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氷結晶制御物質の機能解析とその素材応用

関西大学 化学生命工学部

生命・生物工学科

准教授 河原秀久

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研究背景

多くの産業において、冷凍現象を利用した技術が利用されている。

その冷凍時において氷は様々な変化を引き起こしている。

氷結晶の大きさ拡大（再結晶化）

昇華現象

過冷却点の変化

冷凍食品の劣化

細胞保存性の低下

着霜の防止

氷スラリーの品質

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氷結晶制御物質の作用

未変性変性

水

氷核

氷核

タンパク質 促進

異物阻害

抗氷核

タンパク質・多糖

氷微小な 未凍結

状態

氷細胞内外成長阻害

形態変化再結晶化抑制

阻害不凍

タンパク質

細胞内

タンパク質細胞内

昇華

阻害

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不凍タンパク質とは

南極ノトセニア

Pleugramma antarcticumComp. Biochem. Physiol. B., 76, 545-548 (1983)Comp. Biochem. Physiol. C, 111, 121-129 (1995)

不凍糖タンパク質発見。

20 mg/mlタンパク質で、-1.9℃凍結点

海水温度の凍結点より体液の

凍結温度を低下させる

不凍糖タンパク質

（Antifreeze glycoprotein)存在する生物種

魚類、植物、甲虫の幼虫、昆虫、キノコ、カビ、地衣類、酵母、細菌

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魚由来不凍タンパク質(AFP)と不凍糖タンパク質(AFGP)

Characteristic AFGP TypeⅠAFP TypeⅡAFP TypeⅢAFP TypeⅣAFP

Mass (Da) Key Properties

RepresentativeStructure

Natural Source

2600-33000 3300-4500 11000-24000 6500 12000AAT repeat Disaccharide

Alanine-rich α-helix Disulfide bonded β-sandwich Alanine rich

herical bundle

Antarctic-nototheniods

Right-eyed, flouders

Sea raven, Smelt, herring

Ocean pout,Wolfish, eel pout

Longhorn,sculpin

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存在が明らかにされている植物

アブラナ科 イネ科ガーリックマスタード

フユガラシ

菜の花

芽キャベツ・キャベツ

カラス麦四条大麦

スズメノカタビラ

ナガハグサ

冬ライ麦

冬小麦

ライ小麦

セリ科ニンジン

ケシ科コマクサ属

キク科シオン属

トウダイグサ科ハツユキソウ

ユリ科ヤブカンゾウ

ヤナギ科コントンウッド

オオバコ科ハラオオバコ

ナス科

ブナ科ホワイトオーク

ナデシコ科ハコベ

キョウチクトウ科ヒメツルニチニチソウ

オニオオバコ

ズルカマラ

ジャガイモ

セイヨウタンポポ

スミレ科スミレ

モクセイ科レンギョウ

ホソムギ

構造として明らかに

なっているタイプ

キチナーゼタイプ

β-1,3-グルカナーゼタイプソーマチン様タンパク質タイプ

（活性化因子）ポリガラクチュロナーゼインヒビタータイプ

植物由来不凍タンパク質の存在と構造

コスズメノチャヒキ

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cooling

1℃/ min

水

氷結晶の形態と

熱ヒステレシス値(TH ℃)

0 min 30 min

buffer

AFP溶液

氷の再結晶化抑制

Aタイプ

Bタイプ

不凍タンパク質の活性

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不凍タンパク質アッセイに用いる

顕微鏡システム

温度制御装置；リンカム社製 位相差顕微鏡；オリンパス社製

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基盤面

プリズム面

a-軸

c-軸

不凍タンパク質

不凍タンパク質

a-軸

a-軸

不凍タンパク質の氷結晶への結合状態

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不凍タンパク質の応用の可能性

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不凍タンパク質の機能とその応用

機能 期待できる応用

氷結晶の形態制御

氷結晶の再結晶化抑制

凍結温度の低下

低温下での膜の安定化

ドリップの減少、冷菓の食感、細胞・食品などの冷凍保存

食材・冷凍食品の高品質保存

細胞の長期保存

霜発生阻害効果

細胞などのチルド状態での保存

食品などのチルド状態での保存

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従来技術とその問題点

既に実用化されているものには、トレハロースなどの添加による方法等があるが、

添加量は多い

添加量によって、食品においては使用できないものもある

着霜防止などの効果は期待できない

等の問題があり、利用されるまでには至っていない。

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使用が期待させれる商品

澱粉製品、餃子、中華まん、フリーズドライ用食品、かまぼこ、中華ポテト、魚卵（数の子）、釜揚げチリメンジャコ、ハム、和菓子（餅、団子類、餡）、漬物、野菜、豆乳、湯葉、にこごり、ゆで卵、パン、アイスクリーム、じゃがいも、柚子皮、大根、液体調味料、生麩、米飯、豆腐、ゼリー、ソーセージ、アボガド、畜肉食品、ドレッシング、寒天、血液、血清、血小版など

