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経済産業省平成18年度事業 「事業再生人材育成促進事業」 事業再生人材育成講座 テーマ②:事業再生ファイナンス 日本政策投資銀行 企業ファインナンス部

事業再生人材育成講座...1)DIPファイナンスの定義(続き) <日本 でのDIPファイナンスの 定義> l 日本の再建型法的倒産手続としては

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経済産業省平成18年度事業

「事業再生人材育成促進事業」

事業再生人材育成講座

テーマ②:事業再生ファイナンス

日本政策投資銀行 企業ファインナンス部

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 目 次

1.DBJの事業再生への取り組み(担当:増山 祐次)   ページ

(1)これまでの取り組み 3~6

(2)事業再生を取り巻く環境変化及び最近の新しい取り組み  7

2.DIPファイナンス(担当:杉本 健) (1)DIPファイナンスとは 8~12

(2)案件検討面でのポイント     13~22

3.事業再生ファンド(担当:青貝 忠) (1)ファンドとは 23~25

 (2)ファンドは何をするのか 26~28

(3)ファンドの建て付け等 29~31

 (4)ファンドの広がり 32~36

(5)デット型ファンド 37~39

(6)案件検討面でのポイント 40~43

4.メザニン・ファイナンス(担当:富井 聡) (1)メザニンファイナンスの性格、特徴 44~48

(2)メザニンファイナンスの活用事例 49~53

(3)案件検討面でのポイント 54~59

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 目 次

5.集合動産担保融資(担当:高橋 太) ページ

(1)集合動産担保融資の現状認識 60~61

(2)集合動産担保融資の論点 62~63

(3)集合動産担保融資の意義    64

(4)スキーム例 65

(5)在庫評価のイメージ 66

(6)ボロイングベースファイナンスのイメージ 67

(7)事業ファイナンスとコベナンツ 68

(8)集合動産担保融資におけるコベナンツの考え方 69

(9)留意点 70

(10)動産譲渡登記制度の概要 71~72

(11)集合動産担保融資の今後 73

6.まとめ 74

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DBJの事業再生への取り組み-

1.DBJの事業再生への取り組み

  (1)これまでの取り組み

図1 DBJの事業再生支援機能

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1)事業再生に係る出融資制度

・出融資制度の概要

    【事業再生支援】

      事業価値保全資金(DIPファイナンス)

      事業基盤整備資金(設備、EXITファイナンス、買収資金)

    【事業再生事業】

      民間金融機関の貸付債権・株式等の取得資金

    【産業再生事業】

      早期事業再生・産業再編に資する取組

   ・政策根拠

  13年4月緊急経済対策、13年10月経済対策閣僚会議 他

テーマ②:事業再生ファイナンス  -DBJの事業再生への取り組み-

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DBJの事業再生への取り組み-

2)DIPファイナンスの展開

図2 DIPファイナンスの展開

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3)事業再生ファンド等への出資(例)

    【事業再生・バイアウトファンド】

   (PE) NMC2002 L.P. ジャパンリカバリーファンド 

        エーシークリードファンドⅠ号 MKSファンドⅠ

        Carlyle Japan Partners, L.P.

アドバンテッジパートナーズMBIファンドⅢ      

   (債権買取)ルネッサンスファンド ジェイ・ウィンド・ワン 

   【メザニンファンド】

      UDSコーポレート・メザニン投資事業有限責任組合

    MHメザニン投資事業有限責任組合          

   【個別企業向け出資】

   エア・ドゥー企業再建ファンド  新潟鐵工所企業再建ファンド 

落合楼事業再編ファンド        

テーマ②:事業再生ファイナンス  -DBJの事業再生への取り組み-

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DBJの事業再生への取り組み-

(2)事業再生を取り巻く環境変化及び最近の新しい取り組み

当初:不良債権問題が喫緊の課題。事業再生マーケットがそもそも成立 していない状況 → リスクマネーの供給、新しいファイナンス手法の 実践により、事業再生マーケット形成を支援

現在:地方金融機関の不良債権は依然高水準ながら、大型の再生案件は 一段落し、メガバンクの不良債権問題はほぼ終了。                  「再生」から「再編」へ、「リストラ」から「成長」 へと移行

【環境の変化】

【最近の新しい取り組み】

・ターンアラウンド支援会社の設立支援

・コーポレートメザニンファンドの組成

・セカンダリーファンドへの取り組み

・在庫担保評価会社の設立

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2.DIPファイナンス

(1)DIPファイナンスとは

  1)DIPファイナンスの定義

 <米国でのDIPファイナンスの定義>

l米国においては、再建型倒産手続である連邦倒産法第11章手 続(所謂チャプターイレブン)に入った企業に対する与信をいう。

lチャプターイレブンでは手続申立後も、原則として管財人は選 任されず、従来の債務者(経営者)が引き続き業務を執行する ことから、こうした債務者はdebtor-in-possession(占有継続 債務者。略称DIP)と呼ばれる。

lこのような、DIPに対する申立後再建計画認可までの事業継 続に必要な運転資金等を融資を、DIPファイナンスと呼ぶ。

テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

1)DIPファイナンスの定義(続き)

 <日本でのDIPファイナンスの定義>

l 日本の再建型法的倒産手続としては、会社更生、民事再生が ある。

l 民事再生は、米国のチャプターイレブン同様にDIP型とい える。一方、会社更生は経営責任のない経営者は管財人とし て選任できるが、必ず管財人が選任されるため、原則として DIP型ではない。

l しかし、日本でDIPファイナンスという際には、会社更生 も含め、再建型法的手続申立企業に対する融資をいい、また 申立後計画認可前のみならず、手続終結までの融資を含める のが一般的であり、米国より概念が広くなっている。

