26
347 第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計 関連条項〔基準 9、運用 9-5〕 8.1 吸込管及び吐出し管の材料 吸込管及び吐出し管の材料には、ダクタイル鋳鉄管(JIS G 5526)、ダクタイル鋳鉄異形管(JIS G 5527)又は配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3452)、配管用アーク溶接炭素鋼鋼管(JIS G 3457)等がある。 吸込管及び吐出し管は、一旦据付けられるとその取替えが難しく、また地下に埋設される部分も多 く保守管理が困難なため、耐久性、施工性、経済性、水質等を検討して決定する。なお、水質等の影 響で、配管及びボルトナット等の異種金属接続部に腐食が発生する場合は、絶縁や材質変更などの腐 食対策を考慮する。 一般的な選定を示すと、次のとおりである。 (1) かんがいポンプ 一般的に、かんがいポンプの吐出し管は、ポンプ場を出るとき一本の送水管路となることが多い。 このことより、合流するために、曲管、T字管、片落ち管等、特殊異形管が多くなることから、施 工性を考慮し鋼管が採用されている場合が多い。 (2) 排水ポンプ 排水ポンプ設備用の主配管材料は、①腐食や摩耗等に対し耐久性があること、②外部からの振動 や騒音に対する減衰能力がよいこと等の特性が求められる。ダクタイル鋳鉄管は、耐摩耗性及び耐 食性に優れ、かつ鋼管に比べ製法上より管厚が厚いことから、排水ポンプ用主配管としての使用実 績が多い。 8.2 吐出し管のスラスト支持 a.主ポンプを運転することによって、その吐出し圧力により水力スラストが働くことになる。こ のスラスト力を適正に支持することが必要である。 b.曲管・分岐管は直接又は近傍で支持する。また、逆止め弁、吐出し弁等は弁自体にスラスト力 が加わらないよう考慮し、弁前後の配管にて支持する。たわみ管継手はその特性を考慮し、たわ み管継手の前後で支持点や支持方法を選ぶ。 c.用水ポンプ場で採用される高揚程ポンプ設備においては、水力スラストによる力並びに水撃圧 に対し荷重を受けるための支持台スラストブロックの設置を検討する必要がある。 その一例を、図-8.1 に示す。 スラスト力 F a 及び F b の計算 ( a ) 直管部 直管部には、ポンプ始動時(吐出し弁締切始動時)とポンプ停止時(特に逆止め弁 がある時)に次の水力スラスト F a が働く。 F a 4 2 D π P 0 ・1,000(kN............................................ (8.1) P 0 :始動時は、ポンプ締切圧力+押込圧力(MPa停止時は、水撃作用時の最高圧力勾配線の最大圧力(MPaD :吐出し弁口径(m

第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

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第 8章 吸込管及び吐出し管の設計

関連条項〔基準 9、運用 9-5〕

8.1 吸込管及び吐出し管の材料

吸込管及び吐出し管の材料には、ダクタイル鋳鉄管(JIS G 5526)、ダクタイル鋳鉄異形管(JIS G

5527)又は配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3452)、配管用アーク溶接炭素鋼鋼管(JIS G 3457)等がある。

吸込管及び吐出し管は、一旦据付けられるとその取替えが難しく、また地下に埋設される部分も多

く保守管理が困難なため、耐久性、施工性、経済性、水質等を検討して決定する。なお、水質等の影

響で、配管及びボルトナット等の異種金属接続部に腐食が発生する場合は、絶縁や材質変更などの腐

食対策を考慮する。

一般的な選定を示すと、次のとおりである。

(1) かんがいポンプ

一般的に、かんがいポンプの吐出し管は、ポンプ場を出るとき一本の送水管路となることが多い。

このことより、合流するために、曲管、T字管、片落ち管等、特殊異形管が多くなることから、施

工性を考慮し鋼管が採用されている場合が多い。

(2) 排水ポンプ

排水ポンプ設備用の主配管材料は、①腐食や摩耗等に対し耐久性があること、②外部からの振動

や騒音に対する減衰能力がよいこと等の特性が求められる。ダクタイル鋳鉄管は、耐摩耗性及び耐

食性に優れ、かつ鋼管に比べ製法上より管厚が厚いことから、排水ポンプ用主配管としての使用実

績が多い。

8.2 吐出し管のスラスト支持

a.主ポンプを運転することによって、その吐出し圧力により水力スラストが働くことになる。こ

のスラスト力を適正に支持することが必要である。

b.曲管・分岐管は直接又は近傍で支持する。また、逆止め弁、吐出し弁等は弁自体にスラスト力

が加わらないよう考慮し、弁前後の配管にて支持する。たわみ管継手はその特性を考慮し、たわ

み管継手の前後で支持点や支持方法を選ぶ。

c.用水ポンプ場で採用される高揚程ポンプ設備においては、水力スラストによる力並びに水撃圧

に対し荷重を受けるための支持台(スラストブロック)の設置を検討する必要がある。

その一例を、図-8.1に示す。

スラスト力 Fa及び Fbの計算

(a) 直管部 直管部には、ポンプ始動時(吐出し弁締切始動時)とポンプ停止時(特に逆止め弁

がある時)に次の水力スラスト Faが働く。

Fa=

4

・ 2Dπ・P0・1,000(kN) ............................................ (8.1)

