14
1 知の巡る道:学術的探求による知から社会的・経済的価値として知へ 第一部 知の 4 象限と知の展開に関する 10 の道筋 遠藤 はじめに これまで筆者は、「SE-RM モデル」や「知の 4 象限」、「知の分水嶺」などの名称を付し、研究者の知 的好奇心に導かれた研究が、社会との関係においてどのように変容してゆくかというテーマについて検 討を加えてきた。本稿においては、これらの検討を踏まえ、学術研究の成果としての知がどのように変 容してゆくかを 10 の道筋として示した。そして、その 10 の道筋について、第一部として、その特性を 整理した。なお、第二部としては、それぞれの関係性について具体的な事例に基づき検討を加える予定 である。 1.「知の象限」と 10 の道筋 筆者は、「知の 4 象限」という概念を示し、それぞれの象限における知を、「Ⅰ.経済的価値としての 知」、「Ⅱ.人々に共有・育成される知」、「Ⅲ.学術的探求による知」、「Ⅳ.人々に安心・安全をもたら す知」に区分した。そして、「Ⅲ.学術的探求による知」から、「Ⅰ.経済的価値としての知」、「Ⅱ.人々 に共有・育成される知」、「Ⅳ.人々に安心・安全をもたらす知」に展開する道筋を、それぞれ 25 の区 分を設け、計 10 の道筋とした。以下に示した 10 の道筋は、知の展開の様相、知の担い手、知の社会的 あるいは経済的な価値などにより区分したもので、統一的な基準はない。それぞれの象限における複数 の道筋の区分の考え方は、< >において示した。 . 経済的価値としての知への道 a. フォーマルな知の交換により経済的価値を生む道:知的財産化等を通した知の価値化 b. インフォーマルな知の交換により価値を生む道:よりオープンな形態による知の移転 c. 知の担い手自身が価値を造る道:大学、あるいは教員自身による知の転換 <区分の基準:経済的価値に向けた知の展開の様態の違い、および展開の担い手の違いによる区分> . 人々に共有・育成される知への道 a. 人々により担われ育まれる道:社会の人々における知の広がりのための知の伝達 b. 知の担い手を育むための道:大学における教育をとおした知の伝達 <区分の基準:知の展開が、学術研究の領域を越えて行われるか、領域内で行われるかの違いによる区 分> . 人々に安心・安全をもたらす知への道 a. 人々を守るため構築される道:規制的政策形成への知の利用 b. 破壊のため・破壊から守るため構築される道:軍事目的の知の利用 c. 人々を守るために閉じられる道:安全保障目的の知の抑制 d. 社会からの要請により閉じられる道:社会の価値観・倫理観による知の抑制 e. 人々を救うために築かれる道:天災・人災から救うための知の利用

知の巡る道:学術的探求による知から社会的・経済的価値とし ...endostr.la.coocan.jp/sci-ron.2012.pdf · 2012. 5. 27. · 1 知の巡る道:学術的探求による知から社会的・経済的価値として知へ