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

2)DIPファイナンスの意義

 <社会経済的な意義>

l DIPファイナンスの目的=倒産による企業価値の劣化防止・ 企業価値の維持

l 法的手続を申し立てた企業であっても、「継続企業価値」> 「清算価値」であれば、社会経済的意義は高い。

 <金融機関にとってのメリット>

l 「共益債権化」による債権保全、流動性の高い担保設定が可 能な一方、通常の企業に比べ高めの金利設定。

  →ミドルリスク・ミドルリターンの融資

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

3)DIPファイナンスの使途

 ①法的手続申立直後から再建計画認可までに必要な資金

 ②再建計画認可前後に必要となるリストラ資金(退職金、閉  鎖店舗の原状回復費用等)

 ③再建計画認可後に必要となる設備資金、運転資金

 ④営業譲渡を活用する場合のスポンサーの買取資金(LBOロー ン)

 ⑤法的手続を早期に終結させるための返済資金(エグジット・ ファイナンス)

l 当行では、①、②をアーリーステージのDIP(アーリーDI P)、③以降をレイターDIPと呼ぶが、一般的にもそのよう に称されることが多い。各々審査における留意点の力点が異 なる。

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

手続

申立

開始

決定

計画

認可

決定

計画

完了

資金需要 破産(→財団債権) 破産(→財団債権)

運転

資金

設備

資金

共益債権

レイターステージ リ

スト

ラ資

DIPファイナンス

アーリーステージ 

Exit Finance 

図1:DIPファイナンスの各ステージにおける使途・資金需要

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(2)案件検討面でのポイント

 1)全般的なポイント

  ①継続を図る事業の経済社会的有用性及び今後の発展可能  性地域経済への寄与の確認

  ②事業再生が見込まれることの確認

  ③債権保全による償還確実性の確認

  ④適切な情報開示及び利害関係者の意向の確認

  ⑤経営責任と株主責任の明確化

 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

2)段階別の検討ポイントの力点

 <アーリーステージ>

l 事業価値劣化を防ぐために、すばやく融資することが必要。 よって事業キャッシュフローを生み出す見通しが相当程度あ り、売掛金等の流動性の高い担保取得が可能かどうかに着目。

l アセットファイナンス的側面大。

<レイターステージ>

l 事業性そのものに着目したキャシュフロー・レンディング。 相応のデューディリ期間が必要。

l 与信判断の方法は通常融資とあまり変わらないが、コベナン ツ設定等によるモニタリングは重要。

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

3)全般的なポイント各論その1:継続を図る事業の経 済社会的有用性及び今後の発展可能性、地域経済への寄 与の確認

l 破綻企業の再生は、既存債権者の損失を前提。

l 当該事業を「再生」させることの意義の整理は必要。

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

4)全般的なポイント各論その2:事業再生が見込まれ ることの確認

 ①事業の存続可能性の評価

  ・破綻原因は何か

  ・事業環境、業界環境はどうか

  ・申立後の事業劣化の度合い(特にアーリーDIPで重要)

  ・競争力を維持し、今後継続的にキャッシュフローを生み出     すことは可能か。

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

4)全般的なポイント各論その2:事業再生が見込まれ ることの確認(続き)

 ②資金繰り計画のチェック(特にアーリーDIPで重要)

  ・社内における資金繰り管理体制の確認

  ・月間・年間の資金の山・谷はどうなっているか

  ・いつ、いくら資金ショートする見込みか

  ・DIPファイナンスにより当面の資金繰り確保されるか

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

4)全般的なポイント各論その2:事業再生が見込まれ ることの確認(続き)

 ③回収の方向性の検討

  ・どのようなエグジットストーリーの可能性が高いかにより、 担保設定や、貸付契約書に盛り込むべきコベナンツを調整。

  ・エグジットストーリーとしては、

    営業力回復による返済余資からの回収

    信用力回復による仕入れサイトの改善による回収

    新スポンサーによる増資資金等による回収

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

5)全般的なポイント各論その3:債権保全による償還   確実性の確認

 ①当該DIP貸付金が共益債権化されることの確認

  ・法的手続の中で、既存債権に優先して返済を受けられる共 益債権となることが必要。

  ・共益債権化するためには、民事再生では監督委員の同意が、 会社更生では裁判所の許可が必要。

  ・エグジットファイナンス等では検討の必要なし。

 ②共益債権の割合が事業継続価値の一定範囲内であること

  ・共益債権額が多額すぎると全額の弁済は困難

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

5)全般的なポイント各論その3:債権保全による償還 確実性の確認(続き)

 ③(流動性の高い)担保取得が可能なこと

  ・売掛債権、受取手形に加え、近年は棚卸資産も活用

  ・売掛債権担保においては、債務者・販売先間の債権債務関 係に注意(相殺のおそれ)。また基本契約等において、債権 譲渡が制限されていないかを要確認。

  ・売掛債権担保では、売掛金入金口座への質権設定とセット とするのが原則。また、他口座の開設・利用を制限すること が望ましい。

 

 

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

6)全般的なポイント各論その4:適切な情報開示及び 利害関係者の意向の確認

 ①適切な情報開示

  ・情報開示は、信頼回復にとって重要。

 ②利害関係者の意向確認

  ・既存債権者(特にメイン行)は再生に反対していないか、 取引先は取引継続意向があるか

  ・申立代理人や監督委員は相応の労力を割ける体制となって いるか、意思疎通は出来ているか。

  ・スポンサー(候補)の支援理由・目的、今後の支援策につ いて要確認(レイターDIPでは特に重要)