P0:始動時は、ポンプ締切圧力+押込圧力(MPa)

停止時は、水撃作用時の 高圧力勾配線の 大圧力(MPa)

D :吐出し弁口径(m)

Page 2: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

348

技 術 書・ポ ン プ 場

(b) 曲管部 曲管部に作用するスラスト Fbは、設計「パイプライン」を参照のこと。

図-8.1 吸込管及び吐出し管の配置(例)

d.スラスト力を建屋壁あるいは、スラストブロックで受ける場合、管のスラスト力を受けるため

の補強材(スチフナ)を管に取付ける方法がある。

(a) 低揚程ポンプの補強材(スチフナ)の寸法は、口径 1,500mm までは鋳鉄管協会便覧のパド

ルの寸法表による。1,500mm を超えるものについては、フランジ継手の厚み及び外径と同一

寸法とする。

(b) 高揚程ポンプの補強材(スチフナ)の寸法は、式(8.2)、(8.3)によりスラスト力に耐え得

るスチフナの厚さを求める。

W= ・D・(T-t)・ ・>Fa (N) ............................................. (8.2)

T=

ητπ ・・・D

W +0.15 (cm) ........................................... (8.3)

W :補強材(スチフナ)の許容せん断力(N)

D :管外径(cm)

T :補強材(スチフナ)の厚さ(cm)

t :腐食厚(0.15cm とする)

:許容せん断応力度 鋼管(SS400)の場合、7,500N/cm2

ダクタイル鋳鉄管の場合、6,000N/cm2

:溶接効率(工場溶接で放射線透過試験または超音波探傷試験を行う場合、0.95 とする)

Fb

Fa

M

M

P

P

A

B

GL

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第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

B 部詳細図 A 部詳細図

〔参 考〕スラストブロックの計算

a.スラストブロックの寸法決定

スラストブロックは、スラストによる力に耐える強固なものとし、その 小寸法は配管と配筋が

干渉せず、圧縮応力及びせん断力に耐え、配管が必要なコンクリート被りを確保できる寸法とする。

b.スラストブロックの強度計算

スラストによる力の対策には、スラストブロックを形成する配筋のせん断力と、転倒モーメント

に対する許容引張応力を確認し、設計する。

なお、コンクリートブロック製の管支持台の場合、スラストブロックの設計に当たっては、モル

タルと管との付着力は、経年劣化や地震等でその効力を失うので、考慮しないものとする。

スラストブロックを形成する配筋のせん断力と許容応力の確認の方法は次のとおりである。

建屋とスラストブロックの滑動については、建屋とスラストブロック間の配筋のせん断力で確認

する。

(a) 許容応力の確認

=djsA

M

・・<A 又は B (N/cm2) ......................................... (8.4)

As :軸方向鉄筋の全断面[鉄筋面積×本数](cm2)

d :基礎長さ(cm)

j :圧縮応力の合力から鉄筋図心までの距離と有効高さ d に対する比

=1- 3

k

k :圧縮側表面より中立軸までの距離の有効高さ d(基礎長さ)に対する比

= 2+2 )( pnpn -pn

p :鉄筋比=db

As

n :鉄筋とコンクリートのヤング係数比=15

b :基礎幅(cm)

h

T

d

b

Fa

D

2pn+(pn)2

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350

技 術 書・ポ ン プ 場

M :F・h(F=Fa又は Fb)(N・cm)

h :スラストブロック底面から管中心位置までの高さ(cm)

A (常用時)

SR235:13,700N/cm2

SR295 及び SD295:15,700N/cm2

B (水撃時)

上記の 1.65 倍

(b) せん断応力の確認

配筋の長期許容せん断応力度は、8,820N/cm2

4

・2 d・8,820・N≧Fa又は Fb(N) ........................................ (8.5)

ここで、d :鉄筋径(cm)

N :鉄筋本数

Fa :直管部に作用する水力スラスト(N)

Fb :曲管部に作用する水力スラスト(N)

