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- 1 - 初級フランス語におけるスピーキング能力可視化の試み CEFR-J 自己評価、タスク評価、学習ストラテジー調査 1 佐藤 千秋、関 敦彦、伊藤 玲子、川口 裕司 はじめに 第二言語能力が多面的性格を持っていることは多くの研究者が認めるところであ る。したがって、その能力の記述と分析も必然的に多面的なものにならざるを得ない。 本稿では、初級フランス語学習者のスピーキング能力に焦点を定め、いくつかの指 標を用いてスピーキング能力の可視化を試みる。 第二言語習得あるいは外国語学習におけるスピーキング能力の発達に関しては、 1980 年代までは「正確さ、流暢さ」といった側面からの分析が行われ、 1990 年代にな ると「複雑さ」の側面がそこに加わった。現代では「正確さ、流暢さ、複雑さ」の三つの 概念を援用することにより、スピーキング能力を包括的に理解できるのではないかとす る考え方が一般化している 2 。確かにスピーキング能力の実践においては、これら三つ の観点の重要性は明らかであり、本論においても、学習者のスピーキング活動を評 価する際には、上記の観点を勘案した分析を行う。しかしながら、本稿の著者たちは、 Peter LEVELT の発出モデルにおける Conceptualiser のようなものの役割を想定し、学 習者における「言語化される前の潜在的なスピーキング能力」を把握することも、スピ ーキング能力の理解には必要であると考える。このため本稿では、CEFR-J 3 を指標と するスピーキング能力に関する自己評価アンケートを実施した。また、学習者がスピ ーキング活動をどのように認知し、学習内容をどのように自己管理し、スピーキング能 力を向上させるためにどのような取り組み行っているかも重要であると考え、スピーキ ングに関する学習ストラテジーの調査も行った。このように、本研究では三つの指標を 用いて、日本人の初級フランス語学習者におけるスピーキング能力を可視化しようと 試みる。三つの指標はスピーキング活動における異なる側面に関連するものと考える。 1 本研究は JSPS 科研費 26284076 E ラーニングに基づく英語とフランス語の学習行動の可視 化の試み」、基盤研究 B 2014-2016 年度、代表者 吉冨朝子の助成を受けた。また本稿は 2015 11 29 日に開催された外国語教育学会の第 19 回大会 ( 於東京外国語大学 ) における同名 の研究発表に基づいている。 2 HOUSEN and KUIKEN (2009) p.461. 3 CEFR-J の概要については投野 (2013) を参照。 © Flambeau 41 (2015) pp.165–183. Revue annuelle de la section française, Université des Langues Étrangères de Tokyo

初級フランス語におけるスピーキング能力可視化の …6 1 月に実施できなかった数名については5 月に実施した。後述するスピーキングタスク評価と学

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初級フランス語におけるスピーキング能力可視化の試み

-CEFR-J 自己評価、タスク評価、学習ストラテジー調査―1

佐藤 千秋、関 敦彦、伊藤 玲子、川口 裕司

はじめに

第二言語能力が多面的性格を持っていることは多くの研究者が認めるところであ

る。したがって、その能力の記述と分析も必然的に多面的なものにならざるを得ない。

本稿では、初級フランス語学習者のスピーキング能力に焦点を定め、いくつかの指

標を用いてスピーキング能力の可視化を試みる。

第二言語習得あるいは外国語学習におけるスピーキング能力の発達に関しては、

1980 年代までは「正確さ、流暢さ」といった側面からの分析が行われ、1990 年代にな

ると「複雑さ」の側面がそこに加わった。現代では「正確さ、流暢さ、複雑さ」の三つの

概念を援用することにより、スピーキング能力を包括的に理解できるのではないかとす

る考え方が一般化している2。確かにスピーキング能力の実践においては、これら三つ

の観点の重要性は明らかであり、本論においても、学習者のスピーキング活動を評

価する際には、上記の観点を勘案した分析を行う。しかしながら、本稿の著者たちは、

Peter LEVELTの発出モデルにおける Conceptualiser のようなものの役割を想定し、学

習者における「言語化される前の潜在的なスピーキング能力」を把握することも、スピ

ーキング能力の理解には必要であると考える。このため本稿では、CEFR-J3 を指標と

するスピーキング能力に関する自己評価アンケートを実施した。また、学習者がスピ

ーキング活動をどのように認知し、学習内容をどのように自己管理し、スピーキング能

力を向上させるためにどのような取り組み行っているかも重要であると考え、スピーキ

ングに関する学習ストラテジーの調査も行った。このように、本研究では三つの指標を

用いて、日本人の初級フランス語学習者におけるスピーキング能力を可視化しようと

試みる。三つの指標はスピーキング活動における異なる側面に関連するものと考える。

1 本研究は JSPS 科研費 26284076 「E ラーニングに基づく英語とフランス語の学習行動の可視

化の試み」、基盤研究 B、2014-2016年度、代表者 吉冨朝子の助成を受けた。また本稿は 2015

年 11 月 29 日に開催された外国語教育学会の第 19 回大会 (於東京外国語大学 )における同名

の研究発表に基づいている。 2 HOUSEN and KUIKEN (2009) p.461. 3 CEFR-J の概要については投野 (2013)を参照。

© Flambeau 41 (2015) pp.165–183.

