31
第2回 横浜市新たな劇場整備検討委員会資料 令和元年7月 22 日 横浜市 資料3

第2回 横浜市新たな劇場整備検討委員会資料 - …第2回 横浜市新たな劇場整備検討委員会資料 令和元年7月22日 横浜市 資料3 目 次 Ⅰ 市民意識・市場動向など・・・・・

  • Upload
    others

  • View
    7

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

第2回 横浜市新たな劇場整備検討委員会資料

令和元年7月 22 日

横浜市

資料3

目 次

Ⅰ 市民意識・市場動向など・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1 文化芸術への意識や行動・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2 市場の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

3 観光動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

Ⅱ 新たな劇場のあり方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

1 検討の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

2 今回の検討の前提・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

Ⅲ 新たな劇場の運営のあり方・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

1 劇場の特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

2 「選ばれる劇場」の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

3 新たな劇場の目指す姿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

Ⅳ 舞台芸術のこれからを考える・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

1 人材育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

2 劇場の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

3 公的支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

Ⅴ 新たな文化芸術創造都市に向けて・・・・・・・・・・・・・・・ 28

1 環境の変化と文化芸術について・・・・・・・・・・・・・・・ 28

2 取組みの視点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

2

Ⅰ 市民意識・市場動向など

1 文化芸術への意識や行動

市民の文化芸術への意識や行動について、横浜市市民意識調査や国の文化に関する世論調査など

から、分析する。

(1) 価値観

【文化芸術に対する考え】「横浜市 文化芸術に関する意識調査(平成 24 年度)」

・横浜市居住者のうち約 7割が「文化芸術を体験することや行うことは大切だ」と考えている。

【子どもの文化芸術体験に期待する効果】「文化に関する世論調査(平成 30 年度)」

・「子どもの文化芸術体験について、期待する効果」で最も多いのは、「創造性や工夫をする力が

高まる」の 49.1%で、「美しさなどへの感性が育まれる」「日本の文化を知り、国や地域に対する

愛着を持つようになる」「コミュニケーション能力が高まる」などと続いている。

文化芸術体験の重要性を多くの人が認識している。

【⽂化芸術に対する考え】

【⼦どもの⽂化芸術体験に期待する効果】

出典︓⽂化芸術に関する意識調査 結果のまとめ(横浜市 平成 24 年 12 ⽉)

出典︓⽂化に関する世論調査 報告書(⽂化庁)

3

(2)文化芸術の鑑賞

【観劇やコンサートに行く人の特性】「平成 30 年度横浜市民意識調査」

・「年に1回以上行く人」は 40.7%で、男女別に見ると、女性が 46.9%、男性が 33.7%と差がある。

特に、女性の 18~29 歳が 65.8%、50 代が 53.8%と半数を超え高い値になっている。

「行かない人」は 57.8%であり、男女ともに 70 歳以上が高く、特に、男性は 71.9%と高くなっ

ている。

・「年に 1 回以上行く人」のうち、54.2%が都内に出向いている。特に、行く人の割合が高い、

女性の 18~29 才代は 67.9%、50 才代は 73%と高くなっている。逆に、70 歳代以上は男女ともに

低くなっている。

・区別でみると、東京へのアクセス性が高い都筑区、青葉区は都内に出向く人が 7 割以上と高く

なっている。また、中区、磯子区、金沢区は市内へ行く人の割合が高い。

観劇やコンサートに行くことの行動形態については、男女、年齢、居住区により傾向が異なる。

行き先(都内または市内)については、コンテンツの提供場所への交通の利便性が、選択に

影響していると考えられる。

【⽣活の⾏動頻度(全体)】

出典︓平成 30 年度横浜市⺠意識調査

4

【⽣活の⾏動頻度(観劇やコンサートに⾏く)】

出典︓平成 30 年度横浜市⺠意識調査

5

出典︓横浜市ホームページ

【⽣活の⾏動範囲】

出典︓平成 30 年度横浜市⺠意識調査

6

【コンサートや美術展、アートや音楽のフェスティバル、歴史的な文化財の鑑賞、映画、文化芸術

イベントの鑑賞に行く人の特性】「文化に関する世論調査(平成 30 年度)」

・全体では、この1年間で鑑賞した人が 53.9%、「まったく・ほとんど鑑賞していない」が 46.1%

であった。男女別では男性で、年齢別では 40〜49 歳と 50〜59 歳で「まったく・ほとんど鑑賞

していない」という回答が多い。

・鑑賞した文化芸術のジャンルとしては「美術」が 45.3%と最も多く、「映画」「ポップスなど」

「歴史的な建物や文化財」「オーケストラ、オペラなど」と続く。

・鑑賞しなかった理由としては、「関心がないから」「特にない・分からない」が 58.2%(男性 63.9%、

女性 52.2%)を占める。文化芸術の鑑賞にそもそも興味・関心が向いていない層と考えられる。

一方、残りの 41.8%については、何らかの阻害要因が解決されれば、鑑賞活動を行う可能性が

高い層と考えられる。 鑑賞の阻害要因としては、「近所で公演や展覧会などが行われていない」

(19.5%)と「入場料・交通費など費用がかかり過ぎる」(18.1%)という交通の便や経済的な

要因を指摘する声が上位に並んだ。

「鑑賞しない」で男性が多い傾向は、横浜市民意識調査と同傾向である。また(1)で、多くの

人が文化芸術の重要性を認識していても、自身の行動において「まったく・ほとんど鑑賞して

いない」層が半数近くいるということは課題である。

▶ 鑑賞活動の阻害要因の除去により、潜在的な鑑賞者へアプローチすることが考えられる。

【⽂化芸術の鑑賞頻度】

出典︓⽂化に関する世論調査 報告書(⽂化庁)