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351

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

8.3 吸込管及び吐出し管の管厚

管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

考慮して決定する。

なお、検討に当たっては、設計「パイプライン」を参照のこと。

8.4 管継手

吸込管及び吐出し管の管継手には、一般的にフランジ継手、ねじ込み継手、溶接継手、ユニオン

継手、たわみ管継手等が多く採用されている。

吸込管及び吐出し管は、製造、運搬・現地施工性等より適当な長さに分割されるのが一般的であ

る。主配管の接続は管継手により行い、完全な水密性や気密性、現地施工性、管の離脱防止とその

耐久性より、原則としてフランジ継手を設ける。

フランジ継手は、吸込管及び吐出し管がダクタイル鋳鉄管の場合は管と一体形とし、また鋼管の

場合、管と別に製作し溶接により管本体に取付ける。フランジ継手の種類を、表-8.1に示す。な

お、フランジ継手は、可とう性、伸縮性がないためフランジ部に無理な負荷がかからないよう施工

しなければならない。

フランジ継手、ねじ込み継手、溶接継手、ユニオン継手の概略形状を、図-8.2~図-8.5 に、特徴

を表-8.2 に示す。

表-8.1 フランジ継手の種類

種 類 形 状 呼び圧力

(記号) 規 格 主 配 管

一体フランジ

7.5K

10 K

16 K

JIS G 5527 ダクタイル鋳鉄管

鋼板溶接式

板フランジ

5 K

7.5K

10 K JIS B 2220 炭素鋼鋼管

ハブフランジ

10 K

16 K

図-8.2 フランジ継手(パイプとの接合形式による分類)

(a)一体型 (c-2)差込み溶接型 (c-1)差込み溶接

(e)ソケット溶接型 (d)ねじ込み型

(b)突合せ溶接

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技 術 書・ポ ン プ 場

図-8.3 ねじ込み継手

図-8.4 溶接継手

図-8.5 ユニオン継手

表-8.2 管継手の種類と特徴

継手の種類 適 用 管 材 長 所 短 所

フランジ継手

a.一体型フラ ンジ

①鋼管 ②鋳鉄管 ③合成樹脂管 ④ライニング管

①材質が鋳造品又は鍛造品 ②中・大口径高圧配管

フランジ面の精度が期待できる。

現場における寸法調整ができない。

b.突合わせ溶 接型フラン ジ

①通常配管口径 50A を超える高温高圧配管

②中・大口径高圧配管

溶接による熱ひずみがガスケット座に影響しにくい。

フランジ製作工程が多く、板フランジよりも高価である。

c.差込み溶接 型フランジ

①通常配管口径 50A を超える高温高圧配管

②中・大口径低圧配管

材料費が安く心合わせが容易である。

溶接による熱ひずみがガスケット座に影響しやすく、高圧では多少洩れやすい。

ねじ込み継手

ねじ込み型 通常配管口径 50A 以下の配管 ①溶接が不可能な材質(メッキ管、ライニング管等)に適する。

②小口径配管施工は容易となる。

施工上大口径のものには不適である。

a.突合わせ溶接継手

①鋼管 ②銅管及び銅合金管 ③その他溶接可能な

金属管

通常配管口径 50A を超える配管

①継手部の強度が母材と同じ程度である。

②流れによる損失水頭が小さい。

b.ソケット溶接継手

通常配管口径 50A 以下の配管 ①心出しが容易である。

②高圧に使用できる。

ユニオン

継手

①鋼管 ②銅管及び銅合金管

通常配管口径 50A 以下の配管の分解用

分解及び取付けが容易である。

高温・高圧配管には 不適である。

(a)突合わせ型 (b)ソケット型

(a)平行ネジ型 (b)テーパネジ型

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第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

たわみ管継手は、主ポンプ設備の保守点検時、機器の分解を容易にするためや、建屋等の不同沈

下対策として設ける。この場合、たわみ管継手前後の配管をスラストブロックでしっかり固定す

る。

たわみ管継手の種類と特徴を、表-8.3 に示す。

表-8.3 たわみ管継手の種類と特徴

種 類 適用口径 特 徴

ベ ロ | ズ 型

① 金属ベローズ型

50~3,200mm

① 伸縮量 高 150mm ② たわみ角度 約 5° 以下 ③ 偏心量 50mm 以下(特殊約 300mm 以下) ④ 許容温度 高 200~350℃ ⑤ 耐圧 1.96MPa 以下 ⑥ 回転性 無し

② ゴムベローズ型 (ラバー・エキスパンションベローズ)

50~2,400mm

① 伸縮量 1 山当たり 20~50mm ② たわみ角度 10°以下 ③ 偏心量 1 山当たり 10mm 程度 ④ 許容温度 高 70~100℃(耐熱性ゴム) ⑤ 耐圧 1.72MPa 以下 ⑥ 回転性 無し

摺 動 型

① ビクトリック型

25~2,400mm

① 伸縮量 ±1.5~10mm(口径によって異なる) ② たわみ角度 0° 14´~2°(片側のパイプのたわみ角度を示す) ③ 偏心量 2~3mm 程度 ④ 許容温度 -20~+180℃ ⑤ 耐圧 小口径は 高 24.5MPa 以下、大口径は 高 1.47MPa 以下 ⑥ 回転性 有り(ただし、控ボルトを付けると無し)