Revue annuelle de la sect ion française, Universi té des Langues Étrangères de Tokyo

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すなわち、①CEFR-J を用いた自己評価は、言語化以前の潜在的な話す能力であり、

②スピーキングタスク評価は、実際に言語化されたスピーキング能力であり、③スピ-

キングに関する学習ストラテジーの調査は、スピーキング活動を自己管理する能力で

ある。もっともこれら三つの異なる指標によって、スピーキング能力の多面性がどの程

度まで明らかになるのかは不明である。今後の研究課題としたい。

フランス語のスピーキング能力に関する研究は、CAROLL (1972)等の初期の研究

に始まり、最近では TOWELL et al. (1996)や MACINTYRE et al. (2002)がある。しかしな

がら欧米のこうした研究は、上級学習者のフランス語学習に関する研究である。日本人

フランス語学習者についての研究は、学習ストラテジー分析としては、原田 (1998)と大

岩 (2006)があり、初級学習者の言語能力を扱った川口・杉山(2014)や流暢さに関す

る KOGA and SUGIYAMA(2015)等があるものの、先行研究の数は圧倒的に少なく、

ほぼ未開の研究領域と言って差し支えないような現状である。

1. CEFR-J 準拠の言語能力評価分析

1.1.スピーキング能力に関するアンケート調査

スピーキング能力の伝統的な定義としては、たとえば LADO のものがある。LADO は

スピーキング能力に二重の意味を与えている。一つは、生活場面で自分の考えを述

べ、行為や状況を報告し説明するといった、いわばスピーキング能力の社会言語学

的、語用論的側面における意味であり、もう一つは、母語話者として普通と思われる

話し方で、発音、韻律、文法構造、語彙を運用するといった、スピーキング能力の言

語運用的側面での意味である4。本稿で利用した CEFR-Jの枠組は、「行動指向アプ

ローチをとり、言語使用者が社会的文脈において成し遂げたい目的達成のために必

要となる言語コミュニケーション能力と一般的能力が用いられることを明らかにし、社

会的な存在として持つべき言語能力育成のための包括的で一貫性のある共通参照

枠を提供している。5」 この意味において CEFR-J の枠組は、前者のスピーキング能

力を中心に記述されていると言えよう。

東京外国語大学では、在学生が学習している各言語の能力レベルを知るために、

あるいは留学前後における言語能力の変化を自己評価し、自己管理するために、

2012 年度より CEFR-J 準拠のアンケート調査を実施している。本研究ではフランス語

を専攻する 2 年生 26 名に対して、2015 年 1 月にこの CEFR-J 準拠のアンケート調

4 岡 (編 ) (1984) p.192. 5 投野 (2013) p.17.

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査を実施した6。アンケート対象者は表1のとおりである。

表1 CEFR-J 準拠の言語能力評価アンケート対象者

CEFR-J の枠組を利用した言語能力評価では、「聞く、読む、話す(やりとり)、話す

(発表)、書く」の 5 技能について、Pre-A1 レベルから C2 のレベルまで、計 110 個の

CAN-DO リスト形式の言語能力記述文を被験者に提示し、それぞれについて、「1.

全然できない、2.あまりできない、3.ほぼできる、4.できる」の中から、答えを一つを選

択するように指示した。他に、被験者の所属学部、性別、フランス語の学習暦、海外

経験等についての質問も行った。

図1 言語能力評価アンケート(抜粋)

6 1 月に実施できなかった数名については 5 月に実施した。後述するスピーキングタスク評価と学

習ストラテジーのアンケート調査も同じ学生たちに対して実施した。

A 学部 B 学部 合計

男子 1 4 5

女子 11 10 21

合計 12 名 14 名 26 名

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本稿の目的はスピーキング能力の可視化であるため、CEFR-J が対象とする 5 技

能の全てではなく、スピーキング能力に関連がある「話す(やりとり)」と「話す(発表)」

の二技能に関する回答だけを分析した。また、回答を集計した結果、B1 レベルから

C2 レベルの CAN-DO リストに関しては、ほとんどの学生が「1.全然できない」か、それ

に近い回答を選んでいたため今回の分析からは除外し、A1 レベルと A2 レベルの回

答のみを分析の対象にした。このことは A1 および A2 レベルがフランス語を専攻する

大学 2 年生の学習到達目標レベルであると考えられる。以前に同大学の 1 年生に

ついて、同形式のアンケート調査を行ったところ、A1 レベルはクリアしていたものの、

A2 はまだ到達できていなかったという結果を得た7。このことからも 2 年生での到達レ

ベルが A2 レベルに想定されるという今回の結果は十分納得できる。

1.2.CAN-DO リスト別のクラスター分析

「話す(やりとり)」と「話す(発表 )」の A1 レベルと A2 レベルの回答をクラスター分析

(平方ユークリッド距離、ウォード法 )したところ、三つの異なるグループに分類すること

ができた。

図2 レベル別のクラスター分析

7 川口、杉山 (2014) p.138 と p.147.

