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微生物農薬の効果的な処理方法の 検討とIPM普及に携わって 宮城県農業・園芸総合研究所 宮田將秀

微生物農薬の効果的な処理方法の 検討とIPM普及に携わって...微生物農薬の効果的な処理方法の 検討とIPM普及に携わって 宮城県農業・園芸総合研究所宮田將秀

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  • 微生物農薬の効果的な処理方法の検討とIPM普及に携わって

    宮城県農業・園芸総合研究所 宮田將秀

  • 菌 種 商 品 名 対象害虫 対象作物

    ボーベリア・ブロンニアティ

    バイオリサ・カミキリ カミキリムシ類など 果樹類など

    パスツーリア・ペネトランス

    パストリア水和剤 ネコブセンチュウ 野菜類など

    バーティシリウム・レカニ

    バータレック アブラムシ類 野菜類

    マイコタール コナジラミ類 野菜類

    ミカンキイロアザミウマ きく、トルコギキョウ

    ペキロマイセス・フモソロセウス

    プリファード水和剤 コナジラミ類、ワタアブラムシ

    野菜類

    ボーベリア・バッシアナ

    ボタニガードES コナジラミ類、アザミウマ類、コナガなど

    野菜類など

    ペキロマイセス・テヌイペス

    ゴッツA コナジラミ類、アブラムシ類

    野菜類

    微生物農薬の登録状況

    2011年10月、BT剤除く

  • 0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    45

    50 オンシツコナジラミ死亡幼虫数

    (頭/葉)

    オンシツコナジラミ幼虫数(頭/葉)

    死亡虫(B)死亡虫(無処理)

    B×500無処理

    ↓ ↓ ↓

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    20オンシツコナジラミ死亡幼虫数

    (頭/

    葉)

    オンシツコナジラミ幼虫数(頭/

    葉)

    死亡虫(P)死亡虫(ピメトロジン)P×1000ピメトロジン無処理

    ↓ ↓ ↓ 0

    5

    10

    15

    20

    25

    30オンシツコナジラミ幼虫数

    (

    /葉)

    P×500 P×1000 ピメトロジン 無処理

    イチゴのオンシツコナジラミに対するボーベリア・バッシアナ菌製剤の防除効果(2002年)

    イチゴのオンシツコナジラミに対するペキロマイセス・フモソロセウス菌製剤の防除効果(2003年)

    イチゴのオンシツコナジラミに対するペキロマイセス・テヌイペス菌製剤の防除効果(2005年)

    1.微生物農薬の防除試験事例

  • 0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    10/6 10/14 10/21 10/28 11/4 11/11

    イチゴケナガアブラムシ数

    (

    頭/葉)

    V.

    無処理

    ↓ ↓ ↓

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    5月25日 6月1日 6月8日 6月15日 6月22日

    イチゴケナガアブラムシ数

    (

    頭/複)

    P. ×500

    P. ×1000

    無処理

    V. ×1000

    ↓ ↓ ↓

    イチゴのイチゴケナガアブラムシに対するバーティシリウム・レカニ菌製剤の防除効果(2005年)

    イチゴのイチゴケナガアブラムシに対するペキロマイセス・テヌイペス菌およびバーティシリウム・レカニ菌各製剤の防除効果(2007年)

  • 0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100アザミウマ類成幼虫数(頭/1

    0

    花)

    B.

    フルフェノクスロン

    無処理区

    ↓↓

    0

    100

    200

    300ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(

    頭/株)

    M.

    B.

    V.