② クローザ型

80~2,400mm

大口径型として 2,000~6,000mm

あり

① 伸縮量 ±100~260mm ② たわみ角度 5°(片側のパイプのたわみ角度を示す) ③ 偏心量 継手 1カ所ではなく 2カ所で使用すれば大 ④ 許容温度 常温 ⑤ 耐圧 0.98~6.86MPa 以下 ⑥ 回転性 有り

③ スリーブ型

40~2,000mm

① 伸縮量 ±30~110mm ② たわみ角度 1°~2.5°(片側のパイプのたわみ角度を示す。

口径が小さいほどたわみ角度は大となる。) ③ 偏心量 2~3mm 程度 ④ 許容温度 -20~+110℃ ⑤ 耐圧 0.98~1.72MPa 以下 ⑥ 回転性 有り

④ メカニカル型

75~2,400mm

① 伸縮量 約 20mm ② たわみ角度 5° 25´(内圧 0.34MPa で漏れ無し) ③ 偏心量 ほとんど無し ④ 許容温度 常温 ⑤ 耐圧 1.72~5.88MPa 以下 ⑥ 回転性 有り

回 転 型

ボールジョイント

20~750mm

① 伸縮量 無し ② たわみ角度 高 15°又は 30° ③ 偏心量 無し ④ 許容温度 100℃ ⑤ 耐圧 2.94~5.88MPa 以下 ⑥ 回転性 有り

そ の 他

ルーズフランジ (分解用に使用する)

50~3,200mm

① 伸縮量 無し ② たわみ角度 無し ③ 偏心量 無し ④ 許容温度 常温 ⑤ 耐圧 0.98MPa 以下 ⑥ 回転性 有り(ただし、控ボルトを付けると無し)

遊動フランジ カラー

O リング ガスケット

控ボルト (テンションボルト)

ボルト

ゴム輪

中間リング

フランジ

ベローズ

ベローズ

ゴム輪

ゴム輪

ゴム輪 押輪

ボルトナット

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技 術 書・ポ ン プ 場

たわみ管継手は、その伸縮性を失わない支持方法を採用するとともに、適切な場所に設置する必

要がある。排水ポンプ場の場合は、一般的に建屋と吐出し水槽が土木構造的に分離されていること

が多いので、地震や不同沈下による配管の破損を防ぐために、吐出し管の途中にたわみ管継手を設

ける。

用水ポンプ場の場合は、吸込水槽と建屋とが分離される場合は、吸込管の途中にたわみ管継手を

設ける。また、排水ポンプ場と同様に吐出し管にもたわみ管継手を設ける(図-8.6 参照)。

偏心量・伸縮量・沈下量の解説図 (斜め取付けの場合)

図-8.6 たわみ管継手の設置(例)

8.5 吸込管の設計上の留意点

吸込管の設計に当たっては、次の事項に留意し設計するものとする。

(1) 吸込管の管径は、主ポンプのキャビテーション性能に関わるものであるから、必ずしも主ポン

プの吸込口径に合わせる必要はない。

(2) 主ポンプの吸込口に直接曲管を設置しないようにし、直管又は偏心片落ち管を使用し、偏流や

旋回流が生じないようにする(図-8.7)。やむを得ず直接曲管を使用する場合は、管内流速を小さ

くし、曲率半径の大きいもの、又は、整流板を取付けるなどの対策をすることが望ましい。

伸び

沈下 偏心

〔参考〕たわみ管継手面間寸法表 管径(mm) 面間寸法(mm)