グループ2

グループ1

グループ3

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グループ 1 は比較的自己評価が高い CAN-DO リストから構成される。すなわち学習

者はディスクリプタをほぼ実現できると考えているのである。グループ 1 には「やりとり

A1」と「発表 A1」のみが含まれる。これに対してグループ 3 は、比較的自己評価が低

い CAN-DO リストから成り、「やりとり A2」と「発表 A2」だけが集まった。最後のグルー

プ 2 は、グループ 1 とグループ 3 の中間に位置し、A1 と A2 両方の CAN-DO リスト

が混在している。当然のことながら、A1レベルの CAN-DO リストの方が A2レベルのそ

れよりも自己評価の値が高い。

1.3.学生別のクラスター分析

次に、自己評価の結果を学生別にクラスター分析(平方ユークリッド距離、ウォード

法)したところ、二つの学生グループに分類できた(図3)。両グループにはそれぞれ

13 名の学生が含まれる。グループ1は CAN-DO リストの自己評価が低い学生たちで

あり、グループ2は CAN-DO リストの自己評価が高い学生たちであった。グループ間

の自己評価の差に意味があるかを検定したところ有意差は得られなかった。また、所

属学部、性別、海外経験 8による違いも自己評価の値に影響を与えないことがわかっ

た。

図3 学生別のクラスター分析

8 この場合の海外経験はフランス語圏への留学ではない。

グループ1

グループ2

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2.スピーキングタスクの評価

CEFR-J 準拠の評価アンケートによると、2 年生たちは A1 レベルの「話す(やりとり)」

と「話す(発表)」の CAN-DO リストでは自己評価の値が高くなり、A2 レベルの質問で

は相対的に自己評価の値が低くなった。また自己評価の結果に所属学部、性別、

海外経験は影響を及ぼさないこともわかった。ここではその結果を踏まえ、スピーキン

グ能力に関する自己評価が、どれくらい実際のスピーキング能力を反映しているかを

確かめることにする。そのため 26 名の学生にスピーキングタスクを課した。

2.1.スピーキングタスク

スピーキングタスクは 2015 年 5 月 22 日に実施した。タスクは e-learning システム

の Moodle 上で与えられ、回答はローカル PC の録音機能を用いて録音した。スピー

キング能力は個人差が大きい可能性があるため、タスクに制限時間は設けなかった。

各人がそれぞれ自分のペースで回答できるようにした。様々な先行研究から、学習者

はとくに話す活動と聞く活動において学習の不安を感じることが多いことがわかって

いる 9。本研究でもその点を考慮し、従来のインタビュー形式による調査を行わず、

Moodle を利用したスピーキングタスクを実施した。

タスクについて具体例をいくつか説明しておく。2 年生たちに課したタスクはいずれ

も CEFR-J における A1 レベルと A2 レベルの「話す(発表)」と「話す(やりとり)」10 に

関するタスクである。タスクは全部で 21 題あり、A1 レベルが 10 題、A2 レベルが 11

題であった11。

タスク 1 「以下の指示文を読んで、フランス語で答えてください。自分の家族の中

の一人について、年齢とすんでいる場所を説明してください。」は、A1 レベルの「話す

(発表)」のタスクである。

タスク 9 「音声を再生し、その内容についてフランス語で答えてください。Qu’est-

ce que tu manges le matin? (朝は何を食べますか?)」は A1 レベルの「話す(やりと

り)」のタスクと言える。

タスク 8 「あなたの毎週月曜日の予定は、以下の通りです。8 時 起床、9 時 大

学へ行く、12 時 お昼を大学で食べる、15 時 帰宅する、18 時 夕食を食べる、19

時~21 時 勉強する、23 時 就寝」。この課題は A2 レベルの「話す(発表)」である。

9 たとえば八島 (2004) p.34. 10 Moodle によるタスクであるため、厳密な意味での「やりとり」とは言えないが、Moodle の質問文

を聞いて、それに答える形式は「やりとり」のシュミレーションと考えられる。 11 タスクは以下の参考書から直接に引用するか、あるいは修正して作成した。Martine CORSAIN ,

Eliane GRANDET, Marie-Louise PARIZET, Activités pour le Cadre européen commun de référence,

Niveau A1 , CLÉ International, 2005; Marie-Louise PARIZET, Éliane GRANDET, Martine CORSAIN ,

Activités pour le Cadre européen commun de référence, Niveau A2 , CLÉ International, 2005.

