7
世界は原子力なしで回るのか ――― 「原子力」をリアルに考える 日本の原発は 54 基 Nuclear power after Fukushima WHAT S NEXT FOR NUCLEAR POWER ? 21 韓国 [ 主要国で稼働中の原発基数] 世界原子力協会 (WNA)の集計 ( 2 011年4月)をもとに作成 日本は日本原子 力産 業 協 会のデータ 104 米国 (基) 13 中国 54 日本 32 ロシア 20 インド 17 ドイツ 58 フランス 19 英国 〔現存する原発の数〕 発電能力 (MW) 202 2011 2005 2000 1995 1990 1985 1980 1975 1970 1 発注された年度と基数 4672 5 2841 4 4233 5 10242 11 31987 33 6537 7 15339 22 2820 7 チェルノブイリで事故があった1986年を機に、原発建設は冬の時代をむかえていた 「フクシマ危機」の衝撃で原子力の未来はどう変わるのか 今回の事故を受けて、先進各国では脱原子力の動きが活発化し、天然ガスなどの代替エネルギーへの移行が進むだろう。 塗り替わった世界のエネルギー地図を分析する。

about energy

Embed Size (px)

DESCRIPTION

about energy after 3.11 in Japan.

Citation preview

Page 1: about energy

世界は原子力なしで回るのか ―――

「原子力」をリアルに考える

日本の原発は 54 基

Nuclear power after Fukushima

WHAT’SNEXTFORNUCLEARPOWER ?

21韓国

[主要国で稼働中の原発基数] 世界原子力協会 (WNA)の集計(2011年4月)をもとに作成日本は日本原子力産業協会のデータ

104米国

(基) 13中国

54日本

32ロシア

20インド

17ドイツ

58フランス

19英国

〔現存する原発の数〕

発電能力 (MW)

202

201120052000199519901985198019751970

1

発注された年度と基数

4672

5

2841

4

4233

5

10242

11

31987

33

6537

7

15339

22

2820

7

チェルノブイリで事故があった1986年を機に、原発建設は冬の時代をむかえていた

「フクシマ危機」の衝撃で原子力の未来はどう変わるのか

今回の事故を受けて、先進各国では脱原子力の動きが活発化し、天然ガスなどの代替エネルギーへの移行が進むだろう。

塗り替わった世界のエネルギー地図を分析する。

Page 2: about energy

source ; IEA, IAEA, WNA / FINANCIAL TIMES

40.9%

21.3 %

15.9 %

5.5%

石炭

ガス

水力

13.5 %原子力

原油

世界の電力の供給源はなにか?2.9%その他

4,344 (1,000GWh)

3,495

1,075 1,038

830

631570

444385

米国自然エネルギーなど

自然エネルギーなど

原子力

原子力

水力

水力

火力

火力

中国 日本 ロシア インド ドイツ フランス 韓国 英国

[主要国の発電電力量と電源構成]IEAの資料をもとに作成

(2008 年。構成比の小数点2位以下は四捨五入)

3.4 - -

5.971.4

19.311.8

3.361.4

23.52.1

11.29.6

77.10.3

0.765.0

34.04.7

1.380.4

13.62.8

7.166.1

24.015.968.1

15.7-

13.882.6

1.816.780.8

2.0(%)

原発が無くなったら、

どんな

原子力が供給するのは

74.3

1971 1980 1990 2000 2008

5,245,657

8,282,469

11,820,749

15,394,744

20,181,151[世界の発電電力量と電源構成] 自然エネルギー

など

原子力

総発電量

水力

火力

(GWh)

23.069.9

20.7 63.3

18.1 64.5

17.0

67.7

2.2

16.8

2.1

17.0

0.3

0.4

8.6

2.1

%

15.9 %

13.5 %

4.4 %

国際エネルギー機関(I E A)の資料をもとに作成。電源構成の合計は誤差などで100%になりません。

14%に過ぎない。

世界の電力の

なるのだろうか?世界に

3月11日の津波で甚大な被害を受けた

福島第一原発の状況は、一進一退、紆余

曲折を経て、制御化に置かれつつある。

しかし危機収束には程遠い。

数年かかると言われる浄化作業は、結局

数十年単位に長引くだろう。立ち入り禁

止区域が原発周辺に止まらない可能性も

ある。被曝量の多い作業員たちは、今後、

がんのリスクが高まるかもしれない。

Page 3: about energy

原発が無くなると

世界のCO₂排出量(国別排出割合)

アメリカ

21.1%その他

21.1%

中国

20.6%

ロシア

5.7%インド

4.6%日本4.5%ドイツ

3.0%

イギリス2.1%カナダ

1.9%

オーストラリア1.4%

フランス1.4%メキシコ1.6%

イタリア1.6%韓国1.7%

2006年

約273億トン二酸化炭素(CO2)換算

CO₂排出量

増大する!?

