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1 日産自動車株式会社 動力伝達装置の構造・機能及び故障診断 通 称 名 車両型式 エンジン型式 適用時期 出 典 資 料 X-TRAIL DBA-T32 DBA-NT32 MR20DD 2013.12~2017.5 新型車解説書  T00PB4BC1J 整備要領書   T00SM4BA3J オートマチックトランスアクスル 1 概 要 ・変速比のワイドレンジ化、ユニットフリクションを低減した自動無段変速機、RE0F10F 型電子制御オート マチックトランスアクスル(エクストロニックCVT)を採用した。 ・加速時制御にステップ変速を採用した。 ・全車に ECO モードを採用した。 ・全車に CONSULT-Ⅲ(外部診断器)を対応させた。 ・全車に抗菌仕様のセレクトレバーノブを採用した。 仕 様 エンジン型式 MR20DD 駆動方式 2WD/4WD トルクコンバータ 型式 対称3要素1段2相型 ストールトルク比 2.016 トランスアクスル 型式 前進自動無段後退 1 段スチールベルト式 ユニット型式 RE0F10F 操作方式 リモートコントロールフロアシフト 変速比 前進 2.631-0.378 後退 1.960 最終減速比 6.386 制御方式 電子制御 オイルポンプ 形式 ベーン式ポンプ 駆動方式 エンジン、スプロケット及びチェーンによる駆動 電動オイルポンプ 駆動方式 TCM の制御によるモータ駆動 フルード 名称 ニッサン CVT フルード NS-3 量(ℓ) 約7.9

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日 産 自 動 車 株 式 会 社

動力伝達装置の構造・機能及び故障診断通 称 名 車 両 型 式 エンジン型式 適 用 時 期 出 典 資 料

X-TRAIL DBA-T32DBA-NT32 MR20DD 2013.12~2017.5 新型車解説書  T00PB4BC1J

整備要領書   T00SM4BA3J

オートマチックトランスアクスル

1 概 要

・変速比のワイドレンジ化、ユニットフリクションを低減した自動無段変速機、RE0F10F型電子制御オートマチックトランスアクスル(エクストロニックCVT)を採用した。

・加速時制御にステップ変速を採用した。・全車にECOモードを採用した。・全車にCONSULT-Ⅲ(外部診断器)を対応させた。・全車に抗菌仕様のセレクトレバーノブを採用した。仕 様

エンジン型式 MR20DD駆動方式 2WD/4WD

トルクコンバータ型式 対称3要素1段2相型ストールトルク比 2.016

トランスアクスル

型式 前進自動無段後退1段スチールベルト式ユニット型式 RE0F10F操作方式 リモートコントロールフロアシフト

変速比前進 2.631-0.378後退 1.960

最終減速比 6.386制御方式 電子制御

オイルポンプ形式 ベーン式ポンプ駆動方式 エンジン、スプロケット及びチェーンによる駆動

電動オイルポンプ 駆動方式 TCMの制御によるモータ駆動

フルード名称 ニッサンCVTフルードNS-3量(ℓ) 約7.9

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ニッサン

1) システム図(図-1)

図-1 システム図

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ニッサン

2) 油圧システム(図-2)

トランスアクスルの変速機構を作動させるために必要な油圧は、オイルポンプ、油圧コントロールバルブ、ソレノイドバルブなどにより作り出される。また、アイドリングストップ中は電動オイルポンプが作動し、エンジンのリスタート時に必要な油圧が作り出される。

図-2 油圧システム

制 御 概 要

ライン圧制御 高精度にライン圧制御(セカンダリ圧制御)を行うことにより、フリクションを低減させ、燃費の向上を図る。

変速制御

運転者の意思、車両の状況に合わせた駆動力を得られる変速比を選択するため、車速やアクセル開度等の車両走行状態を検出し、TCMにて最適な変速比の選択と到達するまでの工程を決定する。そして、その指示をプライマリ圧ソレノイドバルブとセカンダリ圧ソレノイドバルブに出力し、プーリへのライン圧の流入を制御し、プーリ(可動プーリ側)位置を決め、変速比を制御する。

セレクト制御N(P)⇒D(R)レンジへの操作時、アクセル開度、エンジン回転数、プライマリプーリ回転数、インプット回転数から、セレクト時のショックを和らげるために最適な作動圧を設定する。

ロックアップ制御

・トルクコンバータ内のロックアップクラッチを締結してコンバータの滑りをなくし、伝達効率を上げるように制御する。また、ロックアップクラッチをスリップ制御することにより、快適な走行を実現させる。

・ロックアップコントロールバルブには、ロックアップピストン室への作動油圧供給回路が接続されている。ロックアップコントロールバルブの切り換えは、TCMからの信号によりロックアップソレノイドバルブが行う。これにより、ロックアップピストン室へ供給する作動油圧の回路を解放側、または締結側に制御する。

・CVTフルードが低温のとき、または車両異常によりフェイルセーフモードに入っているときはロックアップ制御を禁止する。

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ニッサン

制 御 概 要

ECOモード制御ECOモードをONにすると、TCMは運転性をコントロール(無駄な加減速を減少、消費エネルギーの削減、ECO変速線への固定)する。これにより、実用燃費を向上させる走行をサポートする。

アイドリングストップシステム

・アイドリングストップシステムは、各コントロールユニット、センサ及びスイッチからの情報をもとにECMが総合制御を行っている。

・各センサ及びスイッチからの信号をもとにアイドリングストップ可能か判断している。・アイドリングストップ可能と判断した場合、CAN通信でECMにアイドリングストップ可能信号を送信する。

・ECMからはCAN通信でアイドリングストップ許可信号を受信し、その信号をもとに電動オイルポンプを駆動させる。

・電動オイルポンプリレーをONし、電動オイルポンプの駆動準備を行う。・Duty制御で電動オイルポンプを駆動させている。

2 構造・機能

1) 構成部品の配置

図-3 構成部品の配置

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ニッサン

2) CVTの主な構成部品と機能

部品名称 機 能トルクコンバータ エンジンのトルクを増大し、トランスアクスルに伝達する。

オイルポンプ

オイルポンプ駆動チェーンを介して、エンジンにより駆動されるベーン式オイルポンプを採用し、低回転域でのポンプ吐出量の高効率化と、高回転域でのポンプ吐出量の適性化を図った。オイルポンプからの吐出油はコントロールバルブへ送られ、プライマリ及びセカンダリプーリの作動油、クラッチの作動油及び各部潤滑油として使用される。

フォワードクラッチクラッチドラム、ピストン、ドライブプレート、ドリブンプレートで構成される湿式多板クラッチで、油圧にてピストンが作動してプレート類を締結し、サンギヤとインプットシャフトを直結させる前進用のクラッチである。