600 700 800 900 1,000 1,200

650

1,350 1,500

700

1,650 1,800

750

2,000 800 注1)上表は低圧用、土被り3m以内、車

重なしの45°取付け許容沈下量

100mmのものを示す。

たわみ管継手

たわみ管継手

吐出し水槽

吸込水槽

吸込水槽

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355

第 8章 吸込管及び吐出し管の設計

図-8.7 曲管による偏流の防止法

(3) 管長はなるべく短く、曲管の数は極力減らし、損失水頭を少なくするようにする。

(4) 空気による障害とその防止工法

① 継手から空気を漏入させたり、吸込管に空気溜りを作らないようにする。 吸込管が空気を吸引すると、主ポンプの性能が低下する。甚だしい時は揚水不能になる。こ

のようなことは、吸込管が長く、吸込揚程が大きいとき、特に注意する必要がある。 また、吸込管に空気溜りのあるまま主ポンプが運転に入ると、吸上げの場合、吸込側は負圧

になるため、空気が膨脹して水の流れを妨げることがある。 ② 空気溜りができないように、主ポンプに向かって 1/50~1/200 程度の上り勾配となる形にす

る(図-8.8)。また、吸込側に仕切弁がつく場合、上部に空気が溜ることがあるので、仕切弁は

横置きが望ましい。 ③ 管径の変化する部分は、偏心片落ち管を使用する。 ④ 管内の圧力は吸上げの場合、大気圧以下となるので、空気を吸込むことのないような管継手

を選ぶ必要がある。

ℓ≧2D

D

良い例 悪い例

良い例 悪い例 空気溜り

上り勾配

良い例 悪い例

空気溜り 偏心片落ち管

図-8.8 主ポンプの吸込管の良否

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356

技 術 書・ポ ン プ 場

8.6 吐出し管の設計上の留意点

吐出し管の設計に当たっては、次の事項に留意し設計するものとする。

(1) 全長を短くし、曲がりを少なくする。

(2) 空気溜りが想定される場合は、空気弁を設置する。

(3) 露出した長い吐出し管で、気温の変化による伸縮を無視できない場合は、たわみ管継手を設け、

両側の配管はそれぞれアンカーブロックで支持する。

(4) 管内流速は、計画吐出し量でおおむね 4m/s 以下とすることが望ましい。

(5) 経済的な配管とするため、下記の事項に配慮する。

① 主ポンプの吐出し口径は主ポンプ本体の効率と経済性から定められるものであるから、吐出

し管の管径を主ポンプ吐出し口径に合わせる必要はない。

② かんがい地区に直送する場合の管路の平均流速は、与えられた流量に対して、管関係費とポ

ンプ関係費の和が 小となるように経済比較を行って決定することが望ましい。口径を小さく

すれば管関係費は少なくてすむが、通水抵抗が増加することでポンプ揚程が高くなり、結局ポ

ンプ設備費と運転費がかさむことになる。逆に口径を大きくすればポンプ関係費は少なくなる

が、管関係費が増加する。いずれの場合も不経済な設計となるためである。

なお、管路の設計の詳細については、土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「パ

イプライン」を参照のこと。

(6) 必要に応じ、排泥を行える設備を考慮する。

(7) 水槽に放流する配管は、管内流速のまま吐出し水槽等に吐出すと、その速度エネルギを損失す

ることから、吐出し管末端には片落ち管を設けて管内流速を次第に落とし、小さい流速で吐出す

ようにする。片落ち管の寸法を、表-8.4に示す。ただし、設置状況により広がり角度()が 8

を超える場合は、L 2について別途検討してよい。

表-8.4 片落ち管寸法(=8 )

(単位:mm)

呼 び 径 D1 D2 L1 L2 L

400× 600 500× 700 600× 800 700× 900 800×1,000 900×1,200 1,000×1,350 1,200×1,500 1,500×1,800

406.4 508.0 609.6 711.2 812.8 914.4 1,016.0 1,219.2 1,524.0

609.6 711.2 812.8 914.4 1,016.0 1,219.2 1,371.6 1,524.0 1,828.8

200 250 250 250 250 250 250 250 400

1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 2,200 2,600 2,200 2,200

1,900 2,000 2,000 2,000 2,000 2,700 3,100 2,700 3,000

L1

D2

L2 L1

L

D1

=8°

注 1)片落ち管寸法は、JIS G 3451,5526,5527 を参照

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357

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

(8) 吐出し管にダクタイル鋳鉄管を使用する場合のフランジ片落ち管寸法を、表-8.5に示す。

ただし、広がり角度()が大きく、損失水頭が大きくなるので注意のこと。

注)図は形式 2を示す。

呼び径(mm) 管厚(mm) 有効長 (mm)

参考質量(kg)

