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電子回路 柴田幸司 第2回 ダイオードの性質および基本回路 電子知能システム学科

第2回 ダイオードの性質および基本回路shibalab.web.fc2.com/lecture/electro/2.pdf23 2 19 2 1.6 10 4.14 10 10 1.6 10 1.38 10 3 10 I D I D 2 2.59 10 25.9 10 3 となり、1mA(=1・10

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電子回路

柴田幸司

第2回

ダイオードの性質および基本回路

電子知能システム学科

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半導体の pn接合

p n

真性半導体(Si)

アクセプタホウ素

(B)

ドナーリン

(P)

p n

高温炉の中に真性半導体を置き、片側から

アクセプタ不純物(Bなど)、他方からドナー

不純物(Pなど)を含む蒸気を吹き込む。

1つの半導体結晶中にp形半導体の領域

とn形半導体の領域とが形成される。→ pn結合

出来た結晶の両端に電極を取り付けるこ

とにより整流特性(一方向のみに電流が

流れる)を示す。→

pn接合ダイオード

多数正孔 多数電子

電極

電極

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不純物の混入

回転

Pn接合の作成のための単結晶の引き上げ

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pn接合された半導体の電気伝導

p n

--

--

- ・・・

アクセプタイオン ・・・

正孔

+ ・・・

ドナーイオン ・・・

電子

p部にはアクセプタイオンと正孔、

n部にはドナーイオンと電子が一

様に存在する。

p形半導体とn形半導体が接合さ

れるとp形の正孔とn形の電子は移

動できる為、互いに拡散し合い接

合面を乗り越えることが出来る。

この半導体に電圧を加えない状

態では、境界面近傍の両イオン

の電子と正孔は吸引し合うこと

によりキャリアが消滅する。この

部分を空乏層という。

--

--

空乏層

イオン・・・原子から電子がとれたり余分についたもの

正孔

アクセプタイオン

ドナーイオン

電子

アクセプタ・ドナーイオンは残っている

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p n

この空乏層に残ったアクセプタイオンとド

ナーイオンが内部電界Eを発生させ、電

位障壁φを形成することにより拡散は収

まり、空乏層の厚みは一定に落ち着く。

簡単のため図中の両イオンを省略し、半

導体内部の様子を電子および正孔だけ

で表現する。

----

++

E [c]

x [m]

V [V]

x [m]

Φ(電位障壁)

拡散が収まった後はp部の境界面には-

の電位障壁が出来るため、n部の電子が

p部へ移動できない。また、n部の境界面

には+の電位障壁が出来るため、p部の

正孔はn部へ移動できない。よって電流

は流れない。

正孔 電子

電荷の分布

-

+

n側の方が

電位が高い

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V [V]

x [m]

Φ+V

V [V]

x [m]

Φ

V [V]

x [m]Φ-V

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p n

+-

p側の端子に-、n側に+の電圧を加え

た場合、p部の正孔は-電極、n部の電子

は+電極に引き寄せられ、結合部のキャリ

アが不足することにより空乏層が広がる。

よって、境界での電子の移動も起こらず、

電流は流れない。

p n

-+

p側の端子に+、n側に-の電圧を加え

た場合、n部の電子は+電極、p部の正孔

は-電極に引き寄せられ、境界部に移動

する。

この時には空乏層は出来ず、電位障壁φ

も小さい。よって、電子および正孔は境界

を越えて移動する。また、各電極では電子

と正孔が交換される(キャリアが供給され

る)ために、電流が流れ続ける。

pn接合ダイオードへのかける電圧の向きにより電流が流れたり流れなかっ

たりする現象を整流作用という。

正孔 電子

正孔 電子

②正孔・・・ + → -電子・・・ - → +

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pn接合ダイオードの電圧ー電流特性の特徴1

p(アノード)側に+、n(カソード)側に

-の電圧を加えると、多数キャリアによ

り 少ない電圧で多くの電流が流れる。

Si

・・・

0.5~0.7V

Ge

・・・

0.2~0.4V

p n

飽和電流

IS

ツェナ領域

ID

[mA]

VD

[V]

電流が流れ

始める電圧

A (アノード) K (カソード)

A (アノード)、p

K (カソード)、n

-p

キャリア・・・電流を流すための電子や正孔(ホール)

pn接合ダイオードの電圧ー電流特性

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負の電圧を加えると、少数キャリアによ

る微小な電流 IS

が流れる

さらに負の電圧を加えると、ツェナおよび

雪崩現象により急激に電流が増加する。

→ この様な現象の起こる領域を

ツェナ領域という。

一定の電流以上で熱破壊を起こす。

(この電圧が逆耐電圧)