リバースブレーキトランスアクスルケース、ピストン、ドライブプレート、ドリブンプレートで構成される湿式多板ブレーキで、油圧にてピストンが作動しプレート類を締結し、プラネットキャリヤを固定させる後進用のブレーキである。

インターナルギヤ フォワードクラッチドラムと直結しており、プラネットキャリヤのピニオンプラネットの外周を回るギヤである。プラネットキャリヤの固定時に後進時の動力を伝達する。

プラネットキャリヤ キャリヤ、ピニオンプラネット、ピニオンシャフトで構成されており、プラネットキャリヤの固定、キャンセルにより前後進等の切り替えを行う。

サンギヤプラネットキャリヤ、インターナルギヤとのセット部品で、伝達された動力をプライマリ固定プーリ(FIX)へ伝える。フォワードクラッチ、リバースブレーキのどちらかの作動により、正転・逆転する。

インプットシャフトフォワードクラッチドラムと直結しており、トルクコンバータからの動力を伝達する。シャフトの中心部にはプライマリプーリへの油圧配送用の穴とロックアップON/OFF油圧配送用の穴がある。

プライマリプーリ 溝幅が軸方向に自由に変化できる一対のプーリと、スチールのコマを間断なく連ね、両側に多層のスチールリングでガイドされたスチールベルトにより構成されている。スチールベルトとプーリの巻付半径により、ローの状態からオーバドライブの状態まで連続的無段階に変化し、この溝幅は、プライマリプーリ及びセカンダリプーリの油圧によりコントロールされている。

セカンダリプーリ

スチールベルト

マニュアルシャフト マニュアルシャフトがPレンジのとき、マニュアルシャフトと連動しているパーキングロッドがパーキングポールを回転させる。パーキングポールが回転することによりパーキングギヤとかみ合い、パーキングギヤを固定する。その結果、パーキングギヤと一体のセカンダリプーリが固定される。

パーキングロッドパーキングポールパーキングギヤアウトプットギヤ

減速ギヤは、一次減速(アウトプットギヤ、アイドラギヤ対)及び二次減速(リダクションギヤ、ファイナルギヤ対)の2段で構成されており、いずれもヘリカルギヤを使用している。

アイドラギヤリダクションギヤディファレンシャルマニュアルバルブ 各セレクトポジションに応じて、クラッチ作動圧を各回路に配送する。

ロックアップコントロールバルブ トルクコンバータの締結圧、非締結圧を調圧する。トルクコンバータレギュレータバルブ トルクコンバータへの供給圧を走行状態に応じた最適な圧力に調圧する。プレッシャレギュレータバルブ オイルポンプからの吐出圧を走行状態に応じた最適な圧力(ライン圧)に調圧する。セカンダリレデューシングバルブ ライン圧を減圧し、セカンダリ圧を調圧する。プライマリレデューシングバルブ ライン圧を減圧し、プライマリ圧を調圧する。

パイロットバルブA

ライン圧を減圧し、下記のソレノイドバルブへのパイロット圧を調圧する。・プライマリ圧ソレノイドバルブ・セカンダリ圧ソレノイドバルブ・セレクトソレノイドバルブ・ライン圧ソレノイドバルブ

パイロットバルブB パイロット圧を減圧し、ロックアップソレノイドバルブへのパイロット圧を調圧する。

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ニッサン

⑵ プーリ(図-5)

プーリは、プライマリ、セカンダリともに11°の傾斜面を持つ固定プーリと可動プーリにより構成され、可動プーリ側の背面に油圧室(プライマリまたはセカンダリチャンバ)を持っている。可動プーリは、ボールスプラインにより軸上をしゅう動でき、プーリの溝幅を変える働きをしている。エンジン負荷(アクセル開度)、プライマリプーリ回転数とセカンダリプーリ回転数(車速)を入力信号として、プライマリ、セカンダリプーリの作動圧を変化させ、プーリの溝幅を制御している。

図-5 プーリ

3) ベルト&プーリ

溝幅が軸方向に自由に変化できる一対のプーリと、スチールのコマを間断なく連ね、両側に多層のスチールリングでガイドされたスチールベルトにより構成されている。スチールベルトとプーリの巻付半径により、ローの状態からオーバドライブの状態まで連続的無段階に変化し、この溝幅はプライマリプーリ及びセカンダリプーリの油圧によりコントロールされている。⑴ スチールベルト(図-4)

スチールベルトは、数百個のスチールのコマと数枚重ねのスチールリング2本で構成されている。このスチールベルトの特徴は、ゴムベルト等が引っ張り作用で動力を伝達するのに対して、スチールのコマの圧縮作用によって動力伝達が行われる。スチールのコマが動力伝達を行うには、プーリの斜面との間に摩擦力が必要となり、次のようなメカニズムで発生する。セカンダリプーリに油圧が作用しコマをはさむ。→コマが外側へ押し広げられる。→スチールリングがふんばる。→スチールリングに張力が発生する。→プライマリプーリ側のコマがプーリ間にはさまれる。→スチールベルトとプーリ間に摩擦力が発生する。すなわち、圧縮により動力伝達を行うスチールのコマと、それに必要な摩擦力を維持するスチールリングとが役割を分担している。このため、スチールリングの張力は、全体で分散して受け持たれ、かつ応力変動も少なく、耐久性に優れている。

図-4 スチールベルト

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ニッサン

⑵ トランスミッションレンジスイッチ(図-7)

トランスミッションレンジスイッチは、トランスアクスルケースの上部に取り付けられており、セレクトレバーの位置を検出する。

⑶ インプット回転センサ(図-8)

インプット回転センサは、トランスアクスルケース前部に取り付けられており、インプットシャフトの回転数を検出し、回転体の速度に応じたON-OFFパルス信号を発生する。TCMはそのパルス信号から回転体の速度を判定する。

⑷ プライマリプーリ回転センサ(図-9)

・プライマリプーリ回転センサは、サイドカバーに取り付けられており、プライマリプーリの回転数を検出する。・プライマリプーリ回転センサは、回転体の速度に応じたON-OFFパルス信号を発生させ、TCMはそのパルス信号から回転体の速度を判断する。

⑸ アウトプット回転センサ(図-10)

・アウトプット回転センサは、トランスアクスルケース後部に取り付けられており、ファイナルギヤの回転数を検出し、TCMに信号を送信する。・アウトプット回転センサ回転体の速度に応じたON-OFFパルス信号を発生させ、TCMは、アウトプット回転センサからの信号によりセカンダリプーリの回転数を算出する。

4) CVTシステムの主な構成部品と機能

⑴ TCM(図-6)

・TCMはマイクロコンピュータ及び信号と電源の入出力用コネクタで構成されている。・各センサ、スイッチ及び他のコントロールユニットからの信号により車両走行状態を判断し、最適にトランスアクスルを制御する。主な制御項目は以下の9種類である。

