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電子回路
柴田幸司
第2回
ダイオードの性質および基本回路
電子知能システム学科
半導体の pn接合
p n
真性半導体(Si)
アクセプタホウ素
(B)
ドナーリン
(P)
p n
高温炉の中に真性半導体を置き、片側から
アクセプタ不純物(Bなど)、他方からドナー
不純物(Pなど)を含む蒸気を吹き込む。
1つの半導体結晶中にp形半導体の領域
とn形半導体の領域とが形成される。→ pn結合
出来た結晶の両端に電極を取り付けるこ
とにより整流特性(一方向のみに電流が
流れる)を示す。→
pn接合ダイオード
多数正孔 多数電子
電極
電極
不純物の混入
回転
Pn接合の作成のための単結晶の引き上げ
pn接合された半導体の電気伝導
p n
-
+
-
-
-
--
-
-
-
-
-
-
-
--
-
-
-
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
- ・・・
アクセプタイオン ・・・
正孔
+ ・・・
ドナーイオン ・・・
電子
p部にはアクセプタイオンと正孔、
n部にはドナーイオンと電子が一
様に存在する。
p形半導体とn形半導体が接合さ
れるとp形の正孔とn形の電子は移
動できる為、互いに拡散し合い接
合面を乗り越えることが出来る。
この半導体に電圧を加えない状
態では、境界面近傍の両イオン
の電子と正孔は吸引し合うこと
によりキャリアが消滅する。この
部分を空乏層という。
-
+
-
-
-
--
-
-
-
-
-
-
-
--
-
-
-
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
空乏層
イオン・・・原子から電子がとれたり余分についたもの
正孔
アクセプタイオン
ドナーイオン
電子
①
アクセプタ・ドナーイオンは残っている
p n
この空乏層に残ったアクセプタイオンとド
ナーイオンが内部電界Eを発生させ、電
位障壁φを形成することにより拡散は収
まり、空乏層の厚みは一定に落ち着く。
簡単のため図中の両イオンを省略し、半
導体内部の様子を電子および正孔だけ
で表現する。
空
乏
層
----
+
+
++
E [c]
x [m]
V [V]
x [m]
Φ(電位障壁)
拡散が収まった後はp部の境界面には-
の電位障壁が出来るため、n部の電子が
p部へ移動できない。また、n部の境界面
には+の電位障壁が出来るため、p部の
正孔はn部へ移動できない。よって電流
は流れない。
正孔 電子
電荷の分布
-
+
n側の方が
電位が高い
V [V]
x [m]
Φ+V
V [V]
x [m]
Φ
V [V]
x [m]Φ-V
p n
空
乏
層
+-
p側の端子に-、n側に+の電圧を加え
た場合、p部の正孔は-電極、n部の電子
は+電極に引き寄せられ、結合部のキャリ
アが不足することにより空乏層が広がる。
よって、境界での電子の移動も起こらず、
電流は流れない。
p n
-+
p側の端子に+、n側に-の電圧を加え
た場合、n部の電子は+電極、p部の正孔
は-電極に引き寄せられ、境界部に移動
する。
この時には空乏層は出来ず、電位障壁φ
も小さい。よって、電子および正孔は境界
を越えて移動する。また、各電極では電子
と正孔が交換される(キャリアが供給され
る)ために、電流が流れ続ける。
pn接合ダイオードへのかける電圧の向きにより電流が流れたり流れなかっ
たりする現象を整流作用という。
正孔 電子
正孔 電子
②正孔・・・ + → -電子・・・ - → +
pn接合ダイオードの電圧ー電流特性の特徴1
p(アノード)側に+、n(カソード)側に
-の電圧を加えると、多数キャリアによ
り 少ない電圧で多くの電流が流れる。
Si
・・・
0.5~0.7V
Ge
・・・
0.2~0.4V
p n
飽和電流
IS
ツェナ領域
ID
[mA]
VD
[V]
電流が流れ
始める電圧
A (アノード) K (カソード)
A (アノード)、p
K (カソード)、n
+
-p
n
キャリア・・・電流を流すための電子や正孔(ホール)
pn接合ダイオードの電圧ー電流特性
負の電圧を加えると、少数キャリアによ
る微小な電流 IS
が流れる
さらに負の電圧を加えると、ツェナおよび
雪崩現象により急激に電流が増加する。
→ この様な現象の起こる領域を
ツェナ領域という。
→