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1

知の巡る道:学術的探求による知から社会的・経済的価値として知へ

第一部 知の 4象限と知の展開に関する 10の道筋

遠藤 悟

はじめに

これまで筆者は、「SE-RM モデル」や「知の 4 象限」、「知の分水嶺」などの名称を付し、研究者の知

的好奇心に導かれた研究が、社会との関係においてどのように変容してゆくかというテーマについて検

討を加えてきた。本稿においては、これらの検討を踏まえ、学術研究の成果としての知がどのように変

容してゆくかを 10 の道筋として示した。そして、その 10 の道筋について、第一部として、その特性を

整理した。なお、第二部としては、それぞれの関係性について具体的な事例に基づき検討を加える予定

である。

1.「知の象限」と 10の道筋

筆者は、「知の 4 象限」という概念を示し、それぞれの象限における知を、「Ⅰ.経済的価値としての

知」、「Ⅱ.人々に共有・育成される知」、「Ⅲ.学術的探求による知」、「Ⅳ.人々に安心・安全をもたら

す知」に区分した。そして、「Ⅲ.学術的探求による知」から、「Ⅰ.経済的価値としての知」、「Ⅱ.人々

に共有・育成される知」、「Ⅳ.人々に安心・安全をもたらす知」に展開する道筋を、それぞれ 2~5の区

分を設け、計 10 の道筋とした。以下に示した 10 の道筋は、知の展開の様相、知の担い手、知の社会的

あるいは経済的な価値などにより区分したもので、統一的な基準はない。それぞれの象限における複数

の道筋の区分の考え方は、< >において示した。

Ⅰ. 経済的価値としての知への道

Ⅰa. フォーマルな知の交換により経済的価値を生む道:知的財産化等を通した知の価値化

Ⅰb. インフォーマルな知の交換により価値を生む道:よりオープンな形態による知の移転

Ⅰc. 知の担い手自身が価値を造る道:大学、あるいは教員自身による知の転換

<区分の基準:経済的価値に向けた知の展開の様態の違い、および展開の担い手の違いによる区分>

Ⅱ. 人々に共有・育成される知への道

Ⅱa. 人々により担われ育まれる道:社会の人々における知の広がりのための知の伝達

Ⅱb. 知の担い手を育むための道:大学における教育をとおした知の伝達

<区分の基準:知の展開が、学術研究の領域を越えて行われるか、領域内で行われるかの違いによる区

分>

Ⅳ. 人々に安心・安全をもたらす知への道

Ⅳa. 人々を守るため構築される道:規制的政策形成への知の利用

Ⅳb. 破壊のため・破壊から守るため構築される道:軍事目的の知の利用

Ⅳc. 人々を守るために閉じられる道:安全保障目的の知の抑制

Ⅳd. 社会からの要請により閉じられる道:社会の価値観・倫理観による知の抑制

Ⅳe. 人々を救うために築かれる道:天災・人災から救うための知の利用

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2

<区分の基準:知を利用する場合と利用しない場合の違い、および安心・安全の性質が、損害を与える

対象を破壊しようとする場合と損害を与える対象から護ろうとする場合の違いによる区分>

2.知の展開の道筋の特徴

2-1.知の展開の道筋のプロフィールマップ

これまでも、学術研究の成果が、様々な形(特に商業化をとおした製造物やサービス)に転換するプ

ロセスについては、いくつもの概念的枠組みが提示されてきた(パスツールの 4 象限、モード論、死の

谷・ダーウィンの海等)。しかし、本稿においては、学術研究がもたらす価値について、単に技術開発や

イノベーションをとおした経済的な発展に留まらず、人々の科学的知識の増加や安心・安全の向上とい

った、幅広い対象を扱うこととした。このため、様々な知の展開が想定されるため、この展開を示す 10

の道筋について、プロフィールマップを描くこととした。プロフィールマップとは、道筋について高度

を縦軸に、距離を横軸において示すものであるが、本稿で示す 10の道筋は、それぞれ価値が異なるとと

もに、それらの価値に至るプロセスや時間も異なる。従って、本来のプロフィールマップのように高度、

距離、時間といった単純な指標により示すことはできない。そのため、本稿においては知の展開を、1)

