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第11回アジア交通学会国際会議 (11 th EASTS Conference)に参加して 平澤 匡介 1.はじめに 2015年9月11日から14日にかけて、フィリピン共和 国のセブ市において第11回アジア交通学会国際会議 (以降、11 th EASTS)が開催され、寒地土木研究所寒地 交通チームから平澤主任研究員が参加し、ポスター発 表を行ったので報告します。 2.EASTS について 2.1 概要 EASTS(Eastern Asia Society for Transportation Studies)とは、土木・交通工学に携わる日本の学識経 験者らのイニシアチブの下、東アジア地域の13 ヶ国/ 地域の参加を得て、 1994年に設立された国際学会です。 1995年の第1回会議以降、2年に1度開催されていま す(表-1)。近年、アジア地域は急速な経済発展と共 に、さまざまな交通問題を抱えており、世界で最も活 発なハード・ソフト対策が必要とされる地域の1つで あります。当会議では、アジア地域で交通分野を専門 とする産官学関係者が、技術・情報交換等を目的に、 毎回各国の専門家が数多く参加しており、今回は、ア ジア・太平洋地域の34ヶ国から541名(132名の学生を 含む)の参加者を得て開催され、交通分野全般に関す る377本の口頭発表、98本のポスター発表、計 475本 の論文発表が行われました。 2.2 会議のテーマ 今回のEASTSは、「Resilient and Inclusive Transportation Systems through Smarter Mobility (より高度な移動性によるレジリエントかつ包括的な交 通システム)」をメインテーマに、開会式と基調講演(真-2)の後、口頭発表セッションとポスターセッシ ョンが3日間にわたり行われました。主なセッション は、以下のとおりです。 ・Accident and Safety(事故と安全) ・Air and Water Transportation Policy(航空・海運 施策) ・Bus Operation and Planning(バスの運用と計画) ・Capacity and Traffic Flow Analysis (容量と交通流解析) ・Driving Behavior(運転行動) ・Energy and Environment(エネルギーと環境) ・Freight Transportation and Logistics (航空輸送とロジスティクス) ・ITS ・Pavements and Road Maintenance (舗装と道路の維持管理) ・Pedestrian and Bicycle(歩行者と自転車) ・Public Transport in Asia(アジアの公共交通) ・Robust and Resilient Transportation (安定かつ回復力を持つ輸送) ・Survey and Data Collection(調査とデータ収集) ・Traffic Management and Control(交通管理と制御) ・Transportation Planning and Policy in Asia (アジアの交通計画および政策) ・Transportation Project Evaluation(交通事業評価) ・Travel Behavior Analysis(旅行行動分析) ・Urban and Regional Planning(都市と地方の計画) 1 1995 2 1997 3 1999 4 2001 5 2003 6 2005 7 2007 8 2009 9 2011 10 2013 11 2015 表-1 EASTS の開催履歴 報 告 寒地土木研究所月報 №751 2015年12月 49

第11回アジア交通学会国際会議 - ceri.go.jp · 2018. 11. 29. · 第11回アジア交通学会国際会議 (11th EASTS Conference)に参加して 平澤 匡介* 1.はじめに

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Page 1: 第11回アジア交通学会国際会議 - ceri.go.jp · 2018. 11. 29. · 第11回アジア交通学会国際会議 (11th EASTS Conference)に参加して 平澤 匡介* 1.はじめに

第11回アジア交通学会国際会議(11th EASTS Conference)に参加して

平澤 匡介*

1.はじめに

 2015年9月11日から14日にかけて、フィリピン共和国のセブ市において第11回アジア交通学会国際会議

(以降、11th EASTS)が開催され、寒地土木研究所寒地交通チームから平澤主任研究員が参加し、ポスター発表を行ったので報告します。

2.EASTS について

2.1 概要

 EASTS(Eastern Asia Society for Transportation Studies)とは、土木・交通工学に携わる日本の学識経験者らのイニシアチブの下、東アジア地域の13 ヶ国/地域の参加を得て、1994年に設立された国際学会です。1995年の第1回会議以降、2年に1度開催されています(表-1)。近年、アジア地域は急速な経済発展と共に、さまざまな交通問題を抱えており、世界で最も活発なハード・ソフト対策が必要とされる地域の1つであります。当会議では、アジア地域で交通分野を専門とする産官学関係者が、技術・情報交換等を目的に、毎回各国の専門家が数多く参加しており、今回は、アジア・太平洋地域の34 ヶ国から541名(132名の学生を含む)の参加者を得て開催され、交通分野全般に関する377本の口頭発表、98本のポスター発表、計 475本の論文発表が行われました。

