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第3 毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 毒物劇物を貯蔵するときは,毒物及び劇物取締法では第1で示したとおり,事業所の外に飛散,流出したり,地下にしみ込んだりすることのないように必要な安全対策を講じなければならない。 毒物劇物の貯蔵形態には,その取扱量に応じて次の 2 つに分類される。 試験室や実験室における薬品瓶やボンベでの貯蔵 工場等におけるタンクでの貯蔵 本指針では,上記の 2 つの貯蔵形態での安全対策について記載するが,各事業所においては本指針を参考に個々に適した安全対策を講じていただきたい。 なお,毒物劇物のうち,危険物または高圧ガスとして指定されているものについては,それぞれ消防法または高圧ガス保安法により安全対策を実施願いたい。 1 試験室等における安全対策 (1) 薬品瓶に対する安全対策 保管する薬品類の量は,常時点検を行い,不要なものは整理し,最少限のものとすることが当然である。 また,保管場所は,地震によって発生する人身事故や火災の発生を起こさないような適当な場所を選ぶことが必要である。 ①薬品庫・薬品棚の転倒防止 保管庫の棚,実験台上の薬品棚を床,天井,壁に L 字型金具等で固定する。 棚に 2 段に積み重ねてあるものは,できるだけ 1 段とする。積み重ねる場合には,上下を強固に固定し,壁,天井などに固定する。 ②薬品庫,薬品棚からの薬品類の転倒・落下防止対策 棚板は,固定すること。 各段に「サン」「サク」「ナゲシ」「仕切り」等を設けること, 戸棚の引き違い戸や観音開き戸は,容易にはずれたり,開かないように止め金をする。 戸についているガラスは,網入りガラス又はアクリル板等の割れにくいものにする。既存のガラスには,合成樹脂フイルム等を張る。 ③容器の衝突・転倒防止策 容器は,合成樹脂製のように,転倒落下しても容易に破損しないものを使用する。 ガラスびんは,網・布,紙・フイルム等で包み,破損を防止する。 仕切り板,仕切り網などで相互衝突や転倒を防ぐ。 ④保管方法 保管及び取り扱う量は,極力少なくする。特に人が常時従事している実験室等では,必要最少限の量とし,余分を置かないようにする。 ダンボール箱等での多段積みをさける。 液体のものは,バット等液だめのできる容器や砂箱などに入れて保管し,破損したときの液の流出を防ぐ。 液体のものや重いものは,床に近く低いところに置く。 発火性,爆発性,酸化性,有毒性,有害性,禁水性等薬品の特性別に区分して床に近く, 低いところに保管する。 ⑤その他 不要な薬品を整理したり,容器の破損書巻確認するために定期的に点検する。 薬品の発火性,爆発性,酸化性,有毒性等の特性を熟知し,その保管及び取扱いの方法を工夫すること。 破損による飛散,流出等に備えて,保管庫や実験室の入口に「砂」等を用意しておく。

毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 毒物劇物を貯蔵する …...第3 毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 毒物劇物を貯蔵するときは,毒物及び劇物取締法では第1で示したとおり,事業所の外に飛散,流出したり,地下にしみ込んだりすることのないように必要な安全対策を講じなければならない。

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Page 1: 毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 毒物劇物を貯蔵する …...第3 毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 毒物劇物を貯蔵するときは,毒物及び劇物取締法では第1で示したとおり,事業所の外に飛散,流出したり,地下にしみ込んだりすることのないように必要な安全対策を講じなければならない。

第3 毒物劇物の貯蔵に係る安全対策 毒物劇物を貯蔵するときは,毒物及び劇物取締法では第1で示したとおり,事業所の外に飛散,流出したり,地下にしみ込んだりすることのないように必要な安全対策を講じなければならない。 毒物劇物の貯蔵形態には,その取扱量に応じて次の2つに分類される。 ① 試験室や実験室における薬品瓶やボンベでの貯蔵 ② 工場等におけるタンクでの貯蔵 本指針では,上記の2つの貯蔵形態での安全対策について記載するが,各事業所においては本指針を参考に個々に適した安全対策を講じていただきたい。 なお,毒物劇物のうち,危険物または高圧ガスとして指定されているものについては,それぞれ消防法または高圧ガス保安法により安全対策を実施願いたい。 1 試験室等における安全対策 (1) 薬品瓶に対する安全対策 保管する薬品類の量は,常時点検を行い,不要なものは整理し,最少限のものとすることが当然である。 また,保管場所は,地震によって発生する人身事故や火災の発生を起こさないような適当な場所を選ぶことが必要である。 ①薬品庫・薬品棚の転倒防止 ア 保管庫の棚,実験台上の薬品棚を床,天井,壁にL字型金具等で固定する。 イ 棚に2段に積み重ねてあるものは,できるだけ1段とする。積み重ねる場合には,上下を強固に固定し,壁,天井などに固定する。 ②薬品庫,薬品棚からの薬品類の転倒・落下防止対策 ア 棚板は,固定すること。 イ 各段に「サン」「サク」「ナゲシ」「仕切り」等を設けること, ウ 戸棚の引き違い戸や観音開き戸は,容易にはずれたり,開かないように止め金をする。 エ 戸についているガラスは,網入りガラス又はアクリル板等の割れにくいものにする。既存のガラスには,合成樹脂フイルム等を張る。 ③容器の衝突・転倒防止策 ア 容器は,合成樹脂製のように,転倒落下しても容易に破損しないものを使用する。 イ ガラスびんは,網・布,紙・フイルム等で包み,破損を防止する。 ウ 仕切り板,仕切り網などで相互衝突や転倒を防ぐ。 ④保管方法 ア 保管及び取り扱う量は,極力少なくする。特に人が常時従事している実験室等では,必要最少限の量とし,余分を置かないようにする。 イ ダンボール箱等での多段積みをさける。 ウ 液体のものは,バット等液だめのできる容器や砂箱などに入れて保管し,破損したときの液の流出を防ぐ。 エ 液体のものや重いものは,床に近く低いところに置く。 オ 発火性,爆発性,酸化性,有毒性,有害性,禁水性等薬品の特性別に区分して床に近く, 低いところに保管する。 ⑤その他 ア 不要な薬品を整理したり,容器の破損書巻確認するために定期的に点検する。 イ 薬品の発火性,爆発性,酸化性,有毒性等の特性を熟知し,その保管及び取扱いの方法を工夫すること。 ウ 破損による飛散,流出等に備えて,保管庫や実験室の入口に「砂」等を用意しておく。

