53
2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析 成績の分析と考察 2.7.3.3.2.3 成績の分析と考察 1)評価項目における相関性 (1) 主要評価項目との相関性 第Ⅲ相試験(28 週)の2群における最終時(≦28 週)の合計スコアの変化率と構成指標における変 化率及び全般改善度との相関性を検討するため,スペアマンの順位相関係数を求めた。 まず,構成指標の5項目のうち,腎炎臨床所見の2項目(1日尿蛋白量,尿中赤血球数)における スコアの変化率と合計スコアの変化率の相関係数を求めると,r=0.759 であった。同様に,免疫学 的検査所見の2項目(C3,抗 dsDNA抗体)におけるスコアの変化率と合計スコアの変化率との相関係 数を求めると r=0.640 であった。次に,構成指標の5項目について各実測値の変化率と合計スコア の変化率の相関係数を求めた(表 2.7.3-41)。この結果,1日尿蛋白量と C3,並びに尿中赤血球数 と抗 dsDNA 抗体は,それぞれ同程度の相関係数となった。なお,血清クレアチニンでは,プラセボ群 及びタクロリムス群ともに変動がほとんどない症例が多かったため,その相関係数は低かった。 また,全般改善度と合計スコアの相関係数は r=0.821 と高く,合計スコアによる総合評価と医師 による全般改善度の評価はよく相関していた。 以上のとおり,合計スコアとの相関において突出した高い相関係数を示した項目はなく,合計ス コアの変化率にみられるタクロリムスの改善効果は,腎炎臨床所見と免疫学的検査所見における改 善効果が同程度反映された結果であった。さらに,合計スコアと医師による全般改善度の判定結果 はよく相関していた。 なお,第Ⅱ相試験では,合計スコアによる評価を行わなかったが,第Ⅱ相試験に組み入れられた 21例のうち,合計スコア算出不能の2例を除いた 19例と,第Ⅲ相試験(28週)の対象選択基準(免 疫異常があり,かつ合計スコア3以上で 10mg/日以上のステロイドでコントロールできない患者) を適用したとき,これに適合する 12 例について合計スコアの変化率を試算した。合計スコアの変 化率(平均値±S.D.)は,19 例では-26.6±39%,12 例では-29.4±30%と 12 例でのスコア変化 率はわずかに高く,バラツキも小さかった。さらに,合計スコアの変化と全般改善度との相関係数 は,19 例では r=0.453,12 例では r=0.727 であった。この相関係数の差異は,免疫学的活動性を 有しない症例等での合計スコアの変化と全般改善度との不一致 注) によるものと考えられた。 ループス腎炎における免疫抑制剤の薬効評価では,免疫学的活動性を伴う SLE の疾患活動性を 有する症例について評価する必要がある。この観点からみると,第Ⅱ相試験(28 週)においても, 第Ⅲ相試験(28 週)の対象選択基準に適合する症例における合計スコアの変化は全般改善度との相 関性が高く,医師の臨床的な見方と呼応していると考えられた。 注:抗 dsDNA 抗体スコアと C3 スコアの和が 0 点である3例のうち2例では,合計スコアの変化と関係 なく全般改善度は不変と判定された。またその他に,合計スコア変化と全般改善度判定が相反し ている症例が2例認められたが,合計スコアと全般改善度判定の関係は各々逆転関係にある。 -70-

成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 70 -

2.7.3.3.2.3 成績の分析と考察

1)評価項目における相関性

(1) 主要評価項目との相関性

第Ⅲ相試験(28 週)の2群における最終時(≦28 週)の合計スコアの変化率と構成指標における変

化率及び全般改善度との相関性を検討するため,スペアマンの順位相関係数を求めた。

まず,構成指標の5項目のうち,腎炎臨床所見の2項目(1日尿蛋白量,尿中赤血球数)における

スコアの変化率と合計スコアの変化率の相関係数を求めると,r=0.759 であった。同様に,免疫学

的検査所見の2項目(C3,抗 dsDNA 抗体)におけるスコアの変化率と合計スコアの変化率との相関係

数を求めると r=0.640 であった。次に,構成指標の5項目について各実測値の変化率と合計スコア

の変化率の相関係数を求めた(表 2.7.3-41)。この結果,1日尿蛋白量と C3,並びに尿中赤血球数

と抗 dsDNA 抗体は,それぞれ同程度の相関係数となった。なお,血清クレアチニンでは,プラセボ群

及びタクロリムス群ともに変動がほとんどない症例が多かったため,その相関係数は低かった。

また,全般改善度と合計スコアの相関係数は r=0.821 と高く,合計スコアによる総合評価と医師

による全般改善度の評価はよく相関していた。

以上のとおり,合計スコアとの相関において突出した高い相関係数を示した項目はなく,合計ス

コアの変化率にみられるタクロリムスの改善効果は,腎炎臨床所見と免疫学的検査所見における改

善効果が同程度反映された結果であった。さらに,合計スコアと医師による全般改善度の判定結果

はよく相関していた。

なお,第Ⅱ相試験では,合計スコアによる評価を行わなかったが,第Ⅱ相試験に組み入れられた

21 例のうち,合計スコア算出不能の2例を除いた 19 例と,第Ⅲ相試験(28 週)の対象選択基準(免

疫異常があり,かつ合計スコア3以上で 10mg/日以上のステロイドでコントロールできない患者)

を適用したとき,これに適合する 12 例について合計スコアの変化率を試算した。合計スコアの変

化率(平均値±S.D.)は,19 例では-26.6±39%,12 例では-29.4±30%と 12 例でのスコア変化

率はわずかに高く,バラツキも小さかった。さらに,合計スコアの変化と全般改善度との相関係数

は,19 例では r=0.453,12 例では r=0.727 であった。この相関係数の差異は,免疫学的活動性を

有しない症例等での合計スコアの変化と全般改善度との不一致注)によるものと考えられた。

ループス腎炎における免疫抑制剤の薬効評価では,免疫学的活動性を伴う SLE の疾患活動性を

有する症例について評価する必要がある。この観点からみると,第Ⅱ相試験(28 週)においても,

第Ⅲ相試験(28 週)の対象選択基準に適合する症例における合計スコアの変化は全般改善度との相

関性が高く,医師の臨床的な見方と呼応していると考えられた。

注:抗 dsDNA 抗体スコアと C3 スコアの和が 0点である3例のうち2例では,合計スコアの変化と関係

なく全般改善度は不変と判定された。またその他に,合計スコア変化と全般改善度判定が相反し

ている症例が2例認められたが,合計スコアと全般改善度判定の関係は各々逆転関係にある。

-70-

Page 2: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 71 -

表 2.7.3-41 合計スコアの変化率との相関性

項 目 相関係数(例数)

1 日尿蛋白量 0.600 (61)

尿中赤血球数

0.759

(61) 0.334 (58)

C3 -0.632 (61)

抗 dsDNA 抗体

0.640

(61) 0.315 (61)

血清クレアチニン 0.167 (61)

全般改善度 0.821 (60)

(2) 全般改善度と主要評価項目の構成指標との相関性

第Ⅲ相試験(28 週)における全般改善度の成績と構成指標におけるスコアの変化率との相関係数

を同様に求めた。

構成指標の5項目のうち1日尿蛋白量では相関係数 r=0.781,C3 では r=-0.570 と,他の項目と

比較して高く,医師による全般改善度判定には1日尿蛋白量及び C3 の変動が,影響を及ぼしてい

ると考えられた(表 2.7.3-42)。

表 2.7.3-42 全般改善度との相関性

項 目 相関係数(例数)

1 日尿蛋白量 0.781 (60)

尿中赤血球数

0.664

(60) 0.281 (57)

C3 -0.570 (60)

抗 dsDNA 抗体

0.554

(60) 0.332 (60)

血清クレアチニン 0.085 (60)

(3) 構成指標5項目間の相関

第Ⅲ相試験(28 週)における合計スコアの変化率及び全般改善度との相関係数が,それぞれ

r=-0.632,-0.570 であった C3 の変化率と1日尿蛋白量の変化率とのクロス表を表 2.7.3-43 に示

した。

この結果,C3 と1日尿蛋白量との関係については,明らかな傾向を認めなかった。

今回,有効性評価に用いた5項目は臨床的には関連を持った因子であると考えられるが,公表論

文で5項目間の関連を細密に述べたものはない。第Ⅲ相試験(28 週)の成績から5項目間の相関

を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め

た(表 2.7.3-44)。

この結果,項目間で相関係数が 0.5 より大きいものは,抗 dsDNA 抗体と補体であり,免疫学的な

パラメータはある程度相関することが確認できた。他の項目間については,本試験のデータからは

明確な関連を確認できなかった。

-71-

Page 3: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 72 -

表 2.7.3-43 1日尿蛋白量と C3 との関係

補体/C3(変化率);最終時(≦28週)(%)

≦-75

-75<~≦-50

-50<~≦-25

-25<~≦0

0< ~≦25

25<~≦50

50< ~≦75

75< 合計

≦-75 1 3 1 5

-75<~≦-50 1 8 1 1 11

-50<~≦-25 3 3 6

-25<~≦0 1 1 0<~≦25 1 1 2

25<~≦50 2 2

50<~≦75 0

75< 0

1日尿蛋白量値 (変化率)(%) ;最終時(≦28週)

合計 0 0 0 2 17 6 2 0 27

表 2.7.3-44 相関係数行列

1日尿蛋白量 尿中赤血球数 血清クレアチニン 抗 dsDNA 抗体 補体(C3)

1日尿蛋白量 1.000(60) 0.371(26) 0.273(16) 0.404(33) -0.250(53)

尿中赤血球数 0.375(26) 1.000(27) 0.217(9) 0.493(17) -0.340(24)

血清クレアチニン -0.144(16) 0.243(9) 1.000(16) -0.370(7) -0.414(15)

抗 dsDNA 抗体 0.380(33) 0.439(17) 0.143(7) 1.000(33) -0.544(26)

補体(C3) -0.337(53) -0.390(24) -0.461(15) -0.614(26) 1.000(54)

上半分は,上記表 2.7.3-43 と同じカテゴリで取り扱った順位相関係数,

下半分は変化率を直接用いた場合の順位相関係数

( ):例数

-72-

Page 4: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 73 -

2)各種成績の臨床的意味について

(1) 主要評価項目の構成指標で得られた成績の臨床的意味

第Ⅲ相試験(28 週)における主要評価項目(合計スコアの変化率)の各構成要素の実測値の推移,

投与前後差及び群間差と信頼区間を表 2.7.3-45 に示し,各項目ごとにその臨床的意味について考

察した。

ⅰ.1日尿蛋白量

1日尿蛋白量の実測値(中央値)は,タクロリムス群では投与前 1.64g/日,最終時 1.00g/日,

プラセボ群ではそれぞれ 1.47g/日,2.28g/日であり,タクロリムス群で改善,プラセボ群では悪

化し,タクロリムス群はプラセボ群に対し有意に改善していた。ループス腎炎が進行性の慢性疾患

であることを考えると,タクロリムス群で改善し,プラセボ群で悪化したという結果の臨床的意味

は大きい。なお,タクロリムス群ではみられなかったが,プラセボ群では,最終時にネフローゼ症

候群を示す尿蛋白量である 3.5g/日を超える症例がみられた。さらに,1日尿蛋白量については,

1g/日以上と1g/日未満の患者では長期予後(腎生存率及び生存率)が大きく異なることが報告さ

れていることや,ネフローゼ症候群の治療効果判定基準(完全寛解,不完全寛解Ⅰ型,不完全寛解

Ⅱ型,無効の四段階)においても,1g/日以下になった場合を不完全寛解Ⅰ型とするのが一般的と

されており,尿蛋白量の治療の目安として,1g/日未満にすることが重要である。これらのことか

ら,タクロリムス群において最終時に 1.00g/日となったことの臨床的意義は大きいと考えられる。

ⅱ. 尿中赤血球数

尿中赤血球数の実測値(中央値)は,投与前・最終時にタクロリムス群,プラセボ群とも,4.0

個/hpf であり,一部の症例で大きく悪化した症例もいたが,推移としては大きな変動はなかった。

今回,尿中赤血球数を腎障害による出血や腎の炎症を反映する指標の一つとして選択したが,本試

験ではタクロリムス群,プラセボ群ともに正常域の症例が多かったこともあり,結果的に臨床的に

意味のある差は確認できなかった。

ⅲ. 血清クレアチニン

血清クレアチニンの実測値(中央値)は,タクロリムス群で投与前 0.67mg/dL,最終時 0.72mg/dL,

プラセボ群でもそれぞれ 0.71mg/dL,0.69mg/dL であり,いずれも正常範囲内の推移となっていた。

投与前後差の最大値についてみると,タクロリムス群で 0.30mg/dL,プラセボ群で 1.33mg/dL であ

り,プラセボ群では悪化した症例もいた。ただ,腎機能を反映する指標として選択した血清クレア

チニンにおいて,本試験では両群共に血清クレアチニンの変動に大きく反映されるほどの腎機能の

変化がなかったため,臨床的に意味のある差は確認できなかった。

-73-

Page 5: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 74 -

ⅳ. 抗 dsDNA 抗体

抗 dsDNA 抗体の実測値(中央値)は,タクロリムス群で投与前 10.5 U/mL,最終時 8.0 U/mL,プ

ラセボ群で投与前 13.0 U/mL,最終時 9.5 U/mL であり,両群で有意差はみられなかった。抗 dsDNA

抗体値の正常上限は 10 U/mL であり,タクロリムス群,プラセボ群ともに,投与前値より半数近く

の症例が正常域であり,それらの症例のほとんどが正常域で推移した。また,投与前に正常域を上

回る症例についてみると,タクロリムス群で,14 例中7例(50.0%)が最終時に正常域に入り,

プラセボ群では,18 例中4例(22.2%)であり,タクロリムス群で正常化された症例がやや多い

傾向であった。免疫学的活動性を反映する指標の一つとして選択した抗 dsDNA 抗体において,本試

験では正常域を上回る症例での正常化例数がプラセボ群よりタクロリムス群で多い傾向であった

が,一方で正常域の症例も多く,臨床的に意味のある差は確認できなかった。

ⅴ. 補体(C3)

補体(C3)の実測値(中央値)は,タクロリムス群で投与前 72.5mg/dL,最終時 85.0mg/dL であ

り,最終時に正常域に回復し,プラセボ群で投与前 70.0mg/dL,最終時も 70.0mg/dL で変化はなく,

タクロリムス群はプラセボ群に対し有意に改善していた。

ループス腎炎の原疾患である SLE の病態形成の基盤にあるのは免疫異常であり,一般にループス

腎炎は疾患活動性を示す腎炎臨床所見及び免疫活動性の各項目を確認しながら治療が進められる

が,免疫学的活動性の指標の一つである補体の中でも,C3 は SLE の疾患活動性を反映するとされ

ている。また,補体値の正常化はループス腎炎の治療に有効であるとの報告,初期治療による正常

化を維持することで腎機能が改善しその安定化と相関するなど,ループス腎炎治療において補体正

常化の維持の意義は大きいとされている。

これらのことから,今回,投与前に両群ともほぼ 70mg/dL 程度の異常値であった補体(C3)にお

いて,プラセボ群の中央値は最終時でも 70.0mg/dL と不変で異常値が持続したのに対し,タクロリ

ムス群の中央値が最終時に 85.0mg/dL と正常化したことの臨床的意義は大きいと考えられる。

以上のとおり,ループス腎炎における有効性評価項目として設定した上記5項目それぞれの項目

は,ループス腎炎患者全般を評価する上では重要な指標となるが,第Ⅲ相試験に組み入れられた集

団では,多くの症例で投与前後の検査値が正常不変であった項目も含まれていた。この理由は,本

剤が市販後に適用されるべき患者の病態を考慮し,患者選択基準を「1日尿蛋白量又は尿中赤血球

数のどちらに活動性があること,かつ抗 dsDNA 抗体又は補体(C3)のどちらかに活動性があり,合計

スコアが3以上の症例」としていたことによる。また,タクロリムスの副作用への懸念から除外基

準として「血清クレアチニンが 1.5mg/dL 以上の症例」を設定し,腎機能が高度に悪化した症例の

組み入れは不可としていた。

この結果,「尿中赤血球数」と「血清クレアチニン」は投与前にスコア0(正常域)の症例がタ

クロリムス群でそれぞれ 28 例中 17 例(60.7%),28 例中 24 例(85.7%)と過半数を占めていた。

一方,「1日尿蛋白量」については,投与前にスコア0(正常域)の症例は,タクロリムス群で0

-74-

Page 6: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 75 -

例,プラセボ群で1例であり,ほぼ全例で投与前に異常値が認められていた。また,免疫学的活

動性を示す抗 dsDNA 抗体及び補体(C3)では,同様にそれぞれ 28 例中 14 例(50.0%),28 例中 6

例(21.4%)であり,抗 dsDNA 抗体ではスコア0(正常域)の症例が過半数を占めた。なお,腎炎臨

床所見の副次的評価項目として「尿中細胞性円柱」についても評価したが,本項目についても投与

前値はタクロリムス群,プラセボ群ともに過半数の症例で「なし(正常)」であった。

以上のとおり,実際に組み入れられた症例は,結果的に1日尿蛋白量と C3 に異常を呈している

症例が多く,血清クレアチニン,尿中赤血球数,抗 dsDNA 抗体では投与前後のスコアが0の症例

が多かったことが,これらの項目で有意な改善を認めなかった理由と考えられた。

そこで,血清クレアチニン,尿中赤血球数,抗 dsDNA 抗体の3項目を除いて合計スコアを算出し,

これらの項目における成績が合計スコアに及ぼす影響を検討した(表 2.7.3-46~48)。その結果,

5項目すべてを用いた場合と大きな違いはみられず,いずれもプラセボ群に対し有意差がみられた

ことから,これらの3項目は有効性に影響を及ぼすものではなかったと考えられた。

以上のとおり,今回の対象患者では,結果的に5項目もの評価項目は必要ではなかったと考えら

れるが,ループス腎炎における長期的予後に大きな影響を及ぼす1日尿蛋白量及び C3 のそれぞれ

に対する明らかな改善効果が立証され,さらに両効果が相俟って高い改善効果が得られていること

から,その評価結果は本剤の治療対象となるループス腎炎患者に対する有効性を示しているものと

考える。

-75-

Page 7: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 76 -

表 2.7.3-45 主要評価項目の各構成要素における投与前後差と群間の差の信頼区間(第Ⅲ相試験:28 週)

投与前値 最終時 投与前後差

項目 投与群

n

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

最小~最大

n

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

最小~最大

n

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

最小~最大

中央値

群間差

95%

信頼区間

タクロリムス群

28

2.51±2.51

1.64

1.21-2.93

0.5500~13.3130

27

1.08±0.79

1.00

0.37-1.73

0.0800~3.0200

27

-1.48±2.25

-0.87

-1.46-0.57

-11.0130~0.6000 1日尿蛋白量

(g/日)

プラセボ群

35

2.08±1.72

1.47

0.87-2.91

0.1300~7.8800

34

2.93±2.66

2.28

0.91-3.79

0.1300~11.2200

34

0.83±1.78

0.15

-0.20-1.31

-1.2430~6.4400

-1.02 -2.34~

-0.84

タクロリムス群

28

12.1±14.5

4.0

2.0-19.0

0~51

27

12.8±26.9

4.0

1.0-9.0

0~100

27

2.1±24.3

0.0

-5.0-0.0

-20~95 尿中赤血球数

(個/hpf)