7

【鑑賞した⽂化芸術のジャンル】

【鑑賞しなかった理由】

出典︓⽂化に関する世論調査 報告書(⽂化庁)

出典︓⽂化に関する世論調査 報告書(⽂化庁)

8

【文化芸術の鑑賞に関心を持つための要素】「文化に関する世論調査(平成 30 年度)」

・全体の 50.8%が「特にない、わからない」と回答しており、文化芸術に関心を持っていない人

が、関心を持つきっかけを考えることは難しい。(自ら文化芸術に触れようとすることはなかな

か期待しにくい。)

・関心を持つきっかけとしては「無料で見られるコンサートや展覧会などが増える」(20.5%)が

一番多く、「今より経済的な余裕ができる」、「家族や親しい知人・友人に誘われる 機会が増え

る」、「自宅や職場の近くでたくさん催しが行われるようになる」などが続いている。

いずれも、負担なく、もしくは、自ら「行こう」と強く思わなくとも文化芸術の鑑賞の場に行け

るようになる選択肢である。

あまり関心がなくとも、文化芸術鑑賞に「行けてしまう」環境をつくることが、文化芸術の鑑賞

に関心を持ってもらうために有効である可能性が高い。

【⽂化芸術への関⼼を⾼めるには】

出典︓⽂化に関する世論調査 報告書(⽂化庁)

9

(3)地域の文化的環境

【地域の文化的な環境を充実させるために必要なこと】「文化に関する世論調査(平成 30 年度)」

・「ホール・劇場、美術館・博物館などの文化施設の充実」が 29.5%で最も多く、次いで「公演、

展覧会、芸術祭などの文化事業の充実」、「子どもが文化芸術に親しむ機会の充実」「地域の芸能や

祭りなどの継承・保存」「文化芸術の創作や準備、活動ができる 施設や情報の充実」、「歴史的な

建物や遺跡などを活かしたまちづくりの推進」などと続く。

施設の整備とともに、多様な取組を推進していくことが重要である。

【地域の⽂化的環境の充実策】

出典︓⽂化に関する世論調査 報告書(⽂化庁)

10

(4)余暇の過ごし方

【「趣味・娯楽」の活動をする人】「平成 28 年社会生活基本調査」

・「演芸・演劇・舞踊鑑賞」について、男女、年齢階級別に行動者率及び行動者の平均行動日数を

みると、全ての年齢階級で女性が男性に比べ行動者率が高くなっている。女性の行動者率は 15

~29 歳,50~74 歳で 20%を超えている。また、女性の平均行動日数は 15~29 歳及び 70 歳

以上で他の年齢階級に比べ多い傾向がみられる。(全国の傾向)

・経年で見ると、男女共に、行動者率が増加しており、特に 30 歳以下の増加が大きい。

演芸、演劇、舞踊鑑賞に絞ると、市民意識調査などと比べて、参加割合の男女差の傾向は一層

顕著である。

出典︓総務省「統計からみた⽂化・芸術活動」

【「演芸・演劇・舞踊鑑賞」の男⼥、年齢階級別⾏動者率及び平均⾏動⽇数(平成 23 年、平成 28 年)】

出典︓「平成 28 年社会⽣活基本調査結果」「平成 23 年社会⽣活基本調査結果」(総務省統計局)より作成

(単位 平均⾏動⽇数︓⽇/年 ⾏動者率︓%)

(単位 平均⾏動⽇数︓⽇/年 ⾏動者率︓%)

10~

14歳

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65~

69歳

70~

74歳

75歳

以上

平均行動日数(H23) 3.3 7.5 11.4 4.8 8.1 4.0 4.2 5.4 5.0 5.5 5.6 6.5 6.3 9.8

平均行動日数(H28) 7.6 7.5 5.5 8.2 7.1 5.1 5.9 5.3 5.9 8.0 6.8 9.2 7.5 12.9

行動者率(H23) 8.1 7.5 5.2 6.0 6.3 5.5 6.6 6.8 7.5 7.9 7.8 8.1 8.5 6.1

行動者率(H28) 10.5 10.3 10.5 9.1 7.6 8.2 9.3 8.5 10.3 10.7 11.4 11.5 10.6 7.8

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

0.02.04.06.08.0

10.012.014.016.018.020.0

男性

10~

14歳

15~

19歳

20~

24歳

25~

29歳

30~

34歳

35~

39歳

40~

44歳

45~

49歳

50~

54歳

55~

59歳

60~

64歳

65~

69歳

70~

74歳

75歳

以上

平均行動日数(H23) 5.8 8.3 6.3 7.0 4.9 5.6 5.2 4.8 5.8 6.8 8.4 6.4 6.9 11.0

平均行動日数(H28) 5.3 8.6 9.3 8.7 5.8 4.7 5.1 5.3 5.1 5.6 6.1 7.5 10.8 12.6

行動者率(H23) 16.9 18.1 16.2 17.6 16.0 15.7 16.1 17.3 19.5 19.0 18.6 18.4 15.9 9.0

行動者率(H28) 16.3 23.2 23.8 21.6 17.4 18.2 18.9 19.2 21.3 22.2 22.2 21.5 20.5 11.7

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

0.02.04.06.08.0

10.012.014.016.018.020.0

女性

11

2 市場の動向 (1) ライブ・エンタテインメント

・エンタテインメント市場では、CD、DVDや書籍・雑誌などが厳しい状況の中、体験型のライ

ブ・エンタテインメント市場は拡大している。

・2017 年のライブ・エンタテインメント市場規模全体は 5,151 億円(「ライブ・エンタテインメン

ト白書」)で、市場規模全体は拡大基調、ステージについては横ばい傾向となっている。

・2018 年の余暇市場の市場規模は 71 兆 9,140 億円((公財)日本生産性本部「レジャー白書 2019」)