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エ 薬品は,単独あるいは混触により発火する危険があるので消火器を用意しておく。 オ 有毒性のものやガス化するものを保管又は取り扱う場合には,各々に合ったガスマスクを用意する。

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図1 薬品庫・薬品棚の転倒防止 ・棚の固定 ・棚板し固定 ①木具固定金具と木ネジで固定する方法 ②ヒモとヒートンで固定する方法

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図2 薬品庫からの薬品類の転倒・落下防止 丸ネジ使用 固定ネジ

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(2)高圧ガス類のボンベに対する安全対策 ① 保管場所の点検 高圧ガス類は,高圧ガス保安法による規制を受けているものが多いので,これに従って取扱い及び保管する必要がある。 高圧ガスは,噴出した場合に毒性や爆発性が高いので屋外に置くほうがよい。この場合においても万一の事故に備え付近住民の影響に留意する必要がある。 ② 容器の転倒防止対策 ア 不安定な台座の上に置かないようにする。コンクリ-トブロックでも,コンクリート等で固定しておかないと地震のときには横移動する。 イ 容器の固定は,横ゆれの他に上下も考慮する。 ウ 転倒防止のための固定具,鎖,ロープ等は,強度を十分考慮する。 エ カケガネは,頑丈ではずれにくいものを用いる。 オ 一本の鎖で,二本以上の容器を固定するときは,中間にフックを設ける。 ③ 配管,継手等の切断・漏ガス防止 ア 配管系の構造については,「高圧ガス配管に関する基準」(KHKS 0302-1978)を参考にして点検する。 イ 配管系には,地震により異常な力がかかるので,要所にフレキシブル継手を設けるなど柔軟性をもたせる。 ウ 高圧ガスの容器等供給源が試験室等から離れている場合には,試験室等の近くで操作できる位置に仕切り弁を設ける。 エ 容器に,地震時に自動的に緊急しゃ断できる弁を設ける。 オ 高圧ガスを使用しないときは,常に元栓をしめておく。 図3 高圧ガス類容器の転倒防止

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2 屋外タンクにおける安全対策 屋外タンクの安全対策には,タンク本体強度の対策はもとより,設置場所・基礎及び流出時の安全施設並びに日常の検査等総合的な対策を行わなければ万全とはいえない。 タンクの安全対策には,ハード面対策とソフト面対策があるが,ハード面対策として,設置場所・基礎・流出時の安全対策・配管・バルブ・ポンプ設備について,またソフト面対策として,日常点検・定期検査・精密検査について配慮する必要がある。次にそれらについて記載するので,今後のタンク施設・改造・補強等を行う場合及び既存タンクの日常の保守点検を実施するうえでの参考としていただきたい。 なお,タンク等を新設・改造・補強等をする場合には,これらのことを参考とされ,専門家と相談のうえ実施していただきたい。 (1)設置場所について 事故又は異常事態の発生に際して,当該事業所以外の場所に危害を及ぼすことのないよう,タ ンクは,毒物劇物の種類,性状,タンク容量等を考慮し,当該事業所内で敷地境界線から十分な 距離を保って,設置する必要がある。 (2)基礎について 屋外タンクの基礎は,堅固な地盤に施工しなければならない。また,支柱又はサドルをもつタ ンクの場合は,これらを同一基礎に固定し,地盤の強度は,主として貯蔵タンクの容量に応じて 配慮する必要がある。 (3)タンク本体について タンクの設計に際しては,応力,地耐力等とともに次のことを考慮し,高さ及び構造を定めることが必要である。 ① タンクは,必要な性能を有する材料で気密(不揮発性のものを除く)に造ること。 大気圧タンクにあっては,水張試験(水以外の適当な液休を張って行う試験を含む。以下同 じ。),低圧タンクにあっては,最大常用圧力の1.5倍の圧力で10分間行う耐圧試験にそれぞれ合格するともに,使用中に漏えい又は顕著な永久変形を来さないものであること。 ② タンクには,必要に応じ防食措置を講ずること。 特にタンクの底板を地盤面に接して設けるものにあってほ,底板の外面は内容物及びタンク の構造,設置場所に応じた防食措置を講ずること。 ③ タンクには,溢流又は過充てんを防止するため当該毒物又は劇物の量を覚知することができ る装置を設けること。(「過充てんを防止するための装置」は,通常液面計でよいが,内容物の毒性等を考慮し,必要に応じ警報器自動過充てん防止装置を設けること。) ④ 低圧タンクにあっては,最大常用圧力を超えた場合に直ちに最大常用圧力以下に戻すことが できる安全装置(安全弁,減圧弁又は水封(液封)安全器のうち適切なものを設けること。)を, 大気圧密閉タンクにあっては大気圧よりタンク内圧が著しく上下することを防止する通気管等 をそれぞれ設け,かつ各開口部は必要に応じ当該毒物劇物の除害装置内に導くこと。 (4)流出時の安全施設について 漏えいした毒物劇物を収容等する施設の構造及び保持容量は,当該毒物劇物の物性及び貯蔵量,タンクの材質,タンク周囲の状況等を考慮して適切なものとし当該毒物劇物が,貯蔵場所外へ流出等しないような措置を講じ,更に漏えいした毒物劇物が臭気を伴うガス又は煙を発生する場合には,流出物を処理できる装置(移動式ポンプ等)を併設する必要がある。