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・酵素修飾ゼラチン(EMG-12)(Watanabe.M.et.al, Agric.Biol.Chem., 52, .201-206,1998)・オイゲノール(H.Kawahara.et.al, Biosci.Biotechnol.Biochem., 64, 2651-2656,2000)・ヒノキチオール(H.Kawaharaet.al, J.Antibact.Antifung.Agents., 24, 95-100,1996)・抗氷核タンパク質（H.Kawahara et al., Biocontrol Sci., 1, 11-17、1996）

・抗氷核多糖（Y. Yamashita et al., Biosci.Biotechnol.Biochem., 66, 948-954, 2002)・ポリフェノール多糖（J. Kasuga et al., Plant Cell Environ., 31, 1335-1348, 2008)

生物学的処理 ・氷核活性欠損株の競合的阻害

霜害防除剤(抗氷核剤)

化学的処理

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抗氷核活性値⊿T50(℃)＝Blank T50 － Sample T50

抗氷核活性測定法(Valiらの微小滴凍結法)

0℃温

度

時間： AgI ： AgI + 阻害物質

抗氷核活性値

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抗氷核物質を含む食品廃棄物の探索

1.2

0.5

0.8

1.4

方法

サンプル 100 μl

140 rpm 20 min

抗氷核活性測定

ヨウ化銀 1 ml(1 mg/ml)

0.5

抗氷核活性値(℃)

カカオハカス

あん粕

ワイン粕

そば粕

コーングルテン

食品廃棄物

＊各サンプル濃度：1 mg/ml

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あん粕抽出条件と濃度変化による阻害効果

あん粕抽出サンプル

あん粕(1 g)

凍結乾燥

煮沸抽出(0.5 h)

蒸留水(5 ml)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

乾燥重量濃度(mg/ml)抗

氷核

活性

値(℃

)

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各種阻害剤の阻害特性

ヨウ化銀

Cercidiphyllum japonicum(Kaempferol-7’-glucoside)

130-kDa polysaccharide(Bacillus thuringiensis YY529)

あん粕(分子量3,500以下)

添加濃度抗氷核活性値(℃)

氷核活性細菌阻害剤

オイゲノール

ヒノキチオール

1 mg/ml

10 mM

1 mg/ml

50 μg/ml

1 ｍｇ/ml

NT

0.0

NT

4.2

1.0

9.0(Erwinia ananas)

0.3(Pseudomonas fluorescens KUIN-1)

0.0(Pseudomonas fluorescens KUIN-1)

2.1(Pseudomonas fluorescens KUIN-1)

1.9(Erwinia uredovora KUIN-3)

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あん粕熱水抽出液の用途について

霜害防除剤 霜付着阻害剤

環境分野

食品分野

冷凍食品品質保持剤

医療分野

細胞保存液 臓器保存液

マウス肝臓臓器保存

-4℃、24時間

未凍結保存可能

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想定される業界

不凍タンパク質

• 想定されるユーザー食品加工会社（冷凍食品、チルド食品）

農水産物の輸入会社

医薬品会社（細胞保存液）

抗氷核活性物質

• 想定されるユーザー医薬品会社（臓器保存液）

蓄冷システム開発会社

冷凍機製造会社

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実用化に向けた課題

• 現在、不凍タンパク質（一部）について製造が可能なところまで開発済み。しかし、その利用した製品の検討する段階になっている。

• 今後、加工食品などへの添加量について実験データを取得し、応用性に適用していく場合の条件設定を行っていく。

• 実用化に向けて、生産性を向上できるよう技術を確立する必要もあり。

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企業への期待

• 未解決の製造については、生産性の改良技術により克服できると考えている。

• スプラウト製造および発酵の技術を持つ、企業との共同研究を希望（不凍タンパク質）。

• また、冷凍食品を開発中の企業、冷凍機分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる（抗氷核活性剤）。

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本技術に関する知的財産権• 発明の名称 ：地衣類からの氷結晶制御物質の製造方法

• 出願番号 ：特願２００５－４０７９２

• 出願人 ：関西大学

• 発明者 ：河原秀久、小幡 斉

• 発明の名称 ：冬野菜スプラウトからの機能性抽出物の製造およびその

• 用途

• 出願番号 ：特願２００５－３７２５１３

• 出願人 ：関西大学

• 発明者 ：河原秀久、小幡 斉

• 発明の名称 ：餡粕抽出エキスの抗氷核活性剤

• 出願番号 ：特願2008-296523

• 出願人 ：関西大学

• 発明者 ：河原秀久、小幡 斉

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お問い合わせ先

関西大学 産学官連携センター

産学官連携コーディネーター 田中久仁雄

ＴＥＬ ０６－６３６８－１２４５

ＦＡＸ ０６－６３６８－１２４７

e-mail ktanaka@jm.kansai-u.ac.jp