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地域づくり情報局メールマガジン Vol.102 1 Vol. 102| 2017.10.20 102 密集市街地の小さな広場を活用した 地域防災力向上に向けた挑戦。 地域づくり活動の苦労話や成功談などを地域のリーダーに直接お伺いし、皆様にお 届けする「地域づくりキーパーソンに聞く」コーナー。 大阪市には、JR大阪環状線の外周部を中心に、密集市街地が広く分布し、建物の 老朽化や建て詰まりに加えて、狭隘な道路が多く、公園やオープンスペースが不足す るなど、防災面や住環境面で様々な課題を抱えています。こうした課題に対し、大阪 市では、「特に優先的な取り組みが必要な密集住宅市街地」を指定し、災害時は一時 的な避難場所として、日頃は地域防災活動の場やコミュニティをはぐくむ場として、 地域住民と連携・協働しながら「まちかど広場」の整備を行っています。 大阪市生野区にある「まちかど広場(ももに広場)」は、民間企業から「創業の地 を無償で提供し、地域に貢献したい」という申し出をきっかけに、大阪市と地域が連 携・協働して整備した約200㎡の小さな広場です。 ▲岸村会長 今回は、この「ももに広場」での自主的で創造的な管理運営・防災活動などが評価 され、平成28年度「手づくり郷土賞」を受賞した「ももに広場管理運営会」の会長 である岸村修さんにお話を伺いました。 ももに広場

第102 回 密集市街地の小さな広場を活用した 地域防災力向上 …地域づくり情報局メールマガジン Vol.102 1 Vol. 102| 2017.10.20 第102 回 密集市街地の小さな広場を活用した

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地域づくり情報局メールマガジン Vol.102

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Vol. 102| 2017.10.20

第 102 回

密集市街地の小さな広場を活用した

地域防災力向上に向けた挑戦。

地域づくり活動の苦労話や成功談などを地域のリーダーに直接お伺いし、皆様にお

届けする「地域づくりキーパーソンに聞く」コーナー。

大阪市には、JR大阪環状線の外周部を中心に、密集市街地が広く分布し、建物の

老朽化や建て詰まりに加えて、狭隘な道路が多く、公園やオープンスペースが不足す

るなど、防災面や住環境面で様々な課題を抱えています。こうした課題に対し、大阪

市では、「特に優先的な取り組みが必要な密集住宅市街地」を指定し、災害時は一時

的な避難場所として、日頃は地域防災活動の場やコミュニティをはぐくむ場として、

地域住民と連携・協働しながら「まちかど広場」の整備を行っています。

大阪市生野区にある「まちかど広場(ももに広場)」は、民間企業から「創業の地

を無償で提供し、地域に貢献したい」という申し出をきっかけに、大阪市と地域が連

携・協働して整備した約200㎡の小さな広場です。

▲岸村会長

今回は、この「ももに広場」での自主的で創造的な管理運営・防災活動などが評価

され、平成28年度「手づくり郷土賞」を受賞した「ももに広場管理運営会」の会長

である岸村修さんにお話を伺いました。

ももに広場

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【ももに広場の物語は創業者の志から始まりました】

創業の地を地域に無償提供いただけることになり、大阪市から「まちかど広場」の

整備について提案がありました。

『これまでいろいろ大変なこともあったけど、今ある事業の発展は近隣の皆さんの

支えがあってこそ。その恩返しがしたい』という創業者の志に心を動かされ、大阪市

と地域で役割を分担しながら、整備を進めていくことになりました。

▲整備前 ▲整備後

【広場づくりは地域づくりでもありました】

私たちの町会は約 180 世帯のうち、65 歳以上のみの世帯がおよそ 6 割。高齢化が

進むとともに、地域のつながりも薄くなっていました。活動の担い手不足もあって、

当初は広場の整備について、運営時の管理体制など、否定的な意見もありました。

ただ、私たちの地域では一時的な避難場所となるのがコインパーキングしかなくて、

防災上、多くの課題を抱えていました。

そこで、広場の整備にあたり、基本計

画づくりの段階から住民参加型のワーク

ショップを重ね、顔を合わせながら、意

見を出し合うことで『どうすればみんな

の力で広場を管理・運営することができ

るのか?』と考えるようになり、だんだ

ん前向きな意識に変わっていきました。

広場の基本計画づくりを目的にスター

トしたワークショップでしたが、そのプ

ロセスから地域の防災や防犯、環境や交

流といったまちのビジョンが誕生しまし

た。そこで生まれたのが広場の合言葉「み

んなの広場、あしたの広場」です。 ▲広場の基本計画づくりワークショップ

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防災倉庫 かまどベンチ

(イベント時にも積極的に活用)

イベント等を通じた

「共助力」向上の場

シート設置による

雨天対応・日除け

掲示板

通り抜けできる

避難経路の確保

一時的な避難場所

地域住民のアイデアを出し合って作った

基本計画には、大規模地震などの災害を想

定し、雨天でも応急活動ができるようにフ

ェンスの上からシートを被せられる工夫や、

日常はベンチとして使い、座面を外せばか

まどとして炊き出しができる「かまどベン

チ」、広場に愛着がもてるようにと花壇や敷

地周辺にプランターを盛り込みました。災

害が発生した時でもスムーズに対応できる

ように、広場で開催する様々なイベント時

に、シートやかまどベンチを積極的に使う

よう心がけています。

▲イベント時に設置したシート ▲普段から積極的に活用している「かまどベンチ」

【誰もが楽しむ人、楽しませる人になろう ~みんなの広場、あしたの広場~】

ももに広場を舞台に、独自のアイデアで様々なイベントを企画・実施しています。

毎月開催の「青空カフェ」は、地域住民の憩い・交流・新しい活動のアイデア創出の

場となっています。生野区発祥のスポーツ「スリーアイズ」をアレンジして創出され

たゲーム「おじゃぽん」も広場で誕生しました。近隣の老朽家屋跡地には「ももに農

園」を自主的に整備し、四季折々の野菜をみんなで栽培・収穫し、青空カフェで食べ

たりしています。

春の恒例イベント「広場誕生祭」や秋の「敬老祭」では、地域ぐるみで小学生の入

学や高齢者の長寿を祝い、手づくりの花束を贈るなど、よろこびの輪を広げています。

また、年末の「光の祭」では、その年に地域で亡くなられた方々を偲び、悲しみを分

かち合うことで、地域の結びつきを深めるなど、多様な世代間の交流を促しています。

今年の年末には、「光の祭」の趣旨を発展させ、新たに防火意識の向上と消火活動の

体験を加えた「どんど祭(仮称)」を実施する予定です。

「みんなの広場、あしたの広場」を合言葉にした広場での様々な取組が「共助力」

を育み、地域防災力の向上に着実に繋がっていると感じています。

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▲毎月開催している「青空カフェ」 ▲広場で生まれたゲーム「おじゃぽん」

▲みんなで祝う春の「広場誕生祭」 ▲長寿を祝う秋の「敬老祭」

▲みんなで手づくりした花束をプレゼント ▲故人を偲ぶ冬の「光の祭」

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【小さな広場での挑戦という物語は、これからも続きます】

ももに広場を通して、自分たちの周りに、自分たちの中に、眠れる資源がいっぱい

あることに気づきました。広場を舞台にして地域の「共助力」を育てようという理念

ですが、理想にはまだまだだと感じています。でも、こうした理念や理想があるから

こそ、私たちは頑張れるのだと思います。

一人ひとりが日々の小さな喜びを見つけ、その喜びを持ち寄り、繋ぎあうことで、

この街を、暮らしを、そして明日を変える大きな力に育てたいと思っています。