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(5)配管等について 配管等については,次の①~⑧の点に留意のうえ安全対策を実施する必要がある。 ① 配管,タンクとの結合部分及び管継手(以下「配管等」という。)は,当該毒物劇物に対して十分な耐食性を有する材料で造ること。 ② 配管等は最大常用圧1.5倍以上の圧力で耐圧試験を行ったとき,漏えいその他の異常がないものであること。 ③ 配管等は,移送される当該毒物劇物の重量,内圧,付属設備を含めた自重並びに振動,温度変化その他の影響に十分に耐え得る構造とすること。 ④ 配管の破壊にいたるような伸縮を生じる恐れのある箇所に,当該伸縮を吸収し得る措置を講ずること。 ⑤ 配管は,地震等により当該配管とタンクとの結合部分に損傷を与えないように設置すること。 ⑥ 配管を地上に設置する場合は,地盤面に接しないようにするとともに,かつその見やすい箇所に毒物劇物の名称その他必要な事項を記載した標識を設けること。 ⑦ 配管を地下に設置する場合は,必要に応じ保護管とするほか,配管の接合部分(溶接による接合部分を除く。)に当該毒物劇物の漏えいを点検することができる措置を講ずること。 なお,非金属性の配管を地下に設置する場合は,原則として鋼製の保護管を設け,配管の接合部分には,当該毒物劇物の漏えいを点検できる措置を講ずること。 ⑧ 配管等には,必要に応じ防食措置を講ずること。 (6)バルブ等について バルブ等については,次の①~⑤の点に留意のうえ安全対策を実施する必要がある。 ① バルブ及びコック(以下「バルブ等」という。)は,当該毒物劇物の毒性に応じた耐食性と強度を有する材料で造り,かつ毒物劇物が漏えいしないものであること。 ② バルブ等は,最大常用圧力の1.5倍以上の圧力で耐圧試験を行ったとき,漏えいその他の異常がないものであること。 ③ 高圧用及び振動・衝撃を受けるバルブ等にあっては原則として,鋳鉄製又は非金属製のものを用いてはならない。またハンドル回しを必要とするバルブ等にあっては,制限トルク以上にならないようなハンドル回しを備えること。 ④ 誤操作等により保安上重大な影響を与えるバルブ等にあっては,当該バルブ等の開閉方向 を明示し,かつ開閉状態が容易に識別できるような措置を構ずるとともに当該バルブ等に近接する配管に容易に識別できる方法で毒物劇物の名称及びその流れの方向を明示すること。 ⑤ ④に規定するバルブ等であって通常使用しないもの(緊急用のものを除く)にあっては,施錠,封印又はこれらに類する措置を講ずること。 (7)ポンプ設備について(液体の毒物劇物を送り出す設備) ポンプ設備については,次の加圧設備等①~③の点に留意のうえ安全対策を実施する必要がある。 ① 毒物劇物をタンク車,タンクローリー,船等に送り出しする貯蔵施設には,圧送ポンプ設備,ヘッドタンク又はその他の安全な加圧設備を設けること。 ② ポンプ設備は,原則として堅固な基礎又は架台の上に固定すること。 ③ ポンプ設備には,その直下の地盤面の周囲の高さ0.15m以上の囲い又は集液溝を設けるとともに,当該地盤面を当該毒物劇物が浸透しない材料で覆い,かつ適当な傾斜及びためますを設けること。

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(8)検査・点検について タンク貯蔵所(タンク・配管・バルブ・ポンプ設備等)の検査・点検は,毒物劇物の安全対策上最も重要な事項である。 従って,事業所は,タンク設置年次及びタンク容量に関係なく日常点検・定期点検及び精密検査を行い,漏えい・腐食・き裂等の異常を早期に発見し必要な措置を講ずることが,危害防止の上で重要なこととなる。 なお,参考までに各検査・点検項目等を例示したので,検査・点検を実施するうえでの参考と されたい。 ① 日常点検 タンク,配管,バルブ及びポンプ設備は漏えい,腐食,き裂等の異常を早期に発見するため,原則として1日に1回以上異常の有無を点検すること。 ② 定期検査 原則として,1年に1回以上点検表に基づいて,異常の有無を検査し,その結果を記録として3年間保存すること。 また,地震の発生した場合は,地震の規模に応じ,直ちに,定期検査に準じた検査を行うこと。 ③ 沈下状況の測定 タンクのうち,液体の毒物劇物を貯蔵する屋外に設置された盛土上の平底円筒形タンクに ついては,少なくとも年1回タンクの外側から,原則として水準儀その他の計測器を用いてその沈下状況を測定すること。 ④ 精密検査 下記のタンクについては,内部開放検査等の精密検査を行うこと。 イ 日常点検,定期検査により著しい腐食,き裂など重大な異常が認められたタンク。 ロ ③における沈下状況の結果,タンクの直径に対する不等沈下の数値の割合が,容量 1,000kl以上のものについては1/100以上,1,000kl未満のものについては1/50以上生じたタンク。 ハ 内容量が毒物にあっては1,000kl以上,劇物にあっては10,000kl以上の液体を貯蔵する屋外タンクで,前回精密検査の日から10年を経過したタンク。 ⑤ 送り出し又は受け入れに使用するホース(フレキシブルチューブを含む。)及びその接続 用具は,その日の使用を開始する前に検査すること。 ⑥ ライニングを施したタンク等のうち,ライニングが損傷するとタンク本体を著しく腐食する毒物又は劇物を貯蔵するものにあっては,少なくとも2年に1回ライニングの検査を行うこと。 検査箇所はタンク本体,ライニング全部,通気管,主配管及びその他付属配管(タンク出口よりバルブまで)とする。 ⑦ 安全弁は少なくとも年に1回検査を行うほか,特に腐食性のあるものの場合は6カ月に1回検査を行うこと。 ⑧ 異常が発見された場合は,直ちに必要な措置を講ずること。 ⑨ 修理の際は,予め,作業計画及び当該作業の責任者を定め,当該作業計画に従い,かつ当該作業責任者の監督の下に行うこと。 ⑩ 修理が完了したときは,その修復状態を確認した後に使用を開始すること。

