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交流点火・無帰還で残留ノイズ0,8mVを実現
JJ300BシングルItワ-アンプ
長島 勝 NAGASHIMAKatsu
交流点火した300Bの音が聴いてみたいという思いで
製作されたシングルアンプ テレビ受像機用榎3極管
6CS7を起用した2段増幅で自己バイアス式の300Bを
ドライブする.出力管ブランドの選定,ハムバランサー
回路の検討 電源のリップルを位相調整して出力段に注
入するといった各種の徹底的なノイズ(ハム)対策を講じ
た結果,交流点火,無帰還シングルでありながら残留ノ
イズ0.8mV (入力ショート)を達成,直流点火とは一味
違う,解鰯が高いサウンドが得られた.出力6.5W,
46シングルアンプの改作
これまで私は交流点火した300
8の音を聴くために試行錯誤して
きました 2015年5月号掲載の
2A3シングルアンプで ある程度
ハムレベルを下げることに成功し
たので3008を交流点火し,フィ
ラメントハムを電源リップルで打
ち消しを行うことにしました
本機は 2014年6月号の46シ
ングルアンプを解体して電源トラ
ンスをPC-932からPC-940に変更
したものでシャシーはサン・オー
ディオのSV-TE/zer02です.
主要部品の選定
(1)電源トランス
電源トランスPC-940には300
Bフィラメント用の5V/13A巻線
が2巻線ありますが ダムラトラ
ンスの回路事例集では直流点火さ
れています.だとすれば 交流で
は2Aの容量があるはずなのです
が 表示は1.3Aになっています.
ここでは交流で2Aと仮定します.
201 6/4 65
・一票∴三二十三∴:
三宅__ �\\醗一弾 二言輩-_- 十三:'平」 ∴∴ � �
I �イ��
一一、:ーヽ
また 前段用の6.3V巻線も,
2Aあればいろいろな真空管が楽
しめるのですが1.2Aなので か
なり選定が難しくなってしまいま
す.
想像ですか このケースに入る
コアサイズは180VAが最大で
はないでしょうか.しかし. 6.3V
巻線を2Aにすると. 180VAを超
えてしまいます.
主要部晶の選定
(1)寅空曹
300Bii. 5V/1.2Aのフィラメ
ントを持つ直熱3極管で 動作例
の表は36通りも発表されていま
すが 標準的には.プレート電圧
350V,プレート電流60mA,負
荷抵抗3.5kQの動作が多いようで
す
初段,ドライブ段とも3極管で
揃えたいので 複3極管(不管双
3極管)の候補(表1)から,ヒー
ターが06AのeCS7 (図1)を選
びました
eCS7のユニット1は12AU7
の片ユニットと同規格で垂直偏向
発振に,ユニット2ば プレート
損失6.5W. LLが15.5で 垂直偏
向増幅に用いられていました.
整流管用の巻線は5V/3Aある
ので 5U4GBを使うことにしま
した
(2)トランス類
46シングルアンプの出力ト
ランスF-915を流用しました
F-915の1次側インピーダンスは
300Bの標準的な負荷3.5k Qでは
なく. 5kQです.負荷を大きく
すると,ダンピングファクターを
大きくできるので 無帰還アンプ
である本機には有利です.また
巻線比が大きいので フイラメン
2014年6月号掲載の46シングルA2級パワーアンプ 初段は6EA8,整流管は
5Y4G
隻-roUU茎+UPn
日動副劇画
[表1]初段・トライブ段用複3極管の候補
雷名 ���ク5�イ�6Izネ�エ��ツ�ユニット1 劔ユニット2 劔形状 プレート 損失〔W〕 ���&7l lrnsJ 仞R��カエ�ツ�プレート 損失〔W〕 ���an 〔mS〕 勇Fオ��ツ�
12DW7 ���1.25 ����1.25 塔��3.3 �r�2.2 途縒�MT9ピン
6CM7 �綯�1.45 ���2.0 ��絣�6.0 ��4.4 釘紕�MT9ピン
6CS7 �綯�1.25 �r�2.2 途縒�6.5 �R絣�4.5 �紊R�MT9ピン
6DA7 ���2.0 ���2.6 途縒�6.0 澱��5.7 ���MT9ピン
6DE7 �纈�1.5" �r絣�2.0 唐縱R�7.0 澱��6.5 �纉#R�MT9ピン
6EM7 �纈�1.5 田�1.6 鼎��10.0 澱��7.2 �縱R�GT
6EW7 �纈�1.5 �r絣�2.0 唐縱R�10.0 澱��7_5 ��ウ�9T9
6R-ALl �繝b�1.5 �r絣�2.0 唐縱R�8.0 �r絣�7.5 ��B�MTgピン
6R-AL2 �纈�1.5 �r絣�2.0 唐縱R�10.0 �h耳�「�7ー2 ��ウ#"�MT9ピン
複3極管6CS7 テレビ
受イ勃幾が主用途だが 低
周波増幅にも多用された 本機ではDuMontブ
ランドを使用
トハムも小さめになります.