プラセボ群

35

10.6±19.5

4.0

2.0-9.0

1~99

34

12.8±24.6

4.0

2.0-9.0

0~99

34

2.1±29.9

0.0

-4.0-3.0

-90~95

0.0 -5.0~1.0

タクロリムス群

28

0.75±0.22

0.67

0.59-0.87

0.45~1.31

28

0.78±0.26

0.72

0.62-0.88

0.36~1.47

28

0.03±0.09

0.01

-0.02-0.08

-0.15~0.30 血清クレアチニン

(mg/dL)

プラセボ群

35

0.71±0.17

0.71

0.58-0.79

0.40~1.11

35

0.77±0.31

0.69

0.62-0.82

0.43~2.16

35

0.06±0.25

0.02

-0.05-0.05

-0.18~1.33

-0.01 -0.03~

0.06

タクロリムス群

28

32.3±65.2

10.5

5.0-26.5

5.0~334.0

27

15.2±22.9

8.0

5.0-12.0

5.0~113.0

27

-18.1±47.9

-2.0

-12.0-0.0

-221.0~5.0 抗 dsDNA 抗体

(U/mL)

プラセボ群

35

23.6±30.5

13.0

5.0-24.0

5.0~136.0

34

27.4±42.2

9.5

5.0-22.0

5.0~160.0

34

3.6±25.2

0.0

-6.0-0.0

-26.0~103.0

-2.0 -7.0~0.0

タクロリムス群

28

69.1±20.2

72.5

58.0-81.5

27.0~120.0

27

83.3±24.3

85.0

64.0-102.0

38.0~135.0

27

13.3±10.8

13.0

5.0-17.0

-8.0~43.0 補体(C3)

(mg/dL)

プラセボ群

35

68.1±16.9

70.0

58.0-80.0

36.0~123.0

34

71.1±23.8

70.0

61.0-83.0

19.0~125.0

34

2.7±18.8

-2.0

-8.0-12.0

-34.0~50.0

15.0 6.0~18.0

-76-

Page 8: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 77 -

表 2.7.3-46 合計スコア:血清クレアチニンを除外した時の投与前後の変化量

投与群 時期 開始時 最終時 差 変化率

n 28 27 27 27

平均値±S.D. 5.1±1.8 3.2±1.9 -1.9±1.8 -36.0±28.8

中央値 5.0 3.0 -2.0 -33.3

第1-第3四分位 3.0-6.5 2.0-4.0 -2.0--1.0 -60.0--25.0

タクロリムス群

最小~最大 3~9 0~8 -7~2 -100.0~50.0

n 35 34 34 34

平均値±S.D. 5.0±1.6 4.8±2.3 -0.1±1.9 1.8±44.5

中央値 5.0 5.0 0.0 0.0

第1-第3四分位 4.0-6.0 3.0-6.0 -1.0-1.0 -20.0-25.0

プラセボ群

最小~最大 2~8 0~11 -4~3 -100.0~150.0

検定 t検定 / / p 値=0.001 p 値=0.000

表 2.7.3-47 合計スコア:血清クレアチニンと尿中赤血球数を除外した時の投与前後の変化量

投与群 時期 開始時 最終時 差 変化率

n 28 27 27 27

平均値±S.D. 4.5±1.6 2.7±1.4 -1.8±1.4 -40.1±22.0

中央値 4.5 2.0 -1.0 -33.3

第1-第3四分位 3.0-5.5 2.0-4.0 -2.0--1.0 -60.0--28.6

タクロリムス群

最小~最大 2~9 0~5 -6~0 -100.0~0.0

n 35 34 34 34

平均値±S.D. 4.5±1.6 4.3±1.9 -0.1±1.5 -0.2±43.9

中央値 4.0 4.0 0.0 0.0

第1-第3四分位 3.0-5.0 3.0-6.0 -1.0-1.0 -25.0-20.0

プラセボ群

最小~最大 2~8 0~9 -3~3 -100.0~150.0

検定 t検定 / / p 値=0.000 p 値=0.000

表 2.7.3-48 合計スコア:血清クレアチニン,尿中赤血球数,抗 dsDNA 抗体を除外した時の投与前後の

変化量

投与群 時期 開始時 最終時 差 変化率

n 28 27 27 27

平均値±S.D. 3.6±1.3 2.3±1.5 -1.4±1.1 -39.4±27.9

中央値 3.5 2.0 -1.0 -40.0

第1-第3四分位 3.0-5.0 1.0-3.0 -2.0--1.0 -50.0--25.0

タクロリムス群

最小~最大 2~6 0~5 -5~0 -100.0~0.0

n 35 34 34 34

平均値±S.D. 3.6±1.2 3.5±1.4 -0.1±1.3 3.5±44.5

中央値 3.0 3.0 0.0 0.0

第1-第3四分位 3.0-4.0 3.0-5.0 -1.0-1.0 -16.7-25.0

プラセボ群

最小~最大 2~6 0~6 -3~3 -100.0~150.0

検定 t検定 / / p 値=0.000 p 値=0.000

-77-

Page 9: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 78 -

(2) 主要評価項目で得られた成績の臨床的意味

ループス腎炎治療薬の有効性は,SLE に伴う免疫異常を是正し,腎機能を維持することで末期腎

不全への移行や死亡を阻止できるか否かを立証することで評価されるべきであるが,そのような治

験の実施は,評価期間が極めて長くなるため現実的には困難である。このため,第Ⅲ相試験(28 週)

では,ループス腎炎の治療効果の判定において用いられている5項目(1日尿蛋白量,尿中赤血球

数,血清クレアチニン,抗 dsDNA 抗体,C3)から作成した合計スコアの変化率をサロゲートな主要評

価項目とした。この評価方法が,本来ループス腎炎治療薬に求められる有効性評価に通じるもので

あるか,あるいは主要評価項目で得られた成績が臨床的にどれ程意味があるかを以下に検討した。

現在,文献的にみても末期腎不全への移行や生存率に影響を及ぼす重要な因子として注目されて

いるのは,腎炎臨床所見では1日尿蛋白量や尿沈渣所見,腎機能検査所見として血清クレアチニン,

免疫学的所見ではC3であり,抗DNA抗体やCH50などもその因子とする報告もある。このことから,

ループス腎炎治療薬の有効性評価では,少なくともこれらの主要因子において「臨床的に意義のあ

る改善効果」が,「治験薬の有効性」として検出されることが求められていると考えられる。

今回,第Ⅲ相試験(28 週)では,対象をループス腎炎の一部の患者に限定したことにより,主要

評価項目とした合計スコアを構成する5項目の検査項目のうち,尿中赤血球数と血清クレアチニン

については投与前より異常値を示した症例が少なかったことから,これらの検査項目における効果

を十分反映した成績とはならなかった。しかし,プラセボ群も含め,両検査項目では経過観察中に

悪化傾向を示さず,多くが正常不変又は不変のまま推移したことから,今回対象とした患者層では,

これらのパラメータに大きな変動がみられるような病期・病状ではなかったと考えられる。一方,

残る3項目(1日尿蛋白量,抗 dsDNA 抗体,C3)について最終時の各スコア変化率をみると,いずれ

もプラセボ群に対して有意差がみられた。

5項目の合計スコアの変化率と1日尿蛋白量,C3 及び抗 dsDNA 抗体のスコア変化率との相関係

数については,CTD2.7.3.3(p.71)に示しており,1日尿蛋白量では r=0.600,C3 では r=-0.632,

抗 dsDNA 抗体では r=0.315 であった。このうち1日尿蛋白量と C3 は共にループス腎炎の長期的予

後に大きな影響を及ぼすものであることから,両パラメータの合計スコアの変化率と5項目の合計

スコア変化率との相関係数をみると,r=0.826 と高い相関がみられた。このように,5項目の合

計スコアの変化率には1日尿蛋白量と C3 のスコア変化が大きく反映されていると考えられた。こ

のため,各パラメータにおけるスコアの推移と臨床的に意義のある改善効果との関係について検討

した。

まず,1日尿蛋白量についてみると,1g/日未満に低減すること,同様に C3 では 60mg/dL 以上

に増加することが,ループス腎炎患者の長期的予後を改善するうえで重要とされていることから,

両パラメータでこれらを基準とした改善が得られることの臨床的意義は大きいと考えられる。

次に,1日尿蛋白量の低減とスコア変化率との関係をみると,1g/日未満に低減するにはスコア

3~2→1~0への推移が必要で,同様に C3 ではスコア3→2~0への推移が必要である。

以上を踏まえ,第Ⅲ相試験(28 週)の主要評価項目における成績を分析した。

-78-

Page 10: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 79 -

なお,タクロリムス群の最終時の合計スコアの変化率は平均値±標準偏差では-32.9±31.0%,

プラセボ群では 2.3±38.2%であるが,中央値でみた時にそれぞれ-33.3%及び0%であったこと

から,変化率を中央値で二分してその臨床的意義を比較することとした。

個々の症例における1日尿蛋白量,C3 の各スコアの推移と合計スコアの変化率との関係を表

2.7.3-49 に示した。

まず,最終時の合計スコア変化率の中央値に相当する-33.3%を上回る症例についてみると,タ

クロリムス群では 27 例中 18 例(66.7%),プラセボ群では 34 例中5例(14.7%)が該当し,このう

ち1日尿蛋白量が1g/日未満に低減したのはタクロリムス群 12 例,プラセボ群1例で,タクロリ

ムス群では明らかに多かった。また,C3 が 60mg/dL 以上に増加したのは,タクロリムス群1例,

プラセボ群2例で,1日尿蛋白量又は C3 のいずれかが基準値よりも改善したのはタクロリムス群

13 例,プラセボ群3例であった。両群とも,1日尿蛋白量と C3 の両者がともに上記基準値よりも

改善したものはなかったものの,1日尿蛋白量が1g/日未満に低減したタクロリムス群の 12 例の

うち C3 が改善(スコア2~1→1~0)したのは7例で悪化例はなく,プラセボ群の1例も C3 の

改善(スコア2→1)がみられた。

一方,変化率が-33.3%に至らなかった症例についてみると,1日尿蛋白量が1g/日未満に低減

したものはタクロリムス群ではみられず,プラセボ群に2例みられたが,この2例ではともに C3

の悪化(スコア1→2)を認めた。なお,1日尿蛋白量の1g/日未満への低減はなかったが,C3 が

60mg/dL 以上に増加した症例は,各群1例にみられた。

因みに,-33.3%を上回る群と下回る群における全般改善度(軽度改善以上)をみると,それぞれ

91.3%(21/23 例),13.5%(5/38 例)であり,-33.3%を上回る症例のほとんどが改善例であった。

これらの検討より,合計スコアの変化率を用いた有効性の評価において1日尿蛋白量と C3 にお

ける変化率が大きく反映した結果となったが,これら両パラメータは長期的予後に大きな影響を及

ぼす重要な因子である。さらに,臨床的意義のある1日尿蛋白量の低減がみられ,かつ C3 が悪化

しなかった症例では-33.3%以上の合計スコアの変化率が得られており,1日尿蛋白量と C3 に対

する効果が相俟って,改善効果をもたらしていた。

以上,タクロリムス群で得られた合計スコアの変化率には,臨床的に意義のある1日尿蛋白量や

C3 における改善効果が反映されていた。また,-33.3%を上回る合計スコアの変化率が得られた

タクロリムス群の多くの症例(72.2%:13/18 例)では,長期的予後の改善が期待できると考えら

れる。

-79-

Page 11: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 80 -

表 2.7.3-49 1日尿蛋白量及び C3 のスコア推移と合計スコアの変化率との関係

5 項目の合計スコア 症例 ID 群* 該当例* 尿蛋白量スコア

の推移 △尿蛋白量 症例 ID 該当例* C3スコア

の推移△C3

推移 変化量 変化率% 全般改善度

000203 P 1→0 -1 000203 1→0 -1 4→0 -4 -100 中等度改善001601 FK ◎ 3→0 -3 001601 2→0 -2 7→0 -7 -100 著明改善

000201 P 1→1 0 000201 ○ 3→1 -2 6→2 -4 -66.7 中等度改善000402 FK ◎ 2→1 -1 000402 1→0 -1 3→1 -2 -66.7 中等度改善

002301 FK ◎ 2→1 -1 002301 1→0 -1 3→1 -2 -66.7 中等度改善

000703 FK ◎ 2→0 -2 000703 0→0 0 5→2 -3 -60 中等度改善

001701 FK ◎ 2→0 -2 001701 2→2 0 5→2 -3 -60 著明改善

002602 P ○ 2→1 -1 002602 2→1 -1 5→2 -3 -60 中等度改善

002801 FK ◎ 2→1 -1 002801 2→1 -1 7→3 -4 -57.1 軽度改善 001901 P 2→2 0 001901 ○ 3→0 -3 9→4 -5 -55.6 軽度改善

001102 FK 3→2 -1 001102 ◎ 3→1 -2 11→5 -6 -54.5 中等度改善

002401 P 0→0 0 002401 2→2 0 5→3 -2 -40 軽度改善

002601 FK ◎ 2→1 -1 002601 2→1 -1 5→3 -2 -40 軽度改善

003801 FK ◎ 3→1 -2 003801 2→2 0 5→3 -2 -40 軽度改善

000701 FK 2→2 0 000701 1→0 -1 5→3 -2 -40 中等度改善003102 FK 1→0 -1 003102 1→1 0 3→2 -1 -33.3 中等度改善

000501 FK ◎ 2→1 -1 000501 2→1 -1 6→4 -2 -33.3 不変

001103 FK ◎ 2→1 -1 001103 1→0 -1 3→2 -1 -33.3 中等度改善

002001 FK ◎ 2→1 -1 002001 0→0 0 6→4 -2 -33.3 軽度改善

002202 FK ◎ 2→1 -1 002202 0→0 0 3→2 -1 -33.3 軽度改善

000102 FK 2→2 0 000102 0→0 0 3→2 -1 -33.3 中等度改善000202 FK 2→2 0 000202 1→0 -1 3→2 -1 -33.3 不変

001902 FK 2→2 0 001902 1→0 -1 3→2 -1 -33.3 軽度改善

002402 FK 2→2 0 002402 3→3 0 7→5 -2 -28.6 軽度改善001603 P 1→1 0 001603 2→1 -1 4→3 -1 -25 不変

003103 FK 2→2 0 003103 3→3 0 8→6 -2 -25 中等度改善

003202 FK 3→2 -1 003202 ◎ 3→2 -1 8→6 -2 -25 中等度改善001301 FK 2→2 0 001301 2→1 -1 5→4 -1 -20 不変

001501 P 2→3 1 001501 1→0 -1 5→4 -1 -20 軽度改善

002802 P 1→2 1 002802 2→0 -2 6→5 -1 -16.7 軽度悪化

002501 P 3→3 0 002501 ○ 3→2 -1 6→5 -1 -16.7 不変

002803 FK 2→2 0 002803 3→3 0 7→6 -1 -14.3 不変

003101 P 3→2 -1 003101 3→3 0 7→6 -1 -14.3 不変 000401 P 3→3 0 000401 2→0 -2 8→7 -1 -12.5 不変

000902 P ○ 2→1 -1 000902 1→2 1 3→3 0 0 軽度悪化

000103 FK 2→2 0 000103 0→0 0 3→3 0 0 中等度改善

000601 FK 2→2 0 000601 3→3 0 9→9 0 0 不変

000901 FK 2→2 0 000901 1→0 -1 5→5 0 0 不変

000301 P 2→2 0 000301 3→3 0 5→5 0 0 不変 001001 P 2→2 0 001001 2→2 0 4→4 0 0 不変

001302 P 2→2 0 001302 2→2 0 7→7 0 0 軽度悪化

002101 P 2→2 0 002101 0→0 0 3→3 0 0 不変

003302 P 2→2 0 003302 0→1 1 7→7 0 0 不変

002901 P 3→2 -1 002901 1→2 1 6→6 0 0 不変

000704 P 2→3 1 000704 1→0 -1 3→3 0 0 不変 001801 P 3→3 0 001801 1→0 -1 4→4 0 0 不変

003201 P 2→3 1 003201 1→2 1 6→7 1 16.7 軽度悪化

002201 P 2→2 0 002201 0→1 1 5→6 1 20 不変

000204 P 1→1 0 000204 1→2 1 4→5 1 25 不変

000702 P 1→2 1 000702 3→3 0 4→5 1 25 軽度悪化

001101 P 2→2 0 001101 1→2 1 4→5 1 25 不変 001201 P 2→2 0 001201 2→2 0 4→5 1 25 不変

000603 P ○ 2→1 -1 000603 1→2 1 3→4 1 33.3 不変

001702 P 2→2 0 001702 1→2 1 3→4 1 33.3 不変

001401 P 2→2 0 001401 3→3 0 8→11 3 37.5 著明悪化

001602 P 2→3 1 001602 3→3 0 8→11 3 37.5 中等度悪化

002002 P 3→3 0 002002 3→3 0 8→11 3 37.5 中等度悪化002403 P 1→1 0 002403 2→2 0 5→7 2 40 不変

000101 P 1→3 2 000101 1→2 1 4→6 2 50 軽度悪化

003301 FK 3→2 -1 003301 0→0 0 4→7 3 75

000104 P 2→2 0 000104 1→3 2 3→6 3 100 軽度悪化

*FK:タクロリムス群(◎),P:プラセボ群(○)