ライン圧制御 変速制御セレクト制御 ロックアップ制御ECOモード制御 アイドリングストップシステムフェイルセーフ 自己診断機能

CONSULT-Ⅲとの通信機能

図-6 TCM

図-7 トランスミッションレンジスイッチ

図-8 インプット回転センサ

図-9 プライマリプーリ回転センサ

図-10 アウトプット回転センサ

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⑹ 油温センサ(図-11)

・油温センサは、コントロールバルブに取り付けられており、CVTフルード温度を検知する。・油温センサにはサーミスタを使用しており、CVTフルードの温度変化を抵抗値変化に変換することで、信号電圧値を変化させる。TCMはその信号電圧値からCVTフルード温度を判断する。

図-11 油温センサ

⑺ プライマリ圧センサ(図-12)

・プライマリ圧センサは、コントロールバルブに取り付けられており、プライマリプーリに掛かる圧力を検出する。・プライマリ圧センサ内のセラミック素子に圧力が掛かると、セラミック素子が変形し電圧変化が起こる。TCMはその電圧変化からセカンダリ圧を判断する。なお、電圧は圧力の上昇に伴って高くなる。

図-12 プライマリ圧センサ

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⑽ プライマリ圧ソレノイドバルブ(図-15)

・プライマリ圧ソレノイドバルブは、コントロールバルブに取り付けられており、プライマリレデューシングバルブを制御する。・プライマリ圧ソレノイドバルブは、リニアソレノイドバルブ[N/H(ノーマルハイ)タイプ]を採用した。

⑻ セカンダリ圧センサ(図-13)

・セカンダリ圧センサは、コントロールバルブに取り付けられており、セカンダリプーリに掛かる圧力を検出する。・セカンダリ圧センサ内の金属製ダイヤフラムに圧力が掛かると、金属製ダイヤフラムが変形し電圧変化が起こる。TCMは、その電圧変化からセカンダリ圧を判断する。なお、電圧は圧力の上昇に伴って高くなる。

図-13 セカンダリ圧センサ

⑼ ライン圧ソレノイドバルブ(図-14)

・ライン圧ソレノイドバルブは、コントロールバルブに取り付けられており、プレッシャレギュレータバルブを制御する。・ライン圧ソレノイドバルブは、リニアソレノイドバルブ[N/H(ノーマルハイ)タイプ]を採用した。

図-14 ライン圧ソレノイドバルブの特性

図-15 プライマリ圧ソレノイドバルブの特性

⑾ セカンダリ圧ソレノイドバルブ(図-16)

・セカンダリ圧ソレノイドバルブは、コントロールバルブに取り付けられており、セカンダリレデューシングリバルブを制御する。・セカンダリ圧ソレノイドバルブは、リニアソレノイドバルブ[N/H(ノーマルハイ)タイプ]を採用した。

図-16 セカンダリ圧ソレノイドバルブの特性

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⒀ ロックアップソレノイドバルブ(図-18)

・ロックアップソレノイドバルブは、コントロールバルブに取り付けられており、ロックアップコントロールバルブを制御する。・ロックアップソレノイドバルブは、リニアソレノイドバルブ[N/L(ノーマルロー)タイプ]を採用した。

⑿ セレクトソレノイドバルブ(図-17)

・セレクトソレノイドバルブは、コントロールバルブに取り付けられており、フォワードクラッチ及びリバースブレーキの締結圧を調圧する。・セレクトソレノイドバルブは、リニアソレノイドバルブ[N/H(ノーマルハイ)タイプ]を採用した。

図-17 セレクトソレノイドバルブの特性

図-18 ロックアップソレノイドバルブの特性

⒁ Gセンサ(図-19)

・Gセンサは、車両に作用する前後G及び傾斜を検出している。・Gセンサは、車両に作用する前後G及び傾斜を電圧信号に変換する。TCMは、その電圧信号から車両の前後G及び傾斜角を判断する。

図-19 Gセンサ

⒂ スポーツモードスイッチ(図-20)

・スポーツモードスイッチは、セレクトレバーノブに取り付けられている。・コンビネーションメータ内のスポーツ表示灯が消灯しているときにスポーツモードスイッチを押すと、スポーツモード状態になりスポーツ表示灯が点灯し、コンビネーションメータ内のスポーツ表示灯が点灯しているときにスポーツモードスイッチを押すと、スポーツモード状態が解除されスポーツ表示灯が消灯する。 図-20 スポーツモードスイッチ

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⒄ 電動オイルポンプリレー

・電動オイルポンプリレーは、車速が11km/h以上になるとOFFになり、車速6km/h以下になるとONになる。・TCMが行う電動オイルポンプの駆動準備を可能とする。

3 点検・整備

1) ダイアグコードの表示・消去方法

⑴ 表示方法

CONSULT-Ⅲ(外部診断器)を接続し起動させ、「AT/CVT」、「自己診断結果」をタッチし、ダイアグコードの表示を行う。⑵ 消去方法

①修理作業完了後、キースイッチがONになっていたら、一度OFFにし、10秒以上経過後ONにする。(エンジンは始動させないこと)②CONSULT-Ⅲ(外部診断器)を接続し起動させる、「AT/CVT」をタッチする。③「自己診断結果」をタッチする。④「記憶消去」をタッチする。(TCMに記憶しているDTCが消去される)

⒃ 電動オイルポンプ(図-21)

・電動オイルポンプは、TCMからの指示信号でアイドリングストップ中に駆動し、エンジンのリスタート時に必要な油圧をトランスアクスルに内蔵されているメカニカルオイルポンプの代わりに確保する。・駆動中はTCMに状態信号(Duty)を送信している。

状態信号(Duty) 状 態0% 電動オイルポンプ電源OFF10% -20% 過熱保護30% 正常停止中40% 起動中50% 正常駆動中

60-100% 不具合の可能性あり

図-21 電動オイルポンプ

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⑶ ダイアグコード一覧

DTC 自己診断項目 DTC検出条件

P062F EEPROM・TCM(フラッシュROM)・ハーネス、またはコネクタ(TCMバッテリ電源回路の断線、またはショート)

P0705 トランスミッションレンジセンサA・トランスミッションレンジスイッチ・ハーネス、またはコネクタ(トランスミッションレンジスイッチ~TCM間回路のショート)

P0706 トランスミッションレンジセンサA

・トランスミッションレンジスイッチ・コントロールケーブル・ハーネス、またはコネクタ(キーSW~トランスミッションレンジスイッチ間回路の断線、トランスミッションレンジスイッチ~TCM間回路の断線)

P0712 トランスミッション油温センサA ・油温センサ・ハーネス、またはコネクタ(油温センサ回路の地絡)