しかし, 3.5kQに比べると, 5k
Qでは出力が低下します.そこ
で 出力を増強しようとすると
電源電圧を高くしなければならず
その分バイアスが深くなり,ドラ
イブが難しくなります(図2).
出力管のハムと電源のリップル
の位相を合わせるために.チョー
クコイルを2個使用します. 1つ
はインダクタンスが大きいA-825
で もう1つはインダクタンスの
小さい4BO3MAです.インタク
タンスが大きいとリップルが減り
すぎるため,ハムの打ち消し効果
が発揮できないからです.
主要部品が決まりました ここ
から細かい点を詰めていきます.
ローノイズ化の検討
無帰還で 残留ノイズがlmV
台まで下がれば大成功と判断して,
チャレンジしました
交流点火を成功させるため,い
くつかのことを確認し,回路を決
めていきます.
(1)ハムバランサー回路の検討
細かく調整できるように,ハム
バランサー回路を検討しました
図3の①が一般的なハムバラ
66
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E地pOnIUH, PA
′賀{一〇●■■一一…b 7V
ltCがNlcAL ′一面(,ICltTCNS Sj原ON
[図1 i 6CS7の規格(シルパ二アの1957年版データシートより)
ンサー回路です. ②が調整しやす
いように変化範囲を絞った回路で
③はスライダーに流れる電流を
減らしたものになります.今回は.
スライダーの電流を減らし.かつ
変化範囲を絞った(①を採用するこ
とにしました
(2)ハムの打ち消し
B電源の整流にも問題点があ
りました 今回居 直熱整流管
5U4GB (図4)を使います.直
熱整流管で両波整流する場合,電
源トランスの5V巻線に中点があ
れば問題はない(写真1 (a))の
ですが 片側から平滑回路に接続
すると,整流管フィラメント電
圧がB電源に加算される相と減算
される相ができ,東日本ならば
MJ
蕊.EEE..醗
繋諜噂蓮驚
喜登伽藍州立
畑諾88競
iMu嵩重盗
JJ300Bシングルパワーアンプ
[表2]図5の回路で実測した残留ハム
メーカ÷ �H4(8��986r�忠 �B��ケ-���C2 時Fー �2�%、fツ�綴 �∴∴∴ 鐙�i_C「�
EH �- 鼎��- 涛B�100 辻�9 兢�6�写真2(a)
JJ �h8ィ�ク5�- 鼎��- 涛B�100 辻�7 兢�6�写真2(b)
- 鼎��20 涛B�100 辻�7.4 兢�6�
- ���40 涛B�100 辻�7.3 兢�6�写真2(C)
- ���40 涛B�100 鼎��6.9 兢�6�
- ���40 涛B�100 ����6.4 兢�6�
- ���40 鼎r�100 ����6.3 兢�6�
- ���40 鼎r�100 ����6.3 兢�6�
- ���40 鼎r�- ����3.6 兢�6�写真2(d)
- ���40 鼎r�- 鼎��6.1 几ニ6�写真2(e)
10 ���40 鼎r�- 鼎��3ー3 几ニ6�
8.2 6.8 ���#��40 40 鼎r�Cr� 鼎��C��3.2 3 几ニ6�{ニ6�
ノイズの少なさか
ら選定されたJJエ
レクトロニック製
300B
鶉残留ハ顕冒囲8回四囲(a)
バイアス抵抗は, 1.5kQ/25Wの
メタルタラツド型です.プレー
ト電圧360V,プレート電流は約
50mAで,プレート損失は18W
ど.非常に内輪な動作です.