「該当例」は,1日尿蛋白のスコアが3~2→1~0,あるいは C3 のスコアが3→2~0に各々変化した症例を指す。

-80-

Page 12: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 81 -

(3) クレアチニンクリアランスの低下について

第Ⅲ相試験(28 週)で有効性評価の副次的評価項目としたクレアチニンクリアランス(以下,CCr

と略)の評価では,最終時(≦28 週)にタクロリムス群で投与前値(平均値±S.D.)103.9±45.0mL/分

(中央値 101.4 mL/分)から 81.5±36.1mL/分(中央値 78.2 mL/分)と 20%程度低下し,変化率でみる

とプラセボ群との間に有意差がみられた(p=0.023,Mann-Whitney の U 検定)。

タクロリムスの従前の臨床試験では,CCr は必須検査項目とされておらず,血清クレアチニンを

主な必須検査項目としていた。今回,ループス腎炎の臨床試験では全例について CCr を測定し,

CCr の低下を認めたが,今回判明した CCr の低下は血清クレアチニン上昇に代表される本剤の腎機

能障害に対する解釈を大きく見直すほどのエビデンスではないと思われる。本剤の腎機能障害は

その発現機序及び従前の臨床試験データから可逆的と考えられ,腎不全に容易に移行するものでは

ない。これに対し,ループス腎炎は自己抗体値の増加,補体値の減少,蛋白尿の増加を経て腎機能

低下へと不可逆的に病勢が進展していく慢性疾患である。予後不良な病型や不適切な管理・治療で

は末期腎不全に進行する可能性が高く, SLE 患者の 9.4~13.8%が 10 年後に腎不全に至り,その数

は毎年 300 人前後とされている。このため,ループス腎炎の進行は,タクロリムスによる CCr 低下

に比べ,より真のエンドポイント(腎不全防止,生命予後改善)に影響すると考えられる。さらに,

タクロリムスによる腎機能障害の発現機序・作用点とループス腎炎の発現機序・発現部位は異な

っており,この腎機能障害の発現機序・作用点とループス腎炎に対する腎炎抑制効果の発現機

序・作用点も異なっていると考えられる。このため,本剤のリスクとした腎障害とベネフィット

に繋がる腎炎抑制効果をそれぞれ個別に検討し,そのベネフィットとリスクのバランスを検討す

ることにより,本剤の臨床的有用性を明らかにすることができると考える。

以下に,CCr 低下の分析結果を示すとともに,その発現機序,回復性,他の腎機能パラメータや

臨床効果に及ぼす影響などについても言及した。主な要点は以下のとおりである。

① カルシニューリンインヒビターであるタクロリムスとシクロスポリンの腎障害は一般に可逆

的なものであり,不可逆的な変化は稀である。

② 本剤による腎障害部位とループス腎炎の障害部位は異なり,相加的に腎障害が惹起されるも

のではない。

③ 本剤による CCr 低下や血清クレアチニン上昇は可逆性であることがループス腎炎及び既承認

効能での成績から示されている。

④ ループス腎炎でみられた本剤による CCr 低下は,他の腎機能パラメータに大きく影響を及ぼ

す程のものではない。

⑤ 他の領域(移植,関節リウマチ,重症筋無力症)と比較して,腎機能障害に関連する臨床検

査値異常変動やその他の副作用がループス腎炎で発現し易いという傾向はなく,その頻度,

程度とも大差はない。

⑥ 腎機能障害の発現頻度を高める内因性及び外因性因子については,現時点での評価例数が少

なく,これを特定することは難しい。

-81-

Page 13: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 82 -

ⅰ. 第Ⅲ相試験(28 週)でみられた CCr 低下について

ⅰ)組み入れ対象の CCr 値

第Ⅲ相試験(28 週)で組み入れ対象となった難治性ループス腎炎患者では,腎機能は必ずしも悪

い状態ではない。すなわち,難治性ループス腎炎は,ステロイドの増減や免疫抑制剤の併用などに

よっても,蛋白尿を1g/日以下にコントロールすることができないような症例である。これら難治

性ループス腎炎症例では,血清クレアチニンが異常値に上昇(CCr が異常値に低下)し,腎機能が

悪化した状態にある症例もいるが,一方で血清クレアチニンが正常で CCr も 100mL/min 以上を示す

ような症例,すなわち腎機能は正常であるが持続性の蛋白尿のみを呈している症例も存在する。た

だし,後者のような場合でも蛋白尿が年余にわたって続き,慢性の経過を辿ると腎機能障害につな

がり,慢性腎不全となり透析治療に移行するなど,その予後に大きく影響することが知られており,

この点から難治性であると言われる。

以上のように,難治性ループス腎炎であっても,持続性の蛋白尿は呈するものの,腎機能障害を来

たしておらず CCr100mL/min 以上の症例も存在する。

一方,タクロリムスの治療上の位置付けの観点から考えると,疾患活動性が高い時期は,血清ク

レアチニンが異常値に上昇し,腎機能が悪化した状態(CCr が低下)にあり,ステロイドやシクロ

フォスファミドの大量投与(パルス療法含む)などの初期治療が最優先で用いられる。これに対し,

タクロリムスは,高い疾患活動性がある程度抑えられているがステロイド抵抗性であり,かつ免疫

異常を有する患者において,寛解導入効果と維持効果が期待できる薬剤として位置付けられると考

えており,このような患者では,必ずしも腎機能は悪い状態ではない。

ⅱ)CCr の変動パターン

CCr の変動パターンを表 2.7.3-50 に示した。CCr が低下した症例のうち,各治験依頼施設の基

準内の変動であったものはタクロリムス群 10/22 例(45.5%),プラセボ群 13/17 例(76.5%)と最も

多かった(最終時判定)。また,CCr が低下した症例のうち,投与前に基準内であった CCr が基準外

へ低下した症例数はタクロリムス群で7/22例(31.8%),プラセボ群では2/17例(11.8%)であった。

同様に,投与前に基準外であった CCr がさらに低下した症例数は,タクロリムス群で 5/22 例

(22.7%),プラセボ群では 2/17 例(11.8%)であった。

-82-

Page 14: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 83 -

表 2.7.3-50 CCr の変動パターンと症例数

CCr の変動パターン

(投与前→投与後)1)

基準内→

基準内

基準内→

基準外

基準外→

基準内

基準外→

基準外 計

上昇 3

(60.0)

1

(20.0)

1

(20.0) 5

12 週後

低下 11

(57.9)

5

(26.3)

3

(15.8) 19

上昇 2

(66.7)

1

(33.3) 3

28 週後

低下 8

(50.0)

5

(31.3)

3

(18.8) 16

上昇 3

(75.0)

1

(25.0) 4

タクロリムス群

最終時

(≦28 週) 低下

10

(45.5)

7

(31.8)

5

(22.7) 22

上昇 12

(70.6)

4

(23.5)

1

(5.9) 17

12 週後

低下 10

(76.9)

1

(7.7)

2

(15.4) 13

上昇 7

(58.3)

3

(25.0)

2

(16.7) 12

28 週後

低下 7

(77.8)

1

(11.1)

1

(11.1) 9

上昇 12

(70.6)

3

(17.6)

2

(11.8) 17

プラセボ群

最終時

(≦28 週) 低下

13

(76.5)

2

(11.8)

2

(11.8) 17

1)基準範囲上限を超える値は「基準内」と取り扱った。 (%)

ⅲ)投与前 CCr 値の影響

投与前の CCr を各治験依頼施設の基準範囲内と基準範囲外に分類し,最終時(≦28 週)に CCr が

30%以上低下した症例の割合をみた。基準範囲内であった症例では,タクロリムス群6/20 例

(30.0%),プラセボ群4/27 例(14.8%)であり,基準範囲外であった症例ではタクロリムス群

1/6例(16.7%),プラセボ群1/7例(14.3%)であった(表 2.7.3-51)。

以上のとおり,タクロリムス群では投与前に CCr が基準範囲内であった症例で 30%以上 CCr 値

が低下した症例が多く,投与前の CCr が基準範囲外であった症例で,30%以上 CCr 値が低下する頻

度が高くなるという傾向はなかった。

表 2.7.3-51 投与前の CCr 別にみた CCr 低下(30%以上)例数

投与群 タクロリムス群 プラセボ群

症例数 26 34

基準範囲内 6/20 例(30.0) 4/27 例(14.8) 投与前の

CCr値 1) 基準範囲外 1/6 例(16.7) 1/7 例(14.3)

1)基準範囲上限を超える値は「基準内」と取り扱った。 (%)

-83-

Page 15: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 84 -

ⅳ)有害事象と回復性

CCr が低下したタクロリムス群 22 例のうち,有害事象とされたのは3例で,タクロリムスとの

因果関係が「可能性あり」とされたのは2例であった。なお,この2例では,低下した CCr は投与

終了後に回復し,可逆的な事象であったことが確認されている(2.7.4.3 臨床検査値の評価,p.39

~41 参照)。タクロリムスによる CCr 低下(異常値)は,移植領域でも報告されている既知の事象で

あり,これまでの非臨床試験や臨床試験で回復可能な事象であることが確認されている。

ⅴ)血清クレアチニンに及ぼす影響

第Ⅲ相試験(28 週)では,プラセボ群に対して CCr が有意に低下したが,血清クレアチニンでは

スコア,スコアの変化率や実測値でみても2群間に有意差を認めなかった。タクロリムス群では血

清クレアチニンにおいて,臨床的に意味のある悪化(0.3mg/dL 以上の上昇)を認めた症例は4/28 例

(14.3%)であり,上記 CCr 低下の頻度よりも低かった。これら4例のうち3例は無処置又は適切な

治療により回復し,他1例は中止後に回復を確認していないものの,臨床的に問題ない値と判断さ

れ,追跡調査が終了されている。

ⅵ)他の腎機能パラメータに及ぼす影響

CCr 及び血清クレアチニン(s-Cr),BUN,血中β2ミクログロビリン,尿中 NAG,尿中β2ミクログ

ロビリンなどの腎機能パラメータの投与前値と最終時(≦28 週)の測定値及び変化率を表 2.7.3-

52 に示した。プラセボ群と比較して,タクロリムス群では CCr 以外のパラメータでは悪化はみら

れなかった。

表 2.7.3-52 各種腎機能パラメータに及ぼす CCr 低下の影響

試験名 第Ⅲ相試験(28 週)

検査項目 タクロリムス群 プラセボ群

投与前 101.4 95.8 CCr

(mL/min) 最終時(28 週)

(変化率)

78.2

(-22.0)

92.9

(-1.4)

投与前 0.67 0.71 血清クレアチニン

(mg/dL) 最終時(28 週)

変化率

0.72

(1.8)

0.69

(3.1)

投与前 13.9 13.5 BUN

(mg/dL) 最終時(28 週)

変化率

15.0

(4.8)

14.8

(-0.7)

投与前 2.5 2.6 血清β2ミクログロ

ブリン

(mg/L) 最終時(28 週)

変化率

2.4

(-7.0)

2.8

(13.3)

投与前 7.5 6.5 尿中 NAG

(U/L) 最終時(28 週)

変化率

6.9

(-14.0)

6.7

(7.9)

投与前 234.0 226.0 尿中β2ミクログロ

ブリン

(μg/L) 最終時(28 週)

変化率

152.5

(-30.5)

223.0

(4.7)

中央値,(%)

-84-

Page 16: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 85 -

次に,血清クレアチニン(s-Cr),BUN,血中β2 ミクログロビリン(血中β2MG),尿酸,尿中 NAG,

尿中β2ミクログロビリン(尿中β2MG)などの腎機能パラメータの投与前値によりCCrの変化率に違

いがあるのか否かを検討したが,特に違いはなかった(2.7.3.6 付録 図 2.7.3-22~24)。さらに,

各腎機能パラメータの変化率と CCr の変化率に関連があるのか否かも検討したが,いずれにおいて

も関連を示唆する成績ではなかった(2.7.3.6 付録 図 2.7.3-25~27)。

なお,ループス腎炎罹病期間と CCr の変動との関係を検討したが,一定の傾向を認めなかった

(2.7.3.6 付録 図 2.7.3-28)。

以上のとおり,CCr の低下が他の腎機能パラメータに悪影響を及ぼしていないことが示唆された。

ⅶ)CCr の変化率と各種成績との関係

第Ⅲ相試験(28 週)のタクロリムス群における1日尿蛋白量,全般改善度及び合計スコアと CCr

と関係を検討するため,それぞれのクロス表を表 2.7.3-53 に示した。

1日尿蛋白量との関係をみると,CCr の変動と1日尿蛋白量の増減の間に一定の傾向を認め

ず,CCr の低下が1日尿蛋白量の低下に寄与する度合いは大きくないと考えられた。さらに,全般

改善度及び合計スコアとの関係をみても一定の傾向を認めず,CCr の低下がループス腎炎の改善又

は維持の妨げにはなっていなかった。

表 2.7.3-53 CCr と1日尿蛋白量,全般改善度及び合計スコアとの関係

クレアチニンクリアランス値(変化率);最終時(≦28週)(%)

≦-75

-75<~≦-50

-50<~≦-25

-25<~≦0

0< ~≦25

25<~≦50

50< ~≦75

75< 合計

≦-75 2 2 1 5

-75<~≦-50 1 3 6 1 11 -50<~≦-25 1 4 1 6

-25<~≦0 1 1

0<~≦25 2 2

25<~≦50 1 1

50<~≦75 0

75< 0

1日尿蛋白量値 (変化率)(%) ;最終時(≦28週)

合計 1 0 9 12 2 2 0 0 26

著明改善 1 1 2

中等度改善 3 8 11

軽度改善 2 2 2 1 7

不変 1 3 1 5

軽度悪化 0 中等度悪化 0

著明悪化 0

全般改善度 ;最終時(≦28週)

合計 1 0 9 12 2 1 0 0 25

≦-75 1 1

-75<~≦-50 1 5 6

-50<~≦-25 1 4 6 2 1 14 -25<~≦0 3 1 4

0<~≦25 0

25<~≦50 0

50<~≦75 1 1

75< 0

合計スコア (変化率)(%) ;最終時(≦28週)

合計 1 0 9 12 2 2 0 0 26

例数

-85-

Page 17: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 86 -

ⅷ)併用注意薬の影響

CCr 低下例における CCr 低下率を併用注意薬剤使用例,非使用例別に比較した(表 2.7.3-54)。

その結果,併用注意薬剤使用例の CCr の変化率の中央値は-23.8%であり,併用注意薬剤非使用例

の-25.7%と大差なかった。

以上の結果から,併用注意薬剤併用群と非併用群で CCr の低下との関連性は認められないと考え

られた。

なお,該当する併用注意薬剤の薬剤名については,2.7.4.5.3 薬物相互作用の項に示した。

表 2.7.3-54 併用注意薬剤使用別の CCr 低下率(%)

併用注意薬剤使用例 併用注意薬剤非使用例

例数

平均値±S.D.

中央値

第1-第3四分位

最小~最大

11

-22.2±11.4

-23.8

-27.6 - -20.1

-38.0 ~ -0.7

11

-29.9±24.1

-25.7

-44.6 - -11.4

-85.5 ~ -3.5

ⅱ. CCr 低下例におけるその後の経過観察

ⅰ)第Ⅲ相試験(28 週)後の CCr の推移

プラセボ対照二重盲検比較試験でタクロリムス群であった症例の比較試験最終時(≦28週)のCCr

の平均値±S.D.(中央値)は 80.9±28.0mL/分(80.7mL/分)であったが,継続試験開始時には 102.5

±63.6mL/分(91.6mL/分)と,プラセボ群であった症例と同程度になるまで増加していた。これは,

比較試験終了時から継続試験開始時までに治験薬の非投与期間が35~84日(平均53.9日)あったこ

とから,この間に CCr が増加したと考えられた(図 2.7.3-16)。継続試験移行後に CCr は再度低下

し,投与後 28 週には 82.9±22.3mL/分(86.5mL/分)となり,比較試験開始時に対し,有意差がみら

れた。しかし,その実測値及び変化率は,比較試験の最終時にみられたものと大差はなく,増悪傾

向を認めなかった。

一方,プラセボ群であった症例では,比較試験開始時の 107.5±60.7mL/分(93.7mL/分)から継続

試験開始時の 102.2±44.1mL/分(89.4mL/分)に推移し,投与後 28 週に 82.7±19.7mL/分(80.4mL/

分)と低下したが,有意な変動ではなかった。

以上の成績からも,タクロリムス投与によってみられるCCr低下の程度は大きなものではなく,

かつ可逆的であると考えられる。

-86-

Page 18: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 87 -

開始前

(比較)

最終時(比較)

開始時 12 16 28 最終時 (週後)

タクロリムス群 13 13 13 12 11 11 13 (例数)

図 2.7.3-16 CCr の実測値の推移 (中央値:第1~第3四分位, *:p<0.05, **:p<0.01)

ⅱ)第Ⅱ相試験(28 週)後の CCr の推移(個々値)

第Ⅱ相試験(28 週)の 28 週時点で CCrが投与開始時よりも低下した症例のうち,CCr が 51.8~

76mL/分と低値を示した5例の経過観察の結果を表 2.7.3-55 に示した。

長期間経過観察された症例は,投与後 40 週まで1例,96 週まで1例,104 週までが3例であっ

た。投与後 28 週以降,CCr,その他の腎機能パラメータ及び1日尿蛋白量には所見の改善,維持又

は悪化がみられるが,これらの反応は個々の症例によって異なっていた。また,最終時(≦104 週)

の全般改善度判定をみると,1例で軽度悪化がみられたが,4例では著明改善1例,軽度改善1例,

中等度改善2例と,悪化例より改善例の方が多かった。このように,投与後 28 週にみられた CCr

の低下が,ループス腎炎の予後に必ずしも悪影響を及ぼしているとの結果ではなかった。

50

100

150

-20 -16 -12 -8 -4 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48

mL/分

開始時 12 16 28 最終時

***

最終時(比較)

開始前(比較)

タクロリムス群

**

-87-

Page 19: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 88 -

表 2.7.3-55 投与後 28 週で CCr 低下がみられた5例の 28 週以降の経過-第Ⅱ相試験(28 週)

症例 投与前 28 週後 40 週後 52 週後 64 週後 76 週後 88 週後 100 週後 104 週後

CCr(mL/分) 54.3 51.8 40.6

(-4.6%) (-25.2%)

尿 NAG(U/L) 19.2 16.5 6.0

BUN(mg/dL) 16 25 23

s-β2MG(mg/L) 3.8 5.7 6.4

01 尿酸(mg/dL) 9.0 7.9 7.5

s-Cr(mg/dL) 1.4 1.7 1.9

1 日尿蛋白量 3.38 4.54 4.39

(g/日) (+34.3%) (+29.9%)

全般改善度 ― 軽度改善1) 軽度悪化2)

症例 投与前 28 週後 40 週後 52 週後 68 週後 76 週後 88 週後 96 週後 104 週後

CCr(mL/分) 87.22 74.17

(-15.0%)

84.03

(-3.7%)

73.82

(-15.4%)

77.64

(-11.0%)

60.69

(-30.4%)

46.39

(-46.8%)

57.64

(-33.9%)

尿 NAG(U/L) 6.5 6.2 4.2 5.1 8.1 6.2 8.2 8.9

BUN(mg/dL) 16.5 20.6 20.3 19.1 20.3 20.2 25.5 23.8

s-β2MG(mg/L) 2.6 2.8 2.7 2.8 2.8 3.2 2.7 4.5

06 尿酸(mg/dL) 8.7 8.3 8.8 8.0 9.9 9.0 7.6 10.1

s-Cr(mg/dL) 1.0 1.0 0.9 0.9 1.0 1.1 1.0 1.2

1 日尿蛋白量 7.696 6.251 3.488 3.717 4.313 1.875 1.580 6.528

(g/日) (-18.8%) (-54.7%) (-51.7%) (-44.0%) (-75.6%) (-79.5%) (-15.2%)

全般改善度 ― 中等度改善1) ― ― ― ― ― 軽度改善 2)

症例 投与前 28 週後 40 週後 52 週後 64 週後 76 週後 88 週後 100 週後 104 週後

CCr(mL/分) 129 76 184 99 112 126 98 74 157.01

(-41.1%) (+42.6%) (-23.3%) (-13.2%) (-2.3%) (-24.0%) (-42.6%) (+21.7%)

尿 NAG(U/L) 6.7 4.2 5.8 13.5 5.3 3.6 2.7 3.1 3.6

BUN(mg/dL) 14 17 14 13 14 13 14 16 15.1

s-β2MG(mg/L) 2.4 2.0 1.8 1.8 1.9 1.8 1.8 1.8 1.7

15 尿酸(mg/dL) 5.1 6.7 5.4 5.0 4.9 4.4 5.1 5.0 5.4

s-Cr(mg/dL) 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.7 0.7 0.64

1 日尿蛋白量 5.60 1.55 2.2 - - - - - -

(g/日) (-72.3%) (―60.7%) - - - - - -

全般改善度 ― 著明改善1) ― ― - ― ― ― 著明改善2)

症例 投与前 28 週後 40 週後 52 週後 64 週後 76 週後 88 週後 100 週後 104 週後

CCr(mL/分) 78.00 60.00 69.79 77.29 75.63 66.18 87.50 65.00 71.94

(-23.1%) (-10.5%) (-0.9%) (-3.0%) (-15.2%) (-12.2%) (-16.7%) (-7.8%)

