UNITROL 5000励磁システム中型及び大型同期機用

No. 3BHT 490 300 R0101

2

UNITROL 5000 システムの概要

UNITROL 5000はABB社励磁システムUNITROLシリーズの最大出力、最上位の製品で、マイクロプロセッサベースの最新技術を採用して設計されています。ABB社は半導体式電圧調整装置で40年の経験及びマイクロプロセッサベースの電圧調整装置で15年以上の経験を有しています。UNITROL 5000はこの設計、製造、使用実績で培われた技術に基づいて開発されています。

適用

・ 静止形励磁装置（SES）、電源：50 Hz、60 Hzまたは16 2/3 Hz、界磁電流：1,000ADCから10,000 ADC以上まで

・ 自動電圧調整装置（AVR）、励磁機に使用、電源：16 2/3 Hzから 400 Hzまで

電圧調整装置の特徴

二重電圧調整装置システム

・ 予備電流調整装置を有する二重チャネルシステム

入力のディジタル処理

・ 三相電圧測定

・ 三相電流測定

・ 入力値を信号プロセッサでディジタル処理

機能の拡張

・ 機能の拡張はソフトウエアで実行、

ハードウエアの追加が不要

入出力の拡張

・ シリアルバスARCnetの採用によって、必要数を容易に追加可能

・ バイナリ及びアナログ

事象及びエラーログ

・ リアルタイムスタンプ付き

・ リモート検索が可能

整流器部の特徴

予備整流器

・ 整流器は最大 8台パラレル接続が可能・ 予備整流器は電圧調整装置の構成とは完全に独立して

構成

インテリジェント整流器

・ 整流器間の電流をアクティブ均等化・ 4象限動作(逆励磁電流可能)・ サイリスタ電流監視

・ ファン制御及び監視

・ ヒューズ、整流器温度及び冷却空気流の監視

・ ブリッジ電流表示

コミュニケーション

・ 上位レベル制御システムで通常使用されている

プロトコルに対応

・ 制御室に操作パネルを追加設置可能、

最大距離：数百m・ 調整点検ツール（CMT）によるリモート診断機能（PCAnywhere及びモデムを経由）

電圧調整装置 AC界磁遮断器

整流器部 界磁フラッシング

図 1 UNITROL 5000システムのモジュール構成

3

UNITROL 5000 システム構成

UNITROL 5000はモジュールユニットを組み立てて構成されています。型式試験で検証されたモジュールユニットがシステムの80 %以上を構成しています。そのため、高品質を保証し、短期間で納入することが可能です。整流器部は1台または複数台のサイリスタ整流器、ACまたはDC界磁遮断器、界磁フラッシング回路及びクロウバーを有するソリッドステート励磁遮断システムで構成されています。

後備電流調整装置による利用信頼度の向上

電圧調整装置（AUTO）及び励磁電流調整装置（MAN）に加えて、後備電流調整装置を装備することができます。こ

の後備電流調整装置は電源、測定及びゲート制御回路を有

する独立装置で、励磁システムの利用信頼度をより向上さ

せます。待機中の調整装置は追随制御を行っているため、

運転中の調整装置に故障が発生した場合、待機調整装置へ

スムースに切り換えることができます。

内部バスARCnetによる配線の減少

電圧調整装置、整流器部及びインターフェース機器などの

システム内のデータ交換はシリアルバスARCnetを経由して行います。

インターフェース機器、操作パネルは光リンク経由で数

kmの距離まで設置し、操作することができます。

図 2 電圧調整装置部及び整流器部の標準構成、S5T、D5E、A5S、Q5Tなど任意に組合せが可能

AVR： 電圧調整装置（AUTO）、界磁電流調整装置（MAN）付き

BFCR： 後備界磁電流調整装置

高出力、高信頼性の整流器

UNITROL 5000には、DCS 500シリーズのコンパクト整流器またはUNL 13300、Verithyr P1形整流器を使用します。整流器の形式と並列台数は界磁電流値、

頂上電圧及び最大負荷サイクルの仕様に基づいて決定

します。

次のオプションを用意しています。

・ 自冷または強制冷却

・ 予備ファン

・ 5極断路器（システム運転中に整流器点検が可能）

整流器間電流の均等分布

並列整流器構成では、作動中の整流器間の電流分布を

監視、調節する機能を搭載しています。この機能に

よって、不平衡電流による整流器の過負荷を防止し、

整流器の故障発生率を大幅に下げることができます

（5頁図 3参照）。

4

UNITROL 5000 ソフトウエア機能

標準搭載プログラムは構造化ソフトウエアです。励磁システムの高信頼度、安定運転に必要な調整、保護・監視機能、システムの診断、点検を行うための詳細事象、データログ機能のほとんどが標準搭載されています。