学術研究活動による知(探求の対象としての知の嶺:青色の線により描写)、2)学術研究による知の、

社会的・経済的価値への転換(知の分水嶺または知の谷間:紫色の囲みにより描写)、3)社会的・経済

的価値のための知の展開(赤線により描写)、4)社会的・経済的成果(緑色の囲みおよび矢印により描

写)のそれぞれに区分し、それぞれの区分における(本来のプロフィールマップにおける高度、距離に

代わる)属性を記した。

2-2.10の道筋の属性の定義づけ

それぞれの道筋のプロフィールマップは、知の展開を視覚的に表現したものであるが、それだけでは、

それぞれの道筋における様々な特性を十分に表現しきれるものではない。このためプロフィールマップ

に加え、それぞれの道筋についての簡単な説明を加えたうえで、プロフィールマップの1)学術研究活

動による知、2)学術研究による知の、社会的・経済的価値への転換、3)社会的・経済的価値のため

の知の展開、4)社会的・経済的成果、の各区分について、様態、価値、指標、政策的誘因、知の転換

における障壁、という観点からそれぞれの属性を記した。

様態:各区分における知の様態

価値:各区分(「2)学術研究による知の、社会的・経済的価値への転換」を除く)における知の価値

指標:各区分における価値を測定するための指標の例

政策的誘因:各区分(「4)社会的・経済的成果」を除く)における価値を高めるための政策的誘因

知の転換における障壁:「2)学術研究による知の、社会的・経済的価値への転換」を阻害する要因

さらに、それぞれの道筋の枠の下段には、「知の連鎖の形態」の項目を設けた。それぞれの道筋におけ

る知の展開は、学術研究成果としの知から、社会的・経済的価値としての知へと展開するが、その結果

は、社会における学術研究活動に対する信頼や期待の高まりとなり、学術研究活動に対して公的に支援

を行う根拠となるようなポジティブな連関が成立することが想定される。また、時には、これとは逆の

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3

ネガティブな連関が成立することも考えられる。これらの連関について、本稿においては、「知の連鎖」

とし、その形態について簡単に記した(ネガティブな連関については、< >内に記した)。

3.10の道筋のプロフィールと特徴

以下においては、上述の考え方に基づき、10 の道筋にかかるそれぞれのプロフィールマップを描き、

特徴を記した。

Ⅰ. 経済的価値としての知への道

Ⅰa. フォーマルな知の交換により経済的価値を生む道:知的財産化等を通した知の価値化

学術的卓越性

科学的知識と製品・

サービス化可能性の

双方の価値

学術研究活動 企業等による研究開発活動

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

製品・サービス等実用化・商業化知の転換点

<知財化>

商業的価値

一般的な研究成果の知的財産化をとおした産業化の道筋である。社会的・経済的価値に向けた知識の

展開は、特許出願数等、数値化しやすい部分も多く、これまでも科学技術に関する多くの研究面、政策

面の検討が加えられてきた展開の形態と言える。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 知的財産化 企業等による研究

開発活動

製品・サービス

価値 学術的卓越性(ピ

アレビュー等によ

る) -

製品化やサービス

の提供の可能性

企業の利潤、国家

の競争力強化、経

済活性化による福

祉の向上

指標の例 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

特許申請数等 特許取得数、ライ

センシング数、試

作品製作の状況等

様々な経済効果に

関する指標

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

知的財産政策(バ

イ‐ドール法を含

む)

様々な産業政策、

研究開発税額控除 -

知の転換における

障壁 -

学術的知識と知的

財産化の乖離 - -

知の連鎖の形態:学術的知識→知的財産→製品・サービスの創造→経済的発展→科学研究の効用の認識

の拡大→科学研究活動への支援<科学研究の効用が認識されない場合は支援が低下>

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4

Ⅰb. インフォーマルな知の交換により価値を生む道:よりオープンな形態による知の移転

学術的卓越性

製品・サービス

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

知の転換点

<共同研究等>

科学的知識と製品・

サービス化可能性の

双方の価値

商業的価値

実用化・商業化

学術研究活動 企業等による研究開発活動

知的財産化をとおした知識の展開以外の様々なケースを想定した道筋である。知識が、大学の研究者

と企業関係者との間で、共同研究や人材の交流など様々なインフォーマルな形で交換される場合に加え、

インターネット上でオープンに流通される知識(オープンソース等を含む)も対象としている。また、「暗

黙知」として定義されるようなケースも含まれる。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 共同研究を含む

様々な知の交換

企業等による研究

開発活動

製品・サービス

価値 学術的卓越性

製品化やサービス

の提供の可能性

企業の利潤、国家

の競争力強化、経

済活性化による福

祉の向上

指標の例 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

多様な形態による

インフォーマルな

知識の伝達機会

(Ⅰa.に比べ、指標

の設定が曖昧)

インフォーマルに

伝達された知識に

よる研究開発機会

(Ⅰa.に比べ、指標

の設定が曖昧)

様々な経済効果に

関する指標

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

研究成果公開促進

(オープンアクセ

ス化を含む)、共同

研究支援( SBIR

等)、ベンチャー資

金投資促進、研究

開発税制控除

オープンイノベー

ション政策、小企

業向け産業政策、

ベンチャー資本育

成政策等

知の転換における

障壁

学術的知識と企業

が求める知識の乖

離、誘因の欠如(経

済的利益の不明確

性)

