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ヒメ マスの研究― W ―支坊 湖におけると マスの産卵 源について Studies on the KOkanee Salmon IV Spawning Migration oP the KOkanee Salmon f0 Lake Shikorsu, HOkkaid0, Japan. TOshiaobu TOKUI Abs 汀 :act (1) In order to reproduce by means Of artificial fertilization, mature kokanee have been captured at three localities alone the shores 0f Lake Shikotsu. Of late years the number Of kokanee caught at Pipui which is 12km from the Hatchery have shown gradual decrease. SO lt is recommended that improved conservation methods be tried in the Pipui area in order to maintain the kokanee resources i'2) Usually the spawning kokanee in Lake Shikotsu appear first in the early part 0f October when the water temperature tS from l5 to I6oCat the surface. They are abundant fn the last week Of this month when the water temperature is t3 t0 I5@C and terminate their spawning migration in mid-Novem- her when the waler temperature is 9 to I0''C (3) Of the spawning kokanee caught at Lake Shikotsu for the years from 1951 [o1960, males were abundant only in 1952 and 1955 and showed the ratio Of females t0 males 0f 100 : 142. In many other years the predominance Of females was found and the sex ratio varied yearly. During their spawning migration the kokanee were rich in males tn the early portion, ;n females at the peak and again in males at the last, ;41 The spawning kokanee @n Lake Shikotsu are intermediate in the development Of breeding colora' tion, as compared with the kokanee in other lakes. And the coloration ls considered tU be dependent upon the fish size, that ls, upon the nutritive conditions 0f the habitats I ヒメ マスは,この魚の生息環境をも含めた生理・生態学的な基礎研究なしに,有効適切な資源管理を行うこと はできない。この意味から 上筋湖のとハマスの産卵回倣について,いくつかの問題を報告したい。 I 地区別の 補数 支街湖では,庄卵のため湖岸に 淋してくると マスを,湖畔の pナイ・ ビプイ・メ 化場前の3 地区 CF りで採 浦して, 人工採卵を行つている。3地区のうち, pピナイとピブイは,刺網によって採浦し,ふ化場 前では,ふ化場のポート波止場の人口CFlS 2)に, 曳網 (Fig 刃を設置して採捕している。ここで,3地区 おげる最近 lo 年間の地区別採捕数をみると, Table lのよ 5 になる。 北面 Lさけ・ます ふ化場研究業績第 l68 127

―支坊salmon.fra.affrc.go.jp/kankobutu/srhsh/data/srhsh170.pdf1958 3.6 3.7 3.6 5.0 6.9 ! 11.8 17.8 21.1 , 18.7 13.7 9.9 5.8 3. 3 ・ 1959 3.4 3.9 4.8 6.4 2.9 '2.4 2.8 4.2 5.7

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ヒメ マスの研究― W

―支坊湖におけると メ マスの産卵回源について

徳 井 利 信

Studies ・ on the KOkanee Salmon IV

Spawning Migration oP the KOkanee Salmon f0 Lake Shikorsu,

HOkkaid0, Japan.

TOshiaobu TOKUI

Abs 汀 :act

(1) In order to reproduce by means Of artificial fertilization, mature kokanee have been captured at

three localities alone the shores 0f Lake Shikotsu. Of late years the number Of kokanee caught at

Pipui which is 12km from the Hatchery have shown gradual decrease. SO lt is recommended that

improved conservation methods be tried in the Pipui area in order to maintain the kokanee resources

i'2) Usually the spawning kokanee in Lake Shikotsu appear first in the early part 0f October when

the water temperature tS from l5 to I6oC at the surface. They are abundant fn the last week Of this

month when the water temperature is t3 t0 I5@C and terminate their spawning migration in mid-Novem-

her when the waler temperature is 9 to I0''C

(3) Of the spawning kokanee caught at Lake Shikotsu for the years from 1951 [o 1960, males were

