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生体機能代行装置学Ⅱ
2010年7月9日2010年7月9日
第14回
人工心肺の組立・装着から
離脱までと、事故事例
今回のテーマ(人工心肺の組立・装着から離脱までと、事故事例)
�組み立て時の注意事項、プライミング、送
血・脱血カニューレ、抗凝固剤、操作の流れ、
体外循環開始前のチェック事項、人工心肺
開始、体外循環中のモニター項目、離脱な開始、体外循環中のモニター項目、離脱な
どについて授業を行う。また、事故事例に
ついて授業を行う。
人工心肺装置を使う時には
� 非拍動循環
� 全身灌流量が人為的にコ
ントロールされている
� 肺循環の喪失
� 血液の人工的異物面へ
� 血液希釈
� 低体温
� ポンプによる血液の物理
的損傷
� 人工肺によるガス交換� 血液の人工的異物面へ
の接触
� 人工肺によるガス交換
要するに、体にいいことはしていない
↓
いかに、体への負担を軽減するか。
資料引用元:東海大学 開発工学部 医用生体工学科http://www2.ncc.u-tokai.ac.jp/ce/
準備段階
�術前の患者の状態把握
�ハンドブックP207
�回路の組み立て
�ハンドブックP211/標準テキストP299�ハンドブックP211/標準テキストP299
�オクルージョン調整
�ハンドブックP211
�プライミング
�ハンドブックP213/標準テキストP297
患者の状態把握
� 身長と体重から適正
灌流量、輸血の有無、
カニューレのサイズな
どを把握する。
� 体表面積のノモグラ
ムを使う
� ハンドブックP207
� 交差した部分の数字
を読む
� 酸素需要量の把握
セットアップ
� 回路の組み立て
� 清潔操作に注意
� 開端部を床に接触させない。
� ベントポンプ・血液吸引ポンプの回
路接続
テキスト:P285� テキスト:P285
� オクルージョン(圧閉度)調整
� ローラポンプの場合、必ず行う
� ポンプ下流の回路内、1mの水柱
が数cm/分の速度で下降するように調整
回路の概要
http://www.jsao.org/public/about/02.htm
プライミング
� テキスト P298 表4
� 充填液
� リンゲル(生理食塩水)
� 無血充填が主流
� 血漿増量薬(ヘスパンダー)� 血漿増量薬(ヘスパンダー)
� マニトール(商品名;浸透圧の調整、利尿)� 全身を循環する水分量を増やす
� 血圧が低下するとおしっこが出なくなる⇒腎不全
� ヘパリン(抗凝固薬)
� 血液を固まらせない ⇒ 血液損傷を減らす。
� 液で満たしたら、気泡を丁寧に追い出す。
プライミングの手順
� ハンドブック:P213
� 送血カニューレと脱血カニューレに鉗子をかける。
� 貯血槽を満たしてから、ポンプ、人工肺、熱交換� 貯血槽を満たしてから、ポンプ、人工肺、熱交換
機)、動脈フィルタまで液を流して洗浄する。
� 動脈フィルタ上部で、エア抜きを行う。
� 気泡があったら、手で叩いてエアを追い出す。
脱血・送血(カニューレの挿管)
� テキストP299, ハンドブックP216
� カニューレを挿管する位置、本数は、術式によって異なる。
� 脱血
� 上下の大静脈、 右房
� 大腿静脈� 大腿静脈
� 送血
� 上大動脈、 大腿動脈、 腋窩動脈
� 再手術時
� 同じ場所に挿管することができない
� 代替手段として、大腿動脈や大腿静脈を使用することがある
体外循環の開始
� ハンドブック P219