- -

知の連鎖の形態:学術的知識→インフォーマルな知識の移転(オープン化された知の移転など)→企業

活動の活発化→科学研究の効用の期待→科学研究活動への資金提供(共同研究等直接的支援)<企業活

動の活発化に結びつかない場合、企業からの資金提供が停滞>

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5

Ⅰc. 知の担い手自身が価値を造る道:大学、あるいは教員自身による知の転換

製品・サービス学術的卓越性

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

知の転換点<起業>

学術研究活動 大学、教員による研究開発活動

科学的知識と製品・

サービス化可能性の

双方の価値

商業的価値

大学自身あるいは大学教員自身が、研究成果を直接商業化する道筋である。大学発起業も、一般的に

は大学外の者がベンチャー企業を設立しており、教員自身がベンチャー企業経営責任者に就くことは多

くない。このため、必ずしもこの道筋はモデルとして一般的ではないが、利益相反を含む大学における

研究成果の公的性格と、企業化の関係の検討を行うため、この道筋を提示した。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 大学による直接的

なベンチャー企業

の設置、教員自身

による起業

時に大学と一体化

した企業による研

究開発活動

製品・サービス

価値 学術的卓越性、製

品化・サービスの

提供可能性

製品化・サービス

の提供可能性

大学の財政の改

善、教員個人の利

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

特許取得可能性、

起業に向けた研究

成果の秘匿(ネガ

ティブな価値のア

ウトプット)等

大学・教員が、自

ら起業する目的で

保有する知的財産

数等

大学発ベンチャー

数等(教員が経営

責任を持つ役員に

就任している場合

等)

経済的効果(大学、

教員自身の経済活

動をとおした効

果)

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

大学に対する規制

緩和を含む経済的

誘因の付与

研究資金の使用に

関する規定、利益

相反規程等(学術

研究の公共的性格

の観点による規制

的政策)

知の転換における

障壁

大学・研究者のミ

ッションと起業の

間の相反する関

係、社会から大

学・研究者に向け

た信頼の低下

- -

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6

知の連鎖の形態:(非実用的)学術的知識→(実用的)学術的知識→大学、教員自身の経済的利益→学術

研究活動の活発化<大学や教員の経済的利益が公共の利益と相反する場合には、活動が低下>

Ⅱ. 人々に共有・育成される知の地への道

Ⅱa. 人々により担われ育まれる道:社会の人々における知の広がりのための知の伝達

科学的知識の向上学術的卓越性

人々が獲得した

知識

学術研究活動 人々の科学的知識の獲得

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

知の転換点<知の伝達>

人々への知識の

向上

学術研究の成果としての科学的知識が人々に広まる道筋である。近年の米国の科学政策のひとつの大

きなテーマは、一般の人々の科学技術工学数学リテラシーの向上であるが、この道筋は、そのための政

策を含む様々な知識の移転・展開があることを想定している。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 教養書の出版、講

演会の開催、メス

メディアによる報

道、ウェブにおけ

る成果の公表

教養書の購入、講

演会への参加、メ

ディアの視聴、ウ

ェブの閲覧

人々の科学的知識

の向上

価値 学術的卓越性

人々の科学的知識

の獲得

科学的な面におけ

る市民としての能

力の向上、科学へ

の信頼の向上

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

人々に向け公表さ

れる研究成果(教

養書、講演会、マ

スメディア、ウェ

ブ等)

教養書、講演会、

マスメディア、ウ

ェブ等をとおし、

人々が理解を高め

た科学的知識の量

人々の科学知識の

向上、高技能人材

の輩出、人々の科

学への支援

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備、

ファンディングを

と お し た 誘 因

( NSF broader

impact等)

研究成果公開促進

(オープンアクセ

ス化を含む)、科学

技術工学数学教育

政策、アウトリー

チ政策

アウトリーチ政策

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7

知の転換における

障壁

人々への知識の伝

達に関する、研究

者における人々と

の認識の乖離や学

術研究活動との相

反(時間配分など)

- -

知の連鎖の形態:教養書、講演会、マスメディア、ウェブ等をとおした知識の広がり→科学への関心の

高まり→社会経済活動への波及(労働力の質の向上、健康の向上、安全に対する判断等)→科学研究活

動への支持<人々の関心の低下による科学研究活動への支持の低下>

Ⅱb. 知の担い手を育むための道:大学における教育をとおした知の伝達

学術的卓越性

学業成績・研究業績

学術研究活動 学生による科目履修・研究実施

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

新たな学術研究活動大学での研究継続

知の転換点

<授業・実験等>

学術的知識の探求

高技能人材の供給社会への人材輩出

高技能人材の輩出

優れた研究者の輩出

Ⅱa. においては、大学外における知の伝達の道筋を示したが、Ⅱb. の道筋は大学における教育をとお

した場合を示している。この知の伝達の目的は、研究者の育成(アカデミックコミュニティにおける人

材の育成)と高技能人材の育成(社会における人材の育成)の二通りが想定される。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 授業、実験等を通