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第4 毒物劇物の運搬に係る留意点 毒物劇物をタンクローリー等で運搬する際にも,法令または通知に基づく,以下に示すような規定があり,それぞれのチェック項目に留意しながら運搬業務にあたらなければならない。 該当する毒物劇物 チェック項目 四アルキル鉛を含有する製剤,無機シアン化合物たる毒物(液状),弗化水素,弗化水素を70%以上含有する製剤 政令で定める容器の基準に適合しているか。 (施行令第40条の2) 1 運搬容器 すべての毒物,劇物 (1)「液体状のものを車両を用いて運搬する固定容器の基準」に適合しているか。 (2)「液体状のものを車両を用いて運搬するタンクコンテナの基準」に適合しているか。 (3)「内容積450リットル以下の小型運搬容器の基準」に適合しているか。 (4)「フレキシブルコンテナの基準」に適合して いるか。 四アルキル鉛を含有する製剤 政令で定める規定に適合しているか。 (施行令第40条の3第1項) 2 運搬時の容器の使用方法とその表示 その他の毒物,劇物 (1)容器又は被包に収納され,かつ密閉されているか。 (2)1回につき,1,000kg以上運搬する場合は, 容器又は被包の外部に収納物の名称,成分の表示をしているか。 四アルキル鉛を含有する製剤,弗化水素及びこれを含有する製剤 政令で定める規定に適合しているか。 (施行令第40条の4第1項・2項) その他の毒物,劇物 (1)容器・被包が落下し,転倒し,破損することのないように積載しているか。 (2)容器,被包が積載装置の長さ・幅をこえないように積載しているか。 3 積載の態様 すべての毒物,劇物 運搬中に盗難にあい,紛失することを防ぐ措置を講じているか。 四アルキル鉛を含有する製剤 政令で定める規定に適合しているか。 (施行令第40条の5第1項) 4 運搬の方法 黄燐,四アルキル鉛を含有する製剤,無機シアン化合物たる毒物及びこれを含有する製剤(液状),弗化水素及びその製剤,アクリルニトリル,アクロレイン,アンモニア及びその製剤(液状),塩化水素及びその製剤(液状),1回につき,5,000kg以上を運搬する場合,次の基準に適合しているか。 (1)連続運転時間が,4時間を超える場合(1回が連続10分以上で,かつ,合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間)。 または,上記の運転時間が1日当たり9時間を超える場合。

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塩素,過酸化水素及びその製剤(液状),クロルスルホン酸,クロルピクリン,クロルメチル,硅弗化水素酸,ジメチル硫酸,臭素,硝酸及びその製剤(液状), 水酸化カリウム及びその製剤(液状),水酸化ナトリウム及びその製剤(液状),ニトロベンゼン,発煙硫酸,ホルムアルデヒド及びその製剤(液状),硫酸及びその製剤(液状) (2)車両の前後の見やすい位置に標識を掲げる。 (3)車両に防毒マスク,ゴム手袋等の規定の保護具を2人分以上備える。 (4)運搬する毒物劇物の名称,成分及びその含量並びに応急措置等の内容を記載した書面を備える。 (標識) すべての毒物,劇物 事故時の応急措置に必要なものを備えているか。 ロープ,「立入禁止」の札,手ぬぐい,むしろ, シート等 吸着剤(土砂,活性白土,おがくず,活性炭,タ ルク,けいそう土,石こう等) 化学処理剤(消石灰,水教化ナトリウム,アンモニア水,硫酸第1鉄) 消火剤 救急用水,救急用具(毛布,空気呼吸器等) 5 荷送人の義務 すべての毒物,劇物 運搬を他に委託する場合,1回につき1,000kgをこえて運搬する場合は,荷送人は運送人に次の内容を記載した書面を交付しているか。 ① 毒物劇物の名称,成分及びその含量並びに数量 ② 事故の際に講ずべき応急措置の内容 特に,製造業者等の荷送人から運搬を委託されるような場合には,運送人は,運搬途中での漏えい事故を想定し,荷送人から交付される書面により,当該毒物劇物に関する情報を必ず入手しておかなければならない。その際,緊急時の連絡先についても,荷送人に十分確認しておく必要がある。 今日では,社団法人日本化学工業協会の活動によって,「イエローカード」と称する相当の情報が記載された書面が活用されているようである。参考までに作成例を示す。 なお,毒物及び劇物取締法施行令第40条の5及び第40条の6に規定する事故の際に講ずべき応急措置等を記載した書面について,従来のイエローカードを使用する場合,成分,含量,数量等所要の事項を加える必要がある。(現在,法令事項を満足するよう,イエローカードの内容の見直しがなされている。) 毒 200mm以上 300mm以上 200mm以上 300mm以上