尿 NAG(U/L) 14.8 - 7.3 4.0 4.0 3.4 3.1 3.7 2.7

BUN(mg/dL) 20 14 15 15.4 15.6 15.7 14.6 10.2 10.9

s-β2MG(mg/L) 2.1 1.9 2.0 2.0 2.2 2.0 2.1 2.5 2.2

18 尿酸(mg/dL) 8.1 5.8 7.2 7.0 7.2 6.2 6.5 7.7 7.4

s-Cr(mg/dL) 0.6 0.5 0.9 0.9 0.9 0.8 0.8 0.9 0.9

1 日尿蛋白量 1.77 - 2.12 0.66 0.907 0.713 0.507 0.735 1.014

(g/日) - (+19.8%) (-62.7%) (-48.8%) (-59.7%) (-71.4%) (-58.5%) (-42.7%)

全般改善度 ― 不変 1) ― ― ― ― ― ― 中等度改善2)

症例 投与前 28 週後 40 週後 52 週後 64 週後 76 週後 88 週後 100 週後 104 週後

CCr(mL/分) 102.0 72.7 84.3 80.4 88.5 123.6 84.0 - 86.3

(-28.7%) (-17.4%) (-21.2%) (-13.2%) (+21.2%) (-17.6%) (-) (-15.4%)

尿 NAG(U/L) 6.7 2.5 2.4 4.6 3.6 3.4 1.3 - 3.0

BUN(mg/dL) 11.8 14.6 13.4 16.1 14.1 12.9 11.9 15.1 10.2

s-β2MG(mg/L) 2.86 2.288 2.491 2.226 2.209 2.327 2.299 2.21 2.355

21 尿酸(mg/dL) 6.0 5.6 5.7 5.6 5.1 5.5 5.3 5.6 5.3

s-Cr(mg/dL) 0.7 0.7 0.75 0.68 0.69 0.70 0.72 0.69 0.68

1 日尿蛋白量 3.0636 0.9635 1.5092 1.4715 1.1100 0.8943 0.8037 - 1.2144

(g/日) (-68.6%) (-50.7%) (-52.0%) (-63.8%) (-70.8%) (-73.8%) - (-60.4%)

全般改善度 ― 中等度改善1) ― ― ― ― ― ― 中等度改善2)

1) 最終時(≦28 週) 2) 最終時(≦104 週)

-88-

Page 20: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 89 -

ⅲ)CCr 低下例における各種腎機能パラメータの推移

腎機能の評価は一般的に糸球体ろ過値(GFR)をもって行われ,CCr がほぼ GFR と等しいと考えら

れている。GFR が正常値の 50%以上(50mL/分以上)に保たれている場合は,腎糸球体予備能のため

血清クレアチニンに影響がみられないことが多く,GFR が 50%以下となり予備能による代償が不十

分になった段階で血清クレアチニンの上昇を認めることが知られている。また,ループス腎炎は進

行性の慢性疾患であり,長期投与の可能性も考えられる。このため,今回みられた CCr 低下が他の

腎機能パラメータや腎炎所見に及ぼす影響は長期的な経過観察の中で検討することも必要と考え

られる。このため,CCr の低下が他の検査項目に及ぼす影響を長期観察結果も含めて検討した。

28 週を超える長期観察例について,投与開始時と比較して投与 28 週後時点で CCr が低下してい

る症例の各種腎機能パラメータの推移を表 2.7.3-56 に示した。

ループス腎炎における第Ⅱ相試験の 104 週,第Ⅲ相試験(継続試験)において,28 週間以上の

長期観察においても,他の腎機能パラメータに大きな変動は認められなかった。

なお,参考までに,ループス腎炎と並ぶ代表的な膠原病で,かつ用法・用量も同様である関節リ

ウマチの臨床試験で1年以上の長期間経過観察された症例における血清クレアチニン,BUN,血清

β2ミクログロブリンなどの腎機能パラメータの推移を表 2.7.3-57 に示した。ループス腎炎と同

様,各種腎機能パラメータに大きな変動は認められなかった(CCr は未測定のためデータなし)。

さらに,長期間に亘る参考データとして,本邦における肝移植での使用成績調査及び長期特別調

査における血清クレアチニン,BUN について,表 2.7.3-58 に示した。各時期の症例数に違いはあ

るものの,得られたデータからは,特に大きな変動は認められていなかった(CCr は未測定のため

データなし)。なお,腎移植(5年追跡)及び肝移植(3年追跡)においても,血清クレアチニン

の推移に大きな変化は認められず,腎機能において安全性上問題なかった。

以上のとおり,長期的な観点からも CCr 低下は,他の腎機能パラメータに大きく影響を及ぼす程

のものではなかった。

-89-

Page 21: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 90 -

表 2.7.3-56 CCr 低下例における各種腎機能パラメータの推移(投与期間 28 週以上)

試験名 項目 投与前 28 週後 104 週後 最終時

(28-104 週間) ―

CCr

(mL/min)

94.6

(6)

73.4

(6)

108.7

(4)

79.1

(6) ―

血清クレアチニン

(mg/dL)

0.75

(6)

0.70

(6)

0.69

(4)

0.80

(6) ―

BUN

(mg/dL)

15.0

(6)

15.8

(6)

11.0

(4)

13.1

(6) ―

血清β2ミクログロブリン

(mg/L)

2.5

(6)

2.1

(6)

2.0

(4)

2.3

(6) ―

第Ⅱ相試験

(104 週)

尿中 NAG

(U/L)

8.2

(6)

4.2

(5)

3.3

(4)

3.9

(6) ―

試験名 項目 比較試験

投与前

比較試験

最終時

(28 週後)

継続試験

投与前

継続試験開始

28 週後

(投与期間合計

56 週間)

継続試験

最終時

(投与期間合計

28-88 週間)

CCr

(mL/min)

107.9

(12)

80.4

(12)

93.5

(12)

88.3

(10)

95.3

(12)

血清クレアチニン

(mg/dL)

0.66

(12)

0.68

(12)

0.61

(12)

0.68

(10)

0.68

(12)

BUN

(mg/dL)

13.5

(12)

15.0

(12)

13.7

(12)

15.7

(10)

14.9

(12)

血清β2ミクログロブリン

(mg/L)

2.3

(12)

2.3

(12)

2.2

(12)

2.2

(10)

2.4

(12)

尿中 NAG

(U/L)

6.9

(12)

8.3

(12)

7.1

(12)

3.9

(10)

5.0

(12)

第Ⅲ相試験

(継続試験)※

尿中β2ミクログロブリン

(μg/L)

179.5

(12)

79.5

(12)

178.0

(12)

76.0

(10)

85.5

(12)

中央値(例数)

※:第Ⅲ相二重盲検群間比較試験時にタクロリムス群であり,比較試験最終時にCCrが低下し,その後継続試験に移行,20 年 月末でデータカットオフ・固定された 12 例について集計

表 2.7.3-57 各種腎機能パラメータの推移(関節リウマチ,投与期間 28 週以上)

試験名 項目 投与前 28 週後 52 週後 最終時

(52-104 週間) ―

血清クレアチニン

(mg/dL)

0.70

(102)

0.80

(99)

0.80

(100)

0.70

(102) ―

BUN

(mg/dL)

15.2

(102)

16.2

(99)

16.9

(100)

16.1

(102) ―

関節リウマチ

(1年以上経過

例)※ 血清β2ミクログロブリン

(mg/L)

1.90

(101)

1.85

(90)

1.80

(91)

1.80

(101) ―

中央値(例数) ※: 非高齢者,投与開始用量 3.0mg,20 年 月カットオフ時の成績

表 2.7.3-58 血清クレアチニン及び BUN の推移(肝移植における使用成績調査及び長期特別調査)

投与前 ~6 ヵ月後 6 ヵ月~1年後 1年~2年後 2 年~3年後 3 年~4年後 4年~5年後

血清クレアチニン

(mg/dL)

0.30

(689)

0.40

(759)

0.30

(363)

0.30

(251)

0.30

(157)

0.30

(97)

0.40

(54)

BUN

(mg/dL)

9.00

(689)

15.00

(759)

12.20

(365)

12.00

(249)

12.00

(155)

12.00

(96)

12.00

(51)

中央値(例数)

-90-

Page 22: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 91 -

ⅲ.CCr 低下に関するまとめと考察

ⅰ)タクロリムス投与による腎障害の発症機序・作用点

一般に,タクロリムスによる腎障害は,主として腎細動脈に対する本剤の収縮作用に基づくと考

えられている。腎細動脈の収縮は,腎血流量と糸球体濾過量の低下をきたし,さらには尿細管細胞

への栄養補給を滞らせることにより,尿細管細胞の障害を引き起こすと考えられる。

両角らは,このようなタクロリムスによる腎への作用を尿細管と血管(糸球体)への作用に大別

し,各々の機能障害と形態異常の特徴を図 2.7.3-17 のように報告している。本剤にみられる腎障

害は,一般的に構造的変化を伴うものではなく,機能的変化を伴うものであり,この機能的変化は

「完全に可逆性」であるとされている。タクロリムスによる腎障害のうち構造的変化を伴うものと

して,尿細管萎縮,縞状間質線維症,糸球体硬化などが知られているが,これらは「稀でしばしば

可逆性」とされている。この「稀」とされる事例として,両角らは,長期投与時の血管への作用,す

なわち腎細動脈収縮による血管症の発現率は 0.6~1.8%程度としており,その頻度は高くはない。

タクロリムスの腎への作用

尿細管への作用 血管への作用

機能的変化

尿細管障害

↓Mg++再吸収

↓K+,H+分泌

↓尿酸排泄

↓血清 Mg++

↑血清 K+

↓血清 HCO3-

↑血清尿酸

構造的変化

中毒性尿細管症

(近位尿細管)

等大の空胞

巨大ミトコンドリア

小胞体拡張

単一細胞壊死

微小石灰沈着*

機能的変化

血管障害

↑血管収縮

↓腎灌流量

↓糸球体濾過率

↑血清クレアチニン

↑血清尿素

構造的変化

血管症

(輸入細動脈)

(糸球体)

皮内細胞損傷

血管壁損傷

(平滑筋細胞)

細動脈閉塞

血栓形成

局在性虚血

尿細管萎縮

縞状間質線維症

糸球体硬化

FGS

微小血栓性糸球体症

一般的で

完全に可逆性

稀で

通常は可逆性

一般的で

完全に可逆性

稀で

しばしば可逆性

図1 タクロリムスの腎障害の概念図障害部位を尿細管と血管(糸球体)に大別し,各々の機能障害と形態異常の特徴を要約した。

図 2.7.3-17 タクロリムスの腎障害の概念図

(腎と透析 47(3),358,1999 より抜粋)

[障害部位を尿細管と血管(糸球体)に大別し,各々の機能障害と形態異常の特徴を要約した。]

-91-

Page 23: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 92 -

なお,参考としてループス腎炎と同じ代表的な膠原病である関節リウマチ患者を対象とした本

剤の臨床試験(用法・用量はループス腎炎と同じ)において認められた腎機能検査値異常の項目と

その発現頻度を表 2.7.3-59 にまとめた。これらの項目のうち,血清クレアチニン,BUN 及び血清

β2 ミクログロブリン値の上昇は糸球体の機能的変化を,血清カリウム値の上昇,血清マグネシウ

ム値の低下及び尿中 NAG 活性値の上昇は尿細管の機能的変化をうかがわせる。すなわち,腎機能

検査値異常は糸球体と尿細管の機能に本剤が影響を与えたことを示唆している。これらの腎障害

は,タクロリムス投与により一般的にみられる所見とされ,かつ可逆的な機能的変化とされてい

る。

表 2.7.3-59 関節リウマチ臨床試験でみられた腎機能検査値異常変動

異常発現 腎機能検査値異常変動

考えられる

障害部位 検査例数

例数 (%)

血清クレアチニン上昇 糸球体 460 23 5.0

BUN 上昇 糸球体 460 57 12.4

血清β2ミクログロブリン上昇 糸球体 421 20 4.8

血清カリウム上昇 尿細管 460 17 3.7

血清マグネシウム低下 尿細管 415 19 4.6

尿中 NAG 上昇 尿細管 429 36 8.4

以上のとおり,本剤による腎障害部位とループス腎炎の障害部位(図 1.5-1又は図 2.7.6-1参

照)は異なっており,相加的に腎障害が惹起されるものではないと考えられる。

ⅱ)腎障害の可逆性

カルシニューリンインヒビターであるタクロリムスとシクロスポリンによる腎障害は,その病態

機序,臨床像や病理形態学的特徴も極めて酷似することが知られている。シクロスポリンでは,本

剤によって惹起された減ナトリウム食ラット腎細血管障害(血管病変及び尿細管間質線維化を特徴

とするヒト慢性腎障害像に似た所見)が休薬により回復することが確認されている。この成績は,

シクロスポリンだけでなくタクロリムスによる腎細血管障害も休薬により改善することを示唆す

るものと考える。

慢性血管障害の可逆性については,両角らが移植腎生検で検討しており,シクロスポリン慢性血

管障害(ciclosporin associated arteriolopathy : CAA)は,シクロスポリンを中止することに

より数ヵ月から約1年で,80%の症例で完全に消失することを確認している。また,長期投与例が

多く,組織学的な検討も多数行われている尋常性乾癬のシクロスポリン療法においても,慢性血管

病変が出現したとしても,投与中止により病理所見は改善するとの報告が多い。また,移植と比較

して低用量を使用するネフローゼ症候群や自己免疫疾患においては高度な CAA が出現することは

ないとされている。

一方,ループス腎炎患者でみられた CCr 低下や血清クレアチニン上昇については,前述のとおり

その回復性も含め提示しているが,ループス腎炎以外の適応疾患における既存の成績からもその回

復性を検討した。

-92-

Page 24: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 93 -

まず,関節リウマチについて検討した。なお,関節リウマチでは CCr を測定していないため,血

清クレアチニンの成績を引用した。関節リウマチでは,506 例中 47 例(9.3%)に 56 件の血清クレ

アチニン上昇(副作用)が認められ,53 件は回復したが,3件は未回復であった。回復例のうち,

26 件は本剤投与中に回復が認められ,27 件は本剤投与終了後に回復した。未回復の3件について

も,本剤投与開始前の状態までは回復しなかったものの,いずれも改善傾向が認められている。本

剤投与開始から血清クレアチニン上昇の副作用発現日までの期間別に転帰を検討した結果,血清ク

レアチニン上昇発現までの投与期間が 180 日以内及び 181 日~360 日の症例ではそれぞれ 11 件回

復,2件未回復及び5件回復,1件未回復であったが,361 日以上の症例では 10 件全件が回復し

ていた。このように,長期投与の後に発現した血清クレアチニン上昇においても必ずしも転帰が非

可逆的になる傾向は認められなかった。

肝移植の市販後調査(使用成績調査及び長期特別調査)では,安全性解析対象(一次治療症例)

748 例中に 37 例 37 件(4.9%)の血中クレアチニン上昇(副作用)が認められ,26 件は回復/軽快した

が,8件は未回復,3件は転帰不明であった。回復/軽快 26 件のうち,18 件は本剤投与継続中に回

復/軽快し,8件は本剤投与中止,休薬もしくは減量により回復した。未回復の8件中7件は,他

の理由による本剤中止もしくは転院後の副作用の転帰がフォローされていないことにより,転帰回

復・軽快が確認されていない症例であった。また1件は転院により転帰がフォローされていない症

例であった。転帰不明の3件は,肝移植後の肝不全等による死亡のため転帰が確認されていない症

例であった。

また,移植後 181 日以降も本剤投与が継続された 503 例で認められた血清クレアチニン上昇(副

作用)について,処置とその後の転帰を検討した結果,血清クレアチニン上昇(副作用)は 18 例に

19 件認められた。血清クレアチニン上昇による中止例はなく,休薬(1件)又は減量(3件)した症

例もあるものの,多くの症例は継続され(15 件),ほぼすべての症例で回復又は軽快した。未回復

の症例は1例のみであった。

以上,非臨床及び臨床の成績から,本剤の長期投与における CCr 低下及び腎細動脈収縮の可逆性

について検討したが,長期投与においても可逆的であると考える。

ⅲ)CCr を悪化させる要因

CCr を悪化させる要因については,前述した投与前 CCr 値の影響,腎機能パラメータの投与前値

の影響,併用注意薬の影響や 2.7.3.3.3 部分集団における結果の比較の項でも検討しているが,CCr

低下の発現頻度を高める内因性及び外因性因子については,現時点での評価例数が少なく,これ

を特定することは難しい。

-93-

Page 25: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 94 -

ⅳ)腎機能障害に関する他領域との比較

腎障害の発現状況については,移植,全身型重症筋無力症及び関節リウマチとループス腎炎を比

較検討した成績は,2.7.4.6 市販後データの項に示した。この結果,ループス腎炎で腎機能障害に

関連する臨床検査値異常変動の発現率が特に高い傾向はみられなかった。また,関節リウマチの治

験時と血清クレアチニン上昇の程度と頻度を比較したところ,程度と頻度ともに関節リウマチに比

べ高くはなかった。

以上,CCr 低下に関連する各種成績を基に考察したが,ループス腎炎患者でみられた本剤の腎機

能障害は長期的にみても可逆性であり,その程度,影響力とも大きなものではなく,ループス腎炎

の改善又は維持の妨げになるものでもなかった。また,ループス腎炎特有の副作用はなく,他の領

域と比較しても腎機能障害の頻度,程度がループス腎炎で高い傾向は認められなかった。したがっ

て,他の適応と同様,本剤に起因する腎機能障害を予防する具体的な方策としては,腎機能パラメ

ータのモニタリングを頻回に行い,本剤の腎障害のリスクがベネフィットを上回ることがないよう

慎重に注意しながら投与を継続することが肝要と考える。この具体的なモニタリングの方法につい

ては,下記のとおり,現行添付文書の「使用上の注意,2.重要な基本的注意」に記載している。

腎障害に関する添付文書上の記載(抜粋)

【使用上の注意】

1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

(2)腎障害のある患者[腎障害が悪化する可能性がある.]

2.重要な基本的注意

(1)腎障害の発現頻度が高い(「副作用」の項参照)ので,頻回に臨床検査(クレアチニン,

BUN,クレアチニンクリアランス,尿中 NAG,尿中β2 ミクログロブリン等)を行うなど患

者の状態を十分に観察すること.特に投与初期にはその発現に十分注意すること.な

お,関節リウマチ患者では,少数例ながら非ステロイド性抗炎症剤を2剤以上併用した

症例でクレアチニン上昇発現率が高かったので注意すること.