� 送血開始
� 送血回路を遮断している鉗子を外す
� 脱血開始
� 脱血回路を遮断している鉗子を外す� 脱血回路を遮断している鉗子を外す
� 部分体外循環と完全体外循環
� 部分体外循環
� 開始時と、ウィーニングの際の両方で行う。
� ウィーニング: 人工心肺からの離脱
� この言葉は、人工呼吸器からの「離脱」にも使われる。
� 標準テキスト:P317
イニシャルドロップ
� 体外循環初期に血圧が低下する現象
� 原因として血液の希釈があげられる
� 血液粘性の低下
� 血中カテコラミンレベルの低下による末梢血管抵抗の低下
� 肺循環の消失によるプロスタグランジン分解の抑制
� カテコラミン:血糖値を上昇させる効果(P57)
� プロスタグランジン: (P296)� 様々な生理活性のある物質
� 最初に精液から発見された。
� 血圧低下、子宮の収縮、血小板凝集など
資料引用元:東海大学 開発工学部 医用生体工学科http://www2.ncc.u-tokai.ac.jp/ce/
心臓の停止
� ハンドブックP220、テキストP297
� 肺循環を停止させる。
� 上行大動脈を締めて、カニューレへ血液を流す
� 冠動脈の血行が低下し、心臓が停止する。� 冠動脈の血行が低下し、心臓が停止する。
� 心筋保護液を流す
� 細胞内液型:イオン濃度の差を減少させ心停止を得る。
� 細胞外液型:カリウム濃度をあげて心停止させる。
心筋の保護
� テキスト P560, ハンドブックP222
� 心筋保護の重要性
� 単純常温阻血の安全限界が、短時間
① 灌流冷却法
熱交換で、全身を冷却する。熱交換で、全身を冷却する。
② 冠灌流方法
③ 局所冷却法
シャーベット状の氷で冷やす
④ 心停止法
4℃の心筋保護液で心臓を停止する
大動脈の遮断
ハンドブック P195
抗凝固剤
� ヘパリンナトリウムの投与(1ml=10mg=1000単位)を、充填腋内の50mgに加える
� 2.0~3.0mg/kg(体重1kgあたりのmg)を、カニューレの挿入前に投与
� ACT(Activated Coagulation Time;全血活性化凝固時間)が400秒以上に延長することを確認
� 離脱後には、ヘパリンを中和するために、硫酸プロタミンを投与
� プロタミンショック : ヒスタミンを遊離
脱血量の調節
� 生体からの脱血量を調節するために、
オクルーダ
� を使用する。
� ホースをつぶして太さを調節する。
� レバーやツマミで、運転中に調節する。
� ローラポンプの
オクルージョンオクルージョンオクルージョンオクルージョン
ハンドブックP187
� と、ごっちゃになっている人が多い。
� オクルージョンは、運転前に調節する。
体の冷却
� テキスト P301� テキスト P301
� 熱交換器で血液を冷却する。
� 低体温の問題点
� 末梢血管抵抗の増大
� 血液粘性の増大
� コロイド浸透圧の変化
資料引用元:東海大学 開発工学部 医用生体工学科http://www2.ncc.u-tokai.ac.jp/ce/
人工心肺中のモニタリング
� ポンプの回転数、酸素濃度、酸素流量
� 平均動脈圧: 60~100mmHg� 心電図:不整脈、 ST-T変化の監視� 体温
� 尿量、尿の色: (溶血尿)
� 中心静脈圧、右房圧、左房圧
� (心拍出量)
� 送血量、脱血量(リザーバレベル)
� 静脈血酸素飽和度、 ヘマトクリット
� 血液ガス、 電解質濃度(カリウムなど)
� ACT
どれが一番大事ですか? ⇒ 全部です!
