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野木幹男:エフェクターを使いこなす! DAW ソフト全盛時代になって大きく様変わりしたのがエフェクターまわり。手軽に多くの種類のエフェクター
を使えるようになり、そのルーティンも自由自在に設定できるようになりました。ただフレキシビリティが高く
なった分、使いこなすのは難しくなったと言うこともできます。複数のエフェクターをかけ合わせるにしても、
どんなエフェクターをどんな順番でかけるか、どんな音源に、どのようなプロセスでかけるのかといったことに
よって、その効果は大きく異なります。1 つ 1 つのエフェクト効果やパラメーターに習熟すると同時に、その組
み合わせやかけ方に関しても詳しく考察していきましょう。
第 13 回:ピアノのエフェクト (2009 年 9 月 12 日)
今回からは、より実践的に音色別のエフェクト・ワークを解説していくことにしましょう。各音色にはそれぞれ定番と呼
ばれるエフェクトがあります。エフェクト・ワークは本来自由な発想でやるものですが、基本を押さえておけば応用もき
くというもの。まずはベーシックな部分をきちんと押さえておきましょう。
■アコースティック・ピアノのエフェクト
まず最初にピアノ系から見ていきましょう。アコースティック・ピアノは音色そのものが完成されているため、あまり派
手なエフェクトを加えるということは少なく、どちらかというとその音色を際だたせるようなエフェクト・ワークが中心
となります。生のピアノを扱う場合は言うまでもなくレコーディング時のマイク選定やマイク・セッティングから音作り
は始まります。
fig.1 アコースティック・ピアノのエフェクト・ワーク例
ピアノの場合の基本的なエフェクトの流れは fig.1 のようになります。まず最初にコンプレッサーを通して音の粒立ちを揃
えます。コンプレッサーのかけ方はそのジャンルや出したいニュアンスによっても異なります。例えばクラシック系のサ
ウンドではむしろかけないこともあるでしょうし、50年代のジャズ風サウンドが欲しければ深くかけるといった感じです。
アタック・タイムを早くして軽めにかけるようにすれば不自然さを感じさせずに音の粒立ちを整えることができます。逆
に遅いアタック・タイムにすると浅くかけてもコンプの特徴が強く出ます。
次に EQです。コンプレッサーと EQの順序については、これを変更するとそれぞれ同じ量のエフェクトをかけてもニュ
アンスが異なるので試してみましょう。EQでは足りない部分を増強したり、だぶついた部分をカットするなどの基本処理
を行った後に欲しい帯域を足すといった感じで進めるとスムーズに音作りができます。コンプレッサー、EQで基本的なサ
ウンドを作ったら必要に応じてリバーブを付加します。ピアノにはホール、ルーム系のリバーブが基本となりますが状況
に応じてプレートやその他も試してみます。
ここまで読んで気づいたかとも思いますがピアノに対する基本的なエフェクトというのは何の変哲もありませんが、逆に
すべての音色に通用するものがあります。もちろん、これに加えてコーラスやピッチシフター等でダブリング効果をねら
うなどアグレッシブなエフェクトも ok ですが、基本的な音色をしっかり作っておけば、これらも、より生きたものになる
でしょう。
■エレクトリック・ピアノのエフェクト
エレクトリック・ピアノの定番エフェクトと言うとまず一番にオートパンが思い浮かぶでしょう。独特のふわふわとした
雰囲気、またそれによるドライブ感はなんとも心地よいものがあります。個別のエフェクターのところでも解説したよう
に定位の変化の仕方があまり滑らかだと味が出ないので、選べるのであれば少しカクカクとした動きをする波形にすると
本ものっぽいビンテージな雰囲気が出ます。また、楽曲のテンポとパンのスピードの関係も重要です。オートパンの場合
にはディレイと違って必ずしもテンポと同期をとるのではなく、感覚的に気持ちの良いポイントを探すようにすればよい
でしょう。
コーラスやフランジャーもエレクトリック・ピアノにとても合うエフェクトです。これらもモジュレーションのスピード
やかける深さによってさまざまな表情にできるので、デフォルトのままではなく、いろいろと試してみましょう。これら
の効果を際立たせるには入力する前に倍音成分を EQ等で目立たせてやるのがポイントです。エレクトリック・ピアノの
音色は倍音が少ないので結構思い切ってハイを上げると効果が出ます。このためエキサイターを使ってサウンドのエッジ
を強調することもあります(fig.2)。コンプレッサーも好みに応じて使ってください。
fig.2 エレクトリック・ピアノのエフェクト・ワーク例
次回はアコースティック・ギター、エレクトリック・ギターの定番エフェクトについて解説していきます。