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平成 18 年度 特別教育研究経費 「島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラム の構築 -島根大学から世界が見える教育の展開-」 中間成果報告書(平成 19 年度版) 平成 20 年 3 月 島根大学教育開発センター編 18 19 20 3

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平成 18 年度 特別教育研究経費

「 島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラム の構築 -島根大学から世界が見える教育の展開-」

中間成果報告書(平成 19 年度版)

平成 20 年 3 月

島根大学教育開発センター編

平成18年度  

 

特別教育研究経費

「島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラムの構築

島根大学から世界が見える教育の展開

」 

中間成果報告書(平成19年度版) 

平成20年3月 

島根大学教育開発センター編

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はじめに

「フィールドは,世界と自己を発見する場である」

 世界は生きた教材である。現実の世界は,正しく理解されさえすれば,われわれのものの考え方を

変えてしまうほどの力をもっている。正しく理解するためには,想像力と言葉が必要である。

本質的で普遍的なもの一般が,世界に存在するわけではない。世界に存在するものはすべて,また,

生起することはすべて,個別的で具体的である。正しく理解するには,個別的で具体的なものを通し

てどんな本質が貫かれているか,どんな普遍性が現われているかを知らなければならない。自然のし

くみ,社会とその歴史の構造,異文化,人間への理解等,何を学ぶときにも,想像力は本質を見きわ

めるうえで不可欠な能力である。加えて,どんな個別的な存在も孤立した存在ではなく,他と連関し

た総合的な存在である。本質理解は,存在の総合性にまで及ばなければならない。

想像力を働かせ理解するとき,そして,理解したことを表現するとき,それを媒介するのは言葉である。

言葉による世界理解,それが教育の成果として問われている。世界理解とは,自己の外なる世界と自

己の内なる世界への理解である。

 さて,いかなる学問分野も現実世界から完全に遊離しては成り立たない。成り立つはずがないけれ

ども,学問の細分化による先鋭的な深化発展が急速に進み,社会の発展による需要が学問の進歩を規

定するのではなく,ある場合には学問の進歩が社会の在り方まで規定するに及んでいる。人や社会,

自然との具体的な関わりを意識的に追究する学習が今ほど求められたことは,かつてないかもしれな

い。

 島根大学は,平成 18 年度からの 3 年計画で,「島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラ

ムの構築-島根大学から世界が見える教育の展開-」(文部科学省特別教育研究経費による教育改革事

業)への取組を開始した。その趣旨を一言で言えば,副題にあるとおり,「島根大学から世界が見える

教育の展開」である。理工学系及び農学系を含む自然科学系,人文・社会科学系,教育学系及び医学

系の広範囲にわたる学習分野を設定し,大学が立地する島根の豊かな自然環境,社会的・歴史的・文

化的環境を学びのフィールドとして,学生諸君が世界と自己を発見する教育の実現をめざしている。

教育開発センターのもとに設置した全学的組織,フィールド学習教育プログラム開発プロジェクトチ

ームがこの取組を統括してきた。

 本報告書には,2 年目の取組として平成 19 年度に実施したフィールド学習に関する活動成果を公開

し,更なる発展のための今後の課題を示した。島根大学の教育の豊かさの源泉がフィールド学習にあ

るといえる水準までこの取組を充実させたいと願っている。

2008 年 3 月

教育・学生担当副学長/教育開発センター長

坂本一光

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目  次

はじめに

  坂本一光(教育・学生担当副学長/教育開発センター長) ………………………………………………………………… 1

1.各部局等による平成 19年度成果報告

 報告①:法文学部/竹永三男

 報告②:教育学部/松本一郎

 報告③:医学部/藤田委由

 報告④:総合理工学部/亀井淳志・髙須 晃・長野和雄

 報告⑤:生物資源科学部/山下多聞

 報告⑥:学内共同教育研究施設等/瀬戸浩二・会下和宏・中村守彦

 報告⑦:全学的事業/山田剛史・松本一郎・高須 晃

 学生報告①:田邉真衣子/法文学部 3 回生

 学生報告②:吉田 慧/生物資源科学部 3 回生

2.フィールドシンポジウム「グローカルな大学づくりに向けたフィールド学習教育プログラムの挑戦」 ………… 41

 1. 基調講演「特色 GP:鹿児島の中に世界をみる教養科目群の構築について」

  報告①根建心具(鹿児島大学理学部教授・前教育センター長)

  報告② Robert J. Fouser(鹿児島大学教育センター准教授)

 2. フィールド学習教育プログラムの主旨説明/森 朋子(教育開発センター)

 3. 部局等代表者による成果報告

  報告①国立療養所長島愛生園における実習/藤田委由(医学部)・向田千夏(医学部 2 年)

  報告②風土に根ざした建築教育の実践/長野和雄(総合理工学部)

  報告③高大連携の取り組み/中村守彦(産学連携センター)

  報告④フィールド学習の効果と学生支援/山田剛史(教育開発センター)

  報告⑤斐伊川プロジェクトの取り組み/竹永三男(法文学部)

 4. 学生グループによる成果報告

  報告①「しまねの歩き方」プロジェクト/田邉真衣子(法文学部 3 年)

  報告②地域と密着したプレーパークの展開/吉田 慧(生物資源科学部 3 年)

3.おわりに-これまでの取り組みと今後の課題- ……………………………………………………105

  髙須 晃(総合理工学部/プロジェクトチーム・リーダー)

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1各部局等による

平成19年度成果報告

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法文学部成果報告

竹永三男(法文学部教授)

(1)実施したプログラムの内容と成果

 

 法文学部では,次の5件の計画を策定し,この中,授業計画上の都合で実施しなかった文化人類学

プログラムを除く4プログラムを実施した。

1.法経学科経済学分野 

  経済活動施設(生産・流通・廃棄)研修を通じた経済学専門教育高度化プロジェクト

2.社会文化学科社会学研究室

  農山漁村フィールドワーク:質的社会調査教育プログラム

3.社会文化学科考古学研究室

  遺跡の調査を通したフィールド教育

4.社会文化学科文化人類学研究室

  現在の松江市内における通過儀礼の実態についての調査結果の分析と報告書の作成

5.言語文化学科芸術学研究室

  写真詩集の製作・展示による、学生の資料編集能力・メディア理解・地域交流を促進させるプロ

ジェクト

 各プログラムごとの日程・行先・参加者数・予算使途・成果は別表のとおりである。

(2)各プログラムのフィールド学習としての意義と課題

 実施した各プログラムが,現地・地域の人々・団体・自治体・他大学等とどのような関係を取り結

んだか,その準備の内容と学生の役割はどのようなものか,また,各プログラムがフィールド学習と

してどのような教育効果を収めたか,今後にどのような課題を残したかについては,別表に詳記した

とおりである。

(3)総括的評価

 以上,実施した4つのプログラムは,いずれもフィールド学習として具体的な成果を挙げることが

できた。2008年度は事業最終年度の取り組みとして,この成果の上に立ち,課題を踏まえて,内

容の一層の改善を行う。

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教育学部成果報告

松本一郎(教育学部准教授)

1.はじめに-事業全体の概要と目的- 本年度、教育学部では昨年度5つのカテゴリーで活動して実績・成果を積んだもののなかから、その内容を精査し、今年度3つのカテゴリーに絞り込んでこれを実施した。3つのカテゴリーは、1)1000時間体験学習の拡充補強プログラム2)自然科学系フィールドでの専門教育科目における拡充補強プログラム3)芸術体育系フィールドでの専門教育科目における拡充補強プログラムである。3つの事業の目的は、それぞれにフィールド系の授業や体験活動の質的な向上、運用の効率性(資金的なものを含む)の向上、全学への水平展開に向けたエッセンスの抽出である。

2.各事業の成果報告1)1000時間体験学習の拡充補強プログラム【目的と概要】 昨年度に引き続き、本プログラムは教育学部の中心的なものとして位置づけている。また、この活動のエッセンスは水平展開として他学部へも是非広げたい内容を含んでいる。 1000時間体験学習のうち、フィールド学習事業として取り上げた主なプログラムは、地域の子ども達を大学に招き活動するタイプの活動と、地域(主に小学校、中学校)へ出向いた活動の2つのものを用意している。地域の子ども達を大学に招き活動するタイプのプログラムは、大学において地域の小学生の週末の居場所づくりを行う目的で、積極的に大学生を参加させ、活動企画力や指導力、子どもの理解力を育てるプログラムとしている。地域(主に小学校、中学校)へ出向いた活動は、大学生が子どもを指導・支援することにより、地域の実践的教育課題の把握や、子ども理解と指導力を育てる。 具体的な内容は、「島大ビビットひろば」(8 月 11 日、8 月 25 日、11 月 17 日、12 月 8 日、1 月 26日にそれぞれ実施)を中心としている、「島大探検ツアーズ」「地球と話そう」「つくってみよう!ドラマティックとうふ」「スポッチャ∞(多様なスポーツ実践活動)」「島大オリンピック」「水中の微生物を観察しよう」などである。

【結果(成果)と考察(課題)】 学生の体験活動に幅ができたとともに、活動機会が増え、その内容が充実してきた。加えて、地域からのさらなる要望と期待を多くされるようになった。これは、昨年よりもさらに実感されるところであり、地域の子ども達と大学生とが島根大学構内や地域の田んぼや畑をフィールドとして活用する

「地域密着型」のフィールド学習のエッセンスを認めることができた。つまり、組織力(人材)、教材となる様々な物品や移動手段(教材)、そしてその双方を担保する財源の有効な活用方法が示されつつあるといえる。この事業により、個々の活動が充実し成功したことが一番の成果であるが、フィールドという範疇にあり、「地域とともに」という大学のキャッチフレーズが示すように、地域との関わりが密になった。また、そのための教材を揃えることができたことで、これから数年間の活動とその展開をある程度担保することができた。以下、個別のテーマごとの写真と解説を示した。 結果と成果については、個別のテーマに沿ってそれぞれに得るものが多く、今後の事業展開や内容にとって有益なデータが得られた。ただし、今後の課題として本事業終了後に如何に定常的に新たなフィールドや授業・体験内容を開拓していくかであり、経費的な面も含めて最終年度には何らかの提案ができるようにする必要がある。

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島大探検ツアーズ(8 月 11 日)

 ニュースポーツやクイズなどを用意し、

それらの課題に取り組みながら島根大学の

構内を探検しました。

 生物資源科学部の一戸先生にも協力して

いただき、羊と触れ合うこともできました。

島大オリンピック(8 月 25 日)

 一味違った運動会を、というテーマの下、

運動が苦手な子どもたちにもできるような

ゲームを用意しました。

 これは伝言ゲームをしたあと、どんな答

えがでたかグループごとに見直している様

子です。

昔ながらの遊び道場(12 月 8 日)

 紙相撲、けん玉、こまなど、昔ながらの

遊びを子どもたちに体験してもらいました。

この活動に際して、学生たちは島根県立生

涯学習推進センターから紹介していただい

た方に、昔ながらの遊びを教えていただき

ました。

地球と話そう(8 月 11 日)

 学生と教員で、地球の歴史や様々な岩石・

化石を地域の小学生とともに勉強しました。

また、めのう細工教室で作製したストラッ

プがお土産となりました。子ども達、大学

生もともに良い思い出になりました。

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2)自然科学系フィールドでの専門教育科目における拡充補強プログラム【目的と概要】

 本年度も自然環境教育講座を中心としたフィールドワークにおいて、「フィールド学習事業」を実施

した。基本的に理科系(特に第 2 分野系)の教育・研究には欠かせない題材が野外での学習である。

教育学部では現行の授業等でフィールドを中心の授業を行っているものを中心に、本プログラムの可

能性や構築を行うべく専門教育科目における拡充補強が如何に成果あるものとして実行できるかを目

標(目的)に本事業を実践した。事業としては、授業への展開として「自然環境教育臨地演習(担当:

自然環境教育講座全教員)」「フィールド科学実習(担当:大谷・松本)」「地学実習(担当:野村・松本)」

に対して、また講座担当の体験活動(100 時間が各講座に割り振られている)に対して行った。

【結果(成果)と考察(課題)】

 自然科学教育講座が主体の学生教育体験活動に本プログラムの実行は、1)如何にフィールドでの

学習活動を効果的に行い質的な内容の向上が行えるかという点と、2)野外における材料的な教材の

確保や、あらたなフィールドの確保があげられる。フィールド学習プロジェクトの実施期間の中で、

如何に以上のエッセンスや授業内容の向上がはかれるかであるが、実行した授業において、多くの貴

重な体験や学習を学生に付与することができた事は勿論であるが、様々な試行や新たなフィールドの

発掘(例えば、隠岐の島の新フィールドや附属中学校での新事業展開)に成功した事は大きく、今後

の教材や授業を担保することに繋がった。これが一番の結果であり成果であった。個別の授業や活動

は以下に写真とともに簡単な解説を加えた。

 今後に向けての課題であるが、フィールドに主な学習の場がある生物、地学、フィールド環境学習

などは、地域そのものが教材となる場合が多い。すなわち、新たなフィールドの確保と、それに伴う

授業や活動の実施が求められているが、本事業の終了後に、どのような形でそれらを担保していくか

が大きな課題といえる。また、消耗が著しいフィールド学習の機材や教具についても如何に更新して

いくかが問題である。加えて、フィールドへの移動手段の確保にあたり予算的な措置も必要と考える。

最終年度にあたっては、定常的な活動の中で如何にフィールド系授業や活動を後押しできる体制や方

法が確立できるかだと考えられる。

フィールド科学実習・ネイチャーゲーム編

(担当 : 大谷・松本)(8 月 24・25 日)

 フィールドでの活動の仕方、させ方につい

ての講習と、実習を行った。自然から何を学び、

人と自然のつながりや人と人のつながりにつ

いて考えた。

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フィールド科学実習・地学実習編(担当 : 松本)(8 月 27 日)隠岐の島で観察される貴重な、マントル橄欖岩やアルカリ岩の数々を観察すると同時に、海岸に多数ある転石を鑑定する訓練を行った。自分の目で岩石の多様性を実感すると同時に、同じ岩石でも多様な岩相があることを学習した。この経験を基に、小・中学校の子ども達に如何に伝えるかを考えるきっかけになった。

フィールド科学実習・生物実習編(担当 : 大谷) (8 月 26 日) 植物群落の高度変化について、登山を行いながら、その様子を記録・学習している様子。数多くの植物を繰り返し観察することにより体験を伴った学習の大切さを実感し、教育現場での小・中学校の子ども達に伝えるうえでのノウハウを学ぶことができた。隠岐、特有の植物についても学ぶことができた。

自然環境教育臨地演習・化学編(担当:講座全教員)

(3 月 15 日午前)

附属中学校の協力のもと、2 時間の特別授業を

学生が行うことができた。銀鏡反応の実験をわ

かりやすく、また中学生にも理解できる授業展

開の工夫を学生自身が試すことができた。

自然環境教育臨地演習・地学編(担当:講座全教員)

(3 月 15 日午後)

附属中学校の協力のもと、2 時間の特別授業を

学生が行うことができた。普段、目にすること

ができない貴重な岩石や鉱物を用い、誕生石等

の話を取り入れ、試行的な授業展開・授業研究

を行うことができた。

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3)芸術体育系フィールドでの専門教育科目における拡充補強プログラム【目的と概要】

 体育、美術、音楽といった分野は、市民や県民とも広く共有できる分野であり、今後積極的に島根

大学が地域と協力していける分野であり教育学部特有の教育側面である。今年度は体育分野での事業

を展開し、フィールド系授業の中での芸術体育系の関わりや展開についての可能性についてさぐる事

を目的とした。

【結果(成果)と考察(課題)】

 体育分野では、冬期のスキー実習に本事業を展開した。これは、冬山への移動に伴う、安全面と経

費面の双方について本実習をサポートすることができた。本年度は、本実習の1件のみの展開にとど

まったが、体育分野では、遠方への遠征等、今後の展開についても課題が残されている。また、音楽

や美術等についても同様の事があり、フィールドという範囲のなかでどのように、これらの分野の授

業や学生教育を担保していくかが最終年度に向けた継続的な課題である。

全体のまとめと今後(最終年度)に向けて

 今年度の本事業により、多くのフィールド系授業や教育学部が実施している 1000 時間体験活動の教

材やフィールド実習先の開拓確保ができた。これは、本事業の成果として教育学部がアピールできる

ところであり、これまで経費や人的資源の点から難しかったフィールド系授業や実習の充実や新展開

を容易にしたと言える。特に、地域の学校現場をはじめ多くの方々から一定の評価を頂いた。これは、

本事業を進めてきた中にあり授業担当者が実感するとともに、今後の活動や展開に向けた大きな好材

料となった。つまり、本年度を含めて過去2年で、物理的な教材や地理的なフィールドや地域の学校

現場が確保・連携がとれてきたといえる。

 以上の好状況を確定し、今後少なくとも5年間は通用する授業・実習内容を担保するために、最終

年度である来年度についても、1000 時間体験活動、フィールド系授業(自然環境系・芸術体育系)へ

の拡充補強プログラムを実行する必要がある。また、それに伴い本事業終了後におけるフィールド系

授業の1)展開、2)新規開拓、3)全学への水平展開に向けたエッセンスの抽出と実践を行うこと

が重要である。それらを通して、自然豊かな山陰の地にある島根大学としての魅力を備え、特色ある

授業の一つとしての全学向けのフィールド授業の構築を行う必要がある。

以上

生命地球科学実習・その他(担当 : 講座全教員)

生命地球科学実験やその他(学生の実習候補地調査)のフィールド系授業では、バスやレンタカーの借り上げなどに本事業を活用することができた。これにより、従来負担になっていた、調査経費や実習経費の負担を軽減することができた。写真は、小笠原での学生実習候補地調査での調査風景(枕状溶岩を観察する学生)(担当 : 松本)(3 月 20 日~)。

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医学部成果報告

藤田委由(医学部公衆衛生学教授)

1.はじめに 医学部フィ-ルド学習は、地域医療を志して入学した医学科学生、看護学科学生が 6 年間の実習を

通じて、さらに地域医療への関心と知識が深まることを目的に実施される。平成 19 年度は① 1 年早期

体験実習、②環境保健医学実習、③臨床実習(地域医療実習)、④地域看護実習、⑤国立療養所長島愛

生園における実習を実施した。

2.各事業の成果報告(1)早期体験実習

 医学科 1 年 85 名、看護学科 1 年 62 名を対象に早期体験実習を実施した。平成 19 年 4 月 12 日にオ

リエンテ-ションを実施した。オリエンテ-ションでは平成 18 年度に作成した早期体験実習用の教材

用ビデオを供覧した。学生は実習に対する理解を深めた。施設訪問の目標等について引率教官を交え

てグループワークを実施した。4 月 23 日(月)、24 日(火)に出雲市近郊の 19 施設を訪問し、早期

体験実習を実施した。医学科と看護学科の学生が共同で 1 施設を担当した。1 施設当たりの学生数は 4

名から 10 名である。5 月 30 日(水)に早期体験実習発表会を行った。学生が作成した早期体験実習

報告書は 400 部印刷し、関係施設及び関係職員に配布した。

(2)環境保健医学実習

 医学科 4 年 89 名を対象に環境保健医学実習を実施した。実習は平成 19 年 3 月 13 日(火)から平成

20 年 2 月 19 日(火)まで月に 1 回、計 11 回実施される。学生は地域・老人・精神保健実習と地域家

庭健康管理実習の 2 グル-プに分かれる。地域・老人・精神保健実習は市町村を訪問し、地域の糖尿

病予防対策、介護予防対策、痴呆予防対策を実習する。地域家庭健康管理実習は地域住民を戸別に家

庭訪問し、家庭における健康管理、プライマリヘルスケアを実習する。学生は実習の成果を環境保健

医学実習発表会で討論する。学生が作成した環境保健医学実習報告書は 200 部印刷し、関係施設及び

関係職員に配布される。

(3)臨床実習(地域医療実習)プログラム

 医学科 6 年 89 名は島根県下の病院、医院、診療所の計 43 施設で地域医療実習を体験した。本実習

は平成 19 年 5 月 7 日(月)から 7 月 27 日(金)まで 4 ク-ル実施された。1 ク-ル 3 週間で、1 ク

-ル当たりの実習施設数は 1 施設から 3 施設である。1 施設に 1 名から 3 名の学生が訪問した。地域

医療病院実習施設一覧を 300 部作成した。

(4)地域看護学実習

 看護学科 4 年 63 名を対象に、地域看護学実習を実施した。実習日程は平成 19 年 6 月 4 日(月)か

ら 7 月 13 日(金)までの 6 週間である。実習時間は月曜から金曜まで毎日午前 8 時 30 分から午後 5

時 15 分までで、30 日間である。実習場所は島根県内 7 保健所と 16 市町村である。実習後、学生は

学内で全県下での保健活動について相互の意見交換を行い、発表を行った。保健師活動を中心とした、

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一次予防、二次予防、三次予防の意義を体験した。

(5)国立療養所長島愛生園における実習

 国立療養所長島愛生園(岡山県瀬戸内市)はハンセン病患者を対象にした療養所である。医学科学

生 15 名(2 年生 1 名、3 年生 11 名、4 年生 2 名、5 年生 1 名)は平成 20 年 1 月 26 日(土)から 1 月

27 日(日)に 1 泊 2 日で本療養所を訪問した。学生は療養所入所者と意見を交換しハンセン病に対す

る正しい理解を深めた。

3.まとめと今後の課題 地域医療活動に従事する人たちは、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、理学療法士、作業療法士、

臨床検査技師、管理栄養士、放射線技師など多くの専門職員がいる。これら専門職員の人たちはお互

いよく理解、連携して地域医療活動を実践している。医学部フィ-ルド学習は大学の講義だけでは窺

い知ることが出来ない地域医療活動の現場に触れることが出来る。

 医学部のカリキュラムは既に飽和状態にあり、新しくカリキュラムを追加することは難しい。学生

はフィ-ルド学習を体験することにより、地域における医師、看護師の社会的役割、責任を理解する

ことが出来ると考える。

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総合理工学部(既存科目の改善によるフィールド学習の実施)成果報告

亀井淳志(総合理工学部地球資源環境学科・准教授)

(1)専門基礎教育科目:地球科学基礎演習 

【目的】 昨年度作成したテキスト(無料配布)に従い授業を実施することを目的とした.また,本年度は野

外実習で使用するハンマーおよびクリノメーターの不足分を補充することとした.

【結果(成果)と考察(課題)】 作成したテキストにより,円滑な実習を実施できた.テキストを使用した授

業方法は参加学生から好評を得た.近年では,授業中に資料を配布しても多くの学生が直ぐにこれを紛失

して授業が「受けっぱなし」の状態になっていた.しかし,テキスト(手帳サイズで防水加工済み)を導入

したことで各学生がテキスト本体を大事に管理する傾向が現れ,かつ積み重ね方式で行われる実習内容(15

回分)をいつでも復習できる状態になった.これらは特筆すべき良い結果であった.また,教員側も授業中

に復習資料を直ぐ提示できることや,配布試料の予備を印刷しなくてよいので紙・インクの節約になった.

(2)専門教育科目:古生物学実習 

【目的】 今年度はフィールド実習内容の見直しと双眼実体顕微鏡を使用した新プログラムの構築を進め,特

に化石試料の採取場所を再検討し,採取した試料の処理法の改善等を重点的に進めることを目的とした.

【結果(成果)と考察(課題)】 野外実習に関しては,従来の内容を見直し,調査法についての内容の充実

を図った.具体的には化石試料の採取時に必要なルート調査や露頭柱状図の描き方等について,より時間を

さき,最適な実習地も選択した.しかしながら,多人数(毎年 25 名程度)の学生が実際に化石の産状を観察し,

化石試料の採取を十分行うことができる実習地に関しては,従来通りであり,いろいろと候補地を検討した

が,いずれも宿泊を伴うこと,移動に時間がかかること,大学バスの使用制限が有ること,許可申請が必要

等の問題点があることから,今後も授業担当者が各々検討して行くこととした.野外で得られた試料の室内

分析に関しては,実験器具や消耗品が充実し,数年度分の実習に必要なものは補充することができた.テキ

ストに関しては,今後 10 年程度,化石採取の実習可能な候補地の確定ができなかったので,従来の資料を

整理するに留まった.

(3)専門教育科目:堆積学・地層学実習 

【目的】 昨年度に導入した携帯型実体顕微鏡の効率の良い使用と新たに導入したフィールドスコープの使用

方法の開発を目的とした.

【結果(成果)と考察(課題)】 今年度は顕微鏡に接続することが可能でかつ高解像度の写真撮影が可能な

デジタルカメラを導入し,野外に見られる露頭の状況を非破壊で解析できるように工夫した.また,デジタ

ルカメラで撮影したデータは室内に持ち帰って,データ処理が可能なシステムを整えた.さらに,フィール

ドスコープを導入し,アクセスすることのできない場所の観察,およびその写真撮影が可能となるようにした.

また,整えたシステムを,表記の授業のみだけでなく,他の野外実習でも積極的に活用した.

 野外で,ミクロスケールおよび遠方地点についての解説を行い,それらをその場でかなり鮮明な画像とし

て見ることができるようになったため,実習の際の学生の反応がこれまでに比べて非常によくなった.また,

学生の理解度も大きく向上したものと思われる.また,デジタルカメラの表示画面で,撮影した画像をすぐ

にその場で,順番待ちをしている学生にも見せることができ,学生が比較的効率よく学習できる点もあった.

ただ,やはり機器の数が少ないため,観察に時間がかかることが問題点として浮上した.

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(4)専門教育科目:地球化学 

【目的】 昨年度計画した授業(野外調査,室内実験室における岩石化学分析,および得られたデータの解釈)

を試行し,その成果について評価・分析することを目的とした.

【結果(成果)と考察(課題)】 受講学生は 11 名で,全員が本授業の目指す,「天然での岩石の産状や組織

を十分に理解しつつ,岩石の化学的特徴を学ぶこと」ができた.

 また本年度は,フィールド調査の際に8人乗りレンタカー(乗用車タイプ)を使用してその機動性および

経済性について検討した.また学生に GPSを用いた試料採取場所の確認方法を修得させ,授業の効率化

についても試行した.前者に関しては,マイクロバスの借り上げに比較して経済的効果・機動性共に高い事

が分かった.また GPSを用いた試料採取では学生らの理解も早く,全員が GPS の操作を習得した.また,

時間的に効率の良い授業が実施できた.

 今後の課題は,フィールド学習に必要な「予算」である.8人乗りレンタカーの採用により,マイクロバ

スの要請に比較して経済的な授業が実施できるが,それでも学生らにレンタカー借り上げ費と燃料費の出費

が必要なことは問題と感じる.もし,全学でフィールド学習に適した8~10人乗り乗用車(教員が運転可)

が導入されれば,授業で燃料費のみを負担すれば良いことになり大変助かる.燃料費のみであれば教員の

個人研究費で賄うことが可能な場合も考えられる.本フィールド学習プログラムの最終年度に,フィールド

用乗用車(8~10人乗り)の複数台の導入を検討する価値は十分にあると思う.この乗用車はフィールド

以外の野外実習や調査,様々な学習活動にも活用できると考えられ,本学の教育・研究への効果は大きい

と思う.

(5)地球科学野外実習 I,III 層序学・堆積学 < 大学院 >

【目的】 山陰から近畿地方の範囲で,特に地層学・堆積学分野関連の新たなフィールド学習地の開発を目的

とした.

【結果(成果)と考察(課題)】 今回は平成 19 年 6 月1日~ 3日の期間で,倉吉(海成平野地形)~鳥取

砂丘(砂丘)~天橋立(海岸地形)~琵琶湖(三角州地形)~大津(巨大崩壊地形とその堆積物)~比叡

山(京都盆地と琵琶湖の地形とその堆積物)の観察・実習を行った.参加者は 10 名で,各人はそれぞれの

見学地点について分担で事前勉強を行い,実際の巡検ポイントにて解説を担当してお互いで理解を深めた.

移動手段として,マイクロバスを借り上げた.

 水域に隣接した地域では,波,潮汐,河川の営力が地形や地層の形成に重要であるとくに米子から鳥取

にかけての海岸域では波浪の影響を強く受けた堆積性の平野と侵食性の海岸地形,京都の北部地域では潮

汐の影響を受けやすい海岸地形,琵琶湖周辺では河川の影響の強い場所,波浪の影響の強い場所の地形と

その地層を観察した.今回開発した巡検ルートは,山陰・近畿地域の地質や地形を理解するだけでなく,地

層や地形の理解に必要とされる基礎的事項を広く修得することのできるルートであると言えよう.現場では,

普段見慣れている地形にも大きな意味があるのだということが実感できたようであった.こうした身近な地

形,地層を観察することは自分の住む地域についての理解を深めるのと同時に,自然環境の将来予測,防災

に関する意識を持つことにつながると思われるが,その効果はたいへん大きかったように思われる.

今後の問題としては,移動手段の問題がある.予算があるうちはバスを借りあげることができる.大学のバ

スが休日等に出かけられるようなシステムがあるとこうした実習をよりやりやすくなると思われる.

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総合理工学部(フィールド・スクールの「試行」プログラムの更なる改善の試み)成果報告

高須 晃(総合理工学部地球資源環境学科・教授)

1.はじめに-事業全体の概要と目的- 「変成岩岩石学」の授業として,フィールド(本事業の場合は,堆積岩や火成岩がプレートの沈み込

みにより地下 20-100 km の深部にもたらされ,高圧のもとに形成された変成岩の分布する地域)に

おいて,実習(実際に岩石や地質を見たり調べたりするフィールドワーク)と講義(基本知識の修得

や理論の学習)を行うフィールド・スクール形式の授業プログラムを構築する.

2.各事業の成果報告【目的】

 平成 18 年度は,専門教育科目「変成岩岩石学」(3年・選択)の授業として3日間のフィールド・

スクールを愛媛県新居浜市で実施した.これを通常の授業の 10 回分とし,残りの4回分は講義とフィ

ールド・スクールで与えた課題についてのプレゼンテーションとその議論の時間に充てた.この結果,

この授業で目的としている専門に関する基礎知識の習得,フィールドワークによる岩石や地質の多角

的な理解,新たな学習意欲の創出が認められた.また,課題解決のためにグループで取り組む能力,

プレゼンテーションのための論理的な思考能力,口頭発表能力,討論などのコミュニケーション能力

の育成にも効果があった.しかし,いっぽうで教室での授業が4回となり専門知識の解説や受講学生

の事後学習の時間が十分にとれないこと,また,休日を利用した3日間のフィールド・スクールは学生,

教員,TA にとって負担が大きいこと,などの問題点も明らかになった.そこで,これらの問題点を解

決すべく,平成 19 年度は 2 日間のフィールド・スクールを 2 日間とし,これを 8 回分の授業に相当す

るものとし,授業プログラムを作成し,試行することとした.

【結果(成果)と考察(課題)】

成果

(1)フィールド学習のための教材開発とフィールド・スクール実習帳作成のため,三波川変成岩の偏

光顕微鏡による記載と変成鉱物の化学組成の分析を行った.

(2)フィールド・スクールにおいて使用する器材(パソコン,デジタルカメラ)の拡充を行った.こ

れにより,フィールドワークの後,宿泊施設においてデジタルカメラの情報を併用して解説や討論を

行うための器材が整備できた.

(3)フィールド・スクール実習帳(試行版)を作成し,これを使用してフィールド・スクールを実施した.

(4)6月2日(土)~3日(日)においてフィールド・スクールとして,愛媛県新居浜市に分布する

三波川変成岩を対象に,変成岩および変成・変形作用についての基礎知識の修得とフィールドで変成

岩の産状,変成鉱物の見分け方,変形構造・組織の見方,変成帯の地質調査の仕方についての実習を

行った.教室での授業は 6 回行い,講義とフィールド・スクールで与えた課題についてのプレゼンテ

ーションとその議論に充てた.

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試行版のフィールド・スクール実習帳

課題

(1)フィールドが遠方であるため,2日間のフィールド・スクールは実質 1 日のフィールドワークと

なる上に,天候不良により当初予定していたプログラムをすべてこなすことができなかった.

(2)2単位の授業時間のなかでのフィールド・スクール(フィールドワーク)と室内での授業の適正

なバランスが確立していない.また,4~5日のフィールド・スクールですべての授業を行う授業プ

ログラム計画・試行したいが,現在の島根大学の学年暦の中でこのような期間が確保できない状況で

ある.

(3)半年の授業期間中,フィールド・スクールを実施する適正な時期が確立していない.

(4)フィールド学習に伴う交通費,宿泊費等の経費負担の方法が確立していない.

3.まとめと今後の課題(1)平成18年度,19年度の試行をもとに,フィールド・スクール(フィールドワーク)と室内で

の授業の適正なバランスをもった授業プログラムを検討する.平成20年度に最終的な試行を行う.

また,天候不良時等のフィールドワークの代替プログラムを準備する.

(2)フィールド・スクール実習帳(試行版)を増補・改訂し,印刷・出版する.

(3)フィールド・スクールを中心とする授業の学習効果等を評価するとともに,本事業の成果を報告

書にまとめ,印刷公表する.

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総合理工学部(風土に根ざした建築教育の実践プログラムの構築)の成果報告

長野和雄(総合理工学部材料プロセス工学科)

【目的】

 健康で快適に生活するためには,地域の気候特性に対応した住まい方が重要である.もともと日本

の伝統的建築は,限られた自然エネルギーの中で循環システムを形成し,気候風土へ適応してきた.

それは,例えば地産の建材を巧みに利用することであったり,軒の深さによる日射・日照調整であっ

たりと,建築技術・素材利用・資源循環・環境調節いずれの面でも多くの示唆を含んでいる.その意

味で,伝統建築は,歴史や文化を含めた建築教育の教材としての役割が期待される.幸いにも山陰に

は個性豊かな伝統建築が多数存在しており,このような教育を実践するための土壌に恵まれている.

材料プロセス工学科では,伝統的建築群を有する地域を対象にして,地域の歴史や文化,産業,気象,

住宅の光・熱環境,住まい方の工夫などについて継続的に学ぶ一連のプログラムを構築する.

【実施概要と成果】

 継続的に学べるよう,学部入学から大学院終了まで科目間の連携を高めてきた.学習し専門性を身

につけていく過程は,学年が進み専門化すればするほど,往々にして分析的思考(アナリシス)に偏

りがちだが,建築教育の場合は特に設計という総合化(シンセシス)がその先にあることを常に念頭

に置かなければならない.そのため,必ずしも基礎から応用まで段階的に進めることはせず,どの年

代でも環境設計または建築設計と関連づけながら一連の構成を組んでいる.

以下にプログラム構成と各科目の関連を示す.