09 年、世界の発電所は90億tのCO₂を排出した。

原発は年間 20 億tの CO₂を削減できている。

もし原発を使用せず、その分を他の燃料で埋め合わせると、

発電による CO₂排出量は 110 億tになっていたはずだ。

20 億tは

ドイツと日本の

年間排出量の合計にほぼ匹敵する。

90億t

110億t

CO2排出量2009年 世界の発電所

原発アリ世界の発電所

原発ナシ

0

5

10

15

20

25

アメリカ 中国 ロシア インド 日本

日本一人当たり

ドイツ イギリス アフリカ

(%)

4.3 t/人

原子力発電所を廃炉にし、火力などの他の発電に頼った場合に増える排出CO2

21.1%20.6%

5.7%4.6%

3.0%2.1%

3.5%

19.3 t/人

4.3 t/人

11.0 t/人9.7 t/人 9.9 t/人 9.6 t/人

1.0 t/人

0

5

10

15

20

25

アメリカ中国 ロシア インド 日本

(%)

1.25 t/人

原子力発電所を廃炉にし、火力などの他の発電に頼った場合に増える排出CO2

19.0%

5.4%4.9%

6.8

3.9

10.4%

4.92 t/人

18.38 t/人

11.0 t/人9.02 t/人

4.39 t/人

22.3%

EU 世界平均

%

%4.5%

7.3%

アメリカ

19.0%

中国

22.3%

ロシア

5.4%

インド

4.9%

日本3.9%

イラン1.7%

ドイツ2.7%イギリス

1.7%フランス1.3%

フランス1.3%

メキシコ1.4%

イタリア1.5%

韓国1.7%

その他

22.3%

オーストラリア

サウジアラビア

1.4%

インドネシア

ブラ ジル 1.2%

1.3%

1.2%

二酸化炭素(CO2)換算

2008年約294億トン

国別一人当たりの二酸化炭素排出量をみると、日本人は中国人の約1.8人分、インド人の約7人分の二酸化炭素を排出しています。

国別一人当たりの二酸化炭素排出量では、先進国の排出量が多くなっていることが特徴です。

日本は、中国、アメリカ、ロシア、インドについで世界で5番目に多くの二酸化炭素を排出しています

20億t

日本一人当たり

Page 4: about energy

今後のエネルギー動向はどうなるのか?

World Energy Supply by Source.

Fin

al E

ner

gy (

EJ/

a)

年間エネルギー量

世界のエネルギー供給資源

The Ecofys Energy Scenario, December 2010

CO₂排出 CO₂排出なし

“The Energy Report 100% RENEWABLE ENERGY BY 2050” by WWF

原子力石炭天然ガス石油バイオ:藻バイオ:農作物バイオ:木材バイオ:家畜排泄物などバイオ:ゴミや廃棄物など水力地熱地球電気回路太陽熱集光型太陽熱タワー式太陽熱太陽光波力、潮力洋上風力風力

World Energy Supply by Source.

Fin

al E

ner

gy (

EJ/

a)

年間エネルギー総量

世界のエネルギー供給資源

The Ecofys Energy Scenario, December 2010

原子力石炭天然ガス石油バイオ:藻バイオ:農作物バイオ:木材バイオ:家畜排泄物などバイオ:ゴミや廃棄物など水力地熱地球電気回路太陽熱集光型太陽熱タワー式太陽熱太陽光波力、潮力洋上風力風力

Global energy provided by source and year (EJ/a).