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(※イエローカード原本は黄色の用紙です。) 例 示 19 品名 塩 酸 該当法規対応・危険有害性 消防法 毒物及び劇物取締法 高圧ガス取締法 類別 第1類 第2類 第3類 第4類 第5類 第6類 性 質(法別表) 品 名(法別表) 毒 物 劇 物 特定毒物 一般高圧 ガス 液化石油 ガス ● 危険性 有害性 環境汚染性 性状 禁水性 爆発性 可燃性 有害ガス発生 目¥皮膚に触れると危険 河川への 流入注意 固 体 液 体 気 体 水溶性 特 性 ● ● ● ● ● 事故発生時の応急措置 ① 車を,安全な場所に移動する。(人家や人ごみを避け,できるだけ交通の障害にならないような場所に移動し,エンジンを停止し,車止めをする) ② 事故の発生を大声で告げ,下記事項を消防署及び警察署に通報し,人を風上に避難させる。③ 保護具を着用し,漏れ止め・回収を行う。 緊急通報 119(消 防 署) 110(警察署) 〔緊急通報例〕 1 いつ ○○時○○分頃 2 どこで ○○市○○地区(国・県・市)道○○号線 ○○付近で 3 なにが 「塩酸 (劇物)」が 4 どうした 漏れています 5 ケガ人は ケガ人がいます(救急車をお願いします) ケガ人はいません 6 私の名前は ○○運送会社 ○○です 緊急連絡(特に休日,夜間に確実に連絡が取れる部署の電話番号を記入する) 荷送会社 ○ ○ ○ ○ ○ 運送会社 ○ ○ ○ ○ ○ 住 所 ○ ○ ○ ○ ○ 住 所 ○ ○ ○ ○ ○ 電 話 平日¥昼間000-000-0000 休日¥夜間000-000-0000 電 話 平日¥昼間000-000-0000 休日¥夜間

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品名 塩 酸 災害拡大防止措置 漏洩したとき ① 有害ガス(塩化水素)が発生するので,必ず保護具を着用して風上で作業する。 ② 砂,吸着マット等に吸着させて取り除くか,密閉できる耐酸性製容器に回収する。 回収後,水で洗い流す場合は,水である程度希釈した後,消石灰,ソーダー灰等で中和し,多量の水で洗い流す。ただし,直接河川,用水路には流さない。 周辺火災のとき ① 容器を安全な場所へ移動する。 ② 移動不可能な場合は,容器及び周囲に散水する。 救急措置 ① 皮膚に付着した場合は,直ちに衣服や靴を脱がせて,多量の水で十分に洗い流す。 ② 吸入した場合は,直ちに新鮮な空気の場所に移し,安静・保温に保ち,呼吸困難な場合や呼吸が停止している場合は,人工呼吸を行う。 ③ 眼に入った場合は,直ちに多量の水で15分以上洗う。 ④ 患者が発生した場合は,最寄の病院へ運ぶ。 特記事項 ① 皮膚に触れると薬傷を起こす。 ② 眼に入ると失明する場合がある。

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第5 毒物劇物の取扱いに係る安全性情報について 1 取扱いに係る安全性情報の収集について 毒物劇物を取り扱うにあたって,その危害を未然に防止するためには,各事業所において管理・責任体制や作業手順等を盛り込んだ毒物劇物危害防止規定を作成し,関係者に周知徹底しておくことが重要である。 特に,作業手順や事故時の応急措置を検討する際には,事前に事業所で取り扱う毒物劇物の取扱いに係る安全性情報を十分収集しておく必要がある。 毒物劇物の取扱いに係る安全性情報については,厚生省薬務局長通知「毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準(の制定)について」の中の各品目ごとの情報が参考になる。 厚生省薬務局長通知 「毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準(の制定)について」 昭和52年2月14日付け 薬発第 163号 (その1) 昭和56年3月31日付け 薬発第 332号 (その2) 昭和60年4月 5日付け 薬発第 375号 (その3) 昭和62年9月12日付け 薬発第 784号 (その4) 平成3年3月6日付け 薬発第 257号 (その5) 平成4年12月7日付け 薬発第 1190号 (その6) 平成6年3月14日付け 薬発第 230号 (その7) 平成7年3月16日付け 薬発第 248号 (その8) 平成8年3月15日付け 薬発第 250号 (その9) また,近年,毒物劇物をはじめとする化学物質の安全性情報については,化学製品の製造業者が作成している「化学物質安全性データシート」または「製品安全データシート」(MSDS;Material safety data sheet)が利用されている。 これは,平成5年3月に厚生省及び通商産業省により示された「化学物質の安全性に係る情報提供に関する指針」に基づき,化学製品の製造業者等がその取扱事業所に対して交付するものとされたものである。 業務上取扱者は,取り扱おうとする毒物劇物を購入する際に,製造業者または販売業者を通じて当該毒物劇物のMSDSを入手し,作業手順に加えておけば役立つものと思われる。

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2 県内で主に取り扱われている毒物劇物の取扱いに係る安全性情報について 本指針では,厚生省薬務局長通知「毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準(の制定)について」の品目ごとの情報の中から,県内で主に使用及び保管されている以下の毒物劇物の情報を掲載する。 (1)アンモニア水(劇)························································P35 (2)塩 酸(劇)······························································P36 (3)液化塩素(劇)································································P37 (4)過酸化水素水(劇)························································P38 (5)キシレン(劇)······························································P39 (6)硝 酸(劇)······························································P40 (7)水酸化ナトリウム水溶液(劇)·········································P41 (8)水酸化カリウム水溶液(劇)············································P42 (9)トルエン(劇)······························································P43 (10)二硫化炭素(劇)·························································P44 (11)ホルムアルデヒド水溶液(劇)········································P45 (12)メタノール(劇)·························································P46 (13)硫 酸(劇)·························································P47 (14)硫酸第二銅(劇)·························································P48 (15)硫酸亜鉛(劇)····························································P49 (注1)アンモニア水については,アンモニア10%以下を含有するものを除く。 (注2)塩酸については,塩化水素10%以下を含有するものを除く。 (注3)過酸化水素水については,過酸化水素6%以下を含有するものを除く。 (注4)キシレン,トルエン,メタノールについては原体のみである。 (注5)硝酸については,硝酸10%以下を含有するものを除く。 (注6)水酸化ナトリウム水溶液については,水酸化ナトリウム5%以下を含有するものを除く。 (注7)水酸化カリウム水溶液については,水酸化カリウム5%以下を含有するものを除く。 (注8)ホルムアルデヒド水溶液については,ホルムアルデヒド1%以下を含有するものを除く。 (注9)硫酸については,硫酸10%以下を含有するものを除く。 併せて,実際に毒物劇物製造業者から情報提供されている「製品安全データシート」(塩酸)を例示する。(P50~52)