開講時期 科目

基 礎 応 用

地域の伝統的

建築・地場産

業・ものづく

り体験

地 域 の 気 象,

住環境の測定

技術の現地学

地域の伝統的

建築の環境評

価と歴史・文

化に関する現

地調査・研究

地域を対象と

し た 環 境 設

計・建築設計

1 前材料プロセス工学

セミナー◎ △ △

2 集中 工場見学 ◎ △

2 前 建築設計製図 I ○ △ ◎

3 前 建築設計製図 II ○ ◎

3 後 材料工学実験 II ◎ ○

3 後 建築設計製図 III ○ ◎

4 前後 専攻演習 ○ ○ ◎ ○

4 前後 卒業研究 △ △ ◎ ◎

M1 前 住環境論 ◎ ○

M1・2 前後 材料工学セミナー △ ◎ ○

M1・2 前後 特別研究 ◎ ○

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主立った具体的な実施事項は,下記の通りである.

i. 志津見ダム建設工事,島根原発 3 号機建設工事,木材製材工場,ミシン製造工場などの見学

ii. 元大田市建築課長・渡辺孝幸氏(大森地区の保存事業に長年従事)による現地説明会

iii. 出雲築地松の日射遮蔽,防風効果,散居集落の屋内外気象観測,アンケート

iv. 兵庫県田久日集落における建物内部見学,間取り実測,総合気象観測,ヒアリング

v. 出雲市三津集落における防風ブロック塀の見学,風環境実測,ヒアリング

vi. 電車車両内に及ぼす日射の影響の検討のための車室内環境実測,被験者実測

vii. 大田市大森の町並み見学,間取り調査,熱・光環境実測,アンケート,ヒアリング

viii. 建物の外界気象に対する熱的性能をより理解しやすくするための環境教育教材の開発・作成

ix. 松江市商店街や伝統美観地区を対象とした建築計画・都市計画・景観計画に関する一連の設計 

 課題(対象敷地と周辺環境への視察を含む)

x. 山陰を対象とした卒業設計(*:日本建築学会中国支部大学・高専卒業設計作品優秀者表彰)

● 「水辺の駅̶松江市における都市計画の再構築̶」*

● 「橋の向こう̶天神町商店街の再開発提案̶」

● 「尾高町における歴史的資源を活かしたまちづくり」

● 「木綿街道ルネサンス」*

● 「The Reproduction Plan of “ISHIBASHI-cho” ~五感で楽しむ町~」

● 「松江市における「古墳の駅」計画」

● 「自然の島 八束町 ~ Functioning Eight Places ~」

● 「『The village of the foothold』棚田のある風景」(邑南町旧羽須美村の再生提案)

xi. 一般設計競技への参加

● 第 5 回愛知産業大学建築コンペティション「MOTTAINAI ~建築・まち・空間~」

● 第五回「真の日本のすまい」提案競技(主催:財団法人・住宅産業研修財団)

● 第 6 回愛知産業大学建築コンペティション「森に生きる.森と生きる.」

● 2007 年度日本建築学会設計競技「人口減少時代のマイタウンの再生」

● 第 14 回ユニオン造形デザイン賞「超豪邸」(主催:財団法人ユニオン造形文化財団)

● SMOKERS’ STYLE COMPETITION 2007(主催:日本たばこ産業株式会社)

 講義とフィールド学習がようやく結びつき始め,得られた知識や経験をもとに卒業研究や設計提案

に結びつくようになってきた.特に設計競技への参加はこれまでほとんどされていなかった.対外的

な活動に対する積極性という意味でも喜ばしい傾向である.

【課題と将来方針】

一方,1 年次の材料プロセス工学概論は全教員が輪番で担当し,講義形式を原則としている.フィー

ルドで行うか否かは担当回の教員の都合等によって異なり,フィールド学習の場が不足している.また,

4 年次のプログラムは専攻演習としても行っているが,卒業研究を中心に活動を組み立てているのが現

状である.そのため,卒業研究担当学生とその他の学生との取り組み姿勢に濃淡が生じる恐れがある

ほか,担当教員の教育研究指導の都合上,今後必ずしも継続的にフィールド学習が実施できるとは限

らない.この 2 年間は杞憂に終わり,かえって卒業研究担当者がリーダーシップを発揮して自発的な

取り組みが見られ,期待以上に学習効果が高かったことがほとんどであったが,継続性の観点から見

れば不安があるのは否めないところである.卒業研究とは独立した場を設けて体系の中に固定化し,4

年次のフィールド学習を充実させるのが望ましいと考えられる.

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写真 -1 志津見ダム全景 写真 -2 建設中のダム堤体上での見学

写真 -3 集落の建物内部の調査 写真 -4 住民に対するヒアリング状況

写真 -5 環境教育模型の製作風景 写真 -6 環境教育模型実験風景

図 -1 大田市大森のファサード調査

図 -2 設計コンペ応募作品例

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 講義とフィールド学習がようやく結びつき始め,得られた知識や経験をもとに卒業研究や設計提案

に結びつくようになってきた.特に設計競技への参加はこれまでほとんどされていなかった.対外的

な活動に対する積極性という意味でも喜ばしい傾向である.

【課題と将来方針】

 一方,1 年次の材料プロセス工学概論は全教員が輪番で担当し,講義形式を原則としている.フィー

ルドで行うか否かは担当回の教員の都合等によって異なり,フィールド学習の場が不足している.また,

4 年次のプログラムは専攻演習としても行っているが,卒業研究を中心に活動を組み立てているのが現

状である.そのため,卒業研究担当学生とその他の学生との取り組み姿勢に濃淡が生じる恐れがある

ほか,担当教員の教育研究指導の都合上,今後必ずしも継続的にフィールド学習が実施できるとは限

らない.この 2 年間は杞憂に終わり,かえって卒業研究担当者がリーダーシップを発揮して自発的な

取り組みが見られ,期待以上に学習効果が高かったことがほとんどであったが,継続性の観点から見

れば不安があるのは否めないところである.卒業研究とは独立した場を設けて体系の中に固定化し,4

年次のフィールド学習を充実させるのが望ましいと考えられる.

 これらの反省点から,工場見学を 1 年次開講に変更することを検討中であるほか,4 年次には専門教

育科目として「建築計画学演習」を新たに立ち上げることが決まっている.「建築計画学演習」では逆に,

現状のように自分のこととして取り組めるよう,学生のモチベーションを高く維持するための工夫も

含め,講義内容を検討しているところである.

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生物資源科学部成果報告

山下多聞(生物資源教育研究センター准教授)

1.はじめに-事業全体の概要と目的- 生物資源科学部の開講する授業は、教養教育科目、専門教育科目、教職科目などいずれの科目群に

おいても、何らかのフィールドワークが行われている。本事業では、新規の授業科目を立ち上げるこ

とよりは、既存の授業科目のフィールドワークを強化拡充することに重点をおいており、施設設備の

充実および TA の積極的活用を目指している。

2.各事業の成果報告(1)教養教育科目における拡充補強プログラム

【目的】

 専門教育の本格化する前の教養教育の段階で、さまざまな学部に属する学生に出雲地域を体感また

は体験するフィールドワーク受講の機会を与えることで、学生が島根大学で学ぶ意義を考えること、

そして各自の専門を学ぶ下地を醸成することを目的とする。

【結果(成果)と考察(課題)】

 共通教養科目「森林から耕地、海へ」を対象に拡充補強を行った。昨年度購入した二酸化炭素濃度

測定装置(写真 1 と 2)をはじめ、さまざまな機材を駆使し、森林(三瓶演習林)、耕地(本庄農場と

神西農場)、そして海(隠岐臨海実験所)におけるフィールドワークを実施した。専門教育科目と異なり、

共通教養科目には必要経費が確保されており、バス代と教員の旅費は本経費に拠らなかった。

 本経費によってハードウェアの観点からはよく整備されたと考えられるが、昨年同様に、法文学部

および教育学部からの受講生が皆無であったことは、文科系学生に受入れやすいプログラムを構築す

るなどの改善が要求されるであろう。

写真1. 二酸化炭素濃度測定装置 写真2.スギの幹に固定された装置

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(2)自然科学系フィールドでの専門教育科目における拡充補強プログラム(例)

【目的】

 生物資源科学部において、専門教育科目としてのフィールドワークは非常に重要であるにもかかわ

らず、物品費、旅費、TA 経費などすべての予算が恒常的に不足している。不足する予算を本経費で補

い、必要な物資を購入するとともに、TA の有効性を確認することを目指す。

【結果(成果)と考察(課題)】

 本年度は、14 授業がこのプログラムに参加した。これらの参加授業のうち、「生物科学セミナーⅡ」

に水中撮影装置と「生物機能学実習」に電磁流速計を購入するための設備備品費を配分した。また、

本経費によってバスやレンタカーの借り上げ代行経費をまかなった。「生物科学セミナーⅡ」と「農村

調査実習」には TA 経費を配分した。本経費の終了とともに、バス代および TA 経費が消失する。こ

れら経費の確保は喫緊の課題である。個別授業の概要については以下の通りである。

◆生物科学セミナーⅡ

 目的 夜間(2 ~ 3 時間)のオオサンショウ生態調査(写真 3)がメインであることから,TA と教

員とによるきめ細かな指導を行うことに本年は重点を置いた.また、原生動物の生息状況と生息環境

との関連について学ぶため,野外に出て実際に観察するために必要な機器を導入する。

成果

① 詳しい内容を記載したパンフレットを学生に配布することにより,オオサンショウウオに関するフ

ィールド知識と調査の内容を事前に十分に理解させることができた.

②調査用具であるウエーダーは,全員の数を揃えることができた.

③ TA 経費のおかげで,大学院生の積極性が加速した.

④ 今回導入した水中撮影装置は現在地,観測地点の水深,水温,水中の映像等を同時に見ることが出

来るため,それらの関連性を強く認識しながら実習を進めることが出来た(写真 4)。

⑤採水器が水中でどのように働いているかを水中カメラでリアルタイムに観察することが出来た。

⑥ 今回参加した学生にとっては湖の深部の採水は初めての体験で,その原理や利点などについて現地

で学ぶことが出来た。

⑦中海に形成されている塩分躍層を実感することが出来た。

⑧湖底の状況を生で見ることが出来た。

写真 3.オオサンショウウオの夜間観察 写真 4.水中撮影装置

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◆生物機能学実習

目 的 生物機能学実習の中で行う実習の一つに、水生昆虫とその棲息環境との関係を調べる実習があ

り(写真 5)、水生昆虫の棲息環境の中でも流速は非常に大きな環境要因であると考えられる。この

実習を通して学生に認識してもらいたい重要なポイントの一つに、流速の違いによってどのような

棲み分けが起こっているのかということがある。これまでは、流速計が無いために,乾燥した草の

葉を上流から流し、一定距離を流れる時間を計測しておおよその流速を計算していた。しかし、こ

の方法であると風の影響を大きく受けてなかなか正確な流速を求めることができなかった。そのた

め学生に間違った認識を与えかねない状態であり、その解消のために、野外実習で持ち運び可能な

電磁式流速計必要であった(写真 6)。購入目的は、野外実習の内容をより充実させるためである。

成果

①流速の違いにより、そこに棲む水生昆虫や魚類の違いが明確に調べられるようになった。

②流速と造網係数につよい相関があることが調べられるようになった。

③これまで調べられなかった淵などの深場での水深による流速の違いが測定できるようになった。

④電磁式なので浅場でも調査ポイントを自由に選べるようになった。

 

◆環境生物学実習

目 的 環境保全に重要な貢献をしている里山(農山村)等のフィールドに出かけ、環境生物学講座を

構成している 3 分野(動物生態学分野、植物病理生態学分野、微生物生態学分野)の視点から、生

物とそれを取り巻く環境についての理解を深めさせるとともに、一年生には分属講座を選ぶ前向き

な動機を持たせる。

成果

① 動物生態学分野 水生昆虫を採取するために河川に入る際に必要な胴長等を本経費により補充した。

それにより、従来よりも多くの受講生に採取の体験をさせることができ、実習効率が向上した。

② 植物病理生態学分野 植物病の種類を判定するための簡易な図鑑資料を本経費により新たに作成し

て受講生に配布するとともに器具等を充実させた。それにより、従来よりも効果的かつ効率的な指

導が可能になった。

③微生物生態学分野 土壌微生物の量や活性の測定実習に必要な自動ピペット等の器具が一部老朽化

していたが、本経費により更新した。それにより、器具の故障で操作が中断することもなく、円滑に

進めることができた。

写真 6.流速の測定写真 5.水生昆虫とその棲息環境との

 関係を調べる実習  

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◆生態環境工学実習

目 的 生態環境工学実習の実践に先立ち、実習での成果をより高めるために、実習テキストの作成を

行った。生態環境工学講座教員が分担して、実習の目的、宍道湖・中海の概要、宍道湖・中海での

湖岸環境と再生事業、宍道湖・中海の水質環境と流入負荷、水質を保全・改善するための取り組み

として「宍道湖東部浄化センター」「機能性材料を使った資源循環型水処理技術」「多段土壌層法に

よる水質浄化」、「ゼオライト水耕法による水質浄化」についてとりまとめた。また、土壌の植物生

産機能及び土壌・土地利用・陸域自然景観についてとりまとめた。これらの情報をテキストとして

随時参することで、実習を通じて宍道湖・中海の環境保全への取り組みや、周辺地域との関連につ

いて理解できるように工夫した。

成 果 生態環境工学実習の実践(写真 7)に先立ち、実習での成果をより高めるために、実習テキス

トの作成を行った。生態環境工学講座教員が分担して、実習の目的、宍道湖・中海の概要、宍道湖・

中海での湖岸環境と再生事業、宍道湖・中海の水質環境と流入負荷、水質を保全・改善するための

取り組みとして「宍道湖東部浄化センター」「機能性材料を使った資源循環型水処理技術」「多段土

壌層法による水質浄化」、「ゼオライト水耕法による水質浄化」についてとりまとめた。また、土壌

の植物生産機能及び土壌・土地利用・陸域自然景観についてとりまとめた。これらの情報をテキス

トとして随時参することで、実習を通じて宍道湖・中海の環境保全への取り組みや、周辺地域との

関連について理解できるように工夫した。

◆専攻演習

目 的 演習では室内での講義も行うが、生態環境工学講座では野外調査を伴う教育研究活動が中心で

あり、野外での充実した演習内容が受講生の理解向上には不可欠である。今回、バス代経費の確保

により移動手段を確保し、受講生が野外での演習活動に費やす時間を拡大し、理解を深めさせ授業

の効果を高めることが目的である。

成 果 本庄農場で行った活動において、大学バスの利用時間に縛られずに時間を拡大することができ

た。時間の確保は、現地での説明を詳細にすること、学生が十分に考える時間の確保につながり、

現地での活動を充実させて学生の実習内容に対する理解を高めることが出来たと考える。また、別

の報告書で記載した岩石標本も本演習において活用し、演習の内容に対する学生の理解を高めるこ

とが出来た。TA への謝金の支出は行っていないが、大学院生が演習を補佐してくれた。彼らの知識

レベルを向上させ、今後演習の質をさらに高めていくことが今後の課題である。

写真 7.生態環境工学実習

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◆土壌学実習・地学基礎実験

目 的 バス代は、平日の時間延長および週末を利用して、受講生が野外で土壌及び地学調査に費やす

時間を拡大し、理解を深めさせ実習の効果を高めること。消耗品費(岩石標本)について、これま

で実習では、現地では確認できない種々の岩石については、本や写真などの視覚教材を用いていたが、

実物を用いることに寄る教育効果向上をねらう。

成 果 バス借り上げによる実習時間の拡大により、大学バスの利用時間に縛られることなく実習を実

施でき、現地での活動を充実させて学生の実習内容に対する理解を高めることが出来たと考える(写

真 8)。また、岩石標本については(写真 9)、本実習のみならず、「環境土壌学 1」や「専攻演習」な

どにおいても、学生が直接手にとってさわることが出来る教材として活用し、講義や演習の内容に

対する学生の理解を高めることが出来た。

◆基礎生命工学実験

目 的と内容 近年、様々な環境中に生存する微生物群には一般の培養条件下では増殖困難な微生物が

多いということがわかってきた。培養困難な微生物の存在は我々が今まで捉えていた微生物の「種」

ならびに「数」の信憑性が高くないことを意味するばかりでなく、有用遺伝子の探索における新た

な可能性も暗示する。本プログラムでは河川水、湖沼水、汚泥、土壌等の様々な環境から採取した

サンプルより微生物を単離と培養することなしに、直接サンプルを PCR 反応に供し、遺伝子を増幅

することを試みた。本試験の実施により、①多様な環境中に微生物が実存していることと環境によ

る分布相の相違、② PCR 法による遺伝子増幅の原理と実際、③核酸の取り扱いや電気泳動等につい

て学習することが期待できた。

成 果 今回用いた手法により環境から採取した河川水(朝酌川)から微生物の培養過程を経ずに、直

接 PCR 法により遺伝子を増幅できることが確認できた。これにより、微生物が実在していることを

直接、DNA の検出という分子レベルで実証することができた。用いた各操作はいずれも簡便で、か

つ DNA 取り扱いの基礎を効果的に学べることがわかった。本プログラムでは微生物の単離と培養を

経ないことにより、サンプルの採取から PCR 反応、電気泳動による結果の判定までを短時間で実施

することが可能であった。

改 良点 昨年度、砂、土壌ならびに汚泥からの直接の遺伝子増幅は確認できなかったため、今回は河

川水等の液状サンプルからの遺伝子増幅を中心に行なった。プライマーの設計をいくつか変えて行

なったため、多くのケースで増幅が確認できた。

写真 8.土壌断面調査の実習 写真 9.岩石標本

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◆水理学実験

予 算配分の目的 実験演習と講義との融合を図るための教材作成・プログラム開発に主眼をおいてい

る.そこで,流体の性質を実体験として学習する水理学実験と流体の挙動に大きく依存する物質循

環を講義で学習する水質水文学とで共通に利用できるような教材開発を想定している.ここに掲げ

た目的を達成するため,水理学実験用 開水路流量制御装置を購入した(写真 10).

成 果と課題 システムの導入により流量が自由に制御できるようになった.このシステムを用いて,

現在,特に物質の運搬の駆動力となる流体の性質やその挙動について,流量や流れ(流速)の分布

といった基礎的な事象から,流れの状態とエネルギーの関係や粗度・摩擦によるエネルギー損失と

いった実際のフィールドにおいても発生している事象までを対象に授業を進めている.基本事項を

最初に実験によって体験させることで,流体についての理解の定着を図り,その知識をもとに,物

質循環と流体とを結びつけ,物質の発生・排出メカニズムと流体による運搬といった現象との関連

性がつかめるように努めている.しかし,まだ現場との繋がりが弱いため,その点を改善していく

必要があると考えている.

◆農村調査実習

目 的 社会科学の基礎である農村調査実習の目的と意義を確認し、その手法を習得することを目指す。

本授業の達成目標としては、次の 5 点を設定した。①資料調査の方法を身につけること。②課題に

即した調査項目の設定 ③農村調査によって農村・農業等の具体状況を理解。④調査結果を適切な

方法で処理・分析し、レポートにまとめる方法を身につけること。⑤調査結果・まとめを説得的に

プレゼンテーションする能力を身につけること。

写真 10.水理実験

写真 11.調査風景 写真 12.調査報告

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成 果 テーマを設定し、調査計画・調査票を作り、調査を実施し、結果をまとめ、それを再び現地関

係者の前で報告し、その結果をもとに完成版報告書を作成するという方法をとった。これにより学

生の調査結果をまとめる際の意識は高まり、緊張感が感じられるようになった。調査方法、まとめ

方法、農村の現地に対する理解など、学習効果は非常に高かったと思われる(写真 11 と 12)。

◆基礎演習Ⅰ

目 的 前期履修の農村調査実習の経験をベースにさらに社会科学の調査方法を習得させることが目的

である。農村調査実習に引き続き、フィールド調査に関して、以下の点の基礎的な演習を行うこと

を主眼としている。①歴史資料の点検、②既存統計の加工方法とデータ解釈、③各種関連資料の利

用と注意点、④論文化のための基本的方法とデータ整理・解釈及び文章化、⑤実地調査におけるヒ

アリング方法、データ収集方法

成 果 フィールド系の演習とはいえ、主として学内での座学が中心であるため、現地見学・現地調査

を組み合わせることで、学生も臨場感をもって資料分析・データ処理の意味を感じることが出来た

と思われる(写真 13)。

◆生産技術基礎実習Ⅰ~Ⅳ

目 的 生物資源科学部附属生物資源教育研究センターでは,生産技術基礎実習および生産技術専門実

習を開講している.今年度は夏期の集中実習をより充実した内容に改善する目的で行った.

成 果 サツマイモを収穫するだけでなく,収穫後の調製,さらには加工され焼酎となる過程を学生に

学ばすことができ,農業における生産から加工までの理解が深まったものと考えられる.11 月には

焼酎仕込み作業体験を実施し(写真 14)、長時間にわたる切断作業を体験した参加者は,焼酎製造の

大変さを知ることで,より焼酎の製造・加工に対する理解が深まったものと考えられる.今回の実

習を試行として,フィールド学習斐伊川プログラムにおける実習授業のプログラムを開発すること

ができた.

3.まとめと今後の課題各授業での課題

・ 配付するパンフレットの作成時に TA に参加してもらうことで,オオサンショウウオ調査の予備的知

識を身につけさせることができた.また実際の調査イメージを描くことが出来た事は,TA の実習指

導にゆとりが生じたようであった.

写真 13.現地での勉強会 写真 14.焼酎の仕込み作業体験

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・ 汽水域センター中海分室の船を利用する場合,乗船定員が少ないため,乗船可能な学生数との関係か

ら実習内容が限定される。

・ 今回は中海湖心の人工観測所に上陸しての実習であったが, 湖心までの所要時間に加え,2 回に分乗

しての輸送となったため,長い空き時間が生じてしまう。

・ 定期の授業でないため,学生のスケジュール調整が難しい。

・ 中海分室までの交通手段として公共交通機関を利用することが難しく,今回は大学バスを利用できた

が,毎回利用することになれば費用負担も大きい。

・ サツマイモ収穫・調製から,焼酎製造までのプログラムを集中して行うには,現在のカリキュラムに

おいて日程的に困難であると考えられる.

・個々の実習科目を有機的に連携させ、全学的な教育プログラムとして編成することが今後望まれる。

効果測定

 環境生物学実習では独自の授業評価アンケートを毎年行ってきた。「この実習によって環境生物学講

座に興味を持った」と答えた受講生は平成 14 年度には 67% に過ぎなかった。その後、授業改善を進

めたところ一旦は高まったが、用具や資料の不足により限界に来ていた。しかし、本プロジェクトを

導入した平成 18 年度から再び高まったことから、本プロジェクトは一定の教育改善効果をもたらした

と思われる(図 1)。

学部内での予算配分

 設備備品費を除き学部内でセレクションをかけなかったこともあるが、フィールドワークを採用し

ている多くの授業が参加し、事業規模に見合った予算が獲得できなかった。最終年度は、さらに予算

規模が縮小されるので、それにあわせて事業規模を設定する必要がある。

TA の評価

 TA を雇用したことの効果を評価する基準が定かでなく、TA がどれほど有効だったのか定量的判断

はしかねる。TA に関する評価基準ないしは評価方法を検討する必要があるのではなかろうか。

図 1.実習は講座選択の動機付けに有効か ?

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学内共同教育研究施設等成果報告

瀬戸浩二(汽水域研究センター准教授)

1.はじめに-事業全体の概要と目的- 学内共同教育研究施設等では,それぞれの施設の財産(研究成果・技術・設備など)を利用して,

学内の学生はもとより学外の一般人・生徒など幅広い人々を対象としたフィールド学習を行うことを

目的としてきた。平成 19 年度は,学内のフィールド学習対応の授業の新設や大学内のキャンパスツア

ー,高校生を対象とした講演や実習などを行った。

2.各事業の成果報告(1)宍道湖・中海における湖上実習(汽水域研究センター・瀬戸浩二)

【目的】

 汽水域研究センターにおける平成19年度のフィールド学習は,平成 18 年度に行った試行・準備成

果をふまえ,新授業を開設することを主な目的としている。フィールド学習に必要な施設・設備の整

備を行い,それらと平行して2つの新授業を開設する。これらは,従来開講していた「汽水域の科学」

のフィールド実習およびアドバンス実習という位置づけである。

【結果(成果)と考察(課題)】

1.汽水域研究センター中海分室のフィールド学習のための整備

汽水域におけるフィールド学習の拠点となる汽水域研究センター中海分室をソフト・ハードの両面か

ら整備を行った。センター規約には,分室の使用目的は研究のみに限られていたが,教育等にも幅広

く使えるよう規約改正を行った。ハード面では,液晶プロジェクターおよびスクリーンの設置,イン

ターネット等の使用のためのネット環境の整備,宿泊用品の充実などを行っている。

2.汽水域研究センター本庄観測プラットフォームのフィールド学習のための活用

研究観測用に今年度設置した本庄観測プラットホーム(観測筏)をフィールド実習に活用した。現在

のところ,船上実習では教員1名学生5名の人員が限度であるが,観測プラットホームでは,20名

の人員が可能で効率的に汽水域実習を行うことができるようになった。

3.フィールド学習用新授業の準備のための基礎調査と試行授業の実施

新授業試行のため,その縮小版を「環境地質学実験」で行った。この授業では,2時間程度,船上調

査を行い,持ち帰った試料を室内で観察し,それらをもとに中海の環境を考えるよう指導した.また,

授業開講前に基礎調査を行い,実習に備えた。

4.フィールド学習用新授業「宍道湖・中海体験学習」,「汽水域船上調査法実習」の開設

フィールド学習用新授業「宍道湖・中海体験学習」及び「汽水域船上調査法実習」を開設した。これ

らの授業は,「汽水域の科学」での座学でしかなかった部分を実際に体験し,考えるというフィールド

授業である。「宍道湖・中海体験学習」は,日帰りで中海・宍道湖を巡り,5名の学生が聴講した。「汽

水域船上調査法実習」は,1日本学で講義し,2泊3日で中海分室において実習を行った。この授業

では 10 名の学生が聴講した。

 新授業では,いくつかのトラブルは起ったものの,ほぼ予定通り実施された。しかし,募集人数に

対して履修者は少なかった。これは,新授業ということでまだ知られていないことや宣伝不足もあっ

たと思われるが,夏休みに行ったということも影響しているだろう。「汽水域船上調査法実習」では,

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10 人しか履修していないにも関わらず,3日間の日程を調整することはできなかった。そのため,一

部の学生に対しては補講授業を行っている。日程については,今後さらに議論する必要がある。

(2)「島大まるごとミュージアム」プログラム(島根大学ミュージアム・会下和宏)

【目的】

 島根大学キャンパスが歴史的環境に立地し、様々な自然・歴史資源に恵まれていることを理解させ

ることを目的とし、キャンパスツアー、特別講義「島大ミュージアム学」、企画展示「学者のお宝展」

などで、学内や周辺の展示室・野外資料を参加者・受講者に案内・解説した。企画展示「学者のお宝展」

では、学生自身による展示準備・展示解説を実施する参加型教育プログラムを試行した。

【結果(成果)と考察(課題)】

 受講者からは、「キャンパス内に古墳があること、学内に様々な標本資料が所蔵されていること、島

根大学が永い歴史をもつ伝統校であり遺跡のうえに立地していること等を知り、驚いた、興味深かっ

た…」等の感想がよせられた。

 今後はキャンパス内だけではなく、より広範囲にわたる周辺エリアの古墳・城下町・里山等の地域

資源も積極的に取り入れて教育プログラムを開発していくことを課題とする。

(3)高大連携の取り組み(産学連携センター・中村守彦)

【目的】

 島根県内の高校生を対象としたフィールド学習を産学連携センターが中心となり、全学的な取り組

みとして実施する。地方の高校生は、先端科学あるいは、その実用化を体験する機会に恵まれない。

大学入学前にサイエンスの魅力にふれ、地元に貢献できる生徒が育つことを主眼に置く。

【成果】

 スーパーサイエンス・ハイスクール(SSH)指定校の益田高等学校理数科の生徒(1年生、28名)

と出雲高校理数科の生徒(1年生、40名)が産学連携センター地域医学共同研究部門(出雲キャンパス)

を訪れた。「骨ネジ加工による再生医療」、「双方向通信ロボット開発」、「環境アレルギーに対する調湿

木炭の敷設効果」、「機能性食品開発と代替医療」について、研究開発した各教員が講演と実習を担当

した。さらに、医療機器等を共同開発した企業からも担当者が参加した。高校生からは活発な質問が

続き、「益々、科学に興味をもつようになった」、「最先端の科学を身近に感じた」など感想を述べた。

一方、フィールド学習を担当した教員は、「島根大学に入学して地域で活躍してほしい」とエールを送

った。本事業を通じた「高大連携」により、地元高校生が産学連携による実用化研究を体験する良い

機会となった。フィールド学習の様子は即日 NHK で放映され、翌日、山陰中央新報で報道された。

【考察】

 サイエンスを身近に感じ、地元の大学で最先端の科学研究が進んでいることに驚いたという生徒達

のアンケートが多かった。また、高校側からの強い要望で、島根県内で理数科を担当する高校教諭(6

校)に対して「理科教育の向上」を目的に研修会を催した。フィールド学習という見地からも確実に

地域連携が構築されたと評価できる。今後は一層、全学的な取り組みとなるよう創意工夫し、松江キ

ャンパスからの学生も参加が可能となる事業にする必要がある。

3.まとめと今後の課題 学内共同教育研究施設等では,目的に沿った形でプログラムを実行した。汽水域研究センターでは,

2つの教養授業を新設し,試行的に行った。いくつかのトラブルはあったものの,予定通り実行できた。

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しかし,日程の設定には問題があり,今後の課題として残った。また,授業内容のスキルアップ今後

とも継続して行わなければならない。島根大学ミュージアムでは,キャンパスツアーなどが行われて

いる。しかし,大学周辺には多くの遺跡等があり,学外のコースも開拓する必要がある。産学連携セ

ンターが行った高大連携の取り組みでは,大学の最先端研究等を高校生に知ってもらうという点で非

常に意義深いものである。今後,実施高校を増やしていく必要があると思われる。

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教育開発センター成果報告

山田剛史(教育開発センター講師)

1.はじめに-事業全体の概要と目的- 本プロジェクトにおける教育開発センターの主たる役割は,個別授業実践を超えた FD,評価,教養

教育の 3 領域に集約される。(1)FD については,「第 2 回フィールド・シンポジウム」の開催,報告

書の刊行(2)評価については,授業評価や教育効果・ニーズ調査,学内ヒアリング調査の実施,(3)

教養教育については,本年度より立ち上げた学部横断・相互乗り入れを重視した全学的展開を図るこ

とを目的とした「教養教育 WG」において学生支援の取り組みを開始した。

2.各事業の成果報告(1)FD活動の推進

【目的】

 個々の授業実践が自己点検・評価,改善されていくための潤滑油として,またフィールド学習に携

わる教員間のネットワークを強化するためのスキャフォールディングとして,全学的な見地からの FD

活動が求められ,その推進を行うことを目的とする。

【成果と課題】

 上記の目的を達成するために,第 2 回フィールド・シンポジウム「グローカルな大学づくりに向け

たフィールド学習教育プログラムの挑戦」を企画・実施した。学内外,学生・教員と様々な報告者が

一同に会し,議論を交わすことを可能にしている。また,ここでの報告内容などを掲載した「成果報告書」

を刊行し,学内外への周知を徹底することで,フィールド学習の意義・可能性について拡げることを

可能にする。ただし,以前多くの教職員の参画には届いていない状況がある。

(2)評価活動の推進

【目的】

 上記事業(1)とも関連するが,個々の授業実践が一定の改善を図っていくためには,また外部者へ

の説明責任(説得性)を可能にするためには,きちんとした評価を行う必要がある。多角的な観点か

らそうした Evidence を集積し,フィードバックすることを目的とする。

【結果と考察】

フィールド学習の教育効果について示唆するデータは,教育開発センターが独自に実施している調査

からも引き出すことが可能である。学生による授業評価アンケートと初年次教育調査のデータから,

フィールド学習に関するデータの再分析を行い,一定の効果を上げていることを確認した。また,教養・

専門それぞれの領域においてフィールド学習に資する授業をシラバス上から抽出し,その中から数名

の授業担当者に対してヒアリング調査を行うとともに,全ての科目担当者に対し運営管理に関わるア

ンケート調査も実施した。それらが,事業(1)のような活動を通じてフィードバックされる。

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(3)教養教育領域におけるフィールド学習の推進

【目的】

本概算要求は,全学的事業として位置づけられる故,学部・学科の専門領域に埋没した形で展開され

るのみでは済まされない。より定年次から学横断的・学部学科横断的な枠組み,すなわち教養教育の

中で展開されて然るべきであり,教養教育領域におけるフィールド学習の推進を目的とする。

【成果と課題】

上記の目的を達成するために,本年度が始まる直前に「教養教育フィールド学習ワーキング・グループ」

(筆者が WG リーダー)を設置した。その中で,「斐伊川プログラム」,「留学生のための島根の人と自然」

といった新たな全学的事業に着手した。さらに,正課の授業のみならず正課外での学生のフィールド

学習を支援し,総体としてフィールド学習の持つ教育力を活かすべく「学生によるフィールド学習支

援プログラム」をスタートさせた。また,学生が履修する上で,フィールド学習関連科目をより見え

やすい形で提示することを目的として,次年度からシラバス上にアイコンを付与することを決定した。

(4)先進的な事例・動向調査

【目的】

本概算要求がより高い教育効果を産み,果ては他大学へ影響を及ぼす取り組みへと発展していくため

には,他大学の動向,先進的な取り組みを参照し,相対化・取捨選択していくことが必要不可欠であり,

これらの実現を目的とする。

【結果と考察】

上記の目的を達成するために,フィールド・シンポジウムで講師招聘した鹿児島大学へのヒアリング

調査や環境教育,フィールド学習に関連するシンポジウムやフォーラムに参加し,情報収集を行った。

簡潔にまとめれば,環境教育は ESD へ,フィールド学習はサービス・ラーニングへ移行しており,場

合によっては両者が相補完的に組織化されている。いずれも単発の授業の集積ではなく,プログラム

として体系化され,特色 GP などの支援と連動して,活発な動きを見せている。

3.まとめと今後の課題 教育開発センターでは,個別の授業実践を超えた枠組みに抵触する事業を担うことが中心となる。

そこで,FD 活動の推進,評価活動の推進,教養教育領域におけるフィールド学習の推進,そして先進

的な事例・動向調査を行った。しかしながら,教育開発センターの組織体制はまだまだ脆弱である故,

それぞれの取り組みにはまだまだ改善・推進の余地がある。

フィールド学習は,広義には昨今取りざたされているアクティブ・ラーニングの一部でもあり,その

効果は高いことが各種調査からも見受けられた。同様,特に地方大学においては,地域との緊密な関

係の中で大学教育を再考していくことが求められ,サービス・ラーニングなどに多数の大学が積極的

に乗り出し成果をあげている。本学では,フィールド学習に値する授業数そのものは比較的多いものの,

それらがこうした動向と連動し,ポリシー(フィールド学習に対する共通認識)を明確にし,組織的

に体系化していくことが最重要課題としてあげられるであろう。

以上

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全学的展開のうち「フィールド学習を取り入れた環境教育」に関わる成果報告

松本一郎(教育学部准教授)

1.目的と概要 本年度、全学的展開の一つとして環境学習プログラム(島根大学と島根県との共同製作)を活用す

ることにより、大学生版「環境学習プログラム」の構築を目指した。同時に、ISO14001 との連携をは

かりプログラムの拡充と環境教育の全学への普及の可能性を模索することを目的とした。この事業を

展開するにあたり、受講生が松江キャンパスの4学部全てを網羅し、300名を越える「環境問題通論」

で実施した。また、全学の環境関連科目を抽出し、新入生用に配布している冊子「環境関連科目ガイド」

を松江キャンパスの在校生全員に配布した。

2.結果(成果)と考察(課題) 本事業では、過去に島根大学と島根県とが共同で作製した「環境学習プログラム」を増刷し、それ

ぞれのプログラムを分割し、全受講生に配布し、課題として学生自らが実際のフィールド(自然科学

フィールドと社会科学フィールドの双方を含んでいる)に出向き学習するという展開を行った。大人

数講義でのフィールド授業の展開の一つの可能性を模索した事業であり、環境に関連した学内外への

フィールド学習を行うことができた。

 「環境関連科目ガイド」については、内容の更新と松江キャンパスの全在校生に配布することができ

た。関連して、シラバスについては「環境関連科目」

のアイコンとともに「フィールド授業関連科目」の

アイコンを付し、学生の「環境」および「フィール

ド」に関するジャンルごとの特徴や授業の効果的な

選択やその履修計画を可能にした。

 最終的には(課題としては)、本事業終了時に「フ

ィールドを取り入れた環境教育」のあり方やその内

容および方法について、一定の結論を得るとともに、

環境問題通論をはじめとした全学の環境関連科目の

中に、その成果を普及することである。

落ち葉拾いにボランティアで参加する環境問題通論の受講生

環境問題通論の講義資料として「環境学習プログラム」の内容の一部を修正・抜粋し受講生全員に配布することができた。

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以上

増刷した「環境学習プログラム」の冊子 「環境学習プログラム」を用いフィールド学習を

行った成果としての学生レポート

環境関連科目ガイドの表紙 環境関連科目のジャンル分けと

「環境アイコン」および「フィールドアイコン」

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留学生向けフィールド学習 成果報告

高須 晃(総合理工学部地球資源環境学科・教授)

1.はじめに-事業全体の概要と目的- 渡日初期の島根大学への留学生に対し,島根の自然・社会・歴史・文化を体験させるフィールド学

習授業を提供し,その後の留学生の積極的な学習・研究への動機づけとする.