飽和電流

IS

ツェナ領域

ID

[mA]

VD

[V]

Si

・・・

nAオーダ

Ge

・・・

μAオーダ

逆方向電流の値

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pn接合ダイオードの電圧ー電流特性の特徴2

電流と電圧の関係が1次方程式になら

ない(直線にならない)。

非線形性

(抵抗値R=E/Iと定義しても抵抗値が電流

または電圧の値によって変わる)

電流と電圧の関係が1次方程式となる(任意の電流、電圧において、R=E/Iの

関係が成り立つ)。

線形性

抵抗(導体)の電圧-電流特性

ダイオードの電圧-電流特性

ID

[mA]

VD

[V]

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pn接合理想ダイオードの電圧ー電流特性

p n

)e(II TkVq

sD

D

1

式の導出法 ・・・

pn接合の電流・電圧関係式

(半導体内に流れる電流と両電極にかける電

圧をエネルギーバンドの関係式より導出)

順方向では、印加電圧VD

により多数キャリ

アである電子の移動はexp(qV/kT)に比例

し、飽和電流も考慮した式となる。

q=1.6×10-19[C]

・・・電子の電荷

k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン係数

T=

[K]

・・・絶対温度

IS

[A]

・・・飽和電流

A (アノード) K (カソード)

A (アノード)

K (カソード)

ID

VD

(ボルツ・・・

分子の運動エネルギーと絶対温度との関係)

式の導出法・・・古川他、“電子デバイス工学,”森北出版,pp.44-47.

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pn接合ダイオードの順方向抵抗(動抵抗)

D

Dd I

Vr

電圧-電流特性の勾配を動抵抗(交流抵抗・順方向抵抗)と定義する。すなわち、

電子回路では、一般に小さな信号を取り扱うために、

非線形な素子の特性曲線上のある1点(動作点)を

中心とし、その近傍の電圧または、電流の微小変

動を問題とする。

DD

Dd qI

TkIVr

TkVq

sD

D

eII

が動抵抗であり、式(1)において

なる近似を行うと

動抵抗はダイオードに

流れる電流 IDに対して

で表される

(次ページにて証明)。

A (アノード)

K (カソード)

ID

VD

ID

[mA]

VD

[V]

q=1.6×10-19[C]

・・・電子の電荷

k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数

動作点

⊿VD

⊿ID

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の導出

)1( Tk

Vq

sD

D

eIIダイオード電流の

整流方程式はである。この式の両辺をVD

で微分すると、微分公式の

TkVq

sD

DD

eITk

qdVdI

・・・

(1)

・・・

(2)

DD

Dd qI

TkIVr

xAxA eAedxd

となる。なお、(1)式の第2項のIS

は定数であるから、微分すると零になる。

なる関係より

一方、(1)式について再度考えると、正の高い電圧(0.6~0.7以上)に対しては

1  Tk

Vq D

eであるから、(1)式の第2項のIS

はこれらの観点からも零と置ける

ので、(1)式は結局

TkVq

sD

D

eII

と置くことが出来る。よって、こ

れを(2)式の右辺に代入すると DD

D ITk

qdVdI

・・・

(3)

となる。よって、ダイオードの順方向微

分抵抗(動抵抗)rd は結局

DD

Dd qI

TkIVr

なる近似値を得る。

D

Dd I

Vr

なる定義より(3)式の逆数をとれば

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q=1.6×10-19[C]

・・・電子の電荷

k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数

であるから

DDDd IIqI

Tkr

19

219

19

223

106.1101014.4

106.11031038.1

DD II

32 109.251059.2

となり、1mA(=1・10-3[A])の電流が流れていれば、交流抵抗は25.9[Ω]であり、2mA(=2・10-3[A)の電流が流れていれば、交流抵抗は12.95[Ω]である。

[Ω]

常温(300K)の場合における、電流を1mA、2mAと変化させた場合のpn接合理想

ダイオードの動抵抗

例題1

Dd qI

Tkr を求めよ。

この式はpn接合理想ダイオードの動抵抗がボルツマン定数k、絶対温度T、電

荷q、順方向の電流ID

により求まることを意味している。

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例題2:ダイオードの順方向動抵抗(r

d)の温度変化

DDDd I

TI

TqI

Tkr

22

23

319

23

106.1)273(1038.1

10106.1)273(1038.1

DDD IT

IT

IT )273(08625.0

6.1)273(138.0

6.1)273(1038.1 1

電流 ID

の単位をmA、温度 Tの単位を℃とする

電流 ID

=2mA一定とし、温度 がT=25℃および、75℃の場合における

動抵抗を計算せよ

q=1.6×10-19[C]