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ア ン モ ニ ア 水 別名: NH3aq 劇物(アンモニアを含有する製剤。10%を超えるもの) (性状)無色の液体で息詰まるような刺激臭がある。アルカリ性である。水と混和する。 漏 え い 時 風下の人を避難させる。必要があれば水で濡らした手ぬぐい等で口及び鼻を覆う。漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業をしない。 (少量)漏えい箇所は濡れむしろ等で覆い遠くから多量の水をかけて洗い流す。 (多量)漏えいした液は土砂等でその流れを止め,安全な場所に導いて遠くから多量の水をかけて洗い流す。 この場合,濃厚な排液が河川等に排出されないよう注意する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - (消火剤) - 人体に対する影響 (吸入した場合)激しく鼻やのどを刺激し,長時間吸入すると肺や気管支に炎症を起こす。高濃度のガスを吸うと喉頭けいれんを起こすので極めて危険である。 (皮膚に触れた場合)やけど(薬傷)を起こす。 (眼に入った場合)結膜や角膜に炎症を起こし,失明する危険性が高い。 暴 露 ・ 接 触 時 救 急 方 法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ,新鮮な空気の場所に移し速やかに医師の手当てを受ける。呼吸が停止している時は直ちに人工呼吸を行う。呼吸困難のときは酸素吸入を行う。 (眼や皮膚に付着した場合)直ちに付着又は接触部を多量の水で15分間以上洗い流す。汚染された衣服やくつは速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 アンモニア水は温度の上昇により空気より軽いアンモニアガスを発生する。 措 置 保護具 保護手袋(ゴム),保護長ぐつ(ゴム),保護衣,保護眼鏡, アンモニア用防毒マスク

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塩 酸 別名: HC aq 劇物(塩化水素を含有する製剤。10%を超えるもの) (性状)不燃性の無色透明又は淡黄色の液体で,25%以上の濃度のものは発煙性を有する。 激しい激臭がある。腐食性が強い。強酸性である。 漏 え い 時 風下の人を避難させる。必要があれば水で濡らした手ぬぐい等で口及び鼻を覆う。漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業をしない。 (少量)漏えいした液は土砂等に吸着させて取り除くか,又はある程度水で徐々に希釈した後,消石灰,ソーダ灰等で中和し,多量の水を用いて洗い流す。 (多量)漏えいした液は土砂等でその流れを止め,これに吸着させるか,又は安全な場所に導いて遠くから徐々に注水してある程度希釈した後,消石灰,ソーダ灰等で中和し多量の水を用いて洗い流す。発生するガスは霧状の水をかけ吸収させる。 この場合,濃厚な排液が河川等に排出されないよう注意する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - (消火剤) - 人体に対する影響 (吸入した場合)のど,気管支,肺などを刺激し粘膜が侵される。 (皮膚に触れた場合)やけど(薬傷)を起こす。 (眼に入った場合)粘膜が刺激され,失明することがある。 暴 露 ・ 接 触 時 救 急 方 法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ,新鮮な空気の場所に移し速やかに医師の手当てを受ける。 (皮膚に付着した場合)直ちに付着又は接触部を多量の水で十分に洗い流す。汚染された衣服やくつは速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。 (眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流し,速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 (1)大部分の金属,コンクリート等を腐食する。 (2)塩酸は揮発性でも引火性でもないが,各種の金属を腐食して水素ガスを発生し, これが空気と混合して引火爆発することがある。 (3)直接中和剤を散布すると発熱し,酸が飛散することがある。 措 置 保護具 保護手袋(ゴム),保護長ぐつ(ゴム),保護衣,保護眼鏡,酸性ガス用防毒マスク

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液 化 塩 素 別名:液塩 C 2 劇物(塩素) (性状)橙黄色の液体で大気中に放出されると直ちに気化して黄緑色の空気より重い(2.5倍)塩素ガスになる。 激しい刺激臭がある。水にわずかに溶ける(0℃で水100gに1.4g溶ける)。 漏 え い 時 風下の人を退避させる。必要があれば水で濡らした手ぬぐい等で口及び鼻を覆う。漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業をしない。 (少量) 漏えい箇所や漏えいした液には消石灰を十分に散布して吸収させる。 (多量) 漏えい箇所や漏えいした液には消石灰を十分に散布しムシロ、シート等をかぶせ、その上に更に消石灰を散布して吸収させる。漏えい容器には散布しない。多量にガスが噴出した場所には遠くから霧状の水をかけて吸収させる。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - (消火剤) - 人体に対する影響 (吸入した場合) 鼻、気管支などの粘膜が激しく刺激され、多量吸入したときは、かつ血、胸の痛み、呼吸困難、皮膚や粘膜が青黒くなる(チアノーゼ)などを起こす。 (皮膚に触れた場合) ガスは皮膚を激しく侵し、直接液に触れるとしもやけ(凍傷)を起こす。 (眼に入った場合) 粘膜などが激しく刺激され炎症を起こす。 暴 露 ・ 接 触 時 救 急 方 法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ、新鮮な空気の場所に移し速やかに医師の手当てを受ける。呼吸が停止している時は人工呼吸を行う。呼吸困難のときは酸素吸入を行う。 (皮膚に触れた場合)直ちに付着又は接触部を多量の水で十分に洗い流す。汚染された衣服やくつは速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。 (眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流し速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 (1)塩素は支燃性を有し、鉄、アルミニウムなどの燃焼を助ける。 (2)塩素は極めて反応性が強く、水素又は炭化水素(特にアセチレン)と爆発的に反応する。 (3)水分の存在下では、各種の金属を腐食する。 措 置 保護具 保護手袋、保護長ぐつ、保護衣、保護眼鏡、ハロゲン用防毒マスク又は空気呼吸器

