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2014年 9月号 ■NOTICIAS■ 国際協力機構アルゼンチン事務所 ■NOTICIAS■
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01 プロジェクト便り
「第三国研修 『中小企業における経営・生産管理技術の応用コース』
-日本のモノづくり文化を伝える-」
JICAアルゼンチン事務所次長 山本フアン・カルロス
02 ボランティア便り
「マル・デル・プラタより-ヒラメの養殖産業化への協力-」
大橋元裕 シニア海外ボランティア(短期)
03 日系社会便り
「Cool Japan : 料理を通じての文化交流」
上里芳子 日系社会シニアボランティア(短期)
04 JICA 事務所の動き
JICA アルゼンチン事務所
次長 山本フアン・カルロス
JICA では、8月 11日から 9月 5日まで国立工業技術院(INTI)、アルゼンチン外務省とともに中南米域
内等における中小企業振興機関の生産管理技術に関する普及能力の向上を目的とし、関係国の指導者らを
対象に第三国研修「中小企業における経営・生産管理
技術の応用コース」(第 4回目)を実施しました。
同研修コースでは、関係国での中小企業の生産性向
上を図るため、5S、カイゼン、7 つのムダ、QC7つ道具、
ジャストインタイム、TPM(Total Productive
Maintenance)等、所謂、我が国の生産管理技術の各種
ツールに関しての講義や演習、工場実習等が行われま
した。
参加者は、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、コロン
ビア、コスタリカ、キューバ、エルサルバドル、モザ
第三国研修「中小企業における経営・生産管理技術の応用コース」
-日本のモノづくり文化を伝える-
ンビーク、ニカラグア、ペルー、パラグアイ、ウルグアイ各国を代表した中小企業指導員の他、INTI や
アルゼンチン国内の関係機関の技術者等、総計 18名に上りました。
我が国の生産管理技術は、戦後、欧米から導入されたものの、日本で様々な改良が加えられ、また、日
本の企業、団体等も独自で開発を行う等、日本特有の技術として発展を遂げ、品質管理と生産性向上によ
り戦後の日本の産業発展を支えてきました。特に我が国の技術は、仕掛在庫を圧縮し、各工程へタイミン
グよく材料を供給する等、非常に精緻な管理システムであり、近年、世界的にも高く評価され、多くの途
上国が、その導入、普及に取り組んでいます。
こうした背景を踏まえ、JICAは、アルゼンチンに
おいてINTIをC/P機関とし、開発調査「中小企業活
性化支援計画調査」(2004年~2006年)、開発調査「ア
ルゼンチン国中小企業経営生産管理技術の普及体
制構築計画」(2009年)、10人以上のシニア海外ボラ
ンティアの派遣、30人以上のINTI技術者に対する日
本での研修等を通じ、本分野での協力を推進してき
ました。その結果、INTI内では、生産管理技術ネッ
トワークが整備(現在、国内14センター、指導員約
60人)され、生産管理技術アドバイザー養成制度や
資格認証制度等も構築されるに至っています。
この第三国研修は、こうした日本の技術協力を通じて INTIが長年蓄積してきたノウハウを中南米地域
内の他の中小企業振興機関に普及しようとするものです。また、JICA は、これまで実施した研修のフォ
ローアップとして INTIと協力し、ニカラグアに対して個別に協力を行っている他、アルゼンチン政府が
独自に行っている南南協力でも INTI の技術者がエクアドル、ベネズエラ、モザンビーク等に指導者とし
て派遣されています。
本研修では、より協力効果を高めるため、横浜国立大学 経営学部経営システム科学科の松井美樹(よ
しき)教授(オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会(JOMSA)元会長)を在外研修講師(短
期専門家)として招き、我が国のオペレーションにおける戦略計画、戦略経営の要点、品質や在庫を例に
した具体的戦略展開等に関しての講義をして頂きました。また、同教授には、INTIと共催で実施した一