2.各事業の成果報告【目的】 フィールドは石見銀山周辺に設定し,世界遺産となった銀山関係をはじめ,生物資源,文化,社会

問題(中山間地,過疎)などをテーマにするフィールド学習プログラムを構築する.このフィールド

学習授業には日本人学生も受講者または TA として参加する.また,在学2年以上の留学生は TA と

して授業運営に参加する.今年度はこのフィールド学習授業の試行を行う.

【結果(成果)と考察(課題)】成果

(1)事前授業,フィールド学習,事後授業の授業プログラム案を作成した.この際,社会・国際連携

課留学生係とも協議し,今後も共同してプログラムの構築を進めることとした.

(2)事前授業と事後授業で使用するためのフィールド学習用機器(ビデオカメラ)を購入した.また,

ビデオ編集,資料集作成のためのパソコン環境(ソフトウエア)を整備した.これらにより,フィー

ルド学習中に TA が撮影したビデオ映像を編集し,事後学習において利用するほか,フィールド学習

参加者にメディアを配布することとした.

(3)フィールド学習のための教材開発・教材研究,TA 研修とフィールド学習授業の試行を行った(3

月中に2回,計 14 名参加).また,フィールド学習のための資料集(試行版)を作成した(現在作成中).

課題 フィールド学習のための資料収集や教材開発に時間を要し,フィールド学習授業プログラム(案)

の作成が遅れた.結果として,当初予定した渡日初期の留学生約 20 名が参加する授業形式での試行は

実施できなかった.平成 19 年度の段階では,中山間地の過疎や大都市との格差の問題,また産業再

生など島根県の抱える問題点を留学生向きのフィールドとして開発し,設定することができなかった.

これらは平成 21 年度の課題として残った.

3.まとめと今後の課題(1)石見銀山周辺をフィールドとしたフィールド学習プログラムを完成させ,平成 20 年 10-11 月に

来日 1 年目の留学生を対象にフィールド授業の試行を行う.また,この授業の単位化について検討する.

(2)平成 19 年度の試行と合わせて,教育効果等の評価を行う.

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学生によるフィールド学習支援プログラム 採択事業

「しまねの歩き方」プロジェクト 成果報告             

田邉 真衣子(島根大学法文学部 3回生/コミュニティ・ワークス)

●問題意識

県外から来た学生は、大学の 4 年間を島根で過ごすにもかかわらず、そのほとんどが大学周辺で生活

をしている。島根のおもしろい地域や人を知らずに「島根はつまらない、住む価値はない」と思い、

彼らは卒業していく。在学中に地域に出て、“島根”という土地で活躍している人々や島根の豊かな“

資源”に触れる機会があったならば、学生たちは卒業後島根の魅力を方々で語ったり、リピーターに

つながるのではないか。

近年、地域の持つ潜在的な能力と可能性を懸けて新たな挑戦をする島根県海士町の取り組みに注目し

た県外大学生がこの地域に多く訪れ、地域との交流を重ねている。外部の人が来ることにより島の住

民は自分の分からなかった島の良さを発見・再認識すると共に、地域の文化を大切にするようになる

そうだ。そのような交流は県外大学生に限らず地元の学生にもできるのではないか。むしろ住民と身

近な地元の学生が行うからこそ発展の可能性があると考える。

このように島根の地域に注目し訪れる他大学の学生がいる一方で、島根大学の学生は地域で活動する

ことに対し、消極的である。また、そのような活動に取り組んでいても、他の島大生に認知してもら

う手段が少ない。学生同士が相互に自分たちの取り組みを知ることができる、学生の活動誌が必要で

あると考える。

●目的

今回、我々が地域情報紙を発行する目的は、学生が地域に出て活動することの面白さ、学生自身が体

験した島根県の魅力を紙面を通じて島根大学の学生に知ってもらう事である。また、フィールド学習

の手法の一つに地域情報誌の発行を提案したい。

●活動内容

地域情報紙の発行に向け、記事の企画、取材、編集作業を行った。今回の取材地域は松江市内、大田

市大森町である。

紙面の掲載内容は、以下の通り。

・ハニカミデート in 松江…プロジェクトメンバー外の大学生に参加してもらい、観光雑誌には載って

いないオリジナルのデートコースを組み、松江市内を歩いてもらった。

・石見銀山遺跡 世界遺産登録…学生が自ら地域に訪れ地元の方の話を伺いながら、地域の問題を明ら

かにする。そしてその問題に対し、学生なりの解決方法を地域に提案するという企画。

・大学生活をデザインする?…島根大学生は自信があるのだろうか、という疑問より学内で「自信アン

ケート」を実施。大学生活を積極的に楽しむための提案をいろんな形で掲載。

・enjoy しまね…プロジェクトメンバーが学生生活の中で感じた島根県の魅力を写真と文で紹介。

形式はタブロイド判で、8ページフルカラー。1000部発行し、大学の図書館を中心に配布。学外

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では書店などに設置。対象は、島根大学の学生。

●成果

(1)プロジェクトメンバーのスキルアップ

プロジェクトでは主に、記事の企画、取材、編集作業を行った。企画段階では島根県内の社会的文化

的資源を活用し、また学生らしさの残るオリジナルな記事づくりに取り組んだ。取材段階では、地元

の方との対話を重ね、地域の問題を洗い出し、解決策の提案などを行った。編集段階では、地域を歩

く中で感じた気付き、学びを大切にし、自分たちが得たものを他人に分かりやすく伝えるにはどうし

たらよいか、というところに力を入れて編集に取り組んだ。このように、プロジェクトに参加した学

生は、室内の授業では得る事が難しい、創造的な企画力、コミュニケーション能力、自己表現能力な

どのスキルを習得する事ができた。また他に、地域の方との出会う中で様々な生き方に触れる事がで

きた。これは、学生自身の卒業後の生き方を考えるきっかけにもなった。

(2)読者アンケート

共通教養科目の「松江のまちづくり」という授業において、受講生に「しまねの歩き方」(以下本誌)

を100部配布し、アンケートをとった。

結果は(図1・図2)参照。

このように、本誌に対する学生の反応は上々である。

(3)その他の反応

12月5日付の山陰中央新報に活動の様子が掲載された。それを読んだ、地域の方よりいくらか送っ

て欲しいという反響もあった。また、2月には大学開放事業「みのりの小道」において学外の方に本

誌を PR した。その際に、地域の方よりアドバイスなどの意見を頂いた。

図1 「次回も発行してほしいですか?」という問いに対して 図2 「こういうフリーペーパーづくりに参加したいと思いますか」という問いに対して

2008 年 1 月 16 日実施 回答者数 75 人(学生)共通教養科目「松江のまちづくり」にて

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Page 39: の構築 -島根大学から世界が見える教育の展開-」 「 島根の ... · 2019-12-12 · 平成18年度 特別教育研究経費 「 島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラム

●問題点

プロジェクトの遂行にあたり、学内での活動には様々な障害があった。まず一つ目に、学生が集まっ

て作業できる場所が極端に少ないこと。学内には、ミーティングをする場所はもちろん、機材や資料

などを置いておく場所がなく不便。学生に開放されている大学学生会館は一部のサークルや大学生協

の予約によりほとんど使えない。また課外活動施設(通称ボックス棟)も一部のサークルしか使えな

いため不便である。

二つ目は、学生が自由に情報を交換できる場所がないこと。プロジェクトへの参加の呼びかけを行う

にしても、学内の授業関係の掲示板の隅の方を利用してポスターを貼るなどしか出来ず、情報が学生

に伝わらない。(図3)を見て分かるように少なくともフィールドワークに参加したい学生はいるのだ

から、このような学生に情報が伝わる仕組みが必要。

三つ目に、活動で一番の悩みは活動資金である。今回は支援金があったからこそ実現したが、これか

らも学生の活動に対する支援金制度を拡充して欲しい。

●私たちの課題

今回の地域情報誌発行をきっかけとして今後も継続的に地域に出て、活動を続ける事が課題である。

また、活動を受け継いでくれる学生(後継者)探しにも力を入れる。活動の継続のためにも活動資金

を確保しなければならない。

●今後の動き

現在、「しまねの歩き方」のプロジェクトメンバーの中より、今回得た経験を活かしたいと集まった3

人のメンバーと新たに加わった学生1人の計4人で「奥出雲の歩き方」という地域情報紙を製作して

いる。これは、「しまねの歩き方」をご覧になった島根大学の先生の依頼により新たに始まったプロジ

ェクト。このように学内ではじわじわと「しまねの歩き方」の効果が現れ始めている。

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学生によるフィールド学習支援プログラム 採択事業

プレプレまつえキッズ

地域と密着したプレーパークの展開

吉田 慧(島根大学生物資源科学部 3回生/プレプレまつえキッズ)

<経緯>

自分の責任で自由に遊ぶ遊び場、プレーパークを目指し活動

<問題意識>

過去6年間の活動を通し、「地域連携」という点で問題点を整理

・実際の活動を、地域の住民や、保護者に見てもらう機会が少なく、活動特徴の認知度が低い

・地元公民館、学校等との連携が不足

・よりよい遊び場作りに対し、学生の意識見解の不足

<目的>

1:活動、特徴の認知度の向上

2:地元公民館、学校等との連携

3:よりよい遊び場をつくる

<実施方法>

1:活動、特徴の認知度の向上

a、こどもだけでなく保護者にとっても居心地のよい遊び場づくり

荷物置き場、座れるスペース作り、日陰作り

b、チラシへのエピソード掲載等による広報活動

 文章だけでなく、写真の掲載とコメントを載せる等の工夫

 公民館の後援を受けていることを明記

 掲載情報の整理

c、活動報告書の作成、報告会の実施

d、デリバリープレーパークの実施

 普段とは違う場所での開園、依頼受付

2:地元公民館、学校等との連携

e、公民館行事、近隣地域のイベントの積極的参加

 遊びに関わる活動への参加、依頼受付

f、地元公民館に後援してもらう

「子どもの心安らぐ居場所づくり事業」登録

 土地の提供

 公民館便りでの開園日程告知

3:よりよい遊び場をつくる

g、講座への参加(知識、技術の習得)

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 他の子育て、子育ち支援団体との交流

 講座(講演会、ワークショップ、講習)への参加

h、 他のプレーパークの見学

 他のプレーパークを実際に見て、雰囲気を感じる

 現地のプレーリーダーや世話人の方々との交流

<結果>

年間で、延べ1200人のこどもが来園し、遊び場での保護者の姿が明確に増えていた

保護者の方々のリピーターが多かった

<問題点>

学内で集まりやすい場所がなく、学生間の連携がとりにくい。加えて信頼関係を結ぶまでに時間がか

かる

学部学科により関わりにくい学生がいる

大学に何を頼ることができるのかがわかりづらい

<今後>

活動内容の見直し、整理を含めた活動報告書の作成、報告会の実施

地域を巻き込む遊び場づくり

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フィ

ール

ド学

習プ

ログ

ラム

20

07

年度

事業

成果

報告

(法

文学

部)

実施

主体

法経

学科

経済

分野

社会

文化

学科

社会

学研

究室

社会

文化

学科

考古

学研

究室

言語

文化

学科

伊集

院研

究室

プロ

グラ

ムの

名称

経済

活動

施設

(生

産・

流通

・廃

棄)

研修

を通

じた

経済

学専

門教

育高

度化

プロ

ジェ

クト

農山

漁村

フィ

ール

ドワ

ーク

:質

的社

会調

査教

育プ

ログ

ラム

遺跡

の調

査を

通し

たフ

ィー

ルド

教育

写真

詩集

の製

作・

展示

によ

る、

学生

の資

料編

集能

力・

メデ

ィア

理解

・地

域交

流を

促進

させ

るプ

ロジ

ェク

新規

・継

続改

訂・

継続

改訂

・継

続改

訂・

継続

新規

プロ

グラ

ムの

目的

及び

成果

〔目

的〕

 地

域振

興を

めぐ

る紛

争の

現場

をめ

ぐる

こと

で、

自ら

の専

門分

野で

の学

習に

むけ

た意

識付

けし

、学

習へ

のモ

チベ

ーシ

ョン

を高

める

こと

を目

的と

して

いる

。〔

成果

〕第

1プ

ログ

ラム

「島

根・

山口

にお

ける

原発

調査

報告

」  

  

  

  

  

  

 現

在日

本で

は55

基の

原子

力発

電施

設が

稼働

中(

さら

に13

基が

計画

中)

であ

るが

、国

は地

球温

暖化

対策

など

を理

由に

エネ

ルギ

ー政

策の

重要

施策

とし

て原

発を

推し

進め

てい

る。

しか

し、

相次

ぐ原

発事

故や

デー

タ改

ざん

など

の不

祥事

、活

断層

調査

など

の不

十分

さ、

放射

性廃

棄物

の処

分問

題な

ど、

原発

推進

には

課題

も多

い。

さら

に、

原発

の立

地で

なん

とか

地域

振興

を図

りた

い自

治体

の思

惑と

、そ

れを

阻止

した

い住

民と

の間

でし

ばし

ば対

立が

起き

てい

る。

今回

の調

査は

その

よう

な原

発建

設を

めぐ

って

対立

する

山口

県上

関町

での

聞き

取り

を中

心に

、地

方経

済の

視点

から

原発

立地

の課

題を

探っ

てみ

た。

 山

口県

上関

町は

過疎

高齢

化に

よっ

て地

域経

済が

沈滞

して

いる

ばか

りか

、国

が進

める

三位

一体

の改

革に

よっ

て地

方財

政も

危機

的状

況に

ある

。そ

こで

、自

治体

は「

原発

は安

全で

効率

的な

発電

方法

であ

り、

立地

自治

体に

は国

から

多額

の交

付金

が支

給さ

れる

ため

、財

政上

も有

利で

ある

」と

して

中国

電力

に対

し原

発の

立地

を申

請し

た。

この

申請

が認

めら

れれ

ば、

初期

対策

交付

金と

して

30億

円、

立地

促進

対策

交付

金と

して

144億

円が

自治

体に

支給

され

る。

上関

町の

住民

全体

の意

向は

6:4で

原発

賛成

がや

や有

利で

ある

が、

実際

に建

設さ

れる

祝島

地区

では

、1:9で

反対

が圧

倒的

多数

であ

る。

この

ため

、同

じ町

内で

推進

派の

自治

体+

中国

電力

と反

対派

住民

が対

立す

る事

態と

なっ

てい

る。

 推

進派

は、

原発

建設

によ

る雇

用増

と地

域振

興、

国か

らの

交付

金の

増額

など

の経

済的

メリ

ット

を強

調す

るが

、他

方で

農・

水産

業を

中心

とす

る地

域産

業が

崩壊

し、そ

のた

め原

発依

存が

加速

し地

域経

済は

自律

でき

ない

とし

て反

対派

はデ

メリ

ット

を強

調し

てい

る。

また

、地

元で

は必

要の

ない

電力

を作

り出

すた

めに

安全

な暮

らし

を失

う可

能性

も反

対の

大き

な理

由と

なっ

てい

る。

 調

査し

た限

りで

は、

推進

派・

反対

派が

きち

んと

意見

交換

を行

う場

が設

けら

れて

いな

いよ

うで

あり

、い

たず

らに

対立

を深

めて

いる

よう

にも

見受

けら

れた

。一

日も

はや

いオ

ープ

ンな

場で

の議

論が

問題

を打

開す

る道

と考

えら

れる

。な

お、

中国

電力

をは

じめ

自治

体側

の十

分な

情報

公開

は最

も重

要な

議論

の前

提で

ある

。 

意見

交換

では

、地

震が

多く

地盤

が不

安定

な日

本で

原発

の安

全性

基準

はど

うな

って

いる

のか

、ま

た安

全性

を担

保す

るた

めに

どの

よう

なチ

ェッ

ク体

制が

整備

され

てい

るの

かな

どの

質問

や、

地方

財政

の逼

迫か

ら原

発に

頼ら

ざる

を得

ない

日本

の地

域間

格差

の問

題な

どが

議論

され

た。

第二

プロ

グラ

ム「

まち

づく

りと

景観

問題

―鞆

の浦

の景

観論

争を

例に

」  

全国

各地

で地

域開

発を

めぐ

って

行政

と住

民が

しば

しば

対立

し、

住民

生活

に大

きな

影響

を与

えて

いる

。背

景の

一つ

には

、社

会が

成熟

する

につ

れ、

まち

づく

りに

おい

ても

歴史

・文

化・

景観

とい

った

無形

の価

値が

重視

され

るよ

うに

なっ

てき

たこ

とが

挙げ

られ

る。

 今

回の

調査

では

、朝

鮮通

信使

に「

日東

第一

形勝

」と

賞賛

され

た観

光地

、広

島県

福山

市鞆

の浦

地区

での

埋め

立て

架橋

建設

問題

を調

査し

、対

立の

原因

は何

か、

そし

て対

立を

引き

起こ

さず

にま

ちづ

くり

を進

める

方法

は何

かを

探っ

た。

 鞆

の浦

は、

中世

から

のた

たず

まい

を残

す数

少な

い港

湾都

市の

一つ

であ

る。

世界

遺産

登録

に強

い影

響力

をも

つ国

際記

念物

・遺

跡会

議(

ICOM

OS)

が、

現状

での

保存

・修

復を

決議

する

など

、そ

の価

値は

世界

的に

も高

く評

価さ

れて

いる

。し

かし

、中

世か

らの

都市

構造

は、

現代

の車

社会

とは

相容

れな

い構

造を

もっ

てい

る。

そこ

で、

住民

の生

活環

境の

改善

、交

通渋

滞の

緩和

と歩

行者

の安

全、

観光

客の

ため

の駐

車場

整備

など

目的

に、

鞆の

浦の

一部

を埋

め立

て架

橋を

建設

する

計画

が持

ち上

がっ

た。

住民

から

の反

対運

動や

行政

側の

説明

不十

分な

ども

手伝

い、

鞆の

浦の

架橋

建設

問題

は現

在法

廷闘

争ま

で発

展し

てい

る。

 今

回の

対立

は大

きく

3つ

の側

面を

持っ

てい

る。

第1は

、架

橋建

設に

よっ

て観

光客

の数

が増

える

のか

どう

かと

いう

イン

セン

ティ

ブの

問題

。交

通渋

滞の

緩和

、駐

車場

の整

備な

どが

進む

一方

で、

せっ

かく

の景

観が

破壊

され

てし

まっ

たの

では

そも

そも

意味

がな

いと

いう

のが

反対

派の

主張

であ

る。

第2は

、行

政に

よる

説明

責任

と説

明内

容の

信憑

性の

問題

であ

る。

架橋

以外

の代

替案

につ

いて

の検

討な

どが

不十

分で

、架

橋建

設に

至っ

た経

緯が

必ず

しも

明確

では

ない

。第

3は

、意

志決

定プ

ロセ

スの

問題

であ

る。

双方

が主

張す

る住

民意

見が

、ど

の程

度民

意を

反映

した

もの

であ

るか

、あ

るい

は民

意の

集約

方法

に偏

りは

ない

か、

再度

検討

する

とと

もに

、住

民投

票な

どの

方法

も検

討す

べき

であ

る。

 鞆

の浦

の事

例か

ら引

き出

され

た教

訓と

して

は、

住民

参加

のな

い架

橋建

設計

画が

一方

的に

提示

され

たた

め、

住民

は賛

成か

反対

かの

二者

択一

を迫

られ

てし

まい

、協

力し

てま

ちづ

くり

をす

すめ

る機

運が

醸成

でき

なか

った

こと

。行

政が

事業

を強

行し

たた

め、住

民は

法的

措置

に訴

える

しか

方法

がな

く、対

立は

一層

激化

し、

今後

のま

ちづ

くり

に大

きな

しこ

りを

残す

こと

にな

って

しま

った

こと

など

があ

げら

れる

〔目

的〕

 社

会調

査の

技法

とし

ては

,大

きく

分け

て量

的な

アプ

ロー

チと

質的

なア

プロ

ーチ

があ

る。

これ

まで

授業

では

,量

的な

アプ

ロー

チの

教育

に重

点を

置い

てき

たた

め,

学生

にと

って

質的

なア

プロ

ーチ

を習

得す

る機

会が

十分

だっ

たと

はい

えな

い。

そこ

で本

プロ

グラ

ムで

は,

短期

集中

的に

質的

アプ

ロー

チの

社会

調査

法を

実践

的に

学ぶ

こと

をね

らい

とし

た。

内容

は,

学生

が自

ら,

県内

の農

村部

に出

向き

,住

民の

方た

ちに

イン

タビ

ュー

を行

ない

,過

疎地

域の

人び

との

暮ら

しに

つい

て調

べる

とい

うも

ので

ある

〔成

果〕

今回

,学

生が

行な

った

住民

の方

たち

への

イン

タビ

ュー

の内

容を

,「聞

き書

き文

集」

とい

うか

たち

で製

本化

した

。そ

の成

果物

から

みて

,本

プロ

グラ

ムを

通し

て学

生は

,量

的な

社会

調査

法で

はな

かな

か接

近す

るの

が難

しい

現場

の生

々し

い様

子に

直接

触れ

るこ

とが

でき

,質

的調

査の

意義

を体

験的

に理

解す

るこ

とが

でき

たと

評価

でき

る。

 イ

ンタ

ビュ

ーに

応じ

てく

ださ

った

住民

の方

たち

には

貴重

な時

間を

さい

ても

らう

こと

にな

った

が,

これ

を機

に,

今後

も学

生た

ちと

の交

流を

実現

して

いき

たい

とい

うお

言葉

もい

ただ

いた

(な

お,

この

後,

別の

研究

プロ

ジェ

クト

経費

によ

って

,こ

の文

集を

各戸

に配

布し

,再

び学

生を

各戸

へ派

遣し

てそ

の感

想や

効果

につ

いて

たず

ねる

第2

次調

査を

行な

って

いる

。)

〔目

的〕

 遺

跡を

中心

とし

たフ

ィー

ルド

調査

は、

考古

学の

教育

・研

究に

欠か

せな

い学

習プ

ログ

ラム

であ

る。

また

考古

学は

地域

に根

ざし

た学

問で

あり

、学

生が

大学

の外

で遺

跡の

調査

・研

究に

あた

るこ

とは

人間

形成

の重

要な

機会

とな

る。

これ

まで

の授

業で

も学

生の

フィ

ール

ド学

習の

場と

して

、山

陰地

域に

おけ

る遺

跡の

調査

・研

究を

行い

、そ

の中

で学

生に

専門

的な

知識

を習

得さ

せて

きた

。本

プロ

グラ

ムで

は、

新た

な取

り組

みと

して

遺跡

の調

査を

行う

にあ

たっ

て鳥

取大

学に

も参

加を

呼び

かけ

、他

大学

生と

の交

流を

深め

る中

で学

生が

広い

視野

を持

つこ

とを

目指

した

〔成

果と

課題

〕島

根大

学単

独で

はな

く、

大学

の壁

を越

えて

鳥取

大学

と共

同で

鳥取

県西

伯郡

南部

町普

段寺

古墳

群の

調査

を行

い、

これ

まで

不明

であ

った

普段

寺1

・2

号墳

の墳

形や

規模

を明

らか

にす

るな

ど学

術的

な成

果を

挙げ

た。

さら

に遺

跡の

調査

を通

して

、学

生は

鳥取

大学

生と

協同

で調

査や

生活

を行

う中

で交

流を

深め

、地

元教

育委

員会

や地

元住

民と

の関

係も

構築

し、

教室

の講

議・

演習

では

得ら

れな

い実

社会

との

交流

を得

るこ

とが

でき

た。

本プ

ログ

ラム

のフ

ィー

ルド

学習

は、

学生

にと

って

人間

形成

の場

とし

て有

効で

あっ

た。

〔目

的〕

 前

期「

芸術

学演

習I」

では

、芸

術学

で重

要な

視覚

資料

の収

集と

、写

真情

報と

文字

情報

の編

集能

力の

向上

、本

とい

うメ

ディ

アの

成り

立ち

の理

解を

目的

とし

、「写

真詩

集」

の制

作を

おこ

なっ

た。

後期

「芸

術学

演習

II」

では

、前

期の

授業

で得

た装

丁技

術を

活か

し、

本の

展覧

会開

催と

いう

目標

を与

えた

。授

業で

は、

展覧

会の

テー

マ設

定、

その

テー

マに

基づ

く作

品制

作、

会場

の展

示空

間設

計や

展覧

会の

宣伝

計画

を行

った

。こ

のよ

うな

課題

の目

的は

、芸

術学

に固

有の

能力

の育

成だ

けで

なく

、企

画力

、集

団で

の行

動力

の育

成、

地域

との

交流

とい

う、

論文

執筆

や社

会生

活に

も必

要と

され

る能

力の

育成

まで

視野

に入

れた

もの

であ

る。

また

、展

覧会

を学

生の

目標

とす

るこ

とは

、教

員に

とっ

ては

学生

の学

習達

成度

を向

上さ

せる

手段

でも

ある

。な

ぜな

ら学

外で

の展

示を

最終

目標

にす

るこ

とは

、学

内で

の成

果発

表に

どう

して

も付

きま

とう

甘え

を許

さず

、学

生の

モチ

ベー

ショ

ンを

向上

させ

、全

体の

完成

度を

上げ

、地

域の

人々

から

の評

価が

学生

にも

たら

す教

育効

果を

期待

でき

るか

らだ

〔成

果と

課題

〕 

2000

年1月

18日

から

30日

まで

、「ギ

ャラ

リー

SOUKA」(

松江

市白

潟本

町33

出雲

ビル

4階

)に

て『

水属

感』

と題

した

「さ

んず

い」

の部

首を

持つ

漢字

をテ

ーマ

にし

た展

覧会

を開

催し

た。

テー

マは

水の

都、

松江

で学

んで

いる

こと

を意

識し

て学

生た

ちが

選ん

だも

のだ

当初

の目

的通

り、

写真

の撮

影能

力、

文字

と映

像の

編集

能力

、装

丁の

グラ

フィ

ック

デザ

イン

を通

した

コン

ピュ

ータ

の習

熟、

製本

を通

した

本メ

ディ

アの

理解

、展

覧会

の計

画で

養わ

れた

企画

力と

実行

力、

画廊

や様

々な

マス

・メ

ディ

アの

広報

の方

との

交渉

の経

験、

HP

の作

成、

会期

中の

会場

運営

、ご

来場

くだ

さっ

た方

との

交流

など

、十

分に

形に

なら

なか

った

もの

もあ

るが

、2

コマ

の分

の授

業と

して

は大

きな

な成

果を

達成

した

- 38 -

Page 43: の構築 -島根大学から世界が見える教育の展開-」 「 島根の ... · 2019-12-12 · 平成18年度 特別教育研究経費 「 島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラム

日程

・行

先20

07年

9月

19

ー9

月2

1日

行先

 島

根原

発・

広島

県福

山市

鞆の

浦・

山口

県上

関町

祝島

2007

年9月

17~

19日

行先

 島

根県

雲南

市掛

合町

入 

  

間宮

崎 

夏期

 20

07年

8月

19~

9月

1日

春期

 20

08年

3月

28~

4月

6日

行先

 鳥

取県

西伯

郡南

部町

天万

・ 

  

普段

寺古

墳群

2008

年1月

28日

~30

場所

 松

江市

白潟

町33

  

 「ギ

ャラ

リー

SOU

KA」

参加

者数

学部

 3

年生

 1

0名

教員

  

  

  

2名

学部

 2

年生

  

 1

名 

  

3年

生 

  

4名

  

 4

年生

以上

 9

名教

員 

  

  

  

3名

学部

 1

年生

 2

名 

  

2年

生 

1名

  

 3

年生

 2

名教

員 

  

  

3名

学部

 2

回生

  

 2

名 

  

3回

生 

  

4名

  

 4回

生 

  

3名

教員

1名

予算

使途

宿舎

借上

げ代

バス

借り

上げ

代講

師謝

礼調

査コ

ーデ

ィネ

ート

代金

研修

施設

使用

料金

レン

タカ

ー代

(ガ

ソリ

ン代

含む

宿舎

借上

げ代

貸し

蒲団

代レ

ンタ

カー

代、

ガソ

リン

代写

真現

像代

消耗

品代

(発

掘器

材な

ど)

ギャ

ラリ

ー会

場費

ダイ

レク

トメ

ール

印刷

費展

示関

係費

用作

品制

作機

材費

・材

料費

 

現地

・地

域の

人々

、団

体、

自治

体、

他大

学等

との

関係

〔ど

のよ

うな

協力

を得

たか

〕 

島根

県原

発関

連の

部署・中

国電

力・原

発反

対運

動市

民団

体,

鞆の

浦景

観保

全運

動の

市民

団体・福

山市

役所

,上

関町

役場

・中

国電

力上

関原

発設

置現

地事

務所

・祝

島住

民の

それ

ぞれ

から

,学

生へ

のレ

クチ

ャー

や資

料提

供を

頂き

、学

生自

身が

判断

する

ため

の多

くの

材料

を提

供し

ても

らっ

た。

〔そ

の関

係を

作る

ため

にど

のよ

うに

準備

した

か〕

 教

員に

よる

連絡

と事

前打

ち合

わせ

を実

施し

た。

〔そ

の中

での

学生

の役

割〕

 当

初は

フィ

ール

ドワ

ーク

の企

画も

含め

ての

学生

参加

を促

した

が,

うま

くい

かず

に結

局は

教員

によ

る準

備作

業が

中心

とな

って

しま

った

〔ど

のよ

うな

協力

を得

たか

〕 

集落

の住

民の

方(々

18名

)に,

学生

のイ

ンタ

ビュ

ー調

査へ

協力

して

いた

だい

た。

 こ

のほ

か,

住民

の方

々に

は,

調査

で聴

き取

った

内容

を「

聞き

書き

文集

」と

して

まと

める

さい

に誤

解や

問題

がな

いか

学生

の書

いた

文章

に目

を通

して

いた

だい

たり

,で

きあ

がっ

た文

集の

感想

を述

べて

もら

った

りし

た。

〔そ

の関

係を

作る

ため

にど

の 

よう

に準

備し

たか

〕 

フィ

ール

ド学

習の

実施

に先

立ち

,ま

ず教

員が

フィ

ール

ドと

なる

集落

のあ

る掛

合町

の総

務課

で住

民の

方た

ちへ

のア

プロ

ーチ

につ

いて

相談

させ

ても

らっ

た。

そこ

で,

集落

の自

治会

長の

方を

紹介

して

もら

い,

後日

,集

落の

自治

会常

会に

て調

査の

趣旨

を説

明さ

せて

いた

だき

協力

を要

請す

る機

会を

得た

。〔

その

中で

の学

生の

役割

〕 

学生

は,

3名

程度

のグ

ルー

プに

分か

れ,

それ

ぞれ

集落

の各

戸を

訪問

し,

イン

タビ

ュー

調査

を行

なっ

た。

その

内容

を文

章に

まと

めた

〔ど

のよ

うな

協力

を得

たか

〕 

本プ

ログ

ラム

では

、新

たな

取り

組み

とし

て遺

跡の

調査

を行

うに

あた

って

鳥取

大学

にも

参加

を呼

びか

け、

合同

調査

団を

結成

して

遺跡

の調

査を

行っ

た。

調査

にあ

たっ

ては

、地

元の

方々

から

宿舎

や風

呂の

提供

をは

じめ

とす

る暖

かい

ご支

援を

受け

た。

〔そ

の関

係を

作る

ため

にど

のよ

うに

準備

した

か〕

 教

員だ

けで

なく

、両

大学

の学

生間

で連

絡を

取り

合い

なが

ら準

備を

進め

た。

〔そ

の中

での

学生

の役

割〕

  

調査

にあ

たっ

ては

、学

生が

主体

とな

って

調査

の準

備か

ら片

付け

まで

行っ

てい

る。

本プ

ログ

ラム

のフ

ィー

ルド

学習

での

学生

の役

割は

、調

査の

主体

者で

中心

的な

もの

であ

る。

まず

、こ

の展

覧会

開催

のた

めに

関わ

って

下さ

った

すべ

ての

方、

理解

を示

し、

協力

して

下さ

った

方も

、そ

うで

ない

方も

、彼

らは

、学

生に

とっ

ては

どれ

もは

じめ

て付

き合

う「

学外

者の

大人

」で

あっ

た。

おそ

らく

、学

生に

とっ

て勇

気の

いる

体験

だっ

たと

思わ

れる

。彼

ら「

大人

」と

の関

係に

は特

別な

協力

は何

もな

かっ

た。

すべ

て常

識の

範囲

、ビ

ジネ

スの

範囲

の協

力で

ある

。 

一つ

のこ

とを

成し

遂げ

るの

はそ

れら

の人

間関

係を

一度

に動

かす

こと

にな

る。

学生

にと

って

一番

難し

いの

は、

付き

合い

の中

で次

々に

生じ

る「

締め

切り

」を

守る

こと

だっ

たよ

うだ

。こ

の締

め切

りは

自分

の都

合で

は動

かせ

ない

。そ

して

、学

生は

動き

出し

た計

画に

、次

々に

出て

くる

締め

切り

を間

に合

わせ

なが

ら、

最後

の展

覧会

の初

日前

夜に

向け

て準

備し

てい

く。

 教

員と

して

の役

割は

、失

敗が

見え

てい

ても

黙っ

てい

るこ

とだ

った

。た

だし

、リ

カバ

リー

でき

ない

と判

断し

た場

合は

、手

を出

した

。こ

の意

味で

必要

なの

は準

備で

はな

く、

教員

の経

験か

もし

れな

い。

- 39 -

Page 44: の構築 -島根大学から世界が見える教育の展開-」 「 島根の ... · 2019-12-12 · 平成18年度 特別教育研究経費 「 島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラム

フィ

ール

ド学

習と

して

の教

育的

効果

 地

域振

興を

めぐ

る行

政や

住民

の立

場が

相反

する

事例

を実

際に

見聞

きさ

せる

こと

で、

意見

対立

の背

景に

ある

もの

につ

いて

学生

自身

に考

えさ

せる

こと

がで

きた

。 

とく

に、地

域振

興を

実施

して

いく

うえ

で「

国―

地方

自治

体―

住民

」と

いう

多層

的な

主体

が存

在し

てお

り、

それ

ぞれ

がど

のよ

うな

地域

振興

像を

持っ

てい

てど

のよ

うな

齟齬

があ

るの

かに

つい

て実

感を

持っ

て考

えさ

せる

こと

がで

きた

。 

調査

後の

移動

中、

また

宿舎

で、

学生

によ

る議

論が

自生

的に

なさ

れた

こと

はそ

のこ

とを

示し

てい

ると

思わ

れる

 今

回,

学生

が行

なっ

た住

民の

方た

ちへ

のイ

ンタ

ビュ

ーの

内容

を,「

聞き

書き

文集

」と

いう

かた

ちで

製本

化し

たが

,そ

の成

果物

から

みて

,学

生は

本プ

ログ

ラム

を通

して

現場

の生

々し

い様

子に

直接

触れ

,質

的調

査の

意義

を体

験的

に理

解す

るこ

とが

でき

たと

思わ

れる

。こ

れま

での

授業

では

量的

な社

会調

査法

をメ

イン

に取

り上

げて

きた

ため

,こ

うし

たこ

とは

本プ

ログ

ラム

によ

って

はじ

めて

実現

でき

たこ

とで

ある

。 

イン

タビ

ュー

に応

じて

くだ

さっ

た住

民の

方た

ちに

は貴

重な

時間

をさ

いて

もら

うこ

とに

なっ

たが

,こ

れを

機に

,今

後も

学生

たち

との

交流

を実

現し

てい

きた

いと

いう

お言

葉も

いた

だい

た。

遺跡

を中

心と

した

フィ

ール

ド調

査は

、考

古学

の教

育・

研究

に欠

かせ

ない

学習

プロ

グラ

ムで

ある

。考

古学

は地

域に

根ざ

した

学問

であ

り、

学生

が大

学の

外で

遺跡

の調

査・

研究

にあ

たる

こと

は人

間形

成の

重要

な機

会と

なる

。こ

れま

での

授業

でも

学生

のフ

ィー

ルド

学習

の場

とし

て、

山陰

地域

にお

ける

遺跡

の調

査・

研究

を行

い、

その

中で

学生

に専

門的

な知

識を

習得

させ

てき

た。

本プ

ログ

ラム

では

、新

たな

取り

組み

とし

て遺

跡の

調査

を行

うに

あた

って

鳥取

大学

にも

参加

を呼

びか

け、

他大

学生

との

交流

を深

める

中で

学生

が広

い視

野を

持つ

こと

を目

指し

た。

 島

根大

学単

独で

はな

く、

大学

の壁

を越

えて

鳥取

大学

と共

同で

鳥取

県西

伯郡

南部

町普

段寺

古墳

群の

調査

を行

い、

これ

まで

不明

であ

った

普段

寺1

・2

号墳

の墳

形や

規模

を明

らか

にす

るな

ど学

術的

な成

果を

挙げ

た。

さら

に遺

跡の

調査

を通

して

、学

生は

鳥取

大学

生と

協同

で調

査や

生活

を行

う中

で交

流を

深め

、地

元教

育委

員会

や地

元住

民と

の関

係も

構築

し、

教室

の講

議・

演習

では

得ら

れな

い実

社会

との

交流

を得

るこ

とが

でき

た。

本プ

ログ

ラム

のフ

ィー

ルド

学習

は、

学生

にと

って

人間

形成

の場

とし

て有

効で

あっ

た。

①学

生の

自信

と責

任感

 時

に課

題の

要求

を高

いと

感じ

て不

満を

漏ら

して

いた

学生

たち

が、

展覧

会終

了後

、「広

報関

係が

上手

くい

かな

かっ

た」「

作品

の完

成が

遅れ

たこ

とで

展示

の準

備の

追い

込み

が苦

しく

なっ

た」

など

とい

った

反省

を語

った

。何

かを

成し

遂げ

るこ

とで

学生

が大

きく

変化

した

こと

を感

じた

。未

熟で

も展

覧会

を開

催し

たこ

とが

大き

な自

信に

繋が

った

よう

であ

る。

②来

場し

た学

生へ

の教

育効

果 

展覧

会は

、そ

れを

実行

した

者だ

けで

なく

、そ

れを

見に

きた

者へ

の教

育効

果も

ある

こと

を会

場の

ノー

トに

残さ

れた

コメ

ント

から

確認

でき

た。

来年

は今

回お

客さ

んだ

った

学生

が次

は開

催者

にな

って

いく

とい

う伝

統が

でき

れば

、そ

れが

、学

生を

育て

作品

の質

を向

上さ

せる

こと

とな

り、

ます

ます

効果

的な

プロ

グラ

ムと

なる

。次

の目

標は

この

活動

を持

続・

発展

させ

てい

くこ

とが

大切

にな

るだ

ろう

。 

③キ

ャリ

ア教

育、

地域

から

大学

への

教育

の場

とし

ての

展覧

会 

画廊

のオ

ーナ

ーや

来場

者、

お世

話に

なる

様々

な業

種の

人々

、大

学や

各メ

ディ

アの

人々

との

交流

が学

生に

もた

らす

もの

を実

感し

た。

大人

との

付き

合い

の中

で礼

儀や

道徳

や常

識を

学び

、そ

の仕

事を

垣間

見る

こと

はキ

ャリ

ア教

育に

も繋

がる

。ま

た、

多く

の学

生が

「人

に自

分の

作品

を見

られ

る怖

さ」

に気

付い

た。

大学

を出

た者

の多

くは

、答

え決

まっ

てな

いさ

まざ

まな

計画

に取

り組

み、

それ

を世

に問

うこ

とに

なる

。作

品を

展示

する

とい

う経

験は

、そ

のた

めの

良い

訓練

にな

る。

つま

り展

覧会

の開

催は

、大

学と

地域

の交

流の

場と

して

、大

学か

ら地

域へ

とい

う方

向だ

けで

なく

、地

域か

ら学

生へ

とい

う方

向の

ため

にな

る。

地域

に与

える

ので

はな

く地

域か

ら頂

くと

いう

方向

をお

膳立

てす

るこ

とも

、大

学の

地域

活性

、地

域交

流、

さら

には

地域

貢献

のあ

り方

には

なら

ない

だろ

うか

課題

企画

段階

から

学生

自身

の関

心を

もと

に自

ら立

案さ

せる

こと

がで

きな

かっ

た。

これ

を実

施す

るた

めに

は教

員側

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2フィールド・シンポジウム

グローカルな大学づくりに向けたフィールド学習教育プログラムの挑戦

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フィールド・シンポジウム

グローカルな大学づくりに向けたフィールド学習教育プログラムの挑戦

【主催】教育開発センター

【日時】2008 年 3 月 6 日(木)13 時 00 分 ̃17 時 30 分

【場所】島根大学 教養講義室 2 号館 701 号(松江)/ 講義棟 31 番講義室(出雲)

【対象】学生,教職員,一般

【内容】

 開会挨拶 / 高安克己(学術国際担当副学長)

 講師紹介・司会進行 / 山田剛史(教育開発センター・講師)

 1. 基調講演 /「特色 GP: 鹿児島の中に世界をみる教養科目群の構築について」

   報告①根建心具(鹿児島大学理学部教授・前教育センター長)

   報告② Robert J. Fouser(鹿児島大学教育センター准教授)

 2. フィールド学習教育プログラムの主旨説明 / 森 朋子(教育開発センター准教授)

 3. 部局等代表者による成果報告

   報告①国立療養所長島愛生園における実習 / 藤田委由(医学部教授)・向田千夏(医学部 2 年)

   報告②風土に根ざした建築教育の実践 / 長野和雄(総合理工学部准教授)

   報告③高大連携の取り組み / 中村守彦(産学連携センター 教授)

   報告④フィールド学習の効果と学生支援 / 山田剛史(教育開発センター講師)

   報告⑤斐伊川プロジェクトの取り組み / 竹永三男(法文学部教授)

 4. 学生グループによる成果報告

   報告①「しまねの歩き方」プロジェクト / 田邉真衣子(法文学部 3 年)

   報告②地域と密着したプレーパークの展開 / 吉田 慧(生物資源科学部 3 年)

 閉会挨拶 / 高須 晃(総合理工学部教授)

【参加者】41 名

山田講師 / それでは,時間が来ていますので,昨年度に引き続き第 2 回となりますフィールド・シン

ポジウム「グローカルな大学づくりに向けたフィールド学習教育プログラムの挑戦」を始めたいと思

います。文部科学省の概算要求事業の 2 年目の成果報告会になります。

 それでは,開会に先立ちまして,本日は学術国際担当の副学長であります高安副学長より開会のご

あいさつをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

開会挨拶

高安副学長 / シンポジウムの開会に当たりまして,簡単にごあいさつをさせていただきます。本来な

らば担当の坂本副学長がごあいさつするところでございますが,きょうは,あいにく別な用事で出張

しておりまして,私が代理でごあいさつを申し上げます。

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  まず初めに,非常に遠方よりこのシンポジウムのためにおいでいただきました鹿児島大学の根建

先生,ファウザー先生,本当にありがとうございます。活発な議論を展開していただき,島根大学に

も鹿児島大学の力を,ぜひ注入していただきたいと思っております。

 島根大学は,「人とともに地域とともに」を合い言葉に,地域における高等教育機関という役割を自

任しつつこれまでやってまいりました。鹿児島県も同様だと思いますが,御存じのように島根県は,

古くからの歴史があり,海も山も非常に変化に富んだ豊かな自然にも恵まれております。こうした条

件を生かした研究や教育をしようという気風は伝統的に本学にあったわけでございますが,これをも

う少し具体的に見える形で実践していくためにはどうしたらいいのか,ということを課題に据えて全

学的に取り組もう,ということになり,「島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラムの構築」

を進めてきたわけでございます。

 私ごとで恐縮ですが,これまで私も「地学」というフィールドとは切っても切れない分野を専門と

してきたわけでございますが,そのときの経験を少し申し上げます。地学の実習では学生はフィール

ドに出て実際に石を見たり,石をたたいたりするわけですが,そういった観察をするときの目は,教

室の中で先生の話を聞いているときの目とは全く違う活き活きとした目をしています。いろいろなと

ころで最近伺う話では,座学のときには,学生はどうもテレビの画面を見ているようなつもりで先生

の話を聞いているらしい,ということです。家にいるのと同じように,寝ころびながらでも,ジュー

ス飲みながらでも,ただ,画面の中で一方的にしゃべっている人をボーっとした意識で視ているだけで,

だから質問も出てこないのではないか,と。確かに,なるほど,と思います。しかし,フィールドに

学生を連れていきますと,これはいや応なしに自分たちで歩かないといけない。手を使ってさわらな

くてはいけない。自分の目で見なくてはいけない。心で感じなければいけない。これはだれも教えて

くれない。自分が自分で感じ取らなければいけない。無理やりそういう場に引きずり出す,というこ

とで非常に学習としては効果的である,と私自身も感じておりました。

 フィールドは単に教材を提供する場というだけではなくて,教員がそこを研究しているとすれば,

その研究している意味や面白さを素材を通して学生に直接的に教えることが可能になり,また,まさ

に本日のテーマでもあるように,地域から世界に発信できるようなさまざまな情報に展開する道筋が

見えてくると思います。「人とともに地域とともに」,あるいは「世界とともに」というところまで学

生の意識を引き上げることができるのではないか,と思っております。まさに,東京ではできない,

あるいは大阪でもできない,こういう地方あるいは地域でしかできないような新しい教育の実践の形

をぜひ,ここで議論して,それを発展させていただきたいと思っております。

 鹿児島大学もフィールドを活用した教育実践で非常に頑張っているということを私の友人からも聞

いております。例えば,鹿児島大学総合研究博物館は全県域を博物館のフィールドである,というコ

ンセプトでスタートした,ということです。当初は本学同様,建物もなかなか持てなくて,仕方がな

いからそうやらざるを得なかった,ということでもあったそうですけれども,しかし,県内にそれだ

け素材があって,これを活かさない手はないということで,非常に積極的にフィールドを対象とした

教育と研究に力を入れてきたと伺っております。ももちろん日常的な授業にも活かされていると聞い

ておりますので,ぜひそういうところも意見交換の中で紹介していただいて,我々にとっても,この

シンポジウムの成果を有意義に活用させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたしま

す。

 簡単ではございますが,開会のあいさつにかえさせていただきます。(拍手)

山田講師 / 高安副学長,ありがとうございました。

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 それでは,早速第 1 部の基調講演の方に移らせていただきたいと思います。2 時半までが第 1 部です。

今回は,鹿児島大学からお二人の先生をお迎えしています。

 簡単ではありますが,講師の先生の紹介をさせていただきます。

 まず,お一方目は,根建心具(ねだちむねとも)先生です。先生は,東北大学の理学部物理科学科

を出られて,博士号を取得されています。その後,東北大学理学部で助手を 7 年ほどされて,それか

ら鹿児島大学の教養部地学科に助教授で入られて,そこで教授へと。それから,平成 9 年には理学部

物理科学科宇宙コースで教授をされたり,教育委員会の運営主査をされたり,その縁もあって,平成

17 年からは鹿児島大学の教育センター長を 2 年務められたと。今は理学部に戻られていますが,今回

御紹介いただく平成 18 年度に採択された特色 GP の中心的存在として御活躍されたということもあっ

て,今回お話をいただくということになっています。

 専門は鉱床学で,地球科学,原子地球論,宇宙生物学ということです。

 以前,鹿児島にヒアリング調査に伺ったときに根建先生とお会いして,長時間にわたってじっくり

話を聞かせていただきました。魅力的な取り組みで,魅力的な先生で,ぜひ島根にお呼びしてお話を

もう 1 回聞きたいと思い,今回お呼びさせていただいた次第です。

 もうお一方は,ロバート・ファウザー先生です。昨日は,外国語教育に関する話題でお話していた

だいたんですが,ユニークな経歴を持っているユニークな先生でして,職歴を上げるともう切りがな

いんですが,いろいろなところで活躍されています。アメリカでお生まれになって,ミシガン大学の

大学院を修了されています。博士号を取られて,それから韓国に客員で行かれたり,アイルランドや

オーストラリア,立命館大学に熊本学園大学といったところを経て,一度鹿児島大学に着任されてい

ます。それから,2002 年から 2006 年まで京都大学の総合人間学部及び大学院人間・環境学研究科で

助教授を務められて,2006 年から再び鹿児島大学の教育センター,高等教育開発研究部の方に戻られ

ました。

 専門は,主に教育工学,言語学,日本語教育,外国語教育ということになっています。おもしろいのは,

アメリカの方で日本で韓国語を教えていることです。しかも工学にも強くて,きょうもお話しいただ

きますけども,Moodle 等の ICT を利用して鹿児島大学の特色 GP を全面的にサポートしています。お

二人とも,この GP に欠かせない人だということで,今回お呼びしています。

 それでは,早速ですが,まず第 1 部の根建先生の方からお話しいただきたいと思います。どうぞよ

ろしくお願いします。(拍手)

基調講演 1

根建教授 / 鹿児島大学の根建といいます。お招き頂きありがとうございます。山田先生が紹介された

ように,鹿児島大学では「鹿児島の中に世界をみる教養科目群の構築」という特色GPをやっております。

「島根大学から世界を見る」という島根大学のプロジェクトと類似性がありそうだということで,本日

は私達のプロジェクト,特に採択に至るまでの鹿児島大学の様子を中心に,ご紹介します。私はこの

特色 GP の推進副責任者という立場です。責任者は教育・学生担当理事です。教育センターが手いっ

ぱいであるため,理事が引き受け,実質的には私にやれと言われ続けてきました。その立場でご紹介

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したいと思います。

 最初に,このプロジェクトにかかわりそうな点に

絞って自己紹介致します。学生当時,大学紛争が盛

んでした。25 歳で助手になり,すぐ教授会の構成

員になりました。助手でありながら助教授が教授に

なる資格がないという意見に賛成投票をしたことが

重石になって,私のような無能はせめて自分で首を

切れなくてはならないと思って鹿児島大学の教養部

にきました。これは,私にとっては非常に幸運でし

た。学生や助手の時代,講座や学科,学部の壁を下

げろと訳もわからず騒いでいましたが,教養部には

講座がないばかりか,隣の研究室には専門分野のま

ったく異なる先生がいました。当時,全国のいろい

ろな先生と共同研究していましたが,新しいことを

なさろうとする先生は学科の壁や講座の壁で悩んで

おられ,私は随分よい環境にいると感じました。狭

い研究分野に拘束されることなく自由に研究ができ

ました。教養改組で理学部に移りましたが,新理学

部をつくるには専門分野をシャッフルせよとの文科

省のガイドラインがあり,物理とは余り関係のない

私が物理科学科の宇宙コースの先生と一緒に仕事をする事になりました。おかげさまで,いろんな幅

の広い角度から仕事ができたように思います。

 教養部がなくなった後,教養教育は共通教育委員会でオーガナイズすることになり,その仕事を手

伝わされました。教育センターができた後しばらく経って教育センター長もやらされましたが,1 年前

に任期が終了しました。

 最初にお断りしておきたいのですが,大学の民主主義とは,大学人の誰もが日本の高等教育や大学

全体の視点から考える義務があるということだと私は考えます。一教員のくせにえらそうにとお感じ

になられるところもあるかも知れませんが,そんなつもりではありません。ぜひご容赦ください。

現代学生気質 2005 年に日本青少年研究所は,米国・中国と比

較した日本の高校生の問題点を指摘しました。学校

外ではほとんど勉強しない,今さえがよければいい,

自分さえがよければいい,親の面倒を見るなんて真

っ平,あるいは日本に誇りを持ってない,等々です

が,この種の問題点は多くの人たちが指摘していま

す。私は,大学生の意識がこれとどの程度違うのか,

とても心配です。これは 2007 年の朝日新聞で,学

生は自信を持っていないという記事です。諸外国の

中学生と比べても劣ると指摘していますが,大学院

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生になっても,自主性であるとか,判断力,創造性,コミュニケーションや社会性,あるいはプレゼ

ンテーション能力といいますか自己表現能力に問題

を感じます。たまたま大学院生たちを他国の学生た

ちと一緒に指導することがあるのですが,切実にそ

れを感じます。前 ICU 学長の絹川先生は,学生た

ちは「自立させろ」と主張していると笑っておられ

ます。自立というのは自分でするものであって,そ

れを周りに要求すること自身が問題だと言っておら

れますが,私も全く同感です。

 20 世紀末からは,この点について経済界も注目

し,平成 15 年の報告書には,「基本的に人間として

の教育をするために,まず基盤となる教養教育が重

要で,それがあって初めて専門教育であるとか,実

践教育が成立する」と主張しています。昔は経済界

がこんなことを言うことはありませんでした。それ

ほど我々にとって,「生きる力」といいますか,「人

間力」といいますか,それを養成する教養教育が重

要になってきたと思います。

少子化と文教政策 一方,18 歳人口の減少が続き,ついに希望者全

員が大学に入れる時代になりました。立教大学の寺﨑先生は大学の社会的評価ほど恐ろしいものはな

いといっておられます。一たん定員割れを起した大学は,誰でも入れる大学とランキングされて直ち

に定着し,未来永劫,競争倍率 1 倍を越えることはなくなると指摘しておられます。一部の大学を拝

見するとそういう不安を強く感じます。

 このような若者たちの意識変化と少子化の中で,文科省はいろいろな提案をしています。昭和 24 年

の新制大学は,良識ある市民を育てる高等教育が必要だ,戦前の教育を反省するという形ででき上が

ったわけですが,受験・偏差値体制の定着やそれによる生きる力の低下など,問題点がたくさん出て

きたためだと思います。最近教育再生会議等からも提言がありますが,大綱化以降,平成 17 年までの

文科省関係の各種答申が,ひとつのセットではないかと思っています。これらの答申を私なりにまと

めますと,「大学院では専門教育を,学士課程では

教養教育と専門の基礎教育をやれ」と言っていると

思います。現代の若者を考えるとき,この点につい

てはまさにそのとおりです。それほど私たちは「学

ぶ意欲を持った若者を選抜し入学させる」のではな

く,「4 年間で学ぶ意欲を持った学生をつくる」こ

とに力を注がなくてはいけない時代に入ってきたよ

うに思います。文科省は,これを実行するために「学

長がリーダーシップを発揮して大学が一体となり,

大学の個性化を果たせ」と言っています。それがグ

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ローバル化・少子化の時代に重要なことで,「この

視点で大学を評価するぞ」と脅しています。えらく

厄介な時代に入ってきたと感じています。

 話が飛びますが,昨年私たちが開いた特色 GP シ

ンポジウムに文科省から来ていただき,大学教育改

革支援策を説明していただきました。右側に書いて

ある項目は平成 17 年 1 月の中教審答申の内容です

が,例えば世界的な研究教育拠点や高度専門職業人

養成など,7 つの項目を参考に,それぞれ大学が個

性を生かして差別化を目指せと言っています。その

ために,ここに書いてあるいろいろな支援を行うというわけです。本年度の予算が615億円でしょうか,

運営費交付金を減らして,こういう形で支援すると言っています。文科省は「アメとムチ」と言って

いるようですが,私たちにとっては,大学教育支援経費を取らない限り生き残れない,という圧力に

しか感じません。

 何はともあれ,私たちが注目したのは,下の方に書いてあります現代 GP や特色 GP でした。最初

は現代 GP 申請を準備しましたが,学内には現代 GP 申請件数が多く,教育センターは譲って特色 GP

申請に換えました。現代 GP には,地域貢献であるとか,外国語教育改善であるとか,いろいろな項

目があり,それが拘束条件になっています。特色 GP には実績評価という条件がついていますが,大

学の特徴を大学が独自に考え,それを活かして良い教育をすれば支援するというものです。私のよう

な古い人間には挑戦しやすいと思いました。特色 GP は残念ながら今年度で終わります。この理念を

継承して現代 GP と一体化し,「質の高い大学教育

推進プログラム」というのを作るそうです。果たし

て特色 GP の趣旨を残して大学の意向を尊重してく

れるかどうか気がかりです。

教養教育推進の葛藤 特色 GP を申請するにしても実績が必要ですが,

実は鹿児島大学は余りぱっとした大学ではありませ

ん。教養教育の歴史に限定して申し上げます。

 平成 3 年に,いわゆる大綱化がありました。この

段階で,学内には教養教育不要論が横行し始めまし

た。それから脱却できないのが今の鹿児島大学です。

教養部が改組され,教養教育は共通教育と呼ばれる

ようになりました。実施組織は教養部という一つの

部局から共通教育委員会という単なる全学委員会に

なりました。義務はあるのですが権限がなく,なか

なかうまくいきませんでした。そこで全国の大学に

倣って「教育センター」という組織をつくりました

が,それでもうまくいかないのが実情です。

 その例は共通教育の中身です。図の一番左側に共

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通教育科目,基礎教育科目,専門教育科目が書いてあります。専門教育科目はもちろん学部で行う教

育です。共通教育科目と基礎教育科目は教養部でやっていたものに対応します。昔,基礎教育科目は

教養教育(一般教育)科目のうち,学部が専門教育のために必要と考えたものを基礎教育と呼んでい

ましたが,平成 8 年に合意された「鹿児島大学の新しい教育」の中で,基礎教育科目は専門教育の準

備教育であって教養教育ではない,と定義しなおしました。まもなく,その中の理科の実験が教職単

位という専門教育になってしまいました。これらの基礎教育は多くの学部に共通して必要だから共通

教育委員会で,あるいは教育センターでやることになりました。これが教養教育軽視の大きな第一歩

です。個人的には,教養教育の自慢で文系の学生にも開講したいと計画していた地学実験をもぎ取ら

れたいへん落胆しました。

 教養教育は人文科学,社会科学,自然科学の 3 分野からなる一般教育科目と,外国語や保健体育な

どがありました。共通教育では一般教育の 3 分野を

やめて,「思想と文化」や「社会と歴史」からはじ

まって,5つの分野に分けました。私が理解する限り,

これは苦肉の方策です。共通教育を皆やりたがらず,

いろんな理由を挙げて他学部に押し付け合っていま

した。しようがないから,最初の 2 つを法文学部や

教育学部が,3 番目の「人間・生命・環境」は医・

歯学部の先生に何とか手伝ってほしい。「自然と数

理」に関しては理学部が中心になりますけども,「科

学技術と応用」は実学系の学部が何とか協力してほ

しいという願いを込めて作った区分です。「自然と

数理」を赤で書いてありますが,理学部に移籍した

理系の大半の先生が基礎教育をやる事になって,教

養科目にある「自然と数理」はすっかり抜け殻にな

ってしまいました。

 最もけっさくな授業が「開放科目」です。教養科

目の数が足らないため,学部が開講している専門教

育科目のうち他学部の学生が聞いてもいいという授

業を開放科目と呼んで教養科目の中に大量に入れま

した。教育の趣旨も目標も違い,受講する学生は極

めて少ないのですが,それでも数だけ揃え,鹿児島

大学は教養教育をやっていますとしました。

2001 年,外部評価組織である鹿児島大学運営諮問

会議は「教養教育には教育理念も教育目標も見えな

い」と指摘しました。そのとおりで,教員各自が考

えた授業の寄せ集めでした。とにかくやりゃあいい

のだろうという具合です。共通教育委員会も授業の

数をそろえるだけで手いっぱいでした。

諮問会議の指摘を受けて,教育目標を鮮明にするた

めに教養特別科目をつくりましたが,その結果,以

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前からある 5 分野区分科目の教育目標は不鮮明になりました。学修案内に「従来の教養科目」と訳の

わからないことが書いてあるのが哀れです。それから導入教育科目もつくりましたが,他大学を真似

した「教養セミナー」があるかと思えば,「C#NET 入門」のように専門教育的なリテラシー授業が突

っ込んであります。運営諮問会議の指摘とは裏腹に,教養教育はますます複雑になってしまいました。

「一つ一つは宝でも,皆集めりゃゴミの山」と皮肉りましたが,これが鹿児島大学の教養教育軽視の実

態です。

 これに対し,鹿児島大学の教育に関する中期目標には「幅広い知識・教養・技能などを有し,進取

の精神と自主自立の精神に富み,深い歴史感覚,鋭い現実感覚,高い公共意識に裏づけされた,そう

いう人材を養成する」と書いてあります。見事な中期目標で,鹿児島大学は日本一のリーダーを輩出

することになっています。とてもじゃないが達成できない。

 これが,私が教育センター長になった頃の様子でした。学生の状態を考えると,とにかく全学が一

体になって教養教育をやらない限り,大学院教育だって成功しない,専門教育も成立しない。私なん

かが教育センター長をやってはだめで,大学のトップの学長や理事が先頭に立って,現場で働いてい

る一人一人の先生と気持ちをひとつにしなくては,この難局は乗り切れないと考えました。全国の教

育センター関係を調べたところ,当時で半分以上の大学で,教育担当理事が教育センター長になって

いました。理事に教育センター長になってくれと一貫して頼みましたが,ついに今まで実現していま

せん。これは結構ハードな主張で,もしかしたら奴は自分が理事になりたくて言っているのではない

かという雰囲気まで感じまして,もう何枚も何枚もスライドをつくって中教審答申や全国の大学を首

脳部に説明しました。

再び学生の分析と打開策 結局何が問題なのかです。大学が大衆化して,我々

の望むような学生が入学してくれない。入学してく

る学生の学力は低く,日本語が通じない,大学の意

味がわからない。

 私は学生に能力があると信じています。例えばカ

ンニング。対策を立てても立てても,学生は常に一

歩リードしています。新しい文化の導入能力も我々

よりはるかに優れ,新しいサークルをどんどん作っ

ていきます。鹿児島大学の学生には「一気飲み」と

いう習慣があります。コップ一杯の焼酎を一息で飲

み,それを繰り返して気勢を上げるのです。非常に

危険だからやめろと大学は再三警告するのですが一

向にやめません。酒が好きな現代の学生なんて一人

もいません。だけど,一緒に大人になろうと,命を

かけて組織のルールに従い連帯感を確認しているわ

けで,そのように見ると,すごく優秀な側面だと思

います。登校拒否にしても,だらしない大学が原因

だとは考えないで,素直にまじめに一人で考え込み

登校しなくなるのも,バカでない証拠です。アルバ

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イトについても最近とみに感じるのですが,離婚とかリストラにあった親が増え,学生たちの一部は

想像以上に貧乏になっています。学生たちは親に頼らず学校をサボって黙ってアルバイトで学資を稼

いでいます。私には,これらは学生がいまなお健全である現象に見えます。

 それにもかかわらず,学生は入試の「偏差値」からいつまでも離れられない宿命を背負っています。

日本全体に劣等感が蔓延していると書きましたが,例えば鹿児島大学の学生が九大の学生たちに劣等

感を持っています。でも,九大の学生が自信を持っているかというととんでもない。東大に劣等感を

持っている。東大の学生が自信を持っているかというとそんなことはない,理 III の学生に劣等感を持

っている。理 III の学生が自信を持っているかというとそうではない。1 番の学生に劣等感を持ってい

る。ところが 1 番が誰かわからない。とすれば,日本の若者たち全部,劣等感じゃないか。そんなば

からしい劣等感,全員持っているのだから全員持つ必要はない。「もっと大学をエンジョイして自信を

持ちなさい」という指導をしているのですが,だめですね。私の学生時代は勉強なんか全然できなか

ったがここまで来たという話をして元気づけようとするのですが,そういう話をしすぎると学生達は,

私を「雲の上の大先生」から突然「ただのおっさん」にしてしまう。やってもやっても偏差値から脱

却させ自信をつけさせることができない。鹿児島大学はこういう状況です。加えて,学生の価値観が

多様化する,あるいは社会のニーズに答えなくてはいけない。

 これらをすべて考えると,大学では,子供を大人にするために,やらねばならない教育の量が膨大

になってきているということかと思います。この点では先ほど触れた文教政策「専門教育は大学院で,

学士課程では教養教育と基礎教育」は的をえた提言です。しかし評価することを含めて文科省から言

われると,教員は強制となって追いまくられるように感じます。昔はなかった評価関係の仕事などが

多くなり,疲弊感が強くなっています。そもそも大学人にとって,心のゆとりが研究の推進や教育の

向上に必要だと思うのですが,そのゆとりを持てな

い状況にあります。

 これらの問題を克服するためには,教員同士が現

状分析を共有し,具体的な教育の目標を共有して,

合理的な協力体制を確立しなくてはいけないと思い

ます。「我々自身が本当に教養教育を必要と感じて

いるのか」,その原点から考えていかなくてはいけ

ないと思います。それ以外にもいろいろありますが,

学内の先生が心を一つにするには,「お金」と「社

会の期待・評価」,それから「学長の呼びかけ(リ

ーダーシップ)」,この 3 つが絶対に必要です。当面,

前者を得るために,先生方に意欲が涌き,魅力を感

じる教育テーマとやり方を探さねばなりませんでし

た。

研究と教養教育を一体化する 鹿児島大学には,古くなりましたが「五十年史」

という本があります。それを読んで,全学の先生が

どんなことに情熱を持ってきたのか,どういう研究

や教育をしたいと思っているのかを調べ始めまし

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た。これは大変な仕事だとわかりましたので方針を

変え,歴代学長の回顧録をまとめました。歴代の学

長はいろいろな提案をし,その苦労話を回顧録に書

いています。そこから選んだらこれだけになりまし

た。結構単純で,これが鹿児島大学のキーワードと

言っていいのではないかと思います。国際交流には

随分力を注ぎました。特に南の玄関口として,東南

アジアから南太平洋の研究に情熱を注ぎました。教

育と研究の両方に貢献すべきとありますが,これは

当然ですね。学問の統合化を主張した学長もいます。

それからローカルをインターナショナルに,こちら

の大学でも使っておられる「グローカル」という言

葉が好きな学長もいました。それから地域貢献,鹿

児島学創設,地域大学ネットワークや産官学連携,

等々に鹿児島大学が情熱を注いできたことになりま

す。

 一方,教養教育を整理して並べますと,数は少な

いのですが,対応する授業が若干ありました。「国

際農業体験講座」や「地域を素材にした教育」です。

これを充実すれば,先生方は研究実績をたくさんお

持ちだし,情熱を注げるはずと考えました。

 最初にやり出したのは,国際農業体験講座の充実です。農学部の先生が始めた国際体験教育を全学

でやろうと,概算要求や GP 申請もしました。2 年間で 4 回ぐらい予算申請したのですが,まだ採択さ

れていません。でも,これだけ失敗すれば採択のポイントがわかります。学生(お金がかかるので父

兄にも)への呼びかけ体制さえ作れば,先生方の近隣諸国での研究成果とネットワークが出来上がっ

ているから,かならず文科省は評価する,採択されると今でも信じています。

 きょう,ご紹介するのは「地域を素材にした教育」の方です。ひところ,鹿児島学の創設のために

学長裁量経費を皆さんもらって努力していましたので,これに「学際的研究」や「研究と教育」のキ

ーワードを加えて謳い文句とし,これを教養教育に反映させることを考えました。

 鹿児島大学が長年にわたって出版してきた地域研究に関する報告書はたくさんあります。多様な分

野で鹿児島の本質を見出し世界に貢献してきました。地球や世界の中の鹿児島を追求する,こんなこ

とを目標に研究を進めてきたわけですから,それをそのまま教養教育に役立てることができるはずだ

と考えました。これが「鹿児島の中に世界をみる」という言葉を生み出した経緯です。

 次は特色がある大学支援プログラムに申請した時のキーワードですが,「地方」ということと「小さ

な総合大学」ということは他にない長所とする考えです。つまり,隣の研究室には全く別の分野の専

門家がいることを長所にして学際的研究を進め,この成果を学生に話したら我々の情熱に学生達は目

を覚ますのではないか。さらに,全学部の学生の興味の度合いは我々の学問深化のバロメーターになる。

 学生が聞いてくれない話しかできないなら,研究の考え方を少し反省した方がいいし,逆に,素朴

な学生の疑問は教員の貴重なヒントになるはずだと考えました。結局,学生と教員がともに質を高める,

もっと雑っぽく言えば,「楽をして得をしよう」というキャッチフレーズをつくりました。

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教養教育に関する発想の転換「鹿児島の中に世界をみる教養科目群の構築」とい