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -DIPファイナンス-

7)全般的なポイント各論その5:経営責任と株主責任 の明確化

l 会社更生では、多くの場合株主は100%減資となり、また 原則として旧経営陣は退任するが、民事再生ではそれが求め られていない。

l しかし、民事再生でも、既存債権者の同意取付けや経営者の モラルハザード回避のため、会社更生と同様の措置が必要と なることが多い。

l 但し、既存債権者が手腕を再評価され、既存債権者及び新規 出資者から評価される場合は、計画認可後の再任を妨げず。 (特にオーナー経営者の場合、事業継続に経営者の力が必須 になることが多い)

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3.事業再生ファンド

 (1)ファンドとは

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

投資家

(有限責任組合員、Limited Partner)

ファンド運営会社

(無限責任組合員

General Partner)

ファンド

出資

投資対象企業

投資(主に出資) 

投資委員会

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(1)ファンドとは(続き) ~ ファンドの利点

 1)対象企業にとって

l 他力活用又は系列から外れることによる事業の成長 (経営、営業、管理等)

l 改革を強く促す(ファンドには期限が存在)

l 雇用の維持

 2)売り手にとって

l 非中核事業の売却(選択と集中の実現)

l 売却益の計上

l 売却代金での借入圧縮

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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(1)ファンドとは(続き) ~ ファンドの利点

 3)取引銀行にとって

l 債権分類の引き上げ、不良債権処理の促進

 4)投資家にとって

l 代替投資の必要性(絶対利回りの追求、運用手段の拡大、ポー トフォリオ分散) ←年金、生損保など

l 出融資案件等(共同投資)の獲得 ←金融機関など

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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(2)ファンドは何をするのか

 1)対象企業への投資

l ファンド独自のネットワーク、入札、各種仲介経由

l レバレッジの活用

 2)投資後に価値を高める

l 人材派遣、管理体制整備(取締役として戦略決定に関与等)

l 金融条件の見直し(借り換えなど)

l 経費の削減

l 事業戦略の策定

l 販売の拡大

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

Page 28: 事業再生人材育成講座...1)DIPファイナンスの定義(続き) <日本 でのDIPファイナンスの 定義> l 日本の再建型法的倒産手続としては

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

(2)ファンドは何をするのか(続き)

 3)出口戦略

l 上場(IPO)、別の事業パートナー・ファンドへの売却

l 社内資金による消却(いわゆるリ・キャップ)

資産 負債 資産 負債

ファンド 上場

資産 負債 資産 負債

ファンド 他の事業者

【他者への売却】 【社内資金による】

資産 負債 資産 負債

ファンド

資産 負債 資産 負債 →

ファンド

ファンド

ファンド

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28 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

レバレッジが高い場合

ファンドのリターンは11倍

レバレッジが低い場合

ファンドのリターンは2倍

投資時の資金配分  ファンド:融資=1:9

0

100

200

企業

価値

ファンド 10 110

融資 90 90

投資時 売却時

投資時の資金配分  ファンド:融資=9:1

0

100

200

企業

価値

ファンド 90 190

融資 10 10

投資時 売却時

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29 

(3)ファンドの建て付け等

 1)スケジュールのイメージ

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

案件発掘

調査(デューデリジェンス)

投資の仕組みづくり

モニタリング/ハンズオン

投資回収

資金集め

投資実行 

3年~5年 

1年程度 

5年~10年

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(3)ファンドの建て付け等(続き)

 2)契約条件のイメージ

l 投資期間:3~5年

l 存続期間(投資期間+回収期間):5~10年

l 約束金額(LPの拠出額):○億円

l 管理報酬(LPからGP):約束金額×1.5%/年

l ハードルレート(LPへの優先分):8%

l 成功報酬(GP):ハードルレート(LP向け)を超えた部分 の20%をGPに配分

l その他:GPは、運営期間中のファンド離脱禁止・別ファンド の設立禁止、私財の投入等を求められる場合が多い。

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

(3)ファンドの建て付け等

 3)ファンドの損益構造

Jカーブ効果

第1期 第2期 第3期 第4期 第5期

当期損益

累積損益

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32 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

 < 企

 業

 価

 値

 向

 上

 の

 手

 法

>

ベンチャー   成長企業  (グロースキャップ)

成熟企 業

大企業の 子会社等

  破綻  

 (再生案 件)

コスト削減

売上拡大 (マーケティングサ ポート、MOT等)

ハンズオフ

< 投 資 先 企 業 の ス テ ー ジ >

多くのベンチャーファンド

スタートアップ アーリー ミドル

レイター

担保処 分・回 収型ファ

ンド

財務リストラ

(4)ファンドの広がり

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33 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

一部の ベンチャー

ファンド

< 企

 業

 価

 値

 向

 上

 の

 手

 法

>

ベンチャー   成長企業  (グロースキャップ)

成熟企 業

大企業の 子会社等

  破綻  

 (再生案 件)

コスト削減

売上拡大 (マーケティングサ ポート、MOT等)

ハンズオフ

< 投 資 先 企 業 の ス テ ー ジ >

多くのベンチャーファンド

スタートアップ アーリー ミドル

レイター

再生中心 (デット型)

再生中心 (エクイティ型)

