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児童養護施設「報恩母の家」(福岡県)における
取り組みの紹介
「育ちアルバム」の作成 ―導入から作成まで―
1
もくじ
1.なぜ「育ちアルバム」を作成することにしたのか?・・・・2
2.導入までの準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3.ワーク1:職員自身にとってアルバムとは? ・・・・・・3
ワーク2:子どもの自然な様子を写真に撮る・・・・・・・4
ワーク3:職員が撮りたい「その子らしい」写真を撮る
・・・・・・・・・・・・・6
ワーク4:撮った写真にコメントをつけてみよう!・・・・8
ワーク5:育ちアルバムの紹介と振り返り・・・・・・・・10
ワーク6:育ちアルバム作成における共通の約束事とルール
・・・・・・・・・・・・・12
4.ワーク実施後の職員の育ち・・・・・・・・・・・・・・・13
2
1.なぜ「育ちアルバム」を作成することにしたのか?
福岡県の児童相談所における「家族の絆再生事業」の中で、乳児院からの措置変更後
16年間を「報恩母の家(以下「母の家」)」で暮らした子どもについてアルバムづくり
を行い、育ちの整理に取り組んだ。この取り組みは、養育者が替わるなか、子ども自身
が今までの育ちを振り返り、一瞬一瞬を大切にされた証の確認となった。
アルバムづくりは、施設入所や措置変更により養育者が替わるなかで、それまでの養
育者がその子どもの何を大切にしてきたか、その子どもがどのように大切にされてきた
かを理解する大切な機会となる。
本来であれば入所児童全てにアルバムづくりの機会を保障することが必要であるが、
繁雑な業務のなか、職員の負担感が生じることが考えられるため、当施設では子どもの
育ちを養育者の喜びに代えられることを目指し、アルバム作成の手順を丁寧に職員全員
で共有することに視点を置いて作業を進めていった。
2.導入までの準備
(1)中心となる職員の選定
(2)業務分掌における位置付け
「母の家」では生教育(性教育・CAPプログラム)の一環として位置付けた。
(3)職員全体への周知
職員全体へ周知するために、社会的養護における「育ち」「育て」を考える研究会(国
立武蔵野学院主催)が提案する「育ちアルバム」の定義や意義について、全職員で聴く機
会を設けた。→理論も大事、職員全体の周知
(4)職員が無理なく取り組める時間の設定・進行方法
中心となる職員が「アルバム作成」は意味のあることをまず認識するために、楽しみ
ながらあれやこれや話し合いながら計画を進めた。
(5)次のワークの準備
ワーク前後の職員の反応をみながら、中心となる職員が集い、次のワークのテーマを
決めていった。
★ポイント★
*まずは中心となる職員がアルバム作成の意義を理解し、やりたいと思えることが大切。
*カチッとした枠に捉われず、日々の現状に応じて進めていくことを心掛ける。
3
(1)アルバムづくりのイメージ化
①全児童にアルバムを購入し、担当職員へ配布しこれからアルバムを作るこ
とをイメージ化する。
②職員自身が、自分にとっての「アルバム」をイメージし、他の職員と思い
や考えを共有しながらポストイットでグルーピングしていく。
職員によってはアルバムが整理された中で育ってきた者や、あまり整理されていない者
など様々だが、他の職員の考えを聴くことで改めて「アルバムの果たす役割」に気づいた
り思い出したりする。
(2)アルバムの意義の共有
①職員一人ひとりが自分にとってのアルバムに思いを馳せることで、アル
バムの意義を確認する。
②グループの代表者が発表し、全職員でアルバムの意義を共有・確認する。
ワーク1 ~アルバムづくりのイメージ化と意義の共有~
4
(1)子どもの自然な様子の写真を5枚ずつ撮る
①決められた枚数で撮ることにより、どのような表情を撮りたいか、残し
たいかなど考えを巡らせる。
②どういうコンセプトで撮ったのか、又は工夫したところ、大変だったと
ころ、おもしろかったところ、子どもの今の心の在り様など実際に子ども
の写真を通して様々な思いが湧きでてくる。
(2)それぞれの思いや感じたことについてポストイットを使いグルーピング
する
①同じような気持ちに共感し、違う意見になるほどと感心しながらワーク
を進める。
ワーク2 ~子どもの自然な様子の写真を撮る~
5
(3)グループの代表者が発表し、グループで共有したことを全職員で共有す
る
6
(1)職員が撮りたい「その子らしさ」を撮る
職員が撮りたい「その子らしさ」(あくまでも自然体)を意識して撮る。
(2)撮ってきた写真を他の職員に紹介する
職員一人ひとりが持ち寄った写真を紹介する。なぜその写真を撮ったのか、
撮った写真の中からなぜその写真を選んだのかなど、思いを語り合う。
(3)思いや感じたことについてポストイットを使ってグルーピングする
①それぞれの思いや、感じたことについてポストイットを使いグルーピン
グする。
②同じような気持ちに共感したり、違う意見になるほどと感心したりしな
がらワークを進める。
ワーク3 ~職員が撮りたい「その子らしさ」を意識して撮る~
7
(4)グループの代表が発表し全員で共有する
★ポイント★
*「その子らしさ」を考えながら、子どもの生活の様子、友人との様子、何をしてい
るときに活き活きしているか、楽しそうかなどあらゆる場面での子どもの姿を思い浮
かべることで、一番その子らしい瞬間を残したいと考えることに意味がある。
8
(1)撮ってきた写真にコメントを付けてみよう!