うプロジェクトだが,世界が本当に見えるのかと,

あちこちから言われました。世界とは,「国際社会」

であり「地球」であり「普遍」であり「本質」であ

ると,広く解釈すればいいわけです。内心,実際こ

んな教養教育ができたら魅力的だが大変だと不安で

した。しかし,一方で,本質が見えない教養教育な

んてやらない方がいい,教養教育を根本的に考え直

す時期だ,その展望がなくては絶対採択されないと

考えていました。

 そこで,大学人の知的体系を考え直すピラミッド

を書きました。完成された教養ある専門家の知的体

系をこういうピラミッドで書くと,今までの専門家

はこういう狭い専門家だったのではないか。戦後,

幅広い教養をもった良識ある人間を育てると言いな

がら,実際には大学は狭い専門家の集合体であった

のではないかと思います。その責任は我々にもある

が,明治の富国強兵策以来,早く列強に追いつかな

くちゃいけないという国家体制がこういう大学の体

質をつくってきたのではないかと思います。加えて小講座制が弊害になって「学問の自由 = 相互不可侵」

となり,狭い専門分野に閉じこもる集合体になってしまったのではないかと思います。狭い専門的知

識を数多く学生に与え,学生たちにそれを総合して広い教養を身につけろと言ってきたように思うの

です。戦後の上原専禄や南原繁の警告通り,これでは,日本の若者に広い教養が身につくはずはなく,

ちょっと知識が増える程度です。情報過多の時代に「知離れ」が進み,さらには「生きる力」が低下

するのは当然です。

 もし本当に教養教育が必要なら,教員一人一人が大きな知的体制を持った教養ある専門家として,

教育や研究を行う体制を構築する必要があると思いました。しかし,先生達が急にそんなことを言わ

れても大変です。それで「鹿児島」が役に立つと思いました。鹿児島を研究している先生は,専門分

野に限らず相当広い見識を持っていますし,何か面白いことがないか役立つ情報がないかと,他の先

生の鹿児島の話に関心があります。「鹿児島」は,私達の教養教育に関する発想を転換するテーマにな

ると考えました。

教養科目群の整備 文科省の特色 GP は実績評価に基づきますから,採択されるかどうかとても心配でした。

 私達がやっている教育は,「鹿児島探訪」と呼んで,いろんな授業をやり始めました。赤が「鹿児島探訪」

講義シリーズで基幹科目と位置づけました。青は「鹿児島探訪」体験シリーズで,フィールドに連れ

出すことにしました。それから,右側の黒で書いてあるのは,それまでに開講していた授業で,それを「発

展科目」と位置づけました。

 シラバスには徹底して書き換えました。例えば,「鹿児島探訪―自然―」には,地球の自然観を身に

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つけさせるとか,46 億年の地球の進化を鹿児島か

ら理解させると書きました。「鹿児島探訪―文化―」

の方も,鹿児島を素材に文化の多様性を考え,世界

文化の多様性を理解するとか,他のシラバスもどん

どん書きかえました。学生にわかってもらいたいの

は,もっと本質的なことではないか,世界ではない

かと訴えました。

 これは 17 年度の実績です。数の大小はあります

が,いろいろな学部の先生が協力してくださいまし

て,学生数も一番右下に書いてあるように,1,000

人を超える学生が受講しました。

 このスライドは FD 活動の PDCA サイクルを示

しています。このプロジェクトのために作り出した

のですが,ポイントは三重構造になっているところ

です。赤が一番小さい PDCA,ここでは双方向授

業をやります。2 番目は FD グループと書いてあり

ますが,実際には特色 GP 作業グループと呼んでい

る授業のコーデイネータが集まってディスカッショ

ンし,どんな効果があらわれて,どういうぐあいに

改善していくかを考えました。それから,3 番目の

一番大きな PDCA は共通教育全体として前からあ

ったものです。この大きな PDCA の実行は難しく,

先生に学生の授業評価など,歓迎されないことばか

りお願いしなくてはなりませんでした。多様な授業

の評価を解析しても漠然とした check と action にな

らざるを得ません。一番小さな赤のサイクル,中間

の青のサイクルが機能すれば,大きな PDCA サイ

クルも動き始め,FD 活動が歓迎されるはずだと期

待しました。

 これは一番小さいサイクルのために使ったミニッ

ツペーパーですが,紙媒体を使い,毎回短いレポー

トを書かせて,それに先生がコメントを書いて,次

の時間に返す。次の時間,また書くということを同

じシートで繰り返します。学生の成長もわかり面白

いのです。オムニバス形式の授業でも,前の先生が

何をやったか,どんなレポートを書いたか,どうい

う理解度かというのがわかるように,すべての記録

を一目で見れるようにしました。特色GP採択後は,

一緒にお邪魔しているファウザー准教授がすごく努

力して携帯電話を使い,それから e- ラーニングに

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繋げていくようにしましたので,具体的にはファウ

ザー准教授が説明します。

 話は逸れますが,特色 GP の最初の活動は,18

年 4 月に教育工学の専門家であるファウザー准教授

を採用したことだったかもしれません。それまで鹿

児島大学の e- ラーニングはちっとも前進しません

でした。そこで考えたのは,SE のような技術者が

最初にシステムを考えるのではなく,教壇に立つ先

生から提案してもらい,それに基づいてシステムを

検討しないとだめだということでした。手前味噌で

すが,教壇からメデイア教育を提案できるファウザ

ー准教授を確保したのは大成功だったと思っていま

す。

 いずれにせよ,ミニッツペーパーをスタートさせ

た後の学生の評価もそんなに悪くないし,学生の感

想文もすごくいい。報道機関が高く評価し,新聞に

も随分取り上げてくれました。これが,学内の先生

方に協力を得る,いいきっかけになったと思います。

特色GPのヒアリング ヒアリングでは「これは平成 17 年度,つまり前

の年にやり始めたことじゃないのか」と言われ,そ

こが勝負どころでした。私は「そういう具合に受け

取られても仕方がないぐらいの鹿児島大学です。だ

けど教養部が終わった平成 8 年からずっとこの思想

は生きており,数は少ないのですが少しずつ増えて

きました。そこを実績にしてください」と,必死の

思いで説明しました。

 幸いなことに,それを認めてもらって採択された

のですけども,こんな大上段に振りかぶったプロジ

ェクトは大変です。選考委員会が公表した採択理由には,いろいろな注文が書かれていました。まだ

注文に答えられない点も多い状態です。

最初に外部評価 特色 GP が採択されたことを知ったのが 8 月末です。採択を知って,すぐ外部評価を準備しました。

特色 GP を口実にして,共通教育全体の外部評価をしてもらおうと考えました。そもそも共通教育全

体をよくする一環として特色 GP を考えてきたわけですから,共通教育の充実に繋がってはじめて成

功したことになるからです。

 外部評価をやるからには,その結果を鹿児島大学の全員が全面的に受け入れる必要がある。誰もが

知っている有名な先生に外部評価を頼むべきであると考え,私がコンタクトできる最高の人にお願い

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しました。ここに書いてあります絹川先生は教養教

育を看板にした国際基督教大学の前学長です。頼ん

だ後でびっくりしたのですが,絹川先生は特色 GP

の選考委員長だったのです。お引き受けいただいた

からよかったものの,私はそれも知らず特色 GP を

申請し,何回かの講演会で感動したことを理由に頼

んでしまい,穴があったら入りたい心境でした。寺

﨑先生は日本教育学会や大学教育学会の会長を歴任

され,教養教育の象徴のような先生です。中塚先生

は私の学生寮時代の先輩ですが,工学部長や理事,

学長顧問の立場で長年にわたって東北大学全体の研

究を推進してこられた先生です。研究が重要と思っ

ている教員の多い鹿児島大学で,研究を懸命に推進

してこられた元工学部長は鹿児島大学の共通教育を

どのように評価されるか知りたいと思ってお願いし

ました。それから井形先生は,大分前の鹿児島大学

の学長で,グローカルということを盛んに主張され,

現在,他大学で学長を勤めておられる先生です。繰

り返しですが,このような立派な先生の外部評価な

ら,鹿児島大学の全員の先生が聞いてくれるだろう

と期待しました。

 外部評価委員は指摘しました。共通教育が大学の

コア教育ということを学内でどれだけの先生がわか

っているのだ。共通教育の中身を見ると教員の都合

で雑然と授業を提供しているだけではないか。外国

語教育は他大学から 10 年以上遅れている。あるい

は基礎教育はなぜ学部がしないのだ。等々,厳しく

指摘されました。学部と教育センターの間の壁が

高くて,これじゃだめだ。教員のボランティアでや

っているような教育は教養教育と呼べない。共通教

育担当者への報酬制度を確立せよ。教育センター長が副学長を兼務しろとか,外部評価委員会の評価

にもっともだと感じただけでなく,青くもなりました。全学の信頼と協調がないと,今何をやっても,

学長が変わると終わると言われました。この外部評価が鹿児島大学にどの程度の効果があるかまだわ

かりません。

特色GPの推進と大学間の協力 いずれにせよ,19 年度はここに示したような状態です。特に力を注いだのは体験シリーズの充実で

す。10 科目をなんとか開講できましたが,学生には好評で,来年は 15 科目ぐらいに増えるでしょう。

しかし大量に学生を同時に指導できないため,まだまだ少ないと思います。

 すべての特色 GP 関連の授業の受講者総数が大体 2,140 人,ことし終わる段階には,いよいよコア

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カリキュラムを検討できるのではないかと思います。先生も学生も同じ教育理念や教育目標を共有し

て全学生の卒業要件単位を設定し,教育し学習するという体制ですが,これは大学全体の理解がない

とできないので学長の仕事だと思っています。

 それ以外に随分いろんなことをやってきました。FD フォーラムや,学生と教員の連絡会,e- ラーニ

ングのコンテンツ充実のための著作権セミナー,等々ですが,ここで紹介したいのは,鹿児島県下の

すべての大学・短大が共催で,大学教育改革シンポジウムをやったことです。

 私は希望者全員が入学できるという日本の現代の状態はよいことであり,自慢すべきことではない

かと思います。希望者が全員きちんとした教養教育や専門教育を修得したら何が起こるか。日本の発

展は間違えありません。外国の人が見て,日本には教養のある市民があふれている,困ったら日本を

見ろと言わせることができるのではないかと思います。夢のような話ですが,今の日本はそういう可

能性を秘めているのではないかと思うのです。何しろ希望者全員が大学に入れる国はほかにはないと

思うからです。

 我々は現在,この現象が続くとクズまで大学に入り,教育はいったいどうなるのだ,あるいは定員

割れを起こす大学が次々と潰れていくと恐れています。そんなぐあいに考えず,高等学校まではクズ

でも,きちんとした高等教育を提供して立派な社会人に育てるチャンスが到来したと考えれば,国際

的に日本が飛躍する絶好の機会になるのではないかと思います。

 サバイバル競争という言葉を大学の潰しあいと考えるべきではない,このまま単純なサバイバル競

争をやっていたら,無名の大学がどんどんつぶれていっちゃって,希望者の 100% が入れない社会に

なる,旧帝大だけが大学という,戦前に戻るだけだと思います。そんなつまらないサバイバル競争の

犠牲は間違いなく地方大学や人気のない私立大学です。夢のような話を繰り返しますが,そうならな

いためには,地方大学が頑張って,文科省も財務省

も総務省も一般市民も,社会全体が,すべての大学

の価値を認め,全部の大学があった方が良いと考え

直すことではないかと思います。したがって,高等

教育の盛衰の鍵を握っているのは地方大学だと思い

ます。地方大学がもっと助け合って知恵を共有し,

100 人入ってきたら 100 人目の学生もちゃんと教養

のある専門家として育てるということをやるために

頑張らなくちゃいけない。こんなバカな考えを訴え

て,鹿児島県下全体で「文科省特色 GP,現代 GP

と鹿児島の大学」というシンポジウムをしました。

文科省に基調講演をお願いし,ポスターセッション

やパネルディスカッションをやり,大変盛り上がり

ました。皆忙しいため具体的には進んでいませんが,

シンポジウムの後も交流を深めています。

 それから,最後の方に講義録の作成と書いてあり

ます。とにかく今の先生たちは苦労の連続です。何

か具体的なメリットがないか,業績評価に使えるも

のがないかと考えたのがこの講義禄です。講義録を

教科書作成の準備と位置づけて,ことし 3 科目分製

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本するために躍起になっている最中です。教育活動

を評価しないと先生たちは教育にエネルギーを費や

せないと思います。

 課題もいろいろ書きました。文科省の支援が終了

した後,果たしてやっていけるかどうか,最初に掲

げた目標が大きいだけ困難な問題が山積していま

す。教育目標を明瞭にしなくては教員も学生もやれ

ないことが学内で大分浸透してきたのですが,来年

度,金をかけないで同じ教育をやれるかどうかが心

配です。

 いずれにせよ,我々に重要なことは文科省の言われるままに教条的になってはダメだと思います。

他人から言われてやる仕事は疲れ果てますが,自分で意義があると考えついた仕事は時間や労力がか

かっても疲れません。大学の自由と権利を守るために,積極的に我々の責任と義務を果たさなくては

いけないと思います。サバイバル競争に勝つためにと書きましたが,サバイバル競争の相手は他の大

学ではない,我々自身かもしれないと考えています。全国の大学人の間の協調体制を作ることが,我々

の閉塞感をなくすことだと考えています。

 随分時間を超過してしまって申しわけありませんでした。以上で私の話を終わりにします。(拍手)

山田講師 / 根建先生,ありがとうございました。

 やっぱり熱いですね。単に取り組みを話すだけじゃなくて,背景,思想,高等教育のバックグラウ

ンドもしっかり押さえてプログラムをつくっていく。そうした一連の話を聞けたということで大変勉

強になりました。

 それでは,こうした GP を IT の面でサポートしているファウザー先生から,引き続き御講演いただ

きます。(拍手)

基調講演 2

ファウザー准教授 / どうもありがとうございました。鹿児島大学のロバート・ファウザーと申します。

 今はちょっと違うことを御紹介しまして,ある意味ではこの e- ラーニングとか Moodle とかこうい

うことを説明しながら,何か自分が宇宙人みたいな感じというか,国籍はアメリカですが,何か宇宙

人というような感じになりますけれども,できるだけわかりやすく簡単に御説明いたします。

 まず,ちょっとログインしますので,これは実物の鹿児島大学の教育センターの Moodle サイトです

ので,パワーポイント使わないで,このサイトの中から発表します。

 これはログインすると,いろんな科目が出てきまして,さっき根建先生が紹介されたこの GP の科

目が出たりとかします。ここは,ずっといろんな科目がありまして,これはちょっと最後の方で御説

明します。今はこの発表の内容,その印刷物に入ってるいろんな科目がありまして,どんどんどんどん,

私は管理者として入っていますから,たくさんここに並べてますが,学生はログインすると 3 つとか 5

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つとかそのぐらい,学生がとってる科目だけが出て

きますが,今はここですね。

 それで,この Moodle というのは,1 つの e- ラー

ニングシステム。幾つかあります。まず e- ラーニ

ングの話をすると,なぜ e- ラーニングをするのか,

いろんな理由がありまして,例えば,上の人がしな

さいと言われるとか,あるいは e- ラーニングは格

好いいとか,あるいは何かの情報系の先生が業績つ

くりたいとかという,その裏話の理由が幾つかあり

ますけれども,よく教育の観点から言われるのが教

育の機会をふやすというか,例えば国際交流で,こ

ういうシステムを使って教育の機会をふやす,海外

の学生とやりとりできるとかというようなことです

ね。また,もう一つは教育内容を整理する,これは

ちょっとよく耳にします。例えば,成績をこうい

うシステムの中で管理するとか,内容を管理すると

か。そして,もう一つはその学習を合理化する,そ

ういう例えば紙でできないものはこういう媒体でで

きるということですね。典型的な場合は語学の教育

は,例えば英語教育では,紙は文字だけですけれど

も,この媒体を使うと音声が入るということとかで

すね。もう一つのよく耳にするのは,学力をはかる

ということ,例えばこのウェブを使ってテストをす

る,それは何かの学力をはかると。で,コミュニケ

ーションの向上をする。例えば掲示板とかコミュニ

ケーションの道具として使うということですね。

 ある人は,私はどうもこの理由はよくわかりませ

んが,某大学の某先生が,これを言うんです,思考

力を向上するという。そこはパソコンを使うのは思

考力とどう関係があるかわかりませんが,一応耳に

する理由です。そして,学習者のデータを管理する。

これは,さっき申し上げたように成績とかこういう

ことを管理する。

 このいろんな理由を 2 つの種類に分ければ,教育

の内容を管理するとか何かの合理化するという内容

は,1 つのラインですね。1 つの理論的な柱。もう一つは教育実践を豊かにするということですね。私

の場合は,2 のところが中心です。1 は,私は教育がクレージーであってもいいと思う人ですね。教育

は非合理的でもいい。教育は,何かのいろんな人間の触れ合いの中から発生するものですから,教育

は決して,とても合理化する理由はちょっと,どうも薄いと思いますけれども,2 は非常に重要なポイ

ントだと思います,教育実践を豊かにする。ですので,この鹿児島探訪の特色 GP の授業と関連して,

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既に計画された,既にこの授業を豊かにするという

そういう側面から出発します。

 この Moodle というシステムは,非常に日本語と

しては Moodle というのは新しいうどんとかという

ことを想像しますけど,Moodle というのはオープ

ンソースの学習システムですね。オープンソースと

いうのは,いろんな人がかかわってつくっていくシ

ステムです。ですから,無料でネット上で公開され

てます。ですので,これは商品ではありませんので

コストはゼロ円です,このシステム自体。ソフトは

ゼロ円ですので,これは自由に,だれでもダウンロ

ードしてインストールすることができます。Moodle

と特徴といいますか,この赤文字で書いてるとおり

社会構造主義の教育理念の上でつくってるシステム

ですね。これはどういうことかというと,学生と先

生あるいは学生同士とか教育の現場で何か一緒につ

くっていくということですね。ですから,知識を教

員と学生,学生同士とか,共同の目的とか人間の触

れ合いの中から何か知識をつくっていくということ

ですね。ですから,英語でいうと「ラーニング・バ

イ・ドゥーイング」の概念です。ですから,この

Moodle のシステムは基本的に「ラーニング・バイ・

ドゥーイング」の概念ですので,今はどんどんどん

どん改良してうまくいくシステムになってますけれ

ども,基本的に何かのコミュニケーションの道具が

大事という,コミュニケーションの要素が大事とい

うシステムですね。ビデオ配信とか凝ったコンテン

ツの配信のために,もともとつくったシステムでは

ありません。これは,もともとコミュニケーション

を中心としてつくったシステムです。

 それで,根建先生のおかげで私は鹿児島に戻って

きまして,戻りたいという気持ちがなぜ出たかとい

うことはちょっと別の話ですけれども,鹿児島大学

に 2006 年の 4 月 1 日から採用されて,e- ラーニン

グは,その当時の公募の内容で一つの重要な部分で

した。FD と e- ラーニングの両方合わせたものの教

育改善という公募で鹿児島大学に赴任しました。

 そして,そのときの状況をいろいろ図ってみて,

ほとんど動かなかったという状況でした。英語教育

の場合は商品のシステムがありましたけれども,だれも使わない。なぜ使わないかというと,結局だ

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れも使いたくない。1 人の教員だけが使っていて,

それを提案した教員さえも使わなかったんですね。

だから,そういう現状があったりとか,余り学内で

は協力体制を感じなかったりとかして,ですので結

局,最初の 3 カ月ぐらい,いろんな人と相談したり

とか,いろんなことを見たりとかして,教育センタ

ーは独自のものを立ち上げないといけないと。学術

情報基盤センターに e- ラーニングシステムがあり

まして,ただ問題は,困ったことがあったりとかす

ると,自分がそこに質問したりとか,そこのやりと

りの中でいろんな時間のロスがあったりとか,自信

を持って推進できなくなるという状況でした。です

から e- ラーニングをうまくする方法の一つは,推

薦する人は水面にいないといけないです。すなわち,

先生が教育で困ったことがあれば,すぐだれかに連

絡できる体制で,連絡して問題を解決する体制がな

いと,一般教員は使いたくないですね。自分の学生

にこのシステムがあって,こういうことはすばらし

いことができる,それを提案して学生に紹介して,

学生はログインできないと。パスワードが合わない

とかいろんなそういう技術的な問題があると,すぐ

だれか対応しなければいけないということで,責任

持って推進しないといけないですね。

 それで,やはり教育センターが独自のものを導入

するべきだということを判断しまして,ちょっと雑

談のレベルからまた始まりました,教育センターの

中で。私と去年の 9 月に亡くなった,親くて大変お

世話になった内宮さんという事務の方と一緒にちょ

っと雑談始めて,教育センターは,じゃあ e- ラー

ニングのサーバーを導入すればどういうことになる

かとか,どういう手続とか,どういうふうに推進し

ていくかということ,内宮さんと打ち合わせしなが

ら,それぞれは,この経歴を見ると,私と内宮さん

は,そういう情報系の経歴がありません。ちょっと,

周辺といえば e- ラーニングの実践の経歴は私もあ

りまして,内宮さんはネット管理とかそういう普通

の事務としてそういう経験がありましたけれども,

二人とも丸々そういう情報工学系の専門家ではありませんでした。ですから,そこはどういう意味を

持つかというと,自分の組織にそんなに情報科学系の専門家がいなくても,サーバーを立ち上げて構

築ができる,それで運営できるということですね。セキュリティーは大体決まった範囲の中で,大学

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のネットワーク委員会とか,そこはセキュリティー

のことを話してますから,そこを設定してますので,

セキュリティーの問題とかはそんなに,協力するぐ

らいであれば済む話ですね。で,内宮さんと話しし

て教育センターの中で立ち上がると。

 そして,もう一つの側面は,この 5 のところです

が,私は長く韓国に 8 年住んでて,韓国で英語を教

えたりとかしました。今,御紹介があったように韓

国語を担当してますので,1 年に 1 回とか,割と頻

繁に韓国に行きます,最近ちょっと忙しくて行って

ないんですが。韓国は,この IT の分野にいろんな

影響がありました。なぜかというと,ずっと昔のよ

うな話ですが,この DOS とウィンドウズ 3.1 が広

がった時代は,韓国に住んでたんですね。そこから

どんどん,また韓国の IT 発達を自分の経験からず

っと見てきました。こういう言い方が下手くそです

けど,一つは韓国人は大陸気質があります。スケー

ルの大きなものが好きですね。日本の e- ラーニン

グの失敗の一つは,すごく上手にやってる先生 1 人

と,彼,彼女の仲間何人かだけですばらしいことを

やるけれども,ほかの人に転移しないですね。です

から,ファンクラブ的な要素を持つ。こういう人た

ちだけがやるけれども,ほかの人たちはもう関係な

い。かえってそういうことが出てくればくるほど,

おれに関係ないというような,あの人たちがやって

るクラブ的な,カルト的な要素が出てきて,韓国の

場合は,そういうことはもちろんあるでしょうけれ

ども,大体,大学がすべてやるというか大きなスケ

ールで何かするということですね。ですから,私が

e- ラーニングを推進している一つのねらいは,多く

の授業で使うことですね。ですから自分の授業とか

鹿児島探訪の授業だけだとか,それはちょっと余り

広がらないから,幅広く使いたいということですね。

 その次のところはちょっと関連がありますけれど

も,そういう韓国の場合は IT を使うことに対して

開かれた態度ですね。これは非常に日本の場合は難しいですけれども,ほかの人の授業にタッチする

ということですね。ですから,日本はどうも教育権が各教員にあるという伝統があって,ほかの人の

授業で何をやってるかということはほとんど話さない伝統があったりとか,私は長く英語を教えたこ

とですけれども,英語の場合は,ほかの人に何をしてるかということを授業で聞くのが失礼なぐらい

ですよ。先生,済みません,今年度,来年のテキスト何を使うかということを聞くと,えっ,何で聞

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いてるんですかという,もうこういう態度なんです

ね。だから,結局鈍い人はどんどん聞くけど,私は

鈍いかどうかわかりませんが,結局聞かなくなるん

ですね。何かこっそりと公開してある情報をこっそ

りと夜中にチェックして,ああ,あの人はあのテキ

スト使ってるんだねというような,こういう感じに

なるわけですね。オープンにどうも授業の内容を話

さないですね。ですから,そこは一つの問題になり

ますが,そこを破るということが大事ですね。です

から,e- ラーニングを幅広く推進するには,いろん

な人に自分の授業で何を使っているかということを

聞かなければいけないし,そこに沿った e- ラーニ

ングの何かの助言とかしなければいけないというこ

とです。

 韓国のもう一つおもしろいのは,e- ラーニングと

か IT を使うのが威張るんですね。ですから,この

「君もおれも」という,これはことわざですけれども,

韓国語で言うとノドナドと言うんですね。ですから,

ここは,この心理が働くと,結局みんなが新しいこ

とに取り組むというようなことですね。それはどの

社会でもあります。アメリカの社会とか多分ヨーロ

ッパとか,どの社会にもそういうことがありますが,

日本の場合は携帯とかいろんなことはありますけれ

ども,まだ e- ラーニングはこの心理が働かないと

いうことですので,韓国に比べると難しいことがあ

ります。

 ここからいろんなことを考えて,教育センターの e- ラーニングの工夫を始めました。社会的な観点

から出発する,すなわち,これは日本全体ではなくて鹿児島大学の社会ということですね。ですから,

鹿児島大学の現状を考えて e- ラーニングを出発する。それと教育現場における開かれた取り組みを優

先する。そこは結局,学外でもログインできるとか,できるだけ使いやすい環境を構築する。そうで

ない大学はあります。学外でログインできないことは,韓国で話すと,もう,えっ,日本はそのレベ

ルですかと言われるんですよね。ですから,結局そこは何かのセキュリティーの問題でしょうが,海

外に行くと学内しか使えないとか学外はログインできないということは,それは多分アメリカだった

ら,そのコンピューターセンターの人は解任する,もう全部首にします,大学は。だから,そこはど

こでもいいわけなんですね。あるいはお金の問題。結局そういうふうに。で,工夫して,そして特定

のハードやシステムにこだわらない。ですから,今 Moodle は無料で入ってますけれども,Moodle は

どんどん推進して,これについてかえって批判の声が出たりとかすると,第二のシステムを導入して

もいいですし,あるいは Moodle をやめて別のシステムでもいいですし,あるいは特定な科目群のため

にこの第二のシステムとか幾つかのシステムを導入してもいいわけです。

 それと,サイバー空間におけるコミュニケーションを重視する。これは大事なことで,コミュニケ

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ーションというようなことを重視する。そしてコン

テンツを共有する。これは難しいことですけれども,

結局この話は市販のコンテンツをできるだけ使わな

いようにするということですね。ですから,市販の

コンテンツはその契約とかライセンスの関係で制限

がありますので,やはりほかの多くの自作のコンテ

ンツとか,ほかの学内の先生がつくったものとか使

うということですね。それで,最後の方は,ちょっ

とさっき申し上げましたけれども,セキュリティー

管理は後で考えるという,怖い言い方ですけれども,

できるだけ丁寧にやってます。ただ,セキュリティ

ーだけ考えると前に進まないので,結局できるだけ

それをヒステリア的なことを考えないで情報基盤セ

ンターのルールに従ってやればいい程度ですね。

 そして次のところは重要ですが,「できる」e- ラ

ーニングではなく,「する」e- ラーニングを重視する。

「できる」e- ラーニングは物理的に機械がこれがで

きる,例えば今カメラがありまして,多分出雲のキ

ャンパスに映ってますけれども,これができるとい

うことですよね,物理的にこれができるとかこれが

できる,いろんなことができますけれども,多くの

場合は,日本の場合は,できることをだれもしない

ということ。できることは使われていないというこ

とですね。ですから,できることを現場でだれも使

わないと結局意味がないですね。IT が趣味のわず

かな少数の人のためにできることを図ることとかテ

ストすることとかいじることはおもしろいですけれ

ども,一般の教員とかはおもしろくないですね。で

すから,だれが使われてる,だれがどういう教育的

な目的のために使われてるということがメーンです

ね。このシステムは何ができるということは後の話

です。

 それで,ここはさあっと申し上げますけれども,

内宮さんと一緒に,最初話し合って,どういうシス

テムを構築するかということですね。そうすると予

算がわかります。ですから Moodle はオープンソースで無料ですから,じゃあソフトの予算は確保しな

くてもいいということですね。ただサーバーとか物理的なそういう予算が必要です。

 それで,またどんどん協力体制が広がっていくということですね。ですから,前のは 2 人のアイデ

アとか雑談ですね。ただし,教員と事務の協力ですので,それぞれ見方が違うわけですね。大学の内

部のそういう書類とか勘定的なものは事務がとても重要な役割を果たしますので,あと教育の面では

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もちろん教員が重要な視点を持ってますので,これは教員同士だとちょっと話が違うわけですね。ど

んどんその協力体制を広めて,結局,業者を最初使ったのは安全ということですね。1 人でサーバー

を構築することができますけれども,最初はちょっと業者を入れて,そのセキュリティーの設定とか,

あと時間を節約することにもなります。サーバーの選定とかいろんなことをここの協力体制でやって

いくと。

 また,重要なポイントは,その後でどんどん拡大していくと,会議で提案して根建先生のおかげで

予算の確保をして導入しましたけれども,その後は,どんどんほかの人の協力が必要ですね。業者に

依存するとまた別の問題が生じますので,ですから,その青のところ,ほかの教員とかほかの事務に

も広がっていくという協力体制ですね。これは,また重要なところは,ほかの教員,事務が大きくな

らないと,特定の人が仕事を全部するということですね。業者をちょっと,その役割を小さくした方

が,そうすると割と手ごろな予算といいますか,割と少ないお金でこれは維持できるということですね。

ですので,その維持ということは,また e- ラーニングの導入の一つの重要なポイントは,これを導入

したい,これは重要であるということを考えて,でも出口を見ないといけないですね。これを導入し

てからどうなるか,これを導入してからだれが使うか,維持はどのぐらいかかるかということですね。

私は,ちょっとけちな人ですね。もうけちけちけちです。一切ライセンスのことはしたくないですね。

ライセンスは毎年の予算が必要なもので,大学の中でそのライセンスのものは非常に事務が嫌いです

ね。機械を 1 回買って,それは今年度の予算で終わりというものは文句言わないんですけれども,毎

年 100 万円,毎年 120 万円ということは,相当提案する勇気が必要ですね。平気でそういう勇気,そ

ういう人がいますけれども,やはりそこはその出口を考えないといけないですね。ですから,何かの

ライセンスとかそういう高いものをベースにした e- ラーニングになると,非常に出口が見えないです

ね。いつまでその予算を確保できるかということがわからないですから。そこは非常に重要なポイン

トですね。

 そこが結局,割と小さい規模でサーバーとか,大きな e- ラーニングは導入できるという経緯が,雑

談とか教育的な,それと事務的なレベルでどういうものを欲しいということがはっきりわかって,そ

れは予算を立てて,どのぐらいの予算が必要ということですね。そして,それを会議とか大学のもっ

と上の自分の所属長に説得するということで,あとはどんどんほかの教員とかほかの事務に段階的に

協力してもらって,広げていくということですね。そこは割と小さい予算とかで e- ラーニングは始ま

ることができます。

 それで,ちょっと時間があれですので,こういうところはさっき申し上げましたのでレジュメでご

らんください。

 ただし,e- ラーニングとか,これは教育現場とかかわってることですから,自分の思うとおりには

いつもいかないですね。途中で要望が出たりとか途中でいろんな意見が入ったりとかいろんなことが

出ますので,あるいは自分が提案したことはちょっと失敗するとかですね。こういうことがあります

ので,鹿児島大学の教育センターでは,またお世話になった内宮さんのことですが,ちょっと携帯か

ら Moodle アクセスしたらどうかという話をしたりとか,私はそのときは堂々で,こういう顔で,ああ,

ちょっと携帯を扱うつもりはありませんと言ったことの覚えがあります。ただ,その後でちょっと考

えたり,出張があって東京に行って,結局,山手線を見ると,みんな携帯を読んでるんですよね。出

張から帰ってきて 1 週間後,また,やっぱり携帯はちょっと考えた方がいいかなというね。ですから,

そこは自分の方向性を途中で変えるということが必要です。結局,携帯のことを考えて,こういう変

換スクリプトというのを入れました。これはまたオープンソースで,ただで入れたんですね。

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 これは,Moodle を今,皆さんごらんになっているサイトを携帯で表示できるようなソフト。これは

私が 1 人で入れて何とか。でも,情報科学系じゃないので,自分のプログラミングができない人です

から,ちょっと雑でしたね。でも動いたのは動きました。ですから,ここはまた一つの重要なポイン

トは,例えば携帯サイトを導入したいという高い予算を申請する前にテストの段階で何かして,それ

をちょっと現場で学生に使ってもらって問題点を図るということですね。そこをちゃんと鹿児島大学

の 19 年度の授業で使ってもらって,もっと上手な本格的な携帯サイトを学長裁量経費を申請して,そ

れはおかげさまで通していただけました。

 ここはちょっと,自分の開発用の携帯ですので,何も重要なことはばれませんので,ちょっと回覧

します。これはちょっとテストサイトですので,これは Moodle の全部は携帯で表示されません。幾つ

かの学生が使いそうな機能だけですので,ちょっとこれを見ていただいて構いません。

 それで,この携帯はなぜ導入したかというと,結局,話の理由は,多くの学生が既に持ってるとい

うことですね。それで多くの学生がなれてる。そして Moodle の幾つかの機能,例えばフォーラムとか,

これは掲示板ですね。あと,何かの課題をオンラインで書いて投稿する機能,こういう,よく現場で

使うような機能,例えば体験授業とか,あるいはこういうネットが動いてない無線 LAN がない教室と

か,こういうところでよく使いそうなコミュニケーション機能を携帯でできるようにする。あとアン

ケートの機能もありますので,こういうコミュニケーションのための機能を携帯にするということで

す。

 特に,気をつけなきゃいけないことは,1 年生の中でまだパソコン使わないとか,使わないよりも携

帯ほど頻繁にパソコンを使わない学生がたくさんいますので,パソコン使っても,その体験教育とか

そういう場ではなかなかパソコンを使いにくい状況ですから,携帯から e- ラーニングをするというよ

うな工夫を立ち上げるということですね。

 これはちょっと飛ばしますので,システムの現状で,ちょっとこれは御興味のある方はごらんくだ

さい。

 それで,もう一つのは,一応携帯は学生の現実を考えて導入するということですね。学生は,日本全国,

高校 3 年生が携帯を持つ比率は 99% ですね。ですからほぼみんな。ない学生は大体もう,ちょっとお

金の理由じゃなくて個性があって使いたくないという学生。パソコンでやらせている,そういう学生

は特別にアフターケアができますので,日本の高校生はもう 99% 携帯持ってるということで,現場か

らの現実を見ると,やはり携帯に取り組むことが大事だということです。

 もう一つの現場での利用,e- ラーニングを推進することの重要なところは,教員あての案内とか,

教員あての説明とか,あるいは授業に行って説明することとか,これはあります。これを使ってくだ

さい。また,例えば学内便で,これはあなたのパスワードです,だれもログインしませんよ。僕は,

何か暫定評価のためのデータベースパスワードを学内便でもらって,結局ほかの書類ととまってるわ

けですよね。ログインしてないんですね。事務から電話があって,ええ,何のデータベースと。です

から,結局もう電話とかメールでアポイントメントをとって,その教員の授業に立ち会って説明する

とか,あるいは困った先生の場合は直接に研究室に行くとか,そういう本当に人間的なアフターケア

がないと,これはなかなか広がらないですね。これはあなたのパスワードですということだと,とて

もとても,だれも使わないです。

 学生もそうですね。これ学生に,やはりちょっと口頭で授業を伺って学生に説明します。こういう

感じで,見せる方法はベストですけれども,これは 19 年度しませんでした,いろんな理由で。20 年

度はもうこういうデモみたいなことをしようかなと思っています。

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 それでメーリングリストとかどんどんメールを出したりという,こういうことをしなければいけな