以上のように,本剤による腎機能障害を予防する方策としては,既に記載のある上記「使用上の

注意」に従うことで,ループス腎炎患者においてもリスクを回避した本剤の使用は可能と考える。

しかし,ループス腎炎は進行性かつ慢性の経過をとる腎障害であり,本剤が長期投与されること

も考慮すると,他の領域よりも腎機能障害の発現予防にはより一層の注意喚起が必要と考えられる。

このため,「2.重要な基本的注意」の(1)の記載に加え,「ループス腎炎患者では病態の進行に

より腎障害の悪化がみられるので,特に腎機能検査(クレアチニン,BUN,クレアチニンクリアラ

ンス等)の変動に注意すること。」を追記することにした。さらに,ループス腎炎患者に対する注

意喚起をより確実なものにするため,「警告」の項に,「ループス腎炎における本剤の投与は,ルー

-94-

Page 26: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 95 -

プス腎炎の治療に十分精通している医師のもとで行うこと。」を明記することにした。また,2.5.4.4

用法・用量を裏付ける成績の分析の項で示したとおり,「用法・用量に関連する使用上の注意」の

(7)項にループス腎炎患者において定期的に血中濃度を測定することが望ましい旨追記すること

にし,血中濃度の観点からもより安全性を確保できるようにした。

なお,他の領域における従前の臨床試験では,CCr は必須測定項目とされていなかったことから,

CCr に関する情報は乏しかった。今回,ループス腎炎での臨床試験では全例について CCr を測定し,

軽度ながら明らかな CCr 低下を認めることが判明した経緯がある。このため,新たに得られた CCr

の情報とループス腎炎では 28 週以上の長期投与例数がまだ十分ではなく,長期投与時の安全性が

確立されていないことを添付文書に追記することは重要と考えた。本件については,「10.その他

の注意」に「ループス腎炎患者では,28 週投与によりクレアチニンクリアランスの低下がみられ

ている。28 週を超える臨床試験成績は少なく,長期投与時の安全性は確立されていない。」と追記

した。

以上のとおり,今回新たに「警告」,「用法・用量に関連する使用上の注意」,「2.重要な基本

的注意」,「10.その他の注意」の各項にそれぞれ追記した。

以下に,添付文書(案)中の腎障害に関する部分を提示した。

腎障害に関する添付文書(案)上の記載の改定案(下線部を追記)

【使用上の注意】

【警告】

(4)ループス腎炎における本剤の投与は,ループス腎炎の治療に十分精通している医師のもとで

行うこと.

<用法・用量に関連する使用上の注意>

(7)ループス腎炎では,副作用の発現を防ぐため,投与開始3ヵ月間は1ヵ月に1回,以後は定

期的におよそ投与 12 時間後の血中濃度を測定し,投与量を調節することが望ましい.また,

本剤を2ヵ月以上継続投与しても,尿蛋白などの腎炎臨床所見及び免疫学的所見で効果があ

らわれない場合には,投与を中止するか,他の治療法に変更することが望ましい.一方,本

剤により十分な効果が得られた場合には,その効果が維持できる用量まで減量することが望

ましい.

1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

(2)腎障害のある患者[腎障害が悪化する可能性がある.]

2.重要な基本的注意

(1)腎障害の発現頻度が高い(「副作用」の項参照)ので,頻回に臨床検査(クレアチニン,BUN,

クレアチニンクリアランス,尿中 NAG,尿中β2 ミクログロブリン等)を行うなど患者の状態

を十分に観察すること.特に投与初期にはその発現に十分注意すること.なお,関節リウマ

チ患者では,少数例ながら非ステロイド性抗炎症剤を2剤以上併用した症例でクレアチニン

上昇発現率が高かったので注意すること.また,ループス腎炎患者では病態の進行による腎

障害の悪化もみられるので特に注意すること.

10.その他の注意

(4)ループス腎炎患者では,28 週投与によりクレアチニンクリアランスの低下がみられている.

28週を超える臨床試験成績は少なく,長期投与時の安全性は確立されていない.

-95-

Page 27: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

成績の分析と考察

- 96 -

以上のとおり,CCr の低下に注目して考察したが,CCr 低下のリスクはループス腎炎における本

剤のベネフィットを上回る程のものではなく,ループス腎炎における本剤の臨床的有用性は立証さ

れていると考える。

(4) ミゾリビンとの成績比較

代謝拮抗薬であるミゾリビンは,タクロリムスの申請適応症である「ループス腎炎」の適応を有

する唯一の免疫抑制剤であり,ミゾリビンでは,24 週投与によるプラセボ対照の単盲検比較試験

(SBT)で有効性を検証している。ミゾリビンの患者選択基準は,ループス腎炎でかつ3項目[①4週

以上の持続性蛋白尿,②ネフローゼ症候群,③Ccr 低下(70mL/分以下)又は血清クレアチニン

1.5mg/dL 以上]のうち少なくとも1項目に該当する患者とされており,免疫学的異常に関して規定

はない。このように,タクロリムスの第Ⅲ相試験(28 週)と選択基準は同一ではないため直接的な

比較は難しいが,1日尿蛋白量,クレアチニンクリアランス,C3,全般改善度などの共通した項目

について評価しているので,これらの成績について提示した(表 2.7.3-60)。

タクロリムスでは1日尿蛋白量の明らかな減少を認めたが,ミゾリビンでの減少は大きくはなか

った。また,タクロリムスでは,クレアチニンクリアランスの減少を認めたが,ミゾリビンでは認

めなかった。C3 においてもタクロリムスでは明らかな増加を認めたが,ミゾリビンでの増加は明

らかではなかった。さらに,全般改善度でみると,タクロリムスでは中等度改善以上の改善率が

50.0%(13/26 例),ミゾリビンでは改善以上の改善率が 26.1%(6/23 例)であった。

以上のとおり,ミゾリビンではループス腎炎の予後に影響を及ぼす因子として重要とされている1

日尿蛋白量や C3 に明らかな改善を認めなかった。また,全般改善度をみても十分なものではなく,

これはミゾリビンが mild な薬剤とされ,ステロイドの sparing effect を期待して本剤が使用され

ることが多いとされる主な理由と思われる。

表 2.7.3-60 ミゾリビンとの成績比較

タクロリムス PⅢ DBT ミゾリビン SBT2)

評価項目

試験名

投与開始時 投与終了時 投与開始時 投与終了時

n 28 27 19 19 1日尿蛋白量

(g/日) 平均値±S.D.1) 2.51±2.51 1.08±0.79 2.76±0.48 2.37±0.51

n 28 26 16 16 クレアチニンクリアランス

(ml/分) 平均値±S.D.1) 103.9±45.0 81.5±36.1 81.0±8.4 85.6±5.4

n 28 27 21 21 補体 (C3)

(mg/dL) 平均値±S.D.1) 69.1±20.2 83.3±24.3 66.9±5.3 68.0±5.6

全般改善度

(中等度改善以上の改善率)

13/26 例

(50.0%)

6/23 例

(26.1%:改善以上の改善率)

1)ミゾリビン SBT では 平均値±S.E.

2)ミゾリビン SBT の選択基準:①4 週以上の持続性蛋白尿 ②ネフローゼ症候群 ③Ccr 低下(70mL/分以下)又は s-Cr 1.5mg/dL

以上で,免疫学的異常に関しては規定なし

-96-

Page 28: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

(参考)成績の分析と考察

- 96-1 -

2.7.3.3.2.3 (参考)成績の分析と考察(20 年 月カットオフ)

20 年 月 日提出の改訂CTDでは,継続試験2試験の20 年 月までのカットオフデータを

提示した。今回,20 年 月のカットオフデータが得られたことから,これらを含めて集計し,下

記に示すとおり,その成績を「2.7.3.3.2.3 成績の分析と考察 2)各種成績の臨床的意味につい

て」における「(3) クレアチニンクリアランスの低下について」の項に記載した「ⅱ. CCr 低下例

におけるその後の経過観察」の「ⅲ)CCr 低下例における各種腎機能パラメータの推移」に反映し

た(該当箇所を一部抜粋)。

その成績を要約すると,第Ⅲ相試験(28 週)で投与開始時と比較して投与 28 週後時点で CCr が

低下した症例について,28 週間以上の長期観察における各種腎機能パラメータをみたところ(第

Ⅲ相継続試験:20 年 月カットオフされた 16 例での集計),28 週間以上の長期観察においても,

他の腎機能パラメータに大きな変動は認められなかった。したがって,長期的な観点からも CCr 低

下は,他の腎機能パラメータに大きく影響を及ぼす程のものではなかった。この結果は,前回カッ

トオフ時(第Ⅲ相継続試験:20 年 月カットオフされた 12 例での集計)における結果と同様で

あった。

2.7.3.3.2.3 成績の分析と考察

2)各種成績の臨床的意味について

(3) クレアチニンクリアランスの低下について

ⅱ. CCr 低下例におけるその後の経過観察

ⅲ)CCr 低下例における各種腎機能パラメータの推移

今回みられた CCr 低下が他の腎機能パラメータや腎炎所見に及ぼす影響は長期的な経過観察の

中で検討することも必要と考えられる。このため,CCr の低下が他の検査項目に及ぼす影響を長期

観察結果も含めて検討した。

28 週を超える長期観察例について,投与開始時と比較して投与 28 週後時点で CCr が低下してい

る症例の各種腎機能パラメータの推移を表 2.7.3-参1に示した。

第Ⅱ相試験の 104 週,第Ⅲ相試験(継続試験)の 20 年 月カットオフ集計において,28 週間

以上の長期観察において,他の腎機能パラメータに大きな変動は認められなかった。

-96-1-

Page 29: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

(参考)成績の分析と考察

- 96-2 -

表 2.7.3-参1 CCr 低下例における各種腎機能パラメータの推移(投与期間 28 週以上)

試験名 項目 投与前 28 週後 104 週後最終時

(28-104 週間)― ―

CCr

(mL/min)

94.6

(6)

73.4

(6)

108.7

(4)

79.1

(6) ― ―

血清クレアチニン

(mg/dL)

0.75

(6)

0.70

(6)

0.69

(4)

0.80

(6) ― ―

BUN

(mg/dL)

15.0

(6)

15.8

(6)

11.0

(4)

13.1

(6) ― ―

血清β2ミクログロブリン

(mg/L)

2.5

(6)

2.1

(6)

2.0

(4)

2.3

(6) ― ―

第Ⅱ相試験

(104 週)

尿中 NAG

(U/L)

8.2

(6)

4.2

(5)

3.3

(4)

3.9

(6) ― ―

試験名 項目 比較試験

投与前

比較試験

最終時

(28週後)

継続試

投与前

継続試験開始

28 週後

(投与期間合計

56 週間)

継続試験開始

52 週後

(投与期間合計

80 週間)

継続試験

最終時

(投与期間合計

28-128 週間)

CCr

(mL/min)

107.9

(16)

80.4

(16)

93.5

(16)

90.1

(13)

98.5

(7)

99.5

(16)

血清クレアチニン

(mg/dL)

0.65

(16)

0.65

(16)

0.62

(16)

0.68

(13)

0.73

(8)

0.71

(16)

BUN

(mg/dL)

13.5

(16)

13.6

(16)

13.2

(16)

15.9

(13)

16.6

(8)

15.5

(16)

血清β2ミクログロブリン

(mg/L)

2.3

(16)

2.3

(16)

2.3

(16)

2.1

(13)

2.8

(8)

2.4

(16)

尿中 NAG

(U/L)

6.9

(16)

6.4

(16)

6.0

(16)

3.8

(13)

5.7

(8)

5.9

(16)

第Ⅲ相試験

(継続試験)※

尿中β2ミクログロブリン

(μg/L)

179.5

(16)

100.0

(16)

132.0

(16)

78.0

(13)

257.0

(8)

99.0

(16)

中央値(例数)

※:第Ⅲ相二重盲検群間比較試験時にタクロリムス群であり,比較試験最終時にCCrが低下し,その後継続試験に移行,20 年

月でデータカットオフされた 16 例について集計

-96-2-

Page 30: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 97 -

2.7.3.3.3 部分集団における結果の比較

1)主要評価項目

第Ⅲ相試験(28 週)における合計スコアの変化率(主要評価項目)について,重要と考えられる患

者背景因子で層別し,比較検討した(表 2.7.3-61,62)。なお,層別した際,症例数が極端に少な

くなる項目については,分析が難しいと考え,検討を行わなかった。

合計スコアの変化率(平均値)は,タクロリムス群の全例で-32.9%,プラセボ群の全例では2.3%

であった。これらの患者について層別にみると, も変化率が大きくなったのはタクロリムス群の

発症年齢≦24 歳の層(-42.7%)で, 発症年齢 25 歳≦の層(-27.2%)では変化率が低減した。試験

開始時のステロイド量別にみたタクロリムス群の層では,15mg/日≦で-41.0%, <15mg/日では-

25.5%と,発症年齢の層と同様,変化率に差がみられた。また,補体 C3 の試験開始時のスコア1

~3の層では,タクロリムス群-38.3%であったのに対し,症例数がやや少ないがスコア0の層で

は-14.2%と変化率は小さかった。

プラセボ群で変化率が大きくなった層は,1日尿蛋白量のスコア0~1の層で,-12.0%の変化

率が得られている。一方,尿中赤血球数のスコア0~1の層では 9.5%と増加している。

一方,各項目の層別にプラセボ群との変化率の差についてみると,ループス腎炎罹病期間では罹

病期間が短くなるほどその差は大きくなり,5年以内の層で 大となった。さらに,1日尿蛋白量

のスコアでは,スコア2~3の層における変化率の差が,スコア0~1の層における変化率の差よ

りも 20%程度大きかった。同程度の差は補体(C3)のスコアでもみられ,スコア1~3の層で変化

率の差が大きくなった。

その他では,全例での成績と大差なく,患者背景因子により,その変化率が大きく異なる傾向は

認めなかった。

第Ⅱ相試験(28週)については,主要評価項目である腎炎臨床所見(1日尿蛋白量,血清クレアチ

ニン,クレアチニンクリアランス,尿中赤血球数,尿中細胞性円柱)に対する効果について部分集

団の検討を行った。いずれの項目においても各部分集団の症例数が少なく,効果に影響を与えると

考えられる特徴的な因子は明らかではなかった。しかし,評価例数が比較的多かった1日尿蛋白

量では,投与前の免疫学的活動性の高い患者層,すなわち抗 dsDNA 抗体では「10U/mL を超える」,

C3 では「84mg/dL 未満」,CH50 では「30U/mL 未満」のいずれかを満たす患者層では, 終時(≦28 週)

判定で中等度改善以上の改善率がやや高かった(2.7.3.6 付録 表 2.7.3-85)。

次に,第Ⅱ相試験(28 週)の全例について,第Ⅲ相試験(28 週)で使用したスコア評価を同様に行

い,免疫学的異常の有無別に求めた合計スコアの変化率を第Ⅲ相試験(28 週)成績と比較した。

第Ⅱ相試験(28 週)の全 21 例のうち,合計スコアが算出可能であったのは 19 例であった。免疫学

的活動を有する患者(抗 dsDNA 抗体又は C3 が異常値である患者)は,19 例中 16 例であり,その

うち 14 例は C3 が異常値の患者であり,活動性を有する症例の大半は C3 の活動性を有していた。

表 2.7.3-63 に免疫学的異常の有無と合計スコアの変化率の関係を示した。合計スコアの変化率

-97-

Page 31: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 98 -

の平均は,正常例3例で,0.0%(各々-50%,0%,50%),異常例 16 例で-31.6%であった。

正常例の例数が少ないため,正常,異常の間での比較は困難であるが,異常例の変化率は,第Ⅲ

相試験(28 週)のタクロリムス群全例の合計スコアの変化率-32.9%とほぼ同様の結果であった。

表 2.7.3-61 患者背景因子別の合計スコアの変化率

項目 分類 投与群 症例数合計スコアの変化率(%)(平均値±S.D.)

タクロリムス群 10 -35.7±22.6 <5

プラセボ群 10 10.0±47.6

タクロリムス群 9 -28.7±49.0 5≦~<10

プラセボ群 13 9.5±22.8

タクロリムス群 8 -34.2±11.7 10≦

プラセボ群 10 -4.5±32.4

タクロリムス群 0 -

ループス腎炎 罹病期間(年)

欠測値 プラセボ群 1 -100.0±0.0

タクロリムス群 10 -42.7±24.0 ≦24

プラセボ群 13 -0.1±33.4

タクロリムス群 17 -27.2±33.8 25≦

プラセボ群 20 9.0±35.1

タクロリムス群 0 -

発症年齢(歳)

欠測値 プラセボ群 1 -100.0±0.0

タクロリムス群 17 -30.5±33.3 <6

プラセボ群 21 6.3±41.6

タクロリムス群 10 -37.1±27.8 合計スコア (開始時)

6≦ プラセボ群 13 -4.1±32.6

タクロリムス群 0 - メサンギウム型(Ⅱ型)

プラセボ群 1 0.0±0.0

タクロリムス群 1 -33.3±0.0 巣状分節状型(Ⅲ型)

プラセボ群 2 8.4±11.8

タクロリムス群 0 - びまん性増殖型(Ⅳ型)

プラセボ群 1 50.0±0.0

タクロリムス群 2 -16.7±23.5 膜性型(Ⅴ型)

プラセボ群 2 10.0±14.1

タクロリムス群 0 - メサンギウム型(Ⅱ型)+ 巣状分節状型(Ⅲ型) プラセボ群 1 -100.0±0.0

タクロリムス群 24 -34.3±32.2

腎生検/所見 (WHO 分類) (1 年以内)

その他 プラセボ群 27 3.4±36.6

タクロリムス群 14 -25.5±34.6 <15

プラセボ群 18 2.7±28.3

タクロリムス群 13 -41.0±25.5 開始時ステロイド量別

(mg/日) 15≦

プラセボ群 16 1.8±48.0

タクロリムス群 18 -31.4±33.7 あり

プラセボ群 26 1.4±33.1

タクロリムス群 9 -36.1±26.4

高脂血症, 高血圧の有無

なし プラセボ群 8 5.3±54.5

-98-

Page 32: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 99 -

表 2.7.3-62 投与開始前各スコア別の合計スコアの変化率

項目 分類 投与群 症例数合計スコアの変化率(%)

(平均値±S.D.)