とされる。

※オペラはクラシックに含まれる

出典︓「2017 年ライブ・エンタテインメント市場規模<確定値>」 (ライブ・エンタテインメント調査委員会ホームページ)http://live-entertainment-whitepaper.jp/marketsize.php

【ライブ・エンタテインメント市場規模】

【⾳楽コンサートの市場規模】

【ステージの市場規模】

出典︓「2018 ライブ・エンタテインメント⽩書」(ライブ・エンタテインメント調査委員会)

出典︓「2018 ライブ・エンタテインメント⽩書」(ライブ・エンタテインメント調査委員会)

12

(2) オペラ、バレエの市場

【市場規模】「ぴあ総研調査」

・ぴあ総研の調査によると、チケット販売額から推計する市場規模は、オペラが 40 億円程度、

バレエが 40~50 億円程度である。

・経年でみると、オペラは来日公演が減少している。バレエは来日公演が多くを占め、年ごとの

増減変化はあるものの全体的には横ばい傾向である。

・有名団体の公演の有無により、動員数、市場規模(売上げ)が左右される。

【オペラ・バレエの実演団体数】

・「日本のオペラ年鑑」によると、2017 年のオペラの活動団体は 248 団体とされる。

ただし、恒常的にプロとして活動する実演団体は限られると想定される。

・プロとして活動するバレエの実演団体数について網羅的に調査したデータはないが、日本バレ

エ団連盟に所属している団体は9団体ある。バレエ学習人口は、約 36 万人、バレエ教室数

約 4,600 箇所とされる。(昭和音楽大学バレエ研究所「バレエ教育に関する全国調査」)

出典︓ぴあ総研

出典︓ぴあ総研

13

【国内のオペラ総上演回数と活動団体数の推移】

出典︓『⽇本のオペラ年鑑 2017』「⽇本のオペラ公演 2017-公演データの分析とその考察̶」(昭和⾳楽⼤学オペラ研究所・⽯⽥⿇⼦教授)

14

3 観光動向

(1)観光データの分析

【外国人旅行者の動向】「横浜市 外国人旅行者に関する実態調査(平成 30 年度)」

・インバウンドの誘客数は増加傾向にあるものの、全国平均の伸びから比べると弱い。

「外国人旅行者に関する実態調査(平成 30 年度)」における昼間来訪者数は、国別でみると

中国、台湾、韓国、米国の順になっている。一方、延べ宿泊者数では、中国、米国の順となって

いる。(観光庁調査)。

・クルーズ船の横浜の寄港数は 2018 年は 168 回と多く、近年増加している。

横浜港は発着寄港数が 108 回と多いことが特徴であり、国内 1位、アジアで4位となっている。

発着寄港数が多いことは、横浜の滞在時間を確保できるチャンスである。一方、クルーズ船客

に対して行ったアンケートによれば、日本到着から乗船するまでの宿泊については、東京が

多く、横浜は全体の1割である。

・横浜ではホテル立地が急増している。

横浜の発着寄港のクルーズ船客などの滞在を視野に入れた、魅力あるコンテンツづくりが求め

られる。

※平成 30 年1月から9月までに横浜市内に昼間時間(10-17 時)、夜間時間(2-4時)に2時間以上滞在した訪日外国人の人口

【時間帯別来訪者数】

出典︓横浜市 訪⽇外国⼈旅⾏者市内実態調査 調査結果概要

【横浜市内の国・地域別外国⼈延べ宿泊者数】

15

※平成 30 年1月から9月までに横浜市内に昼間時間(10-17 時)、夜間時間(2-4時)に2時間以上滞在した訪日外国人の人口

※平成30年1月から12月の間に横浜を訪れたと回答し

た、米国、英国、中国、台湾、韓国、タイ、インドネシ

ア、マレーシアに居住する 20 歳以上の男女個人を対象

にしたインターネットによるアンケート調査。

1 上海 369

2 シンガポール 293

3 基隆 265

4 横浜 108

5 南沙 104

6 厦門 87

7 天津新港 81

8 深セン 75

9 香港 68

10 神戸 53

【国別来訪者数上位 10 か国・地域】 (人)

1 中国 207,423 中国 137,2652 台湾 148,674 台湾 70,3053 韓国 114,699 米国 57,6254 米国 114,422 韓国 46,4395 タイ 58,670 タイ 31,5016 香港 55,371 香港 22,1277 オーストラリア 31,017 英国 21,1848 英国 30,439 フィリピン 15,5409 カナダ 24,782 オーストラリア 15,430

10 フィリピン 24,331 ドイツ 13,805

昼間 夜間

出典︓横浜市 訪⽇外国⼈旅⾏者市内実態調査 調査結果概要をもとに作成

【横浜への主な来訪⽬的】

出典︓横浜市 訪⽇外国⼈旅⾏者市内実態調査 調査結果概要

23.1

25.2

26.7

28.2

30.0

20

22

24

26

28

30

32

2015 2016 2017 2018 2019年

(百万人)

((クルーズライン国際協会 調べ)