いですね。

 去年の 19 年度の授業で,携帯からミニッツペーパーをするという根建先生の授業でいろんな実験を

したんですけれども,結局,平成 18 年度まではミニッツペーパーを本みたいなところで書いて,それ

を先生がコメントを書いて学生に返したんですね。問題は,その紙を学生に返すのがちょっと段取り

が難しかったりとか,時間がかかったりとか,そういうことでしたので,19 年度は携帯電話から投稿

してもらう。それは,こういうパソコンとかネット上で添削してもらうという工夫を,前期後期それ

ぞれちょっと違う工夫でしたけれども,そういうふうに導入しました。ちょっと飛ばしまして,後で

お見せします。

 もう一つの重要なポイントは,じゃあ携帯持ってないわずかな学生,あるいはパケット定額に入っ

てない 2 割の学生ですね。調査して 8 割が入ってます,パケット定額というか,どんなにパケット代

使ってもお金が追加要求されませんのような,それが 8 割が入ってまして,鹿児島大学の場合ですね。

ただ 2 割は少ない数でもないので,そこの学生のためにやはり無線 LAN を教室に設置したりとか,あ

るいは何かのパソコンでもいいというような工夫を立ち上げました。無線 LAN のもう一つのいいとこ

ろは,こういうデモみたいなことを学生に説明するときは,このデモを無線 LAN で実際できるという

ことですね。

 それで,もう一つは,さっき申し上げたように,担当者のサポートで講習会とかそういうことを頻

繁に開いて,担当者あてに説明するということですね。あと,要望に対応することが大事です。私は,

ちょっと異文化のところがあるんですけれども,英語の人間はここの色が入ってる文字が嫌い。これ

は僕が日本化された部分だけですね。科研の申請書に色をつけたら通りやすいと言われて色つけてる

んですね。英語の人間は大嫌い。あと,ある先生が,この文字が動く文字ありますよね,これは可能

かということを要望いただいて,ああ,まさか私は考えないことですね,英語の人間だから。だから,

そこの要望がいろんな視点から来ますので,必ずその管理者あるいは e- ラーニングを設計した人のア

イデアだけではいけませんので,できるだけ幅広い要望を導入するということです。

 それぞれ自分の授業のやり方とか e- ラーニングのバックグラウンドがみんな違いますから,パソコ

ンのバックグラウンドもですね。これは背景が皆さんそれぞれの個性もありますので,そこは要望に

対応するシステムをやはり導入するべきですね。

 それで,ここはちょっと飛ばしまして,これからの課題というのが e- ラーニングとしては,あんま

り使ってない科目に拡大する。多くの科目に利用するのは一つの重要なメリットは,それぞれの専門

が違いますからニーズが違うんですね。結局どんどん,20 年度,ちょっとだけ理系の科目がふえます

ので,結局,数学の数式をどうここに表示するかということですね。私はもう文系の人間ですから,

その質問を受けるとパニックですね。でも表にパニックしません。対応します。それは裏のネットワ

ーク使ってどうするかというメールを出すんですよね,理系の先生に。そこは一応方法がわかりまし

たので,そういう幅広くシステムを使うと,いろんな多様な要望が出てきて,どんどん充実していき

ます。ですから,これは,そのシステムの構想もいろんな人の意見をいただいて充実していくという

体制をつくらないといけないです。

 ちょっとミニッツペーパーのこれをお見せします。これは実践の例ですけれども,後で。これは根

建先生がオーガナイズされた科目で,このビデオ配信システムがありまして,ちょっと時間が余りな

いですので,これは MediaDEPO というビデオ配信システム,これは Moodle の外にありますけれども,

いろんな講義のビデオを見ることができます。さっきのミニッツペーパーは,例えば,こういう根建

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先生の授業が,どれがいいですかね。

根建教授 / 国際理解ですね,それ。

ファウザー准教授 / 国際貢献。これをクリックすると学生の書いたものを見せるのがちょっとあれ

ですけれど,こういうふうにここにありますね,学生の投稿が。これは携帯とかパソコンから書いて,

ここは先生が点数つけたりとかというようなシステムですね。根建先生の地学,地球 ......。

根建教授 / 地球の環境と進化です。

ファウザー准教授 / そうですね。それで,もう一つの,これは根建先生の授業で,またミニッツペー

パーをされまして,こういうところとか,これ 124 件,根建先生の熱意すごいです。こういう学生が

書いたものとコメントとかですね。で,採点が入ったりとか。数が多いということは大変です。ただし,

同じコメントを使ったりとかそういうことができますので,似たようなコメントとかですね,その側

面があります。さらに,これは根建先生が後半になって,こんな感じのところ,学生に書きかえなさ

いとか,ちょっと不十分なことであれば,もう足してくださいというような指示したりとか。どんど

ん学生が書くことが多様になったりとか,そして根建先生のコメントもそれに沿って多様になったり

とかというか,学生とのコミュニケーションが丸々よく成立したということになりました。何かコメ

ントが,済みません。

 これは教員が書くところですね,学生に対するコメント。学生が書いたことはこれですね。これは

優秀な720字ですもんね。これは結局,携帯かパソコンから書いたかどうかわかりませんけれども,半々

ですかね,学生は。そこは学生の事情によってどっちかということになるので,例えば忙しい学生は

携帯から書くとか,パソコン好きな学生とかはパソコンから,ちょっとそれぞれ,分量は必ずしもパ

ソコンではないですね。私の授業では 1,000 字のレポート出して,そこで携帯から書いた人もいます。

自分は想像できないですけどね,指が回りませんから。ただ,学生がそれぞれの好き嫌いがあります

ので,ここが結局,学生が好きなところから。また一括ダウンロードはできますので,ここをクリッ

クすると内容がそれぞれ書いたものがここに出てきますね。ファウザーという仮の学生は何も書かな

いですね。それで,ここがダウンロードもできます。CSV ファイルとかで。ですので,学生のコメン

トを全部ダウンロードして,もっとゆっくりしたエクセルという形で学生の勉学状況をはかったりと

か,教員がそういうことができますので,そこはミニッツペーパーの工夫です。

 ちょっと最後の 2 分ぐらい,もっと前のところに戻して。さっき申し上げたように,特色 GP にお

ける e- ラーニングは 2 つの側面があります。コミュニケーションの促進,さっきのミニッツペーパー

の取り組み,学生と教員とのコミュニケーションを促進すること。そして,もう一つはデジタルデー

タベースを構築すること。それは,この MediaDEPO というシステムを使いまして,そこがビデオ配

信ですね。ちょっと時間がないですけれども,それはなぜあんまり,今回は御紹介しない,しますけ

れども,お金がかかります。そのシステムは商品ですからちょっとお金がかかって,そしてビデオを

撮ってアルバイトの学生を使ってます。その編集のところにもお金が発生しますので,学生を,その

ビデオ編集しないといけない状況ですので,ちょっとそういう取り組みは特色 GP,あるいは皆さんが

持っていらっしゃる概算要求のお金を用意すれば割とカバーできますけれども,そういう特別支援が

ないところではちょっと難しい取り組みです。

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 このフィールドのシンポジウムですので,最も重要なポイントは,このフィールドに出かけて学生

とのコミュニケーションとか,あるいは学生がフィールドにいる間に何か携帯とか何か書かせて,そ

れについての何かの教員のコメントとかでも,重要なのは,事前,体験中,フィールドにいる中,そ

して帰ってきてから学生の変化を図ることですね。この媒体では,学生が事前に投稿して,フィール

ドに行って何か作業しながら投稿して,そして帰ってきてレポートを書かせたりとかすると,その学

生の変化を図ることができます。そうすると,その教育成果をもっとはっきり図ることもできます。

 もう一つの重要なのは,さっき英語教育と関連で言いましたけれども,ほかの人は何をやってるか,

お互いにアイデアを教え合ったりするのが非常に大事ですので,そうすると,この媒体がよく使えま

す。なぜかというと,一応文字としてデジタル形式で残りますから,紙は何も意味ありません。鹿児

島大学でもこういう議論する人がいます。字を書かせないと,その人の本質が出えへんというようなね。

その字を書かせないと,もうこの媒体が冷たいとか字があったかいとか。そうでしょうけど,言語学

的に字は何も人間の心が入ってない。文字なんですね,ドライな文字。英語はハングルで書いてもい

いです。それは言語学的な観点。ですが,その紙で書くところはいっぱいありますので,こういう媒

体はフィールドとかコミュニケーションとか体験授業で使えば何も害がないと思いますね,学生にと

って紙が重要であれば,生の字で書かせるという機会がほかの授業にもありますので。ただし取り組

みとしては,こういう情報がデジタル化すると,ほかの人が何をやってるか,学生の変化をはかるこ

とができて,それによって教育性をはかることができます。重要なのは,こういう GP も特にそうで

すけれども,何かの学生の変化,何かの教育成果をはかることは大事ですので,それはどうするかと

いうことで,結局重要な,この e- ラーニングとか,ICT 活用教育というか,ここの媒体を使うと,学

生の変化とか学生とのコミュニケーションとか,そして教員同士の交流のことを豊かにすること,そ

の程度のものだと思います。

 大体もう時間過ぎましたけれども,忘れてはいけないのは現場主義です。現場でだれが何をしてい

るか,その目的は何なのか。その目的は大きな目的,例えば科目群構築とか教育理念とか教育内容と

どういう関係があるかということですね。ですから,「する」e- ラーニングのことが非常に大事なこと

だと思います。

 大体時間使いましたので,済みませんでした。(拍手)

山田講師 / ありがとうございます。ファウザー先生も熱いですね。

 e- ラーニングと聞いて最初はえっと思ったかもしれないんですけど,単にテクノロジーの話じゃな

くて,対面か非対面かという話じゃなくて,あくまでもオルタナティブとして,こういう方法を目的

に応じて使っていくと,こんなこともできるということを,しかも低コストでできるということを伺

うことが出来ました。

 本当であれば,ここで少し質疑応答を設けたかったんですけど,内容のボリュームが非常に多くて,

ここでまず休憩を入れさせてもらいます。最後の総合討論のところで,質問などお聞きできればと思

います。

 では,次は,3 時 15 分からスタートしたいと思います。

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事業概要説明

山田講師 / では,時間になりましたので,第 2 部を始めたいと思います。

 第 2 部は,本学の取り組みについて,各自報告 10 分ずつという短い時間ではありますが報告してい

ただきます。また 2 つの学生グループからも報告してもらいます。ここは 15 分ずつとっています。

 それでは,まずは本事業の概要説明について,教育開発センターの森先生の方から御報告いただい

てから,中身に入っていきたいと思います。

 それでは,よろしくお願いします。(拍手)

森准教授 / 皆様,こんにちは。お忙しいところを

本シンポジウムにお運びいただきましてありがとう

ございました。

 本プログラムの成果報告に入る前に,簡単ですが

私の方から概要説明をさせていただきます。山田先

生の方から御紹介あずかりました教育開発センター

の森と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 時間が押しておりますので,駆け足になりますが

お許しください。

 まずは,事業概要です。事業名,ちょっと長いので

すが,こういう感じになっております。副題に「- 島

根大学から世界が見える教育の展開 -」とあります。

このプログラムは先ほどの鹿児島大学の取り組みと大

変似通った視点を持っているかと思います。今回のシ

ンポジウムのテーマでもありますグローカル,これグ

ローバルとローカルの造語になりますが,まさに本教

育プログラムの内容をうまく表現しています。

 事業期間ですが,平成 18 年から 3 年間ですね。

今年度は中間の年度になります。事業実施経費の総

額ですが1億850万円。先ほども申しましたけども,

これは特別教育研究経費を受けております。

 次に年度別実施経費ですけれども,この辺は時間

の都合で割愛させていただきます。

 本事業の目的ですが,申請時にはこの 2 つ示され

ております。「学士課程教育で必要とされるさまざ

まな能力の育成とその質の明確化」,またはこれを

獲得するための「教育方法の改善」です。これはフ

ィールド学習に問わず,高等教育の大きな教育目標

の一つであるかと思いますが,ではフィールド学習

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は何が違うかというと,このような FD,または教

育プログラムをエリアキャンパスという概念で行う

と,ずばりここが論点かと思います。つまり守られ

た大学の中ではなくてキャンパスから出て,実際の

現実の社会の中に入って学びを得るということが大

きな特徴です。このために育成されるさまざまな能

力の質がかなり通常の講義授業とは変わってくる,

そこがフィールド学習の特徴になります。

 実際にフィールド学習で育成される学び,一部な

んですが,私がぱっと思いつく限りではこのような

ものが挙がりました。実際にここに書かれている能

力,資質を育成することはとても難しいことです。

実はこれ,アクティブ・ラーニングと呼ばれる授業

形態で育成されるであろうといわれている能力なの

です。アクティブ・ラーニングは,今までの講義型

または知識継承型,伝達型,暗記型と呼ばれる授業

形態と,学習の意味に関して捉え方が違います。大

学入学前に受験を視野に入れた学習,ノウハウや効

率重視の学習方法では,このような能力を得るのは

とても難しいことです。つまり学生がみずから能動

的,かつ主体的に学びを追求しなければ,これらの

能力はなかなか得られません。このことから,学習

そのものの在り方を学生が自分自身で考えなおす,

学習観を転換する,そのような変化が様々な能力の

育成の副産物としてフィールド学習では期待される

のです。

 この事業が持つ効果ですが,フィールドを実際に

体験して,社会に貢献する環境マインドを育成し,

また実際にそれが教育改善になると。このようなも

のを回していった場合に,学生が地域と一方的な交

流ではなくて相互交流を行うことになり,ひいては

地域貢献につながります。このような学士課程の教

育を通じて行われた人材育成,つまりキャリア教育

ですよね。こういうものを島大の教育の特徴として

押し出していこうと思います。実はこの内容,島大

の大学憲章と非常に一致をしております。また,先

ほど高安副学長の方から出ましたキャッチフレー

ズ,「人とともに地域とともに島根大学」,これをま

さに特徴化したものが本プログラムではないかとい

うふうに考えます。

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 組織は現在このようになっております。総合理工

学部の高須晃教授をリーダーとして,まずは母体と

なるプロジェクトチームがあります。その下に 2 つ

のワーキンググループです。1 つは教養ワーキング

グループといいまして,教養教育の中でのフィール

ド学習のコーディネート,または推進を行っており

ます。ここから出てまいりました斐伊川プロジェク

ト,後に報告されると思います。またもう一つ,管

理運営ワーキング。こちらの方は,母体であるプロ

ジェクトチームのさらに細かい作業を行っておりま

す。今は学年暦のことについてアンケート調査を行

っておりますので,また結果が出ましたら皆様に御

報告を差し上げたいと思います。

 19 年度事業の取り組み,18 年度の取り組み,ほ

とんど継承されておりますので,この辺も割愛させ

ていただきます。

 こちらがプロジェクトの内容を図式化したもので

す。ごらんのように各小プログラムが相互連携をし

てる形を取っております。平成 18 年度まではこの

ような構成になっていました。平成 19 年度,今年

度の一つの大きな特徴といえば,これがこのように

多重化して重なり合っていることです。つまり相互

関係が 2 つのプログラム間だけではなくて,他分野

にわたり複数の小プログラムが連携,より学際的に

なっています。それは学部間を超えた,学科間を超

えた,部局間を超えた教員同士のコミュニケーショ

ンが非常に活発になっていると考えられます。教員

にとっても,実はコミュニケーションが非常に必要

だということだと思います。

 それでは今年度の成果報告に入りたいと思いま

す。またお聞きになった後に活発な相互討論の方,

どうぞよろしくお願いいたします。

 短いですがこれで概要説明終わらせていただきま

す。(拍手)

山田講師 / 森先生,ありがとうございました。

 では,引き続き行きます。それでは,医学部の藤

田先生より御報告いただきます。よろしくお願いし

ます。

- 70 -

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部局等代表者による成果報告

藤田教授 / 医学部公衆衛生学の藤田といいます。よろしくお願いします。

 今回,私は医学部学生を引率して国立療養所長島愛生園を訪問する機会がありました。長島愛生園

はハンセン病患者さんの療養所で,岡山県の瀬戸内海沿いにあります。本日は長島愛生園での実習の

概要をお話しいたします。

 私は公衆衛生学の教官で,医学部では公衆衛生学の講義を担当しています。講義の中で国立療養所

長島愛生園を学生に紹介しています。そうすると,毎年 1 名か 2 名の学生が国立療養所を訪問します。

ことしは例年になく多くの学生が訪問を希望しました。

 最初に私が実習の概要を話します。それから学生

の向田君が実習で体験した印象を話します。この実

習の目的は,1 長島愛生園(ハンセン病療養所)の

概要を知ること,2 ハンセン病を正しく理解するこ

と,3 入所者の方々と交流を通じて,医師としての

態度を学ぶことです。私は本実習から学生が患者さ

んの話を親身で聞くことができる医師としての態度

を学ぶことを期待しています。

 実習のスケジュールについて簡単に説明します。

まず,訪問に先立って平成 20 年 1 月 24 日に以前長

島愛生園で働いていらした看護師さんに長島愛生園

の概要を話していただきました。1 月 26 日(土),

27 日(日)と 1 泊 2 日で長島愛生園を訪問しました。

1 日目の午前 10 時に出雲キャンパスを出発し,午

後 3 時に到着しました。到着後,献花をしたり,園

内を案内してもらったり,県人会の人と交流会を持

ちました。2 日目の午前 9 時から 11 時まで不自由

者棟の入所者の方々と面接をしました。午前 11 時

に愛生園を出発し,午後 4 時に出雲キャンパスに着

きました。参加した学生は 15 名,私を含めて合計

16 名の訪問でした。

向田さん / まずはバスで出雲キャンパスから 6 時

間ぐらい,初対面の人も多かったのでいろいろな話

をしながら愛生園に向かいました。長島大橋という

橋を渡って愛生園に到着しました。事前に連絡をと

っていた島根県人会の I さんという方と合流をし,

I さん自身の愛生園に入ってからこれまでの話など

を聞きながら園内を案内していただきました。

 まず初めに,愛生園にある歴史館を案内してもら

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いました。ここはもともと園から逃亡する患者さん

を収容するための監房でした。ここにはいろんなも

のが展示してありました。それはハンセン病につい

て,長島愛生園の歴史,治療方法の歴史,園長先生

についてのことなどが多く展示されていました。ま

た,入所者の方の陶芸作品などの展示もされていま

した。一番大きな部屋には,昔配られていた愛生園

のチラシなどがあり,そこには東洋一の診療所とい

うふうに書いてありました。そのチラシを見て入居

者の方々は長島愛生園に来ました。しかし,実際に

あったのは園内での強制労働で,初めのころには治

療なども全くせずに,お金も一切出さずだったよう

です。また,逃亡させないために園内でしか使えな

かった通貨も展示してありました。

 日本のハンセン病の歴史を語る上では,初代所長

の光田健輔さんという医師は忘れてはならない存在

で,この方によって強制隔離や断種手術など,非人

道的と思えるハンセン病政策が推し進められていき

ました。また,その一方で光田先生は,患者さんの

ところによく訪れて会話をし,たびたび涙を見せる

ような場面もあったそうです。県人会の I さんも,

いい面もあり悪い面もあり,自分たちも複雑な思い

だと言っておられました。

 宿泊したしんじゅ荘はとてもきれいで,私たちの

ような訪問者に対しても配慮してくださっているの

がよくわかりました。

 その後に丘の上にある納骨堂に行きました。この

納骨堂は入居者の方々自身がつくられたそうです。

納骨堂があるということ自体が社会から偏見の目が

まだ残っているということで,偏見や差別のために

家族からも遺骨の受け取りを拒まれたり,持って帰

る途中で捨てられたりすることがあったため,多く

の遺骨がおさめられていました。私たちも将来医療

に携わる者として,ハンセン病の歴史を受けとめて,

ここに眠る方々に深く御冥福をお祈りしました。納

骨堂からの帰りにショッピングセンターがありまし

た。ここが今,長島愛生園の生活の基盤になってい

るそうです。

 かつてハンセン病患者の方が島に入るときに,職

員の方とは別に患者さん専用の桟橋から上陸したそ

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うです。どんな思いでこの島に入ってこられたのか

と思いつつ,私たちはその桟橋を見ていました。

 夜は島根県人会の方 4 人とお酒や,料理を囲みな

がらお話をしました。まだ入園する前の,楽しいふ

るさとのお話や,園に入ってからのつらかった話,

家族などから引き離された話など,いろいろと伺い

ました。今までで一番楽しくて,今夜は興奮して眠

れませんと言っていただいたのがとても印象的で,

嬉しかったです。

 2 日目には不自由者棟におられる御三方を 3 つの

グループに分かれて訪れました。不自由者棟はそれぞれ個室で生活をしておられて,私の班は,本人

さんの和室でお話を聞かせていただきました。部屋には写真や絵などがたくさん飾ってあり,それは

訪れる方からもらった作品や,職員さんからもらったもので,うれしそうにいろいろと見せてくださ

いました。実際,生活しておられる場で話ができてよかったです。

 1 泊 2 日のこの実習を通して感じたことは,今までテレビや新聞報道などで感じていたイメージとは

違い,実際に見てみないと本当の姿はわからないなと改めて思いました。

 私はハンセン病の方々は,今もなおつらく苦しい,暗い生活をしておられるのかなと思っていまし

たが,実際に行ってみると皆さん明るく元気に,とても親しみやすくいろんなお話をしてくださいま

した。その中で,「自分たちは今を精いっぱい生きているんだよ」と言われた言葉に心の強さを感じま

した。一方で,今でも外から来た私たちなどと接するときに出したお茶を飲んでもらえるのかとか,

出したリンゴを食べてもらえるのか,手を握ってもらえるのかなどという不安があるとも言われまし

た。その言葉を聞いたときに,社会から受けていたつらい過去をかいま見た気がしました。家族と昔

引き離され,名前も隠し,結婚しても子供を産めないように手術をされたりしたという話も,心に残

る傷はとても深いなと感じました。

 ハンセン病患者に対する差別や隔離,偏見などの 2 度と繰り返してはならない歴史を知り,これら

は決して忘れてはならないことであり,私たちが伝えていかなければと思いました。今もなお差別や

偏見は残っているので,正しい知識と理解を多くの人に広めていかなければとも思いました。

 自分は将来,医療人として,いつ,また未知の病気に出会うかもわかりません。そのときどんなふ

うに対応するのがベストか,何ができてどう配慮したらよいのかなども考えさせられました。

 今回,1 泊 2 日ではありましたが,入所しておられる方々とお話ししたりして多くのことを学ぶこと

ができました。でも,すべてを理解したとは言えないので,これからも引き続き,学んでいきたいと

思います。また,今回,見て聞いて,感じたことを一人でも多くの人に伝えていきたいです。

 長島愛生園は離島ですが,社会的に隔離政策は終わっても,本土と離島をつなぐ橋は,なかなかか

かりませんでした。そんな中で,1988 年に離島と本土をつなぐ橋がかかり,隔離されていた島が社会

と一本につながり,その橋は「人間回復の橋」と呼ばれました。私たちが帰るときに,その人間回復

の橋を歩いたときの映像があるので,見てください。

〔VTR 上映〕

向田さん / 以上で終わりです。長くなり済みませんでした。(拍手)

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山田講師 / ありがとうございました。

 実際に体験した学生さんの言葉だけに,やっぱり言葉に

重みがありますね。こういう発表の形態もありかなと思い

ました。

 では,続きましては,総合理工学部の長野先生より御報

告いただきます。

長野准教授 / 総合理工学部の長野です。

 材料プロセス工学科の 1 学年の定員が 40 人でして,途

中で編入の学生が 10 名入ってきますので 50 名なんです

が,年によって違うんですが 70% から 90% くらいは大体

建築を学びたくて来ます。実際には材料と機械とあるんで

すけれども。しかし,そういう最初希望を持ってくるんで

すが,どちらかというと建築設計,建築家という響きにフ

ァッションとして何となくぼんやりとしたあこがれだけで

入ってきている学生も実際には多いです。現実はなかなか

泥臭い仕事といいますか,そういうところもありますので,

現実を知らしめるということが一つ,それと同時に建築に

対する興味そのものを失ってもらってはいけないので,そ

ういう意味でフィールド学習という現場を知る機会が 1 年

生の早い段階から時折織りまぜながら進めていくというこ

とを常に意識しています。

 私,建築専門ですので,建築の話に偏ってしまいますけ

れども,なぜ建築とフィールド学習とが結びつくかという

ことなんですが,そもそも建築というのは,地域のそこに

ある材料だとかというものを使わないと建てられないもの

ですので,その地域に固有の風土と必ず多かれ少なかれ制

約を受けるということがあります。

 この写真は,世界遺産ですので御存じの方も多いと思い

ますが,アルベロベロのトゥルッリという建物です。これ

は,もともと荒れ地で,耕しても石ばっかり出てくるよう

なところでして,それを建物に利用したというような経緯

があります。地元にある地産の材料を使ったということで

すね。

 右上の写真は,パキスタンの砂漠地帯にあるんですけど

も,砂漠にある砂とかを使って,いわゆる日干しレンガに

して建物を建てるわけですが,天井の風の通り道に,風の

受けをつくって,中に通風を図るというふうな工夫がされ

ています。

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 左下は去年の夏に行ってきたんですけども,カンボジア

で雨季と乾季とで湖の水位が 7 メーターぐらい変わります

ので,建物を土の上に建ててしまうともう水没してしまう

というので,ひょっこりひょうたん島といいますか,浮い

ている状態ですね。こういう場所に適応した住居というの

が見られます。

 さすがにパキスタンとかカンボジアには学生を連れては

なかなか行けませんので,国内でということになるんです

が,写真は佐賀県ですがここも遠くてなかなか連れていけ

ませんね。なので山陰地方にあるようなものを幾つか見繕

っていろんな授業の中に織り込んで体験してもらうという

ようなことをやっていっています。風土とのかかわりとい

うことになりますと,例えばさっきの写真,カナダのいわ

ゆるかまくらのようなもんですけども,雪しかないところ

なので雪を材料にするしかないんですが,最小限の材料

で,表面積が一番小さくて中の空間広くとれるというよう

な形にせざるを得ない,それぐらい厳しい環境の中での住

居,これは仮設の狩りをするときだけの仮設の住居なんで

すが,かなり中は暖かいということになっています。こう

いうとこに例えば木造建築が建てられるわけありませんの

で,これは雪のブロックを組積してつくっているわけです

けども,そういう構法的なこと,それから施工技術,それ

から材料,それからそれをどうやって循環していくかとい

うこと,それから厳しい気候に対してどう建物で調節して

いくかというようなことがすべて関連しているということ

で,そういうことをいろんな授業の中で話していくわけで

す。

 私,専門が環境調節なもんですから,それを中心に紹介

したいと思います。

 授業の構成としてはざっと表にしていますけども,幾つ

ありますかね,それぞれ学年ごとに割り振っています。基

本的には,まず最初に体験,もうとにかく見てさわって感

じてもらうというような体験的なことに始まりまして,そ

れをどういうふうに理解していくかということ,そして,

ここ特に書いているんですけども,あとはそれを卒業研究

だとかに結びつけていくということがあります。表の右に

行けば行くほど応用的な要素になっていくわけですが,建

築の場合は,最終的には設計をする能力を身につけて卒業

してもらうということがありますので,常に設計というこ

とを意識させます。これが段階的に順序立てて講義を組み

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立てていくのがやる方としてはやりやすいという面もある

んですけども,そうすると授業の科目と設計とがなかなか

結びついて意識できないというようなことが出てきます。

ですので,どの段階でも常に設計にこういうふうに役立つ

んですよということを織りまぜながら進めていくというス

タイルをとっています。

 実際どういうことをやってきたかということを写真でざ

っと紹介したいと思います。これは大田市の建築課長,も

うやめられて独立されたんですが,渡辺さんという方に協

力をいただけることができまして,世界遺産になる前です

けども大森を案内していただいて解説をしていただきまし

た。このときは単純に見学で終わったわけですが,そこで

どういうものが特徴的かというのをそれぞれゼミの中で発

表させまして,こういうところはちょっと調べてみたらい

いんではないかということを意見を出させまして,実際に

調べに行った。これは寸法を実際に図面で起こしていくと

いう作業と,それから風向風速,それから気温分布をはか

るということをやっています。

 ポインタはこれですか。この写真にありますのが,とっ

てもアナログな風向風速と,アスマンの通風乾湿計という,

とってもアナログな測定器です。今どきデジタルで幾らで

もはかる方法はあるんですが,アナログなものの方がどれ

ぐらい風が吹いて,どういうふうにメーターが動いたとい

うのを実感しやすいので,あえてこういうアナログなもの

を探して,わざわざそれを買ってそういうものを使ってい

ます。

 これは実際に中に入らせてもらっています。ここは道幅

が非常に狭く,行かれた方はわかると思うんですが,とっ

ても今,観光客が増えていまして,前面道路側にある部屋

というのはのぞかれちゃうんで使われてないんですね。そ

れが一つと,あと格子の町並みを再度復活させるというこ

とをしてるわけですけども,それで部屋の中自身が暗くな

ってしまうということがあります。それを本当にそういう

問題が起きているのかどうかというのを,照度をはかって

調べるということをしています。それから日射がどれぐら

い入っていくかというのを天空写真を撮って調べるという

ことをそれぞれやっています。そして,こういうふうにフ

ァサードの特徴を図面に起こしていくわけですね。絵を描

かせるということが非常に特に建築の場合重要で,こうい

うふうに図面に起こすということはよく観察しないと描け

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ないですので,絵を描きましょうというふうに言うと,だ

いたい自分で進んで率先してやってくれます。非常にあり

がたいことです。温度だとか,それから風向風速だとかと

いうのも絵的にまとめたりします。照度をはかったのはこ

ういう形で,これは断面なんですけども,こちら側が武家

屋敷です。武家屋敷の特徴は,前庭があって塀を設けるん

ですけども,塀があるので上から光が回り込むような,矢

印の光の流れになっています。こっちが町屋です。町屋は

前面通りに直接面しますので,前面通りのアスファルトか

らの反射で部屋の中の光の流れが全然違いますよというこ

とが,絵を描くと中学生,高校生が見てもわかります。そ

れだけ理解を深められるので,絵を描かせるというとこま

でさせるということをやっています。

 これは,ちょっと頑張って足を伸ばして,豊岡市にある

城崎の 1 つ手前の集落なんですが,行ってきていろいろ話

を聞いてきました。この写真,わかりますでしょうか,こ

こに手前に玄関扉があるんですけど,ここにバイクがあっ

て,その奥にも扉があります。玄関が 2 つというか,二重

の扉になっているもの,二重戸って地元では呼ばれている

んですが,もともと日本海側に面している漁村ですので,

風がとっても強くて,それにどういうふうに適応するのか

ということで生まれた形式です。だから部屋の大きさをこ

れで犠牲にしているわけですけども,そうやって暮らして

いる。こういうふうに窓あるんだけど,板で閉じちゃって

るというような状態ですね。こういうものを実際に行って,

中の生活が不便になってないかどうかっていうことを中ま

で見学させてもらって話を聞きます。ヒアリングをしてど

ういうことが問題になっているかということを聞いてまい

ります。ここでもやっぱり図面を起こして絵を描きます。

ヒアリングで風がとっても強いという話があったので,風

の名前をどんなのがあるかというのを聞いたら,これぐら

いざっと出てきまして,風の名前かなりあるんだなという

のがよくわかるんですけれども,北西側に面してる集落で

すので,例えば北西の風であるタカニシが吹くととっても

危険だとか,そういうことが聞けます。こういうのも,絵

をかいてまとめるということをしています。

 これは鹿島の先,出雲市になりますけど三津という集落

ですが,ブロック塀です。ここに写っているのが人なんで

すけど,わかりますかね,ここに屋根の棟がちょっとだけ

見えてますけども,かなりブロック塀で家を覆ってしまう

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ようなものがあります。こういうものをつくって,その強

い風に適応しているわけです。風が強いからどうしてもこ

ういうのをつくらざるを得ないんだけども,そういうとこ

でどういう,生活上の不便がないかどうかということを見

て感じたり,あるいはヒアリングをして聞いたり,ここで

も風が本当に強いのかどうかというのをはかってみたりっ

ていうことですね。こうやって図面を起こしてどれぐらい

大きなものかというのを感じてもらいます。このようにま

とめたりとかいうことをやります。

 この写真は,仮想的な屋外環境をつくりまして,この白

熱球が太陽のつもりなんですけども,こういう建築の単純

な部屋の模型をつくって,それに断熱材とか蓄熱材を入れ

たときに部屋の温度がどういうふうに変わるかどうかとい

うことがわかる教材をつくりましょうということをやりま

した。だから学生自身はいつも教えられる立場にあるんで

はなくて,中学生,高校生に教える立場でわかりやすい教

材をつくってみようということをやってみました。それだ

けきちんと理解していないといけない訳ですが,私がどう

こう指示しなくても,いろいろ自分たちでアイデアを出し

て動いてくれました。これは今年初めて試みたんですが,

来年以降ももう少し続けてみようかなというふうに思って

います。ここでも,こういうふうに中学生,高校生にもわ

かるように,絵を描いて説明するということをさせます。

 建築ですので設計の方にどういうふうに結びつけていく

かということなんですが,一般の設計コンペというものが

ありますので,そういうのに積極的に参加してもらうとい

うことをやっています。これも最初は口酸っぱく言って,

どんどん出せ出せと言っていたんですけども,最近ようや

く言わなくても自分であれに出してみたいと言うようにな

りました。これは松江市の駐車場の分布とかを自分でフィ

ールドを歩き回って分析して,それを改善する提案をする

という案です。入賞はしなかったんですけども。これも伝

統民家をうまく再生するというような提案ですね。

 こういうことをやってきたわけですが,まあまあ積極的

に,与えられるというようなことだけじゃなくて,自分で

動いてくれるようになったということで,そういう意味で

はすごくよかったのかなと思っているんですが,1 年次に

なかなかそういう,実際には講義の時間を利用してやって

いるので,数がちょっと少ないということ,それから 4 年

次も卒論の忙しい時期で,授業としてなかなか数が組み立

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てられないというの

で,ちょっとその辺

は改善点かなという

ふうに考えていまし

て,4 年次には科目

を新しく設けること

が一応学科内で決ま

りまして鋭意準備中

です。それから 2 年

次にやっている工場

見学を 1 年次に変更

するかを,今検討し

ているところです。

済みません,ちょっ

とオーバーしてしま

いました。(拍手)