した知識の伝達、

研究実施を通した

知識の創造への参

学生の学力、研究

能力向上

研究人材の輩出、

高技能人材の輩出

価値 学術的卓越性 - 学業成績 人材の活躍

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

(教員の)学術論

文数、学術研究発

表数、様々な教育

活動に関するアウ

トプット等

様々な教育研究の

インプット面の指

標(インスティチ

ューショナルリサ

ーチによる教育イ

ンプットや学生が

受けた実験等の教

員の量)

様々な教育研究の

アウトカム面の指

標(インスティチ

ューショナルリサ

ーチによる教育ア

ウトカムや学生の

論文発表数等)

研究人材の輩出、

高技能人材の輩出

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

高等教育政策全般

(米国の場合は連

邦政府の役割は限

各種高等教育政

策、学術研究政策

における人材政策

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8

定的)、研究者育成

目的の研究開発資

金配分(若手プロ

グラム、フェロー

シップ等)

知の転換における

障壁

教員と学生の意識

の乖離、学生の知

識の吸収と研究の

生産の関係のイン

バランス

- -

知の連鎖の形態:様々な教育アウトカム→教育を受ける者の能力の向上→①社会経済活動への波及(労

働力の質の向上、健康の向上、安全に対する判断等)、および②科学研究活動人材の供給<人々の能力向

上に結びつかない場合の教育への期待の低下>

Ⅳ. 人々に安心・安全をもたらす知の地への道

Ⅳa. 人々を守るため構築される道:規制的政策形成への知の利用

学術研究活動

人々の安心・安全学術的卓越性

規制的政策形成へ

の有効性

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

知の転換規制的政策の策定

規制的政策行政機関等による調査研究・評価

規制的政策による

安心・安全の向上

安全・安心のための知の社会的・経済的価値への展開は、知が転換しない場合を含め様々なケースが

想定されるが、この道筋は科学的知見が、主に行政による規制的政策形成に反映され、人々の安心・安

全が向上するケースを想定している。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 学術的知識から規

制的政策に必要な

知識への転換

規制的政策の形成 規制的政策をとお

した人々の保護

価値 学術的卓越性

規制的政策形成へ

の有効性

規制的政策により

保護される人々の

安心・安全の向上

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

リスクに関する学

術研究成果(学術

論文、学術研究発

表に加え、規制的

規制的政策決定に

反映することので

きた、学術研究成

果(政策形成の根

規制的政策の成果

としての生命や財

産に対するリスク

の低減

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9

政策担当官庁の依

頼に対応した成

果:学術論文、報

告書等)

拠となった提言

等)

政策的誘因 学術研究投資(特

定の規制的政策目

的に沿った研究支

援)

ガイドライン構築

(科学的公正性を

含む)、新たな知見

に関する環境健康

等への影響に関す

る研究促進、規制

的政策に関する委

員会等設置(見落

とされがちな意見

の抽出)、利益相反

規程の策定、告発

者の保護等

規制的政策形成の

ための、科学的知

識と、社会的・経

済的要因との関係

等に関する行政的

手続き -

知の転換における

障壁

学術的知識と安

心・安全のための

知識の乖離、社会

の科学に対する過

度の信頼、研究者

の無関心、学術研

究活動の分野の狭

隘性(分野別のア

カデミックコミュ

ニティの閉鎖性)

- -

知の連鎖の形態:規制的政策決定における知識の利用→効果的な規制的政策の策定→安心・安全の向上

→科学研究活動に対する信頼の向上<科学的知識が、規制的政策の向上に結びつかないことによる科学

研究活動への期待・支援の低下>

Ⅳb. 破壊のため・破壊から守るため構築される道:軍事目的の知の利用

学術的価値

破壊・防衛能力を向

上させる科学的知識

機密研究扱い 国防研究開発活動

兵器等

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

知の転換点

学術研究活動

敵対する対象の破壊、

敵対する対象からの

防衛

米国の研究開発活動の中で大きな部分を占める国防研究を主な対象とした道筋である。なお、知の転

換における機密研究扱い等の課題については、次の「Ⅳc. 人々を守るために閉じられる道:安全保障目

的の知の抑制」において検討を加えることとした。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 学術的性格の知識 国防研究開発活動 軍事的能力の向上