タクロリムス群 1 -33.3±0.0 0~1

プラセボ群 9 -12.0±51.2

タクロリムス群 26 -32.9±31.6 1 日尿蛋白量のスコア

2~3 プラセボ群 25 7.5±32.1

タクロリムス群 23 -36.3±31.8 0~1

プラセボ群 30 9.5±32.6

タクロリムス群 4 -13.6±18.9 尿中赤血球数のスコア

2~3 プラセボ群 4 -52.0±36.6

タクロリムス群 23 -34.3±32.5 0

プラセボ群 27 3.5±39.3

タクロリムス群 4 -24.9±22.5 血清クレアチニンのスコア

1~3 プラセボ群 7 -2.5±36.0

タクロリムス群 13 -31.2±20.6 0

プラセボ群 16 4.8±43.2

タクロリムス群 14 -34.5±39.1 抗 dsDNA 抗体のスコア

1~3 プラセボ群 18 0.1±34.3

タクロリムス群 6 -14.2±47.6 0

プラセボ群 3 6.7±11.5

タクロリムス群 21 -38.3±23.4 補体(C3)のスコア

1~3 プラセボ群 31 1.9±40.0

表 2.7.3-63 抗 dsDNA 抗体又は C3 の異常の有無別にみた合計スコアの変化率

有無 n

合計スコアの変化率(%)

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

なし 3

0.0±50.0

0.0

-50.0-50.0

-50.0~50.0 免疫学的異常

あり 16

-31.6±36.3

-40.0

-50.0--13.4

-100.0~40.0

以上の成績を受け,さらに検討するため,第Ⅲ相試験及び第Ⅱ相試験のそれぞれについて,前治

療薬の種類(免疫抑制剤も含む),用量及び罹患期間別に,有効性評価項目[合計スコア(第Ⅲ相試

験のみ),1日尿蛋白量,補体(C3)の変化率]の層別解析を行った。なお,前治療薬は,いずれの試

験においても全例でステロイド剤を含む前治療薬が用いられていた。免疫抑制剤以外の薬剤に関し

ては,有効性に影響のある併用制限薬(尿蛋白に影響を与える薬剤)を前治療薬としていた場合の

考察が必要と考えた。しかし,前治療として用いられた併用制限薬の種類は多く,各層の例数がア

ンバランスになるため,併用制限薬の使用の有無について層別を行った。また,用量についても,

ステロイド以外の前治療薬は症例毎に用量が個々に異なっており,ステロイド投与量についてのみ

層別を行った。

-99-

Page 33: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 100 -

第Ⅲ相試験(28 週)の合計スコア変化率について,変化率が 20%以上異なる層はなかったが,ス

テロイド投与量 15mg/日≦の層,併用制限薬なしの層,免疫抑制剤ありの層が 10%から 15%程度

高かった。しかし,1日尿蛋白量,補体(C3)の変化率では大きな違いはなかった(表 2.7.3-64)。

一方,第Ⅱ相試験(28 週)では,症例数が少ない層もあるが,第Ⅲ相試験(28 週)では大きな違い

が認められなかった1日尿蛋白量で変化率のベクトルの違う層(悪化した層)があったり,補体(C3)

においても各層で 15%程度変化率が違っていた(表 2.7.3-65)。

第Ⅱ相試験(28 週)における症例選択基準は,ステロイド治療では腎炎所見が寛解に至らない患

者[持続性蛋白尿(1日尿蛋白量:0.5g 以上)又は尿沈渣異常(赤血球:21/視野以上)]と規定されてい

るのみである。一方,第Ⅲ相試験(28 週)では,ステロイド投与量や免疫学的活動性など詳細な症

例選択基準を設定しており,第Ⅱ相試験(28 週)に比べてより均一の患者集団となっている。この

ため,第Ⅱ相試験(28 週)では,第Ⅲ相試験(28 週)に比べて,様々な難治的素因を有する患者が組

み入れられた可能性がある。このような状況から,第Ⅱ相試験(28 週)と第Ⅲ相試験(28 週)の違い

が生じた可能性があると考えられる。

以上のとおり,前治療薬(免疫抑制剤,併用制限薬)の使用の有無,ステロイド投与量及び罹病

期間の層別解析で,合計スコア及び1日尿蛋白量の変化率(中央値)に若干の相違がみられているが,

第Ⅲ相と第Ⅱ相の違いや少ない症例数での集計結果であることを考慮すると,本分析からは,前治

療薬の種類,ステロイド投与量及び罹病期間は効果に影響を与える特徴的な因子として特定するに

は至らなかった。

因みに,第Ⅲ相試験(28 週)では,多くの症例で前治療薬(免疫抑制剤)が治験薬投与開始-1日

目まで使用されていたことから,有効性評価への影響の可能性についても検討した。表 2.7.3-64

に示すとおり,プラセボ群で免疫抑制剤使用例が若干多いものの,合計スコア,1日尿蛋白量及び

補体(C3)のいずれの項目についても,免疫抑制剤使用「なし」,「あり」の患者層共にタクロリムス

群の変化率はプラセボ群と比較し大きかった。

さらに,前治療薬(免疫抑制剤)の使用の有無を共変量として共分散分析を行った結果,調整済み

平均と群間比較の結果は表 2.7.3-66 に示すとおり,共変量としない場合の合計スコアの変化率の

平均(タクロリムス群-32.9%,プラセボ群 2.3%)と変わりなく,p値は p=0.000 であった。

したがって,前治療薬(免疫抑制剤)の治験薬投与開始-1日目までの使用は,有効性評価にほと

んど影響しないと考えられた。

-100-

Page 34: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 101 -

表 2.7.3-64 前治療薬,ステロイド投与量及び罹病期間別の有効性評価項目の変化率

-第Ⅲ相試験(28 週)(1)

1 日尿蛋白量(実測値)

の変化率(%)

補体(C3)(実測値)

の変化率(%)

患者背景因子 分類 投与群 症例数

合計スコアの

変化率(%)

(平均値±S.D.)

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

タクロリムス群 20 -29.8±34.5

-49.3±38.3

-60.4

-74.1--40.7

-97.8~40.1

19.7±18.2

16.1

5.7-28.3

-11.6~60.6 なし

プラセボ群 18 -0.2±47.0

38.1±115.3

-4.1

-28.0-90.0

-67.6~426.4

8.8±31.5

1.8

-13.6-23.2

-41.5~80.6

タクロリムス群 7 -41.9±16.2

-48.4±30.9

-65.6

-70.6--15.0

-79.0~2.2

21.1±11.2

17.6

14.3-27.4

10.3~43.4

前治療薬(免疫抑

制剤)の使用

あり

プラセボ群 16 5.2±26.4

58.4±82.5

48.3

-8.2-98.8

-45.5~238.5

-0.4±24.4

-3.6

-9.1-12.1

-58.7~56.3

タクロリムス群 16 -38.4±23.6

-51.3±34.2

-57.6

-74.1--40.7

-97.8~40.0

21.2±17.0

17.3

8.3-28.3

0.0~60.6 なし

プラセボ群 16 1.6±37.0

59.6±86.4

48.3

-11.2-103.9

-39.2~238.5

2.9±34.9

-3.6

-15.8-14.9

-58.7~80.6

タクロリムス群 11 -25.0±39.3

-45.8±39.8

-60.8

-68.3--15.0

-82.7~40.1

18.4±16.4

15.8

12.5-27.4

-11.6~53.8

前治療薬(併用制

限薬)の使用

あり

プラセボ群 18 3.0±40.3

37.0±112.5

-0.9

-16.2-84.3

-67.6~426.4

5.8±21.9

-2.8

-9.3-20.6

-17.8~63.2

タクロリムス群 14 -25.5±34.6

-48.6±29.2

-60.4

-68.3--31.8

-82.7~9.4

22.0±14.2

17.3

15.2-29.1

0.0~53.8 <15

プラセボ群 18 2.7±28.3

38.9±79.9

-3.8

-28.0-100.0

-64.8~204.3

5.3±27.5

-3.6

-11.1-11.5

-22.5~80.6

タクロリムス群 13 -41.0±25.5

-49.6±43.2

-65.6

-79.0--44.2

-97.8~40.1

17.9±19.0

14.7

5.1-20.3

-11.6~60.6

ステロイド投与量

(プレドニゾロン換算)

(mg/日)

15≦

プラセボ群 16 1.8±48.0

57.5±121.1

21.0

-7.0-76.4

-67.6~426.4

3.5±30.2

1.6

-11.5-20.7

-58.7~56.3

-101-

Page 35: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 102 -

表 2.7.3-64 前治療薬,ステロイド投与量及び罹病期間別の有効性評価項目の変化率

-第Ⅲ相試験(28 週)(2)

1 日尿蛋白量(実測値)

の変化率(%)

補体(C3)(実測値)

の変化率(%)

患者背景因子 分類 投与群 症例数

合計スコアの

変化率(%)

(平均値±S.D.)

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

タクロリムス群 10 -35.7±22.6

-54.4±25.6

-62.8

-70.6--44.2

-79.0~9.4

21.9±12.0

21.7

14.7-29.1

0.0~43.4 <5

プラセボ群 10 10.0±47.6

57.6±85.2

34.5

-5.9-89.8

-39.2~238.5

-3.1±29.3

2.5

-9.3-11.5

-58.7~43.1

タクロリムス群 9 -28.7±49.0

-56.0±30.7

-60.8

-79.8--37.2

-97.8~2.2

21.5±19.4

15.2

12.5-17.6

3.3~60.6 5≦~

<10

プラセボ群 13 9.5±22.8

51.2±125.0

0.4

-13.8-100.0

-64.8~426.4

7.4±29.6

-2.8

-11.1-6.3

-17.8~80.6

タクロリムス群 8 -34.2±11.7

-34.6±50.3

-58.6

-71.0-12.5

-82.7~40.1

16.1±19.2

16.1

4.9-22.2

-11.6~53.8 10≦

プラセボ群 10 -4.5±32.4

44.6±84.3

30.4

-34.1-90.0

-45.4~204.3

4.1±25.7

-5.0

-15.2-20.6

-22.5~63.2

罹病期間(年)

欠測 プラセボ群 1 -100

-67.6

-67.6

-67.6--67.6

-67.6~-67.6

45.1

45.1

45.1-45.1

45.1~45.1

-102-

Page 36: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 103 -

表 2.7.3-65 前治療薬,ステロイド投与量及び罹病期間別の有効性評価項目の変化率

-第Ⅱ相試験(28 週)

1 日尿蛋白量(実測値)

の変化率(%)

補体(C3)(実測値)

の変化率(%)

患者背景因子 分類 症例数平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

平均値±S.D.

中央値

第 1-第 3 四分位

小~ 大

なし 13

-4.5±59.2

-18.8

-47.6-50.0

-93.5~75.7

29.5±25.5

24.2

14.0-38.3

-7.4~84.1 前治療薬(免疫抑

制剤)の使用

あり 3

-9.7±72.6

-26.8

-72.3-69.9

-72.3~69.9

45.0±25.4

38.1

23.8-73.2

23.8~73.2

なし 7

-29.6±60.6

-47.6

-68.6-39.3

-93.5~69.9

44.7±32.2

38.3

25.0-73.2

-7.4~84.1 前治療薬(併用制

限薬)の使用

あり 9

13.3±54.0

34.3

-26.8-59.1

-72.3~75.7

22.9±13.9

23.7

14.0-24.2

6.0~49.1

<15 5

-59.9±25.5

-66.7

-68.6--43.8

-93.5~-26.8

40.9±18.5

38.3

25.0-49.1

23.8~68.3 ステロイド投与量

(プレドニゾロン換算)

(mg/日)

15≦ 11

19.2±53.5

39.3

-40.3-61.9

-72.3~75.7

28.6±27.9

23.7

6.9-38.1

-7.4~84.1

<5 4

-19.0±50.0

-29.6

-53.5-15.6

-66.7~50.0

39.3±29.9

24.6

24.0-54.6

23.7~84.1

5≦~<10 5

-17.8±83.2

-68.6

-72.3-69.9

-93.5~75.7

45.0±26.8

38.3

38.1-68.3

6.9~73.2

罹病期間(年)

10≦ 7

10.9±48.5

34.3

-43.8-59.1

-47.6~61.9

19.6±18.2

20.0

6.0-31.7

-7.4~49.1

表 2.7.3-66 前治療薬(免疫抑制剤)の使用の有無による有効性評価への影響-第Ⅲ相試験(28 週)

投与群

合計スコアの変化率

(%)

(調整済み平均±S.E.)

t 検定

タクロリムス群 -32.8±7.2 前治療薬(免疫

抑制剤)の使用 共変量あり

プラセボ群 2.4±6.2 p=0.000

-103-

Page 37: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

- 104 -

2)有効性が期待できる患者背景因子

第Ⅲ相試験(28 週)において,タクロリムス投与による有効例を合計スコア減少例とした場合,

27 例中 23 例が有効例,4例が無効例と判定されるが,両群間の症例数が大きく異なることから背

景因子の差を見出すことは困難と考えられた。このため,日常診療において腎予後を見据えた治療

効果の判定を行っている全般改善度を用い,中等度改善以上(「有効例」)と軽度改善以下(「無

効例」)の2つの層に分け,背景因子の違いを①性別,②年齢,③体重,④罹病期間,⑤ステロイ

ド投与量,⑥1日尿蛋白量,⑦尿中赤血球数,⑧血清クレアチニン,⑨抗 dsDNA 抗体,⑩補体(C3)

を対象に検討した。この結果,改善例(有効例:中等度改善以上)と非改善例(無効例)で臨床的

に分布が大きく異なる因子を特定できなかった(2.7.3.6 付録 表 2.7.3-86)。

3)クレアチニンクリアランス(CCr)を悪化させる要因

第Ⅲ相試験(28 週)においてタクロリムス投与による CCr 悪化例を CCr 低下例とした場合,26 例

中 22 例が低下例,4例が非低下例と判定されるが,両群間の症例数が大きく異なることから背景

因子の差を見出すことは困難と考えられた。そこで,本剤投与群の CCr 変化率の中央値は 22.0%

の低下であったことから,本基準で2つの層[22.0%より大きい低下(低下例:13 例),22.0%以

下の低下(非低下例:13 例)]に分け,背景因子の違いを検討した。

この結果,臨床的に分布が大きく異なる因子を特定できなかった(2.7.3.6 付録 表 2.7.3-87)。

以上のとおり,主要評価項目,有効性が期待できる患者背景因子及びクレアチニンクリアランス

(CCr)を悪化させる要因などについて検討したが,いずれにおいても明らかな影響を及ぼす特徴的

な因子を特定できなかった。

-104-

Page 38: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 105 -

2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

1)関節リウマチに準じた用法・用量の設定について

ループス腎炎は,患者数が5万人に満たないと推定される,いわゆるオーファン疾患であるこ

とから,大規模試験の実施は困難である。このため,ループス腎炎における臨床開発では,少な

い症例から得られる成績を詳細に分析し,また主軸となる第Ⅲ相試験(28 週)開始前の 20 年

月 日に医薬品機構とオーファン相談を行い,慎重な開発を進めてきた。

まず,ループス腎炎における第Ⅱ相試験(28 週試験及び 長 104 週までの継続試験)での用法・

用量は,本剤の適応疾患である関節リウマチの前期第Ⅱ相試験及び非臨床試験成績を参考にして

設定した。

関節リウマチを対象とした前期第Ⅱ相試験では,1.5 mg 及び3mg の1日1回投与でそれぞれ,

51.7%,65.7%の中等度改善以上の改善率を示し(表 2.7.3-67),さらに疾患修飾性抗リウマチ薬

(DMARD)無効例における中等度改善以上の改善率は 1.5 mg で 20.0%,3mg で 58.8%と,明らか

に3mg が高い有効性を示した(表 2.7.3-68)。安全性については 1.5 mg,3mg の用量で明らかな

差はなく,問題となる副作用も認めなかった。

なお,関節リウマチで1日1回,夕食後投与と設定された根拠は,以下のとおりである。

マウス抗体産生に対するタクロリムスの作用を検討した試験では,1 日投与量が同じであれば1

回投与と2回投与とで同様の抑制効果が得られている。さらに,タクロリムスのヒトでの血中濃

度の半減期は約 35 時間と長く,慢性疾患である関節リウマチではコンプライアンスの観点から1

日1回投与が1日2回投与より望ましいと考えられることから,1日1回投与が設定されている。

また,本剤の副作用として消化器障害が発現することが知られているが,一般に消化器障害の発

現は食後投与とすることにより軽減し得ることが,夕食後投与の根拠となっている。

以上の成績を受け,ループス腎炎では関節リウマチの用法・用量を参考とした。その理由は,

以下のとおりである。

① 関節リウマチはループス腎炎と並ぶ代表的な膠原病であることから,類似の慢性疾患であると

考えられる。

② 動物実験において本剤は,ループス腎炎(SLE 自然発症マウス)及び関節リウマチ(マウスコ

ラーゲン関節炎)の両病態動物モデルにおいてほぼ同様の投与量で同程度の有効性を示した。

③ 関節リウマチとループス腎炎の両方に適応を持つミゾリビンの用法・用量は,関節リウマチと

ループス腎炎で同一である。

以上の知見より,ループス腎炎を対象とした第Ⅱ相試験(28 週)では関節リウマチと同様,1日

1回,3mg/日(夕食後投与)を投与開始時の基準用量とした。しかし,この3mg/日では十分な有

効性が得られない可能性も考えられるため,増量しても安全性に問題がないと医師が判断した場

合は増量可とした。ただし,安全性面から本剤の関節リウマチにおけるパイロット試験や乾癬に

おける後期第Ⅱ相試験で重篤な副作用を認めなかった5mg/日をその上限とした。

-105-

Page 39: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 106 -

以上の用法・用量で実施された第Ⅱ相試験(28 週)において,有効性解析対象となった 16 例では,

1日尿蛋白量の減少傾向を認めるとともに,免疫学的活動性[抗 dsDNA 抗体,抗 ssDNA 抗体,補体

(C3,C4,CH50)]にも有意な増減を認め,全般改善度では中等度改善以上の改善率が 62.5%(10/16

例)と高かった(表 2.7.3-69)。また,投与 28 週時点までに4mg/日への増量が必要と判断された

症例は有効性解析対象例 16 例中1例と少数であった。この結果から,3mg/日は十分な有効性が期

待できる用量であると考えられ,第Ⅲ相試験(28 週)では3mg/日以上の用量の検討の必要性は低い

と考えた。

一方,第Ⅱ相試験(28 週)開始時には,タクロリムスの既知の安全性情報から,タクロリムスの

投与により腎機能(血清クレアチニン等)に障害を及ぼすことが懸念されていたが,第Ⅱ相試験(28

週)の成績では血清クレアチニン値やクレアチニンクリアランス値の推移に一定の傾向は認められ

ず,治験の継続に支障となる問題を認めなかった。また,その他臨床的に大きな問題となる副作用

を認めなかった。したがって,3mg/日は関節リウマチと同様,ループス腎炎患者においても安全

性面で許容できる用量であると考えられた。

以上の知見を総合した結果,3mg/日は有効性が期待でき,かつ安全性が許容できる用量である

と考えられた。この3mg/日が 適かどうかを判断するためには,より低用量での有効性と安全性

のデータがあった方が望ましい。しかし,第Ⅲ相試験(28 週)では限られた症例数で確実な有効性

の検証が求められることも考慮し,3mg/日以下の用量群の設定は必ずしも必須ではないと判断し

た。すなわち,ループス腎炎は患者数が5万人に満たないと推定されるいわゆるオーファン疾患で

あり,大規模臨床試験の実施は困難である状況も踏まえた判断であった。また,第Ⅲ相試験(28 週)

において本剤の有用性を検証するためには,プラセボ群の設定が必須と考えたが,プラセボ群の設

定により組み入れが困難になることが想定されることに加え,実薬用量群を2群を設定することは

必要症例数の観点から困難と考えた。さらに,本剤の対象はステロイド抵抗性であり,他に替わる

べき治療がないことも考慮すると,安全性上許容できる上限量の投与群の選択が望ましいと考えた。

以上の理由から,第Ⅲ相試験(28 週)での用法・用量は第Ⅱ相試験の開始用量である1日1回,

3mg/日,夕食後投与とした。また,第Ⅱ相試験(28 週)では増量が必要と判断された症例は少なか

ったことから,増量は行わないこととした。

その結果,第Ⅲ相試験(28 週)では,主要評価項目である 終時(≦28 週)の疾患活動性合計スコ

アの変化率は,タクロリムス群では平均-32.9%,プラセボ群で平均 2.3%であり,タクロリムス

群とプラセボ群の間に統計的に有意な差が認められた(p=0.000,t 検定)。また,合計スコアを

構成する5つの項目のうち,1日尿蛋白及び補体(C3)は,ループス腎炎の予後に大きく影響するこ

とが文献調査でも明らかにされており,これら2項目についても,タクロリムス群のスコアの変化

率はプラセボ群に対して有意に大きかった(それぞれ p=0.000,p=0.013,Mann-Whitney の U 検

定)。さらに,全般改善度の中等度改善以上の改善率でみると,タクロリムス群では 50.0%,プ

ラセボ群では 8.6%と,プラセボ群に対し有意な差が認められた(p=0.000,Fisher の直接確率法,

表 2.7.3-70)。

-106-

Page 40: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 107 -

また,タクロリムス群及びプラセボ群の副作用発現率は,それぞれ 92.9%(26/28 例),80.0%

(28/35 例)であり,タクロリムス群とプラセボ群の間に有意差を認めなかった(p=0.277,Fisher

の直接確率法)。重篤な副作用としてタクロリムス群に急性心筋梗塞2例,蜂巣炎1例がみられた

が,いずれも本剤の中止や対症療法で回復した。その他,臨床的に特に問題となる副作用の発現率

は高くはなかった。

一方,継続試験を含む全4試験において,一定期間内に行われた投与量の増減頻度を調査した。

各試験とも初期用量として一律3mg/日が設定されており,有効性を期待して4mg/日まで増量され

た症例は4例と少なく,4mg/日を超えて増量された症例はなかった(表 2.7.3-71)。減量(休薬除

く)は1mg/日まで行われており,1~1.5 mg/日まで減量された症例の多くは有害事象によるもの

であった。

以上,第Ⅲ相試験(28 週)でプラセボ群に対する優位性が立証され,安全性も耐容し得ると考え

られた「1日1回,3mg/日,夕食後投与」を用法・用量(案)と設定した。

因みに,ループス腎炎の第Ⅱ相試験の用量設定に際し,参考としたのは関節リウマチの前期第Ⅱ

相試験の結果であったが,その後,関節リウマチでは,プラセボを対照とした用量検索試験である

後期第Ⅱ相試験を実施している。その結果,主要評価項目である ACR 基準による改善判定において

1.5 mg 及び3mg の1日1回投与により,それぞれ,24.6%,48.3%の改善が得られ,群間に有意

差が認められた(表 2.7.3-72)。また,安全性については 1.5 mg,3mg の用量で明らかな差はな

かった。

以上の結果より,関節リウマチに対する本剤の臨床推奨用量は3mg/日と推定され,本用量でミ

ゾリビンを対照薬とした優越性検証を目的とした第Ⅲ相二重盲検群間比較試験が実施された。その

結果,本剤3mg の1日1回投与はミゾリビンより優れることが立証され,本用量において安全性

に大きな問題はなかった。これら試験結果を基に,ループス腎炎と並ぶ代表的な膠原病である関節

リウマチでは成人において3mg/日を承認用量として 2005 年4月に承認を取得している。

表 2.7.3-67 関節リウマチにおける最終全般改善度-前期第Ⅱ相試験

投与

著明

改善

中等度

改善

軽度

改善 不変

軽度

悪化

中等度

悪化

著明

悪化計 検定

1.5mg 群 4

(13.8)