※クルーズライン国際協会の定義による発着回数

【世界のクルーズ船乗降客数の推移】 【2018 年アジアにおける発着クルーズ回数】

16

※横浜港から出港する客船(ダイヤモンド・プリンセス、セレブリティ・ミレニアム)へ乗船するクルーズ旅客 うち、北米、オーストラリア、

英国などの地域客を中心にヒアリングをした結果。

【乗船前の宿泊地(船別)】

出典︓横浜市 訪⽇外国⼈旅⾏者市内実態調査 調査結果概要

17

(2)訪日外国人の動向

【訪日外国人旅行消費額】「訪日外国人の消費動向 2018 年 年次報告書」

・わが国の外国人旅行者の国籍・地域別では、①中国 ②韓国 ③台湾 ④香港 ⑤米国の順で旅行

消費額が高い。上位5カ国・地域で、訪日外国人旅行消費額全体の 73.9%を占める。

・2018 年における訪日外国人の旅行支出は 1人当たり平均 153,029 円と推計される。主な国籍・

地域別では、中国 224,870 円、韓国 78,084 円、台湾 127,579 円、香港 154,581 円、米国 191,539

円である。

費目別にみると、買物代 51,256 円が最も高く、次いで宿泊費 45,787 円、飲食費 33,748 円の順

で高い。

・クルーズ客の旅行中支出は 1 人当たり平均 44,227 円であった。

費目別にみると、「買物代」が 1 人当たり平均 41,627 円、「飲食費」が同 1,928 円などと

なっている。

【国籍・地域別の訪⽇外国⼈1⼈当たり旅⾏⽀出と旅⾏消費額】

出典︓「訪⽇外国⼈の消費動向 2018 年年次報告書」(観光庁)

【クルーズ客 1 ⼈当たり旅⾏中⽀出と旅⾏消費額(国籍・地域別)】 【クルーズ客 1 ⼈当たり費⽬別旅⾏中⽀出(国籍・地域別】

出典︓「訪⽇外国⼈の消費動向 2018 年年次報告書」(観光庁)

18

【訪日前に期待していたこと】「訪日外国人の消費動向 2018 年 年次報告書」

・訪日前に期待していたことについては、「日本食を食べること」が 70.5%と最も多かった。

次いで「ショッピング」(54.4%)、「自然・景勝地観光」(46.5%)、「繁華街の街歩き」(41.7%)

の順で多い。

なお、「舞台鑑賞」は、3.8%と低位であるが、一定数はある。また、今回「舞台鑑賞」をしたと

いう割合が 3.3%で、次回したいという割合が 7.5%と、訪日前に期待したことや今回したことと

比較して大きくなっている。

【訪⽇前に期待していたこと(全国籍・地域、複数回答)】 【今回したことと次回したいこと(全国籍・地域、複数回答)】

出典︓「訪⽇外国⼈の消費動向 2018 年年次報告書」(観光庁)

19

【訪日観光客の訪問率】「訪日外国人消費動向調査(「訪日外国人消費動向調査集計表 2018 年

(平成 30 年)暦年【確報】」)

・東京都が 40.8%と最も高く、次いで大阪府(40.2%)、千葉県(32.8%)、京都府(29.7%)、

福岡県(11.4%)の順で高い。神奈川県は、6.6%で 10 位である。

・訪日観光客の1人当たり旅行消費単価は、北海道が 91,043 円と最も高く、次いで東京都(87,709

円)、沖縄県(71,355 円)、大阪府(60,516 円)、福岡県(54,675 円)の順で高い。神奈川県は、

23,361 円と 26 位である。

2018年(平成30年) 暦年 【確報】 (単位)回答数:人、訪問率:%

全国籍・地域 全国籍・地域

回答数 訪問率 訪問率順位 回答数 訪問率 訪問率順位

都道府県名 北海道 6,644 9.4 7 都道府県名 滋賀県 586 0.6 33

(複数回答) 青森県 565 0.6 32 (複数回答) 京都府 25,837 29.7 4

【B1】 岩手県 314 0.3 40 【B1】 大阪府 34,965 40.2 2

宮城県 818 0.8 29 兵庫県 5,662 6.3 11

秋田県 283 0.3 41 奈良県 9,079 10.7 6

山形県 287 0.3 42 和歌山県 1,124 1.2 22

福島県 194 0.2 46 鳥取県 382 0.4 36

茨城県 409 0.5 35 島根県 232 0.3 44

栃木県 1,091 1.2 25 岡山県 905 1.0 26

群馬県 411 0.4 38 広島県 2,847 2.9 17

埼玉県 575 0.6 31 山口県 564 0.9 28

千葉県 26,726 32.8 3 徳島県 377 0.3 43

東京都 38,760 40.8 1 香川県 1,505 1.0 27

神奈川県 6,286 6.6 10 愛媛県 591 0.4 39

新潟県 423 0.4 37 高知県 290 0.2 45

富山県 1,426 1.2 24 福岡県 11,292 11.4 5

石川県 2,303 2.1 19 佐賀県 997 1.2 23

福井県 152 0.1 47 長崎県 1,663 2.0 20

山梨県 4,805 5.3 12 熊本県 2,224 2.2 18

長野県 3,131 2.9 16 大分県 5,206 5.1 13

岐阜県 3,478 3.1 15 宮崎県 562 0.7 30

静岡県 3,800 4.4 14 鹿児島県 967 1.3 21

愛知県 8,202 7.6 9 沖縄県 1,390 8.2 8

三重県 618 0.5 34 延べ合計 - 250.8

調査項目調査項目

【国籍・地域(21 区分)別 都道府県別訪問率 【観光・レジャー⽬的】】

出典︓「訪⽇外国⼈消費動向調査 集計表 2018 年(平成 30 年)暦年【確報】 参考 8 国籍・地域(21 区分) 都道府県別訪問率【観光・レジャー⽬的】」(観光庁)」をもとに作成