般向けのセミナーでも「サプライチェーン・マ
ネジメント」について講演して頂きました。
さらには、当地の日系進出企業 3社の協力を
頂き、日本の「モノづくり」の現場として自動
車工場、自動車部品工場、二輪車工場を見学さ
せていただき、同企業幹部(非日系人)の方々
からは、当地での日本の生産管理技術の実践に
ついての講義もして頂きました。参加研修員ら
からは、理論でしか知らなかった日本の生産管
理技術の実践現場を初めて見ることができ、そ
の導入の苦労や様々な工夫等について当事者か
ら話を聞くことができたとして非常に好評でし
た。
なお、この日系企業の工場見学に先立ち、研修員らがより理解を深められるよう INTI Entre Rios で
活動している上垣英三シニア海外ボランティア(SV、品質管理、元 JICA技術協力専門家)が、着目すべ
きポイントについて研修員らに予め解説しました。(同 SVは、公開セミナーでも TPM( Total Productive
Maintenance:総合的設備保全)について講演)
また、かつて INTI で SV として活動し、組織の能力強化や資格認証制度の構築に大きく貢献された肥後
照雄氏(現経営コンサルタント)も来亜中であり、研修
の特別講師として「マーケッティング論」を講義されま
した。(肥後元 SV には、同人の INTIへの多大な貢献に
対し、INTIより感謝状が授与されました。)
本研修は、本年度が通算 4回目ですが、研修期間も長
くなり、当地の日系進出企業の協力を頂いての工場見学
及び関連の講義、日本人専門家や経験豊富なシニア海外
ボランティアによる講義等、日本の「モノづくり」文化
を伝えるため、年々、内容が充実しつつあります。
さらに本年度は、INTIとの調整により、当国で活動している日系人の経営管理コンサルタント 2名に
アルゼンチン側研修員として本研修参加機会が与えられました。当方では、ビジネスの分野での我が国と
日系社会の良きパートナー関係の構築のために、本分野での日系人社会との連携強化についても積極的に
推進していきたいと考えているところです。
大橋元裕 シニア海外ボランティア(短期)
配属先:国立水産開発調査研究所
職種:養殖
マル・デル・プラタにある国立水産開発調査研究所
(INIDEP)に赴任して 2ヶ月が過ぎました。現在、ここでヒ
ラメ養殖用の配合飼料の開発をカウンターパートと共に行
っています。
日本と同研究所の縁は深く、同研究所は 90 年代前半に日
本の無償資金協力で建設され、その後も海水魚養殖と資源管
理分野において技術協力が行われました。このため、職場は
日本で技術研修を受けた研究員が多く、日本語で話しかけら
れることもあるほどです。スタッフは皆、日本人である私に
非常に親切に接してくれ、所謂日本との信頼関係が出来上がっているのだと感じています。更に、日本の
養殖技術への信頼も高く、日本人の実直さ、勤勉さも認められており、先人たち皆さんのご尽力に大いに
感謝しています。
しかし、日本からの海水魚養殖の技術協力終了後、10 年間が経過した今、研究所で必ずしもヒラメの
適正養殖技術が確立されている訳ではありません。アルゼンチンでの「ヒラメ養殖産業化」には適正な技
マル・デル・プラタより
-ヒラメの養殖産業化への協力-
INIDEP
術が不可欠であるため、基礎研究から一歩進んだ配合飼料の開発はもとより、稚魚の大量生産、集約的成
魚の生産、循環濾過式の飼育施設等こなれた技術が求め続けられます。実学とか実業に関しては、日本人
が得意とする分野で、アルゼンチンの人々には苦手なのかも知れませんが、彼らはその重要性を十分理解
しているように感じます。当地でヒラメを養殖しても食べないから生産しないのではなく、研究所では、
先ずここで生産できることをできるだけ広く周知させることが、アルゼンチンでの「ヒラメ養殖産業化」
への第一歩だと感じています。
他方、隣国チリでは「さけ養殖」が一大産業に発展しています。その背景には、さけの養殖に適したチ
リ国の自然環境、さけの需要等好条件が揃っていたことは言うまでもありませんが、その発端は「さけ養
殖」に関する日本の技術協力でした。その後、チリではさけ養殖技術のマニュアル化を成功させ、一旦出