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過酸化水素水 別名: H202aq 劇物(過酸化水素を含有する製剤。6%を超えるもの) (性状)無色透明の液体で弱い特有のにおいがある。酸化性がある。 水と任意の割合で混和する。市販品は,35W/W%及び60W/W%のものが多い。 漏 え い 時 漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業をしない。 (少量)漏えいした液は多量の水を用い十分に希釈して洗い流す。 (多量)漏えいした液は土砂等でその流れを止め,安全な場所に導き多量の水を用いて十分に希釈して洗い流す。 この場合,濃厚な排液が河川等に排出されないよう注意する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - (消火剤) - 人体に対する影響 通常症状は時間をおいて現われる。 (皮膚に触れた場合)やけど(腐食性薬傷)を起こす。 (眼に入った場合)角膜が侵され,場合によっては失明することがある。 暴 露 ・ 接 触 時 救急方法 (皮膚に触れた場合)直ちに付着又は接触部を多量の水で十分に洗い流す。汚染された衣服やくつは速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。 (眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流し,速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 (1)過酸化水素水それ自体は不燃性であるが,分解が起こると激しく酸素が発生し,周囲に易燃物があると火災になる恐れがある。高濃度(74W/W%以上)のものは自己分解により爆発の可能性がある。 (2)製品には安定剤が加えてあるが,有機物,金属塩(鉄塩,銅塩など),じんあい等の混入により分解が促進されるので漏えい液は多量の水を用いて十分希釈する。 (3)液の付着した衣類等は速やかに水で十分に洗う。 措 置 保護具 保護手袋,保護長ぐつ,保護衣,保護眼鏡

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キ シ レ ン 別名:キシロール C6H4(CH3)2 劇物(キシレン) (性状)無色透明の液体で芳香がある。蒸気は空気より重く引火しやすい o- m- p- 引 火 点 32℃ 27℃ 27℃ 揮発範囲 1.0~6.0% 1.1~7.0% 1.1~7.0% 沸 点 144.41℃ 139.10℃ 138.35℃ 比 重 (d204)0.880 (d204)0.864 (d204)0.861 凝 固 点 -25.18℃ -47.89℃ 13.26℃ 水にほとんど溶けない。一般には混合キシレンが多い。 漏 え い 時 風下の人を避難させる。漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。付近の着火源となるものを速やかに取り除く。作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業をしない。 (少量)漏えいした液は,土砂等に吸着させて空容器に回収する。 (多量)漏えいした液は,土砂等でその流れを止め,安全な場所に導き,液の表面を泡でおおいできるだけ空容器に回収する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合)初期の火災には,粉末,二酸化炭素,乾燥砂等を用いる。大規模火災の際には,泡消火剤等を用いて空気を遮断することが有効である。爆発のおそれがあるときは付近の住民を退避させる。消火作業の際には必ず保護具を着用する。 (消火剤)粉末,二酸化炭素,乾燥砂,泡 人体への影響 (吸入した場合)はじめに短時間の興奮期を経て,深い麻酔状態に陥ることがある。 (皮膚に触れた場合)皮膚を刺激し,皮膚からも吸収され,吸入した場合と同様の中毒症状を起こすことがある。 (眼に入った場合)粘膜を刺激して炎症を起こす。 暴 露 ・ 接 触 時 救急方法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ,新鮮な空気の場所に移す。呼吸困難又は呼吸が停止しているときは直ちに人工呼吸を行う。 (皮膚に触れた場合)直ちに汚染された衣服やくつを脱がせる。直ちに付着又は接触部を石けん水又は多量の水で十分に洗い流す。 (眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流す。 注意事項 (1)引火しやすく,また,その蒸気は空気と混合して爆発性混合ガスとなるので火気は絶対に近づけない。 (2)静電気に対する対策は十分考慮する。 (3)パラキシレンの凝固点は13.26℃なので,冬期には固結することがある。 措 保護具 保護眼鏡,保護手袋,保護長ぐつ,保護衣,有機ガス用防毒マスク

