線条体の機能的分類におけるドーパミンD2受容体密度と性格特性の

関連についての検討

江口洋子1,2 高野晴成1 伊藤 浩1 荒川亮介1

小高文聰1 高橋英彦1,3 松田博史2 須原哲也1

1 放射線医学総合研究所分子イメージングセンタ－2 埼玉医科大学国際医療センター核医学科3 京都大学大学院医学研究科

研究の背景と目的ＰＥＴ先行研究線条体ドーパミンＤ２受容体と性格特性との関連

Farde LJ et al., Nature, 385:590, 1997[11C]raclopride, Karolinska Scales of personality(KSP)  24名（男性10),平均年齢の記載なし（18－38歳）

Breier A et al., Am J Psychiatry, 155: 1440‐2, 1998

Kestler LP, et al., Neuropsychiatry Neuropsychol Behav Neurol, 13: 48‐52, 2000

[11C]raclopride, KSP,  Third Personality Measure(TPM)18名（男性14）, 平均年齢33.1歳

[11C]raclopride, NEO 人格目録改訂版, TPM18名（男性15）, 平均年齢35.4歳

対象者の属性を統一し，多数例で，機能的分類に基づいた線条体ドーパミンＤ２受容体結合能と性格特性との関連を明らかにする

対象と方法

対象： 健常成人男性 42名（平均年齢 26.1±5.5歳）

PETリガンド： [11C]racｌopride

PET装置： Siemens ECAT EXACT HR+

収集： Dynamic scan (60分間), 3D収集投与量： 220.8 ± 15.3 MBq

結合能計算法：SRTM法（参照部位：小脳）

性格特性検査：NEO人格目録改訂版

Ｒ Ｌ Ｒ Ｌ1

2

3

45

Y = 16 mm Y = 8 mm Y = 0 mm Z = 4 mm

(Martinez et al ., J Cereb Blood Flow Metab. 2003)

辺縁線条体（Ｌｉｍｂｉｃ ｓｔｒｉａｔｕｍ；ＬＳＴ）⇒ 3

連合線条体（Ａｓｓｏｃｉａｔｉｖｅ ｓｔｒｉａｔｕｍ；ＡＳＴ）⇒ 1 + 2 + 4

感覚運動線条体（Ｓｅｎｓｏｒｉｍｏｔｏｒ ｓｔｒｉａｔｕｍ；ＳＭＳＴ）⇒ 5

線条体の機能的分類

アメリカ国立老化研究所のPaul T. Costa JR & Robert R. McCreaにより開発された人格検査1994年時点、18カ国において使用本邦では、1999年に下仲らが翻訳出版

健康な成人において、人格特性の5つの主要な次元を測るための尺度

NEO人格目録改訂版

Revised NEO ‐ Personality Inventory ( NEO PI‐R )

NEO PI-R

Neuroticism:神経症傾向

Extraversion：外向性

Openness：開放性

Agreeableness：調和性

Conscientiousness：誠実性

5つの次元↓

各々、6つの下位次元

240の質問項目で構成

非常にそうだ

そうだ

どちらでもない

そうでない

全くそうでない

⇒C 誠実性 （下位次元）良心性

質問例）

割り当てられた仕事を、

すべてきちんとやるように努めている

下位次元ごとに素点を合計

Ｔ得点に換算（平均50）

NEO PI-R

結果： ドーパミンＤ２受容体結合能

部位 平均 標準偏差 範囲

線条体全体 2.78 0.36 1.89 – 3.63

辺縁線条体 2.27 0.39 0.98 – 3.07

連合線条体 2.65 0.40 1.55 – 3.49

運動感覚線条体 3.39 0.37 2.71 – 4.36

4.0

0.0

Ｒ Ｌ

Y = 16 mm Y = 8 mm Y = 0 mm

結果： NEO PI-RのＴ得点

対象者の平均Ｔ得点

標準偏差

N  神経症傾向 53.62 9.39

E   外向性 54.95 11.96

O 開放性 58.33 9.52

A 調和性 47.48 10.22

C  誠実性 46.38 12.27

（平均50, 標準偏差10）

結果：ドーパミンＤ２受容体結合能とNEO PI‐R

人格の５因子

N 神経症傾向

E 外向性O 開放性A 調和性C 誠実性

誠実性(C)の下位尺度

C1 コンピテンス

C2 秩序C3 良心性 DutifulnessC4 達成追求C5 自己鍛錬C6 慎重さ

ドーパミンD2受容体結合能と良心性の相関

部位 偏相関係数 ｐ値

線条体全体 ‐ 0.39 0.012

辺縁線条体 ‐ 0.29 0.070

連合線条体 ‐ 0.36 0.022

感覚運動線条体 ‐ 0.41 0.007

制御変数：年齢

線条体全体

結果：ドーパミンＤ２受容体結合能とNEO PI‐R

倫理観を頑なに守る道徳的義務に忠実

倫理観・道徳的義務に無頓着依存的頼りにならない

考察

線条体および、線条体を機能的に分類した各部位

（連合線条体, 感覚運動線条体）のドーパミンＤ２受容体結合能と良心性 Dutifulness（Ｃ誠実性の下位

尺度）のＴ得点との間に有意な負の相関を認めた。

健常成人男性において、頑な、気難しい、潔癖、断固

⇒線条体ドーパミンＤ２受容体発現量：少

快楽主義的、ひたむきさが足りない

⇒線条体ドーパミンＤ２受容体発現量：多