標準プログラム機能

標準プログラムは次の機能を搭載しています。

電圧調整装置機能

・ 電圧調整装置、PIDフィルタ付き（AUTOモード）・ 界磁電流調整装置、PIフィルタ付き（MANモード）・ 無効または有効電力補償

・ リミッター

- 最大・最小界磁電流- 最大電機子電流（進み、遅れ）- P/Q低励磁- V/Hz特性

・ 追従制御

- チャネル 1 - チャネル 2間 （二重自動チャネルシステム）- 作動チャネル - バックアップ装置間 （バックアップ調整装置付きシステム）- 動作モードAUTO - MAN

・ 力率・無効電流調整

・ 並行運転電圧制御

・ 手動制限

・ 電力システム安定調整機能（オプション）

- IEEE - PSS2Aに基づく方式- アダプティブ電力システム安定調整機能- マルチバンド電力システム安定調整機能

保護・監視機能

・ 界磁フラッシング時間

・ 過電流保護（瞬時及び反限時）

・ V/Hz保護・ 励磁喪失保護

・ 整流器温度

・ 回転子温度

・ 回転ダイオード監視

・ サイリスタ導通監視

・ 整流器ヒューズ監視

・ 整流器ファン監視

・ 測定コンバータ監視

各保護・監視機能は次のいずれかのレベルで動作します。

・ 警報のみ

・ 二番目のチャネルまたはバックアップ整流器に切換え、

または冗長整流器の使用

・ 励磁を瞬時停止して、装置を保護

制御機能

標準シーケンス及びインターロックは固定プログラム機能

ブロックによってソフトウエア構成されています。プログ

ラマブル機能ブロックによる拡張も可能です。

データの記録

事象レコーダ（障害ロガー）によって、最大100件の事象と警報をリアルイムスタンプを付けて保存できます。この

記録は操作パネルかCMTツールから読取り、解析することができます。

最大 6件の測定値信号をリアルタイムにデータレコーダ（データロガー）に保存できます。この記録データはCMTツールでグラフ表示し、この表示から診断を行うことがで

きます。

プロセッサ監視

自動試験

電源が投入されると、プロセッサは自動試験を実行しま

す。さらに、各電源電圧レベルを監視します。

ウォッチドッグ機能

プロセッサ基板はプログラム実行を監視する内部ウォッチ

ドッグ機能を備えています。

5

UNITROL 5000拡張ソフトウエア機能

アプリケーションプログラムの拡張、またはソフトウエア機能（オプション）の追加によって、励磁システムの機能を追加することができます。この追加によって、顧客の仕様に最適のシステムを構成することができます。

アプリケーション機能ブロック

標準ソフトウエア機能に加えて、広く適用できる多くの機

能ブロックをアプリケーションプログラムとして用意して

います。

これらは入出力拡張、特定監視機能などの検証済みのアプ

リケーション手順です。

電力システム安定機能PSS

電力システム安定機能は励磁によって負荷振動を減衰し、

発電機と送電システム全体の安定性を向上します。PSSはAVRの入力を制御します。静止形励磁システム及び励磁機システムに適用できますが、静止形の場合に特に効力を発

揮します。

次の 3種類の電力システム安定機能を用意しています。

IEEEに基づくPSSIEEE PSS2Aによる電力システム安定機能は固定パラメータと可変進み・遅れフィルタによって最適減衰を行いま

す。発電機及び励磁システムデータ、さらに変圧器及び系

統リアクタンスを使用し、計算ソフトウエアによってパラ

メータを決定します。

アダプティブ電力システム安定機能APSSアダプティブ電力システム安定機能は、動作点の連続計算

と電力系統の現時点の状況で設定される変動パラメータに

よって動作します。ハードウエアを追加する必要はありま

せん。

マルチバンド電力システム安定機能MBPSSマルチバンド電力システム安定機能は、進み・遅れフィル

タ1個の代わりに、個々に調整が可能な動作帯域を3個有し、標準的な 0.05 - 4.0 Hzの全周波数領域で効果的に動作します。3個の帯域は低、中及び高周波数の電気機械振動を減衰させます。

回転ダイオードの監視

この監視機能によって、ブラシレスシステムに使用されている回転ダイオード回路に発生した断線、短絡を広範囲の回転速度にわたって検出することができます。ソフトウエア監視機能によって、励磁電流信号から励磁機周波数の高調波を計算し、励磁電流に関係する振幅から分岐回路の断線と短絡を識別します。

図 3 整流器間電流の均等化

AVRからのサイリスタトリガパルス

電流分布均等化接続回路

6

UNITROL 5000 コミュニケーション

今日では、励磁システムは上位制御システムと容易に接続し、試運転調整と操作が容易に実行できることが重要になっています。UNITROL 5000には、複数のヒューマンマシンインターフェース及び上位制御システムとのコミュニケーション用のバスカプラーが用意されています。

コミュニケーション

操作パネルSPAはRS485インターフェースを通して励磁システムと接続します。システム機能、システムパラメー

タ、測定値、警報などがテキスト形式で4行ディスプレーに表示することができます。励磁システムは押しボタンで

操作します。

制御パネルLCP（小型励磁システムの場合は、オプション）はローカル及びリモート操作用で、ARCnetバスを経由して励磁システムと接続します。この LCPから、励磁システムの制御、実際値及び事象の表示を行うことができま