20

Ⅱ 新たな劇場のあり方

1 検討の考え方 新たな劇場整備の意義や目標等を踏まえ、整備、運営のあり方を検討する(ステップ1)とともに、

次の段階では、具体的なジャンルの設定や運営のための方向性を検討する(ステップ2)。 (1)新たな文化芸術創造都市の考え方

新たな劇場整備は、文化芸術創造都市として横浜の成長をけん引する中核的役割を担うもので

ある。一方、取り巻く環境の変化などから、これからの文化芸術創造都市の考え方も一層進化

させる必要がある。ここでは、中長期的視点からの文化芸術創造都市の方向性を示す。

(2)新たな劇場の整備の意義・目標

新たな劇場の果たすべき役割や目標を設定する。劇場には多面的な効果があり、単独ではなく、

連携により発揮できるものもあるため、幅広い視点で、検討する。

(3)整備・運営のあり方

果たすべき役割や目標を達成するための整備・運営の考え方を取りまとめる。特に運営のあり方

については、既存の制度からの発想ではなく「確実に最大限の効果が出せること」を念頭に検討

する。

(4)整備・運営の方向性

新たな劇場が果たすべき役割や意義を実現するために、上演ジャンルや施設に導入する機能など

(劇場が提供するコンテンツ)などを設定する。それらの整備・運営について、方向性をとりま

とめる。検討にあたっては、実現性を重視する。

2 今回の検討の前提 (1)新たな文化芸術創造都市の考え方

第Ⅴ章を参照

(2)新たな劇場の整備の意義・目標

これまでの検討をふまえ、次の視点で検討する。

【果たすべき役割】

○文化芸術の創造と発信

○経済成長

○まちづくりの推進

○次世代育成

○国際交流

【リーダーシップの発揮】

○舞台芸術の活性化

○市民の交流・連携

○国や関係自治体、民間企業などの連携の推進

21

【検討イメージ】

第1回~

第3回

整備のあり方

運営のあり方

第4回~

第6回

整備の方向性(ハード)

劇場が提供すべきコンテンツ(機能)

運営の方向性(ソフト)

新たな文化芸術創造都市

の考え方

新たな劇場の整備の意義・目標

22

Ⅲ 新たな劇場の運営のあり方

1 劇場の特性 国内外の劇場の事例などを踏まえ、新たな劇場について、特に運営面を検討するにあたり、留意すべ

きと考えられる事項を挙げる。

(1) 機能・利用用途

・国内にはオーケストラピットをはじめ、多面舞台を備えた劇場はあるものの、それらを活用

した本格的なオペラ・バレエの上演実績は少ない。その背景の一つとして、実演団体が少ない

こと、劇場の立地場所から十分な集客が見込めないことなどが挙げられる。

・こうした劇場では、音楽コンサートや式典、ライブ・エンタテインメントなど、結果として

多目的に利用される場合が多い。

・一方で、東京都内には、オペラ・バレエを年間で多く上演している劇場がある。実演団体の

ニーズを満たす施設であることが挙げられるが、集客力、何よりもブランド力を備え、上演

ジャンルを特化した持続的な運営を実現している。

(2)劇場所有の実演団体・楽団

・ヨーロッパの劇場の多くには、オーケストラ、合唱団やバレエ団を擁するものも多く、継続的

に人材育成が行われている。このような劇場のプログラムの大半は、所有している楽団の上演

が占めている。団員の雇用をはじめとするコストが発生するが、公的支援含め、安定した環境

のもと、トップクラスの技術を維持し、継続的にレベルの高い人材の育成をするにあたり評価

すべき仕組みである。

・新国立劇場はバレエ団とバレエ研修所及びオペラ研修所を、兵庫県立芸術文化センターで管弦

楽団を、びわ湖ホールでは声楽アンサンブルを所有しているが、国内では劇場が楽団や実演団

体を所有している事例は少ない。楽団や実演団体の多くは民間団体として活動しており、公共

劇場では、フランチャイズのような形式で劇場と楽団・実演団体が連携している事例が多い。

・民間団体として、宝塚歌劇や歌舞伎のような専用劇場や、練習の場を持っている実演団体の

事例がある。それぞれの企業経営の中で、独自の仕組みにより、人材育成が進められている。

・わが国では、これまで民間団体として実績を重ねてきた経過から、ヨーロッパのように公立

施設が本格的な楽団や実演団体を一括して所有することは現実的ではない。こうした状況にお

いて、劇場として実演団体の安定的な育成の仕組みをどう構築していくかが重要な課題である。

(3)自主事業と貸館事業

・劇場運営者が事業の企画・立案を行い、主催する自主公演事業においては、チケット料収入が

主要な収益源である。企画内容により、劇場の存在意義を示す手段の一つとなる一方、事業

収支を含む運営の責任は劇場運営者が負うこととなる。

・劇場サイドとして、考え方を発信するとともに、顧客重視主義の定着、「劇場のファン」を

開拓することにもつながる。わが国では、オペラ・バレエといった上演ジャンルのほか、次世

代育成などを自主事業として行っているケースが多い。

・貸館事業は、集客の有無に関わらず使用料としての収入があり、公演自体の事業収支に関する

リスクは貸館利用者が負う。劇場が貸館利用に対し、一定の目的のもとで上演ジャンルを特定

するなど制約を多く設ければ貸館利用者が減り、制約を少なくすれば、貸館利用者及び上演

ジャンルの範囲は広がり、多目的化する。わが国の劇場では、年間事業の多くを貸館事業と

している。

23

(4)持続的なオペラ・バレエの上演

・わが国では、オペラ・バレエの実演団体が少なく、各劇場における実演数は少ない。一方、

オペラ・バレエは、総合芸術の頂点とも評価され、世界共通のトップクラスの舞台芸術と考え

られる。海外から招致する公演も多く、トップクラスの実演団体には、広範囲からの集客が

見込まれる。(海外の実演団体からは日本のマーケットは魅力的と評価されている。)