担保処 分・回 収型ファ

ンド

財務リストラ

矢印はマーケット 発展の方向性を示 す

(4)ファンドの広がり(続き)

Page 35: 事業再生人材育成講座...1)DIPファイナンスの定義(続き) <日本 でのDIPファイナンスの 定義> l 日本の再建型法的倒産手続としては

34 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

一部の ベンチャー

ファンド

< 企

 業

 価

 値

 向

 上

 の

 手

 法

>

ベンチャー   成長企業  (グロースキャップ)

成熟企 業

大企業の 子会社等

  破綻  

 (再生案 件)

コスト削減

売上拡大 (マーケティングサ ポート、MOT等)

ハンズオフ

< 投 資 先 企 業 の ス テ ー ジ >

多くのベンチャーファンド

スタートアップ アーリー ミドル

レイター

事業再生・再編ファンド (いわゆるバイアウトファンド等)

再生中心 (デット型)

再生中心 (エクイティ型)

担保処 分・回 収型ファ

ンド

財務リストラ

矢印はマーケット 発展の方向性を示 す

(4)ファンドの広がり(続き)

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35 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

成長支援 ファンド

一部の ベンチャー

ファンド

< 企

 業

 価

 値

 向

 上

 の

 手

 法

>

ベンチャー   成長企業  (グロースキャップ)

成熟企 業

大企業の 子会社等

  破綻  

 (再生案 件)

コスト削減

売上拡大 (マーケティングサ ポート、MOT等)

ハンズオフ

< 投 資 先 企 業 の ス テ ー ジ>

多くのベンチャーファンド

スタートアップ アーリー ミドル

レイター

事業再生・再編ファンド (いわゆるバイアウトファンド等)

再生中心 (デット型)

再生中心 (エクイティ型)

担保処 分・回 収型ファ

ンド

財務リストラ

矢印はマーケット 発展の方向性を示 す

メザニンファンド

事業再生・再編ファンドの拡大

(4)ファンドの広がり(続き)

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(4)ファンドの広がり(続き) ~ 新しいタイプのファ ンド

 1)成長支援ファンド

l VCファンドの大量満期対策や、事業会社の選択と集中等に伴 う売却ニーズを吸い上げ、VCや事業会社等からの保有株式の 買取を行うファンド

l セカンダリーでの買取に加え、追加的に成長資金の供給するこ とで、セカンダリーマーケットの発展、さらにはVCとバイア ウトでは投資しにくいエアポケット的な領域をカバーすること でPE市場の活性化に寄与

 2)メザニンファンド(後述)

l 事業の再構築の中での資本増強等のニーズや、M&A等でのシ ニアローンとエクイティの間を補完する資金の需要等に対応。

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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37 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

q元本回収により簿価が減少

qリストラの進展により財務状況が健全化

qリファイナンス+残債債権放棄によりEXIT

(5)デット型ファンド

    1)投資イメージ

q債権購入価格は担保価 値や将来の債権の回収可 能性を見込んで決定

貸出実行時 債権購入時 EXIT時

貸出債権額

担保価値

貸出債権額

債権購入 価格

(簿価)

債権放棄

担保価値 担保価値

返済による 回収

リファイナン スによる回収

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38 

2)デット型ファンドの出口イメージ

l リファイナンス

借入過多と業績不振に苦しんでいたが、ファンドの指導でリス トラを実施、業績も好転。債務免除と合わせて、当社に銀行が 新規融資。

l 担保処分

債務者は副業として大型ビルを保有していた。当初は物件保有 継続に固執したが、本業回復により方針転換。担保物件売却に よる返済を決意。残債は債務免除。

l 債務者による買取

債務者に与えていた買戻しオプションを業績好転を期に実行。

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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39 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

ファンドの法的形態

ビークル 構成員の責任 課税取り扱い 特徴等

LPS (Limited Partnership)

GP:無限責任 LP:有限責任

パススルー(原則 として、出資者の

段階で課税)

・国際的には実例が多いため、特に海外 の投資家は慣れてている ・色々な意味で設計の自由度が高い ・設立コストは相対的に高い ・初期の国内ファンドはLPSがほとんど

投資事業有限責任組 合

無限責任組合員: → 無限責任 有限責任組合員: → 有限責任

パススルー(原則 として、出資者の

段階で課税)

・投資家数(当初49人)、対象企業(中小企 業)、投資形態(エクイティのみ)等に限定 があったが、2004年改正により制限撤廃 ・法律の英訳がないので、海外投資家に は理解されにくい

匿名組合 営業者:無限責任 匿名組合員:有限責任

パススルー(原則 として、出資者の

段階で課税)

①組合員10名以上の場合の源泉徴収、 ②ファンドが投資先から受け取る配当金 についての二重課税の発生、の点でLPS に比べると不利

任意組合 全員無限責任 パススルー(原則 として、出資者の

段階で課税)

投資家も無限責任のため実際に使われる ことは少ない

その他 上記は複数の会社に投資する一般のファンドによく使われるビークルであるが、特定 の会社への投資のために特別目的ファンドを組成するような場合には、信託を用いる こともある

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 (6)案件検討面でのポイント

 1)ファンドの投資方針・投資戦略

l投資対象・手法、事後管理方針、出口戦略は、適切か

l親会社や業務提携先と利益相反の可能性はないか

l他のファンドと比較して、特筆すべき強みはあるか

 2)ファンドの運営体制

lコアメンバー(キーマン条項)、ファンド専念義務

lコアメンバーの経験・スキル、マネジメント能力

l経営者プールの有無

lチームワークの問題、成功報酬の配分ルール

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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41