abundant only in 1952 and 1955 and showed the ratio Of females t0 males 0f 100 : 142. In many other

years the predominance Of females was found and the sex ratio varied yearly. During their spawning

migration the kokanee were rich in males tn the early portion, ;n females at the peak and again in males

at the last,

;41 The spawning kokanee @n Lake Shikotsu are intermediate in the development Of breeding colora'

tion, as compared with the kokanee in other lakes. And the coloration ls considered tU be dependent

upon the fish size, that ls, upon the nutritive conditions 0f the habitats

I は し が 芦

ヒメ マスは,この魚の生息環境をも含めた生理・生態学的な基礎研究なしに,有効適切な資源管理を行うこと

はできない。この意味から, 上筋湖のとハマスの産卵回倣について,いくつかの問題を報告したい。

I 地区別の 探 補数

支街湖では,庄卵のため湖岸に回 淋してくるとメ マスを,湖畔のポ p ピ ナイ・ ビプイ・メ , 化場前の3地区 CF 収

りで採浦して, 人工採卵を行つている。3地区のうち,ポ p ピナイとピブイは,刺網によって採浦し,ふ化場

前では,ふ化場のポート波止場の人口CFlS . 2) に, 曳網 (Fig . 刃 を設置して採捕している。ここで,3地区

に おげる最近lo 年間の地区別採捕数をみると,Table l のよ 5になる。 北面L さけ・ます・ ふ化場研究業績第 l68 号

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北徳道さけ・ます・ ふ化場 :研究報告第 l6 弓

POrn 『 @r@nal

Taki nolle

Lake Shilnlsu i lpl)[

"@/@@@/4km//*Lake Shlkotsu

Fig. 1. Map Of Lake Shikotsu.

l0 年間の統計によると,ふ化場地区で,毎年,採捕数の

約, @を採捕し,ポロピナイとピプイで残りの'l, を採哺し

ている,

立た各地区の採捕数中に占めるpercent の傾向をみる

と,ふ化場前は,毎年約60% で安定している。この理中

は, ふ化場付近に天然産卵床の適地が多く,日 然に回折し

てくることが考えられる「また人為的には,ふ化場で採卵

から,ふ化放流まで行っているので,ふ化水がげい流とな

つて流れる,ふ化場付近に安定した回帰が経統してれわれ

ていることも考えられる,

ここで問題になるのは, ピプイ 地区である。 この地区は

l951 年からl954 年の4年間に,毎年,採捕数の約20oa を

採浦していた。その後,l955 年からl958 年の4年問に,毎年,約l0% に減少し,最近のl959 年, l960 年に Table 1. Number and percentage Of spawning kokanee caught at three areas

Uf Lake Shikotsu, 1951 to 1960. PipuiHatchery

TOtalArea

Year '" 2, 934668 @ 17.0上 5・ 661667.41951 2,650

6, 887l3 . 894768 ・ l1952 4,692

29 ・ 22, 45l48 ・ 01953

5, l23l4 ・ 775458 ・ 81954 4.0253,0l42, l83

l,248 ; l8.l 2o ・ 845467 . 81955 : 1,481

76294 @ l2.425. 362 ・ 34751956

2, 80Sl4 ・ 640932 ・ 8ラ 2・ 6 193921l, 475

l2 ・ 3I8 69.5 I 3,81314,52519571958 12,972S. 455 ・ 01959 | ?,138

9,3333・ 5 68.6 4,75l2,60l 6.403 この理由にっいて, ビプイ 地区で採哺した親伍を, l2km もはなれた対岸のふ化場に運んで,ふ化し放流する