・新たな劇場において、トップクラスのオペラ・バレエの鑑賞事業を中心に据えるならば、一定

以上の数の上演が必要となり、さらに、それを持続あるものとしていくためには、国内の実演

団体の活性化とともに、海外のトップクラスの実演団体の招致ができることも重要な視点で

ある。

(5)まちづくりにおける劇場

・劇場は、市街地の中心部に整備され、まちの活性化に貢献している事例が多い。日比谷におけ

る劇場等の施設を活用したまちづくり、渋谷の再開発における劇場整備、池袋地区における

劇場を中核施設とするまちづくりの構想、横須賀市でのホテルなどとの再開発事業など、国に

おける戦略的特区の指定や市街地再開発事業など、本格的なまちづくり事業として進められて

いる。

・劇場は単独で整備するのではなく、適地として、上記のような賑わいに貢献できる場の選定が

大切である。また、周辺の土地利用計画やまちづくりの進展などと整合をはかり、計画づくり

を進める必要がある。

24

2 「選ばれる劇場」の考え方

(1)「選ばれる劇場」とは

・新たな劇場整備では、ミッションの明確化と持続可能な運営を目指すことが大切である。劇場の

ステークホルダーとして、市民、顧客、実演団体、さらに、民間企業等との関係性をどう構築

するかがポイントになると考えられる。

・そこで、基本的な取り組み姿勢として、「選ばれる劇場」を追及していくべきと考える。

(2)「選ばれる劇場」となるイメージ

・市民

多くの市民が訪れ、身近に感じ、誇りに思える劇場となる。様々な鑑賞や参加の機会とともに、

区内文化施設との連携や地域社会へのアウトリーチなどにより、多くの市民が様々な形で劇場

に関わっている。

・顧客

鑑賞者の範囲が国内外問わず、広範囲にわたる。上演内容だけでなく、新たな劇場のファンを

得ている。

・実演団体

国内外問わず、新たな劇場での高い公演ニーズがある。オペラ・バレエなど本格的な舞台芸術が

継続的に上演されている。

・民間企業

多くの企業をはじめとする諸団体から、スポンサーをはじめとする様々な形の支援が寄せられ

ている。

実演団体

民間企業等

「選ばれる劇場」

市民

顧客

劇場

25

3 新たな劇場の目指す姿

劇場の特性や「選ばれる劇場」に向けての考え方をふまえ、新たな劇場の目指す姿は、オペラ・バレ

エなどの本格的な舞台芸術の公演の頻度と運営のベースになる自主事業と貸館事業の割合を評価軸と

して考えることとする。

ア タイプA

・自主事業を主体としてオペラ・バレエなどの本格的な舞台芸術の頻度が高い劇場。

・本格的な楽団・実演団体を所有しているヨーロッパの劇場はこれに該当する。

・楽団・実演団体を一括して所有していない場合は、招致力などの運営ノウハウが求められる。

イ タイプB

・貸館事業を主体として、オペラ・バレエなどの本格的な舞台芸術の頻度が高い劇場。

・首都圏にある公立劇場が該当するが、現段階では国内では実例がほとんどない。

・実現のためには「選ばれる劇場」としての評価・ブランド力を上げる取組が必要である。

ウ タイプC

・貸館事業を主体とし、上演ジャンルを特定せず、様々な利用者から利便性の高い劇場。

・国内の多くの劇場がこれに該当する。短期的な収支の面では安定であるが、本格的な舞台芸術を

上演する劇場として「選ばれる劇場」となることは難しい。

貸館事業

が多い

自主事業

が多い

本格的な舞台芸術の

上演が多い

C B

本格的な舞台芸術の

上演が少ない

26

Ⅳ 舞台芸術のこれからを考える

新たな劇場整備については、本格的な舞台芸術の公演を基軸に検討しているが、舞台芸術を上演する

だけではなく、その活性化につなげることが望ましい。そのためには、舞台芸術を取り巻く現状と課題

を十分に把握し、劇場として取組むべきこと、国や他の自治体と連携して取り組むことなどを検討しな

ければならない。ここでは、これまでの文献調査やヒアリングなどから把握したことから検討する。

今後とも、さらなるヒアリングなどにより、内容を充実させ、劇場の機能検討などに活かしていく。

1 人材育成 〇欧州の劇場では、オペラ・バレエ・オーケストラなどの実演団体を所有している例が日本と比較して

多く、年間 100 回以上の公演を経て、キャリア形成につなげている。その際には、演じ手はもちろん、

舞台装置、振付、企画などの分野も含め、総合的な人材育成がはかられている。

〇劇場に関わる人の処遇についても、実演者が文化芸術活動により一定程度の生活基盤を形成できる

仕組みがある。

〇わが国の場合は、公共の劇場が実演団体を所有している例はほとんどなく、実演団体は民間団体と

して活動している。したがって、総合的なキャリア形成、資金面などの処遇は厳しく、有能な人材の

確保だけではなく、現状の維持すら困難な場面も想定される。

〇これからの舞台芸術の活性化に向けては、「頂点の伸長」と「裾野の拡大」の視点がある。そのため

に取組むべきことは異なり、いずれも進める必要がある。新たな劇場では、特に、「頂点の伸長」に

ついての視点も取り入れながら、検討を進めるべきである。

〇国際的なコンクールで優れた成績を収める日本人も少なくないが、高い評価を受けた実演芸術家等

の受け皿が国内には乏しく、本来、創造活動の拠点となるべき劇場での公演機会も非常に限られるた

め、活躍の場を海外に求めざるを得ない状況になっていると考えられる。