 (6)案件検討面でのポイント(続き)

 3)投資実績

l当該ファンドの過去の投資実績

l新設ファンドの場合は、投資マネージャー個人の実績 (過去の経験と今回のファンドの整合性確認を含む)

 4)投資予定案件

l具体的な投資予定案件の有無

l外部ネットワークや金融機関との強固な関係等、十分な ディールソースを有しているか

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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 (6)案件検討面でのポイント(続き)

 5)GPとLPの利益相反の回避

lGPや投資マネージャーが相応の自己資金を投じるか

l管理報酬が運営コストに比して高すぎないか

lGPや投資マネージャーが投資先から報酬を受け取る可 能性はあるか。LPへの報告等が適切になされるか

 6)モニタリング

l投資決定ルールが明確で透明性が高いか

lLPによるモニタリングの仕組みが確保されているか (定期報告の状況、アドバイザリーボード設置の有無)

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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 (6)案件検討面でのポイント(続き)

 7)その他

l投資上限

lバック事務(決算、外部監査等を含む)

テーマ②:事業再生ファイナンス  -事業再生ファンド-

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4.メザニンファイナンス

  (1)メザニンファイナンスの性格、特徴

 「メザニン(Mezzanine)」とは英語で中二階を意味す る、ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品

 具体的には、返済順位や清算時の配当順位等がシニアローン等の 債権に劣後する「劣後ローン」、配当支払や残余財産の分配等が 普通株に優先する「優先株」等がある

資 産

Debt

(シニア)

劣後ローン

優先株

Equity

(普通株)

メザニン

負債

資本

資 産

Debt

(シニア)

Equity

(普通株)

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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あり 優先株はなし

劣後ローンはシニアに劣後する 形であり

なし 期限の利益

あり(支払利息は税引前) 優先株の配当は税引後

劣後ローンの支払利息は税引前

なし(配当は税引後) 税務メリット

1.約定返済又はリファイナンス 

1.買入消却、約定弁済

2.普通株転換

3.リファイナンス

1.第三者に売却

2.市場で売却

3.買入消却

投資家側の

回収方法

なし

あり

高い(表面上はゼロだが)

具体的には、株主の要求す る配当+値上がり益

普通株

基本的になし

劣後ローンで担保をつける場合 でもシニアローンには劣後

ない場合が多いが、優先株は 限定的に発生すること等もあ る

相応に高い

具体的には、優先配当、劣後 利息、各種フィー、新株予約 権等

メザニン

基本的にあり 担保

なし 議決権

健全な財務体質を維持する限り は低いが、一定程度を超えると 高コスト、または新規借入が不 能になる場合もあり

発行体(債務者)

から見たコスト

通常の融資

 1)商品性の比較

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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 発行体・投資家各々にとってのメリット・デメリット

優先株式 劣後ローン

発行体/ 債務者

メリット 議決権比率を変えずに資本増強が可能 優先株に比し事務手続きが簡易

支払利息として節税効果を享受できる

デメリット 発行に際して定款変更、株主総会等の手続き が必要

財務諸表上、財務バランスの改善効果がない

支払利息と異なり、配当は税務メリットがない

メザニン 投資家

メリット 他の債権者との調整が少ない 限定的ながら期限の利益剥奪が可能

利払や元本償還はキャッシュフローがあれば可 能

デメリット 劣後ローンに比し、残余財産の分配が劣後 他の債権者との調整を要する

配当や元本償還は、分配可能額の範囲内に限 定

期限の利益剥奪や担保保全ができない

ガバナンスが弱い

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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MBO/LBO等

企業買収に

おけるメザニン

 流通(ダイエー等)

 大手ゼネコン・ディベロッパー

(飛島建設、長谷工、間組、三井住友建設、大京、藤和不動産、等)

 自動車(いすゞ、日産ディーゼル、三菱自動車)

 その他製造業(ケンウッド、日本冶金等)

 商社(双日、トーメン等)

金融支援としての DES 

による優先株の発行

 バイアウト・ファンドによるMBO 

(アスキー、福助、東ハト、ポッカ、等多数)

 経営陣によるMBO 

(ワールド等)

成長資金/

資本増強のた め

のメザニン

 事業会社による引受け

(日鐵商事、等)

 ファンド/銀行等金融投資家による引受け

(丸善、リクルートコスモス、オリコ、等) 

2001年~2003年頃 

2003年頃~

 2)メザニンファイナンスのこれまでの状況

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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 3)足下の環境の変化

制度面での整備

2002年の商法改正等により、種類 株にかかる規制が緩和され、優先株 の条件等の設計の自由度が増大

経済環境面での変化

M&Aのバリュエーションの上昇 MBOの活発化

需要(発行体/債務者)

自己資本充実の要請(市場、取引金 融機関) 普通株のコストの高さについての認 識の高まり

供給(投資家/貸付人)

シニアローンについては安全サイド の審査姿勢 ミドルリスクミドルリターンの商品 へのニーズ

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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事例(1) 過小資本解消策として

事例(2) 事業拡大過程における成長資金の調達手段として

事例(3) 事業承継における議決権の希薄化防止策として

(経営陣によるMBO)

