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前田哲弥:ツクシカンガレイ(カヤツリグサ科)の和歌山県における新産地Tetsuya Maeda : Schoenoplectus multisetus Hayas. et C. Sato (Cyperaceae) newly found fromWakayama Prefecture

筆者は現在,主として和歌山県立自然博物館の植物標本庫(WMNH)の資料と新たな現地調査に基づいて,和歌山県におけるカヤツリグサ科フトイ属植物の分布調査を行っている。その過程で,これまで和歌山県に生育が確認されていなかったツクシカンガレイ Schoenoplectus multisetus Hayas. et C. Satoの生育を確認したので報告する。ツクシカンガレイは,筒井(1983 a)によって初めて報告された。その後,Hayasaka and Sato(2004)によって,地下茎の節間が伸張して長い地下茎となること,稈が 1.5―5 cmの間隔で列生すること,花被片は 3―10本でその長さは痩果長の約半分からわずかに長い程度であること,花序の直径が 1.5―2 cmであること,苞は長さ 1―3.5 cmであること,小穂は長さ 7―11.5 mmであることを区別点として,カンガレイ S . triangulatus(Roxb.)Sojákに近縁の新種として記載された。ツクシカンガレイの生育が確認されたのは,紀伊半島南部に位置する和歌山県東牟婁郡串本町田原にある湿地である(Fig. 1)。この湿地は,和歌山県にある湿地の中では大きなもののひとつであり,環境省の「日本の重要湿地 500」に選定基準 2に基づいて選定されている(http : //www.sizenken.biodic.go.jp/wetland/291/291.html)。かつては水田で,湿地内には水が湧いている所もあるために湿地の状態が守られ,多くの湿地性植物や水草が生育している。また,湿地の一角には和歌山県でも数少ないヒメカンガレイ S . mucronatus(L.)Pallaが生育しており,自然度の高い湿地となっている。この湿地を 2007年の春に調査し,ツクシカンガレイとカンガレイとの推定雑種であるチクホウカンガレイ

(仮称:筒井 1983 b)と思われる個体と,両親種のひとつとされるカンガレイの生育を確認した。そして,2007年 10月 14日に再度調査を行い,ツクシカンガレイの生育も確認した(Fig. 2 A)。この時採集した個体は長い地下茎を持ち,稈は列生していた。刺針状花被片は 6―8本で,痩果よりやや長いかほぼ等長であった(Fig.2 B)。また,苞は短く 2 cm程度であった(Fig.2 C)。以上の特徴からツクシカンガレイであると同定した。

10月の調査時に,ツクシカンガレイは若い稈を多数出し,旺盛に生育していた。しかし,ツクシカンガレイはこの湿地内の一カ所にだけ生育しており,その規模は直径 1 m程度の小パッチ状であった。さらに,ツクシカンガレイの生育地点の周辺は湿地から陸地への遷移が進みつつあり,セイダカアワダチソウ Solidago altissima L.やススキMis-canthus sinensis Anderssonが侵入していた。このツクシカンガレイが生育し続けるには難しい環境に変化しつつあると考えられる。この湿地内にはカンガレイ,ヒメカンガレイ,およびチクホウカンガレイも生育している。ヒメカンガレイは湧水が流れ込む自然湿地に近い環境にのみ生育しており,ツクシカンガレイ,カンガレイ,およびチクホウカンガレイは休耕田に生育していた。また,ツクシカンガレイが,カンガレイおよびチクホウカンガレイと混生することはなかった。一方,カンガレイとチクホウカンガレイは混生していた。これまでに報告されているツクシカンガレイの生育地は,愛知県・福井県・京都府・三

Fig. 1. New locality and distribution of Schoenoplectusmultisetus in the Kinki district. ★:New locality inWakayama Pref. ●:New locality based on specimens. ○:Localities based on Tsutsui(1984), Hayasaka and Sato(2004)and Mieken Kankyoushinrinbu Shizenkankyou-shitsu(2006). ×:Extinct locality reported by Tsutsui(1984).

September 2008 J. Phytogeogr. Taxon. Vol. 56. No. 1

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Fig. 2. The voucher specimens of Schoenoplectus multisetus from Wakayama Pref.(WMNH-33659).A : Whole plant. B : Achenes with bristles. Bar=1 mm. C : Bracts. Bar=1 cm.