D d T t L 形式 1 形式 2

7.5K 7.5K 10K 16K 20K

100

150

200

200

75

100

100

150

8.5

9.0

11.0

11.0

8.5

8.5

10.0

11.0

400

405

410

415

15.5

21.1

27.3

32.6

15.4

21.0

27.2

32.4

12.1

18.5

24.1

30.5

14.1

21.9

28.5

35.7

14.7

23.4

30.1

38.2

250

250

250

100

150

200

12.0

12.0

12.0

10.0

11.0

11.0

520

525

530

38.7

45.0

51.0

38.6

44.8

50.8

36.0

43.4

48.7

43.0

51.3

57.6

46.4

55.6

62.1

300

300

300

300

100

150

200

250

12.5

12.5

12.5

12.5

10.0

11.0

11.0

12.0

530

535

540

550

46.5

52.7

58.5

68.2

46.3

52.5

58.3

67.8

41.7

49.1

54.2

64.3

51.3

59.5

65.6

78.4

55.0

64.1

70.4

84.9

350

350

350

350

150

200

250

300

13.0

13.0

13.0

13.0

11.0

11.0

12.0

12.5

535

540

550

560

62.2

67.8

77.3

86.1

62.0

67.6

76.9

85.7

55.9

60.8

70.8

77.5

70.7

76.6

89.2

98.4

75.8

82.0

96.3

106

400

400

400

400

400

150

200

250

300

350

14.0

14.0

14.0

14.0

14.0

11.0

11.0

12.0

12.5

13.0

645

650

660

670

670

79.4

86.0

96.7

107

118

79.2

85.7

96.3

106

118

76.2

82.0

93.2

101

110

94.9

102

116

126

139

103

110

125

136

150

450

450

450

450

450

200

250

300

350

400

14.5

14.5

14.5

14.5

14.5

11.0

12.0

12.5

13.0

14.0

660

670

680

680

690

101

111

121

132

146

101

111

121

132

145

95.7

107

114

123

139

121

135

145

158

178

131

146

157

170

193

500

500

500

500

500

250

300

350

400

450

15.0

15.0

15.0

15.0

15.0

12.0

12.5

13.0

14.0

14.5

680

690

690

700

710

125

134

145

158

174

124

134

145

157

173

120

127

135

151

166

154

163

176

196

217

166

176

189

212

234

表-8.5 片落ち管寸法(ダクタイル鋳鉄管) (1/2)

D d

Page 12: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

358

技 術 書・ポ ン プ 場

呼び径(mm) 管厚(mm) 有効長 (mm)

参考質量(kg)

D d T t L 形式 1 形式 2

7.5K 7.5K 10K 16K 20K

600

600

600

600

600

300

350

400

450

500

16

16

16

16

16

12.5

13.0

14.0

14.5

15.0

700

700

710

720

730

162

172

184

199

213

161

172

184

199

212

159

166

181

195

209

203

215

234

254

273

218

230

252

273

293

700

700

700

700

400

450

500

600

17

17

17

17

14.0

14.5

15.0

16.0

920

930

940

950

252

270

286

320

252

269

285

322

315

337

359

404

366

390

413

460

800

800

800

800

450

500

600

700

18

18

18

18

14.5

15.0

16.0

17.0

940

950

960

970

318

333

365

405

316

331

367

409

403

423

467

519

492

514

559

645

900

900

900

900

500

600

700

800

19

19

19

19

15.0

16.0

17.0

18.0

960

970

980

990

390

419

457

505

381

415

454

502

485

526

576

642

594

637

721

823

1000

1000

1000

1000

600

700

800

900

20

20

20

20

16.0

17.0

18.0

19.0

990

1000

1010

1020

483

518

563

617

482

519

563

611

625

672

735

793

1100

1100

1100

1100

700

800

900

1000

21

21

21

21

17.0

18.0

19.0

20.0

1110

1120

1130

1150

619

666

721

782

623

669

718

783

784

849

909

1010

1200

1200

1200

1200

800

900

1000

1100

22

22

22

22

18.0

19.0

20.0

21.0

1130

1140

1160

1170

742

794

851

916

755

801

862

931

954

1010

1100

1180

1350

1350

1350

1350

900

1000

1100

1200

24

24

24

24

19.0

20.0

21.0

22.0

1160

1180

1190

1200

946

997

1050

1120

954

1010

1070

1150

1200

1290

1360

1460

1500

1500

1500

1500

1000

1100

1200

1350

26

26

26

26

21.0

21.0

22.0

24.0

1200

1210

1220

1240

1180

1220

1280

1400

1200

1240

1310

1440

1520

1570

1660

1830

表-8.5 片落ち管寸法(ダクタイル鋳鉄管) (2/2)

Page 13: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

359

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

8.7 水撃作用の軽減方法

長い送水管を有する主ポンプ送水系において、主ポンプの始動、停止及び弁の開閉を行うと、水の

運動量が短時間に変化し、送水管路内に異常に大きな圧力波が発生する。これを水撃圧といい、この

瞬間的な圧力波が発生する作用を水撃作用という。

8.7.1 水撃作用による被害

(1) 管内圧力の上昇及び降下による管体、弁、主ポンプ等の機器の破損。

(2) 水面変動による分水工や吐出し水槽からのオーバーフロー。

(3) 主ポンプ及び主原動機等の逆転過速による機器の破損。

8.7.2 水撃作用の軽減方法

(1) 負圧(水柱分離)発生の防止法

① フライホイール

主ポンプにフライホイールを取付け、主ポンプ回転部のはずみ車効果を大きくし主ポンプ揚水

量の急激な低下を防止する。ただし、設備的には比較的簡単で効果も大きいが、送水管路が長い

場合や送水管路の凹凸が大きい場合は、主ポンプの大きさに比べて大きなフライホイールを必要

とし、取付け不可能な場合がある。

② サージタンク(コンベンショナルサージタンク)