・・・電子の電荷

k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数

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電流 ID

=2mA、温度 T=25℃とすると

85.1214908625.02

29808625.0)273(08625.0

DDd I

TqI

Tkr

電流 ID

=2mA、温度 T=75℃とすると

01.1517408625.02

34808625.0)273(08625.0

DDd I

TqI

Tkr

これより、温度変化に対して動抵抗(=電圧-電流特性の傾き)はこの程度変化する

ことが分かる。

回路特性へ影響

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飽和電流が IS

=10 μAとなるpn接合理想ゲルマニウムダイオードに室温(300K)で ID

2mAの電流が流れている。順方向電圧降下はいくらか。但し、理想ダイオードの整流方程

式は以下で与えられるものとする。

21059.2 qTk先の計算より、300K

の場合にはと求められたので、

)e(II qTk

V

sd

D

1

ダイオード電流の整流方程式である ・・・

(1)

この式に Id

、IS

および上記の値を代入すると

)1(1010102 21059.263 DV

e 61059.26 10101010 2 DV

e

例題3

)1( Tk

Vq

sd

D

eII

は と変形させることができて、この式からVD

を求める。

Id この値は次に左辺に移項する。

A (アノード)

K (カソード)

ID

VD

IS

)1( Tk

Vq

sd

D

eII

方針:

与式よりVD

=に変形

q=1.6×10-19[C]

・・・電子の電荷

k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数

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21059.2663 10101010102 DV

e21059.2563 1011010102

DV

e

21059.212 1010102 DV

e 21059.2201 DV

eこれより、両辺の自然対数を取って

21059.2log201log DV

ee e

303571822201 3035 ..loglog .ee であり、右辺については

21059.2303.5

DV

137.01073.131059.2303.5 22 DVよって [V] を得た。

両辺を10-5で割れば

となり を得る。

1log ee より eVe

D log1059.2 2

となる。この左辺は

となるから

前述の式は となる。

2.7282

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簡単なダイオード回路

VD

+ -

+

VRRE[V]

図に示す様なダイオードと抵抗が直列に接続さ

れた回路に流れる電流 ID

およびダイオードと抵

抗に印加される電圧(VD

、VR

)を求めることを考

える(但し、抵抗値Rおよび電源電圧Eは定数)。

なお、ダイオードの電圧-電流は別途与えられ

るものとする。

ダイオードの電圧-電流特性は非線形であ

るからオームの法則は適用出来ない。

しかし、キルヒホッフの法則は適用できる。す

なわち、電源電圧はダイオードおよび抵抗に

印加される電圧であるVD

およびVR

に分圧でき

る。よって、次式が成り立つ。

DDRD IRVVVE ・・・

(1)

ここで、抵抗Rに対してはオームの法則(E=I・R)が適用できる。

目的

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キルヒホッフの法則第1法則

ある接続点に流れ込む電流の和は零である。

第2法則

回路内の任意ループの電圧の和は零である。

+V3

[V]

+V1

+V2

2I

ループ1

0321 III

331131 RIRIVVE B点

B点において

図のループの方向を+とすれば

ループ1において

A点において入り込む電流を+とすれば

A点0213 III

ループ2において

ループ2

ループ3において

1122120 RIRIVV

332232 RIRIVVE

第1法則

第2法

となる。

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一方、ダイオード自身の電圧-電流特性は、

降伏電圧以上において次式で表される。

)1( Tk

Vq

sd

D

eII ・・・

(2)

回路に流れる電流 ID

およびダイオードと抵抗

に印加される電圧VD

やVR

は(1)、(2)式を連

立させて求める。

この様な計算は電子計算機を用いなければ

大変であるため、作図法によって求めてみる。

まず、(2)式は図2のa線の様に表される。

a線

一方(1)式の

は、EおよびRの初期値が与えられた場合に

まず、 ID

=0においては(1)式は次式の様に

VD

のみが残り、VD

=Eとなる

よってまず、(1)式を満たすA点(VD

=E)