オペと心肺操作の流れ
麻酔麻酔麻酔麻酔 術者術者術者術者 人工心肺人工心肺人工心肺人工心肺
・装置の準備
・回路の準備
(組立、洗浄、充填)
患者管理 執刀
(ヘパリン投与) ヘパリン投与
体外循環開始
(部分体外循環)
冷却開始
呼吸停止 完全体外循環
入室 麻酔導入 体位
カニュレーション
� http://www.hosp.u-toyama.ac.jp/ope/ce/cpb/1gaiyou/1gaiyou.html
呼吸停止 完全体外循環
大動脈遮断
心停止、心筋保護 心筋保護液注入
心内修復
加温開始
大動脈遮断解除
心拍動再開
呼吸再開 部分体外循環
weaning
終了
プロタミン投与 カニューレ抜去 残血回収、洗浄
回収血輸血 終了
退室 麻酔終了
人工心肺からの離脱
� テキストP302、ハンドブックP221
� 大動脈の遮断を解除し、心拍を再開
� 冠動脈血流の再開
� 心腔内の脱気、 加温の開始� 心腔内の脱気、 加温の開始
� 温度を上昇する際に、上げすぎないように注意
� 自己心からの拍出の確認
� 送血量を徐々に減らし、500ml/分前後まで低下後停止
� 血行動態の安定を確認し、まず脱血カニューレを抜去。
� プロタミン投与
� 次に送血カニューレを抜去する。
� 残血の回収と返血
人工心肺離脱の条件
� ハンドブック P221 表5、テキスト P302
1. 術野の止血の確認
2. 安定した心拍動、血圧、CVPの確認CVP(Central Venous Pressure;中心静脈圧)
3. 尿量の確認
4. 直腸温34.5℃4. 直腸温34.5℃
5. 血液ガス、電解質、Hb、Hct値のチェック6. 昇圧剤、抗不整脈剤投与の準備
7. 輸液・輸血の準備
� 何が一番難しいか?
フライトシミュレータ: 離陸よりも着陸
人工心肺の導入よりも、離脱!
人工肺のトラブル
�テキストP304
�血漿リーク(漏出)
�人工心肺が耐久限界を超えて使用された場合
� 「耐久限界」を確認する� 「耐久限界」を確認する
� それ以外で、患者が死亡ないし脳障害などに
陥った場合
� PL法(製造者責任法)の対象
�責任を巡り、メーカー対病院(技士)の法廷闘争?
�対患者の責任は?
熱交換器のトラブル
�熱交換器で血液と温水が混じりあう!
�循環している温水に、突然血液が混じる
�血液に温水が混じる
�熱交換器の交換
�人工肺と一体化している場合には、人工肺ごと交換
その他のトラブル
� リザーバ(貯血槽)でのトラブル
� リザーバでのフィルタ
�大動脈瘤、動脈硬化などで凝血塊などが極端に多
い場合
� フィルタが目詰まりを起こす
�回路内の血液凝固
� ACT値を測定する。
�超低体温での血液成分の凝集反応
操作に伴うミス
� リザーバが空になった
� 空気を送ってしまった場合
� 逆行性送血(脱血管から血液を送り、送血管から気泡を回収)
� 回収しきれない気泡が毛細血管をふさぐことがある
� 運転中に脱血管が抜けた(参考文献P108)脱血管からの大量の空気吸入� 脱血管からの大量の空気吸入
� リザーバが空↑
� 脱血管を血液、もしくは生理食塩水で満たす
� 送血管のクランプの外し忘れ
� ⇒ あわてて生体側を開くとどうなるか?
� 酸素チューブのつなぎ忘れ
� 血液の色などに注意する。気付かないと大惨事に!
空気塞栓・血栓形成・溶血
�テキストP304
� それぞれ、どんな原因で起きるか整理する
医療事故に関する刑事的責任
� 因果関係が明白でない限りは、臨床工学技士が
直接刑事訴訟の対象となる可能性は少ない。
� 因果関係が明白な例:
� 送血回路内のエアの混入による脳障害
� 心筋保護液の調合ミスによる心不全� 心筋保護液の調合ミスによる心不全
� 左房ベントの逆向き装着による左室内空気注入による脳障害
� 実害を受けた患者あるいは遺族
� ⇒「真実を知りたい」
� ⇒訴訟を起こす。
� (「悲惨な結末」+「曖昧な説明」)=不信感
� 不信感+(スタッフの勝手な解釈、個人攻撃、うわさ) ⇒?