P0713 トランスミッション油温センサA ・油温センサ・ハーネス、またはコネクタ(油温センサ回路の断線、または天絡)

P0715 インプット回転センサA・プライマリプーリ回転センサ・ハーネス、またはコネクタ(プライマリプーリ回転センサ回路の断線、またはショート)

P0717 インプット回転センサA・インプット回転センサ・ハーネス、またはコネクタ(インプット回転センサ回路の断線、またはショート)

P0740 トルクコンバータ・ロックアップソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(ロックアップソレノイドバルブ回路の断線、または天絡)

P0743 トルクコンバータ ・ロックアップソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(ロックアップソレノイドバルブ回路の地絡)

P0744 トルクコンバータ・ロックアップソレノイドバルブ・コントロールバルブASSY・トルクコンバータ

P0746 油圧ソレノイドA ・ライン圧ソレノイドバルブ・コントロールバルブASSY

P0776 油圧ソレノイドB セカンダリ圧ソレノイドバルブ

P0778 油圧ソレノイドB ・セカンダリ圧ソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(セカンダリ圧ソレノイドバルブ回路の地絡)

P0779 油圧ソレノイドB セカンダリ圧ソレノイドバルブ

P0841 油圧センサ/スイッチA

・プライマリ圧センサ・セカンダリ圧センサ・コントロールバルブASSY・ハーネス、またはコネクタ(油圧センサ回路の断線、またはショート)

P0847 油圧センサ/スイッチB・セカンダリ圧センサ・コントロールバルブASSY・ハーネス、またはコネクタ(セカンダリ圧センサ回路の断線、または地絡)

P0848 油圧センサ/スイッチB・セカンダリ圧センサ・コントロールバルブASSY・ハーネス、またはコネクタ(セカンダリ圧センサ回路の天絡)

P084C 油圧センサ/スイッチH ・プライマリ圧センサ・コントロールバルブASSY

P084D 油圧センサ/スイッチH・プライマリ圧センサ・コントロールバルブASSY・ハーネス、またはコネクタ(プライマリ圧センサ回路の断線、または地絡)

P0863 TCM通信 TCMP0890 TCM ハーネス、またはコネクタ(TCMバッテリ電源回路の断線、またはショート)

P0962 油圧ソレノイドA ・ライン圧ソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(ライン圧ソレノイドバルブ回路の地絡)

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DTC 自己診断項目 DTC検出条件

P0963 油圧ソレノイドA・ライン圧ソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(ライン圧ソレノイドバルブ回路の断線、または天絡)

P0965 油圧ソレノイドB・プライマリ圧ソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(プライマリ圧ソレノイドバルブ回路の断線、または天絡ショート)

P0966 油圧ソレノイドB ・プライマリ圧ソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(プライマリ圧ソレノイドバルブ回路の地絡)

P0967 油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイド)

・プライマリ圧ソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(プライマリ圧ソレノイドバルブ回路の断線、または天絡)

P1586 Gセンサ ・Gセンサ・ハーネス、またはコネクタ(Gセンサ回路)

P1588 Gセンサ Gセンサ

P188E 電動オイルポンプ

・電動オイルポンプ・電動オイルポンプリレー・TCM・ハーネス、またはコネクタ(TCM~電動オイルポンプ間回路の断線、またはショート)

P188F 電動オイルポンプ ・電動オイルポンプ・セカンダリ圧センサ

P1890 電動オイルポンプリレー

・電動オイルポンプリレー・TCM・ハーネス、またはコネクタ(TCM~電動オイルポンプ間回路の断線、またはショート)

P2765 インプット回転センサB ・アウトプット回転センサ・ハーネス、またはコネクタ(アウトプット回転センサ回路の断線)

P2813 セレクトソレノイド・セレクトソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(セレクトソレノイドバルブ回路の断線、または天絡ショート)

P2814 セレクトソレノイド ・セレクトソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(セレクトソレノイドバルブ回路の地絡)

P2815 セレクトソレノイド・セレクトソレノイドバルブ・ハーネス、またはコネクタ(セレクトソレノイドバルブ回路の断線、または天絡)

U0073 通信バスAオフ ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の不良)

U0100 CAN通信系(ECM A) ・ECM・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U0102 CAN通信系(トランスファ) ・4WD C/U・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U0140 CAN通信系(BCM) ・BCM・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U0141 CAN通信系(BCM A) ・IPDM E/R・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U0155 CAN通信系(IPC) ・コンビネーションメータ・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U0300 CAN通信データ TCM以外のコントロールユニットU1000 CAN通信系 ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U110F CAN通信系(ECM) ・ECM・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U1111 CAN通信系(シャシコントロール) ・シャシコントロールモジュール・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

U1117 CAN通信系(ABS) ・ABSアクチュエータ・C/U・ハーネス、またはコネクタ(CAN通信線の断線、またはショート)

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2) 外部診断器の活用による点検・整備

オートマチックトランスミッション系統に不具合が発生し、外部診断器によりダイアグコードが出力された場合には、ダイアグコード一覧項目に従って点検・整備を行う必要がある。ここでは、以下に示すトランスミッション油温センサA系統異常、油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイド)系統異常、セレクトソレノイド系統異常を例として点検・整備方法を説明する。ⅰ) トランスミッション油温センサA系統異常(DTC:P0713)①症 状:フェイルセーフ制御になる。セレクトショックが大きくなる。発進、加速が鈍いなど。②故障内容:信号線断線③点検方法:外部診断器を使用するⅱ) 油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイド)系統異常(DTC:P0967)①症 状:フェイルセーフ制御になる。セレクトショックが大きくなる。発進、加速が鈍いなど。②故障内容:信号線断線③点検方法:外部診断器を使用するⅲ) セレクトソレノイド系統異常(DTC:P2815)①症 状:フェイルセーフ制御になる。セレクトショックが大きくなるなど。②故障内容:信号線断線③点検方法:外部診断器を使用する

⑴ トランスミッション油温センサA系統異常(図-22)

図-22 トランスミッション油温センサA系統異常

イ 症 状

フェイルセーフ制御になる。フェイルセーフ時は、下記車両挙動となる・エンジン始動時のエンジン冷却水温度が10以上のとき-発進が鈍い-加速が鈍い-アイドリングストップを禁止する-アイドリングストップ中は、エンジンをリスタートさせる-電動オイルポンプリレーをOFFにする

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・エンジン始動時のエンジン冷却水温度が-35未満、または-35以上~10未満のとき-セレクトショックが大きい-発進が鈍い-加速が鈍い-アイドリングストップを禁止する-アイドリングストップ中は、エンジンをリスタートさせる-電動オイルポンプリレーをOFFにする