山田講師 / 長野先

生,ありがとうござ

いました。

 それでは,引き続

きまして,産学連携

センターの中村先生

の方より御報告いた

だきます。

中村教授 / 産学連携センターの中村です。

 それでは,高大連携の取り組みについて御紹介したいと思います。

 先ほど鹿児島大学の方のキーワードの中に,産官

学連携というのが最後にありました。それから地域

貢献がございました。もちろん教育研究ありました。

それから先ほどのイントロダクションの中に学部を

超えた試みというのも出てまいりました。実はこれ

からお話しする内容というのは,すべて網羅した内

容になっております。ただ,対象が学部の学生では

ないんです。開かれた大学ということで,ここの場

合は高校生を対象とはしていますが,このプログラ

ムはそのままどの学部でも共通して活用できるプロ

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グラムになっているということでございます。

 済みません,これが本プログラムを PR するため

につくりましたパンフレットの表紙になっておりま

す。これちょっと非常に小さくて恐縮なんですけれ

ども,医学を中心としたというふうに書いてありま

す。医学を中心とした,すなわち医学と工学の場合

は医工連携,医学と農学の場合は医農連携という形

で,学部を超えた,要するに研究領域を超えた,融

合して,かつ産学連携ですから,企業の方々と共同

研究をして実用化を見た,例えば医療機器等を実体

験してもらうというのがねらいになっています。

 それで,目的なんですけれども,この場合は島根

県下の高校生,スーパーサイエンスハイスクールに

指定されている学校が 2 校ありますが,それを含め

ます。ですから理数科を目指している生徒さんが主

になります。そしてそれは1年生ということですね。

最先端の科学を 1 年次で,まだ進路が固まっていな

い段階で体験してもらうと。そして一層科学への興

味を深めてもらうということになります。

 これは本学の大学憲章なんですけれども,非常に

小さな字なんですけれども,実はこの産学連携セン

ターというのは社会の窓として非常に接点というん

ですかね,身近に感じてもらえる利点があります。

したがいまして,その中でも世界最先端の,もちろ

ん島根大学で遂行している,そうした研究の成果を

社会に還元する。この場合は高大連携という形態で,

社会貢献するということになります。

 これが通常のフィールドワークの学習のプログラ

ムなんですけれども,スケジュールは,もう朝の 9

時から大体 4 時ぐらいまでの,ほぼ 1 日を費やす非

常に過密スケジュールになっております。場所は医

学部のあります出雲キャンパス。私,申しおくれま

したけれども,医学部の方の教育,研究の方を担当

させていただいているので,どうしても医学が中心

になった話になるんですけれども,出雲キャンパス

にある産学連携センターがその教育の舞台になりま

す。

 そして,この場合,この 4 つですね,テーマを掲

げてありますけれども,高校生のみんなに紹介する

研究内容,非常にかいつまんでこれから御紹介しよ

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うと思うんですけれども,この骨ねじ加工による再

生医療の場合には整形外科,それから遠隔地医療で

すね,この場合は医療情報部,それから調湿性木炭

ですね,この場合は皮膚科,それからナノメディシ

ンの場合には当センター,産学連携センターが担当

しています。

 骨ねじ加工による再生医療ってあります。済みま

せん,ちょっと字が。これはやはり産学連携によっ

て,非常にうまくいった事例でありまして,もう実

際に治療を行っています。これはどういったことか

といいますと,自分の患者さんの骨から金属のボル

トのかわりに手術室,その場でおよそ 15 分ぐらい

で,テーラーメードですから,その患者さんに見合

ったねじをつくるんです。それを患部,その骨折の

部位に固定しようという,これは画期的な世界最先

端の再生医療です。なぜ再生医療か。これ実は自分

の骨ですから,全く拒否反応も起こらない。それか

らやがては骨として同化するということで,通常だ

と金属のボルトを撤去する 2 度目の手術が必要にな

るんですけれども,この場合は要らないというよう

な話を私ではなくて専門のこの場合は整形外科の内

尾教授が非常にわかりやすく骨とは何だ,あるいは

先ほどの研究に至った経緯から今後の展望まで,非

常に医学的な深いところまで,本当に易しく,恐ら

く中学生が聞いてもわかるだろうというような講義

をされて,そしてその生徒のみんなは非常にモチベ

ーションが高まった,非常に骨への興味が高まった

時点で研究室の方に移って,そしてこれはさすがに

人の骨ではないんですけれども,これは豚の骨なん

ですけれども,豚の骨で実際にその場で骨を削って

ねじをつくっているということです。これは先ほど

の材プロの先生がおられましたけれども,総合理工

さんとの共同研究,それからナノという企業さんと

の共同研究によって成立したものです。

 これは次,遠隔地医療なんですけれども,エージ

ェントというのは,これは代理という意味です。何

の代理か,これは実は専門の医師の代理という意味

合いで使っています。

 東西に長い島根県の場合,とりわけ医療機関とい

うのは出雲市であるとか松江市,東部に集中してい

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るがために,西部でありますとか,あるいは離島,

非常に医師不足。これはもう全国的にそうなんです

けれども,非常に地域医療の崩壊ということが言わ

れている中に,島根大学の研究シーズというものを

活用して,何とかやる。その場合の,この場合は,

キーワードは遠隔地医療と。正確には医療補助にな

ります。

 この益田市でも,県西部の中でも非常に西の方に

位置するわけですけれども,この益田にある益田高

校のみんなも来てくれます。休憩入れると 3 時間ぐ

らいかかってくるんですけれども,そのみんなが,

便宜的に,これ実は益田日赤と医学部の皮膚科の外

来とで,もう実際にこの交信を初めているんですけ

れども,このセンターの中の 3 階と 4 階は便宜的に

医学部側と,それから日赤側に分けまして,生徒の

みんなが患者役と,それから医師役に分かれて双方

向通信のエージェントロボットを活用して診療の疑

似体験をしてるわけですね。これ一見,テレビ会議

システムのようにごらんになるかもしれませんけれ

ども,これ双方で自由に角度を変える,あるいはズ

ームイン・アウトできる。そして非常に小さなほく

ろまでも拡大できる,それから皮膚の症状なんかも,

当然これもう診療に使っているわけですから,非常

に鮮明に色合いも判断できるというようなことで,

とりわけ遠くの益田市から来てくれたみんなは,本

当にこの利便性というものを体感してくれるという

ことになります。なお,この場合も,先ほど社会に

触れるということがありましたけれども,この開発

にかかわって,この後の話もそうですけども,企業

の方々もここに参加してくれてるということがあり

ます。

 次は木炭なんですけども,これは実はローテクの

話なんですね。炭というのは体にいいということは

従来ずうっと言われたんですけれども,これを科学

的に,この場合は皮膚科学という見地から科学的に

実証したのが,この場合,アトピー性皮膚炎の改善

を実証したのが,これが皮膚科学の森田教授なんで

す。非常にローテクな話をしながら,これ恐らく 3

日後だったと思うんですけれども,御本人が中央新

報の 1 面を飾ったんですね。そのとき内容は逆なん

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です,ハイテクなんですね。詳しくはあれですけれ

ども,小麦のアレルギーで,ここに小さな字でアナ

フィラキシーとありますけれども,食物アレルギー

のショックを起こす,そういったことで,逆に非常

に簡便で,しかも高性能で診断できる,そういった

ものを開発,島根大学医学部しているわけですね。

その当日だったと思うんですけれども,その引率さ

れた先生が,あの先生,知っているんだというよう

なことで,非常に大学を身近に,あるいはサイエン

スを本当に身近にみんなが感じてくれたという,非

常にこういった連携を今後も続けていきたいという

熱いメッセージをいただいたというところでありま

す。これは,まだ基礎研究の段階なんですけれども,

島根大学として力を入れていきたいと考えている領

域なんです。

 これはナノバイオ,これも工学部と医工連携とい

う形で進めているんですけれども,ここで半分の生

徒さんたちが研究室にいますけれど,もう半分のグ

ループは暗室,暗い部屋でがん細胞がぴかぴか光っ

ているのを体験してるということであります。

 このような非常にはしょった御紹介で申しわけな

いんですけれども,アンケート結果からいいますと,

これ無記名でとっているんですけれども,おおよそ

よかった,大変よかったを合わせても,圧倒的に非

常に反応がいいんですね。そして,ここ,当たり前

ですけれども,理数系が多いので医学,看護,薬学

というのが多いんですけれども,中には教育学部を

当然目指している方もいるんですね,1 割ぐらいい

るんです。でも,そのアンケートの内容を見ますと,

それでもやはり医学あるいは別の工学とか,そうい

ったものに触れるのは非常によかったというのが複

数の中にありますし,あるいは工学部を目指す方々

も,あっ,そういうふうに自分の分野を超えて,融

合して新しいものにチャレンジできるんだというこ

とを知った,なおさら工学部の方に進みたいとかい

うようなことのアンケートの結果も実は得ておりま

して,これは今,実は生徒さんの印象をお伝えした

んですけれども,これは予想外だったのは,実は引

率をして来られた,あるいはそれを一緒に同行され

た他校の先生も来られたんです。なぜ,食事をした

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後に真っ暗になってパワーポイントでやっても,だ

れ一人寝ない,不思議だというようなことが何かど

うもあったそうで,結局,島根県下に 6 校ほど理数

科を設置している高校があるんですが,すべての先

生方が集まるので,一度研修会を開きましょう,開

いてほしいということで出雲の方に来られたわけで

あります。そのときに,ちょうど今,全国的に理数

教育の底上げというんですか,向上というのを考え

ている中に,何か大学側からヒントがないのかとい

うことで,こちらの方からもいささか若干の提言を

させていただいたという絵であります。

 まとめですけれども,これは先ほど申し上げまし

たように,全学的な取り組みだという位置づけ,本

プログラム全体がなっていますので,そういった心

づもりで進めてはいますけれども,まだ現在のとこ

ろ,高大連携という形で今紹介していますけれども,

実はこの内容に関しましては学部教育の中で取り上

げて,総合理工の方でも講義の中に取り入れてもら

っているんですけども,できればこういった高大連

携というような御紹介したんですけれども,例えば

教育関係の先生方,この中にたくさんおられると思いますので,我々非常に産学連携の中でも苦手と

いいますか,余り理工系しか接点がないもんですから,教育という一つの切り口で何か連携が図れれ

ばな,それが学部横断的な真の意味での教育プログラムではないかというふうに私はちょっと考えて,

逆に提案がいただければという思いで,実は出雲からやってきたというのが一つあります。

 それから,これはあれですね,理数科の担当の先生方も非常に興味を持ってくださっているので,

逆に大学に来てくださいと。幸い大学には社会人選抜という制度もありますので,医学部に限らず大

学院の方に入ってくださって,一緒にやりませんかということで,実は,これは教育関係,県庁ですか,

そういった担当の方に聞くとなかなかいろいろ規則があり縛りがあるそうですけれども,非常に前向

きに考えていただいてると,そういう状況でございます。

 済みません,ちょっとオーバーしましたけども,これで終わります。(拍手)

山田講師 / ありがとうございました。

 次は,私教育開発センター山田の方から「フィールド学習の効果と学生支援」ということで報告さ

せていただきます。本事業のサブリーダーと,教養教育フィールド学習 WG のリーダーを仰せつかっ

ています。

 今回の報告の問題意識は 3 点です。1 点目は,点から線,面へということです。本事業におけるフィ

ールド学習は,個々の授業という部分ではかなり充実してきています。それら点が,線に,そして面

へと拡がっていく。本事業の目指すところが,フィールド学習の体系化を図るということにあること

からいっても,このことが必要になってきます。

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 2 点目は,PDCA の強化,特に C の部分の強化が必要だということです。この C の部分がうまく機

能してこそ次のアクション,さらなる発展へとつながっていきます。

 それと関連して 3 点目は,説得性を高めるということです。これは根建先生の話にもありましたが,

つまり社会的な説明責任(アカウンタビリティ)を果たさねばならないということです。そういうと

きにこの C がかなり強く求められてきます。

 そういう問題意識の中で,とりわけ今回の目的としてはこの 3 点です。

 1 点目は相対化です。個々の実践を相対化していく。例えば島根大学の取り組みを鹿児島大学や他大

学のグッドプラクティスから相対化していく。あるいは島根大学の中で違う授業との間で相対化して

いく。そういう相対化の作業を積み重ねていくことを通じて,上記のような問題の解決につなげてい

きたいと考えています。

 2 点目は,その実現のためには何が必要なのか,ニーズをしっかり把握するということです。それは

教員,授業実践者のニーズもあるし,学生のニーズもあるし,外部の人にとってのニーズもあります。

 3 点目は,内容の明確化です。フィールド学習は大事,ということは恐らく誰もが思っています。で

は,それは他の授業形態等と比べて何が得られるのか,という部分を明確にしていくことが必要不可

欠です。きちんとした理念・目標があって,それに対する実践があって,目標に照らしてうまく機能

したかどうかというチェックがある。そのあたりをはっきりさせていくということが必要だろうとい

うことです。

 そういった意味では教育開発センターでは,全学にまたがる様々な調査を実施しています。これを

利用すれば本学の様々な教育状況を伺い知ることができます。

 1 点目は,学生による授業評価アンケートですね。2007 年度,今年度の前期と後期の授業評価アン

ケートの中で,共通教養の全体の平均値とフィールド関係の科目の平均値をプロットしたものです。

サンプル数は教養のフィールド関係の 8 科目 300 人程度になります。例えば,とりわけ開きの大きか

ったものに「授業内容が理解できたという部分」「シラバスにある科目の達成目標はクリアできたとい

う部分」「総合満足度」の 3 点があげられます。あくまでエビデンスの 1 つではありますが,フィール

ド学習の高い効果について示唆することが可能です。

 2 点目は,教育ニーズ,つまり学生がどのような授業を求めているかという指標です。センターでは

2007 年の 1̃2 月に全学の 1 年生対象に初年次教育調査を実施しました。報告書も出しています。そこ

で様々なアクティブ・ラーニングの形態を挙げて,そのニーズについて聞いています。効果の高いも

のとして,実習,実験が挙がっています。次に体験学習,フィールドワークも高く出ています。やは

り体を動かしていくような教育活動は,学生にとっての教育効果も高いし,教育的なニーズとしても

高い値を示していることが伺われます。これも 1 つのエビデンスとして有効であろうと思います。

 3 点目は,そうした授業を受講した学生さんたちにどういう力が身についているかということに関

する調査結果を見てみたいと思います。最近,社会人基礎力,学士力,いろいろ言われていますけど,

例えばそういうものに相当するような力で,15 個挙げています。ここではこの 1 年間に体験学習を

1 回でも受けたことがある学生と 1 回も受けたことがないという学生,人数は前者が 380 人,後者が

530 人で,それぞれの力がどれぐらい身についたのかについて差の検定をかけてみました。結論から

いうと,ほとんどすべての項目で受講者の方が高い値を示したのですが,とりわけ有意差が出てきた

のは「まとめる力」「意見・事実を分けて書く力」「物事の問題点を発見する力」「自分で発見した問題

点を解決する力」「プレゼンテーションの力」「自分の意見を筋道立てて主張できる力」「物事に対して

粘り強く取り組む力」といった項目です。最初の森先生の報告のときにもこういう力が身につくんじ

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ゃないかというところを,実証データとして示し得たということになるわけです。これも 1 つの有効

なエビデンスになり得ると思われます。

 他にもあります。今のはフィールド学習の成果を量的な側面から見てみたわけですが,もっと泥臭

い部分や込み入った部分を含めた質的な側面からも検討するために,森先生を中心として,今年度フ

ィールド学習を実施された授業担当者に対して,ヒアリング調査を行いました。1 人につき大体 30 分

から 1 時間程度,ここに挙げる先生方に協力していただきました。この場をかりてお礼申し上げます。

データはまだ分析途中ですが,フィールド学習の効果について特徴的な結果を拾い上げると次のよう

なことが挙げられます。

 1 つ目は「学生の変化がわかる」ということです。

2 つ目は「学生同士の関係性構築のプロセスが見える」ということ,つまりフィールドの中で学生たち

がどう変わっていくのか,学生同士がどういうふうにつながっていくのか,そのプロセスが見えてく

るということ,が大きな特徴として挙げられます。

 3 つ目はそれと関係して「教員と学生の距離が近くなる」ということ。コミュニケーションが活性化

されるということです。別の卒業生調査になりますが,教員と学生のコミュニケーションがきちんと

取れているということが,学生の卒業時の満足度に一番高くきいてきているという結果が出ています。

なので,いかに学生と教員のコミュニケーションを図っていくかということが,今,大学教育で最も

求められているところになります。ファウザー先生も言っていたとおりです。これがフィールド学習

で可能になるということです。

 4 つ目は「教員の授業に対する動機づけの向上につながる」ということ。学生が変わっていく姿を目

の前で見れたら,教員としてもうれしいわけで,動機づけも上がります。5 つ目は「多面的かつ定性的

な評価が可能になる」ということ。ある先生はポートフォリオを使われていて,学生の作成物・観察

物等を全てファイリングしていく。そういったことを通じて,テストだけで測る側面とは異なる様々

な側面を評価することが可能になってきます。教員と学生の一方向的な伝達から,フィールドを題材

にして,その中で学生と教員がインタラクションを起こしていく。こういうことで上のような効果が

得られるんじゃないかということがヒアリングからも出てきたということです。

 さらに,管理運営に関してのアンケートを 3 月 3 日 ̃14 日の間で実施しています。この調査の前段

階として,本センターの森先生が,シラバスからフィールド関係の授業を教養と専門合わせてどれぐ

らいあるかを調べてもらいました。結果,112 授業あったとわけですが,その担当の先生方に対して

実施中ということになります。御協力の方よろしくお願いいたします。

 最後になりますが,学生支援の取り組みということで,先に述べました教養教育のワーキンググル

ープの中で,私の方が取り仕切って「学生によるフィールド学習支援プログラム」というものを今年

度からスタートさせています。目的は学生主体の魅力あるフィールド学習を発掘して,支援して,推

進するということです。学内のサークル等の団体に公募制で応募をかけて,選定数を約 3 本,支援額

は 1 団体で最大 20 万円の計 60 万円までつけるということでやっています。今年度は初年度というこ

とで,まだ認知度も低く,結果 2 本の応募があり,その 2 本を選定しました。この 2 本の取り組みに

ついて,この後報告していただくことになっています。

 その意図は「元気な学生が大学を変える」という点を具現化することにあります。学生が大事,と

口だけではいくらでも言えるんですけど,具体的な支援策がなければ意味がありません。私の戦略と

しては,学生たちの自主的な活動に公的な性格を持たせ,そのことで彼らの活動を見えるようにする

こと。そして当該学生のみならず,他の多くの学生や教職員に直接的・間接的に影響を及ぼすこと。

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そういったことを意図して企画した次第です。また,正課外の教育効果をきちんと正課と結びつけて

いくということも重要で,そうしたことも意図しています。また,学部・学科を超えて多種多様な学

生同士が,こうした活動の中でつながりを見つけていって欲しいということも意図しています。しか

もきちんと予算計画も立てて企画書を練り,それに基づき実施し,シンポジウムでの報告や報告書も

出させるので,結果的にプロジェクトをマネジメントする総合的な力量が相当つくことになります。

どういう力がついたとか,どういう取り組みだったかというのは,この後の学生さんの報告を見てい

ただければと思います。

以上で私の報告は終わりです。御清聴ありがとうございました。(拍手)

 では,次は法文学部の竹永先生の方から御報告いただきます。

竹永教授 / 法文学部の竹永です。

 私はアナログ人間ですので,e- ラーニングどころかパワーポイントも使わず,表もエクセルを使わ

ずに一太郎でつくりました。

 お手元のレジュメ,「斐伊川プログラム」の取り組み - 構想と準備状況の報告 - というのをごらんく

ださい。「斐伊川プログラム」の構想というのは,このプログラムが始まりましてから考えたことであ

ります。実は私,この最初からの委員ではなくて,担当の委員がオランダに留学するというので,途

中から交代して取り組んだのです。

さて「斐伊川プログラム」の趣旨は,構想の前提というところに書いておきました。つまり教養教育

の本来の目的からすれば,個別専門にとらわれない総合的な認識を育むということが必要だと思うの

ですが,そういう場合にフィールド学習,つまり地

域というものは極めて適合的な対象であり方法でも

あるということです。即ち,「地域で学び,地域を

学び,地域と学ぶ」,「地域で学習する,地域の学習

をする,それから地域と学習する」と,ゲティスバ

ーグ演説風に言うと,「イン・ザ・フィールド,オブ・

ザ・フィールド,ウィズ・ザ・フィールド」という

ことになるかと思いますが,そういうことに鑑みて,

次のようなねらいを設定しています。

 1 つは養成する力量です。具体的にはそこに書い

てあります,地域を具体的に,物事を具体的・総合的・

構造的に認識するということです。そして,その対

象として,また方法として,「流域」という地域は,

極めて適合的ではないかということです。

 授業の内容上の目標としてそこに書いていますよ

うに,斐伊川流域というものを地域論,文化論とし

て総合的に理解する。それから人と自然のかかわり

を理解する。さらに地域の多様性を理解する。斐伊

川水系は源流から境水道まで非常に広大な地域を持

っているのですが,その上流から下流,水系と山地・� � �

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平野部,あるいは歴史的にいうと古代から現代まで

いろんな多様性を持っています。そうした多様なも

のを総合的,構造的,具体的に理解するということ

が,この「斐伊川プログラム」のフィールド学習で

できるのではないかということです。

 「流域」というのは,私は専門が歴史学ですが,

地域史研究協議会という学会で時 「々流域の歴史学」

という共通テーマで研究することがあり,そういう

ところからもヒントを得たものです。また,現代

GP や特色 GP に採択されたプログラムでも,1 つ

の流域を総合的に対象に取り上げているというのも

よく見られるところです。

 3番目に,斐伊川流域の特色と「斐伊川プログラム」

の構想ですが,以上のことから,斐伊川流域の特色,

つまり上流,中流,下流のそれぞれに見られる地域

的な多様性,特色ある産業,それから豊かな歴史と

文化,これらを教育内容に取り込んでいくことが可

能ではないかということです。

 そこで考えましたのが,別表の 1 に示したもので

す。これはワーキンググループの山下多聞さん,瀬

戸浩一さんと 3 人で,学内のスタッフのことを頭に

思い描きながら,あれこれあれこれ考えて作成した

ものです。斐伊川を雲南市域にあたる上流域,簸川

平野部にあたる中流域,それから宍道湖・大橋川・

中海の汽水域にあたる下流域,これをそれぞれ歴史

と文化から水と地質・地形というふうな分野に分け

て,それぞれの囲みの中について,こんな人が,こ

ういうことを 1 コマぐらい講義していただけるんじ

ゃないかなというようなことを出し合ったものがこ

の別表 1 です。

 当初の構想では 60 人ぐらい出てきたのですが,

毎年 20 講座出しても 3 年に 1 回担当すれば済むと

考えたのです。というのは,この種の事を頼むのに

一番難しいのは,忙しくなるから嫌だという人が多

いんですけれども,毎年でなくて 3 年に 1 回,1 つ

講義してくれればいいですよというふうに言うと非

常に頼みやすいという,非常に下世話な,そういう

ところからこういうものを作ってみたわけです。

 さて,その準備状況ですが,ワーキンググループ

でこんなことを考えながら,出雲キャンパス,松江

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キャンパスの全学の教員に参加・

協力を呼びかけました。そうして

実際には 60 人からではなくて 10

数人からですが,やりますよと

いう御応募をいただいたところで

す。そして,これらの応募教員に

対して広報しながら必要な機材,

資材などは今年度御購入いただく

という準備をお願いしました。

 以上のような準備と並行して,

今年度は,幾つかのプログラムを

試行したものをレジュメに書いて

おきました。汽水域での活動,神

西農場と清酒「出雲富士」醸造元で島大銘柄の焼

酎「神在の里」をつくっている富士酒造での見学

実習をセットにしたような活動などをやっていま

す。

 以上のような 10 幾人かの御応募・協力の申し

出をいただいた先生方の内容を組み立てましたも

のが,(2)の「斐伊川プログラム」構成(案)と

いうものです。最初にオリエンテーションを行い,

入門講義「流域地域論」というようなものを入門

講義担当チームによって行った上で,地域の方に,

これは毎年交代することになるかと思いますが,

仮のテーマですけれども「流域に生きる―地域か

ら大学で学ぶ皆さんへ」というような主題で,実

際に地域で暮らしておられる方に特別に 1 コマ御

講義をいただく。

 それを聞いた上で,「斐伊川流域の自然と科学」,

「斐伊川流域の産業と暮らし」,「斐伊川流域の歴

史と文化」という 3 つのグループに各 20 人が分

かれて,それぞれ 4 つ程度の講義を聞く。それか

ら,それぞれの講義の内容に即したフィールドワークを 1 泊 2 日,もしくは日帰りを 2 回程度で行い,

最後に総括的な授業を行うというものです。

 別表 1 の裏側に,別表 2「斐伊川プログラム」の実施試案というものを掲げています。そこに「斐

伊川プログラム」の組み立てを書いています。その 2 番目の分野別の組み立て例というものが,今申

し上げたようなことで,現在ここに上げてあります講義の 4 コマというのがそれぞれ各学部の先生方

の御協力でできているものです。1 番目の「自然と科学」の中,地球資源科学の斐伊川流域の地質構造

というのが未定ですが,このフィールド学習の座長の高須先生が,先ほどちょっとお話ししましたら,

誰もいなければ私が責任をとってもいいというようなことを言っておられましたので,これも確定し

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て,こういうプログラムは実施可能なところまで来ているわけです。

 受講の対象は 1 年生で,フィールドへ行きますので多くても最大 20 名ぐらいが限界だろうと思いま

すので,3 組同時に実施しても 60 名。60 名がオリエンテーションから 2 つの入門講義を合同で聞いた

上で 20 名の 3 つのグループに分かれるということを今のところ念頭に置いております。開講方式は,

ここに書いてあるとおりで,定期に開講してフィールドワークも土日あるいは休業期間を利用するか,

あるいは集中講義方式にするかなどが考えられます。成績評価の方法も,なお検討の余地がありますが,

レポートと活動報告などをもとに行うと考えています。

 最後に 3 番目,今後の展開と検討課題ですが,1 つはこういうフィールドワークを積み重ねていく

と,これはそれぞれの先生方が実際にやられたときに準備されるレジュメや資料などを島根大学全体

として,例えば『フィールドワーク・ハンドブック 斐伊川百科』というようなものとして作ってみ

たらどうかと考えています。かなり細かいことが書いてありますけれども,実際に授業でやられたこと,

学生がフィールド活動の中で発見したようなことなども含めて,生きた地域学習のハンドブックをつ

くれば,大学の授業あるいは高校や中学校の授業だけでなくて,市民一般の方が島根を理解するとい

うようなことに十分に活用できる,非常におもしろいものができるのではないかと思います。

 それから 2 つ目,検討課題ですが,最も重要なことは,「斐伊川プログラム」のように総合科目的な

ものは,毎年の主題設定,内容上の体系性の確保ということが大事であろうということです。個別講

義の寄せ集めではないものにするということです。それから講義の内容とそれに即したフィールド学

習を実施し,そのフィールド学習がまた講義に活きてくるというようなことを考えるというのが一番

目に重要だろうと考えます。

 それから 2 つ目に,学生の主体的な学び・研究をどのように組み込むのかということがあると思い

ます。きょうの御報告の中でも,例えば建築の長野先生のお話で,学生が自分から動いていくという

ことを言われました。この「斐伊川プログラム」でもそのような授業ができるととってもいいなと思

うのですが,そのためにはどうしたらいいかということです。こういう総合科目的なものでそれぞれ

個別に担当するということになりますと,そのあたりが非常に難しくなると思います。担当者のチー

ムワークが試されるところと思います。

 それから,成績評価の基準・方法の明確化,地域との関係の構築です。地域と学ぶというときには,

そこのところがとても大事になるだろうと思います。特別授業についてもそうですが,フィールドワ

ークそのものがどのような中で可能か,その成果がどのように学生に,あるいは地域に活かされてい

くかということです。

 幸いに雲南地域については,島根大学が包括連携協定を結んでいますので,それをこういう教育の

場で活用するということも重要だろうと思います。

 最後に,授業開設のための実際的な問題として,実はここが一番問題なのですが,先ほどの別表 2

を見ていただいても,御協力いただくというふうにお声を上げていただいた方は実はとっても忙しい

方ばかりで,まずこういう先生方の日程を合わせて授業を組むことができるのか,それからフィール

ドを実際に時間をとってやることができるのかということがあります。

 これは前にも委員会でも申し上げたことですが,今日は副学長は来ておられませんが,大学として

思い切って,例えば 6 月に入ると梅雨になりますから,5 月の末ですとか,あるいは 11 月だとかに「フ

ィールドワーク週間」みたいなものを 1 週間つくってしまって,その間は定例授業は休みにして,そ

こで集中してさまざまな多様な活動ができるというような思い切ったカリキュラム編成をしないと,

実際にはこういうプログラムは組みにくいだろうと思います。その辺も含めて,ぜひ教育開発センタ

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ーからも声を上げていただきたいと思います。以上です。(拍手)

山田講師 / 竹永先生,ありがとうございました。

 では,引き続きまして,2 つの学生グループより発表していただきます。

 1 つ目は,まず「しまねの歩き方」プロジェクトについて,コミュニティワークス,リーダーの田邉

さんの方から報告をいただきます。では,お願いします。

学生グループによる成果報告

田邉さん / 資料を今,配付しているんですが,時

間も結構かかりますので早速始めさせていただきま

す。

 まず,「しまねの歩き方」プロジェクトの成果報

告ですが,きっかけ,このプロジェクトを起こそう

と思ったきっかけは,まず 1 つ目に島根の地域に

訪れる都会の学生の存在,これがありました。近

年,島根県海士町の取り組みに注目した都会の大学

生が,海士町の方に訪れて地域との交流を重ねてい

ます。これは海士ワゴンというプロジェクトで,一

橋大学の関ゼミの学生を中心にして,20 人ぐらい

の若者が海士町にやってきて海士町の人材育成をテ

ーマに地元の小・中学生に対して出前授業を行った

り,あと地域振興に真剣に取り組む大人たちと学生

が語り合うという,そういうイベントが最近ありま

す。そのイベントに私も参加させてもらったんです

が,都会の学生が自分たちの出身地でもないのに,

この島根県の地域の問題に対して真剣に取り組んで

いる,このような姿を見て私は驚きました。

 2 番目に,そういう都会の学生がいることはわか

ったんですが,一方,島根大学の学生と比較してみ

ると,積極的に地域に出て活動している学生が少な

いんじゃないかなというふうに感じました。毎年 7

割ぐらいの学生が県外から入学してくるんですが,

そのほとんどが大学生活 4 年間を大学周辺だけで生

活してしまって,島根県は田舎だからおもしろくな

いというふうに言って卒業していっている,そうい

う姿を見て私はもったいないというふうに感じまし

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た。どうせならばそういう島根の魅力を 4 年間の中

で感じてから卒業していけば,その卒業した後にい

ろんなところで島根の魅力とかを語ったり,あとは

島根のリピーターになってまた戻ってきたりとか,

そういう島根県の地域振興につながるのになという

ふうに感じました。そして何よりも学生がその地域

に出て活動するというのは,学生の成長につながる

というふうに感じています。

 3 つ目に,学生の学内外への情報発信の場が島大

には少ないんじゃないかなというふうに感じまし

た。島大には新聞部というものがなくって,そうい

う学生がやっている活動を伝える手段というのが少

ないと思います。せっかくおもしろい活動をやって

いるのに,ほかの人に伝わらない自己満足では次に

発展しないというふうに感じました。

 以上,3 つの点,都会の学生に感化されたこと,

島大生が島根に興味がないように感じられたこと,

あと学生の活動を学内外に情報発信する必要性を感

じたこと,この 3 つの点をきっかけとして,今回,

地域情報誌の発行を試みました。

 プロジェクトの目的としては,地域情報誌を発行

することによって,島大生が島根の地域に興味・関

心を持つようになるというところをねらいとしてい

ます。

 それでは,活動内容ですが,以前,自分たちで資

金繰りをしてこういう「松江の歩き方」という地域

情報誌を自費出版というか,自分たちのお金でつく

りました。これでの企画とか取材とか編集経験を生

かして,今回の「しまねの歩き方」でも企画,取材,

編集作業はすべて私たち学生が行いました。

 手元にある本誌を見ていただきたいんですが,8

ページでフルカラーになっています。中は 4 本の特

集が組まれています。一つずつ説明していくと,ま

ず 2 ページ目に,ハニカミデート in 松江という記

事があります。これはプロジェクトメンバー以外

の大学生に参加してもらって,松江で観光雑誌には

載っていないデートプランとかを自分たちでつくっ

て,それを実践してもらいました。次のページに行

ってもらって,2 つ目の特集は石見銀山遺跡世界遺

産登録という記事です。これは制作当時話題になっ

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ていたということもあって取材したんですが,地元

の方とお話をしている中で,世間一般に言われてい

る明るいニュースに隠れてしまっている,ここに住

んでいる地元の方の不安の声だったりとか,あと地

元の方が考える正しい石見銀山の訪れ方というのを

私たちの取材の中で聞き取って,その現地に行かな

ければわからなかった情報というのを聞くことがで

きました。次のページに行ってもらって,3 つ目の

特集は大学生活をデザインするという記事です。こ

れは島根大学の学生には自信があるのだろうかとい

う私たちの素朴な疑問から,本学の学生にアンケー

トをとって,その結果を載せてあったり,あとは大

学生活を楽しくするためにはどうしたらいいかって

いうのを先生とかにもアドバイスをいただきながら

提案している記事です。最後のページなんですが,

4 つ目の特集,Enjoy しまねといって,制作メンバ

ー個人の島根の楽しみ方というのを載せています。

この内容の目的なんですが,この情報誌を通して,

学生に少しでも島根に興味を持ってもらおうという

ことで,同年代の学生が生き生きと島根で楽しんで

いる様子を全面的に出そうと思って,こういう特集

を組んでみました。

 成果ですが,この情報誌は学内の図書館を中心に

1,000 部配布しています。制作スタッフの企画能

力や取材能力はもちろん,編集を通じて自分たちの

気づきだったり学びをほかの人に伝える能力など,

情報誌の制作に携わったスタッフはみんなスキルア

ップすることができたと思います。また,取材を通

して多くの地域の方に出会ったんですが,さまざま

な地域の方の生き方に触れることもできました。こ

れは制作スタッフ自身の卒業後の進路とか生き方を

考えるきっかけにもなったと思います。

 次に,情報誌を読んだ学生の反応を紹介したいと

思います。共通教養科目の松江のまちづくりという

授業があるんですが,その授業で情報誌を 100 部ほ

ど配布したときにとったアンケートでは,次回も発

行してほしいですかという質問に対し,85% の学生

が「はい」と回答しました。また,このような地域

情報誌をつくってみたいですかという質問に対して

は約 3 割の学生が「はい」と回答しました。このよ

- 93 -

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うに私たちが想像していた以上に学生の反応は上々

で,今,図書館に配布しているのももうすぐなくな

りつつあります。

 昨年の 12 月には活動の様子が山陰中央新報の紙

面に掲載されました。この記事を読んで地域の方か

ら私も読みたいですというふうな声をいただいたり

もしました。

 また,2月の大学開放事業「みのりの小道」では,「し

まねの歩き方」の取り組みを知りたい,話してほし

いというふうなお誘いがあったので,学外の方に紹

介もさせていただきました。

 問題点,プロジェクトを行うに当たっての問題点

を説明したいと思います。まず,学内で活動すると

きに学生が集まって作業できる場所がないなという

ふうに感じました。サークルなどよく学生会館とか

を使っているんですが,学生会館などは一部のサー

クルとか,あとは生協さんが使っていることが多く

て,予約もいっぱいですぐに使えませんでした。ま

た,多くのサークルが集まっているボックス棟も一

部のサークルしか使えないために自分たちのサーク

ルでは使えませんでした。

 2 つ目に,学生同士が自由に情報を交換できる場

所がないなというふうに感じました。例えばこの

プロジェクトのメンバーを募集しようと思ったとき

も,ポスターをつくるんですが学内の掲示板の隅の

方にしか張らせてもらえなくて,これだと学生が気

づかないんじゃないかなというふうに感じて,もっ

と学生がメンバー募集とかイベント参加募集とか,

勉強以外の重要な情報を学生相互が交換できる場所

があればいいなというふうに思いました。

 3 つ目に,今回は大学の支援があったので活動す

ることができたんですが,こうやって学外に出て幅

広い活動をする学生に援助していく仕組みがこれか

らも必要だなというふうに思います。

 私たちの課題なんですが,私たちの課題としては,

やはり今後もこの活動を続けていくことだと思って

います。そのためには,後継者をつくっていくこと

が重要だと思います。大学で新しいことを始めて,

それを続けていこうというのはすごく労力が要るこ

とです。私たちの先輩も以前こういった地域情報誌

- 94 -

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というのをつくっていたんですが,場所や資金などの問題で,やはり活動を断念せざるを得ない状況

