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図 1 BAR ドメインタンパク質の分子集合モデル。 BAR ドメインは、突起(糸状仮足と膜状仮足を含む)及び、ミクロン以下のスケール嵌入部(例えばクラスリンで被覆した穴とカベオラ)のポリマーとして機能します。クラスリン被覆小孔とカベオラのための典型的大きさは、それぞれ、直径 100-200nm と、直径 50-100nm です。 BARドメインは、 3-6nm の直径の 20-25nmの弧として近似できます。 膜の厚さは、一般的におよそ 5nm です。
図 2 脂質膜上での脂質膜の形態形成を行うタンパク質の集積のモデル。膜結合タンパク質(黄)タンパク質は脂質膜 ( ワイヤーフレームで表示 ) の微細構造に対するナノスケールの鋳型となる。また、アクチン細胞骨格(ピンク)は膜構造を大まかに支えると考えられます。
図 3 細胞膜の概略図。 各々の脂質分子は、 1 つの親水性頭と 2 つの疎水性脂肪酸尾から成ります。 頭部(例えばセリン、エタノールアミンなど)といろいろな飽和度の脂肪酸(例えばパルミチン酸(飽和)、オレイン酸(不飽和)、など多数)の組合せの種類が、あります。
研究・教育の 概要
細 胞 膜 は 細 胞 の 内 外 を 区 切 り 、 細 胞 が 生 命 と し て 成 り 立
つ た め に 必 要 不 可 欠 な 構 造 物 で す 。 細 胞 膜 は 、 細 胞 の 受 け
る 様 々 な 刺 激 を 受 容 す る た め に 重 要 で あ る と 思 わ れ ま す 。
し か し 、 そ の 細 胞 膜 と そ の 結 合 タ ン パ ク 質 の ど の よ う な 組
み 合 わ せ が 、 細 胞 を 形 作 り 、 ま た 、 刺 激 に 対 す る 応 答 を 可
能 に し て い る の か 、 不 明 な 点 が 多 く 残 さ れ て い ま す 。 我 々
の 研 究 室 は 、 増 殖 と 形 態 的 な 変 化 に お い て 細 胞 膜 を 細 胞 内
シ グ ナ リ ン グ に 接 続 し て い る 膜 結 合 性 タ ン パ ク 質 を 研 究 し
ま す 。 細 胞 膜 を 構 成 す る 脂 質 分 子 の 性 質 も ま た 、 膜 結 合 性
タ ン パ ク 質 を 使 っ て 調 べ ら れ ま す 。 脂 質 分 子 の 性 質 に は 、
親 水 性 の 頭 部 の 多 様 性 の ほ か 、 脂 肪 酸 の 飽 和 ま た は 不 飽 和
が 含 ま れ ま す 。 特 に 脂 肪 酸 の 性 質 は 、 栄 養 学 的 に は 注 目 さ
れ て い ま す が 、 そ の 細 胞 内 シ グ ナ リ ン グ へ の 接 続 様 式 は 明
ら か で は あ り ま せ ん 。
主 な 研 究 テ ー マ
1 ) 細胞膜の形態を形成するタンパク質と細胞膜の形態に依存した細胞内シグナル伝達、特に細胞のがんとの関連
重 要 な 疾 患 で あ る 癌 形 成 や さ ま ざ ま な 疾 患 に お い て 、 細 胞
の 形 態 変 化 が 伴 い ま す 。 細 胞 の 分 化 、 初 期 化 に お い て も 同
様 で す 。 し か し 、 脂 質 膜 の 結 合 タ ン パ ク 質 が ど の よ う に 変
化 、 あ る い は 活 性 制 御 を 受 け 、 ク ラ ス リ ン 被 覆 小 孔 、 カ ベ
オ ラ 、 フ ィ ロ ポ デ ィ ア 、 ラ メ リ ポ デ ィ ア 、 ポ ド ソ ー ム な ど
の 細 胞 小 器 官 の 形 成 に 異 常 が 生 じ 、 こ の よ う な 細 胞 の 形 態
変 化 が 生 じ る か に つ い て は ほ と ん ど わ か っ て い な い と 言 っ
て よ い と 思 い ま す 。 本 研 究 室 で は 、 こ れ ま で 研 究 し て き た
BAR タ ン パ ク 質 な ど の 膜 結 合 性 タ ン パ ク 質 や 脂 質 膜 の 裏 打
ち と し て 広 く 存 在 す る ア ク チ ン 細 胞 骨 格 に よ る 細 胞 構 造 構
築 と そ の 細 胞 内 シ グ ナ リ ン グ に お け る役割を 明 ら か に し ま
す 。 膜 結 合 性 タ ン パ ク 質 に よ る 膜 の 形 態 形 成 の試験管内 で
の再構 成 を 行 い 、 つ い で 、再構 成 に よ り得ら れ た知見と 細
胞 機 能 の相関 を 調 べ ま す 。
2) 脂質結合タンパク質の探索と構造機能解析ゲノ ム の解読が進んだ現在 に お い て も 、ゲノ ム に 直 接記述
さ れ て い な い 脂 質 や 脂 質 膜 の役割と 形 態 形 成 は 、全貌す ら
明 ら か で あ り ま せ ん 。 脂 質 や 脂 質 膜 は タ ン パ ク 質 に よ っ て
制 御 さ れ て い る はずで す 。 で す が 、 脂 質 結 合 タ ン パ ク 質 の
全体像は 明 ら か に さ れ て い ま せ ん 。新し い 脂 質 結 合 タ ン パ
ク 質 を 同定し て い く こ と で,脂 質 お よ び 脂 質 膜 の新た な 作
用機序、 形 態 形 成 機序の 同定を 目指し ま す 。
3) 細胞膜における脂肪酸の飽和度の重要性
細 胞 膜 を理解す る た め の も う 一 ポ イ
ントは 、 脂 質 の 脂 肪 酸 の 重 要 性 で す 。
栄 養 分 の中の 飽 和 で あ る か 不 飽 和 脂 質
の 重 要 性 が よ く知ら れ て い ま す 。 し か
し 、 こ の 重 要 性 は 、 細 胞 内 シ グ ナ リ ン
グ と し て 分 子 レ ベ ル で は理解さ れ て い
ま せ ん 。 我 々 は 、 脂 肪 酸 が ど の よ う
に 膜 結 合 性 タ ン パ ク 質 を と 結 合 し 、 癌
化 や そ の他の 細 胞 内 シ グ ナ リ ン グ に ど
の よ う に 関 わ っ て い る か 、 調 べ ま す 。
主 な 発 表 論 文 ・ 著 作
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分子医学細胞生物学
バイオサイエンス研究科
教授 :末次 志郎 :[email protected]助教 :塙 京子 :[email protected]助教 :西村 珠子 :[email protected]
http: //bsw3.naist. jp/suetsugu/
[15] Takenawa, T. and Suetsugu, S. Nature Reviews. Molecular Cell
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