    無散布

    ↓             ↓   ↓   ↓

    イチゴのアザミウマ類に対するボーベリア・バッシアナ菌製剤の防除効果(2002年)

    ナスのミカンキイロアザミウマに対するボーベリア・バッシアナ菌、バーティシリウム・レカニ菌およびメタリジウム・アニソプリエ菌各製剤の防除効果(2008年)

  • 0

    5

    10

    15

    20

    25

    散布1日前 散布6日後 散布12日後

    アザミウマ類成幼虫数(

    頭/葉)

    ボーベリア・バッシアナ×1000 フルフェノクスロン×6000

    ボーベリア+フルフェノクスロン 無散布

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    散布1日前 散布6日後 散布12日後

    アザミウマ類成幼虫数(

    頭/葉)

    ボーベリア・バッシアナ×1000 エマメクチン安息香酸塩×2000

    ボーベリア+エマメクチン 無散布

    ナスのアザミウマ類に対するボーベリア・バッシアナ菌製剤と殺虫剤の混用による防除効果(2009)

    2.微生物農薬の防除効果向上の試み(薬剤との混用)

    ねらい:微生物農薬に薬剤を混用した場合の防除効果を評価する。

  • 012345678910

    ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(

    頭/葉)

    バーティシリウム・レカニ×1000 デンプン×100 バーティシリウム+デンプン 無散布

    012345678910

    ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(

    頭/葉)

    バーティシリウム・レカニ×1000 還元澱粉糖化物×100

    バーティシリウム+還元澱粉 無散布

    0123456789

    10ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(

    頭/葉)

    バーティシリウム・レカニ×1000 オレイン酸ナトリウム×100

    バーティシリウム+オレイン酸 無散布

    0123456789

    10ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(頭/葉)

    バーティシリウム・レカニ×1000 脂肪酸グリセリド バーティシリウム+脂肪酸 無散布

    ナスのミカンキイロアザミウマに対するバーティシリウム・レカニ菌製剤と気門封鎖型薬剤の混用による防除効果(2009)

  • 0123456789

    10ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(

    頭/葉)

    バーティシリウム・レカニ×1000 プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル×1000

    バーティシリウム+プロピレン 無散布

    0

    2

    4

    6

    8

    10ミカンキイロアザミウマ

    成幼虫数(

    頭/葉)

    バーティシリウム・レカニ×1000

    ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル×1000

    バーティシリウム+ポリオキシ

    無散布

    ナスのミカンキイロアザミウマに対するバーティシリウム・レカニ菌製剤と気門封鎖型薬剤の混用による防除効果(続き、2009)

  • 促成栽培イチゴでのIPMの取り組みH12~14年:現地圃場でハダニに対してチリカブリダニを導入。

    この間、H13.3に普及パンフを作成し、同年に現地7圃場で実証。

    H16~20年:ハダニに対して新たにミヤコカブリダニを導入。この間、H17.10に普及パンフを作成、また、H20.1には福岡県との共同研究によるパンフを作成

    H21年~ :現地10圃場で実証中。

    四季成り栽培イチゴでのIPMの取り組みH18年 :現地1圃場でハダニに対してミヤコカブリダニとチリカブリ

    ダニを、アザミウマに対してククメリスカブリダニとタイリクヒメハナカメムシを導入。

    H19~20年:同圃場でハダニに対してミヤコカブリダニを、アブラムシに対してコレマンアブラバチを、アザミウマに対してスリムホワイトの展張を導入。

    H22年~ :他部会員に普及拡大予定。

    宮城県内でのIPMの取り組みと普及状況

  • ナスでのIPMの取り組みH15~17年:現地3圃場でハダニに対してチリカブリダニ(H16からミヤコ)

    を、アブラムシに対してアブラバチを、アザミウマに対してタイリクヒメハナカメムシを導入。

    H18~20年(システム化研究会事業):現地1圃場でハダニに対してミヤコカブリダニを、アブラバチに対してアブラバチ(とバンカープラント)を、アザミウマに対してククメリスカブリダニとタイリクヒメハナカメムシを導入。

    H19~21年(産学官連携普及事業):現地3圃場でアザミウマに対してスリムホワイトの展張を導入、H21からスワルスキーカブリダニを導入。

    H22年~ :他部会員に普及拡大予定。

    トマトでのIPMの取り組みH18~20年(システム化研究会事業):アザミウマとコナジラミに対してマ

    イコタールを導入。

    ★ 一連の取り組みをとおして、IPMの普及定着は個別技術の習得はもちろん、普及組織のコーディネートがポイントになる。

  • 0

    100

    200

    300

    H11 H12 H13 H14 H15 H16

    面積(a)