事故事例1
� http://www.comp-c.co.jp/book/content_04.html
� 「人工心肺動静脈の回路取り付け間違え」事例
� 80歳女性:人工弁の取り付け
� 執刀医はこの病院に来て1年目
� ベテランの心臓外科医が指導医としてサポート
� 人工心肺の操作はベテランの臨床工学技士� 人工心肺の操作はベテランの臨床工学技士
� チューブがねじれていることに執刀医が気づかなかった。
� 動脈側と静脈側のチューブを反対に取り付けた。
� モニターの数値に異常があった。
� チューブにかかる圧力が低かった
� 臨床工学技士は人工心肺を一旦停止 → 全員で回路を点検
� ミスを発見した。
� 幸い、患者に後遺症は残らなかった。
事故事例1 –詳細
� <VTR>「人工心肺動静脈の回路取り付け間違え」事例
� 「この日は、心臓病を患う80歳の女性に手術を行うことになっていました。心臓に人工の弁を取り付けるというもので、心臓手術として特別なものではありません。心臓手術
に欠かせないのが人工心肺です。手術の間、心臓の代わりに全身に血液を送ります。
通常、血液は心臓から動脈を経て全身に送られ、静脈を通って再び心臓に戻ってきま
す。手術では心臓を止め、代わりに人工心肺を使います。人工心肺のチューブを動脈と
静脈につなげ、血液を循環させます。ところが、このとき動脈側のチューブと静脈側の
チューブを反対に取り付けるというミスが起きてしまったのです。なぜこのようなミスが起
きたのか、経緯を見てみましょう。きたのか、経緯を見てみましょう。
� 執刀医はこの病院に来て1年目、心臓手術の経験はあまりありませんでした。そのた
め、ベテランの心臓外科医が指導医としてサポートにつきました。人工心肺の操作はベ
テランの臨床工学技士が行います。準備を先に終えた執刀医が、本来二人で行う人工
心肺の取り付けを一人で始めます。事故が起きたのはこのときです。人工心肺を取り付
ける際、通常は動脈側のチューブを1カ所、静脈側のチューブを2カ所切ります。そして、
動脈、静脈にそれぞれつなぎます。しかし、作業の途中でチューブがねじれていること
に執刀医は気づきませんでした。チューブを切る位置が逆になり、そのまま誤ってつな
いでしまったのです。これでは血液が正常に全身に送られません。5分間この状態が続
けば、脳に重い障害が残る危険性があります。
� 執刀医も指導医も、誤ってチューブを取り付けたことに気づかないまま、人工心肺を動
かすよう指示を出します。異常に気づいたのは臨床工学技士でした。モニターの数値に
異常がありました。チューブにかかる圧力が低かったのです。臨床工学技士は人工心
肺を一旦停止します。全員で回路を点検して、初めてミスに気づき、チューブは正しくつ
なぎ直されました。幸い、患者に後遺症は残りませんでしたが、臨床工学技士の慎重な
操作がなければ、重大な事故につながっていました」(VTR終了)
ヒヤリ事例2人工心肺スタート時送血不能人工心肺スタート時送血不能人工心肺スタート時送血不能人工心肺スタート時送血不能
操作者から見える範囲 操作者から見えない部分
内圧確認時の鉗子位置
http://ero01.hp.infoseek.co.jp/hiyari.ppt より引用
ヒヤリ事例2-対処人工心肺スタート時送血不能人工心肺スタート時送血不能人工心肺スタート時送血不能人工心肺スタート時送血不能
送血カニューレ挿入確認時の
鉗子位置の不徹底
�回路内圧計で脈圧を確認する
�鉗子位置を限定
http://ero01.hp.infoseek.co.jp/hiyari.ppt より引用
事故事例3
� 2001年3月:大学病院
� 12歳:女児
� 心房中核欠損症の手術
� 人工心肺装置の誤作動
� フィルタの構造上の問題� フィルタの構造上の問題
� 陰圧吸引補助脱血法
� 判決の主旨:薬事法の適応外のフィルターが必要もな
い箇所に設置されており、このフィルターが閉塞したこ
とが事故原因
� 医師の誤操作とする内部報告 → 学会の実験で否定される
� 問題は証拠隠滅など、診療記録の改ざん
� 装置の作動記録を偽造するよう、臨床工学技士に働き
かける
次回の予告(まとめ)
�前期の授業を通してのまとめを行う。