図-8.9 に示すように、送水管路の途中に十分に大きなサージタンクを設置して負圧を防止す

るとともに圧力上昇も吸収することができる。この場合には、サージタンク以降には水撃作用は

発生せず、主ポンプとサージタンクの間だけを考えればよい。

ただし、送水管路の内圧が高い場合、サージタンクの背丈が高くなり建設費が高くなるほか、

設置場所の条件によって制限される場合がある。

③ ワンウェイサージタンク

図-8.10 に示すように、負圧発生個所に設置し、接続部の送水管路内の圧力がタンク内部の圧

力より低くなると逆止め弁が開き、送水管路に水を補給し、さらに圧力降下の起こるのを防ぐ作

用をする。サージタンクに比べて背丈を低くすることができる利点がある。

ただし、ワンウェイサージタンクの作用が有効な送水管路長さは短く、送水管路が長い場合又

は送水管路の状態によっては数個のタンクを設置しなければならないので、②のサージタンクを

使用した場合との経済性並びに保守管理の程度を比較検討して、採否を決定する必要がある。

なお、ワンウェイサージタンクには、次の附帯設備を必要とする。

逆止め弁、仕切弁、連絡管、給水装置(給水管、フロート弁等)、オーバーフロー管等。

図-8.9 サージタンク 図-8.10 ワンウェイサージタンク

Page 14: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

360

技 術 書・ポ ン プ 場

④ 圧力水槽(エアチャンバ)

主ポンプが急停止した後に発生する圧力降下時に、圧力水槽内の水を内部の空気圧力により送

水管路へ給水する(図-8.11)。

一般に圧力水槽は、比較的流量が少ない設備の場合、揚程が高い場合、圧力変化を抑制する範

囲が広い場合等に利用される。

図-8.11 圧力水槽(エアチャンバ)

⑤ 空気弁又は空気管

圧力降下時に水を補給することが不可能な場合、又は送水管路が水平配管か、負圧発生点より

下流側が自然流下するような場合で補給水量が非常に多くなるか無限大になるような場合に採

用される。

図-8.12 空気弁又は空気管

たとえば、負圧発生個所が吐出し水位よりも高いような場合は、水をいくら補給しても全部吐

出し水槽へ流れてしまうので空気弁又は空気管を利用して空気を入れる。

なお、送水管路に空気を入れると再始動に長い時間を要するので、留意して設計を行う必要が

ある。

⑥ その他

( i) 管内流速を小さくする。

(ii) 送水管路のルートを変更する。

一般にポンプ場近くで立上がって水平になるような配管は立上り部で負圧(水柱分離)を起こ

しやすいので、このような配管はできるだけ避ける。

(2) 圧力上昇軽減方法

① 急閉式逆止め弁

逆流が大きくなって急閉すると高い圧力上昇が生ずるので、逆流が起こる直前の流速が遅いと

きに急閉する方法である。これは、弁体の閉鎖遅れによる圧力上昇を防止するだけで、送水管路

に生ずる本来の水撃作用を防止することはできない。しかし、逆止め弁の閉じ遅れだけが問題に

なり、送水管路が短くて、実揚程が高い場合には有効である。したがって、まず、急閉式逆止め

Page 15: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

361

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

弁で検討を行い、送水管路に生ずる 高圧力が許容圧力を超える場合には、緩閉式逆止め弁など

の採用により、 高圧力が許容圧力以下となるように対策する。

② 緩閉式逆止め弁

弁軸又はバイパス弁に油圧装置(ダッシュポット)を装備し、逆流開始後の逆流に抗して弁体

又はバイパス弁を自動緩閉する方法である。

③ 油圧式コーン弁、又は油圧式ニードル弁

停電と同時に油圧機構により弁開度を制御し、流速の変化を小さくすることができるので、圧

力上昇を小さくすることができる。また、直流電源による電動式コーン弁も同様の効果を得るこ

とができる。これらの弁は、高揚程、大容量の場合に多く採用される。

④ バイパス装置

増圧中継ポンプ場の始動、停止時の水撃作用軽減に効果がある(図-8.13)。

図-8.13 バイパス装置

⑤ 吐出し電動弁の 2 スピード方式

送水管路が長い場合、主ポンプを始動又は停止する際に通常の弁開閉時間でも、圧力波の往復

時間が長いので、異常な圧力上昇を生じる場合がある。このような場合には、吐出し弁を全開近

傍では普通スピードで開閉動作し、全閉近傍では緩やかな開閉動作とする方式を採用する。

なお、②及び③項は、いずれも逆流する場合があり、吸込水槽の越流について配慮すると共に、

更に逆転する場合には、主ポンプ及び主電動機は逆転に耐えるよう構造的に配慮し、内燃機関を

採用した場合にも、逆転防止装置などを考慮する。

Page 16: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

362

技 術 書・ポ ン プ 場

8.7.3 水撃作用の計算

水撃作用の解析は水撃現象の基礎式に回転部分の運動方程式、主ポンプの特性及び主ポンプの揚

程と送水管路末端の圧力との関係式、その他分岐点や合流点等の境界条件を加えて行われる。

解析方法は、逐次計算法、図式解法、特性曲線法等がある。複雑な配管系や、弁制御等を含む水

撃作用の計算はコンピュータを用いて行われるが、単純管路系における 低圧力値、水柱分離の有

無、水槽水面の変動量を検討するには、簡易計算式や図表を利用して行うことができる。

(1) 単純管路系の簡易計算

① 基本データ

水撃現象の計算には、次のようなデータが必要である。

( i ) 主ポンプ仕様 形式、吐出し量、全揚程、回転速度、主ポンプ効率、主ポンプ性能曲線

(ii) 台数と運転状態 直列又は 大並列台数、 大吐出し量( 大管路流量)