    オンシツツヤコバチ

    0

    100

    200

    300

    400

    H11 H12 H13 H14 H15 H16

    面積(a)

    コレマンアブラバチ

    0

    100

    H11 H12 H13 H14 H15 H16

    面積(a)

    ヤマトクサカゲロウ

    0

    100

    200

    H11 H12 H13 H14 H15 H16

    面積(a)

    イサエアヒメコバチ,ハモグリコマユバチ

    0100200300400

    H11 H12 H13 H14 H15 H16

    面積(a)

    ククメリスカブリダニ

    0

    100

    200

    H11 H12 H13 H14 H15 H16

    面積(a)

    タイリクヒメハナカメムシ

    宮城県内での天敵の使用状況

  • 0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    1,600

    1,800

    2,000

    H11 H12 H13 H14 H15 H16 H18

    面積(a)

    チリカブリダニ

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    1400

    1600

    1800

    2000

    2200

    H11 H12 H13 H14 H15 H16 H18

    面積(a)

    ミヤコカブリダニ

    H20年以降の導入延べ面積(推測)H20 → チリカブリダニ: 560a、ミヤコカブリダニ:2,750aH21(上半期のみ) → チリカブリダニ:1,350a、ミヤコカブリダニ: 920a、

    スワルスキーカブリダニ:530a

  • ○ 耕種的防除:抵抗性品種、太陽熱利用、蒸気や熱水消毒、シルバーマルチ・・・

    ○ 物理的防除:防虫ネット、光反射資材、べたがけ資材、大量捕獲(粘着シート、掃除機・・)、光の利用(黄色蛍光灯、UVカットフィルム・・)・・・

    ○ 遺伝学的防除:不妊虫放飼・・・

    ○ 生理活性物質の利用:性フェロモン、IGR剤・・・

    ○ 生物的防除:天敵、微生物農薬・・・

    ○ 化学的防除:農薬・・・

    取り組んできた(求められてきた)IPM技術

  • タイベック タイベック半分 スリムホワイト スリムホワイト半分 防虫網

    0

    500

    1000

    1500

    2000

    2500

    誘殺虫数(頭)

    0

    100

    200

    300

    誘殺虫数(頭) **

    ** ****

    ヒラズハナアザミウマ(左)とアブラムシ類(右)の累積誘殺数(5/29~7/31、宮城農園研内、2反復の合計値(粘着板黄、青各2枚の4枚の合計値))

    ☆ 試験事例(物理的防除技術の効果)

  • 薬剤名分類

    ハダニ類

    アブラムシ類 コナジラミ類 うどんこ病 使用回数(商品名)

    澱粉液剤食品

    ○(野菜、花き類)

    ○(野菜)

    △(トマト*)

    (△) -(粘着くん液剤)

    還元澱粉糖化物液剤食品 ○

    (イチゴ**)

    ○(野菜、花き類)

    ○(野菜)

    △(野菜、花き類)

    -(エコピタ液剤)

    プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル乳剤食品添加物

    ○(野菜)

    (△) (△)○

    (野菜)-

    (アカリタッチ乳剤)

    オレイン酸ナトリウム液剤食品添加物 (△)

    ○(野菜、キク、バラ)

    ○(野菜)

    ○(イチゴ)

    -(オレート液剤)

    脂肪酸グリセリド食品添加物

    △(野菜、花き類)

    △(野菜)

    ○(野菜)

    ○(野菜、花き類)

    -(サンクリスタル乳剤)

    ソルビタン脂肪酸エステル食品添加物

    ○(野菜、花き類)

    ○(野菜、花き類)

    (○)○

    (野菜、花き類)

    -(ムシラップ)

    2009年10月23日現在(主な作物のみ)* :トマトのタバココナジラミ類にのみ登録。**:イチゴ、花き類のナミハダニ、シソのカンザワハダニにのみ登録。(○),(△)は登録がない病害虫。使用回数「-」は設定なし。

    ☆ 試験事例(気門封鎖型薬剤の効果)