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10

から軍事的性格の

知識への転換

価値 学術的卓越性

破壊・防衛能力を

向上させる科学的

知識

破壊・防衛能力の

向上

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

軍事関連政府機

関・企業からの依

頼に基づく研究成

果(多くの場合は

非公表のため、指

標の設定が困難)

軍事研究開発に利

用された大学発の

知識の利用(国防

省との研究契約に

基づく試作品の製

造等)

軍事能力の向上

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

国防研究開発政

策、DARPA、デュ

アルユース技術商

業化政策

国防研究開発支援

知の転換における

障壁

敵対する国家・集

団等における破壊

能力の向上、軍事

能力の向上に伴う

国際的な緊張関係

の高まり、軍事研

究の民生研究の相

反する性格(両者

の財政負担のバラ

ンス、科学的知識

に対する抑制と公

開という異なる性

格等)

- -

知の連鎖の形態:兵器開発などの軍事的活動への知識の利用→①国家の軍事的能力の向上、および②民

生技術の発展→国防科学研究投資の正当化<軍事的目的への知識の利用における非合理性(緊張の増大、

過大な財政負担、民生研究への効果の少なさ等)の認識の広がりによる国防研究開発活動への支持の低

下>

Ⅳc. 人々を守るために閉じられる道:安全保障目的の知の抑制

学術的卓越性

敵対する勢力の軍事

的能力

学術研究活動

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

敵対する勢力の兵器の非製造

知の転換点<抑制>

輸出貿易管理

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安全保障を目的とした研究活動の制限、あるいは輸出貿易管理、入国管理をとおした敵対する国、勢

力への知識の流出の防止等に関する道筋である。近年は、従来の国防研究における機密扱いの適用に留

まらず、デュアルユーステクノロジーを含む新たな学術研究成果に対する知識の抑制に関する課題も提

起されている。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 知識の抑制 知識の展開が行わ

れない状態

敵対する勢力にお

ける軍事的知識

価値 学術的卓越性

抑制された知識 敵対する勢力の軍

事的能力を向上さ

せないこと(同時

に、学術研究活動

の低下、社会経済

的に価値のある知

識の不利用といっ

た否定的価値も存

在)

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

輸出貿易管理制度

等により抑制され

る研究成果

安全保障目的によ

り抑制された知識

敵対する勢力の軍

事的能力を向上さ

せないこと

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

安全保障輸出貿易

管理政策、研究資

金配分停止、研究

成果公表禁止

(なし)

知の転換における

障壁 -

(知の転換が行わ

れないことが目

的)

- -

知の連鎖の形態:安全保障目的により抑制された知識→①敵対者の知識の不利用による安全の向上、お

よび②知識の不利用による社会的・経済的価値の低下→安全面の価値と社会的・経済的価値とのバラン

スの観点における安全保障目的のための知識の抑制の是非の検討

Ⅳd. 社会からの要請により閉じられる道:社会の価値観・倫理観による知の抑制

学術的卓越性

特定の人々の価値観・

倫理観における安心

学術研究活動

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

特定の人々の価値観・倫理観に反する研究の抑制

知の転換点<抑制>

人々の価値観・倫理観

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時に、アカデミックコミュニティにおける科学の価値に反対する考えを持つ人々により、学術研究活

動に支障が生じ、また、学術研究成果の展開が妨げられることがある。その内容は、倫理観によるもの

(例えばヒト胚性幹細胞研究)、宗教観によるもの(例えばインテリジェントデザイン)などが想定され

るが、他にも人々による特定の研究への反対(実験動物を用いる研究等)や議会における特定の研究に

対する資金配分の停止など、知の展開が抑制される例が見られる。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 知識の展開の抑制 知識の展開が行わ

れない状態

特定の事柄に関す

る知識が存在しな

い状態

価値 学術的卓越性

学術研究そのもの

が行われないこと

により知識が存在

しないこと

特定の価値観が保

たれた社会の状態

(同時に、学術研

究活動の低下、社

会経済的に価値の

ある知識の不利用

といった否定的価

値が存在)