になっていて,せっかく先輩方は一からつくって,そういうノウハウとかを持っていたのに,そこで

終わってしまったら,またゼロからやり直しというふうになるので,それはすごくもったいないこと

だと思います。だから,こうやって続けていくことがすごい大事だなというふうに思います。その学

生の活動を継続していくには,自分たちの努力も必要なんですけど,大学側による支援というのは不

可欠だし,続けていってほしいと思います。

 最後に今後の取り組みを報告したいと思います。今回,「しまねの歩き方」の制作メンバーの中から

有志が集まって「奥出雲の歩き方」という奥出雲版の地域情報誌をつくることになりました。これは

「しまねの歩き方」をごらんになった島大の先生が奥出雲でもぜひ地域情報誌を作成してほしいという

ことで依頼があって,学生 4 人でつくっています。私たちは今後,自分たちの大学内外での活動を大

学生とか地域の方に情報を発信し続けて,その目的や価値をたくさんの学生に共感してもらって,そ

ういう学生たちを引き込んで,また新しいプロジェクトを始めたいと思っています。今回は地域情報

誌という形で自分たちの活動を PR してきたんですが,ほかにも PR 方法はたくさんあると思うので,

これからもいろんな形で情報発信していきたいなというふうに思います。

 すごい早口だったんですが,これで「しまねの歩き方」プロジェクトの成果報告を終わらせていた

だきます。ありがとうございました。(拍手)

山田講師 / ありがとう。いい発表でしたね。

 では,続いて「地域と密着したプレーパークの展開」について,プレプレまつえキッズ,代表の吉

田くんの方から報告をいただきます。では,お願いします。

吉田くん / こんに

ちは。生物資源地域

開発 3 回生,吉田慧

です。プレプレまつ

えキッズの今年度代

表を務めました。よ

ろ し く お 願 いし ま

す。(拍手)

 今,世の中では子

供の遊ぶ場所が減っ

ているように感じま

す。遊び場にも禁止

事項があり,それが

子供の選択肢を狭め

ています。子供が本

当にやりたい遊びに

は必ずといっていい

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ほど大人の都合でつくられた禁止事項がついて回ります。その禁止事項という枠のせいで子供は窮屈

な遊びを強いられています。どうせ遊ぶなら自由に思い切り遊べたらいいのに,そういう思いから僕

たちプレプレまつえキッズは,自分の責任で自由に遊ぶをモットーとしているプレーパークを目指し

活動しています。

 プレーパークでは,子供のやりたいという気持ちを大切にし,こんなちょっと危ないことも制止し

ないで見守るスタンスを大事にしています。

 これは夏につくったウオータースライダーの写真です。斜面を利用してつくったもので,幅が 90 セ

ンチ,長さが 540 センチもあります。傾斜自体が 40 度近い角度があり,子供でもかなりのスピードが

出るスリル満点な遊具になっています。実はこの遊具には幾つかの意図が含まれています。一見手す

りもないし幅も狭くて押し合いなどが起きると落ちそうなように見えます。ですが,そこが重要なの

です。危ないことが見えているため,子供同士でお互いに注意し合ったり声をかけ合ったりし気をつ

けることができるのです。それが結果として危険回避能力につながります。

 これは何に見えますか。大人から見たら何なのかよくわからないこれは,彼ら子供ができる限りの

力でつくった小屋なんです。柱も細いし壁も薄い,たてつけもきっとがたがたで機能性なんかない,

だって子供たちが自分たちの力だけで加工・修正できる素材を選んで使っているからです。ここで大

切だと思っているの

は,曲がりなりにも

つくることができた

という達成感や成功

体験なんです。この

ときの大人の視点は

子供の遊びの妨げに

しかならないんです

ね。

 これは竹で組んだ

枠にブルーシートを

敷いてつくった手づ

くりのプールです。

深さも余りないし広

さも大したことはな

い,それでも子供は

思い切り遊びます。

初めは着がえを持っ

てきてないからと言

っていた子も,その

うちズボンぬれた

し,もうちょっと,

最後にはもうびしょ

ぬれでいいやといっ

て遊び出したりしま

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す。夢中になったらぬれた服のことなんか気にするそぶりも見せません。

 泥で遊んでいるこの写真,本当はそろそろ片づけを始めようとして穴を埋め始めたのが始まりです。

最初は人数も少なくて,初めは遠巻きに見ていた子が,次見たときには仲間入り,それが遊びかどう

かはそれをやっている人が決めるもの,周りが遊びじゃないと認識していても,実は十分遊びとして

成立することもあります。

 プレーパークには,必ずプレーリーダーという人間がいます。僕たちの場合,大学生がその立場を

担っています。子供から見ても少し年齢が上のお兄さん,お姉さんに,多分そう見えるであろうため,

子供もちょっかいを出しやすく,遊び場になじみやすいです。これは大学生のメリットかもしれません。

ただ,毎年メンバーも入れかわりがあり,かかわり方も人それぞれですが,それもまた学生主体でプ

レーパークを運営していることの魅力かもしれません。僕たちはそんな大人の都合に左右されない遊

び場をつくっていきたいと考えて活動しています。

 その過去 6 年間の活動を通し,地域という視点で次のような問題を抱えています。実際の活動を地

元の住民や保護者に見てもらう機会が少なく,活動の特徴の認知度が低いこと,地元公民館,学校と

の連携が不足していること,よりよい遊び場づくりに対する学生の意識・見解の不足,それを解消す

るべく次の実施方法・目的を設定しました。

 1. 活 動 の 特 徴 の

認知度が低いことに

対して,子供だけで

なく保護者も主体的

に参加しやすい遊び

場づくり,チラシへ

のエピソード掲載等

による広報活動,活

動報告書の作成,デ

リバリープレーパー

ク の 実 施。2. 公 民

館・学校等との連携

不足に対して,公民

館行事,近隣地域の

イベントへの積極的

参加,地元公民館等

に後援してもらう。

3. よりよい遊び場

づくりに対する学生

の意識・見解の不足

に対して,知識,技

術の習得を目的とし

た講座への参加,他

のプレーパークの見

学。

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 まず,1 の a)の子供だけではなく,保護者も主体的に参加しやすい遊び場づくりとして,保護者の

居場所づくりがあります。ふだんから子供を送ってそのまま帰られる保護者が多く,子供の遊ぶ姿を

見てもらいたいなあ,そういう思いで取り組みました。荷物置き場兼座れるスペースづくり,春から

夏にかけての日差しの強い季節は日陰づくりをします。

 この写真では持参したレジャーシートを広げのんびりと御飯を食べたり,遠巻きに子供の遊ぶ姿を

見つつ井戸端会議をする姿が印象的でした。これは何かゲームをしている写真です。この遊びは保護

者同士で自然に始まった遊びでした。学生からの働きかけがあったわけでもありません。遊び場では

子供が遊ぶところを保護者が見ていなければならないのではなく,保護者は保護者で遊びながら我が

子を含めた子供の遊びを見ていけたらいいなあと,遊び場なのだから子供も保護者も遊んでほしい,

そう思います。

 これはプールに日陰をつくっている写真なんですが,提案が保護者から出たものでした。その場の

状況に応じて出た提案をそこにいるみんなで考えていく。遊び場をつくるのは僕たちや子供たちだけ

じゃなくて,保護者も遊び場のつくり手なんです。こうして遊び場の可能性は広がっていきます。

 次に 1 の b)チラシへのエピソード掲載等による広報活動。工夫した点として,実際につくって掲載

したものが配付資料に載せてある分です。文章だけの掲載よりは雰囲気が伝わりやすいのですが,そ

れでもまだ伝え切れ

ないものがあるよう

に感じます。また,

地元公民館の後援を

受けていることを明

記し,チラシに載せ

る情報の整理を行

い,見やすいチラシ

の作成を心がけまし

た。

 デリバリープレー

パークの実施。デリ

バリープレーパーク

とは,その名のとお

りプレーパークの出

張を行っています。

その他のイベントで

は子供との遊びにか

かわる活動をしてき

ました。これらの活

動のほとんどは依

頼を受けての活動で

す。今年度,特に力

を入れてきたのは,

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ながりを深めるとい

うことで,川津地区

と持田地区での幼稚

園・小学校行事,公

民館行事への積極的

参加を行ってきまし

た。公民館からの後

援については以上で

す。

 知識,技術の習得

を目的とした講座

への参加。ここにリ

ストアップされてい

る講座のほとんどは

つながるネ ! ットと

いう島根県内の子育

て,子育ち支援団体

のネットワーク主催のものです。僕たちプレプレまつえキッズもつながるネ ! ットの参加団体の一つと

して登録しています。

 他のプレーパーク見学では,他のプレーパークを実際に見て,雰囲気を肌で感じることで遊び場の

展開,可能性を広げることを目的としています。中でも 3 月の栗林プレーパーク見学では,現場見学

に加え,現地のプレーリーダーや世話人の方々との意見交換,情報交換,現場の生の声をお聞きする

機会を設けています。

 これから,公民館,学校,大学へは,今までのように頼れる部分があれば頼っていきたいと思います。

特に大学に対しては,自分自身も島根大学の学生でいろいろと頼っていきたいと思うのですが,何を

頼ればいいのかが正直わかっていません。今回のような経

済的な支援もすごく助かっているのですが,やはり何より

も学内の認知度が低いことと,先生方もぜひ現地に遊びに

来ていただけたらうれしいと思います。それが僕たちにと

ってはすごく大きな支援になると思います。

 あと,先ほどのコミュニティ・ワークスさんのおっしゃ

っていたとおり,学内に学生団体の集まる場所が極度に少

ないことをすごく感じています。聞こえは悪いかもしれな

いのですが,学生団体として頑張っている団体に限って集

まる場所が少ないというか,部室がないというのはすごく

悔しいというか,そういう気持ちがします。やっぱり学生

団体が継続していくのにはメンバー同士のかかわる時間は

すごく大きな要因になっていると思うので,そういうとこ

ろについては大学からの支援をすごく欲しいと思います。

活動報告書の作成については現在作成中です。報告会の実

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施は来年度の春の実施を計画しています。年間の活動日程

については,配付資料をごらんください。

 以上で発表を終わりにします。ありがとうございました。

(拍手)

山田講師 / ありがとう。何かこの緊張感がいいね。

 最初のグループみたいに気合いで乗り切ったグループと,

後半は組織的にかなり PDCA を意識して回してるグループ

と何だか対照的な雰囲気でしたね。こういう形で彼らに話

してもらって,それを皆さんに聞いてもらって,何とか声

を届けたいと思っていたのですが,その一歩を踏み出すこ

とができたと思います。今後も出来るだけ良い形で支援を

していくことができればと思います。

 最後に,プロジェクトリーダーの高須先生に閉会挨拶を

いただきたいと思いますが,その前に講師の先生方から一言ずつ感想をいただければと思います。

根建教授 / 一言感想を述べさせてください。

 私,非常に恥ずかしい気分になっています。この島根大学の各先生方,学生さんの素晴らしい活躍

の話を伺って本当に感動しました。

 質問がひとつあります。学生さんのやられたあの素晴らしい活動が単位としてなっているのかとい

うのが気になったことでした。

 それから,最初に藤田先生が発表された教育は,3 番目に発表された中村先生の教育の趣旨と同じ

だと思います。鹿児島大学でもハンセン病の授業をやっていますが,現場まで行けなくてハンセン病

を患った方に来ていただいて講演していただいています。この授業には,一番大きな 300 人講義室が

満杯になってしまいます。医学部の学生さんだけではなくて,あの問題は全学の学生さんに考えても

らった方がいいと感じました。中村先生は,それをどの学部にも,高校生よりもまず島根大学の学生,

学部を超えて教えてやりたいということをおっしゃっていましたけども,先生方や学生さんの試みは

すごく参考になりました。どうもありがとうございました。(拍手)

ファウザー准教授 / どうもありがとうございました。

 私も根建先生と同じようにとても感動しました。特にこの最後の学生の情報誌と,あと子供との遊

びのこととか,その学生が自主的に活動するということは非常にすばらしいと思いました。

 鹿児島大学で,たまに私は参加型授業とか,あるいはアクティブ・ラーニングとか,こういう用語

を使ったりとかして,ちょっとわかってくれないような顔が出ますが,島根大学はこういう本当に参

加型,そういうラーニング・バイ・ドゥーイングといいますか,アクティブ・ラーニング的なことは

幅広くあっちこっちいろんなところで実践してるということは非常に感動しました。とてもすばらし

い取り組みですね。

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 学生さんの声から上げた,大学は活動スペースがないとかというのが,実は余りこういうことはカ

メラの前で言うのがあれですが,京都大学に赴任したときは,やはり日本に住むと京都大学はすごい

なあというのがあるんですね。京都大学の先生になって,ちょっとあっちこちキャンパス歩いたりと

か食堂を使ったりとか,2 カ月ぐらいなれたところで,こんな貧弱なところがないのかなあというか,

すごく京都大学の学生のための設備は貧弱と感じて,なぜそんなぐらい,ですから京都大学は日本の

トップの大学だというと,アメリカのスタンフォードとかハーバードとか,こういう感じの大学のト

ップのクラスの大学に相当するわけですが,もうなぜこんな貧弱なのかなって,京都大学ぐらいはこ

のぐらい貧弱だとすれば,日本の高等教育は学生の活動が非常にしにくいところではないかと。

 学生はどこで勉強するんですかとか,学生は自主活動がどこでするんですかって同僚の先生に聞い

て,生協の食堂でするって言ってました。あるいは図書館,一部の勉強は。ただ,図書館が余り広く

はなかったのですので,ですからそれは学生さんがどんどん大学に要求を出して,やはり自主活動とか,

学ぶことはこういう教室以外のところでいろんな多様なさまざまな形で学ぶことができるから,その

要望を出さないと大学はなかなかそういう目を覚まさないところがありますので,非常にそれは大事

なことだと思います。

 学ぶことはこういう教室以外のフィールドでもあり大学の中の交流スペースとか,あっちこちがで

きるからということで,学生さんの悩みと,自分の京都大学赴任したときと,非常に同じ共感というか,

悩みのところでした。どうもありがとうございました。(拍手)

山田講師 / ありがとうございます。

 根建先生の単位化されてるのかという話なんですけど,現状はされていません。確かに他大学では

こういう活動が単位として認められているという大学も増えてきています。

 本学でも次年度から文科省に採択された学生支援 GP という事業が始まりますが,そこでは,学生

による自主的な活動をポイントとして加算して,それが何らかのインセンティブにつながるといった

仕掛けを組み込んでいます。

 では,最後に高須先生の方からごあいさつをいただきたいと思います。

閉会挨拶

高須教授 / 本日は長時間にわたり皆様方にはシンポジウムにご参加していただきまして,誠にありが

とうございました。とくに鹿児島大学から根建先生,ファウザー先生,貴重なご講演をしていただき

まして,大変ありがたく思っております。

 根建先生からは,鹿児島の GP ということで,「鹿児島から世界が見える」ということで,我々のフ

ィールド学習プロジェクトの「島根大学から世界が見える教育」ということと,地方大学として同じ

ような観点で,同じような問題を持って,それをいかに解決していくかというようなことを鹿児島の

方で実践されている例をご紹介していただき,我々のフィールド学習プロジェクトにも大変参考にな

ったかと思います。

 ファウザー先生からは,e- ラーニングということで,これはフィールド学習に限ったということで

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はありませんが,フィールド学習の中に e- ラーニングのシステムを生かしていくと,これは非常に有

効であることが,今回,理解できたかと思います。e- ラーニングのシステムというのは,教育の質を

高める,情報を共有していくというところに効果があるというふうに御説明されましたけれども,恐

らくそういうことに含めて,さらにアクティブ・ラーニングのような,学生が積極的に授業に参加し

ていくというようなシステムをつくる上でも非常に有効ではないかと,今日のご講演を聞いて感じた

ところです。

 その後,各部局の方から今年度の取り組みについての報告がありましたけれども,この 1 年間,そ

れぞれ活発に活動をしていただいてきたということで,持ち時間を超えてお話をしていただいたかと

思います。それぞれの取り組みについて質問だとか議論ができたらよかったのですが,残念ながらそ

の時間がとれなかったことは,こちらのシンポジウムの企画として少しまずかったと思っております。

 それから,学生の方からの 2 つの取り組みが報告されました。先ほど根建先生からもご評価してい

ただきましたけれども,これはフィールド学習の究極的な手法に到達しているような,そういう取り

組みをやっているのではないかと思いました。

 山田先生が,「学生が大学を変える可能性がある」というようなことを言われましたけれども,まさ

にそういう芽が見えてきているというふうに感じて,島根大学の学生達をたいへん頼もしく思ったと

ころです。また,学生の方からいろんな希望や要望がありましたけれども,そういうものがかなえら

れるように,我々の取り組みとしても考えていきたいと思います。

 このフィールド学習プロジェクトというのは,昨年度もお話をしたのですけれども,フィールド学

習にはいろんな段階があるのではないかと思います。まず,体感,体験的なフィールド学習というも

のがあるかと思います。例えば震度 7 の地震とはどんなものかとか,起震車に乗ってガタガタと揺ら

れれば,これ震度 7 だとか,といった体験をすることができます。そういう段階があると思います。

 それから,もう少し進むと,いわゆるフィールド実習というような形で,先生に連れられて何かを

見に行くと。「これは金閣寺です」とか,「これは何ですか,火山の溶岩です」とか,そういうものを

見に行くような,そんなフィールド学習の段階があるかと思います。修学旅行型のフィールド学習と

言ってもいいかもしれませんね。

 それがさらに発展していくと,狭義のフィールド学習,我々が目指しているフィールド学習になり

ます。森先生に最初に紹介していただいたと思いますけれども,自主的,能動的に学生が授業に参加

するとか,あるいは学生同士が協同で学びに取り組んでいくというような,そういうフィールド学習

の段階があるかと思います。そういう意味で,先ほどの学生グループの活動というのは,この狭義の

フィールド学習に達する,あるいは一部は到達しているというような段階に行っていると感じました。

 このフィールド学習プロジェクトは,今年が 2 年目で,来年度いっぱいで終了しますけれども,実

はその先,再来年度からもこのプロジェクトを引き継ぐようなプロジェクトができないかということ

で,概算要求を考えているところです。管理運営ワーキンググループで考えているのは,アクティブ・

ラーニングまたはサービス・ラーニングというような手法を取り入れたフィールド学習ですね,これ

を進めていくというようなことをテーマとしたような教育方法の改善のプロジェクトを申請したらど

うかということです。アクティブ・ラーニングということですから,受講者ですね,学生の人達が自

主的に能動的に授業に加わっていく。あるいは学生の人が課題をみずから見つけて,それを解決する

方法も考える。そして自分で答えを見つけていくというような,そういう学習の方法ですね,そうい

うものができないかということ。さらに,学習したことを人に教えるとか,あるいは一般の人に普及

するだとか,もっと進んで社会貢献活動を行うというような,そういうことを授業のプログラム中に

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組み入れることができないかということを考えているところです。

 先ほどの学生の人達のプロジェクトというのは,いわばボランティア活動みたいなものですけれど

も,そういうボランティア活動も授業の単位となるような形で組み込んでいくことを考えているとこ

ろです。

 現在のこのプロジェクトは,来年度 1 年間で完結する必要があるということですけれども,今言っ

たようなフィールド学習の高次の段階ですね,こういうものを念頭に置いて,来年度 1 年間,この島

根大学のフィールド学習教育プログラムが完成できるように活動をしていければいいかと思っており

ます。

 そのためには,例えば大学の学年暦について検討しないとフィールド学習の時間が持てないだとか,

あるいは交通だとか宿泊だとかの経費の問題があるだとか,学生の人達が活動するにもやっぱり経費

がかかるだとか,様々なプログラムを動かしていく上での問題点があります。そういうことも来年度

はあわせて検討していきたいということで,3 年間の成果を出す年としたいと思っております。皆様に

は,また引き続き御協力いただきまして,よりよい島根大学のフィールド学習プログラムができれば

いいかと思っております。

 本日は長時間にわたりシンポジウムに御参加いただきまして,ありがとうございました。(拍手)

山田講師 / 高須先生,ありがとうございました。

 司会の不手際で皆様からの質疑を受けることができなくて,大変申しわけなく思っております。また,

質問等寄せていただければと思いますので,アンケートの方御協力お願いいたします。

 長時間に渡りお疲れさまでした。それでは,閉会とさせていただきます。

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3おわりに

-これまでの取り組みと今後の課題-

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おわりに-これまでの取り組みと今後の課題-

島根大学フィールド学習教育プログラム開発プロジェクトチーム・リーダー

高須 晃(総合理工学部教授)

 身近にある豊かな自然環境と社会的・文化的環境を活用した島根大学独自のフィールド学習教育プ

ログラムを構築することを目的に,平成 18 年度から 20 年度までの 3 年間の概算要求(特別教育研究

経費:教育改革)事業「島根の人と自然に学ぶフィールド学習教育プログラムの構築-島根大学から

世界が見える教育の展開-」が開始された。小論は本事業の目的や取組内容の概略を示すとともに,

平成 18 年度の事業総括と平成 19 年度の事業計画を提案することを目的とする。

特別教育研究経費(教育改革)事業について

 平成 17 年度に申請し,採択された特別教育研究経費(教育改革)事業は以下の通りである。なお事

業期間中の運営費交付金支給額は,平成 18 年度 25,200 千円,平成 19 年度 20,000 千円,平成 20 年度

15,000 千円であり,その他に学内負担学として各年度に 16,100 千円を計上している。

事業概要

 身近にある豊かな自然環境と社会的・文化的環境を活用したフィールド学習教育プログラムを構築

する。学びの場であるフィールドで現実の諸問題に取り組み,理論学習と結合した創造的実践的能力

の向上を図るとともに,自然・社会・歴史・文化・人間(人と自然,すなわち世界)に対する総合的

理解を深める大学教育を展開する。

事業の取組内容

(1)教養教育と専門教育において実施されているフィールド学習を取り入れた現行授業科目の見直し

と拡充を行い,フィールド学習教育プログラムを構築する。

 ① 自然に学ぶプログラム-水に学ぶプログラム

 ② 自然に学ぶプログラム-大地と森に学ぶプログラム

 ③ 社会に学ぶプログラム

 ④ 歴史と文化に学ぶプログラム

 ⑤ 人間に学ぶプログラム

(2)新入生を対象として,教養教育における環境教育の充実を図る。

(3)学内での講義とフィールドでの学習を組み合わせた授業,休業期間中を利用してフィールドで集

中開講するフィールド・スクール,理系・文系を複合した学際的総合的な授業等,プログラム開発に

当たってテーマ設定と開講形態の多様化を図る。

(4)高校生・市民等を対象に,公開講座・公開授業としてフィールド・スクールを開講する。

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(5)プログラム実施のための授業計画・教科書・資料集等を作成し教育方法を開発するとともに,教

育支援体制(ティーチング・アシスタント(TA)及びリサーチ・アシスタント(RA)の活用体制,

地域共同教育体制など)を整備・確立する。

(6)フィールド学習用教育機器システムを開発・整備する。

(7)教育効果をあげるため,自己点検・評価と改善のための FD 活動を積極的に行う。

【平成 18年度における取組内容】

(1)フィールド学習教育プログラムの開発

(2)現行授業科目の改善・実施と新入生を対象とする環境教育の充実

(3)教育方法の開発,教育支援体制の整備,フィールド学習用教育機器システムの開発

(4)新たに展開したプログラムを評価・改善する FD 活動の実施

事業の実現に向けた実施体制等

【実施体制】

 島根大学は,平成 16 年 12 月,大学教育を改善し教育に関する企画・実施・評価機能を強化するた

め教育開発センターを設置した。センターのもとに「フィールド学習教育プログラム開発プロジェク

トチーム」を置き,新たな教育プログラムの企画・実施・評価を行う。

【工夫改善の状況】

(1)平成 17 年度島根大学政策的配分経費による教育改革推進重点プロジェクトとして,教育開発セン

ターを中心とした「フィールド・スクール開講準備とその試行」を決定し,上記プロジェクトチーム

のもとですでにフィールド学習教育プログラムを策定する検討に入った。また,一部の既設授業科目

について,授業内容・方法を改善しフィールド・スクール形式の授業として試行的に開講した。

(2)教養教育では,すでに,総合科目等を中心に地域人材を講師に迎えてフィールド学習を取り入れ

た授業が開設されている。また,各学部においても,次のようにフィールド学習を含む授業科目が多

数ある。

法文学部(地域に存在する社会的諸課題や歴史的文化的遺産と結びついた実践的科目)

  教育学部(学校・地域・人と関わる教職科目,1000 時間体験学修プログラム)

  総合理工学部及び生物資源科学部(宍道湖・中海汽水域を中核とする地域の自然環境を生かした,

生物学・農学・地域開発科学・地球科学・環境科学等のフィールド学習科目)

  医学部(地域医療施設・社会福祉施設等における体験実習及び医療・看護実習)

(3)島根大学は,島根県及び関係市町村と連携して平成 14 年度から 3 年間にわたり,「文部科学省地

域貢献特別支援事業」を実施した。その中で,島根県における「環境学習プログラム」(幼児~小学校

低学年編,小学校中学年~高学年編,中学校編)を作成した。学校や地域と共同したプログラムの実

践には,学生も参加している。

 本事業は,これらの取組実績等を基盤として,平成 18 年度以降の実践的教育活動へと展開していく

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ものである。

事業達成による波及効果等(学問的効果、社会的効果、改善効果等)

(1)学生による地域理解,地域に対する関心と親しみが育ち,学んだ力を社会的に発揮することに生

きがいを感じる人材が育つ。

(2)学生は,講義によって与えられた知識のみを受動的に記憶する学習から脱却する。講義によって

触発された内発的動機に基づき,自らの関心に従って学習を深める旺盛な感受性と高い知的好奇心に

満ちた人材が育つ。

(3)地域を通して世界を見ることを知る広い視野を持ち,現代社会の諸課題や地球環境問題について

創造的実践的能力を持って行動できる人材が育つ。

(4)大学は地域との共同教育の認識を深め,教育に関わる教員は自らの資質を向上させる。

(5)地域に関連した新たな研究テーマが発掘され,大学の地域貢献機能が強化される。

(6)教員の共同した力で事業を達成し,教育効果を高めることができる。自然や社会に関する問題を

理解し課題を解決するには,異なるいくつかの専門的視点を総合した力が必要であり,教員の共同は

不可欠である。教員の共同は,教育目的の組織的明確化と共有,財政面を含む実施のための組織的保

障があってはじめて実現する。フィールド学習教育プログラムは,教員の共同と地域との共同に支え

られて組織的に展開されるものであり,高い教育効果を期待することができる。

平成 18年度の事業総括と平成 19年度の事業計画

平成 18年度の事業総括

 平成18年度の事業の成果については,今回のFDシンポジウムにおいて各部局より報告された。また,

本報告書に各部局の 2006 年度成果報告が掲載されているので詳細はここでは,特別教育研究経費(教

育改革)事業申請時の平成 18 年度における取り組み内容に沿ってその成果を総括する。

(1)フィールド学習教育プログラムの開発

 新たなフィールド学習教育プログラムの開発という意味では,総合理工学部の専門教育において,「風

土に根ざした建築教育の実践プログラム」の開発が進められた。このプログラムでは,学部入学から

卒業までの間に,既存の事業を改善して組み合わせることにより,伝統的建築群を有する地域をフィ

ールドに,地域の歴史や文化,産業,稀少,住宅の湿温環境,住まい方の工夫などを学ぶ一連のプロ

グラムを構築するというものである。

(2)現行授業科目の改善・実施と新入生を対象とする環境教育の充実

 各学部における平成 18 年度事業は,主に現行授業科目の改善によるフィールド学習プログラムの構

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築とその試行が行われたといえる。個々の授業に対する取り組みについては,本報告書の各部局の成

果報告を参照されたい。

 新入生を対象とした環境教育の充実については,教育開発センターと島根大学 EMS(環境マネージ

メントシステム)実施委員会環境教育作業部会が連携し,新入生を対象とする「環境関連科目ガイド」

を作成し,オリエンテーションにおいて教養教育で展開されている環境関連科目を詳細に紹介した。

この結果,現場体験学習,フィールド学習を含む科目で受講生の大幅な増加があった。しかし,この

ような活動は直接本事業の取り組みとして行われたものではなく,平成 19 年度事業への基盤づくりと

なったといえる。

(3)教育方法の開発,教育支援体制の整備,フィールド学習用教育機器システムの開発

 各学部において,現行授業科目の改善への取り組みの中で新たな教育方法の開発や工夫,また,フ

ィールド学習用教育機器システムの開発や導入が積極的に行われた。また,フィールド学習に使用す

る教科書,テキストや資料集等の作成も進められた。総合理工学部の専門基礎教育科目「地球科学基

礎演習」では,本事業により地質フィールド実習を改善するとともに,フィールド実習の解説を 1 冊

にまとめたテキスト(A5 判 83 頁)を印刷し,平成 19 年度以降の授業に備えた。

 フィールド学習における教育支援体制の整備では,いくつかの授業科目で大学院生の TA とともに

フィールド学習の試行が行われたが,必ずしも十分であるとはいえない。より教育効果の上がるフィ

ールド学習を実施するためには,TA 等の有効な活用が不可欠であり,平成 19 年度事業では TA の活

用方法の検討や TA の研修などを行うことが必要である。

(4)新たに展開したプログラムを評価・改善する FD活動の実施

 平成 18 年度においては,現行授業の改善やフィールド学習プログラムの構築に活動の中心があり,

これらにより新たに展開したプログラムの教育効果等の評価の段階にまでは多くの場合で至っていな

い。平成 18 年度に実施された一部の試行的な授業においては,「学生による授業評価」の結果を利用

した教育効果の評価や検討が行われた。

 3 月 7 日の FD シンポジウムは,フィールド学習プログラム構築の経験交流と田中,安永両先生の講

演を聴き,議論するということで,本事業担当者にとっては大変有意義な企画となった。今後は本事

業が全学の学生教育に寄与するような FD 活動を行っていく必要がある。

(5)その他

 汽水域研究センター,島根大学ミュージアム,産学連携センター,生涯学習教育研究センターを中

心に,一般市民,中高校生,親子などを対象にそれぞれも分野のフィールド体験やフィールド学習が

行われた。これらの企画にはいずれも多数の市民らが参加し,フィールド学習を通して地域の知の拠

点としての大学の役割を果たすとともに,大学と地域との間の信頼関係や協同意識の向上に寄与した。

平成 19年度の事業計画

(1)系統的なフィールド学習プログラムの構築

 ①教養教育から専門教育へという系統的なフィールド学習プログラムの構築

 ②平成 20 年度の開講をめざして学際的・総合的なフィールド学習プログラムの構築

 環境に関するフィールド学習,地域を総合的に扱うフィールド学習(例:斐伊川の源流~河口,石

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見銀山,隠岐),留学生の渡日初期フィールド教育プログラムを検討する。この事業に関しては,プロ

ジェクトチームの下に WG を組織して実施にあたる。

(2)効果的なフィールド学習のための教育方法・教育技術の改善

 ①フィールド学習の目的,目標,方法,評価等を明確にする(授業科目の場合はシラバス作成と受

講者への明示)

 ② TA 等の教育支援体制の確立と TA 等の活用方法を開発,また TA の研修等の実施

 ③フィールド学習用教育機器システムを開発・整備

 ④教科書,テキスト・資料集等の作成

 ⑤他大学等のフィールド学習実施状況の視察

(3)高校生・市民等を対象とした公開講座・公開授業としてフィールド・スクールの開講

(4)フィールド学習を行う上での制度的問題の検討

 ①島根大学の学年暦及び授業時間割の再検討

 ②フィールド学習に伴う交通手段,宿泊施設の問題と経費負担の方法についての検討

(5)自己点検・評価と改善のための FD活動

 ①平成 19 年度事業報告及び FD シンポジウム・FD 研修会の実施

 ②フィールド学習の成果の検証

 教員側の一方的な点検評価ではなく,受講者側の意見を聞く必要がある。また,「学生による授業評価」

結果の活用など組織的な点検評価体制の確立が必要である。

 ③本事業に伴う研究成果の公表

 本事業で得られた成果を学会講演,論文集の発行等により公表する。

 ④次期プロジェクト,その他 GP 等への応募の検討

おわりに

 平成 19 年度は 3 年間の特別教育研究経費事業の中間の 1 年となり,最もアクティブな活動とその成

果が期待される期間である。この事業は島根大学独自のユニークなフィールド学習プログラムの構築

という所期の目的にとどまらず,島根大学全体の教育改善に貢献するものと考えている。そういう意

味で島根大学のより多くの教職員がこの事業に参加・協力していただけることをお願いして,小論を

終えたい。

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平成 20年 3月 30 日

 発行 島根大学教育開発センター

 編集 山田剛史(教育開発センター講師/副センター長)

    〒 690-8504 島根県松江市西川津町 1060 TEL 0852-32-6053 FAX 0852-32-6059 印刷 ㈱エッグ