ことに問題があると思われる。また刺網で採捕する親魚は,網にかかつた時すでにへい死しているものが多く

また網傷によつて,採卵にいたる立でにへい死するものも多い。したがって採捕数に対して,採卵に利用しうる

親魚はすくなく,稚魚放流への効率が悪いので, このようなことの年人の繰返えしが,てい減の原因となること

も老 えられる。今後は, ビプイ地E と, ふ化場地区のとメ マスの調査を行い,その結果にもとずいて, ビプイ地

区のとハマス資源管理に改良した力法を考えるべきである 5 ,

H 回旋と表面水温

前述の上5@ir 支埼湖では,湖畔に回淋してくるとメ マスの親魚を, ポロピナイ, ピ ブイの3地区で

採捕している,これら3地区における採浦期間中の毎日の採浦数の合計と, 湖の表向水温の推移を Fig . 4 1Cこ示、

F巾 . 4 からとメ マスは,ln 月初旬に湖岸に回湖してぎているー回湖初期の表面水温の最低は l3 。C , 最高は

l7 。じで,5-lf 。C の範囲が多いようである, l960 年の秋は,例年より約l週間おくれて回湖L,てぎた。このよ

うに遅れることは珍らしい現象である。 回伽の遅れたことにっいて,湖水温が高く, 性栗の発達をエ くせいした

ことも考えられる。しかし表面水温のみの資料からは,Table 2). のようにl960 年の夏から秋にかげて,例年よ

り高水温であったとは考えられない。

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ヒメ マスの研究― w

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北海道さけ・ます・ ふ化場 :研究報告第 l6 耳

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ヒメ マスの研究― W

Table 2. MOnthly mean temperature Of surface water tn oC, Lake Shikotsu Feb. Mar. Apr. May June July Aug. Sept. Oct. NOv. | Dec.

1954

3.32.32.55.510. 士三 t7766D9.5 3 16.0 20. 5 20.122. 4 ll0000・・ o95r5も久 50ゥi 三久 00e33.4 2.7 3.54.34.5 6.4 11.0 15.2 19.0 18.8 14.8 9.9 5.23.4 2. 3 2. 71955

1956

ヨ. 7 2. 8 3. 0 4. 4 6. 3 10 . 5 l7 . 2 20 . 4 l8 . 0 l4 . l ・ 9・ 6 5・ 81957

3.6 3.7 3.6 5.0 6.9 ! 11.8 17.8 21.1 , 18.7 13.7 9.9 5.81958

3. 3 ・ 3.4 3.9 4.8 6.41959

2.9 ' 2.4 2.8 4.2 5.7 しかしTable 3・に見られるように, l9fin 年における土筋湖畔の年降水量はl355mm で,これは最近のlQ 年-

間では最少であった,降水量の減少は,湖水位にも影響して,平年より約Table ・ 3. Annual total preci-

lm 低水位であった。降水量の減少から低水位を起し, これがとメ マスのpitation, Lake Shikotsu (Ta.-

産卵回波の遅れの要因の―つになったと考えるまでには,今後の精細な調kinoue), From data supplied査にまつべぎである。by Oji Paper C0., Ltd.

l960 年の秋に降水量がすくなかつたために.翌年の冬に湖畔のけい流水 は減少し,したがって支坊湖のふ化水も極度に不足した。そのため,支街

Year 湖ふ化場に収容していたとメ マス卵を,湖畔から約20km はなれた千歳ふ

化場へ運んで,ふ化させ再び立筋湖へ放流した。このようなことは,半世19511952 l,372l,578紀以上の問も作業を行ってきた支筋湖ふ化場として, 珍らしい現象であっ1953 I 1,673