一定の電流以上で熱破壊を起こす。
(この電圧が逆耐電圧)
飽和電流
IS
ツェナ領域
ID
[mA]
VD
[V]
Si
・・・
nAオーダ
Ge
・・・
μAオーダ
逆方向電流の値
pn接合ダイオードの電圧ー電流特性の特徴2
電流と電圧の関係が1次方程式になら
ない(直線にならない)。
非線形性
(抵抗値R=E/Iと定義しても抵抗値が電流
または電圧の値によって変わる)
電流と電圧の関係が1次方程式となる(任意の電流、電圧において、R=E/Iの
関係が成り立つ)。
線形性
抵抗(導体)の電圧-電流特性
ダイオードの電圧-電流特性
ID
[mA]
VD
[V]
pn接合理想ダイオードの電圧ー電流特性
p n
)e(II TkVq
sD
D
1
式の導出法 ・・・
pn接合の電流・電圧関係式
(半導体内に流れる電流と両電極にかける電
圧をエネルギーバンドの関係式より導出)
順方向では、印加電圧VD
により多数キャリ
アである電子の移動はexp(qV/kT)に比例
し、飽和電流も考慮した式となる。
q=1.6×10-19[C]
・・・電子の電荷
k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン係数
T=
[K]
・・・絶対温度
IS
=
[A]
・・・飽和電流
A (アノード) K (カソード)
A (アノード)
K (カソード)
+
-
ID
VD
(ボルツ・・・
分子の運動エネルギーと絶対温度との関係)
式の導出法・・・古川他、“電子デバイス工学,”森北出版,pp.44-47.
pn接合ダイオードの順方向抵抗(動抵抗)
D
Dd I
Vr
電圧-電流特性の勾配を動抵抗(交流抵抗・順方向抵抗)と定義する。すなわち、
電子回路では、一般に小さな信号を取り扱うために、
非線形な素子の特性曲線上のある1点(動作点)を
中心とし、その近傍の電圧または、電流の微小変
動を問題とする。
DD
Dd qI
TkIVr
TkVq
sD
D
eII
が動抵抗であり、式(1)において
なる近似を行うと
動抵抗はダイオードに
流れる電流 IDに対して
で表される
(次ページにて証明)。
A (アノード)
K (カソード)
+
-
ID
VD
ID
[mA]
VD
[V]
q=1.6×10-19[C]
・・・電子の電荷
k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数
動作点
⊿VD
⊿ID
の導出
)1( Tk
Vq
sD
D
eIIダイオード電流の
整流方程式はである。この式の両辺をVD
で微分すると、微分公式の
TkVq
sD
DD
eITk
qdVdI
・・・
(1)
・・・
(2)
DD
Dd qI
TkIVr
xAxA eAedxd
となる。なお、(1)式の第2項のIS
は定数であるから、微分すると零になる。
なる関係より
一方、(1)式について再度考えると、正の高い電圧(0.6~0.7以上)に対しては
1 Tk
Vq D
eであるから、(1)式の第2項のIS
はこれらの観点からも零と置ける
ので、(1)式は結局
TkVq
sD
D
eII
と置くことが出来る。よって、こ
れを(2)式の右辺に代入すると DD
D ITk
qdVdI
・・・
(3)
となる。よって、ダイオードの順方向微
分抵抗(動抵抗)rd は結局
DD
Dd qI
TkIVr
なる近似値を得る。
D
Dd I
Vr
なる定義より(3)式の逆数をとれば
q=1.6×10-19[C]
・・・電子の電荷
k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数
であるから
DDDd IIqI
Tkr
19
219
19
223
106.1101014.4
106.11031038.1
DD II
32 109.251059.2
となり、1mA(=1・10-3[A])の電流が流れていれば、交流抵抗は25.9[Ω]であり、2mA(=2・10-3[A)の電流が流れていれば、交流抵抗は12.95[Ω]である。
[Ω]
常温(300K)の場合における、電流を1mA、2mAと変化させた場合のpn接合理想
ダイオードの動抵抗
例題1
Dd qI
Tkr を求めよ。
この式はpn接合理想ダイオードの動抵抗がボルツマン定数k、絶対温度T、電
荷q、順方向の電流ID
により求まることを意味している。
例題2:ダイオードの順方向動抵抗(r
d)の温度変化
DDDd I
TI