ロ 原因説明

油温センサ経路が断線すると、CVTフルード温度が正しく検出できず、ライン圧制御、変速制御、セレクト制御、ロックアップ制御が正しく機能しなくなる。CONSULT-Ⅲによる自己診断

DTC 自己診断項目 DTC検出条件

P0713 トランスミッション油温センサA

下記条件が全て成立した状態を5秒以上継続した場合・TCM電源電圧:11Vを超える・油温センサ検出電圧:2.48V以上・車速:10km/hを超える

ハ 点検方法

 TCM~CVTユニット間回路の点検1

①キースイッチをOFFにする。②TCMコネクタ及びCVTユニットコネクタを取り外す。③TCM車両側ハーネスコネクタ~CVTユニット車両側ハーネスコネクタ間の導通を点検する。

TCM CVTユニット導 通

コネクタ 端 子 コネクタ 端 子

F2512

F2412

あ り11 18

点検結果は正常か?YES >>へNO >>不具合箇所を修理、または交換する。

 TCM~CVTユニット間回路の点検2

①キースイッチをONにする。②TCM車両側ハーネスコネクタ~ボディアース間の電圧を点検する。

+- 電 圧TCM

コネクタ 端 子F25 12 ボディアース 約0V

点検結果は正常か?YES >>へNO >>不具合箇所を修理、または交換する。

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 油温センサの点検

①油温センサを点検する。

CVTユニットコネクタ測定条件 抵 抗

端 子

12-18

CVTフルード温度:20 6.29~6.83kΩ

CVTフルード温度:50 2.10~2.25kΩ

CVTフルード温度:80 0.85~0.90kΩ

点検結果は正常か?YES >>点検終了NO >>油温センサ不良のため、ターミナルコードASSYを交換する。

⑵ 油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイドB)系統異常(図-23)

図-23 油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイドB)系統異常

イ 症 状

フェイルセーフ制御になる。フェイルセーフ時は、下記車両挙動となる。・セレクトショックが大きい・発進が鈍い・加速が鈍い・ロックアップしない・アイドリングストップを禁止する・アイドリングストップ中は、エンジンをリスタートさせる・電動オイルポンプリレーをOFFにする

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ロ 原因説明

油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイド)系統が断線すると、ライン圧制御、変速制御が正しくできなくなり、セレクトショックが大きくなったり、発進が鈍くなる。CONSULT-Ⅲによる自己診断

DTC 自己診断項目 DTC検出条件

P0967 油圧ソレノイドB(プライマリ圧ソレノイド)

下記条件が全て成立した状態を0.2秒以上継続した場合・TCM電源電圧:11Vを超える・該当DTC以外のDTCを検出していない・ソレノイドバルブ駆動回路の断線、天絡が成立

ハ 点検方法

 TCM~CVTユニット間回路の点検

①キースイッチをOFFにする②TCMコネクタ及びCVTユニットコネクタを取り外す。③TCM車両側ハーネスコネクタ~CVTユニット車両側ハーネスコネクタ間の導通を点検する。

TCM CVTユニット導 通

コネクタ 端 子 コネクタ 端 子F25 40 F24 2 あ り

点検結果は正常か?YES >>へNO >>不具合箇所を修理、または交換する。

 CVTユニット~ボディアース間回路の点検

①CVTユニットコネクタ~ボディアース間の抵抗を点検する。

CVTユニット- 測定条件 抵 抗

コネクタ 端 子

F205 2 ボディアース

CVTフルード温度:20 5.5~7.0Ω

CVTフルード温度:50 6.0~8.0Ω

CVTフルード温度:80 6.5~8.5Ω

点検結果は正常か?YES >>診断終了NO >>へ

 CVTユニット~コントロールバルブ間回路の点検

①コントロールバルブコネクタを取り外す。②CVTユニットコネクタ~コントロールバルブコネクタ間の導通を点検する。

CVTユニット コントロールバルブ導 通

コネクタ 端 子 コネクタ 端 子F205 2 F206 9 あ り

点検結果は正常か?YES >>へNO >>ターミナルコードASSYを交換する。

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 コントロールバルブ~ボディアース間回路の点検

①コントロールバルブ~ボディアース間の抵抗を点検する。

コントロールバルブ- 測定条件 抵 抗

端 子

9 ボディアース

CVTフルード温度:20 5.5~7.0Ω

CVTフルード温度:50 6.0~8.0Ω

CVTフルード温度:80 6.5~8.5Ω

点検結果は正常か?YES >>診断終了NO >>プライマリ圧ソレノイドバルブ回路不良のため、トランスアクスルASSYを交換する。

⑶ セレクトソレノイド系統異常

図-24 セレクトソレノイド系統異常

イ 症 状

フェイルセーフ制御になる。フェイルセーフ時は、下記車両挙動となる。・セレクトショックが大きい・アイドリングストップを禁止する・アイドリングストップ中は、エンジンをリスタートさせる・電動オイルポンプリレーをOFFにするロ 原因説明

セレクトソレノイド系統に異常が発生すると、セレクト制御が正しくできなくなり、セレクトショックが大きくなる。CONSULT-Ⅲによる自己診断

DTC 自己診断項目 DTC検出条件

P2815 セレクトソレノイド

下記条件が全て成立した状態を0.2秒以上継続した場合・TCM電源電圧:11Vを超える・該当DTC以外のDTCを検出していない・ソレノイドバルブ駆動回路の断線、天絡が成立

