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「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。
業務利用向け水稲多収品種
農研機構西日本農業研究センター
水田作研究領域 主任研究員
小林 英和
業務用米に求められるもの
1.値ごろ感のある価格→ 多収性(価格∝生産費/収量)など
2.大量炊飯など業務利用に対応した性質→ 外側が硬め(外硬内軟)など
3.一定程度の食味→ 商品にあった品質
1
業務用多収品種の分類
1. 固定種・あきだわら、やまだわら、ほしじるし等・主食用品種(コシヒカリ等)と同様の手法で育成・遺伝的に均質で、親と子が同じ形質を持つ
2. F1種(ハイブリッド稲)・ しきゆたか、みつひかり(2003、2005)・ 異なる形質の親品種をかけ合わせた雑種第一代・親と子が異なる形質を持つ・種子が高い
2
業務用多収品種(固定種)の特性
品種名出穂期が
同時期の品種収量性
(kg/10a)食味 縞葉枯病
除草剤感受性
つきあかり あきたこまち 720 ~ コシヒカリ並以上
罹病性 抵抗性
えみのあき ひとめぼれ 600 ~660 ひとめぼれ並
罹病性 抵抗性
とよめきコシヒカリ~日本晴
720 ~ 日本晴並 罹病性 感受性*
やまだわら 日本晴 720 ~ 日本晴並 罹病性 感受性*
あきだわら 日本晴 720 ~ コシヒカリ並
罹病性 抵抗性
ほしじるし 日本晴 660 ~720 コシヒカリ並
抵抗性 抵抗性
中国218号 日本晴~ヒノヒカリ
660 ~720 ヒノヒカリ並
抵抗性 抵抗性
* ベンゾビシクロン、メソトリオン、テフリルトリオンを含む除草剤で薬害が生じる。 3
注意点:多収品種の登熟期間
出穂後積算気温
品種 (℃・日)
あきだわら 1100~1200
やまだわら 1200~1300
つや姫 930
きぬむすめ 950
表.登熟期間の長さ
多収品種では出穂~収穫の期間を主食用よりも10日ほど長くする必要があり、それを考慮して品種を選択する。
4
業務用品種の多収栽培
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主食用米と業務用米の栽培方針の違い
<主食用米>
良食味の追及→養分供給を制限
例えると、食事制限などでモデルさんのような稲を目指す
<業務用米>
多収の追及→しっかりとした体づくり
例えると、食事をしっかりとってスポーツ選手のような稲 を目指す
6
多収栽培のポイント
1. 幼穂形成期の窒素施用(籾数の確保、登熟能力の向上)
2. 作期選択(登熟の向上)
3. 適期刈り取り(登熟期間の確保)
→栄養補給
→能力を発揮しやすい環境
→能力を最大限発揮
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1. 施肥体系
施肥法 基肥(全層)
分げつ肥(移植3週後)
穂肥(出穂25~20日前)
合計
即効性分施 5 2 3~5 10~12
基礎となる窒素施肥体系(単位はkg/10a)
緩効性肥料でまとめても可
↑重要
(アレンジ)
・基肥一発の場合は、出穂前25日前後に溶出量が多くなるように
・穂肥は、様子を見ながら出穂25日前と12日前に分けても可
・リン酸、カリは各8kg/10aくらいだが、土壌診断等により調整
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2. 作期と収量・品質(例:やまだわら)
図.「やまだわら」の出穂日別の潜在収量と整粒歩合の予測値(出雲市、平年の気象条件での推定値)
60
65
70
75
80
85
600
650
700
750
800
850
8/1
8/5
8/9
8/13
8/17
8/21
8/25
8/29
整粒歩合(%)
精玄米重(kg
/10a)
出穂期
精玄米重
整粒歩合
出穂が早いほど、登熟中の日射量が多く、気温も高い
→作期が早いほど収量は高く、品質は低くなりやすい
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多収事例(品種:やまだわら、富山県)
「平成28年度飼料用米多収日本一」 全国農業協同組合中央会会長賞
粗玄米収量:865 kg/10a (作付面積 4.2ha)
(施肥)・ 鶏糞堆肥およびケイカル:150kg/10a・ 基肥:N 8.4, P 5.6, K 5.6 kg/10a (肥効調節型肥料)
・ 穂肥:N 1.4 kg/10a (硫安)
(栽培スケジュール)・ 田植え:5月上~中旬・ 中干し:6月中~下旬・ 落水:9月中旬・ 収穫:10月上旬
農林水産省『「平成28年度飼料用米多収日本一」受賞者の取組概要』より 10
参考情報
左 業務用・加工用に向くお米の品種(http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/kind-pamph/01/075227.html)
中 「あきだわら」多収・良食味水稲栽培マニュアル(http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/078328.html)
右 業務・加工利用向け水稲品種「やまだわら」多収栽培マニュアル(http://www.naro.affrc.go.jp/warc/original_contents/tech/index.html)
品種・栽培技術の詳細は、農研機構のホームページでもご覧いただけます(http://www.naro.affrc.go.jp/)
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