TqI
Tkr
22
23
319
23
106.1)273(1038.1
10106.1)273(1038.1
DDD IT
IT
IT )273(08625.0
6.1)273(138.0
6.1)273(1038.1 1
電流 ID
の単位をmA、温度 Tの単位を℃とする
電流 ID
=2mA一定とし、温度 がT=25℃および、75℃の場合における
動抵抗を計算せよ
q=1.6×10-19[C]
・・・電子の電荷
k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数
電流 ID
=2mA、温度 T=25℃とすると
85.1214908625.02
29808625.0)273(08625.0
DDd I
TqI
Tkr
電流 ID
=2mA、温度 T=75℃とすると
01.1517408625.02
34808625.0)273(08625.0
DDd I
TqI
Tkr
これより、温度変化に対して動抵抗(=電圧-電流特性の傾き)はこの程度変化する
ことが分かる。
回路特性へ影響
飽和電流が IS
=10 μAとなるpn接合理想ゲルマニウムダイオードに室温(300K)で ID
=
2mAの電流が流れている。順方向電圧降下はいくらか。但し、理想ダイオードの整流方程
式は以下で与えられるものとする。
21059.2 qTk先の計算より、300K
の場合にはと求められたので、
)e(II qTk
V
sd
D
1
ダイオード電流の整流方程式である ・・・
(1)
この式に Id
、IS
および上記の値を代入すると
)1(1010102 21059.263 DV
e 61059.26 10101010 2 DV
e
例題3
)1( Tk
Vq
sd
D
eII
は と変形させることができて、この式からVD
を求める。
Id この値は次に左辺に移項する。
A (アノード)
K (カソード)
+
-
ID
VD
IS
)1( Tk
Vq
sd
D
eII
方針:
与式よりVD
=に変形
q=1.6×10-19[C]
・・・電子の電荷
k=1.38×10-23[J/K]・・・ボルツマン定数
21059.2663 10101010102 DV
e21059.2563 1011010102
DV
e
21059.212 1010102 DV
e 21059.2201 DV
eこれより、両辺の自然対数を取って
21059.2log201log DV
ee e
303571822201 3035 ..loglog .ee であり、右辺については
21059.2303.5
DV
137.01073.131059.2303.5 22 DVよって [V] を得た。
両辺を10-5で割れば
となり を得る。
1log ee より eVe
D log1059.2 2
となる。この左辺は
となるから
1
前述の式は となる。
2.7282
簡単なダイオード回路
VD
+ -
-
+
VRRE[V]
I
D
図に示す様なダイオードと抵抗が直列に接続さ
れた回路に流れる電流 ID
およびダイオードと抵
抗に印加される電圧(VD
、VR
)を求めることを考
える(但し、抵抗値Rおよび電源電圧Eは定数)。
なお、ダイオードの電圧-電流は別途与えられ
るものとする。
ダイオードの電圧-電流特性は非線形であ
るからオームの法則は適用出来ない。
しかし、キルヒホッフの法則は適用できる。す
なわち、電源電圧はダイオードおよび抵抗に
印加される電圧であるVD
およびVR
に分圧でき
る。よって、次式が成り立つ。
DDRD IRVVVE ・・・
(1)
ここで、抵抗Rに対してはオームの法則(E=I・R)が適用できる。
目的
キルヒホッフの法則第1法則
:
ある接続点に流れ込む電流の和は零である。
第2法則
:
回路内の任意ループの電圧の和は零である。
-
+V3
E
[V]
I
3
-
+V1
R
3
-
+V2
I
2I
1
ループ1
0321 III
331131 RIRIVVE B点
B点において
図のループの方向を+とすれば
ループ1において
A点において入り込む電流を+とすれば
A点0213 III
ループ2において
ループ2
ループ3において
1122120 RIRIVV
332232 RIRIVVE
I
3
第1法則
第2法
則
となる。
一方、ダイオード自身の電圧-電流特性は、
降伏電圧以上において次式で表される。
)1( Tk
Vq
sd
D