撮ってきた写真にコメントを付け、整理してアルバムに貼る。
(2)コメントを付けてアルバムを作ってみた感想を語り合う
①それぞれの思いや感じたことについて、ポストイットを使いグルーピン
グする。
②同じような気持ちに共感し、違う意見になるほどと感心しながらワーク
を進める。
ワーク4 ~撮ってきた写真にコメントを付けてみよう!~
9
(3)グループの代表者が発表し全職員で共有する
★ポイント★
*写真にコメントを載せるだけの作業なのに、子どもの行動を意味づけてみた
り、そのために深く子どもの事に思いを馳せたり、子どもの成長に改めて喜びを
感じたり、写真を通して子どもの成長を確認できたりする。
*「育ちアルバム」の意義に気づける最も大切なワークになる。
10
(1)各グループの代表者に、実際に完成したアルバムを手にして感じた事、
工夫したこと、試行錯誤したところなどを発表してもらう。
(2)思いや感じたことについてポストイットを使ってグルーピングする
①それぞれの思いや、感じたことについてポストイットを使いグルーピン
グする。
②同じような気持ちに共感したり、違う意見になるほどと感心したりしな
がらワークを進める。
(3)グループの代表者が発表し全職員で共有する。
ワーク5 ~育ちアルバムの紹介と振り返り~
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(4)実際に育ちアルバムの完成品を子どもと共に見て、成長を共に喜んだり、
思い出に共に浸ったり実感として子どもの成長を確認する。
①性別や年齢によっての捉えの学びになる。
②目の前に居る子どもの成長を点で抑える傾向にあるが、いろいろな子ど
ものアルバムから子どもの成長を線でみるトレーニングになる。
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入浴シーンの写真は幼児期でも載せない方が良い?
一緒に写っている子の個人情報の問題は?
写真が苦手な子(思春期真っ只中の子や自尊感情の低い子など)のアルバ
ムづくりはどうする?
写真のデータ管理はどこでする?
(1)アルバムづくりを実施するうえで必要な約束事や中身について整理する。
(2)子どもの個人情報の在り方など子どもの人権擁護に係る考え方を統一し
ておく。
(3)撮る写真の枚数やデコレートについて、こんな感じでくらいのライン決
めを全職員の同意のもとに行う。
ワーク6 ~アルバムづくりにおける約束事・共通認識~
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4.ワーク実施後の職員の育ち
~実施後のアンケートより抜粋~
(1)中心となった職員(担当者)
(2)参加した職員
・ 日常生活の中で、子どもの様子を丁寧に見ていこうとする視点や感性が少し
ずつ培われていくのを実感した。
・ 細やかな行動や表情からその気持ちや思いを推察する力が向上した。
・ 子どもの成長という長いスパンから子どもを見ることを改めて意識できた。
・ 写真を通して子どもの新たな一面に気づき、ケアワークに活かすことに繋が
った。
・ 子ども一人ひとりの個性をより細かく見ることに繋がり丁寧な支援に繋が
った。
・ 写真を通してコミュニケーションをとる場面が増え、ライフイベントの共有
場面が増えた。
・ 子どもへの視点がどんどんプラスされた。
・ アルバム作成により、少し冷めていた気持ちがどんどん高まっていったよう
に感じる。
・ 成長を喜ぶなど、“日頃”気づかなかった事に気づき始めた。
・ “アルバムを作る”事を通して、子どもの成長の記録って援助者にとっても
大きな意味があることを学んだ。
・ 子どもの思いを大切に受けとめているか改めて考えさせられた。
・ わかったつもりになっていた面もあったと反省させられた。
・ アルバムづくりを通して、子どもの成長を実感するとともに子どもを愛おし
いと思う気持ちを再確認した。