来上がるとスケールアップは彼らの得意分野ですから、一挙に生産量を拡大できたことは有名な話です。
今回、短期ボランティアとして派遣された私に最も期待されている業務は、「ヒラメ用配合飼料の開発」
です。アルゼンチン国内で大量に生産されている農・畜産物原料(肉骨粉、大豆粕、小麦、ビール酵母)
を多用し、安価で生産効率の良い、国産配合飼料を提案したいと考えています。過去に先人たちが当研究
所で技術指導に関わり貯蓄した財産を使うばかりではなく、自身の活動を通してこの研究所内の日本国の
財産に少しでもプラス・アルファできるよう努力しています。
最後にマル・デル・プラタの町の様子を紹介したいと思います。この町は、アルゼンチン国内で最も有
名な美しいビーチ・リゾートです。先日、海岸線の道路から数頭のミナミセミクジラが泳いでいるのが見
えました。近くには漁港も備え、アルゼンチン漁業の中心地でもあります。
9 月は、シーズンオフのため落ち着いた風情ですが、夏になると観光客で溢れかえり、約 60 万の人口
が数倍に膨れ上がるそうです。「マラドーナも夏にはここに来るのか?」と同僚に尋ねると「彼は来ない」
との返事でしたが、多くの有名人もこの町に保養にやって来る筈です。冬の時期は、海風も冷たく、肌寒
い日もありますが、穏やかな暮らしやすい町だと感じています。残りの活動期間、この地で充実した活動
ができるよう過ごしたいと思います。
ヒラメ成魚 カウンターパート
漁港 冬のマルデルプラタ
上里芳子 日系社会シニアボランティア(短期)
配属先:在亜沖縄県人連合会
職種:料理
3 月 26 日早朝、ブエノス・アイレスに到着しました。長旅にも拘わらず、その日の午後からオリエン
テーション等既に予定が組まれており、ボランテイア活動が始まったのだ!と気付かされました。着任当
初、私は、9ヶ月間という活動期間中に配属先の要請内容にどれだけ対応できるか不安で一杯だったのを
覚えていますが、これまでたくさんの皆様の協力を頂きながら、活動してきた内容を紹介します。
最初の活動は、配属先が経営する沖縄料理レストランの新メニューの開発でした。ブエノス・アイレ
スで簡単に手に入る食材を使って、前菜、主菜、副菜、食後のデザートに適した料理を 10 種類選び、料
理長と 2ヶ月間に亘り、試行錯誤を重ねました。メニューに加えるにはまだ不十分でしたが、任期終了ま
でには、沖縄の「おもてなし料理」として皆様にご披露したいと思っています。
5 月前半には、日本語を学ぶ小中学生の生徒を対象に料理教室を開講しました。子供達は、既に日系 3
世、4 世で、日常会話はスペイン語です。言葉の壁を乗り越えて「端午の節句」を紹介し、鯉のぼりの形
のおむすびを作りました。折り紙や新聞紙で兜を作る子ども達は元気一杯で、日本にいるような錯覚さえ
感じたほどでした。
また、5月後半から、沖縄県人会婦人部や一般の方々を対象として家庭料理講習会を開催することにな
りました。第 1 回目は、JICA 事務所の小野企画調査員に通訳や調理の補助の協力をお願いし、大盛況の
うちに終わることができ安堵しました。以降は、ラプラタ新聞(ア国唯一の邦字新聞)に「 JICA日系社
会シニアボランティアによる家庭料理講習会開催予定、参加者募集!」の記事を掲載して頂いたこともあ
り、大きな反響があり、多くの参加者が集まりました。料理講習会は、3回シリーズで実施しました。(※
上記写真がその講習会の様子の一部です)
講習を始める前には、料理にとって最も重要と思われる食文化についてパワーポイントを使って分かり
易く説明しました。ここアルゼンチンの日系社会は、沖縄県系人の方々が約 7、8 割を占めているため、
沖縄の食文化についても是非、当地の日系社会の方々に伝えたいと思っていました。
献立内容については、アルゼンチンの肉食中心の食生活改善を目的に、当地の食材を使った①バランス
の良い健康食(野菜料理)、②家庭で簡単にできる沖縄料理、そして、先般、和食が世界遺産に登録され
たこともあり、和食に関心を示す非日系人のための③手軽にできる日本料理の 3種類を取り入れたものを
実施しました。以下の内容が、3回シリーズで実施した献立内容です。
クール・ジャパン:料理を通じての文化交流
① 第 1 回バランスの良い健康食(野菜料理):