eII ・・・
(2)
回路に流れる電流 ID
およびダイオードと抵抗
に印加される電圧VD
やVR
は(1)、(2)式を連
立させて求める。
この様な計算は電子計算機を用いなければ
大変であるため、作図法によって求めてみる。
まず、(2)式は図2のa線の様に表される。
a線
一方(1)式の
は、EおよびRの初期値が与えられた場合に
まず、 ID
=0においては(1)式は次式の様に
VD
のみが残り、VD
=Eとなる
よってまず、(1)式を満たすA点(VD
=E)
が決定される。
A点
次に、VD
=0において(1)式は次式
に示す通り、EとRのみの関係となる。
0 RVE D
DIRE 0REID
さらにEおよびRは定数であるから、(1)式
を満たすB点(ID
=E/R)も定まる。
B点
I
D
VDE
DD IRVE
REID
a線
A点
B点
I
D
VD
これより、A点とB点を結んだ直線であるb線が
(1)式を示していることになる。
また、(1)式と(2)式を共に満足する解はa線と
b線の交点であり、その点でのID
およびVD
が本
回路が動作時におけるダイオード自身の電流お
よび電圧である。この交点を動作点と呼び、動
作点におけるダイオードの電流、電圧をIDQ
およ
びVDQ
と表すことがある。動作点
-
+VRRE
[V]
I
D
-+
VD
結局この回路は、動作点においては左図に示す
通り直流電源Eに対してRD
およびRの抵抗が接
続されていると考えることができ、ダイオードに
かかる電圧はVD
=VDQ
、ダイオードを流れる電
流はID
=IDQ
となる。なお、動作点においてRD
に
ついて、オームの法則を適用すると
RD D
DD I
VR
となり、ダイオードの抵抗値RD
が計算出来る。な
お、ここで得られたRD
は動作点のみにてキルヒ
ホッフの第2法則である次式を満足している。
DDRD IRVVVE
I
D
I
DQ
VDQ
・・・
(3)
例題5VD
+ -
-
+
VRRE
[V]
I
D
a線
A点
B点
VD
I
D
図に示すダイオードと抵抗が直列に接続された
回路において、E=4V,R=80Ωの場合におけ
るダイオードに流れる電流 ID
および、ダイオード
に印加される電圧VD を作図法により求める。
DDRD IRVVVE
まず、先の(3)式にE=4V,R=80Ωを
代入すれば
DD IV 804となる。これより、
ID
=0の場合には
4DVであり、この点をA点にプロットできる。
次に、 VD
=0の場合には
3105005.0804 DI
であり、この点をB点にプロットできる。
I
D
・・・
(1)
D
DD I
VR なる関係から
[V]
[m
A]
4V
50mA
[A]
VD
ID
[V]
[mA]
4
10
3210.8
0.4
0.2 0.65
20
30
40
50
0
a線
A点
B点
I
D
VD
動作点
a線とb線の交点におけるID
およびVD
が本回路が
動作時におけるダイオード自身にかかる電圧お
よび電流であり、IDQ
=ID
=40mA、VDQ
=VD
=
0.8Vと読み取ることが出来る。
これより、A点(ID
=0、VD
=4)とB点(ID
=50mA、
VD
=0)を結ぶ直線を引くとb線になる。
][2.38.04 VVEV DR
これより、先のキルヒホッフの第2法則を証明す
る。先の(1)式より
であるから、DDRD IRVVVE
となり、抵抗に印加される電圧VR
が分かる。さら
に、ダイオードの抵抗値は
][200104
8.03
D
DD I
VR-
+VRRE
[V]
I
D
-+
RD
I
D
VD
となる。
b線
このRD
を等価抵抗と呼ぶことにすると、直流電
源を接続時において、動作点における回路内の
電流および電圧は、キルヒホッフの法則である
-
+VRRE
[V]
I
D
-+RD
I
D
VD
DDRD IRVVVE
を満足している。すなわち、たとえば
31040808.02.38.04
である。
VD VR VD R ID
例題6
図の回路でLEDの順方向電圧VD =1.7V、順方向電流ID
=11mA
であった。この時の制限抵抗Rの値を求めよ。
回路方程式より
DDRD IRVVVE
であるから、E=5V、VD =1.7V、 ID
=11mAを代入すれば
][300011.0
7.15
D
D
IVER
VD
=1.7VE=
5
[V]
I
D
-+
R
I
D
=11mAVR
を得る。