローンペアを探します。左辺は Oの上に1つ、Nの上に1つ。右辺は Oの上に2つ、Nの上にはありません。従って、Oのローンペアが1つ増え、N のローンペアが1つ減ることがわかります。また、なくなる結合は O–H の1本、生成する結合は N–H の1本です。O–H の結合電子が O のローンペアになり、N のローンペアがN–Hの結合電子になるわけです。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 問1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。反応に関与するローンペアを書き入
れること。
C CCH3
H
H
H+ H Br C C
CH3
H
H
H+ Br–H
有機化学自習課題 19
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19. 巻き矢印(12):脱離反応(E2反応) E2反応では、巻き矢印が3本必要です。(1) 塩基によるプロトン引き抜き、(2) π結合の生成、(3) 脱離基の結合切断、にそれぞれ対応します。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:まず、増減するローンペアを探します。なくなるローンペアは左辺の O 上に1つ、生成するローンペアは右辺の Br 上に1つです。結合については、なくなる結合が C–Br とC–H、生成する結合が C–Cのπ結合と H–O結合です。一度書き出してみましょう。
どの電子対がどこに動くかを慎重に考えます。電子対は、動いた前後で必ず共通の原子に
所有されていないといけないのを忘れずに。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 例2:
考え方:例1と全く同じ反応ですが、引き抜かれる C–Hが省略されています。このような場合は、巻き矢印を書く時に Hを書き足さなければいけません。 答:
---------------------------------------------------------------------------------- 問1:次の反応の電子の流れを巻き矢印で書きなさい。反応に関与するローンペアを書き入
れること。また、必要に応じて、H原子を書き足すこと。
有機化学自習課題 20
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20. 巻き矢印(13):共鳴構造 巻き矢印は、反応の進行を表すだけでなく、共鳴構造を表現するのにも使われます。アリ
ルカチオンの共鳴構造はすでに 13ページで出てきました。ここでは、巻き矢印が2本以上現れる共鳴構造の表現を練習しましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 例1:
考え方:カルボキシラトアニオンです。カルボン酸がアルコールより強い酸なのは、共役塩
基のカルボキシラトアニオンが共鳴により安定化するからでしたね。その共鳴を、巻き矢印
で書いてみましょう。 手順は今までと同じです。増減するローンペアを探すと、下の Oのローンペアが1つ減り、上の Oのローンペアが1つ増えることがわかります。また、結合については、上の C–Oπ結合がなくなり、下の C–Oπ結合が増えます。そこで、下の O のローンペアが下の C–Oπ結合になり、上の C–Oπ結合が上の Oのローンペアになると考えます。 答:
O のローンペアが移動しているように見えるので、つい下のように書きたくなりますが、これは誤りです。π結合の移動が表現されていませんね。また、「電子対は移動の前後で共通
の原子に所有されていないといけない」というルールにも違反しています。 (間違い)
次の問いの最初は、アリルアニオンです。13ページのアリルカチオンとは違うことに注意しましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- 問1:次の共鳴構造について、電子の動きを巻き矢印で書きなさい。関与するローンペアを
書き入れること。