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ハ 点検方法

 TCM~CVTユニット間回路の点検

①キースイッチをOFFにする。②TCMコネクタ及びCVTユニットコネクタを取り外す。③TCM車両側ハーネスコネクタ~ボディアース間の導通を点検する。

TCM CVTユニット導 通

コネクタ 端 子 コネクタ 端 子F25 37 F24 4 あ り

点検結果は正常か?YES >>へNO >>不具合部位を修理、または交換する。

 CVTユニット~ボディアース間回路の点検

①CVTユニットコネクタ~ボディアース間の抵抗を点検する。

CVTユニット- 測定条件 抵 抗

コネクタ 端 子

F205 4 ボディアースCVTフルード温度:20 5.5~7.0ΩCVTフルード温度:50 6.0~8.0ΩCVTフルード温度:80 6.5~8.5Ω

点検結果は正常か?YES >>診断終了NO >>へ

 CVTユニット~コントロールバルブ間回路の点検

①コントロールバルブコネクタを取り外す。②CVTユニットコネクタ~コントロールバルブコネクタ間の導通を点検する。

CVTユニット コントロールバルブ導 通

コネクタ 端 子 コネクタ 端 子F205 4 F206 4 あ り

点検結果は正常か?YES >>へNO >>ターミナルコードASSYを交換する。

 コントロールバルブ~ボディアース間回路の点検

①コントロールバルブコネクタを取り外す。②CVTユニットコネクタ~コントロールバルブコネクタ間の導通を点検する。

コントロールバルブ- 測定条件 抵 抗

端 子

4 ボディアースCVTフルード温度:20 5.5~7.0ΩCVTフルード温度:50 6.0~8.0ΩCVTフルード温度:80 6.5~8.5Ω

点検結果は正常か?YES >>診断終了NO >>セレクトソレノイドバルブ回路不良のため、トランスアクスルASSYを交換する。

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4 部品脱着整備時における付帯作業 

1) TCM交換時の作業

⑴ 概 要

TCMを交換する場合は、下記の作業を行う。イ TCMデータ(車両仕様)の保存及び書き込み

新品のTCMには車両仕様が書き込まれていないため、CONSULT-Ⅲを使用して車両仕様を書き込む必要がある。ロ TCMデータ(IP特性値)の保存及び書き込み

TCMは、各ソレノイドのデータ(固有特性値)を取り込むことで正確な制御を可能にするため、TCMを交換する場合は、CONSULT-Ⅲに交換前のTCMのデータを保存し、新しいTCMに保存したデータを書き込む必要がある。

〔参 考〕

CVTユニットコネクタ脱着要領(図-25)

⑴ 取り外し

バイオネットリング①を反時計回りに回転させ、CVTユニットコネクタ②を取り外す。

⑵ 取り付け

①CVTユニットコネクタのマーキングとバイオネットリングのマーキングの位置を合わせ、CVTユニットコネクタを挿入する。②バイオネットリングを時計方向に回す。

③CVTユニットコネクタのマーキングとバイオネットリングの細長スリットが図のように一致するまで(正規かん合状態になるまで)バイオネットリングを時計方向に回す。

注意  ・CVTユニットコネクタのマーキングとバイオネッ

トリング細長スリットの位置を確実に合わせる。ま

た、図のような半かん合状態にならないこと。

・バイオネットリング細長スリットと他の凹み部を間

違えないこと。

図-25 CVTユニットコネクタ脱着要領

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ハ Gセンサキャリブレーション

TCMは、Gセンサのキャリブレーションデータ(固有特性値)を記憶することで正確な制御を可能にするため、TCMを交換した場合は、Gセンサのキャリブレーションを実施する必要がある。ニ 電動オイルポンプのエア抜き

TCMを交換した場合、TCMに記憶されている電動オイルポンプエア抜き状態もリセットされているため、データモニタには“未完了”と表示されてしまう。その値を“完了”にするためにエア抜きを実施する必要がある。⑵ 作業手順

 TCMデータ(IP特性値)の保存

参考  この作業により、TCMが記憶しているソレノイドのデータをCONSULT-Ⅲに保存する。

CONSULT-Ⅲを使用する①キースイッチをOFFにする。②外した全ハーネスコネクタを再接続する。③キースイッチをONにする。④“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。⑤“IP特性値読み込み-TCM交換時”を選択する。⑥CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMデータをCONSULT-Ⅲに保存する。>>へ

 TCMデータ(車両仕様)の保存

参考  この作業により、TCMが記憶している車両仕様のデータをCONSULT-Ⅲに保存する。

CONSULT-Ⅲを使用する①CONSULT-Ⅲの“リプロ/プログラミング、C/U設定(コンフィグ)”を選択する。②“AT/CVT”を選択する。参考  AT/CVTが表示されずTCMデータをCONSULT-Ⅲに保存できなかった場合は、手順へ

③“プログラミング”を選択する。④CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMデータをCONSULT-Ⅲに保存する。>>へ

 TCM交換

①キースイッチをOFFにし、10秒以上待つ。②TCMを交換する。>>へ

 TCMデータ(車両仕様)の書き込み

参考  この作業により、車両仕様のデータをTCMに書き込む。

CONSULT-Ⅲを使用する①CONSULT-Ⅲの“プログラミング”を選択する。②CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMにデータを書き込む。>>へ

 TCMデータ(IP特性値)の書き込み

参考  この作業により、ソレノイドのデータをTCMに書き込む。

CONSULT-Ⅲを使用する

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①キースイッチをOFFにし、10秒以上待つ。②キースイッチをONにする。③“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。④“作業サポート”の“IP特性値書き込み-TCM交換時”を選択する。⑤CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMにデータを書き込む。>>へ

 Gセンサキャリブレーション実施

Gセンサのキャリブレーションを実施する。>>へ

 電動オイルポンプのエア抜き

電動オイルポンプのエア抜きを実施する。>>作業終了2) トランスアクスルASSY交換時の作業

⑴ 概 要

トランスアクスルASSYを交換した場合は、下記の作業を行う。イ TCMデータ(IP特性値)の書き込み

TCMは、各ソレノイドのデータ(固有特性値)を取り込むことで正確な制御を可能にするため、トランスアクスルASSYを交換した場合は、TCMに新しいデータを書き込む必要がある。ロ CVTフルード劣化度データの消去

TCMは、車両の走行状態から算出したCVTフルードの劣化度合を記録しているため、トランスアクスルASSYを交換した場合は、TCMが記録しているCVTフルード劣化度データを消去する必要がある。

ハ 電動オイルポンプのエア抜き

電動オイルポンプはオイルパンからサブストレーナを介してCVTフルードを吸い上げるため、サブストレーナ内にエアが入っている場合、必要な油圧を発生させることができない。そのため、トランスアクスルASSYを交換した場合は、エア抜きを行う必要がある。

⑵ 作業手順

 シリアルNo.確認(図-26)

新しいトランスアクスルASSYのシリアルNo.を書き留める。

図-26 シリアルNo.の確認

>>へ

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 TCMデータ(IP特性値)の書き込み

参考  この作業により、新しいソレノイドのデータをTCMに書き込む。

CONSULT-Ⅲを使用する注意  作業を中断した場合は、再度付属のCDからデータを取得すること。

①セレクトレバーをPレンジにする。②キースイッチをOFFにし、10秒以上待つ。③キースイッチをONにする。④付属のCDをCONSULT-Ⅲに挿入する。「CONSULT-Ⅲ取扱説明書」を参照する。⑤“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。⑥“IP特性値書き込み-AT/CVT交換時”を選択する。⑦CONSULT-Ⅲに表示されるシリアルNo.と書き留めたトランスアクスルASSYのシリアルNo.が一致することを確認する。⑧CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMにデータを書き込む。参考  書き込みが完了すると、コンビネーションメータのシフトポジションインジケータに「P」が表示する。

>>へ CVTフルード劣化度データ消去の実施

CONSULT-Ⅲを使用する①“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。②“CVTF劣化度確認”を選択する。③“消去”を選択する。>>へ

