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フロイトの晩年の理論変更の余波
フロイトは1920年代に自我心理学という言葉によって大きな理論的な変更を加えたが、その前に自己愛と対象関係という言葉を編み出した。その経緯は、私の臨床実践では長く、遠い道のりだと感じる。だがその理論的な変更がその後の精神分析を決めた。
⇒自我心理学
⇒クライン学派⇒対象関係論
⇒自己心理学 2
精神分析の理論的妥当性
フロイトは精神分析を「心理学」の科学と見なした。晩年まで変わらなかった発想。
§Evidenceのために心理学の理論に準拠するべきだと考えた(Hartmann,Rappaportの発想)。米精神医学の伝統。
§資格社会ドイツの影響⇒訓練と精神分析実践による事例の深層の物語を通して、精神分析を独自の領域とみなす(クライン学派から対象関係論)
●私の立場⇒物語的伝統(R.シェーファー)3
フロイトの発見:情動-不安§情動が構成する要素は、認知的、身体的そして運動衝動的なものである。それらの構成要素それぞれを、言葉で表現できるものであると考えておく。
〈情動の構成要素〉
p認知的=「私は悲しい」
p身体的=のどが締め付けられ、胸が重い
p運動衝動=「泣いているように感じる」
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身体地図を活用する
§情動はそれぞれの情緒や不安を表現する場があり、その場所を理解することで、防衛されている情動を発見して、洞察に結びつけることができる(文化相対的)
「腹が立つ」「肩の荷が重い」などの身体言語が参考になる。p怒り=頭、首、あご、肩、腕、手
p悲しみや哀しみ=胸、重い感覚、痛み、疼痛
p愛や喜び=胸-軽くて開いて、広がっている
p恐怖=お腹
p性的願望=性器 7
身体を使う:短期力動療法の一技法
§横紋筋の緊張症状全般には注目して、そこがどこで、知覚によってどのような反応をするか、それについて固定する。
§固定された身体部位と感じる感情を特定して、それがどういった防衛によって、抑えられているかについての抵抗の発見をする。
§身体部位の変化について、本人が情動を意識しているときには聞く、スキャンする。
§身体的な変化(脱緊張)が情動の変化と連動して変化する姿を観察しながら、情動と防衛とを取り扱っていく。
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自己愛と精神病理病前性格 発症
メランコリー(躁うつ病)
自己愛的対象選択
自己愛的同一化
対象喪失=自我喪失→見捨てた対象への怒り→自己批判→躁状態(対象との一体)とうつ(自我へ
の自責)の繰り返し
統合失調症
(パラフレニー)
自己愛への退行素因
リビドーの外界からの関心の離反(陰性症状)→自我に向かう(誇大妄想)、→修復による幻覚妄想(陽性症状)
心気症 自己の身体への関心
特定の器官にリビドーの関心を向けることで、エネルギーの調整を行う
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グリーンの「生き生きとした談話」
§情動と表象との関係を、事物表象と言語表象との間に、フロイトの自我とエスの発展的理解として取り入れた。
§ビオンの名前のない恐怖、原初の不安⇒移行対象⇒figurativityを通して表象のほうに向かう(象形文字的な世界=認知言語学的なイメージ)
§情動affectを中心とした理論の再編成13
ネガティブな精神病(空白の冷たい精神病)
§Negative hallucinationなど陽性陰性の症状をもたない精神病が人格に親和した形で、本当のうつ病と連続して存在している。
§それはフロイトの自己愛の研究を身体に広げると見えてくる(P.Martyの仕事)§Negativeな領域§その領域は「空虚さ」「死んでいること」そして「負」と関連した静かな本能衝動の領域である。
Martyの本質的うつの精神病⇒可能性空間の欠損による、死んだ世界
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