年間エネルギー量(EJ/a)

年間世界エネルギー供給資源

45.7 60.0 71.9 85.7 103.5 127.4

洋上風力 0.2 1.4 6.7 14.3 22.0 25.3

風力 0.0 0.0 0.5 1.3 3.4 6.7

波力、潮力 0.0 0.0 0.0 0.1 0.3 0.9

太陽熱 0.0 0.1 0.7 6.5 16.9 37.0

集光型太陽熱 0.0 0.1 0.6 3.9 13.7 21.6

水力 7.9 11.3 13.4 14.4 14.8 14.9

地熱 0.1 0.3 0.7 1.7 3.4 4.9

バイオマス 0.0 0.0 0.0 0.0 1.7 16.2

石炭 18.2 21.5 14.8 10.0 5.4 0.0

天然ガス 8.6 14.0 25.6 28.3 20.1 0.0

石油 4.2 3.1 2.5 1.4 0.5 0.0

原子力 6.5 8.2 6.5 3.8 1.2 0.0

産業用燃料排出熱量 (EJ/a) 63.7 79.1 82.3 74.6 63.0 59.0

集光型太陽熱 0.0 0.0 0.1 0.4 2.6 8.8

地熱 0.0 0.1 0.2 0.6 1.6 2.9

バイオマス 1.0 6.1 16.9 31.3 40.7 34.8

化石燃料 62.7 72.9 65.0 42.2 18.0 12.5

家庭用燃料排出熱量 (EJ/a) 77.7 86.0 87.4 67.8 47.4 24.1

太陽熱 0.0 0.7 3.3 11.9 16.0 12.6

地熱 0.2 0.5 1.5 4.1 10.5 8.4

バイオマス 33.4 33.2 29.2 14.2 10.2 3.1

化石燃料 44.1 51.6 53.5 37.6 10.6 0.0

交通機関用燃料 (EJ/a) 86.2 102.6 111.6 91.3 62.3 50.8

バイオマス 0.7 4.8 12.9 29.7 45.7 50.8

化石燃料 85.5 97.8 98.8 61.7 16.6 0.0

合計 (EJ/a) 273.4 327.6 353.3 319.4 276.2 261.4

“The Energy Report 100% RENEWABLE ENERGY BY 2050” by WWF

発電機使用汽力発電 火力発電 · 原子力発電 · 地熱発電 · 太陽熱発電 · 海洋温度差発電

火力発電 内燃力発電 · コンバインドサイクル発電 · 廃棄物発電

水力発電 揚水発電 · マイクロ水力発電

海洋発電 波力発電 · 潮力発電 · 海洋温度差発電 · 海流発電

風力発電 陸上風力発電 · 洋上風力発電 · 浮体式洋上風力発電 · 凧型風力発電

その他 冷熱発電 · 人力発電 · 炉頂圧発電

発電機不使用燃料電池発電 · 太陽光発電 · 宇宙太陽光発電 · MHD発電 · 熱電発電 · 振動発電

現在の発電方法一覧

Page 5: about energy

Global energy provided by source and year (EJ/a).

年間エネルギー量(EJ/a)