事例(4) ファンドと経営陣によるMBOのファイナンスの量的 補完として

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

(2)メザニンファイナンスの活用事例

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資本増強前 資本増強後

資産 負債

資本

資産

負債

資本

優先株

事例 事例 ( (1 1) ) 過小資本解消策として 過小資本解消策として

優先株による増資により過小資本を解消し、攻めの戦略へ転換 債務者にとっての

目的・メリット

損益は現在では安定しているが、過去のリストラ等に伴う特別損失により、過小資本に 陥っている。取引先からの引き合いも強く、今後は攻めの戦略に転換し、株式公開を目 指したいが、これ以上の追加借入は難しいと主要取引銀行から言われている。

債務者の状況

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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優先株又は劣後ローンによる調達を梃子にシニアローンを調達し、成長資金を調達 債務者にとっての

目的・メリット

事業が順調で増収基調が続いているが、仕入れや設備投資のタイミングと利益確保の タイミングのギャップから、これ以上の借入金の調達が難しい状況に陥っている。資金 の手当てができれば売上は確実に見込まれる。

債務者の状況

事例 事例 ( (2 2) ) 事業拡大過程における成長資金の調達手段として 事業拡大過程における成長資金の調達手段として

調達前 調達後

資産

負債

資本

資産

負債

資本

メザニン

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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経営陣の自己資金と銀行借入のみでは不足する株式取得資金を、メザニンによって調 達し株式を100%取得できる

債務者にとっての 目的・メリット

事業は順調だが、オーナーは相続等の問題から株を売却したい一方で、現経営陣は自 ら100%経営権を取得し、経営戦略等を柔軟かつ迅速に決定・実行していきたい。

債務者の状況

事例 事例 ( (3 3) ) 事業承継における議決権の希薄化防止策として 事業承継における議決権の希薄化防止策として

   (経営陣によるMBO) (経営陣によるMBO)

資産 負債

資本

事業承継 資産

旧会社(現行の会社)

負債

資本

優先株

新会社(受皿会社)

(現社長が普通株 を買取)

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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ファンドと経営陣の自己資金と銀行借入のみでは不足する株式取得資金を、メザニン によって調達し株式を100%取得できる

債務者にとっての 目的・メリット

事業は順調だが、親会社が何らかの理由(選択と集中、借入金の圧縮、事業再生)によ り売却したい。経営陣は事業会社に売られるよりは、ファンドと一緒に独立し、親会社か ら離れて販路を拡大し、上場を目指したい。

債務者の状況

事例 事例 (4) (4) ファンドと経営陣によるMBOのファイナンスの ファンドと経営陣によるMBOのファイナンスの

   量的補完として 量的補完として

資産 負債

資本

ノンコア

事業

対象事業

負債

 

資本 (バイアウトファンド)

メザニン

(LBOローン)

ノンコア事業をバ イアウト(MBO)

受皿会社 親会社

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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 1)事業性の評価

 2)明確な出口戦略

 3)リスクとリターンのバランス

 4)ドキュメンテーション

 5)経営陣との円滑なコミュニケーション

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

(3)案件検討面でのポイント

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1.事業性の評価

ビジネスリスク

川上・川下含めた業界動向

対象会社の競争力  等

経営陣・マネジメント体制 等

2.法務・会計・税務リスク

偶発債務、含み損、訴訟 等

予想バランスシート

 予想キャッシュフロー

予想損益計算書

シナリオ分析

1.主なリスク・変動要因の特定

2.シナリオの作成

ベースケース

アップサイドケース

ダウンサイドケース

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

1)事業性の評価

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 メザニンは一般に償還期限が不定期/超長期であり、ファイナンス側と しては、どのような形で回収(EXIT)するかの仕組みが極めて重要。

 契約上の建付けとしては以下のような条項(発行体からの償還を促すた めの仕掛け)を設けることもある。しかし、基本は、キャッシュフローの 改善や内部留保の蓄積により、発行体主導の(より低利のローン等での) リファイナンス等によってメザニンが返済されること(この蓋然性の評価 のために、前段の事業性の判断が重要となる)。

 ・優先株の場合

   普通株取得請求権

   償還請求権

 ・劣後ローンの場合

   ステップアップ金利

   コベナンツ

2)出口戦略(Exit Strategy)

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

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3)リスクとリターンのバランス

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

 メザニンはシニアローンと比べて下記のようなリスクを抱えており (単純なデフォルトリスクだけではない)、リスクに見合った経済条 件(シニアローンよりは高いがエクイティの(普通株)の期待利回り よりは低い)が必要となる  

 具体的なリスクの種類

  ・倒産した場合の回収できないリスク(基本的には担保がない)

  ・回収の時期が不確実(期日がないか、あっても拘束力弱い)

  ・経営へのガバナンスが効かせにくい(普通株と違って通常議決 権がない、シニアローンと異なりコベナンツや担保で縛れる範 囲が限定)

 

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4)ドキュメンテーションのポイント

テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

・経済条件(金利配当等)の設定

  同じ目標利回りでも、投資先の事業計画、資金見通し、株主や

優先債権者のニーズ等を勘案して具体的な条件を検討

  (入り口で発生)

    アップフロントフィー等

  (期中に発生)

    金利や配当(レートの設定。払い方(一部ないし全部を繰

    り延べる場合もある))

  ( EXIT時に発生)

    償還/普通株転換

    収益性の補完のための新株予約権

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -メザニンファイナンス-

・他のステークホルダーとの調整

  ○投資契約(投資先との契約)

   投資先の義務(役員、事業計画の変更時の事前承諾等)

   メザニン投資家の義務(譲渡制限等) 

  ○株主(間)契約(他の優先株主、普通株主との契約)

   意思決定の調整(あれば)の規定

   EXITに関する規定(共同売却権、先買権、譲渡承認等)