  • 0

    10

    20

    30

    40

    モス

    ピラ

    ン(×

    4000)

    アー

    デン

    ト(×1000)

    スピノ

    エー

    ス(×

    2500)

    オル

    トラン(×

    1000)

    ウララDF(×2000)

    カウ

    ンター(×

    2000)

    ダニ

    サラハ

    ゙(×1000)

    スター

    マイト(

    ×2000)

    スワルスキーカブリダニ数(頭/株)

    散布1日前 散布4日後 散布10日後 散布17日後

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    アド

    マイヤ

    ー(×

    2000)

    アクタラ(×

    2000)

    アル

    バリ

    ン(×

    2000)

    アファー

    ム(×

    2000)

    コロマイト(

    ×1000)

    カネ

    マイト(

    ×1000)

    テル

    スター(×

    1000)

    マッチ(×

    2000)

    無散

    スワルスキーカブリダニ数(頭/株)

    散布1日前 散布3日後 散布10日後 散布17日後

    ▲ × × × ● ▲ ● ●

    ▲ ▲ ● × × ● × ●

    ☆ 試験事例(スワルスキーカブリダニに対する薬剤の影響)

  • 3種カブリダニ類雌成虫に対する各薬剤の影響(インゲン葉片、2009年)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    死亡率(%、48時間後)

    チリカブリダニ ミヤコカブリダニ スワルスキーカブリダニ

  • 0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100スワルスキーカブリダニ数の

    対無処理比(%)

    処理7日後

    処理14日後

    処理21日後

    処理28日後

    処理35日後

    処理42日後

    処理 7日後 14日後 21日後 28日後 35日後 42日後放飼 放飼 放飼 放飼 放飼 放飼

    調査 調査 調査 調査 調査 調査(各放飼6日後に調査)

    スワルスキーカブリダニに対する各薬剤(粒剤)の影響期間

    42 14 14 14 28 7 7 7 7 7 14↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

  • 登録農薬をA~Fに当てはめてみる対象病害虫に対して

    効果が高い 効果が低い

    天敵に対して

    影響がない A D

    やや影響がある B E

    顕著な影響がある

    残効が短い CF

    残効が長い C´

    C 天敵放飼 D A E B C´↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

    天敵放飼前に害虫密度を下げる。

    害虫密度の増加初期なら、Aを温存して。

    害虫密度が急増してしまったらAを。

    栽培終期ならば天敵に影響が長い剤で逃げ切りもあり。

    天敵が十分に定着し、かつ天敵の対象害虫の密度が低いことが前提で・・・

    天敵の対象外害虫の増加初期ならEを、急増してしまったらBを。

    天敵の対象外害虫の発生

    ※ もちろん、A剤に該当する農薬が多い場合はAグループのみで組み立てるべきでしょうが・・・。

    ☆天敵と農薬の併用の考え方

  • 物理的防除 ・各資材の展張(防虫ネット、光反射資材、UVカットフィルム・・)

    ・各資材の設置(粘着資材、光反射資材・・)

    ・障壁作物播種

    生物的防除 (将来技術)・メタリジウム菌

    処理

    ・天敵放飼 ・天敵放飼(追加)

    化学的防除 ・粒剤処理、株元灌注処理

    ・薬剤散布

    圃場準備 定植 開花 収穫開始

    必要とされる情報

    ・各資材の効果のしくみや特徴、設置コスト

    ・各害虫に対する薬剤の効果(有効薬剤の把握、効果的な処理方法・・)

    ・天敵の放飼タイミングや効果の特徴・各天敵に対する薬剤の影響や残効

    生産者の把握

    ・現状と課題、IPMに対する潜在的な動機とその背景の把握

    技術導入のタイミング

    事前準備

    裏打ちされた普及活動

    IPM導入にあたっての想定例

    スライド番号 1スライド番号 2スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5スライド番号 6スライド番号 7スライド番号 8スライド番号 9スライド番号 10スライド番号 11スライド番号 12スライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16スライド番号 17スライド番号 18スライド番号 19スライド番号 20