年間世界エネルギー供給資源

45.7 60.0 71.9 85.7 103.5 127.4

洋上風力 0.2 1.4 6.7 14.3 22.0 25.3

風力 0.0 0.0 0.5 1.3 3.4 6.7

波力、潮力 0.0 0.0 0.0 0.1 0.3 0.9

太陽熱 0.0 0.1 0.7 6.5 16.9 37.0

集光型太陽熱 0.0 0.1 0.6 3.9 13.7 21.6

水力 7.9 11.3 13.4 14.4 14.8 14.9

地熱 0.1 0.3 0.7 1.7 3.4 4.9

バイオマス 0.0 0.0 0.0 0.0 1.7 16.2

石炭 18.2 21.5 14.8 10.0 5.4 0.0

天然ガス 8.6 14.0 25.6 28.3 20.1 0.0

石油 4.2 3.1 2.5 1.4 0.5 0.0

原子力 6.5 8.2 6.5 3.8 1.2 0.0

産業用燃料排出熱量 (EJ/a) 63.7 79.1 82.3 74.6 63.0 59.0

集光型太陽熱 0.0 0.0 0.1 0.4 2.6 8.8

地熱 0.0 0.1 0.2 0.6 1.6 2.9

バイオマス 1.0 6.1 16.9 31.3 40.7 34.8

化石燃料 62.7 72.9 65.0 42.2 18.0 12.5

家庭用燃料排出熱量 (EJ/a) 77.7 86.0 87.4 67.8 47.4 24.1

太陽熱 0.0 0.7 3.3 11.9 16.0 12.6

地熱 0.2 0.5 1.5 4.1 10.5 8.4

バイオマス 33.4 33.2 29.2 14.2 10.2 3.1

化石燃料 44.1 51.6 53.5 37.6 10.6 0.0

交通機関用燃料 (EJ/a) 86.2 102.6 111.6 91.3 62.3 50.8

バイオマス 0.7 4.8 12.9 29.7 45.7 50.8

化石燃料 85.5 97.8 98.8 61.7 16.6 0.0

合計 (EJ/a) 273.4 327.6 353.3 319.4 276.2 261.4

“The Energy Report 100% RENEWABLE ENERGY BY 2050” by WWF

発電機使用汽力発電 火力発電 · 原子力発電 · 地熱発電 · 太陽熱発電 · 海洋温度差発電

火力発電 内燃力発電 · コンバインドサイクル発電 · 廃棄物発電

水力発電 揚水発電 · マイクロ水力発電

海洋発電 波力発電 · 潮力発電 · 海洋温度差発電 · 海流発電

風力発電 陸上風力発電 · 洋上風力発電 · 浮体式洋上風力発電 · 凧型風力発電

その他 冷熱発電 · 人力発電 · 炉頂圧発電

発電機不使用燃料電池発電 · 太陽光発電 · 宇宙太陽光発電 · MHD発電 · 熱電発電 · 振動発電

現在の発電方法一覧

Page 6: about energy

伊豆諸島

鳥島

小笠原諸島

硫黄島

南硫黄島

沖ノ鳥島

沖大東島

琉球諸島

南西諸島

薩南諸島

南鳥島

世界第6位 排他的経済水域

浮体式洋上風力発電日本は世界第 6位の排他的経済水域(EEZ)を持つ海洋国家であるため、洋上風力発電には大きな可能性がある。

0

100

200

300

400

500

600

700

800

万㎢

762

701

UNITED

STA

TES 541

483 470447

AUST

RALIA

INDNES

IA

CANAD

A

NEW

ZEAL

AND

JAPA

N

Page 7: about energy

伊豆諸島

鳥島

小笠原諸島

硫黄島

南硫黄島

沖ノ鳥島

沖大東島

琉球諸島

南西諸島

薩南諸島

南鳥島

世界第6位 排他的経済水域

浮体式洋上風力発電日本は世界第 6位の排他的経済水域(EEZ)を持つ海洋国家であるため、洋上風力発電には大きな可能性がある。

0

100

200

300

400

500

600

700

800

万㎢

762

701

UNITED

STA

TES 541

483 470447

AUST

RALIA

INDNES

IA

CANAD

A

NEW

ZEAL

AND

JAPA

N

緊張係留型浮体(TLP)風力発電三井造船も研究する、海底油田の採掘などで実績がある緊張係留型浮体(TLP)。半潜水型浮体をスチールパイプなどのテンドン(垂直緊張係留ライン)で海底基礎につなぐもので、特に安定性に優れる。出典 /inhabitat.com

陸上よりも洋上の方が風況がよく設備利用率が高いが、日本の海は地形的に着床式の適地が少ない。洋上の風力資源を活用するには浮体式風力発電の開発がカギになる。カーボンファイバーで作ってあるので、海に浮かす事が可能。発電コストは太陽光より安いとみられている。画像提供/九州大学 SCF 研究会

「風レンズ風車」を採用。六角形浮体の内水面を魚の養殖いけすに使ったり、浮体の外縁に波力発電装置を備えたりするなど、複合的な海洋エネルギー基地としての活用を目指す。九州大学の研究チームが計画する直径 60m の浮体と 2 機の100kW 風車による実証実験の想像図。風車は効率性に優れた「風レンズ風車」を採用する画像提供/九州大学 SCF 研究会

緊張係留型浮体(TLP)風力発電を研究する三井造船。既に 2400kW 級の概念設計で暴風時の係留機能などを確認済みという画像提供/三井造船

浮体式洋上風力発電

 中長期的に見ると、日本で最も可能性があるのは浮体式。東京大学の鈴木英之教授は、「日本近海は海底が急に深くなるため、浮体式の開発が重要になる」と言う。日本風力発電協会の試算では、洋上風力の導入可能量 6800 万 kW のうち、浮体式が 3900 万 kW を占める。これは原子炉 30 ~ 40 基分に相当する。発電コストは太陽光より安いとみられている。 既にノルウェーでは 2000kW 級の浮体式の実証実験を 2009 年夏に始めており、日本はここでも「周回遅れ」。だが、ここに来て開発に動きが出てきた。模型による室内実験の段階は終わり、いよいよ実海域での実証段階に入ってきたのだ。

日本近海は急に深くなるため、浮体式の開発が重要