  ○対債権者契約(シニアレンダーとの契約)

   利払い等の優先劣後に関する規定

   劣後貸付人、優先貸付人の相互の権利義務等

4)ドキュメンテーションのポイント(続き)

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

日本企業のバランスシート 日本企業のバランスシート

棚卸資産は

  約100兆円

(単位:億円)

平成 18/3 末金額 平成 18/3 末金額

流動資産  5,848,177  負債  8,606,167 現預金  1,304,129  流動負債  4,939,900 受取手形・売掛金  2,244,228  支払手形・買掛金  1,821,704 有価証券  150,887  短期借入金  1,570,848 

株式  54,945  金融機関借入金  1,116,838 公社債  41,677  その他の借入金  454,010 その他の有価証券  54,265  引当金その他  1,547,348 

棚卸資産  1,052,176  固定負債  3,666,267 製品又商品  551,480  社債  518,812 仕掛品  334,207  長期借入金  2,224,044 原材料・貯蔵品  166,489  金融機関借入金  1,864,749 

その他  1,096,757  その他の借入金  359,295 固定資産  6,977,167  引当金その他  923,411 繰延資産  26,841  資本  4,246,017 資産合計  12,852,185  負債及び資本合計  12,852,185 出所) 財務省「法人企業統計」

5.集合動産担保融資

  (1)集合動産担保融資の現状認識

     1)市場規模

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61 

テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

2)在庫等を抱える企業の資金面のニーズ

①資金調達面 •  不動産に依拠しない資金調達方法の拡大 •  流動資産を担保とした運転資金枠の確保

②余剰在庫の換金 •  季節品の売れ残り、返品などによる経常的に発生する余剰在 庫 

•  商品価値が大きく劣化している不良在庫

3)集合動産担保融資の潜在需要は大きい •  弊行に対する集合動産担保融資のご相談は、商品在庫が多い 卸小売業のみならず、原材料を抱える製造業など幅広い業種 で需要がある。 

•  また、集合動産担保融資に対して一部で「資金調達が困難な 会社」とのネガティブなイメージがあるが、実際には財務面 が健全な企業からの相談が多い。

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(2)集合動産担保融資の論点

1)法律面

  ・占有改定との併存

  動産の担保権者である金融機関等は、登記終了以降に第三 者が占有改定もしくは登記した場合、第三者に対抗できるこ とから、法律面における措置が手当されていることになる。

  しかし、登記以前に第三者により占有改定による対抗要件 が具備されている場合には、法律上、「登記」という対抗要 件と「占有改定」という対抗要件には優劣関係がないことか ら、登記よりも以前に具備されていた占有改定(=隠れた占 有改定)には勝てない。

    → 動産譲渡登記の前に隠れた占有改定の有無について契  

      約等を精査することにより確認することが重要

  

テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

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テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

(2)集合動産担保融資の論点(続き)

2)市場面

   ①動産を評価する専門事業者が少ない

   ②動産の2次流通市場の未発達

   →18年7月 評価・処分の両方ができる㈱ゴードン・ブラ  ザーズ・ジャパン設立などの動きあり

   ③集合動産担保融資に対するネガティブナイメージ

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(3)集合動産担保融資の意義

1)企業側のメリット

①企業の資金調達手段の多様化

②負債の組替の一手段となり得る

Ex.借換による偏った借入金弁済スケジュールの平準化、

在庫等を担保にコミットメントラインを設定など

③余剰である(不良)在庫売却の機会を提供

④企業の内部管理体制の強化・整備

2)金融機関側のメリット

①ファイナンス手段の多様化

②モニタリングにより、企業の状況が透明化される

 - 流動資産の動向も経営戦略を写す鏡

 - タイムリーに企業との対話を行うことが可能

テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

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(4)在庫担保融資のスキーム例

債務者 債務者

シローン実行

在庫(・売掛債権) 価値評価

在庫(・売掛債権) 価値評価

在庫(・売掛債権) モニタリング

在庫(・売掛債権) モニタリング

担保処分 (必要時)

担保処分 (必要時)

預金口座 預金口座

在庫 (原材料・製品)

在庫 在庫 (原材料・製品) (原材料・製品)

入金額を元利金回 収に充当

コベナンツ抵触

金融機関

(売掛債権) (売掛債権)

担保設定

㈱ゴードン・ブラザーズ・ ジャパンほか

㈱ゴードン・ブラザーズ・ ジャパンほか

業務委託

在庫評価会社

業務遂行

テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

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(5)在庫評価のイメージ

粗利益率 (過去のトレンド等を勘案)

販売予想 価格

在庫残高 (販売価格ベース)

仕入原価 (簿価)

専門業者 回収可能金額

専門業者 による 売上予想

価格 (回収額)

在庫評価金額

専門業者 による

在庫評価 金額

仕入業者への支払、 販管費等を控除

在庫残高 (仕入価格ベース)

個別項目毎に回収 率を試算

業態、規模、販路、 季節等を勘案

△ 評 価

控除項目

   

テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

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(6)ボロイングベースファイナンスのイメージ

流動資産

売掛金

在 庫

600 300

300

評価額 簿価 簿価

300

300

貸出基準額 (評価額=時価)

(ボロイングベース)