11

(51.7)

(75.9)

29

3mg 群 13

(37.1)

10

(65.7)

11

(97.1)

35

U 検定

p=0.026

中等度改

善以上

χ2検定

p=0.380

軽度改善以上

直接確率

計算法

p=0.019

例数(累積%)

表 2.7.3-68 関節リウマチの DMARD 無効例における最終全般改善度-前期第Ⅱ相試験

投与

著明

改善

中等度

改善

軽度

改善 不変

軽度

悪化

中等度

悪化

著明

悪化計 検定

1.5mg 群 1

(10.0)

(20.0)

10

3mg 群 4

(23.5)

(58.8)

17

U 検定

p=0.006

中等度

改善以上

直接確率

計算法

p=0.107

例数(累積%)

-107-

Page 41: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 108 -

表 2.7.3-69 ループス腎炎における全般改善度[最終時(≦28 週)]-第Ⅱ相試験(28 週)

著明改善 中等度改善 軽度改善 不変 軽度悪化 中等度悪化 著明悪化 判定不能 合計 2 8 2 4 16

(12.5) (50.0) (12.5) (25.0)

<12.5> <62.5> <75.0> <100.0> <100.0> <100.0> <100.0> <100.0>

(%),<累積%>

表 2.7.3-70 ループス腎炎における全般改善度[最終時(≦28 週)]-第Ⅲ相試験(28 週)

改善率 1)

投与群 著明改善 中等度改善 軽度改善 不変 軽度悪化 中等度悪化 著明悪化 判定不能 合計 (%)

2 11 7 6 26

(7.7) (42.3) (26.9) (23.1) 50.0 タクロリムス群

<7.7> <50.0> <76.9> <100.0> <100.0> <100.0> <100.0> <100.0>

3 3 18 7 2 1 1 35

(8.6) (8.6) (51.4) (20.0) (5.7) (2.9) (2.9) 8.6 プラセボ群

<8.6> <17.1> <68.6> <88.6> <94.3> <97.1> <100.0>

1)中等度改善以上の累積% (%),<累積%>

表 2.7.3-71 増減時期別投与量

1 日投与量(のべ)(mg/日) 増減時期

<1 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4< 合計

~12 週(85 日) 2 1 1 4

~28 週(197 日) 1 1 1 3

~52 週(365 日) 2 1 3

~104 週(729 日) 1 2 1 4 ~208 週(1457 日) 1 2 3

208 週(1458 日)~ 1 1 1 3

合計 0 3 4 5 1 3 0 4 0 20

表 2.7.3-72 関節リウマチにおける CR20 による改善判定-後期第Ⅱ相試験

薬剤群 評価

例数

Responder

(%)

Non

responder

(%)

改善率の

95%信頼区間

(%)

検定 1) 検定 2) 検定 3)

P 群 64 9(14.1) 55(85.9) 6.6~25.0 ― ― ―

1.5mg 群 57 14(24.6) 43(75.4) 14.1~37.8 N.S.(p=0.123) N.S.(p=0.246)

3mg 群 58 28(48.3) 30(51.7) 35.0~61.8 ** (p=0.000) ** (p=0.000)

*

(p=0.012)

*:p<0.05,**:p<0.01

1) プラセボ群を対照とした Dunnett 型多重比較(有意水準片側5%)

2) プラセボ群を対照とした Dunnett 型多重比較(有意水準両側5%)

3) Fisher の直接確率計算法による2用量群間比較

次に,20 年 月末カットオフの継続試験データも含め,ループス腎炎患者におけるタクロリ

ムスの血中濃度を検討した。タクロリムスの移植領域における集積データでは,20ng/mL 以上の血

中トラフ濃度が持続すると腎機能障害等の有害事象の発現頻度が増加することが知られている。

このため,今回,ループス腎炎を対象に実施した全4試験では患者の安全性を確保するためにタ

クロリムスの血中濃度(投与後 12±4時間値)を測定している。なお,ループス腎炎では移植領域の

1日2回投与とは異なり,1日1回投与(トラフ濃度は投与後 24 時間)であるが,血中濃度の集計

に際しては,安全性解析対象例となった全 65 例の測定値のうち,上記移植領域の集積データに合

わせ投与後8~16 時間の血中濃度で検討した。その結果,投与後8~16 時間の測定値を有する症

例では,全投与期間を通した全血中濃度の 高値の平均値±S.D.は 6.36±2.65ng/mL(55 例)であ

-108-

Page 42: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 109 -

り,5ng/mL 未満 20 例(36.4%),5ng/mL 以上 10ng/mL 未満は 29 例(52.7%),10ng/mL 以上( 高値

13ng/mL)6例(10.9%)で,ほとんどの症例では10ng/mL未満であった。また,投与後16時間以上経

過後にのみ測定された症例では,全投与期間を通した全血中濃度の 高値の平均値±S.D.は

5.57±4.85ng/mL(7例)であり,5ng/mL 未満5例(71.4%),5ng/mL 以上 10ng/mL 未満は1例

(14.3%),15ng/mL 以上( 高値 16ng/mL)1例(14.3%)であった(表 2.7.3-73)。

以上より,長期に亘り高い血中濃度が持続された症例はなかったと考えられる。

また,関節リウマチ患者(第Ⅲ相比較試験)における1回3mg 投与時の投与後 12時間の 高血中

濃度の平均値±S.D.は 5.7±3.4ng/mL(100 例)であり,ループス腎炎患者での血中濃度と大差なか

った。この成績からもループス腎炎患者では,関節リウマチ患者と同様の 3mg/日の用法・用量を

用いる限り血中トラフ濃度が高く維持するような傾向はないと考えられ,関節リウマチと同様の

安全性が担保できると考えられた。特に,タクロリムスの移植領域における集積データから,

20ng/mL 以上の血中トラフ濃度が持続すると腎機能障害等の有害事象の発現頻度が増加することが

知られており,腎機能に大きな問題の起こらない血中濃度をループス腎炎でも極力保つことが重

要であり,「1日 1回,3mg/日,夕食後投与」はこの要件を満たすものである。

表 2.7.3-73 平均血中濃度と最高血中濃度

n 平均値±S.D.

中央値

分布

第1-第3四分位

血中濃度

小~ 大 0

ng/mL 0<~<5ng/mL

5≦~<10ng/mL

10≦~<15 ng/mL

15≦~<20 ng/mL

55 4.37±1.75

4.18

3.00-5.50

平均血中濃度

1.35~10.50

38

(69.1) 16

(29.1) 1

(1.8)

55 6.36±2.65

5.90

4.30-7.80

高血中濃度 投与後 8~16 時間値

1.70~13.00

20

(36.4) 29

(52.7) 6

(10.9)

7 5.57±4.85

4.30

2.80-6.50

高血中濃度 投与後16~24時間値

1.70~16.00

5

(71.4) 1

(14.3)

1 (14.3)

(%)

以上,ループス腎炎及び関節リウマチの両病態動物モデルにおいてほぼ同様の用量で同程度の有

効性が得られるとともに,同じ膠原病の関節リウマチの用法・用量(3mg の1日1回投与)を用

いて実施した第Ⅱ相試験でループス腎炎に対する有効性,安全性が確認された。その後,プラセボ

を対照とした第Ⅲ相比較試験で本用法・用量の有効性が立証され,第Ⅱ相試験と同様,安全性上も

大きな問題はなかった。また,第Ⅲ相試験で測定された血中濃度は,同一の用法・用量で測定され

た関節リウマチの血中濃度とほぼ同様であることが確認された。希少疾患であるループス腎炎では,

多くの症例における用法・用量の検討は困難であったが,同じ膠原病の関節リウマチの国内臨床試

験では多くの症例で,安全性が確認されていることから,検討例数が多くは望めないループス腎炎

-109-

Page 43: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 110 -

に対し,関節リウマチと同一の用法・用量を選択することで関節リウマチのデータを安全性に関す

る重要なサポートデータとし得ると考えた。ただし,3mg 以下の用量については,ループス腎炎

患者において検討されていないが,有効性が確認された用量を漫然と投与されることがないように,

安全性の観点から「用法・用量に関連する使用上の注意」の項に「本剤により十分な効果が得られ

た場合には,その効果が維持できる用量まで減量することが望ましい」と記載することとした。

なお,ループス腎炎患者における血中濃度と有効性及び安全性との関係については,以下に示

したが,血中濃度と有効性には明確な相関を認めず,また有害事象発現例の血中濃度が必ずしも

高いとは言えない結果が得られている。

2)血中濃度と有効性及び安全性との関係

(1) 各試験における血中濃度推移

各試験における血中濃度の推移を図 2.7.3-18~21 に示した。

第Ⅲ相試験(28 週)における各測定時期(2~28 週)の血中濃度(中央値)は 3.20~5.15ng/mL,同

様に,第Ⅱ相試験(28 週)では 2.60~6.40 ng/mL で推移した。第Ⅲ相試験(28 週以降)でも同様の推

移がみられ,血中濃度(中央値)は 3.30~5.50 ng/mL であった。一方,第Ⅱ相試験(28 週以降 長

104 週)では,各測定時期とも測定例数が少なく,また症例間のバラツキが大きかった。各測定時

期(2~104 週)における血中濃度(中央値)は 1.55~5.90ng/mL で推移した。図には特に示さなかっ

たが,第Ⅱ相試験(104 週以降)でも各測定時点における測定例数は3~5例と少なかった。本治験

開始時の血中濃度の中央値は2.30ng/mLであり,測定例のない時点を除き2.70~6.70ng/mLで推移

した。なお,第Ⅱ相試験(104 週以降)では 10ng/mL 以上の血中濃度を認めた症例が1例あり,1時

点(本治験開始 813 日目)のみ 12ng/mL となったが,他の時点では 7.1ng/mL 以下で推移した。

2 4 8 12 16 20 24 28 最終時 (週後)

タクロリムス群 12 19 14 14 13 12 13 13 25 (例数)

図 2.7.3-18 第Ⅲ相試験(28 週)における血中濃度推移

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

-4 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

観察時期

ng/mL

週後 最終時

週後

最終時

中央値(第1~3四分位) タクロリムス群

-110-

Page 44: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 111 -

図 2.7.3-19 第Ⅱ相試験(28 週)における血中濃度推移

(中央値:第 1~3四分位)

2 4 8 12 16 20 24 28 最終時 (週後)

19 18 17 14 16 15 15 16 21 (例数)

図 2.7.3-20 第Ⅲ相試験(28 週以降)における血中濃度推移

(中央値:第1~3四分位) (横軸は継続試験開始時を起点として示した)

2 4 8 12 16 20 24 28 (週後)11 10 7 7 6 7 5 7 (例数)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

ng/mL

2   4    8      12 16 20 24 28 週後

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

ng/mL

2 4 8 12 16 20 24 28 週後 最終時

-111-

Page 45: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 112 -

図 2.7.3-21 第Ⅱ相試験(28 週以降最長 104 週)における血中濃度推移

(中央値:第 1~3四分位) (横軸は第Ⅱ相試験(28 週)の開始時を起点として示した)

(2) 血中濃度と有効性との関係

第Ⅲ相試験(28 週)のタクロリムス群について, 終時(≦28 週)の主要評価項目である合計スコ

ア変化率,1日尿蛋白量の変化率及び補体(C3)の変化率と平均血中濃度の関係を表 2.7.3-74 に

示した。その結果,血中濃度の平均値が5ng/mL 未満の症例と5ng/mL 以上の症例で合計スコア変

化率,1日尿蛋白量の変化率及び補体(C3)の変化率は,ほぼ同様の値であった。

第Ⅲ相試験(28 週)のタクロリムス群について, 終時(≦28 週)の全般改善度と血中濃度の関

係を表 2.7.3-75,76 に示した。その結果,中等度改善以上を改善とした場合は,血中濃度の平均

値が5ng/mL 未満の症例で改善率がやや低い傾向がみられたものの,軽度改善以上を改善とした場

合は血中濃度の平均値が5ng/mL 未満の症例と5ng/mL 以上の症例で改善傾向に差はみられなかっ

た。また,5ng/mL 未満の症例と5ng/mL 以上の症例ともに悪化例を認めなかった。さらに,改善

例と非改善例における血中濃度の範囲は重なっていた。なお,参考として第Ⅱ相試験(28 週)に

ついても,表 2.7.3-77,78 に示した。

以上のとおり,合計スコア,1日尿蛋白量,補体及び全般改善度の結果からは,全般改善度の

中等度改善以上では高い血中濃度で有効性がやや高い傾向はみられたものの,明確な血中濃度と

有効性の相関は認められなかった。すなわち,投与量を調節し血中濃度を一律の範囲にコントロ

ールすることで各有効性指標の改善率が必ずしも上がるとは考えられず,症例ごとに血中濃度を指

標とした用量調節を行う必要性は低いと考える。

2 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 84 88 92 96 100 104 (週後)4 5 2 3 3 3 2 4 2 4 3 3 3 4 4 3 4 5 5 6 5 5 5 2 5 5 3 (例数)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

24 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 84 88 92 96 100 104 週後

ng/mL

-112-

Page 46: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 113 -

なお,個々の症例についても合計スコアの変化率と全般改善度について個別に検討したが,血

中濃度が低く推移した症例で,有効性が顕著に劣る傾向は認められなかった。

表 2.7.3-74 第Ⅲ相試験(28 週)の平均血中濃度別有効性結果

表 2.7.3-75 第Ⅲ相試験(28 週)の平均血中濃度別全般改善度

平均 血中濃度 (ng/mL)

著明改善 中等度改善 軽度改善 不変 軽度悪化 中等度悪化 著明悪化 判定不能 合計

<5 2

(13.3) <13.3>

2 (13.3) <26.7>

7 (46.7) <73.3>

4 (26.7)<100.0>

<100.0>

<100.0>

<100.0>

<100.0>

15

5≦ 6

(75.0) <75.0>

<75.0>

2 (25.0)<100.0>

<100.0>

<100.0>

<100.0>

<100.0>

8

<累積%>, (%)

表 2.7.3-76 第Ⅲ相試験(28 週)の全般改善度と平均血中濃度の関係

全般改善度 平均値±S.D. 中央値

第1-第3四分位小~ 大 0 0<~<5 5≦~<10 10≦~<15 合計

改善(中等度改善以上) 5.49±1.42 5.70

4.70-6.30

2.80~7.30 4

(40.0)

6

(60.0)

10

非改善 3.59±1.18 3.56

2.69-4.58

1.70~5.50 11

(84.6)

2

(15.4)

13

改善(軽度改善以上) 4.36±1.80 4.00

2.70-6.10

1.70~7.30 11

(64.7)

6

(35.3)

17

非改善 4.57±0.75 4.61

3.90-5.23

3.55~5.50 4

(66.7)

2

(33.3)

6

(%)

平均血中濃度(ng/ml)

<5 5≦(n) (n)

平均値±SD 平均値±SD

中央値 中央値

第1~第3四分位 第1~第3四分位

項 目

小~ 大 小~ 大16 8

-31.1±37.6 -30.6±17.1

-33.3 -33.3

-48.6--21.5 -36.7--22.5

合計スコア(変化率)

(%)

-100.0~75.0 -60.0~0.0

16 8

-45.2±42.8 -50.4±26.6 -60.4 -48.6

-75.2--23.4 -74.1--40.7

1日尿蛋白量(変化率)

(%)

-97.8~40.1 -79.0~2.2

16 8

17.9±16.0 21.4±16.8

15.5 18.8 8.3-27.5 10.8-31.9

補体 C3(変化率)

(%)

-11.6~60.6 0.0~48.1

-113-

Page 47: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 114 -

表 2.7.3-77 第Ⅱ相試験(28 週)の平均血中濃度別全般改善度

平均 血中濃度 (ng/mL)

著明改善 中等度改善 軽度改善 不変 軽度悪化 中等度悪化 著明悪化 判定不能 合計

<5 1

(12.5) <12.5>

3 (37.5) <50.0>

1 (12.5) <62.5>

3 (37.5)<100.0>

<100.0>

<100.0>

<100.0>

<100.0>

8

5≦ 3

3

<累積%> ,(%)

表 2.7.3-78 第Ⅱ相試験(28 週)の全般改善度と平均血中濃度の関係

全般改善度 平均値±S.D. 中央値

第1-第3四分位小~ 大 0 <5 5≦~<10 10≦~<15 合計

改善(中等度改善以上) 5.57±2.39 4.50

3.33-8.10

2.97~8.30 4

(57.1)

3

(42.9)

7

非改善 2.97±1.42 3.07

1.82-4.13

1.31~4.45 4

4

改善(軽度改善以上) 5.04±2.68 4.25

3.15-7.95

1.31~8.30 5

(62.5)

3

(37.5)

8

非改善 3.53±1.09 3.80

2.33-4.45

2.33~4.45 3

3

(%)

(3) 血中濃度と安全性との関係

副作用発現状況と血中濃度の関係を検討した。タクロリムスが投与された全 65 例の全投与期間

でトラフを考察可能な 55 例において,全副作用及び腎障害の発現有無別の平均血中濃度を表

2.7.3-79 に示した。有害事象の発現有無別平均血中濃度をみると,副作用が発現した症例としな

かった症例間で平均血中濃度の分布の差は大きくはなかった。また,重篤有害事象の発現と平均

血中濃度の分布との間にも,関係はみられなかった。国内の重篤副作用は,65 例中5例(7.7%)