ナー@つ

l, 6801954

l, 9031955次に回断の盛期は, l0 月 l0 日頃から25 H 頃までで,その期間の表面水

l, 7821956温ゆ13-l5 。C である。 盛期をすぎると湖岸で産卵行動に人ったものが,

2, 0521957

1958に入らなくなる。この頃になると,湖の産卵床で天然の産卵行動に入るか1959

らである。 回湖初期の表面水温の範囲は広いが,終期ほ大体期日も表面水 温も―定している「

W 親魚の雄雄組.成

立後湖ふ化場で採卵のため採捕した親魚の性比は Table4 .に見られる通りである。 これによると195l 年か

ら l960 年までの統什では,l952 年と l955 年のみが雄は雌より多く, その性比は早 : S. l00: l42 と同―であ

Table 4. Number and sex ratios Of spawning kokanee caught during October

to NOvember in Lake Shikotsu Sex i?(100) ratio : ofS To向 lMaleY eaL

Female

l00 : 30 ・ 53, 934 l920づ , 0l41951

l00 : l42 ・ I6, 8874, 0422, 8451952

100 : 97. 38, 3864, l354, 25l1953

l00 : 28 ・ 95, l23l, l503・ 9731954

100 : 141.72, l83l, 2809031955

100 : 32.87621885741956

l00 : 80 . 32, 8051,249l, 5561957

l00 : 24 ・ 220,4943, 99l16, 5031958

l00 : 45 ・ l12,9724, 03 ヨ8, 9391959

l00 : 29 . 59, 3332・ l267, 2071960 131

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北海道さけ・ます・ ふ化場 :研究報告第 lf 牙

つた,そのほかの年は,反対に雌が雄より多く,しかもその性比は,年によって非常にことなり,―般的傾向を

のべることほできない,

ここで,支筋湖以外のとメ マス親魚の性比を, 信用できる資料によつて比較してみると, TalDle 5. の通りて

あ る。

Table 5. Sex ration 0f spawning kokanee in Lakes TOwada, Akan and Tsuta sex ? (100) ratio : 0fS Male Female l, 0361953 2.265TOwada 25 Akan