す。

調整点検用光リンク

調整点検ツール CMTを搭載した PCを光リンク経由でUNITROL 5000システムに接続できます。このリンクを通して、励磁システムと高速、高信頼度のコミュニケー

ションを行うことができます。

上位制御システムとの統合

励磁システムと上位制御システム間のコミュニケーション

は、DDCSインターフェースに光リンクで接続したバスカプラーを通して行います。

標準プロトコルMODBUS、MODBUS+、Profibus、AF100に対応し、制御及びデータ転送を行います。

リモート診断

モデムと必要なリモートアクセスソフトウエアを搭載した

PCを経由して、スイスABB社から励磁システムにアクセスし、リモート診断を行うことができます。

ABB社専門エンジニアが直接パラメータを読み取り、変更を行い、さらに事象記録を読み取り、解析することがで

きます。

リモート診断

発電所

励磁システム

CIN： 整流器

バイナリ・アナログ I/O

電圧調整装置

図 4 UNITROL 5000システムの制御及び監視コミュニケーションレベル

7

UNITROL 5000 ソフトウエアツール

UNITROL Fシステムと同じソフトウエアツールをUNITROL 5000システムに使用します。これらは設計ツールGAD及び調整点検ツールCMTで、多くの使用実績があるすぐれたソフトウエアツールです。

設計ツールGAD

グラフィックアプリケーションデザイン（GAD）はアプリケーションプログラミング用のPCソフトウエアツールです。このツールは次の機能を有しています。

・ 標準機能拡張用のアプリケーションプログラミング

・ プログラム文書の作成、変更用のグラフィック

エディタ

・ 文書のレイアウト定義

・ 新文書シンボルの生成

GADで作成したアプリケーションプログラムは調整点検ツールCMTで励磁モジュールにダウンロードします。

調整点検ツールCMT

このツールによって、アプリケーションプログラムの変

更、システム機能の監視及びパラメータ設定値の変更を行

います。表示スクリーンから、システムの制御、制御状況

の監視を行います。このツールは下記の機能を有していま

す。

グラフ表示ウィンドウ

・ 最大 6点のアナログ信号をリアルタイムにグラフ表示が可能（図 5）

・ システム内の信号はすべて表示対象として

選択が可能

・ 信号の選択、パラメータ設定による拡大縮

小と補正を行う、使いやすいメニュー

アプリケーションプログラム表示ウィンドウ

・ GADで作成した機能ブロック図を表示（図 6）

・ 選択した設定点のリアルタイム値を表示

パラメータ及び信号表示ウィンドウ

・ パラメータと信号の変化を表形式で表示

・ パラメータまたは信号を選択してグループにまとめ、

グループとして処理が可能

その他の表示ウィンドウ

・ 事象ログ表示（Faults）、最近 100点の事象、警報を時系列に表示

・ データ記録表示（DLog）、6チャネル（各チャネル最大1000データ点）を表示

図 5 CMTツールのグラフ表示ウィンドウ

図 6 アプリケーションプログラムとパラメータの表示ウィンドウ

UNITROL 5000 励磁システムサポート

ABB Switzerland LtdStatic Excitation Systems, Voltage Regulatorsand Synchronizing EquipmentCH-5300 Turgi, SwitzerlandTel: +41 58 589 24 86Fax: +41 58 589 23 33Email: pes@ch.abb.comURL: www.abb.com/unitrol

カタログ番号：3BHT 490 300 R0101 発行：2003年 2月製品仕様は改良などのため予告なしに変更することがあります。

ABB株式会社東京都渋谷区桜丘町26番1号 〒150-8512セルリアンタワー電話： 03-5784-6016Fax： 03-5784-6275

ABB社はあらゆる定格、仕様に対する最適の励磁システムの設計、製造、納入と共に、多くのサポートを提供します。

追加装置励磁及び複巻変圧器、同期並列装置の納入

試運転調整励磁システムを最適動作させるための豊富な経験を持つエンジニアによる試運転調整

コンサルティング長年の経験に基づいて、励磁システムに関するあらゆる質問に対するコンサルティング

プロジェクト設計プロジェクトに適合した最適システムの設計、提案

技術サポート運転中の励磁システムの最適化、性能向上についてのアドバイス、提案

ホットライン励磁システムに問題が発生した場合に備えて、ホットライン +41 844 845 845を通して専門家による 24時間サポート

設置豊富な経験を持つ協力会社による設置

トレーニング励磁システムの操作、保守点検に関するトレーニングを運転保守要員に対してオンサイトまたはスイス工場で実施

リモート診断設置場所を問わず専門エンジニアによるサポート

サービス契約顧客の要求仕様に適合したサービス契約を結ぶことによって、問題が発生した場合に迅速なサポート

予備品契約に従って、故障部品、装置の代替品を長期間にわたって供給

システムシミュレーションABB社励磁システムを発電機と組み合わせた時の動作、最適構成設定についてシミュレーション