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タスク 15 「右の画像を見てください。あなたは、道

を尋ねられました。交番までの行き方を説明してくだ

さい。」 この課題も A2 レベルの「話す(発表)」であ

る。

このように今回のタスクでは、あるテーマについて

自分の意見を述べるタスクや、図や資料を見ながら

質問されたことに返答するタスクが中心になってい

る。

26 名のタスクの回答は、言語学を専門とするフラ

ンス語ネイティブ話者二名によって評価された。冒頭

に述べたようにスピーキング能力の評価において、

「正確さ、流暢さ、複雑さ」の概念に基づきながら、

様々に測定法が開発されているが、測定の信頼性と有効性には議論の余地があり、

まだ模範とすべきモデルはないように思われる12。ここでは五つの評価観点と四段階

の尺度を採用した。五つの評価観点は、それぞれ 1.語彙的適切性、2.流暢さ、3.

文法的適切性、4.発音、5.全体的評価、であり、四段階尺度は、3.Très bien(とて

もよい)、2.Bien(よい)、1.Passable(あまりよくない)、0.Mauvais(わるい)、とした。

二人の評価者は、それぞれの言語規範に照らして評価を行った。両氏のスピーキン

グタスクの評価はどれくらい一致しているのであろうか。Cronbach の信頼度係数を用

いて一致度を測定したところ、以下のような結果が得られた。

α係数は、文法的適切性 0.78、流暢さ 0.754、語彙的適切性 0.734 の順に、0.7 を

超えており、比較的高い一致度が出たと言える。これに対して、発音の観点では

0.582 と低い結果が出た。全体的な評価も 0.668 とそれほど高くない値が出た。

英語を対象とする先行研究であるため、その結果がフランス語に同じように当ては

まるかどうか分からないが、いくつかの研究によれば、スピーキング実践の評価では、

とくに語彙と文法がレベル決定に際して重要な役割を果たすことがわかっている 13。

両評価者の結果はそうした傾向を支持するものと言えよう。以下では一致度係数の

12 HOUSEN and KUIKEN (2009) p.464. 13 ADAMS (1980), HENDRICKS et al. (1980), IWASHITA et al. (2008)等を参照されたい。

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結果を踏まえ、両評価者の間で一致度が比較的高かった三つの観点、語彙的適切

性、流暢さ、文法的適切性、だけを分析する。

2.2.学生別のクラスター分析

最初にクラスター分析(平方ユークリッド距離、ウォード法)を利用して学生をグル

ープ分けしたところ、図3のように二つのグループになった。

図4 学生別のクラスター分析

グループ1はスピーキングタスクにおいて比較的高い評価を得たグループであり、

グループ2は評価が相対的に低いグループである。各グループにおける語彙的適切

性、流暢さ、文法的適切性の三つの観点について、全タスクの平均点を算出すると、

グループ 1 の平均点は 2.34、グループ 2 の平均点は 2.10 であった。それぞれのグル

ープに属する学生数は大きく異なっているものの、グループ 1 とグループ 2 の平均値

の差は有意であった(t=2.66, n=24, p=.014)。

ところで先にも触れたように、二人のネイティブ話者がスピーキングタスクを評価をし

たところ、発音の観点において両評価者間の一致度が低くなった。とくに評価に差が

出たのは全てA1レベルのタスク 2、6、7であった。これらのタスクは、Aujourd’hui quel

jour sommes-nous ? (今日は何曜日ですか?)や C’est quelle couleur ? (これは何

グループ1

グループ2

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色ですか?)等であり、回答は(C’est) vendredi.(金曜日です。)、(C’est) rouge.(赤