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

特定の事柄に関し

抑制された知識

(抑制された研究

活動の状態)

特定の事柄に関し

知識が存在しない

状態

特定の価値観を持

つ人々における安

心・安全の向上

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

研究開発活動の抑

制(研究資金配分

の停止等)

(なし)

知の転換における

障壁 -

(知の転換が行わ

れないことが目

的)

- -

知の連鎖の形態:特定の研究活動に対する人々の反対→①学術研究活動の停滞、および②一部の人 (々特

定の宗教や動物愛護に関する理念を持つ人々)における精神的安心<研究活動の低下が一般の人々にも

たらす不利益>

備考:この道筋は、特定の価値観を持つ人々において、学術研究そのものが否定すべき対象となること

から、「探求の対象としての知」におけるアカデミックコミュニティによる科学の価値自体も否定される。

このため、例えば政策的誘因においては、特定の研究活動の抑制(研究資金配分の停止等)も見られる。

Ⅳe. 人々を救うために築かれる道:天災・人災から救うための知の利用

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学術的卓越性

科学的知識と安心・

安全にかかる知識の

双方の価値

学術研究活動 公的機関等による研究開発活動

学術的知識の探求 経済的・社会的価値の創造

人々を救うこと施策化知の転換点

救うことのできる生

命や財産

学術研究の成果は、災害から人々を救うためにも利用されるべきである。しかしそのための知の展開

には、その必要性の予測が困難である場合など、他の知の展開と性格が異なる(「Ⅳa.人々を守るために

構築される道:規制的政策形成への知の利用」との間に共通性はあるが、Ⅳa. においては、行政機構が

介在するが、この道筋は、研究者が、その成果を持って人々を直接救う場合を想定しているという意味

で異なるものとしている)。必要性の予測の困難性などのこの道筋の特徴は、時に社会における理解の不

足(例えば研究資金獲得の困難性)という形などでも現れるが、同時に、検証の困難性(災害が生じた

後においてのみ検証される場合も多い)等により、アカデミックコミュニティ内においてその研究の価

値を共有・支持されにくいという面も想定される。

探求の対象として

の知の嶺<青線>

知の転換点(知の分

水嶺・知の谷間)<

紫の囲み>

社会的・経済的価値

のための知の展開

<赤線>

社会的・経済的成果

<緑の矢印>

様態 学術研究活動 学術的知識から、

人々を救うための

実用的知識への転

人々を救うための

様々な知識(災害

予測に利用可能な

情報、防災のため

の技術開発等)

人々を救うこと

(予測を通した災

害の未然の防止、

災害発生後の被害

の軽減等)

価値 学術的卓越性

科学的知識と安

心・安全にかかる

知識の双方の価値

救うことのできる

生命や財産

指標 学術的探求のアウ

トプット指標

学術研究のアウト

カ ム 指 標 / 社 会

的・経済的価値のた

めの知へのインプ

ット指標

社会的・経済的価値

のための知へのア

ウトカム指標(短期

的・直接的指標)

社会的・経済的価値

のための知へのイ

ンパクト指標(長期

的・間接的指標)

学術論文数、学術

研究発表数等

安心・安全に関す

る学術研究成果

(学術論文、学術

研究発表に加え、

社会的・行政的な

要請に対応した成

果)

人々を救うことが

できるための知識

の蓄積

救うことのできた

生命や財産

政策的誘因 学術研究投資、人

材育成を含む研究

活動環境の整備

防災およびリスク

予防研究開発政

策、人々の安心・

安全に関する知識

の向上のためのア

ウトリーチ政策

災害予知、防災関

連政策

知の転換における

障壁 -

学術的知識の持つ

抽象性や理論面の- -

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重視等の性格にお

ける安心・安全面

のため求められる

知識との乖離

知の連鎖の形態:人々を救うことができるための知識の蓄積→天災・人災に関する知識の提供→①人命、

資産の損壊の低減→アカデミックコミュニティにおける関心の高まりと研究活動の活発化<天災・人災

に対する科学の無力な側面の顕在化によるひとびとの科学に対する信頼の低下、科学技術の成果による

人災である場合における人々の当該災害に関連した科学への拒絶>