バイパスコンデンサーは対アー
ス間ではなく, B電源との間に40
〟Fを入れています.このコンデ
6CS7
(b) (C) (d)
ンサーを通して.リップルをフィ
ラメントに注入することになりま
す
フィラメントの電源は,整流回
路などの影響で歪んでい_ること
が考えられました.フィラメント
の電圧を測ると5.4Vあったので
フィラメントの両側とトランス間
300B
(e)
に0.2Q.フィラメントと並列に1
〟Fのフイルムコンデンサーを入
れてフィラメント電源の高調波を
減らし.歪率を改善することにし
ました その効果は絶大で3mV
台だった残留ハムが一気にlmV
台まで下がりました なお.この
処置で 300Bのフィラメント電
I 00474l l74V630V iNPUT2(06ユニットl i/2W loo:(A lOOklー7lW (8)8 98V274V 羅濫_韓掴 �ぷf�wTc#C3Ub�6ィ6(6s#�c4Ec&エ�テ%s2�8�ニテCVオ��"���囃�915橿16QoUT[
∴∴∴∴∴∴∴∴∴ 2畿2↓iJ"0.ー2W ∵∴∴∴:∴∴∴ 劔�C�爾�(3B���ハs��
「 �ネ�ツ�
ら ∴ 2 232V ー00ltlOOO 6CS763V奈 AC…垂ニ瑳 AC唾二二重二薗 電源スイッチlOOV 亮穀ダニヒユ_ズ職責 尾ウ�モCt、巴モB�� 他チャンネルへ 10003W45 砥cCSecCSUb�
青5VI 82 5∪4GB :∴∴∴: 窯O∨ 摘�キFニト��C�ツ�rウCvヲトb�S��e���b�
DCl70mA 紫370V 、400V 牝��ウ5r�
[図6]本機の回路(片チャンネルは省略)
2016/4
飯
C
JJ300Bシングルパワーアンプ
タムラトランス用に設計された.サン・オーディオの汎用シャ
シー.豊富なアタッチメントで さまざまな回路構成に対応する
[表41残留ノイズ測定結果
[表5]各種300Bの残留ノイズ実測結果
ジ詮索B・ペ騒節灘
カーブを描いています.
写真5にIkHz正弦波の歪み成
分観測を示します.
ダンピングファクター(図11)
は, lkHzで4.55であり,無帰還
アンプとしては大きめです.やは
り.出力トランスを5kQとした
ことが大きく貢献していると思
います.高域でダンピングファク
ターがじりじり下がっているのば
リーケージインタクタンスの影響
が大きいでしょう.
低域でのダンピングファクター
の低下は 出力管のバイパスコン
デンサーとして入れた40llFの容
量が小さいためで 大きくすれば
改善できるはずですが 電源の電
解コンデンサーが47IIFなので
大きくすると不釣り合いになりそ
うです
似たスタイルの回路がないか調
べたところ, 『300B/2A3真空管
式パワーアンプ』 (2010年)所載
の渡辺直樹氏の「300Bシングル
201 6/4
≡
誌 olI:]]
001
0001
-中一、(
∴∴ヽ十一∴
表
∴言察 儡'昌;.囲,圏@S 電解コンデンサーは真空管の熱を避けるため,リアパネル仙」に
配置されている ACインレソトを除く入出力錨子などはシャ
シー付属品
10 100 は 10k 1 OOk
周波数〔[Z〕
[図9]周波数特性(80, 1V)
10 100
入力電圧〔mV〕
[図81入出力特性(80, 1kHz)
6Wアンプ」が似ていると思いま
した チョークコイルでl)ップル
を取った後, 800と800LLFで位
相を回していると思われます.そ
れをバイアス抵抗に注入して残留
雑音を下げているのでしょう.残
留雑音の値は明記されていません
が 4mV台ではないかと推測し
ました
チャンネルセパレーション特
悼(図12)は, R-LでLchを
アースした状態で測定しました.