 電動オイルポンプのエア抜き

電動オイルポンプのエア抜きを実施する。>>作業終了3) TCM及びトランスアクスルASSY交換時の作業

⑴ 概 要

TCMとトランスアクスルASSYを同時に交換する場合は、下記の作業を行う。イ TCMデータ(車両仕様)の保存及び書き込み

新品のTCMには車両仕様が書き込まれていないため、CONSULT-Ⅲを使用して車両仕様を書き込む必要がある。ロ TCMデータ(IP特性値)の書き込み

TCMは、各ソレノイドのデータ(固有特性値)を取り込むことで、正確な制御を可能にするため、トランスアクスルASSYを交換した場合は、TCMに新しいデータを書き込む必要がある。ハ Gセンサキャリブレーション

TCMは、Gセンサのキャリブレーションデータ(固有特性値)を記憶することで正確な制御を可能にするため、TCMを交換した場合はGセンサのキャリブレーションを実施する必要がある。ニ 電動オイルポンプのエア抜き

電動オイルポンプはオイルパンからサブストレーナを介してCVTフルードを吸い上げるため、サブストレーナ内にエアが入っている場合、必要な油圧を発生させることができない。そのため、トランスアクスルASSYを交換した場合は、エア抜きを行う必要がある。

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⑵ 作業手順

 TCMデータ(車両仕様)の保存

参考  この作業により、TCMが記憶している車両仕様のデータをCONSULT-Ⅲに保存する。

CONSULT-Ⅲを使用する①キースイッチをOFFにする。②外した全ハーネスコネクタを再接続する。③キースイッチをONにする。④CONSULT-Ⅲの“リプロ/プログラミング、C/U設定(コンフィグ)”を選択する。⑤“AT/CVT”を選択する。参考  AT/CVTが表示されずTCMデータをCONSULT-Ⅲに保存できなかった場合は、手順へ

⑥“プログラミング”を選択する。⑦CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMデータをCONSULT-Ⅲに保存する。>>へ

 TCM及びトランスアクスルASSY交換(図-27)

TCM及びトランスアクスルASSYを交換する。注意  新しいトランスアクスルASSYのシリアルNo.を書き留ておくこと。

図-27 TCM及びトランスアクスルASSY交換

>>へ TCMデータ(車両仕様)の書き込み

参考  この作業により、車両仕様のデータをTCMに書き込む。

CONSULT-Ⅲを使用する①CONSULT-Ⅲの“プログラミング”を選択する。②CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMにデータを書き込む。>>へ

 TCMデータ(IP特性値)の書き込み

参考  この作業により、新しいソレノイドのデータをTCMに書き込む。

CONSULT-Ⅲを使用する①キースイッチをONにする。②付属のCDをCONSULT-Ⅲに挿入する。「CONSULT-Ⅲ取扱説明書」を参照する。③“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。④“IP特性値書き込み-AT/CVT交換時”を選択する。

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⑤CONSULT-Ⅲに表示されるシリアルNo.と書き留めたトランスアクスルASSYのシリアルNo.が一致することを確認する。⑥CONSULT-Ⅲの表示画面に従い、TCMにデータを書き込む。参考  書き込みが完了すると、コンビネーションメータのシフトポジションインジケータに「P」が表示する。

>>へ Gセンサキャリブレーション実施

Gセンサのキャリブレーションを実施する。>>へ

 電動オイルポンプのエア抜き

電動オイルポンプのエア抜きを実施する。>>作業終了4) Gセンサキャリブレーション

⑴ 概 要

TCMは、Gセンサのキャリブレーションデータ(固有特性値)を記憶することで正確な制御を可能にするため、下記作業を行った場合は、Gセンサのキャリブレーションを実施する必要がある。・Gセンサの脱着、または交換・TCMの交換⑵ 作業手順

 キャリブレーション実施前の準備

①車両を水平な場所に置く。②全てのタイヤ空気圧を規定圧に調整する。>>へ

 キャリブレーション実施

CONSULT-Ⅲを使用する①キースイッチをONにする。注意  エンジンは始動させないこと。

②“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。③“Gセンサキャリブレーション”を選択する。④“開始”を選択する。注意  “Gセンサキャリブレーション”を実施中は車両を揺らさないこと。

“完了しました”が表示されるか?YES >>へNO >>再度ステップ~を実施する。

 自己診断実施

CONSULT-Ⅲを使用する①キースイッチをOFFにし、約10秒間待つ。②キースイッチをONにする。③“AT/CVT”の“自己診断結果”を選択する。DTC“P1586”または“P1588”が検出されるか?YES >>表示されたDTCを確認する

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NO >>作業終了5) 電動オイルポンプのエア抜き

⑴ 概 要

電動オイルポンプはオイルパンからサブストレーナを介してオイルを吸い上げるため、サブストレーナ内にエアが入っている場合、油圧を発生させることができないのでエア抜きを行う必要がある。⑵ 作業手順

 作業前準備

①エンジンを始動し、暖機する。②暖機完了後、エンジンを停止し60秒以上待つ。>>へ

 電動オイルポンプのエア抜き

CONSULT-Ⅲを使用する①キースイッチをONにする。注意  エンジンは始動させないこと。

②セレクトレバーをPレンジにする。③“AT/CVT”の“作業サポート”を選択する。④“電動オイルポンプエア抜き”を選択する。⑤“開始”をタッチする。注意  実行中はエンジンを始動させないこと。

参考  完了するまで約20秒程度かかる場合がある。

“完了”が表示されるか?YES >>へNO >>キースイッチをOFFにし、10秒以上待ってから再度作業を実施する。

 電動オイルポンプのエア抜き完了確認1

CONSULT-Ⅲを使用する①エンジンを始動する。②10秒間待つ。③キースイッチをOFFにする。④10秒間待つ。⑤キースイッチをONにする。注意  エンジンは始動させないこと。

⑥“AT/CVT”の“データモニタ”を選択する。⑦“電動OPエア抜き状態”を選択する。“完了”が表示されているか?YES >>へNO >>キースイッチをOFFにし、10秒以上待ってから再度作業を実施する。

 電動オイルポンプのエア抜き完了確認2

①エンジンを始動する。②車両をアイドリングストップ状態にする。アイドリングストップ状態になるか?