です。)のように、一語あるいはごく簡潔に答えることができるタスクであった。今回の

二人の評価者は、フランス中西部のトゥールと南仏のエクス・アン・プロヴァンス近郊の

出身であり、お互いの出身地が離れており、異なる発音規範を持っていた可能性が

ある。とくに短い回答について評価を下さなければならない場合、少ないデータを基

に判断をせねばならず、各自の発音規範に左右されやすくなり、評価に差が出てし

まったのではないかと思われる。

3.スピーキング学習ストラテジー分析

これまで見たように、CEFR-J準拠の言語能力評価アンケートの結果、26名の学生

はちょうど 13 名ずつの学生からなる二つのグループに分かれた。グループ 1 は CAN-

DO リストの自己評価が相対的に低く、グループ 2 は自己評価が比較的高い学生た

ちであった。所属学部、性別、海外経験等による違いがグループ間の自己評価の差

に影響を与えないことが確認できた。一方、26 名に対してスピーキングタスクを課して、

二名のネイティヴ話者が彼らの実際のスピーキング能力について、「語彙的適切性、

流暢さ、文法的適切性、発音、全体的評価」という五つの観点から評価したところ、

評価者の間で「発音」と「全体的な評価」に差がみられた。そのため評価の一致度が

高かった、「語彙的適切性、流暢さ、文法的適切性」の三つの観点から分析した結

果、26 名の学生が 23 名と 3 名から成る二つのグループに分かれ、そのグループの

間には有意な差が見られた。

このように、CEFR-J 準拠のアンケート結果がスピーキングタスクの評価結果と同じ

ではなく、26 名の学生について異なるグルーピングが現れたわけである。この事実は、

実際に「話す」のではなく、「話す」ことができると学習者が考える潜在的能力が、必

ずしも客観的に「話す」ことができる実効的能力と同じではないということを示している

と考えられる。学習者間に見られるこのようなスピーキング能力の偏差は、様々な要

因によって生じると仮定できるが、なかでも重要な要因と考えられるのが、学習者のフ

ランス語学習におけるストラテジーの違いである。OXFORD は言語学習ストラテジーを、

「学習を高めるための学習者の具体的な行動、あるいは態度」14 と定義する。26 名

の学習者は、それぞれのやり方で、フランス語を「話す」という学習に取り組む。学習

内容を何度も繰り返して復習する学生がいたり、「話す」ための内容を分析する者も

いるであろう。これらはスピーキング学習に直結する学習行動である。他方、「話す」こ

とへの不安を軽くしようと努力したり、学習内容に順番をつけて計画的に学習する学

生もいるであろう。

フランス語のスピーキング学習ストラテジーに関するアンケート調査は 2015 年 5 月

22 日に実施した。全 54 項目の質問 15 のうち、学習ストラテジーに関するものは 51

14 OXFORD (1990) 邦訳 , P.12. 15 フランス語スピーキング学習ストラテジーの調査表は付録1を参照されたい。

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項目であり、東京外国語大学における英語学習ストラテジー調査との比較が可能と

なるように、英語学習ストラテジーのアンケートと同じ質問項目を用いた16。ストラテジ

ーの各カテゴリーの内訳は以下の通りであった。メタ認知ストラテジー(MET)に関する

項目が 15 問と一番多く、次に認知ストラテジー(COG)の 14 問と補償ストラテジー

(COM)の 14 問が続く。この三つのカテゴリーで質問全体の 86%を占める。一方、情

意ストラテジー(AFF)と社会ストラテジー(SOC)はともに 4 問であり、質問項目は少な

い。回答には、1 の「全く当てはまらない」から 6 の「常に当てはまる」までの六段階の

リカート尺度を用いた。

3.1.学生別のクラスター分析

アンケート調査の冒頭で、本調査が「フランス語のスピーキング能力を向上させる

ために、学生が普段どのようなことをしているかを調べ、それを今後のフランス語教育

に役立てる目的で実施している」ことを口頭で簡単に説明した。リカート尺度の六段

階については、そのままでは回答が難しいかもしれないため、「全く当てはまらない」か

ら「常に当てはまる」まで、六段階のそれぞれに、0%、~20%、~40%、~60%、~80%、

~100%のように参考となる頻度指数を記載した。アンケート調査中に被験者から疑問

点の指摘や質問等はなかった。

アンケート結果はクラスター分析(平方ユークリッド距離、ウォード法)を用いて三つ

の学生グループに分類できた。図5を参照。グループ 1 は学習ストラテジーをあまり用

いない学生であり、グループ 2 はときどき用いる学生、グループ 3 はストラテジーを通

常用いる学生たちである。各グループの回答の平均値は、それぞれ 2.56、3.17、3.54

であった。これらの平均値を分散分析し、Tukey の多重比較を行った結果、三つのグ

ループの間には、それぞれ 5 パーセント水準で有意差が見られた。このことから、三つ

のグループに属する学生の間には、フランス語のスピーキングを学習する際のストラテ

ジーの利用頻度に違いが見られることがわかる。言語学習ストラテジーは、学生が自

分の学習を向上させるため、あるいは効率的な学習を目指してとる具体的な行動で

あることから、学習ストラテジーの利用頻度の違いは、学生たちの実際のスピーキング

活動における相違につながる可能性があると思われる。その点については後に検討

することにする。

16 2015 年 7 月 15 日に語学研究所に於いて開催された定例研究会 ,「外語大生の英語スピー

キング学習方略分析についての中間報告」 , 報告者 周育佳 , 井之川睦美 , 鈴木陽子 ,

http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ilr/images/20150715teirei.pdf を参照。

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図5 学生別のクラスター分析

3.2.学習ストラテジーのカテゴリーによる特徴

アンケート調査に含まれる学習ストラテジーは、①メタ認知ストラテジー(MET)、②

認知ストラテジー(COG)、③補償ストラテジー (COM)、④情意ストラテジー (AFF)、⑤

社会ストラテジー(SOC)の五種類であった。三つのグループにおけるカテゴリーごとの

平均値を算出し、お互いに比較できるようにしたのが図6である。

グループ3に属する学生は、ストラテジーの全てのカテゴリーに対して高い数値を

与えていることから、最も学習ストラテジーを利用していると言える。中でも補償

(COM)ストラテジーを相対的に頻繁に用いている。これに対して、グループ1の学生

は、全てのカテゴリーで数値が低くなり、利用する学習ストラテジーが少ない傾向にあ

ることがわかる。また、情意ストラテジー(AFF)に関しては、どの学生グループにおいて

も値が低く、学生が最も用いることが少ないストラテジーである。日本人でフランス語を

専攻する 2 年生 56 名(上位クラス 26 名、標準クラス 26 名)について、彼らの学習ス

グループ3

グループ 2

グループ1

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トラテジーを調査した大岩 (2006)によると、標準的なグループが補償ストラテジーと情