2.2 会議のテーマ

 今回の EASTS は、「Resi l ient and Inclusive Transportation Systems through Smarter Mobility

(より高度な移動性によるレジリエントかつ包括的な交通システム)」をメインテーマに、開会式と基調講演(写

真-2)の後、口頭発表セッションとポスターセッションが3日間にわたり行われました。主なセッションは、以下のとおりです。・Accident and Safety(事故と安全)・Air and Water Transportation Policy(航空・海運

施策)・Bus Operation and Planning(バスの運用と計画)・Capacity and Traffic Flow Analysis (容量と交通流解析)・Driving Behavior(運転行動)・Energy and Environment(エネルギーと環境)・Freight Transportation and Logistics (航空輸送とロジスティクス)・ITS・Pavements and Road Maintenance (舗装と道路の維持管理)・Pedestrian and Bicycle(歩行者と自転車)・Public Transport in Asia(アジアの公共交通)・Robust and Resilient Transportation (安定かつ回復力を持つ輸送)・Survey and Data Collection(調査とデータ収集)・Traffic Management and Control(交通管理と制御)・Transportation Planning and Policy in Asia (アジアの交通計画および政策)・Transportation Project Evaluation(交通事業評価)・Travel Behavior Analysis(旅行行動分析)・Urban and Regional Planning(都市と地方の計画)

1 19952 19973 19994 20015 20036 20057 20078 20099 2011

10 201311 2015

表-1 EASTS の開催履歴

報 告

寒地土木研究所月報 №751 2015年12月 49

Page 2: 第11回アジア交通学会国際会議 - ceri.go.jp · 2018. 11. 29. · 第11回アジア交通学会国際会議 (11th EASTS Conference)に参加して 平澤 匡介* 1.はじめに

3.寒地土木研究所からの発表

 寒地土木研究所からは、寒地交通チームの平澤主任研究員が、「Development and Effective Use of a Wire Rope Guardrail System for Two-lane Roads in Japan

(2車線道路におけるワイヤーロープ式防護柵の開発と効果的な活用)」について発表をしました。この発表では、実車衝突実験による防護柵設置基準に適合したワイヤーロープ式防護柵の開発と苫小牧寒地試験道路で行った大型車同士のすれ違い走行試験による高規格道路暫定二車線区間への導入検討を報告しました(写

真-1)。ポスター発表時には、フィリピン、タイ、韓国、ニュージーランド等の多くの聴講者から質問を受けました。質問内容は性能や導入コスト、防護柵の取り外しの他、ガードレールやコンクリート製防護柵との違い等、多岐にわたる内容でした。

4.会議の様子

 開会式はフィリピンの成り立ちを表現した民族舞踊で始まり、EAST 会長やセブ市長の挨拶の後に、フィリピン運輸通信省の Jaime Fortunato Caringal 氏による基調講演がありました。 交通安全に関するセッションでは、東アジアの特徴である激増する二輪車に起因する交通事故の分析、対策の開発や効果検証等が多く発表されていました。その他、フィリピンのジープニーなど、東アジア各国の特有の交通問題に関する論文発表が多く見られました。 閉会式では今回の論文投稿数や査読結果等の会議の概要報告と各賞の発表があり、華やかな雰囲気となりました。また、次回は、2017年にベトナム・ビンズオン省で開催される予定です。

5.おわりに

 今回の EASTS に参加したことにより、論文発表等から各国の取り組みが紹介され、フィリピンをはじめとしたアジア諸国の道路交通に関する課題や技術開発について貴重な情報を得る良い機会となりました。これらの見識を含めて今後の研究活動に活かし、我が国の条件を踏まえた、より安全で快適な冬期道路の構築に向けて研究に取り組んでいく所存です。

写真-1 平澤主任研究員によるポスター発表

写真-2 Jaime Fortunato Caringal 氏の基調講演

平澤 匡介*

HIRASAWA Masayuki

寒地土木研究所寒地道路研究グループ寒地交通チーム主任研究員博士(工学)技術士(建設)

50 寒地土木研究所月報 №751 2015年12月