(iii) 実揚程及び末端残存圧力

(iv) 主原動機の形式等 かご形・巻線形、出力、回転速度、周波数、電圧

( v ) 主ポンプ及び主原動機の回転体のはずみ車効果(GD

2 値)

(vi) 送水管路の縦断図(管路プロフィル)、管種、管径、管厚、管路長

(vii) 分岐・合流の有無、有る場合は分岐・合流点の揚程(圧力)、流量及び分岐・合流の送水管

路縦断図、管種、管径、管厚

(viii) 吐出し弁、逆止め弁の形式及び弁制御方式

② 簡易計算図表の利用

簡易計算図表(図-8.14(a)~図-8.18(d))は、コンピュータにより多数の数値解析を行い、主

ポンプ急停止時の送水管路内の圧力変動を、①ポンプ直後における圧力低下、②送水管路中間点

(1/2 L )における圧力低下、③送水管路 3/4 L 地点における圧力低下、の 3 カ所について示し、

送水管路損失を 0、20、40、60、80%の 5 種類について示すとともに、送水管路内の流速が逆流

を開始するまでの逆流開始時間( T )を示している。

(a)~(c)図の 低圧力 H %は、圧力変動後の送水管路内の圧力(無次元)を示しており、送水管

路内の実際の圧力は、H %× Hn(全揚程)となり、 低吸水位からの揚程が求められる。

また、(d)図において、K・ 値と 2値より(の倍率)が求められる。ゆえに、逆流開始時間

は T = ・( の倍率)から求めることができる。この時間は、弁の開閉時間を決定する場合等の

基礎になる。 注) 図の記号は、K;ポンプの慣性係数 式(8.12)、;圧力波の所用往復時間 式(8.20)、2;管路定数 式(8.19)

を参照のこと。

Page 17: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

363

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

( i ) 送水管路損失 0%の場合の簡易計算図表

図-8.14(a) ポンプ直後の 低圧力(送水管路損失 0%の場合)

図-8.14(b) 1/2L 地点の 低圧力(送水管路損失 0%の場合)

Page 18: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

364

技 術 書・ポ ン プ 場

図-8.14(c) 3/4L 地点の 低圧力(送水管路損失 0%の場合)

図-8.14(d) 逆流開始時間(送水管路損失 0%の場合)

Page 19: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

365

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

(ii) 送水管路損失 20%の場合の簡易計算図表

図-8.15(a) ポンプ直後の 低圧力(送水管路損失 20%の場合)

図-8.15(b) 1/2L 地点の 低圧力(送水管路損失 20%の場合)

Page 20: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

366

技 術 書・ポ ン プ 場

図-8.15(c) 3/4L 地点の 低圧力(送水管路損失 20%の場合)

図-8.15(d) 逆流開始時間(送水管路損失 20%の場合)

Page 21: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

367

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

(iii) 送水管路損失 40%の場合の簡易計算図表

図-8.16(a) ポンプ直後の 低圧力(送水管路損失 40%の場合)

図-8.16(b) 1/2L 地点の 低圧力(送水管路損失 40%の場合)

Page 22: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

368

技 術 書・ポ ン プ 場

図-8.16(c) 3/4L 地点の 低圧力(送水管路損失 40%の場合)

図-8.16(d) 逆流開始時間(送水管路損失 40%の場合)

Page 23: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

369

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

(iv) 送水管路損失 60% の場合の簡易計算図表

図-8.17(a) ポンプ直後の 低圧力(送水管路損失 60%の場合)

図-8.17(b) 1/2L 地点の 低圧力(送水管路損失 60%の場合)

Page 24: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

370

技 術 書・ポ ン プ 場

図-8.17(c) 3/4L 地点の 低圧力(送水管路損失 60%の場合)

図-8.17(d) 逆流開始時間(送水管路損失 60%の場合)

Page 25: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

371

第 8 章 吸込管及び吐出し管の設計

( v ) 送水管路損失 80%の場合の簡易計算図表

図-8.18(a) ポンプ直後の 低圧力(送水管路損失 80%の場合)

図-8.18(b) 1/2L 地点の 低圧力(送水管路損失 80%の場合)

Page 26: 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 - maff.go.jp...351 第8章 吸込管及び吐出し管の設計 8.3 吸込管及び吐出し管の管厚 管厚は、配管状況に応じたもので、内水圧、土被り、トラック荷重等の外圧荷重及び余裕厚等を

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技 術 書・ポ ン プ 場

図-8.18(c) 3/4L 地点の 低圧力(送水管路損失 80%の場合)

図-8.18(d) 逆流開始時間(送水管路損失 80%の場合)