意ストラテジーを上位グループよりも多く利用していた。大岩は情意ストラテジーを多

用するのは、学習のストレスを減らし、感情を意識してコントロールしようとする行動と

解釈している17。一方、伊東 (1993)は、東京外国語大学留日センターの留学生 46

名における日本語学習ストラテジーを調査した。伊東は日本語既習者は未習者ほど

情意ストラテジーを使っていないと指摘している18。

図6 3グループにおけるカテゴリー別の平均値

4.スピーキング能力の可視化に向けて

これまでに得られた知見をまとめておこう。フランス語を専攻する 2 年生 26 名に対

して CEFR-J を利用したスピーキング能力に関する自己評価を実施した。その結果、

26 名は CAN-DO リストの自己評価が相対的に高いグループと低いグループにきれ

いに二分された。また自己評価によると、彼らは A1 レベルをおおよそクリアしていると

考えており、A2 レベルの CAN-DO リストはできないと考えている項目もあり、A2 レベ

ルにはまだ達しておらず、彼らの多くが到達目標として見ていることが分かった。次に、

同じ 26 名に対して、A1 と A2 レベルと考えられるスピーキングタスクを課し、二名のネ

イティヴ話者が彼らのスピーキング活動を「語彙的適切性、流暢さ、文法的適切性」

の三つの観点から評価したところ、学生は 23 名の相対的に評価の高いグループと 3

名から成る評価の低いグループに分かれた。さらに詳しく見ると、実際のスピーキング

活動では、26 名のうち 23 名(=88%)の評価値が、3 点満点の 2.34 であり、bien(よ

い)以上の評価を得ている。このことから学生の多くは A1 と A2 のスピーキングタスク

17 大岩 (2006) p.22. 18 伊東 (1993) p.83.

0

1

2

3

4

5

AFF COG COM MET SOC

グループ3

グループ2

グループ1

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において、相対的に高い評価を受けていることが明らかになった。さらに同学生たち

がスピーキング能力を向上するために、どのような取り組みをしているのかを知るため

に、スピーキング活動に関する学習ストラテジーのアンケートを実施した。その結果、

学習ストラテジーを比較的頻繁に利用する学生は、学習ストラテジーの全てのカテゴ

リーを利用する傾向にあり、とくに補償ストラテジーを比較的多く用いていることが分

かった。一方、学習ストラテジーを相対的に用いない学生は、学習ストラテジーの全

てのカテゴリーをあまり頻繁に用いないことが分かった。

本稿の冒頭に述べたように、スピーキング能力を理解するには多面的な分析が必

要であり、その能力を可視化するためには複数の指標を用いた記述が要求されるよ

うに思われる。最後に、これまでに見てきた①CEFR-J 準拠の言語能力自己評価、②

スピーキングタスク評価、③学習ストラテジー調査という三つの指標の間にみられる関

連性を分析することにしたい。

まず、CEFR-J 準拠の言語能力自己評価とスピーキングタスク評価の間には、弱

い正の相関関係があるものの、相関係数は有意ではないことがわかった。図7参照。

つまり、学生がこれくらい話せるであろうと自己評価した能力は、彼らが実際にスピー

キング活動をして評価された能力とは必ずしも関連性があるわけではないということで

ある。

図7

これに対して、スピーキングタスク評価と学習ストラテジーの間には、5 パーセント水

準で有意な正の相関関係がある。図8参照。スピーキングタスク評価が高い学生ほど、

学習ストラテジーを多く用いる傾向にあり、逆もまた真なりで、学習ストラテジーを頻繁

に活用する学生は、スピーキング活動においても高い評価を受ける傾向にあるという

ことである。この結果が意味するところは、スピーキング活動に関して、日頃から自己

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管理ができており、能力を向上したいと考えつつ様々な取り組みを行うことによって、