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硝 酸 別名: HNO3 劇物(硝酸及びこれを含有する製剤。10%を超えるもの) (性状)無色又は淡黄色の液体で息詰まるような刺激臭がある。不燃性であるが,高濃度のものが有機物に接触すると自然発火することがある。高濃度のものは空気中で発煙する。水とよく混和するが,その際発熱する。 比重(d154)1.50以上(98W/W%),1.38以上(62W/W%),1.31以上(50W/W%) 漏 え い 時 風下の人を避難させる。必要があれば水で濡らした手ぬぐい等で口及び鼻を覆う。漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。作業の際には必ず保護具を着用する。風下で作業をしない。 (少量)漏えいした液は土砂等に吸着させて取り除くか,又はある程度水で徐々に希釈した後,消石灰,ソーダ灰等で中和し,多量の水を用いて洗い流す。 (多量)漏えいした液は土砂等でその流れを止め,これに吸着させるか,又は安全な場所に導いて遠くから徐々に注水してある程度希釈した後,消石灰,ソーダ灰等で中和し多量の水を用いて洗い流す。この場合,濃厚な排液が河川等に排出されないよう注意する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - 有機物等に接触して発火した場合は,水,泡又は炭酸ガス等の消火剤を用いて消火する。火に包まれると有害な窒素酸化物のガス(NO2)を発生するので消火作業には必ず保護具を着用する。 (消火剤) - 人体への影響 (吸入した場合)のど,気管支が侵される。濃厚なガスの場合は24~48時間後に肺水腫を起こすことがある。 (皮膚に触れた場合)重症のやけど(薬傷)を起こす。 (眼に入った場合)粘膜を激しく刺激し失明することがある。 暴 露 ・ 接 触 時 救 急 方 法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ,新鮮な空気の場所に移し速やかに医師の手当てを受ける。呼吸が停止しているときは直ち に人工呼吸を行い,呼吸困難なときは酸素吸入を行う。ただしNO2による症状発現は遅いので一見無症状を呈するようであっても一昼夜安静にさせる。 (皮膚に付着した場合)直ちに付着又は接触部を多量の水又は石鹼水で十分に洗い流す。汚染された衣服や靴は速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。(眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流し,速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 (1)可燃物,有機物と接触させない。 (2)高濃度の場合,水と急激に接触すると多量の熟を発生し酸が飛散することがある。 (3)直接中和剤を散布すると発熱し,酸が飛散することがある。 (4)それ自体NO2を含有し,また可燃物,有機物と接触するとNO2を発生するので注意する。 措 置 保護具 保護手袋(ゴム),保護長ぐつ(ゴム),保護前掛(ゴム),保護眼鏡,酸性ガス用防毒マスク

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水酸化ナトリウム水溶液 別名:か性ソーダ水溶液 NaOHaq 劇物(水酸化ナトリウムを含有する製剤。5%を超えるもの) (性状)無色又は灰色の液体でにおいはない。濃度,温度により固化することがある。 強アルカリ性で腐食性が強い。不燃性。 漏 え い 時 極めて腐食性が強いので,作業の際には必ず保護具を着用する。必要があれば漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。 (少量)漏えいした液は多量の水を用いて十分に希釈して洗い流す。 (多量)漏えいした液は土砂等でその流れを止め,これに吸着させるか,又は安全な場所に導いて多量の水を用いて洗い流す。必要があれば更に中和し,多量の水を用いて洗い流す。この場合,濃厚な排液が河川等に排出されないよう注意する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - (消火剤) - 人体への影響 (吸入した場合)微粒子やミストを吸入すると鼻,のど,気管支,肺を刺激する。 (皮膚に触れた場合)皮膚が激しく腐食される。 (眼に入った場合)結膜や角膜が激しく侵され,失明する危険性が高い。 暴 露 ・ 接 触 時 救 急 方 法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ,新鮮な空気の場所に移し,できれば酸素吸入を行う。速やかに医師の手当てを受ける。 (皮膚に付着した場合)直ちに付着又は接触部を多量の水で十分に洗い流す。汚染された衣服やくつは速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。 (眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流し,速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 か性ソーダ水溶液は爆発性でも引火性でもないが,アルミニウム,すず,亜鉛などの金属を腐食して水素ガスを発生し,これが空気と混合して引火爆発することがある。 措 置 保護具 保護手袋,保護長ぐつ,保護衣,保護眼鏡

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水酸化カリウム水溶液 別名:か性カリ水溶液 KOHaq 劇物(水酸化カリウムを含有する製剤。5%を超えるもの) (性状)無色又は灰色の液体でにおいはない。濃度、温度により固化することがある。 強アルカリ性で腐食性が強い。不燃性。 漏 え い 時 極めて腐食性が強いので、作業の際には必ず保護具を着用する。必要があれば漏えいした場所の周辺にはロープを張るなどして人の立入りを禁止する。 (少量)漏えいした液は多量の水を用いて十分に希釈して洗い流す。 (多量)漏えいした液は土砂等でその流れを止め、土砂等に吸着させるか、又は 安全な場所に導いて多量の水をかけて洗い流す。必要があれば更に中和し、多量の水を用いて洗い流す。 この場合、濃厚な廃液が河川等に排出されないよう注意する。 出 火 時 (周辺火災の場合)速やかに容器を安全な場所に移す。移動不可能の場合は,容器及び周囲に散水して冷却する。 (着火した場合) - (消火剤) - 人体への影響 (吸入した場合)微粒子やミストを吸入すると鼻,のど,気管支,肺を刺激する。 (皮膚に触れた場合)皮膚が激しく腐食される。 (眼に入った場合)結膜や角膜が激しく侵され,失明する危険性が高い。 暴 露 ・ 接 触 時 救 急 方 法 (吸入した場合)直ちに患者を毛布等にくるんで安静にさせ,新鮮な空気の場所に移し,できれば酸素吸入を行う。速やかに医師の手当てを受ける。 (皮膚に付着した場合)直ちに付着又は接触部を多量の水で十分に洗い流す。汚染された衣服やくつは速やかに脱がせる。速やかに医師の手当てを受ける。 (眼に入った場合)直ちに多量の水で15分間以上洗い流し,速やかに医師の手当てを受ける。 注意事項 か性カリ水溶液は爆発性でも引火性でもないが,アルミニウム,すず,亜鉛などの金属を腐食して水素ガスを発生し,これが空気と混合して引火爆発することがある。 措 置 保護具 保護手袋,保護長ぐつ,保護衣,保護眼鏡