主婦の一日の食事の目安量、献立の立て方、
(注1)鍋帽子を使った保温調理、とりハム、蒸し野菜、ごまドレッシング
② 第 2 回家庭で簡単にできる沖縄料理:
炊き込みごはん(ジューシー)
大根とウジラ豆腐の煮物、大根のレモン漬け
③ 第 3 回手軽にできる日本料理:
目で見て美しい押しずし、きゅうり、わかめ、しょうがの酢の物、さつまいも、りんごの茶巾しぼり
(注1) 鍋帽子を使った保温調理とは:一度加熱した鍋に鍋帽子をかぶせておくと、いつの間にか美味
しいおかずが出来上がる。電気もガスも使わない。火のそばにいる必要もない、便利で手間い
らずの保温調理道具「鍋帽子」を使って調理すること。ガスや電気の消費量を抑え、エネルギ
ー資源を大切にした調理方法。
また、最近は、地方都市でも料理講習会の巡回指導を行っており、これまで 3都市を巡回しましたので
その様子について報告いたします。
【コルドバ】
6月中旬に、コルドバの日本人会館で 2日間の家庭料理講習会を開催しました。巡回指導では、現地で
食材調達、料理の下準備、会場の設営、講習会、試食交流会、後片付けが一連の流れですが、日本人会の
関係者の方々(会長、役員、婦人部、参加者の皆さん)の協力を頂き、無事に講習会を終えることが出来
ました。調理後、作った料理を参加者の皆さんと一緒に頂くという「食」を通しての交流は、何よりの喜
びで、とても心が和みました。また、参加者皆さんの温かい笑顔に、遠くまで巡回に来た甲斐があったと
嬉しく思いました。
【サンタフェ】
7月上旬には、サンタフェの日本人会館で料理講習会を開催しましたが、参加者には非日系の女性や男
性も多く、日本語を学習する青年達も大勢参加して下さり、地方でも世代交代が進んでいるのを肌で感じ
ました。また、非日系の参加の皆さんの講習を熱心に聴講する態度や料理についての質問等、沖縄料理、
日本料理への関心の高さをも感じた 1日でした。
【コリエンテス】
8 月中旬には、コリエンテス日本人会で 3 日間の講習を行いました。コリエンテスは、私の夫が 3 年
前まで 2 年間、JICA シニア海外ボランテイアとして活動した土地で、当時、私は随伴で滞在していまし
た。当時、お世話になった方々とも再会し、料理講習会も活気づき、最終日は、親子丼、野菜の甘酢漬け、
保温調理の蒸し野菜、とりハム、ゴマドレッシングを作りました。また、参加者の一品持ち寄りも交流を
さらに深めました。
最後に、私の任期も既に後半に差しかかって来ましたが、今後は首都近郊都市(ブルサコ、フロレン
シオバレーラ等)への巡回指導を計画中です。今回の私の活動を通じ、日系社会の皆様に限らず、多くの
アルゼンチンの方々に日本の食文化が伝わり、料理を通した文化交流が深まればと願っております。
8 月 11 日~9 月 5日:第三国研修「中小企業における経営・生産管理技術の応用コース」の実施
8 月 11~15 日: 第三国研修「中小企業における経営・生産管理技術の応用コース」・松井在外研修講師
(横浜国立大学国際社会科学研究員)来ア
8 月 18~23日: 第三国研修「飲食物からの感染症(食品媒介感染症):診断、管理と環境との関連」;
関崎在外研修講師(東京大学大学院農学生命科学研究科 食の安全研究センター)来ア
8 月 19日~9 月 12日: 第三国研修「飲食物からの感染症(食品媒介感染症):診断、管理と環境との関
連」の実施
9 月 1~12日:研究員派遣「植物病原糸状菌に対する生物的防除資材開発のための発酵および製剤技術の
最適化」・百町教授(岐阜大学)来ア
9 月 10日:科学技術協力「南米における大気環境リスク管理システムの開発プロジェクト」・三須業務調
整員 着任
9 月 17 日:JICA 安全対策会議及びボランティア中間報告会
9 月 21~26日:第三国研修「中南米における天然植物資源を用いた観葉植物の育種」・金谷在外研修講師
(中南米における天然植物資源を用いた観葉植物の育種)来ア
9 月 22 日~10 月 3日:第三国研修「中南米における天然植物資源を用いた観葉植物の育種」の実施
9 月 25 日:短期シニア海外ボランティア 1名着任
2014 年 9月-136号
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