〇実演芸術家等として第一線で活躍できるのは、才能に恵まれ、たゆまぬ努力を続ける、限られた人材

である。そのような優れた人材が、自らの才能を伸ばし、実力を最大限発揮できるような環境を整備

することが重要である。国を中心とした支援制度を検討すべきあるが、新たな劇場としても、実演

芸術家等の創造活動を積極的に支援するという考え方を明確にすることが求められる。

〇舞台芸術は、演奏家、舞踊家、俳優、作曲家、振付家、劇作家、演出家等の芸術家の創造活動によっ

て成り立っている。総合的な人材育成が重要である。ミュンヘン市では、小学生向けの舞台芸術に

関するワークショップなどを展開しており、そこでは、参加者に脚本家や振付師などの役割までも

取り入れて、チームとしての創造性の発揮に取組んでいる。

2 劇場の役割 〇わが国の公共ホール・劇場においては、劇場サイドの制作力も決して十分ではない。主催・共催事

業を実施する場合でも、文化芸術団体が出演料、交通費、舞台費等を一括してパッケージ化した

公演を、施設が買い付けて開催する買取公演になっている例も多いと考えられる。劇場の創造・

発信機能の充実・強化を図ることが大きな課題である。

〇文化芸術の創り手と受け手(社会)をつなぐ役割を担うのがアートマネジメントである。このアー

トマネジメントの「つなぐ」機能は、劇場、それを所管する行政における大切な役割である。

27

3 公的支援について 〇舞台芸術には、事前の稽古費、制作費や公演当日の出演費、会場費などの費用を要するが、公演で

得られる入場料収入等で全ての費用を賄おうとすると、高額な入場料を負担できる観客以外が鑑賞

できない公演となったり、芸術性や創造性は高くても集客が見込めない公演は制作できないという

構造的な問題がある。

〇国(文化庁)の支援制度は、上演プログラムへの支援が主体となっており、対象経費の上限割合以内

かつ自己負担の範囲内で支援することとされている。実質的に赤字を補填する仕組みになっている

ため、文化芸術団体にとって、入場料収入等の増加や経費節減の努力を促すインセンティブが働かな

い状態になっているとの意見もある。

〇諸外国と比較しても、国家予算に占める文化芸術に対する公的支出の割合が低い水準となっている

ため、支援予算の充実が必要である。

〇横浜市では、芸術フェスティバルのように、実行委員会に支援している事例がある。また、区レベル

では音楽フェスティバルや伝統芸能の催しに支援している場合がある。これからは、市や区としての

創造力の発揮と実演団体の活性化の視点から、国の支援制度との関係も見つつ、体系的な支援のあり

方も検討すべきである。

〇さらに、文化芸術団体の活動基盤を強化するためには、文化芸術に対する企業や市民からの寄付など

の支援策を拡大させる仕組みが必要である。その際、寄付金と助成金を組み合わせるマッチンググラ

ントのような仕組みの導入や、クラウドファンディングの活用なども考えられる。

〇わが国のホール、劇場の多くは、地方自治体が整備・運営している。個々の施設では、最大限の経営

努力に取組んでいるが、収支の面から、本来目指すべき本格的な舞台芸術の創造と発信に十分な費用

をかけられない状況がある。劇場は、文化芸術の拠点であり、ソフトパワーの発信をしていく場であ

ると考える。そのためには、国と地方自治体とで役割分担をしながら、それぞれが協力しつつ、核と

なる文化芸術拠点を充実させる必要がある。建設から運営までも視野に入れた総合的な支援制度が

必要である。

〇舞台芸術には、演劇、音楽、舞踊等の様々な分野があり、各分野によって公演や制作の方法や必要な

経費は大きく異なる。例えば、先行投資型(演劇、オペラ、バレエ、ダンスなど、作品の創作から

長時間の稽古を経て公演を迎え、事前に多額の経費を要する分野)と人材活用型(オーケストラ、

伝統芸能など、完成された作品を習得した演者が公演し、固定的な人件費を要する分野)で異なる

支援方法とすることが考えられる。

【各国の国家予算に対する⽂化予算の⽐率(2017 年度)】

出典︓平成 29 年度⽂化庁委託事業「諸外国の ⽂化政策等に関する⽐較調査研究」報告書

28

Ⅴ 新たな文化芸術創造都市に向けて 本委員会では、新たな文化芸術創造都市の計画を立案する場ではないが、新たな劇場整備を検討するに

当たっては、その上位にある文化芸術創造都市のあり方は押さえておかなければならない。本稿では、昨今

の横浜市を取り巻く環境の変化や今後の取組の視点などを検討する。

1 環境の変化と文化芸術について 劇場の検討の前提としての横浜市が目指すべき文化芸術創造都市の方向性を検討する。

(1)少子高齢化・人口減少社会

横浜市は、令和元年度より人口減少社会を迎える。また、市内でも人口動向に格差があり、南部

方面の郊外区では、すでに本格的な人口減少が続いている。こうしたエリアでは、従前から地域

社会を支えていたコミュニティの希薄化をもたらしている。地域レベルの文化活動の活性化が

高齢者の生きがい、世代を超えたつながりに貢献すると期待される。

(2)経済成長

横浜の経済情勢は、市内の大半を占める中小企業の活動により支えられている。また、まちづく

りの推進などによる大企業や外資系企業の研究開発部門の蓄積が進んでいる。大都市である横浜

において企業活動の活性化につなげるためには、「イノベーション」がキーワードとなると考え

る。文化芸術は創造性を育み、「イノベーション」に効果をもたらすことが期待される。新たな