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⑨ATFチェンジャのホースをチャージングパイプに取り付ける。注意  ATFチェンジャのホースは、チャージングパイプの

突き当たりまで確実に挿入すること。

⑩CVTフルードを約0.5ℓ注入する。⑪ATFチェンジャのホースをチャージングパイプから取り外し、CVTフルードがチャージングパイプから抜けてくることを確認する。もし、抜けてこない場合は、再度注入する。注意  アイドリング状態で作業を実施すること。

⑫CVTフルードが滴状になったら、チャージングパイプをコンバータハウジングから取り外し、オーバフロープラグを規定トルクで締め付ける。注意  ・Oリングは再使用不可部品のため、再使用しないこと。

・OリングにCVTフルードを塗布すること。

YES >>作業終了NO >>DTC“P188F”を点検する。

〔参考〕CVTフルード点検・調整要領

⑴ フルード漏れ点検(図-28)

トランスアクスル周辺(オイルシール、プラグ等)からオイル漏れがないか点検する。異常がある場合は該当箇所の修理、交換を行い、CVTフルードの量を調整する。

図-28 フルード漏れ点検

⑵ フルード調整要領

①セレクトレバーがPレンジであることを確認し、パーキングブレーキを確実に作動させる。②エンジンを始動し、エンジンが規定のアイドル回転数になるまで暖機する。③CVTフルード温度を約40になるように調節する。参考  CVTフルードは温度に大きく影響されるので、必ず

CONSULT-Ⅲを用いて“AT/CVT”の“データモニ

タ”の“ユオン”で確認しながら調節すること。

④ブレーキペダルを踏みながらセレクトレバーをPからLまで一巡させ、Pレンジにする。参考  各レンジを5秒間保持すること。

⑤車両をリフトアップする。⑥CVTフルードの漏れがないか確認する。⑦オーバフロープラグをコンバータハウジングから取り外す。(図-29)

図-29 フルード調整要領①

⑧チャージングパイプセット(KV311039S0)をオーバフロープラグ穴に取り付ける。(図-30)注意  チャージングパイプの締め付けは手締めで行うこと。

図-30 フルード調整要領②

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⑬車両をリフトダウンし、エンジンを停止する。

使用CVTフルード 規定量ニッサンCVTフルードNS-3 約7.9ℓ

注意  ・必ず指定銘柄のCVTフルードを使用すること。指定銘柄以外のCVTフルードを使用、または混用、ある

いは誤使用すると本来の性能を発揮できないばかりか重大な故障の原因となるおそれがある。

・CVTフルードレベル調整中は、油温を35~45に保つように必ずCONSULT-Ⅲで確認しながら行うこ

と。

・CVTフルードレベル調整中は、エンジンを規定のアイドル回転数にした状態で行うこと。

・ドレーン穴を覗きこむと垂れたオイルが目に入る恐れがあるので十分注意すること。

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参 考

1) 配線図

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2) 入出力信号基準値(参考値)

配線色B=黒 W=白 R=赤 G=緑L=青 Y=黄色 BR=茶色 ORまたはO=橙色P=桃色 PUまたはV=紫 GYまたはGR=灰色 SB=空色LG=若葉色 BGまたはBE=ベージュ LA=薄紫色 CH=こげ茶DG=深緑複合表示は、初めのアルファベットが基準色を示し、次のアルファベットが線状の色を示す。例:L/W=青地に白い線

端子番号(配線色) 項 目

操作または操作条件 基準値+ - 信号名 入力/出力

1(GR) アース 電動オイルポンプ

リレー 出力

・セレクトレバー:Dレンジ・車速:6km/h以下 約0V

・セレクトレバー:Dレンジ・車速:11km/h以上 10~16V

2(GR) アース LレンジSW 入力

キースイッチON

セレクトレバー:Lレンジ 10~16V上記以外 約0V

4(Y) アース DレンジSW 入力

セレクトレバー:Dレンジ 10~16V上記以外 約0V

5(BR) アース NレンジSW 入力

セレクトレバー:Nレンジ 10~16V上記以外 約0V

6(G) アース RレンジSW 入力

セレクトレバー:Rレンジ 10~16V上記以外 約0V

7(V) アース PレンジSW 入力

セレクトレバー:Pレンジ 10~16V上記以外 約0V

11(LG) アース センサアース - 常 時 約0V

12(BR) アース 油温センサ 入力 キースイッ

チON

CVTフルード:約20 2.01~2.05VCVTフルード:約50 1.45~1.50VCVTフルード:約80 0.90~0.94V

14(V) アース Gセンサ 入力 キースイッ

チON 平坦路で停車時 約2.5V

16(SB) アース セカンダリ圧セン

サ 入力・エンジン暖機後・セレクトレバー:Nレンジ・アイドル回転時

1.22~1.25V

17(R) アース プライマリ圧セン

サ 入力・エンジン暖機後・セレクトレバー:Nレンジ・アイドル回転時

0.75~0.82V

23(P) - CAN-L 入力/出力 - -

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ニッサン

端子番号(配線色) 項 目

操作または操作条件 基準値+ - 信号名 入力/出力

24(LG) アース インプット回転

センサ 入力 ・セレクトレバー:Lレンジ・20km/h走行時

約800Hz

25(GR) アース 電動オイルポンプ

指示信号 出力アイドリングストップ時 100Hzキースイッチ:OFF 0Hz

26(BG) アース センサ電源 出力

キースイッチ:ON 約5.0Vキースイッチ:OFF 約0V

30(GR) アース ライン圧ソレノイ

ドバルブ 出力

・エンジン暖機後・セレクトレバー:Nレンジ・アイドル回転時

・エンジン暖機後・セレクトレバー:Nレンジ・アクセルペダルをいっぱいに踏み込む

32(SB) アース 電動オイルポンプ

状態信号 入力アイドリングストップ時 100Hzキースイッチ:OFF 0Hz

33(L) - CAN-H 入力/出力 - -

34(W) アース アウトプット回転

センサ 入力 ・セレクトレバー:Lレンジ・20km/h走行時

約200Hz

35(GR) アース プライマリプーリ

回転センサ 入力 ・セレクトレバー:Lレンジ・20km/h走行時

約700Hz

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ニッサン

端子番号(配線色) 項 目

操作または操作条件 基準値+ - 信号名 入力/出力

37(Y) アース セレクトソレノイ

ドバルブ 出力・エンジン始動・車両停車時・セレクトレバー:Nレンジ

38(G) アース ロックアップソレ

ノイドバルブ 出力

・セレクトレバー:Dレンジ・アクセル開度:1/8以下・車速:20km/h以上

・エンジン始動・車両停車時

39(W) アース セカンダリ圧ソレ

ノイドバルブ 出力 ・セレクトレバー:Lレンジ・車速:20km/h

40(V) アース プライマリ圧ソレ

ノイドバルブ 出力 ・セレクトレバー:Lレンジ・車速:20km/h

41(B) アース アース - 常 時 約0V

42(B) アース アース - 常 時 約0V

45(V) アース BAT電源(バック

アップ) 入力 常 時 10~16V

46(V) アース BAT電源(バック

アップ) 入力 常 時 10~16V

47(BG) アース IGN電源 入力

キースイッチ:ON 10~16Vキースイッチ:OFF 約0V

48(BG) アース IGN電源 入力

キースイッチ:ON 10~16Vキースイッチ:OFF 約0V