実際のスピーキング活動にもその成果が現れる傾向があることを意味する。同様に、

スピーキング活動の評価が高い学生の日頃の学習を調べてみると、自己管理ができ

ており、能力を向上するための取り組みを実践しているということが分かる。

図8

図9

学習ストラテジーと言語能力自己評価の間には、1 パーセント水準で有意な正の

相関関係が見られる。図9参照。言語能力自己評価が高い学生ほど、学習ストラテ

ジーを多用している傾向にあり、逆に、学習ストラテジーを相対的に利用する学生は、

スピーキング能力についての自己評価も高くなる傾向にある。普段から学習の自己

管理ができ、スピーキング活動の向上を志向している学生は、スピーキング能力につ

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いての自己評価も高くなる傾向が見られるのである。

結論にかえて

本稿では、フランス語を専攻する 2 年生 26 名のスピーキング能力を可視化するた

めに、三つの異なる指標に関する調査を行った。最初に CEFR-J 準拠の CAN-DO リ

ストを自己評価してもらい、次に A1 と A2 レベルのスピーキングタスクを課し、二名の

ネイティヴ話者に評価してもらった。最後に学習ストラテジーについてアンケート調査

を実施した。結果として、スピーキング能力の自己評価が高く、スピーキングタスク評

価も高い学生は、学習ストラテジーを多用する学生であることが分かった。このことか

ら、日本人の初級フランス語学習者のスピーキング能力を可視化するためには、彼ら

の学習ストラテジーを分析することが重要なように思える。学習ストラテジーを頻繁に

活用することは、スピーキング能力の自己評価とスピーキングタスク評価と関連性があ

ると考えられるためである。

こうした三つの異なる指標を用いてスピーキング能力を可視化しようとする試みに

は一定の意味があると考えられる。もっとも従来から言語技能の間には一定の関連

性があることが分かっており、スピーキングはとくにリスニングとの結びつきが強いと言

われている19。フランス語のリスニング能力が向上すれば、スピーキング能力もそれに

つれて向上していくかどうかは今後の興味深いテーマであると言える。また、スピーキ

ング活動を適切に評価するためには、本稿のような個別総合測定法 (discrete-point

measurement)を利用する場合、評価の客観性を高めるには、評価目標や評価基準

をより数多く、細かく設定することが重要であるという20。その意味で HARRIS (1969)が

行ったような評価値に関するメタ記述、たとえば発音項目の評価値 5 は、「外国人の

アクセントの痕跡を留めない」という意味であることを評価者に分かるようにすることで、

より評価が客観的になるかもしれない。また、スピーキング能力のレベル判定において、

低いレベルの場合は発音の役割が大きいものの、レベル判定全体としては語彙と文

法の影響が最も大きく、スピーキング活動の評価では語彙と流暢さのインパクトが大

きいと指摘されている21。本研究においても、学生たちがどれくらいの語彙を理解し使

用できるのか、言語化以前の潜在的な語彙力を、語彙サイズテスト等を実施して測

定し、その結果をスピーキング能力評価と関連づけて考えることも、スピーキング能力

を可視化するために重要であったと考えられる。さらに学習者はリスニングとスピーキ

19 岡 (編 ) (1984), p.3. 20 同上 , p.196. 21 IWASHITA et al. (2008), p.24-26.

Page 16: 初級フランス語におけるスピーキング能力可視化の …6 1 月に実施できなかった数名については5 月に実施した。後述するスピーキングタスク評価と学

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ング活動において、最も学習の不安を感じると言われる。実際はもっと話すことができ

るのに、不安等の心的要因によって、スピーキング活動の評価が低くなることがあり得

る。本稿のタスク活動は Moodle を利用しているために、対人的不安はインタビュー

形式のものよりは低かったと考えられるが、学生が一般にどのようなスピーキング学習

への不安を感じていたかは、事前に把握しておくべきだったと言える。このほかフラン

ス語学習の動機づけもスピーキング能力を可視化するための指標として考慮すべき

なのかもしれない。

今後の課題としてはさらに以下の諸点がある。より信頼性の高い統計分析を行う

ためには、さらに多くの学習者を調査することが望ましい。また、今回、スピーキングタ

スクを評価したネイティヴ話者は2名だけであった。均質で似通った言語規範を持っ

た評価者を、さらに数多く確保する必要がある。

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付録1 フランス語スピーキング能力向上に関するアンケート

本アンケートは、フランス語スピーキング能力向上のために皆さんが普段どのようなことをしているかを

調査し、フランス語教育に役立てる目的で実施されるものです。

調査結果が皆さんの成績に影響を与えることはありませんので正直にお答えください。また、氏名、回

答結果が公に特定されるようなことはありません。

[回答方法 ]

以下の項目 1~3 について、解答記入欄の問1~3の該当する数字に丸してください。

1

性別: 1.男

2.女

2

海外在住経験: 1.無 2.1 年未満 3.1年以上~4年未満

4.4年以上 (注:「海外」=日本以外の国・地域)

3 家族や親しい友人・知人にフランス語話者がいる: 1. いる 2.いない

(注: 「フランス語話者」=フランス語を第一言語(母語)とする人、または、ほとんどの言語活動をフラ

ンス語で行う人 )