技術開発によるイノベーションの進展と文化芸術がもたらすまちの環境づくりを積極的にとら

まえる必要がある。

(3)賑わい・観光・まちの活性化

横浜港のワールドクラスのクルーズポートとしての飛躍や、羽田からの至近性、ホテル立地の

増加など、横浜の強みを生かすチャンスを迎えている。そのためには、横浜らしい都市としての

魅力あるコンテンツの醸成が何よりも必要である。文化芸術を幅広くとらまえ、戦略的にまちの

魅力づくりにつなげていく必要がある。

(4)実演団体の育成

わが国では、文化芸術の実演団体は、主に民間団体として活動している。公的支援は一部のプロ

グラムのみに対してであり、企業からの支援も必ずしも十分ではない。また、練習場所の確保が

ままならない団体もある。地域レベルの伝統芸能の保存活動も、高齢化などにより、活動の継承

が課題である。文化芸術の担い手である実演団体の活動を支える環境整備の充実は、横浜のみな

らず、わが国の大きな課題である。

(6)グローバル化

新進気鋭のアーティストの海外への進出、また、海外アーティストのわが国での活躍など、すで

に文化芸術の活動はグローバル化している。特に、これからは、アジア諸国、諸都市とのつなが

りの中、一層の交流の推進が期待される。一方、中国、韓国などの経済開発が進んでいる国では、

文化芸術の輸出や劇場の積極的整備などを都市戦略として取り組んでいる。こうした展開にも

十分に注目しなければならないと考える。

29

2 取組みの視点

文化芸術の創造と発信の一層の強化に向け、これまで取り組んできた芸術フェスティバルや美術館の

プログラムの進化、さらに、創造都市としての取組の推進とともに、これからは、次の視点を重視した

構想をしていくことが考えられる。

(1)成長戦略の視点

文化芸術の有する多様な効果、特に、賑わい・まちづくり、イノベーションなどを視野に入れ、

持続的な経済成長につなげていく視点として推進すべきである。都市基盤整備などのまちづく

り、オリンピック・パラリンピックなどの国際的イベントなどで築いてきた横浜の成長を、さら

に推進していく重要な取組みとして位置づけていく必要がある。

(2)地域活動の視点

文化芸術の取組みは、身近な地域活動としても積極的に進められている。地区センター、コミ

ュニティハウスや公会堂、区民文化センターなどは地域の活動拠点となっている。今後、その

役割は一層高まるものと考えられる。区民文化センターが身近な鑑賞の場であり、地区センタ

ーなどは身近な文化芸術活動の場である。これらを踏まえ、身近な文化芸術活動の推進につな

げていく必要がある。

(3)本格的な文化芸術の視点

本格的な文化芸術は、心を刺激し、真の感動を呼び起こす力がある。美術、音楽、舞台芸術、

伝統芸能など本格的な文化芸術は、横浜にあるものや横浜で創造するものだけでなく、横浜に

招致するものもある。市民が日頃から本格的な文化芸術に身近に触れられる環境づくりが大切で

ある。その環境があってこそ、フェスティバルのようなイベントや継続的な賑わいの創出などに

つなげられると考えられる。

(4)インフラの視点

文化芸術の創造と発信のためには、それを支える場が必要である。横浜市では、地区センター、

コミュニティハウスや公会堂、区民文化センターなどの身近な地域活動を支えるインフラの整備

は進んでいるが、本格的な文化芸術のインフラは十分とはいえない。東京都内や大阪などにある

民間による小劇場のような場も多くはない。劇場などの施設は、文化芸術インフラであるという

視点を重視し、何が求められているのか、何を整備すべきか、何を支援すべきかなど検討、推進

すべきである。

(5)次世代育成の視点

横浜市では、子どもたちの豊かな心の醸成に向けて、小学生から本物体験としてオーケストラや

バレエなどを身近に体験する場を設けている。今後、より低年齢層における体験の場が、将来の

担い手づくりに向けても重要である。

また、文化芸術の創造と発信の一層の推進に向けては、実演団体やアーティストだけでなく、

舞台演出、アートマネジメント、舞台技術などの舞台芸術に関わる専門家の育成も大切な視点で

ある。また、ウィーン市が取組んでいる「フェアペイ」(正当な対価)のような実演団体の処遇改

善の視点も大切であることを認識すべきである。

30

(6)連携の視点

文化芸術創造都市においては、多様な連携が求められる。具体的には、地域活動の拠点間や他の

劇場などとの連携により、人材育成や拠点の活性化につなげることがある。また、例えば都心臨海

部における新たな劇場とみなとみらいホール、神奈川県民ホール、神奈川芸術劇場 KAAT などとの

連携により、回遊性やまちの賑わいにつながることも期待できる。そして、ゆるやかな連携と

して、歴史的建造物や公園づくりなどの都市景観に関わる取組、身近な自然環境に係る取組、SDGs

未来都市の取組など、つながりを持たせることが大切である。

(7)エンタテインメントの視点

ライブ・エンタテインメント市場は拡大している。横浜でも、みなとみらい地区などでアリーナ

やライブハウスなどのエンタテインメント施設の整備が進んでいる。これからの横浜の賑わい

づくりや経済活性化においては、エンタテインメントの広がりが不可欠である。一方、文化芸術

とエンタテインメントの境界は明確ではなく、両者は重なり合う部分がある。エンタテインメン

トも視野に入れた文化芸術創造都市としての展開を進めることが求められる。