Tsuta 上述から- 般にとメ マスの親魚は,雌が多いといえる。しかし支筋湖の場台, 稀に雄の多い年がある,この川

由については,現在のところよくわからない。

次に産卵回漉中の性比の推移は,Fie.ure4.に雄のpercent として示した。これによると.初漁期に雄が多く

産卵回 湖の場台に, 雄が先に回漉してくることがわかる。これは雄性先熟のためで,産卵回淋の初期に雄の多、

ことは,サケやカラフトマスについても知られている「Klmsey (l95l) は, California におげるDOnner 湖の

ヒメ マスの産卵回栴について,蜘が先に回減してくることを観察して,次のようにのべている。。 l949 年口月

4 日に , 初めてとメ マスがあらわれ雄からなつていた。翌 11 月乃 5 日に刺網をかけて, 6 口に引きあげたところ,

地8尾と雌l尾が漁獲された。。

初漁期を過ぎると雌が多くなり,終漁期に再び雄が多くなつている。またl955 年のように雄の多い年は,消、

期の後半から急激に雄が多くなつてきている。

前述の産卵口湖中の性比の推移は,すでに大東・大久保(l949) が l94R 年から49 年にわたって観察した結果

と同―であつた。

V 繁殖期の色彩

ヒメ マスの休色は第二次性徴の―つとして,繁殖期に赤紅色に変る 。 Fie . ure 5. にヒメ マス親魚の色彩写真

なけい載した。これは,ほぼ生体時の色彩を表わしている。写真の標本は, l960 年の秋に,支筋湖で採捕した約

I万尾のとメ マス親魚の中では, 赤紅色が体全部にわたり,その色彩の範囲も多く,いわば色彩標本としては,

標準となるべきものであつた。休色は,はじめ背鰭,尾柄部が赤くなり,ついで体の前方に及んでゆくが,尾鰭

と頭部は呈色しないー体の亦紅色になる範囲は,写真に見h・れるように 雄の方が地より著しい。これは繁殖期に

吻端の形状が変り, 体の背部が隆起してくる,ほかの第二次性徴が,いずれも雌の方が雌より著しいことと同様

である。

また体色は,支筋湖で湖岸に初めて回減してくるl0 月初旬において.亦紅色の範囲も小で, 色彩も鮮でない

生殖腺の完熟する10 月下旬に色彩は最も鮮になる。その後,放卵や放精が行われるようになると,休色は次第

に灰口色がかる。これを通俗的に,サビがかかると呼んでいる。

ヒメ マスの休色が赤紅色になる程度は,湖沼による地方差異があり,また同―湖沼でも年によってことなる年

変化がある。 筆者はl95l 年からl957 年までの十和田湖, l959 年とl960 年の支坊湖, l953 年の阿寒湖,l954 年,

の蔦沼のと メ マス親魚を観察した。これらの中で,亦紅色の発達の最もいちちるしかつたのは,十和田湖,次い

で阿寒湖,支筋湖, 蔦沼の順であった。これは魚体の大ぎさと同順であり, 十和田湖の親魚の魚体重は.400 ―

600e ・ (l953-l957 年り , 土筋湖は260-300e. Cl959-l960 年), 蔦沼は200a. (l954 年) であつた。阿寒湖は

魚体の測定を行わなかつたが,十和田湖に次いで大きいことを観察した。

"L ‥□ on (l957) ・によると Canada の KO0tenay 湖のとメ マスは,同□湖沼内でも地域のことなるにつれて,

り人ささもことなり,繁殖期の色彩の発達は,魚体の大きいものほど著しいことが報ぜられている,したが

つて生 言 環境がとハマスに適してお・り ,成長がよく魚体の大きい湖のとメマスほど,親魚の繁殖期の色彩は著し

いといえる。

132

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ヒメ マスの研究 w

糸勺H 要

l. 上初湖のとメ マス親魚は,人エ採卵を行うために,湖畔の3地b<@で採捕している。各地区における採捕数の

推移をみると,ふ化場から約 l2km の対岸に位置するピプイ 地区は,近年減少の傾向にある,したがつて,その

資源管理の方法に, さらに調査改良すべき点があると思われる"

2. 立筋湖のとメ マス親魚は,例年l0 月初旬の去面水温l5-lf 。C の頃に 湖岸に来減し, ln 月卜旬のl3-15 。 C

の頃に最も多く,H 月中旬の9-l0 。C の 頃に終る 。

3. 土街湖で採卵のため採捕したとメ マス親魚の雌雄組成は, l0 年間の統計で, 2 年のみ雄が多く,その性比は

十 : S. l00: l42 で同―であつた。そのほかの年は,雌が多く,性比は―定していなかつた。産卵回湖時の雌雄

組成の推移は,初期に雌が多く,盛期に雌が多くなり,終期に再ぴ雄が多くなつている。

4. 支筏湖におげるとメ マスが繁殖期に呈する色彩の発達は,ほかの湖のものと比較して中位である。 色彩の発

;至は , 魚体の大きさ,ひいては生思環境の栄養状態に関係があると思われる。

献文

大東信―・大久保正―u949) . 支勿湖におげるとメ マスの生態l. 水隅報 4, 76-78 ・

Kim ばy, J. B . (l95l) . NOtes On kokanee Spawning in DOnner Lake , CaMorn@a , l949 ・ CaHf ,nia F ね h

"nd Game 37 , 273-279 .

ve 「 non , E . H . (l957) . MOrFhometric compariSonofth 「 cerawSofkokanee (Owo? ,ん)wC んMs%g@ ,んd) with@n

a large British COlumbia Lake. J. Fish. Res. Bd. Canada, 14, 573-598

133

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ヒメ マスの研究― w

Fi9 ・ 2 Shikotsu-k0 Hatchery's boat pier

Fig. 3. Tied bag seine which was set at boat pier,

135

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北海道さけ・ます・ ふ化場 ;研究報告第 l6 号

L

Fig. 5. KOkanee ;n spawning condition. Upper photograph : male, NOvember ?, 1960

1ower photograph, female, October 21, 1960, scale I0 cm. KOdak KOdacolor.

136