lkHzで61dBほどで 残留雑音よ
り少し大きいだけです. lkHzで
はLchの出力は0.9mVでしたが
心配していたとおり. 80Hzあた
りから下がるにつれて,セパレー
ションがどんどん悪化しています
B電源に入っているコンデンサー
が小さいためですが ここを大き
くするわけにはいきません.本機
の方式は モノ-ラルアンプとし
て作るのが良いようです.少なく
とも2個めのチョークコイルを左
右に分ければ 低域のチャンネル
セパレーションの低下は防げるで
しょう.
写真6に抵抗負荷 写真7に容
量負荷 写真8に抵抗+容量負荷
の10kHz方形波応答を示します.
8Q純抵抗負荷でも若干のオー
バーシュートが見られます パラ
73
〔eP〕 YヽiLtKn
ー00亜- 處r�~ 椿ト��� � � �
!!!害!!星 � � �
王牒開SS � �ク�ウ��メユ52� � � �〇〇〇"1〃 � �ク�ウ��メメ� � � �
洲一一'」 � �3��耳磁52� � � �
811一一一題! � � �
8111ー18 � � � � �
[図10]歪車掌郭と(80)
(a)入力1V (05V/ (b)入力6V (2V/ (C)入力74V (2V/
diV, 02ms/diV) diV, 02ms/diV) dIV, 02ms/diV)
[写真5]正弦波(1kHz)と歪み成分(80)
弱国[写真6]抵抗負荷時の1 0kHz
方形波応答(上.入力 下出力,
入 力 01Vp-p, 50mV/diy,
出力1V/diV, 20HS/diV)
レルにコンデンサーを入れていく
ど, 0.1IIFまではオーバーシュー
トのみですが0.221lFからはリ
ンキングも見られます.しかし,
0.47llFを足したものでは大きめ
のオーバーシュートになっていま
す.
無負荷では立ち上がりになまり
が見られ 立ち上がりにリンキン
グ状の波形も見られます.
容量負荷単独では0.047 〟 Fか
らリンキングが見られ 容量を大
きくしていくと0.221lFまではリ
ンキングの波高値は大きくなって
74
掴聞[図11]ダンピングファクター(80)
周波数〔[Z〕
[図12]チャンネルセパレーション年維(80)
星星星星(a) 〇・047uF (b) 01uF (C) 022〟F (d) 0.47〟F
[写真7]容量負荷時の10kHz方形波応答(上`入力下 出力,入力. 0.1Vp-p, 50mV/
diV.出力i lV/dIV, 20us/dlV)
国語国語[写真8]抵抗負荷(80) +容量負荷時の10kHz方形波応答(上 入力,下 出力.人か
01Vp-p, 50mV/diV,出力1V/diy. 20us/diV)
いきます. 0.471lFでは大きめの
オーバーシュートになります.
無帰還アンプなので 位相補正
は行わないことにしました
静止時の消費竃カは103W,潤
費電流は1.1lAです.ヒューズは
I.5Aとしています.
これらの測定には パナソニッ
クのオーディオアナライザーVP_
7720A,日立のオシロスコープ
Ⅴ-552,サンワのデジタルテス
ターPC500,トリオのミリボル
トメーターVT-121などを用いま
した.
ヒアリング
いつもの300Bとは ちょっと
違う音質です.その原因が 負荷
抵抗5ki自こあるのか,交流点火
にあるのかはわかりません.通常
の3008シングルアンプに比べて
彫りが深く,解像度に優れ 切れ
込みが良いように感じます
特に 弦楽器の表情が豊かに感
じられます.思わずバッハの無伴
奏バイオリンソナタや「ゴールド
ベルクバリエーション」などを聴
いていました
MJ
〔eP〕 Yヽ意KJ