項目 4~54 は、それぞれ 1~6(1:全く当てはまらない、2:あまり当てはまらない、3:ときどき当てはまる、

4:通常当てはまる、5:よく当てはまる、6:常に当てはまる)のなかで、最も自分に当てはまる数字を選ん

で丸してください。

■ 普段の生活の中で

4 スピーキング能力向上のために、明確な目標を立てる 1 2 3 4 5 6

5 予定を立て、スピーキングの練習に十分時間をあてる 1 2 3 4 5 6

6 自分のスピーキング能力の進歩について考える 1 2 3 4 5 6

7 スピーキング能力向上のための方法について、本や雑誌を読んで参考に

する 1 2 3 4 5 6

8 フランス語話者の文化について学習する 1 2 3 4 5 6

9 フランス語話者と一緒に時間を過ごすようにする 1 2 3 4 5 6

10 フランス語のテレビ番組や映画を観たり、歌を聴いたりする 1 2 3 4 5 6

11 フランス語の番組を、フランス語、あるいは日本語の字幕つきで理解を確

認しながら観る 1 2 3 4 5 6

12 周囲からフランス語が聞こえてきたら、話の内容がわかるか聞こうとする 1 2 3 4 5 6

13 フランス語を話すチャンスを探す 1 2 3 4 5 6

14 フランス語学習に関する自分の感情や考えたことを書き留める 1 2 3 4 5 6

15 フランス語学習やフランス語を話したり聞いたりするときの自分の感情につ

いて他人に話す 1 2 3 4 5 6

16 フランス語の授業を受講する際、受講の最終的な目標を設定する 1 2 3 4 5 6

17 フランス語の授業の中で行う活動の目的を理解しようとする 1 2 3 4 5 6

18 新しい単語や表現を学ぶ際、それらの使い方の例を調べる 1 2 3 4 5 6

■ スピーキングの練習として

19 単語や表現を声に出して繰り返す 1 2 3 4 5 6

20 教科書、映画、ドラマなどのフランス語の文を声に出して繰り返す 1 2 3 4 5 6

21 慣用語をできるだけ使うようにする 1 2 3 4 5 6

22 フランス語で独り言を言う 1 2 3 4 5 6

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23 他の学生とフランス語で話す 1 2 3 4 5 6

24 知っている単語をいろいろな文脈で使ってみる 1 2 3 4 5 6

25 文法知識を使って新しい文を作ってみる 1 2 3 4 5 6

■ フランス語で話し出す前に

26 文法が十分適切かどうか考える 1 2 3 4 5 6

27 単語が十分適切かどうか考える 1 2 3 4 5 6

28 単語の発音を辞書で確認する 1 2 3 4 5 6

29 話す内容を事前に考える 1 2 3 4 5 6

30 最初に日本語で考えてからフランス語に置き換えて言う 1 2 3 4 5 6

フランス語で話しているとき

31 自分の発音が間違っていないかどうか気をつけながら話す 1 2 3 4 5 6

32 文法の間違いがないかどうか気をつけながら話す 1 2 3 4 5 6

33 相手が自分の言っていることを理解しているかどうか気をつけながら話す 1 2 3 4 5 6

34 日本語ではなくフランス語で話す内容を考えようとする 1 2 3 4 5 6

35 フランス語を話しているときに、自分が緊張しているかどうか意識を向ける 1 2 3 4 5 6

36 フランス語を話しているときに、間違いを直してもらうようにフランス語話者に

頼む 1 2 3 4 5 6

■ フランス語で話した後に

37 フランス語で言えなかったことを辞書で調べる 1 2 3 4 5 6

38 会話を思い出しながらフランス語の改善点を考える 1 2 3 4 5 6

■ フランス語で会話を続けるために

39 知らない単語の意味を推測する 1 2 3 4 5 6

40 相手が次に話す内容を推測する 1 2 3 4 5 6

41 相手が日本語がわかる場合、時々日本語に切り替えて話す 1 2 3 4 5 6

42 会話の内容を自分の知っている単語や表現を使うトピックに変えようとする 1 2 3 4 5 6

43 伝えたいことを省略し簡単な表現を使う 1 2 3 4 5 6

44 もとの意図を伝えられない場合、伝える内容を変更する 1 2 3 4 5 6

45 なじみのある単語を使う 1 2 3 4 5 6

46 簡単な文構造の文を使う 1 2 3 4 5 6

47 知っているフランス語の文をまず思い出し、それを状況に合わせて変える 1 2 3 4 5 6

48 間違いをしてもフランス語で話そうとする 1 2 3 4 5 6

49 フランス語がわからないとき、ゆっくり話してもらうか、もう一度言ってもらう 1 2 3 4 5 6

■ 単語や表現がわからないとき

50 フランス語での会話中適切な語が思いつかないとき、ジェスチャーをまじえ

て伝える 1 2 3 4 5 6

51 フランス語で適切な語がわからないとき、新語を作る 1 2 3 4 5 6

52 フランス語の単語が思いつかないとき、同じ意味を持つ語や句を使う 1 2 3 4 5 6

53 伝えようとしたことを途中でやめる 1 2 3 4 5 6

54 うまく伝えられないときに相手の助けを求める 1 2 3 4 5 6

(形式に若干の修正を施した。)