に発現したが,このうち4例では,いずれも平均血中濃度が5ng/mL 未満であり,5例の平均血中

濃度も 3.94ng/mL であった。また,ループス腎炎の臨床試験で比較的発現率の高かった腎障害,

胃腸障害,耐糖能障害についても平均血中濃度が5ng/mL 以上の症例で多く認められる傾向はなか

った。

なお,全症例が3mg/日投与を継続した第Ⅲ相試験(28 週)のタクロリムス群のみについて同様

の検討を行ったところ,全 65例の全投与期間の結果とほぼ同様の結果が得られた(表 2.7.3-80)。

また,全 65 例でのクレアチニン値 大上昇量と平均血中濃度の分布との間にも明らかな関係は

みられなかった。平均血中濃度 10ng/mL 以上を示した1例では,クレアチニン値が 0.2mg/dL 以上

(0.69mg/dL→0.90mg/dL)上昇した(表 2.7.3-81)。

以上をまとめると,

① 移植領域で副作用発現が懸念されるとされている 20ng/mL 以上の平均血中濃度を示した症例

はみられず,大半の症例で平均血中濃度は 10ng/mL 未満であった。

② 平均血中濃度と重篤な有害事象発現との関係は認められなかった。

③ 有害事象発現の有無別にみた平均血中濃度分布に大きな差はみられなかった。

-114-

Page 48: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 115 -

なお,個々の症例についても血中濃度と副作用との関係について個別に検討したが,10 ng/mL

以上の症例で重篤副作用の発現例数が多くなる傾向はなく,副作用及び有害事象の発現が血中濃度

と相関するような傾向を認めなかった。

このように,有害事象発現例の血中濃度が必ずしも高いとは言えないと考えられた。したがって,

ループス腎炎患者においては,クレアチニン値,消化器症状及び血糖値等の観察,検査を十分に行

い,安全確保に注意喚起を行うなど,副作用の発現に注意するとともに,副作用発現後には減量又

は中止等の処置を行うことが,患者の安全確保に も効果的であると考えられた。

一方,ループス腎炎では検討例数がまだ多くはないが他の領域(移植,関節リウマチ,重症筋無

力症)と比較し,腎機能障害に関連する臨床検査値異常変動やその他の副作用が発現し易いという

傾向はなく,その頻度,程度とも大差はなかった(2.7.4.6.2 ループス腎炎と他領域との副作用比

較の項参照)。さらに,ループス腎炎では,CCr の明らかな低下がみられたが,CCr はこれまで他の

領域では必須測定項目とはしておらず,血清クレアチニンを主な評価指標としていた経緯がある。

血清クレアチニン上昇についても関節リウマチの成績と大差ない成績が得られていることから,今

回判明した CCr 低下は,本剤の有する腎機能障害に対する解釈を大きく見直す程のエビデンスでは

ないと考えられる。また,本剤による腎障害部位とループス腎炎の障害部位は異なり,相加的に腎

障害が惹起されるものではないことや,CCr 低下や血清クレアチニン上昇は可逆性であること及び

本剤による CCr 低下は,他の腎機能パラメータに大きく影響を及ぼす程のものではないことなども

確認されている。

以上を総合的に勘案すると,ループス腎炎では関節リウマチと同様,20ng/mL 以上の血中トラフ

濃度での安全性の検討は行われていないが,安全性に関してループス腎炎に特異的な要因は何らみ

られなかったことから,現状ではループス腎炎でも他の領域と同様,「血中トラフ濃度が 20ng/mL

を超える期間が長い場合,副作用が発現しやすくなるので注意すること。」と,注意喚起するのが

適切と考える。また,1回3mg,1日1回の長期投与によって,高い血中濃度が持続することはない

と考えるが,ループス腎炎そのものが腎障害であることから,安全性をより確たるものとするため,

全身型重症筋無力症と同様,以下のとおり「用法・用量に関連する使用上の注意」の項に定期的に

血中濃度を測定することが望ましい旨追記した。

添付文書(案)上の記載の改定案(下線部を追記)

【使用上の注意】

<用法・用量に関連する使用上の注意>

(7)ループス腎炎では,副作用の発現を防ぐため,投与開始3ヵ月間は1ヵ月に1回,以後は

定期的におよそ投与 12 時間後の血中濃度を測定し,投与量を調節することが望ましい.

また,本剤を2ヵ月以上継続投与しても,尿蛋白などの腎炎臨床所見及び免疫学的所見で

効果があらわれない場合には,投与を中止するか,他の治療法に変更することが望ましい.

一方,本剤により十分な効果が得られた場合には,その効果が維持できる用量まで減量す

ることが望ましい.

-115-

Page 49: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 116 -

表 2.7.3-79 ループス腎炎-全 65 例有害事象有無別血中濃度分布

平均血中濃度の分布 (%)

(投与後 8~16 時間) 有害事象 例数

平均血中

濃度

(ng/mL) <5 ng/mL 5≦ <10 ng/mL 10≦ <15 ng/mL 15≦ <20 ng/mL 20≦ ng/mL

なし 1 3.60 1 有害事象

あり 54 4.38 37 (68.5) 16 (29.6) 1 (1.9)

なし 8 4.43 7 (87.5) 1 (12.5) 副作用

あり 47 4.36 31 (66.0) 15 (31.9) 1 (2.1)

なし 44 4.46 29 (65.9) 14 (31.8) 1 (2.3) 重篤な

有害事象 あり 11 3.98 9 (81.8) 2 (18.2)

なし 50 4.41 34 (68.0) 15 (30.0) 1 (2.0) 重篤な

副作用 あり 5 3.94 4 (80.0) 1 (20.0)

なし 27 4.35 19 (70.4) 8 (29.6) 腎障害

あり 27 4.30 19 (70.4) 7 (25.9) 1 (3.7)

なし 34 4.21 25 (73.5) 9 (26.5) 胃腸障害

あり 21 4.63 13 (61.9) 7 (33.3) 1 (4.8)

なし 50 4.34 35 (70.0) 14 (28.0) 1 (2.0) 耐糖能

あり 5 4.67 3 (60.0) 2 (40.0)

表 2.7.3-80 ループス腎炎-第Ⅲ相試験(28 週)有害事象有無別血中濃度分布

平均血中濃度の分布 (%)

(投与後 8~16 時間) 有害事象 例数

平均血中

濃度

(ng/mL) <5 ng/mL 5≦ <10 ng/mL 10≦ <15 ng/mL 15≦ <20 ng/mL 20≦ ng/mL

なし 1 3.60 1 有害事象

あり 24 4.38 16 (66.7) 8 (33.3)

なし 2 5.45 1 1 副作用

あり 23 4.26 16 (69.6) 7 (30.4)

なし 21 4.44 14 (66.7) 7 (33.3) 重篤な

有害事象 あり 4 3.88 3 1

なし 22 4.42 15 (68.2) 7 (31.8) 重篤な

副作用 あり 3 3.84 2 1

なし 15 4.64 9 (60.0) 6 (40.0) 腎障害

あり 10 3.92 8 (80.0) 2 (20.0)

なし 17 4.12 13 (76.5) 4 (23.5) 胃腸障害

あり 8 4.84 4 (50.0) 4 (50.0)

なし 22 4.36 15 (68.2) 7 (31.8) 耐糖能

あり 3 4.29 2 1

-116-

Page 50: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 117 -

表 2.7.3-81 ループス腎炎-全 65 例クレアチニン値上昇程度別血中濃度分布

高用量投与時平均血中濃度の分布(%)

(投与後 8~16 時間) クレアチニン

大上昇量

(mg/dL)

例数 <5

ng/mL

5≦ <10

ng/mL

10≦ <15

ng/mL

15≦ <20

ng/mL

20≦

ng/mL

≦0 7 5 (71.4) 2 (28.6) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

0< <0.2 33 23 (69.7) 10 (30.3) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

0.2≦ <0.3 6 3 (50.0) 2 (33.3) 1 ( 16.7) 0 ( 0) 0 ( 0)

0.3≦ 8 7 (87.5) 1 (12.5) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なお,参考として関節リウマチ患者における有害事象の発現有無別の平均血中濃度と安全性との

関係を以下に示した。

【関節リウマチ申請時の添付資料概要ト.臨床試験 p.442,443 より抜粋】

国内,外国ともに,有害事象発現有無の間で平均血中濃度の分布の差は大きいものではなかった

(表 2.7.3-82,83)。また,重篤有害事象発現と平均血中濃度の分布との間にも,関係はみられ

なかった(表 2.7.3-82,83)。国内の重篤副作用は,全症例中 27 例に発現したが,プロトコル違

反1例(高齢者3mg/日開始,腎機能障害等が発現)を除いた 26 例の平均血中濃度は,いずれも低

かった。すなわち,26 例中 19 例の平均血中濃度は 10ng/mL 未満であり(表 2.7.3-82),残り7

例の平均血中濃度は,投与 16 時間後以降 24 時間以内のデータで集計対象外であったが,いずれも

5ng/mL 未満であり,本剤の半減期(約 40 時間)を考えると投与 12 時間後には 10ng/mL 未満と考

えられた。

また,国内症例でのクレアチニン値 大上昇量と平均血中濃度の分布との関係を検討したが,ク

レアチニン値上昇が 0.3mg/dL 以上の症例では,平均血中濃度がやや高く分布した。また,平均血

中濃度 10ng/mL 以上を示した8例中7例では,クレアチニン値が 0.2mg/dL 以上上昇した(表 2.7.3

-84)。

以上,まとめると,

① 副作用発現が懸念される 20ng/mL 以上の平均血中濃度を示した症例は,326 例中1例(0.3%)

であった。

② 平均血中濃度 10ng/mL 以上の8例に,重篤な副作用は認められなかった。うち6例に腎機能

異常,消化器障害及び耐糖能異常等の副作用が発現したが,減量,中止の処置により回復し,

未回復の副作用も投与継続された。

③ 平均血中濃度と重篤な有害事象との関係は認められなかった。

④ 国内,米国ともに,有害事象発現の有無による平均血中濃度分布に大きな差はみられなかっ

た。

⑤ 平均血中濃度がやや高い症例にクレアチニン値の上昇例がみられた。

以上のように,有害事象発現例の血中濃度が必ずしも高いとは言えないことから,副作用又は重

篤な有害事象の予測手段として,血中濃度の測定は必ずしも実効性のあるものではないと考えられ

-117-

Page 51: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 118 -

る。本剤の関節リウマチにおける承認審査では,この考えの妥当性が認められ,関節リウマチ患者

では,むしろクレアチニン値,消化器症状及び血糖値等の観察,検査を十分に行い,高齢者におい

てはより安全確保に注意喚起を行うなど,副作用の発現に注意するとともに,副作用発現後には減

量又は中止等の処置を行うことが,患者の安全確保に も効果的であると結論づけられ,承認され

ている。

表 2.7.3-82 関節リウマチ-国内での有害事象有無別血中濃度分布

高用量投与時平均血中濃度の分布(%)

(投与後 8~16 時間) 有害事象 例数 平均血中

濃度

(ng/mL) <5 ng/mL 5≦ <10 ng/mL 10≦ <15 ng/mL 15≦ <20 ng/mL 20≦ ng/mL

なし 44 3.5 36 (81.8) 8 (18.2) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)有害事象

あり 282 4.6 178 (63.1) 96 (34.0) 5 (1.8) 2 (0.7) 1 (0.4)

なし 111 3.8 85 (76.6) 25 (22.5) 1 (0.9) 0 ( 0) 0 ( 0)副作用

あり 215 4.8 129 (60.0) 79 (36.7) 4 (1.9) 2 (0.9) 1 (0.5)

なし 284 4.4 189 (66.5) 89 (31.3) 4 (1.4) 1 (0.4) 1 (0.4)重篤な

有害事象 あり 42 5.1 25 (59.5) 15 (35.7) 1 (2.4) 1 (2.4) 0 ( 0)

なし 307 4.4 203 (66.1) 96 (31.3) 5 (1.6) 2 (0.7) 1 (0.3)重篤な

副作用 あり 19 4.9 11 (57.9) 8 (42.1) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 285 4.3 198 (69.5) 79 (27.7) 5 (1.8) 2 (0.7) 1 (0.4)クレアチニン上昇

あり 41 5.5 16 (39.0) 25 (61.0) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 309 4.4 204 (66.0) 97 (31.4) 5 (1.6) 2 (0.6) 1 (0.3)高血圧

あり 17 5.2 10 (58.8) 7 (41.2) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 306 4.4 203 (66.3) 95 (31.0) 5 (1.6) 2 (0.7) 1 (0.3)高脂血症

あり 20 5.0 11 (55.0) 9 (45.0) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 285 4.4 188 (66.0) 91 (31.9) 5 (1.8) 1 (0.4) 0 ( 0)高血糖

あり 41 5.1 26 (63.4) 13 (31.7) 0 ( 0) 1 (2.4) 1 (2.4)

なし 321 4.5 210 (65.4) 103 (32.1) 5 (1.6) 2 (0.6) 1 (0.3)振戦

あり 5 4.4 4 (80.0) 1 (20.0) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 309 4.4 207 (67.0) 96 (31.1) 4 (1.3) 1 (0.3) 1 (0.3)悪心・嘔吐

あり 17 6.0 7 (41.2) 8 (47.1) 1 (5.9) 1 (5.9) 0 ( 0)

なし 310 4.5 204 (65.8) 98 (31.6) 5 (1.6) 2 (0.6) 1 (0.3)頭痛

あり 16 4.4 10 (62.5) 6 (37.5) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 308 4.4 204 (66.2) 97 (31.5) 4 (1.3) 2 (0.6) 1 (0.3)下痢

あり 18 5.0 10 (55.6) 7 (38.9) 1 (5.6) 0 ( 0) 0 ( 0)

なし 307 4.5 200 (65.1) 99 (32.2) 5 (1.6) 2 (0.7) 1 (0.3)発疹

あり 19 4.1 14 (73.7) 5 (26.3) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

-118-

Page 52: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析

- 119 -

表 2.7.3-83 関節リウマチ-米国長期投与試験(試験番号 051)での有害事象有無別血中濃度分布

平均トラフ濃度の分布 (%)

(投与後 20~28 時間) 有害事象 例数

平均トラフ

濃度

(ng/mL)<5

ng/mL

5≦ <7.5

ng/mL

7.5≦ <10

ng/mL

10≦ <15

ng/mL

15≦

ng/mL

なし 62 4.117 49 (79.0) 5 ( 8.1) 4 ( 6.5) 3 ( 4.8) 1 ( 1.6)有害事象

あり 599 3.423 486 (81.1) 90 (15.0) 12 ( 2.0) 7 ( 1.2) 4 ( 0.7)

なし 273 3.379 233 (85.3) 24 ( 8.8) 9 ( 3.3) 4 ( 1.5) 3 ( 1.1)副作用

あり 388 3.564 302 (77.8) 71 (18.3) 7 ( 1.8) 6 ( 1.5) 2 ( 0.5)

なし 579 3.463 474 (81.9) 78 (13.5) 15 ( 2.6) 8 ( 1.4) 4 ( 0.7)重篤な有害事象

あり 82 3.663 61 (74.4) 17 (20.7) 1 ( 1.2) 2 ( 2.4) 1 ( 1.2)

なし 643 3.466 523 (81.3) 91 (14.2) 15 ( 2.3) 9 ( 1.4) 5 ( 0.8)重篤な副作用

あり 18 4.253 12 (66.7) 4 (22.2) 1 ( 5.6) 1 ( 5.6) 0 ( 0.0)

なし 616 3.389 510 (82.8) 80 (13.0) 14 ( 2.3) 7 ( 1.1) 5 ( 0.8)クレアチニン上昇

あり 45 4.841 25 (55.6) 15 (33.3) 2 ( 4.4) 3 ( 6.7) 0 ( 0.0)

なし 595 3.467 484 (81.3) 83 (13.9) 14 ( 2.4) 9 ( 1.5) 5 ( 0.8)高血圧

あり 66 3.670 51 (77.3) 12 (18.2) 2 ( 3.0) 1 ( 1.5) 0 ( 0.0)

なし 649 3.453 527 (81.2) 92 (14.2) 16 ( 2.5) 10 ( 1.5) 4 ( 0.6)高脂血症

あり 12 5.387 8 (66.7) 3 (25.0) 0 ( 0.0) 0 ( 0.0) 1 ( 8.3)

なし 645 3.456 524 (81.2) 92 (14.3) 16 ( 2.5) 8 ( 1.2) 5 ( 0.8)高血糖

あり 16 4.745 11 (68.8) 3 (18.8) 0 ( 0.0) 2 (12.5) 0 ( 0.0)

なし 589 3.463 482 (81.8) 77 (13.1) 16 ( 2.7) 9 ( 1.5) 5 ( 0.8)振戦

あり 72 3.691 53 (73.6) 18 (25.0) 0 ( 0.0) 1 ( 1.4) 0 ( 0.0)

なし 564 3.509 458 (81.2) 76 (13.5) 15 ( 2.7) 10 ( 1.8) 5 ( 0.9)悪心

あり 97 3.363 77 (79.4) 19 (19.6) 1 ( 1.0) 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)

なし 560 3.572 448 (80.0) 83 (14.8) 15 ( 2.7) 9 ( 1.6) 5 ( 0.9)頭痛

あり 101 3.019 87 (86.1) 12 (11.9) 1 ( 1.0) 1 ( 1.0) 0 ( 0.0)

なし 522 3.415 426 (81.6) 72 (13.8) 12 ( 2.3) 8 ( 1.5) 4 ( 0.8)下痢

あり 139 3.761 109 (78.4) 23 (16.5) 4 ( 2.9) 2 ( 1.4) 1 ( 0.7)

表 2.7.3-84 関節リウマチ-国内でのクレアチニン値上昇程度別血中濃度分布

高用量投与時平均血中濃度の分布(%)

(投与後 8~16 時間) クレアチニン

大上昇量

(mg/dL)

例数 <5

ng/mL

5≦ <10

ng/mL

10≦ <15

ng/mL

15≦ <20

ng/mL

20≦

ng/mL

≦0 32 22 (68.8) 10 (31.3) 0 ( 0) 0 ( 0) 0 ( 0)

0< <0.2 94 71 (75.5) 22 (23.4) 0 ( 0) 1 ( 1.1) 0 ( 0)

0.2≦ <0.3 96 72 (75.0) 21 (21.9) 3 ( 3.1) 0 ( 0) 0 ( 0)

0.3≦ 103 48 (46.6) 51 (49.5) 2 ( 1.9) 1 ( 1.0) 1 ( 1.0)

-119-

Page 53: 成績の分析と考察...を考察するため,症状のある症例の実測値の変化率を用いてスペアマンの順位相関係数行列を求め た(表2.7.3-44)。

2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.5 効果の持続,耐薬性

- 120 -

2.7.3.5 効果の持続,耐薬性

長期有効性のデータを収集することを目的とした比較対照試験は実施していない。

非盲検非対照試験として実施した第Ⅱ相試験(28週以降 長104週)及び第Ⅱ相試験(104週以降)

では,ともに1回3mg,1日1回夕食後投与にて行った。

第Ⅱ相試験(28 週以降 長 104 週)に参加した 13 例では,第Ⅱ相試験(28 週)で得られた改善効果

が 終時(≦104 週)まで維持され,第Ⅱ相試験(104 週以降)に参加した9例では,平均投与期間が

通算約4年となるにもかかわらず, 終時(≦104 週)に得られた改善効果が維持されていた。これ

らの成績は,本剤の効果は長期間持続し,経時的な効果の減弱の可能性は高くはないことを示唆す

るものと考えられる。

-120-