が決定される。

A点

次に、VD

=0において(1)式は次式

に示す通り、EとRのみの関係となる。

0 RVE D

DIRE 0REID

さらにEおよびRは定数であるから、(1)式

を満たすB点(ID

=E/R)も定まる。

B点

VDE

DD IRVE

REID

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a線

A点

B点

VD

これより、A点とB点を結んだ直線であるb線が

(1)式を示していることになる。

また、(1)式と(2)式を共に満足する解はa線と

b線の交点であり、その点でのID

およびVD

が本

回路が動作時におけるダイオード自身の電流お

よび電圧である。この交点を動作点と呼び、動

作点におけるダイオードの電流、電圧をIDQ

およ

びVDQ

と表すことがある。動作点

+VRRE

[V]

-+

VD

結局この回路は、動作点においては左図に示す

通り直流電源Eに対してRD

およびRの抵抗が接

続されていると考えることができ、ダイオードに

かかる電圧はVD

=VDQ

、ダイオードを流れる電

流はID

=IDQ

となる。なお、動作点においてRD

ついて、オームの法則を適用すると

RD D

DD I

VR

となり、ダイオードの抵抗値RD

が計算出来る。な

お、ここで得られたRD

は動作点のみにてキルヒ

ホッフの第2法則である次式を満足している。

DDRD IRVVVE

DQ

VDQ

・・・

(3)

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例題5VD

+ -

+

VRRE

[V]

a線

A点

B点

VD

図に示すダイオードと抵抗が直列に接続された

回路において、E=4V,R=80Ωの場合におけ

るダイオードに流れる電流 ID

および、ダイオード

に印加される電圧VD を作図法により求める。

DDRD IRVVVE

まず、先の(3)式にE=4V,R=80Ωを

代入すれば

DD IV 804となる。これより、

ID

=0の場合には

4DVであり、この点をA点にプロットできる。

次に、 VD

=0の場合には

3105005.0804 DI

であり、この点をB点にプロットできる。

・・・

(1)

D

DD I

VR なる関係から

[V]

[m

A]

4V

50mA

[A]

Page 24: 第2回 ダイオードの性質および基本回路shibalab.web.fc2.com/lecture/electro/2.pdf23 2 19 2 1.6 10 4.14 10 10 1.6 10 1.38 10 3 10 I D I D 2 2.59 10 25.9 10 3 となり、1mA(=1・10

VD

ID

[V]

[mA]

10

3210.8

0.4

0.2 0.65

20

30

40

50

Page 25: 第2回 ダイオードの性質および基本回路shibalab.web.fc2.com/lecture/electro/2.pdf23 2 19 2 1.6 10 4.14 10 10 1.6 10 1.38 10 3 10 I D I D 2 2.59 10 25.9 10 3 となり、1mA(=1・10

a線

A点

B点

VD

動作点

a線とb線の交点におけるID

およびVD

が本回路が

動作時におけるダイオード自身にかかる電圧お

よび電流であり、IDQ

=ID

=40mA、VDQ

=VD

0.8Vと読み取ることが出来る。

これより、A点(ID

=0、VD

=4)とB点(ID

=50mA、

VD

=0)を結ぶ直線を引くとb線になる。

][2.38.04 VVEV DR  

これより、先のキルヒホッフの第2法則を証明す

る。先の(1)式より

であるから、DDRD IRVVVE

となり、抵抗に印加される電圧VR

が分かる。さら

に、ダイオードの抵抗値は

][200104

8.03

 

D

DD I

VR-

+VRRE

[V]

-+

RD

VD

となる。

b線

Page 26: 第2回 ダイオードの性質および基本回路shibalab.web.fc2.com/lecture/electro/2.pdf23 2 19 2 1.6 10 4.14 10 10 1.6 10 1.38 10 3 10 I D I D 2 2.59 10 25.9 10 3 となり、1mA(=1・10

このRD

を等価抵抗と呼ぶことにすると、直流電

源を接続時において、動作点における回路内の

電流および電圧は、キルヒホッフの法則である

+VRRE

[V]

-+RD

VD

DDRD IRVVVE

を満足している。すなわち、たとえば

31040808.02.38.04

である。

VD VR VD R ID

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例題6

図の回路でLEDの順方向電圧VD =1.7V、順方向電流ID

=11mA

であった。この時の制限抵抗Rの値を求めよ。

回路方程式より

DDRD IRVVVE

であるから、E=5V、VD =1.7V、 ID

=11mAを代入すれば

][300011.0

7.15

D

D

IVER

VD

=1.7VE=

[V]

-+

=11mAVR

を得る。