600

金融機関か らの借入金 残高を貸し 出し基準額 の範囲内に する

テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

(注)数字は説明上の仮定の数字

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(7)事業融資とコベナンツ

 1)コベナンツの必要性

①事業融資において、(リスクを完全に排除することは出来ないが)リスクを認識・

分析しコントロールする方策を検討することは重要。そのためには融資契約書で種々

の条件をコベナンツ(誓約事項)として合意しておくことが不可欠。

②借入企業や事業計画の内容(リスク要因)によって合理的な条件をクリエイテイブ

に設定していくもの。

 2)コベナンツの意義

①貸し手と借り手が事業計画に対する認識を共有し、不測の事態の際には次のアクシ

ョンを迅速にとって事業継続を目指すことが重要であり、貸し手と借り手の長期的な

リレーションシップの構築が大きな意味を持つ。

②コベナンツ違反は、貸し手がトリガー(担保実行)を引く道具になるが、これは最

終手段であって、コベナンツ自体はあくまで借り手に警鐘を鳴らし、事業改善策を当

事者間で協議を行うことができる環境整備の一手段。 3)コベナンツの水準

緩いコベナンツ 緩いコベナンツ 厳しいコベナンツ 厳しいコベナンツ 適正水準 適正水準

※破産直前にトリガーを引いても遅い場合あり ※順行状態でコベナンツヒットする建て付けは不適当

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(8)集合動産担保融資におけるコベナンツの考え方

~集合動産担保融資の特徴~

          常に商品が入れ替わり、担保評価額が日々変動する

    

 

数 量

変動要素

売上原価

販管費

在庫残高

営業利益

粗利率

売上高

運転資金(サイトの変更)

売上債権

仕入債務

(P/L) (B/S)

→ 在庫残高に対して影響を及ぼしうる変動要素に対してコベナンツを設定

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(9)集合動産担保融資の留意点

   2)在庫評価機関

   3)対抗要件の具備方法

      登記などについては、譲渡相手(企業)の考えや信用度も勘案

して検討。

 

  1)評価・処分のポイント      ①動産の換価処分性(個別性が高く、画一的な評価ができない)      ②想定回収率の算定      ③処分スキーム・販路の確保、販路別予想回収率の算定      ④処分に係る費用の見積もり算定      ⑤商品ロス率(実地棚卸と帳簿上の金額の差異)の確認      ⑥モニタリング体制の整備(内容、頻度)        → 借入人の財務状況等によって軽重を付ける   ⑦「在庫(→売掛金)→現預金」の流れをおさえる観点も重要

 

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(10)動産譲渡登記制度の概要        

①『種類』の特定  →商品カテゴリー等

②『場所』の特定  →保管場所の住所等

③『量的範囲』の指定  →(例)以下保管場所に存する以下種類の物件一切、及び今後同所に搬入される同種の物件一切

  

動産譲渡登記制度は、動産を活用した企業の資金調達の円滑化を図る ため、法人が行う動産の譲渡について、民法の特例として、民法の定め る対抗要件具備方法によるほか、公示性に優れた登記によって対抗要件 を備えることを可能とする制度として、平成17年10月3日から運用 が開始されたもの。   

動産譲渡登記に際しては目的物の範囲の特定が必要  

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東京法務局長に審査請求をすることができます。 不服申立方法

申請内容等により異なりますので,東京法務局民事行政部動産登録課にお問合せください。 標準処理時間

動産・債権譲渡登記令第11条ほか 審 査 基 準

上記提出先が相談窓口になっています。 相 談 窓 口

国民の祝日に関する法律に規定する休日及び年末年始の休日を除く月曜日から金曜日までの午前8時30分~午後5時15分 受 付 時 間

東京法務局民事行政部動産登録課が提出先となっています。 提  出  先

動産譲渡登記申請書  PDF 抹消登記申請書    PDF 延長登記申請書    PDF

記載要領・記載例

動産譲渡登記申請書  PDF  一太郎 抹消登記申請書    PDF  一太郎 延長登記申請書    PDF  一太郎

上記の申請書等については,様式を提供していますので,必要なものをクリックしてください。A4版縦の紙に印刷し,必要事項を記入してお使いく ださい。 なお,PDFの閲覧には,アドビシステムズ社が無償提供しているAdobe Readerが必要です。

申 請 書 様 式

法務省ホームページを御覧ください。 添付書類・部数

登録免許税を納付する必要があります。 動産譲渡登記:1件につき7,500円 延長登記:1件につき3,000円 抹消登記:1件につき1,000円

登 録 免 許 税

申請書を作成し,登記すべき事項等を記録した磁気ディスク(FD,MO又はCD-R)を添付して,東京法務局民事行政部動産登録課に提出してく ださい。

提 出 方 法

任意の時期 提 出 時 期

動産譲渡登記の申請をしようとする者 手 続 対 象 者

動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第7条,第9条,第10条 動産・債権譲渡登記令第7条,第8条ほか 動産・債権譲渡登記規則第8条ほか

手 続 根 拠

動産譲渡登記の申請 手  続  名

【民事局ホームページより抜粋】 テーマ②:事業再生ファイナンス  -集合動産担保融資-

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(11)集合動産担保融資の今後

本格的な在庫評価・ 処分業者の不在

動産に係る第3者対抗要 件具備の手段が不明確

在庫担保融資に係る 実例・ノウハウの不足

在庫担保融資に関する ネガティブなイメージ

ゴードン・ブラザーズ・ ジャパン社等の設立

昨年10月から動産登記 制度スタート

着実な取組実績の蓄積

優良会社による 在庫担保ファイナンスの増大

これまでの状況 今 後

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6.まとめ

お問い合わせ先

日本政策投資銀行 企業ファイナンス部

Tel 03-3244-1351

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