植物地理・分類研究 第 56巻第 1号 2008年 9月

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重県・山口県・福岡県・佐賀県・熊本県・大分県・鹿児島県である(筒井 1983 a, b, 1984, 1985 ; Hayasakaand Sato 2004;三重県環境森林部自然環境室 2006)。その多くは九州を主とする西日本域であり,それ以外は,近畿とその付近のごく一部に限られた場所のみである。そこで,今回の新産地の周辺の分布を確認するため,近畿地方の植物標本を多数保有している大阪市立自然史博物館植物標本庫(OSA)の標本を調査した。その結果,京都府京都市北区の深泥池と京都市左京区の宝ヶ池,および奈良県奈良市佐紀町で採集された標本がツクシカンガレイであると考えられた。佐紀町は,今回の標本調査で確認された新たな産地である。いずれの標本も地下茎は採集されていないが,深泥池の標本は古賀佳好氏によって,宝ヶ池の標本は筒井貞雄氏によってツクシカンガレイと同定されている(筒井 1984)。佐紀町の標本は,結実率が高く,痩果は充実しており,花被片は痩果とほぼ等長であり,小穂は小さく,苞が短いことから,ツクシカンガレイと同定した。今回新発見の田原,標本庫(OSA)の標本で確認できた生育地に,これまで文献上(筒井 1984 ; Hayasaka and Sato2004;三重県環境森林部自然環境室 2006)で明らかにされていた近畿地方周辺の生育地を加えると Fig. 1のようになる。以上のことから,ツクシカンガレイは近畿地方とその周辺に点々と生育することが明らかになった。ツクシカンガレイの生育環境である休耕田などの湿地やため池は,全国的に減少する傾向にある。愛知県の生育地は宅地造成によってすでに消滅しており(筒井 1984),三重県に生育するツクシカンガレイは「三重県レッドデータブック 2005」で絶滅危惧 IA類に指定されている(三重県環境森林部自然環境室 2006)。今回発見された和歌山県の生育地も,先述のように生育環境は悪化している。種の多様性の保全,およびツクシカンガレイの遺伝的多様性の保護の観点から,ツクシカンガレイの分布の更なる調査や,現存する生育地の保護が重要であると考えられる。

検討標本

Wakayama Pref.:東牟婁郡串本町田原,Oct. 14, 2007, T. Maeda(WMNH-33659).Kyoto Pref.:京都市北区深泥池,Jun. 29, 1947, G. Nakai 3394(OSA).京都市左京区宝ヶ池,Oct. 12, 1949, M. Hatoh 2799(OSA). Nara Pref.:奈良市佐紀町磐之媛陵堀,Aug. 10, 2005, K. Seto & K. Kawabata 63724(OSA-

167055).

謝辞

本調査を進めるに当たり,大阪市立自然史博物館の佐久間大輔氏と内貴章世氏には標本閲覧の便宜を図って頂いた。ここに記して感謝の意を表します。

引用文献

Hayasaka, E. and Sato, C. 2004. A new species of Schoenoplectus(Cyperaceae)from Japan. J. Jpn. Bot.79 : 322―325.三重県環境森林部自然環境室(編).2006.三重県レッドデータブック 2005植物・キノコ.534 pp.三重県環境保全事業団,津.筒井貞雄.1983 a.福岡県のカヤツリグサ科植物予報(1)福岡県産植物目録 1.福岡の植物(8): 69―119,

pls. 3―9.筒井貞雄.1983 b.ツクシカンガレイ続報.福岡の植物(9): 105―112.筒井貞雄.1984.ツクシカンガレイの新産地.福岡の植物(10): 213―216.筒井貞雄.1985.福岡県産主要植物分布図(4).福岡の植物(11): 143.(〒642―0001 和歌山県海南市船尾 370―1 和歌山県立自然博物館;現住所 〒860―0862 熊本県熊本市黒髪 3―14―15 Wakayama Prefectural Museum of Natural History, Funo 370―1, Kainan 642―0001, Japan ;Present address : Kurokami 3―14―15, Kumamoto 860―0862, Japan)

September 2008 J. Phytogeogr. Taxon. Vol. 56. No. 1

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